(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-90616(P2021-90616A)
(43)【公開日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】作品展示用パネル
(51)【国際特許分類】
A47G 1/06 20060101AFI20210521BHJP
【FI】
A47G1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-222929(P2019-222929)
(22)【出願日】2019年12月10日
(71)【出願人】
【識別番号】519441235
【氏名又は名称】株式会社ボウルド
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】宇都 悠飛
【テーマコード(参考)】
3B111
【Fターム(参考)】
3B111BE02
(57)【要約】
【課題】作品を壁面に展示して鑑賞した際に、作品が壁面から浮き出てくる印象を醸し出し、作品の独立感を向上させることができる作品展示用パネルを提供することを課題とする。
【解決手段】作品1を定着するパネルボード2と、パネルボード2の裏面に固定されるベース材とから成り、ベース材の外周面は内方に向けて傾斜する傾斜面となっている。ベース材は四角形のフレーム枠3、あるいは、裏面にベース板7を定着した発泡樹脂盤5、あるいは、四角形のフレーム枠8の内側に発泡樹脂盤9を嵌め込んだものである。ベース材の少なくとも外周面は暗色にされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作品を定着するパネルボードと、前記パネルボードの裏面に固定されるベース材とから成り、前記ベース材の外周面は内方に向けて傾斜する傾斜面となっていることを特徴とする作品展示用パネル。
【請求項2】
前記ベース材の外周面は、その全体が傾斜面となっている、請求項1に記載の作品展示用パネル。
【請求項3】
前記ベース材の外周面は、前記パネルボード側の一部を残して傾斜面となっている、請求項1に記載の作品展示用パネル。
【請求項4】
前記ベース材は四角形のフレーム枠である、請求項1乃至3のいずれかに記載の作品展示用パネル。
【請求項5】
前記ベース材は裏面にベース板を定着した発泡樹脂盤である、請求項1乃至3のいずれかに記載の作品展示用パネル。
【請求項6】
前記ベース材は、四角形のフレーム枠の内側に発泡樹脂盤あるいはハニカムコアを嵌め込んだものである、請求項1乃至3のいずれかに記載の作品展示用パネル。
【請求項7】
前記ベース材の少なくとも外周面は暗色である、請求項1乃至6のいずれかに記載の作品展示用パネル。
【請求項8】
前記パネルボードの表面に逃がし溝が形成されている、請求項1乃至7のいずれかに記載の作品展示用パネル。
【請求項9】
前記パネルボードに定着された作品から前記ベース材の外周面にかけて被覆する透明カバーを更に含む、請求項1乃至8のいずれかに記載の作品展示用パネル。
【請求項10】
前記透明カバーの前記外周面被覆部は、前記外周面に密着するように成形され、その四隅の角部に、内方に向かう切込みが入れられる、請求項9に記載の作品展示用パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作品展示用パネルに関するものであり、より詳細には、写真、ポスター、絵画等の作品を壁等に掛けて展示するための展示用パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
写真や絵画等の作品を壁に掛けて展示する場合は一般に、額装される。額装は、例えば、窓が作品サイズよりも少し小さいマット22を用意し、そのマット22の裏面に作品21をテープ止めし、アクリル板等の透明カバー23を装備したフレーム(額)24に背面側から嵌め込み、裏蓋25を被せ、フレーム24の裏面に配備した回動係止具で裏蓋を止める方法により行われる(
図10参照)。
【0003】
このように額装した場合、作品21は、ほぼフレーム24の厚み分、フレーム24の前面より後退した位置に位置することになるため、その作品21からは、前面に浮き出てくる印象は受け難いものとなる。そして、フレームの厚みが増すほど作品の後退感が増すために、前面に浮き出てくる印象はより一層得にくいものとなり、作品によっては、作者の意に沿わないものとなるおそれがある。
【0004】
作品を額装する場合、作品によっては上記のような問題が生ずるため、特に写真21の場合は、上記マット22及びフレーム24を用いずに、写真21を定着する樹脂製等のパネルボード26の裏面に、四角形のフレーム枠27を固定したパネルが用いられることも少なくない(
図9(A)参照)。その場合は写真21が前面に位置するため、上記のような後退感は生じないが、このパネルの場合、写真鑑賞の際に、フレーム枠27の側面が視界に入るため、その分写真21が壁面20から前面に浮き出てくる印象が薄れるという問題がある。
【0005】
また、写真21はパネルに接着剤を塗布して定着されるが、慣れないと写真21とパネルの間に空気溜りや接着剤溜りができやすく、手やローラーの圧力により接着剤がうねりを起こし、写真表面にその凹凸が無数に出て見栄えが悪くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−270984号公報
【特許文献2】実用新案登録第3179947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特に作品が写真である場合、額装すると前面に浮き出てくる印象が受け難くなり、また、パネルボードの裏面に四角形のフレーム枠を固定したパネルを用いる場合は、写真が前面に位置するため、上記のような後退感は生じないが、このパネルの場合、写真の鑑賞の際に、フレーム枠の側面が視界に入るため、その分写真等が前面に浮き出てくる印象が薄れるという問題があり、更に、写真をパネルボードに凹凸なく平滑に貼り合わせる作業が容易ではないという問題がある。
【0008】
本発明はこれらの諸問題を解決するためになされたもので、作品を壁面に展示して鑑賞した際に、作品が壁面から浮き出てくる印象を醸し出し、作品の独立感を向上させることができ、また、作品、特に写真をパネルボードに写真表面の平滑状態を維持しつつ貼り合わせることが容易な作品展示用パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、作品を定着するパネルボードと、前記パネルボードの裏面に固定されるベース材とから成り、前記ベース材の外周面は内方に向けて傾斜する傾斜面となっていることを特徴とする作品展示用パネルである。
【0010】
一実施形態においては、前記ベース材の外周面は、その全体が傾斜面となっており、あるいは、前記ベース材の外周面は、前記パネルボード側の一部を残して傾斜面となっている。一実施形態においては、前記ベース材は四角形のフレーム枠であり、他の実施形態においては、前記ベース材は、裏面にベース板を定着した発泡樹脂盤である。また、更に他の実施形態においては、前記ベース材は、四角形のフレーム枠の内側に発泡樹脂盤あるいはハニカムコアを嵌め込んだものである。
【0011】
一実施形態においては、前記ベース材の少なくとも外周面が暗色にされ、また、前記パネルボードの表面に逃がし溝が形成される。
【0012】
一実施形態においては、前記パネルボードに定着された作品から前記ベース材の外周面にかけて被覆する透明カバーを更に含む。前記透明カバーの前記外周面被覆部は、前記外周面に密着するように成形され、その四隅の角部に、内方に向かう切込みが入れられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記のとおり、作品を定着するパネルボードと、パネルボードの裏面に固定されるベース材とから成り、ベース材の外周面は内方に向けて傾斜する傾斜面であるため、作品鑑賞の際に、ベース材の外周面が視界に入りにくくなり、その結果、作品が壁面から前面に浮き出て見えるようになるので、作品の独立感を向上させることができる効果がある。
【0014】
更に請求項7に係る発明の場合は、ベース材の外周面がより一層目立たないものとなるため、作品を浮き出させる作用が助長される効果があり、請求項8に係る発明の場合は、写真等をその鏡面状態を維持しつつパネルボードに定着する作業が容易となるという効果があり、請求項9、10に係る発明の場合は、作品に密着する透明カバーによって作品が保護される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る作品展示用パネルの第1の実施形態の斜視図である。
【
図2】本発明に係る作品展示用パネルの第1の実施形態の分解斜視図である。
【
図3】
図2におけるA−A線拡大断面及びその変形例を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る作品展示用パネルの第2の実施形態の分解斜視図である。
【
図5】本発明に係る作品展示用パネルの第3の実施形態の分解斜視図である。
【
図6】本発明に係る作品展示用パネルの第4の実施形態の斜視図である。
【
図7】本発明に係る作品展示用パネルの第4の実施形態の分解斜視図である。
【
図9】本発明に係る作品展示用パネルの作用効果を示す展示状態図である。
【
図10】一般的な額装方法を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態について、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る作品展示用パネルは、作品1を定着するパネルボード2と、パネルボード2の裏面に固定されるベース材とから成り、ベース材の外周面が内方に向けて傾斜する傾斜面となっていることを特徴とするものである。なお、本発明に係る作品展示用パネルは主に写真展示用に開発されたものであるため、以下の説明においては、作品1を写真1としているが、他のポスターや絵画等の場合においても、作用効果は写真1の場合と変わらない。
【0017】
図1乃至
図3は第1の実施形態を示すもので、その場合のベース材は、四角形状のフレーム枠3である。フレーム枠3は、例えば、4本の角材を四角形に組み合わせて構成され(
図2参照)、あるいは、一体に樹脂成形されるが、いずれの場合もその外周面4は、内方に向けて傾斜する傾斜面にされる。即ち、4本の角材は、それぞれ断面が台形である(
図3参照)。なお、パネルボード2の側面は、外周面4と同角度に傾斜させてもよいし(
図3(A))、垂直面としてもよい(
図3(B)、(C))。
【0018】
図4に示す第2の実施形態におけるベース材は、必要に応じて裏面に裏板7を定着した発泡樹脂盤5である。この発泡樹脂盤5は、発泡倍率を高めて高硬度にしたもので、その外周面6は、フレーム枠3
の場合と同様に内方に向けて傾斜する傾斜面にされる。発泡樹脂盤5も、予め発泡材に黒色塗料等を混ぜ込む等の方法で暗色にすることが好ましく、また、裏板7は発泡樹脂盤5と同色であることが好ましい。
【0019】
図5に示す第3の実施形態におけるベース材は、第1の実施形態におけると同様のフレーム枠8の内側に、第2の実施形態におけると同様の発泡樹脂盤9を嵌め込み、必要に応じて裏板10を被着したものである。あるいは、発泡樹脂盤9の代わりに、紙基材のハニカムコアを用いることもできる。このような構成とすることにより、発泡樹脂盤9又はハニカムコアによってフレーム枠8が補強される。この第3の実施形態のパネルは、比較的大きな写真1を展示するためのものである。
【0020】
以上いずれの実施形態においても、ベース材の外周面は、その全体が傾斜面となっているものとして説明してきたが、それに限らず、ベース材の外周面4は、パネルボード2側の一部を残して傾斜面とされることもある(
図3(C))。その場合、残された外周面は垂直面4aとなるが、傾斜面はそこから少し奥まった位置に設けることとしてもよい。なお、外周面の垂直面4aの厚みは、外周面を視認しにくくするという、本願発明の作用効果に影響が出ない範囲にすることは言うまでもない。
【0021】
本発明に係る展示用パネルは、主に作品が写真1の場合に用いられるものであり、その場合写真1は、裏打ちシート11により裏打ちされた上で、パネルボード2に貼り合わされる(
図8参照)。写真の表面は元々平坦であるが、そのベースの材質が紙基材かプラスチック基材かによって表面の乳剤面の見た目の仕上がりが異なり、特に、プラスチック基材の場合の写真表面は鏡面状の仕上がりとなっていて、僅かな凹凸があっても全体的に見栄えが悪くなってしまう。従って、その鏡面状態を維持することが非常に重要なこととなる。
【0022】
しかし、裏打ちシート11に裏打ちされた写真1をパネルボード2に貼り合わせる作業は、作業慣れしないと、裏打ちシート11とパネルボード2の間に空気溜りや接着剤溜りができやすく、それが、写真1の表面に凹凸となって表れるために見栄えが悪くなり、写真1の価値が低下する。
【0023】
この問題を解決するために本発明においては、パネルボード2の表面全面に、逃がし溝12を形成することとする(
図2,3(A))。逃がし溝12は、一般的には、図示したように格子状に形成されるが、これに限られる訳ではなく、曲線等を交える等して任意に形成することができる。このように逃がし溝12を形成した場合は、裏打ちシート11とパネルボード2の間の余分な接着剤や空気が逃がし溝12に逃げるため、裏打ちシート11とパネルボード2の間に空気溜りや接着剤溜りができない。そのため、慣れない人であっても、写真1を、その鏡面状態を維持しつつパネルボード2に定着する作業を容易に行うことが可能となる。
【0024】
上記のようにして裏打ちシート11に裏打ちされてパネルボード2上に固定された写真1は、鑑賞に際して壁面20に掛けられるが、その際、フレーム枠3や発泡樹脂盤5等のベース材の外周面は内方に向けて傾斜しているため、作品鑑賞の際に、ベース材の外周面が視界に入りにくくなる(
図9(B)参照)。そのため、写真1が壁面20から前面に浮き出て見えるようになるので、特に、撮影者の意図が、前面に浮き出て見える印象を与えたいような場合の作品展示用に好適である。また、ベース材の少なくとも外周面を暗色にし、あるいは、取り付ける壁面の色に近い色にした場合は、ベース材の外周面が一層目立たないものとなるため、写真1を浮き出させる効果が助長される。
【0025】
図6乃至8は、本発明に係る作品展示用パネルの第4の実施形態を示すものである。この第4の実施形態は、上記各実施形態に更に、パネルボード2に定着した作品1を被覆して保護する透明カバー16を付加したものである。透明カバー16は、作品1の表面からベース材の外周面にかけて被覆するものであり、その外周面被覆部17は、外周面4に密着するように、外周面4と同一角度に傾斜するように成形される。外周面被覆部17の4つの角部には、外方から内方に向かう切込み18が入れられる(
図7参照)。
【0026】
この第4の実施形態の場合は、上記第各実施形態の場合と同様にして作品1をパネルボード2に定着した後、作品1の上から透明カバー16を嵌め付ける。その際、傾斜面被覆部17の切込み18を開くようにして行う。透明カバー16の傾斜面被覆部17は、外周面4と同一角度に傾斜するように成形されているので、嵌め付け後外周面4に密着し、その表面も作品1の表面に密着するので、作品1の鑑賞に支障はない。また、この第4の実施形態の場合においても、上記各実施形態の場合におけると同様の作用効果が得られることは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る作品展示用パネルは上記のとおりのものであって、ベース材の外周面が内方に向けて傾斜する傾斜面であるため、作品鑑賞の際に、ベース材の側面が視界に入りにくくなり、その結果、作品が壁面から前面に浮き出て見えるようになるので、特に、作者の意図が、作品が前面に浮き出て見える印象を与えたいような場合の作品展示用パネルとして好適なる効果がある。また、慣れない人であっても、写真を、その鏡面状態を維持しつつパネルボードに定着する作業を容易に行うことが可能であるので、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0028】
1 作品
2 パネルボード
3 フレーム枠
4 傾斜面
4a 垂直面
5 発泡樹脂盤
6 外周面
7 裏板
8 フレーム枠
9 発泡樹脂盤
10 裏板
11 裏打ちシート
12 逃がし溝
16 透明カバー
17 傾斜面被覆部
18 切込み