【実施例】
【0014】
図1〜
図3には、ライニング材を反転させる反転容器1を備えた反転装置が図示されている。以下に述べる反転装置の各部材は、特に断りがない限りステンレススチールあるいはアルミなどの金属製である。
【0015】
反転容器1は中空の円柱部2を有し、その上部に、取付部としての取付管3を介して反転ノズル4が気密に取り付けられる。反転ノズル4は、
図4、
図5aに示したように、ライニング材20の一端が折り返して取り付けられる中空の円柱部4aを有し、円柱部4aの外周には、複数のリング4bが固定される。リング4b間にバンド(不図示)を取り付けて折り返されたライニング材を締め付けることより、ライニング材20を反転ノズル4に気密に取り付けることができる。また、リング4bを設けることにより円柱部4aの強度を向上させることができる。
【0016】
反転ノズル4の円柱部4aには、一面が円柱部4aと同径で、他面が円柱部4aの径より大きな円錐台形状のレジューサー4cが連続していて、円柱部4aからレジューサー4cに移行する境界部の外周には、ディスク状のフランジ4dが垂直方向に延びている。フランジ4dのレジューサー4c側には、取付管3に嵌合する嵌合環4eが設けられる。嵌合環4eには、リング状の溝が形成され、そこにOリング4fが嵌め込まれており、このOリング4fが取付管3の内壁に密着することにより反転ノズル4が取付管3に気密に取り付けられる。反転ノズル4の円柱部4a、レジューサー4c、フランジ4dは、一体部材に形成されているが、個別の部材にし、それぞれを溶接などで連結させることもできる。
【0017】
反転ノズル4の反転容器1への取り付けは、反転ノズル4のフランジ4dと取付管3のフランジ3aを、複数のクランプ5で留めることにより行われる。クランプ5は、
図6に示したように、反転ノズル4のフランジ4dと取付管3のフランジ3aが合わされて挿入される凹溝5bを形成したリングを120度に等分割した形状の保持部5aを有し、その両端に連結板5cが溶接されている。
図5bに示したように、クランプ5の凹溝5bの溝幅wは、取付管3のフランジ3aと反転ノズル4のフランジ4dの厚さの合計より、微小値Δ(wの約10〜20分の1)だけ大きくなるように設定される。
図5a、
図5b、
図6に示したように、各フランジ3a、4dを合わせてクランプ5の凹溝5bに挿入し、両フランジの周縁部を保持する。各フランジの残り240度を、
図7に示したように、2個のクランプ5で保持して、合計3個のフランジ5を用いて両フランジ3a、4dの全体を保持し、反転ノズル4を取付管3に連結する。各クランプ5は、両端の連結板5cをクリップするか、連結板5cに形成された穴5dを利用して、例えばワイヤーにより相互に連結し、固定することができる。なお、反転ノズル4の取り外しは、取り付けの順序と逆の順序で行うことができる。
【0018】
クランプ5は、リングを120度に等分割した形状となっているが、180度に分割した形状のクランプで反転ノズルを取り付けることもでき、また4個あるいはそれ以上の数で等分割した形状のクランプで、取り付けることもできる。本実施例のように、120度に等分割した形状の場合には、最初の2つを留めると、240度形状のクランプとなるので、クランプ5はフランジから外れず、一人の作業者で反転ノズル4の取り付けを行うことができる。
【0019】
このように、反転ノズル4を反転容器1に取り付けると、レジューサー4cは反転容器1の密閉空間内にあり、反転容器1内に高い反転圧が発生しても、レジューサー4cの内外気圧はほぼ等しく、耐圧性が要求されないので、レジューサー4cの肉厚を薄くすることができ、その加工を容易にすることができる。また、レジューサー4cを反転容器1内に設けたことにより、反転口までの距離を短くすることができる。
【0020】
また、上述したクランプ5を用いると、
図5bで矢印で示したように、反転ノズル4に高い反転圧が作用したとき、反転ノズル4のフランジ4dは、強い力を受けて凹溝5bの側壁5eに強力に密着する。これにより、クランプ5の締付力が増大し、反転ノズル4を取付管3に強固に連結することができる。なお、クランプ5の凹溝5bの溝幅wは、両フランジ3a、4dの厚さの合計より、微小値Δだけ大きくなっているので、反転ノズル4に高い反転圧が作用したとき、フランジ4dはΔ左方向に移動してフランジ3aとの間に同量Δの隙間が生じる。しかし、反転ノズル4と取付管3との間には、Oリング4fが存在するので、この隙間により、気密性が損なわれることはない。
【0021】
本実施例では、クランプ5は、取付管3と反転ノズル4の連結だけでなく、他の円盤状部材の連結にも利用される。例えば、
図8、
図9に図示したように、反転容器1の上部に取り付けれられた取付管10のフランジ10aとカバー11のフランジ11bの周縁部が3つのクランプ5で留められ、カバー11が取付管10に気密に取り付けられる。この例では、カバー11を開けることによりライニング材の装填など反転に必要な作業を上部からできる。また、カバー11には、強化ガラス11aが埋め込まれており、上部から反転容器1内を観察できるようになっている。なお、
図1、
図2では、図面が複雑になるのを避けるために、各クランプ部材5の連結は、仮想線でその連結部分を示すだけにとどめている。
【0022】
反転容器1の取付管3と反対側には、取付管6が逆方向に延びており、この取付管6に、円盤7が複数のクランプ5を用いて取り付けられる。円盤7には、後述するエアコンプレッサーで供給される圧縮空気を供給する気体供給口8、反転容器1内の気圧を測定する気圧計9、反転作業終了後ライニング材を硬化させるための熱水を供給する熱水供給口16、熱水を排出させる熱水排出口17が取り付けられる。
【0023】
反転容器1の下方部は、一面に開口が形成された中空の基台12となっており、基台12の上部には、中空の円柱部13が設けられる。円柱部2と円柱部13はそれぞれのフランジがボルト締めされ、両円柱部2、13が連結される。基台12の反転ノズル4と反対側の面には、ライニング材20を通過させる開口部50が連結プレート14を介して取り付けられる。
【0024】
反転装置により反転されるライニング材20は、管状の柔軟な不織布あるいはガラス繊維で強化された樹脂吸収材に不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸し、外表面を気密性のプラスチックフィルムでコーティングしたライニング材である。ライニング材20の終端には、牽引ベルト、連結具を介して熱硬化性樹脂を硬化させる熱水を供給する熱水ホース21が取り付けられる(
図14)。
【0025】
反転容器1は、
図1に示したように、垂直に立てられた状態で水槽28内に配置される。ライニング材20は、水槽28内に設けれられたガイドローラー34、35、後述する開口部内に設けられたガイドローラー36、反転容器1内に設けられたガイドローラー37、38で反転ノズル4に導かれ、その一端が折り返されて反転ノズル4に気密に取り付けられる。
【0026】
水槽28の外部には、水26を反転容器1内に供給する給水ポンプ42が配置され、給水ポンプ42は、水槽28内の水26を排水口40、パイプ41を介して汲み出し、吐出口からパイプ39、給水口18を介して水26を反転容器1内に供給する。
【0027】
水槽28の近傍には、圧縮気体、例えば、圧縮空気、圧縮炭酸ガスなどを供給する圧縮気体源が配置される。本実施例では、圧縮気体として圧縮空気を用いる例を説明するので、圧縮気体源としてエアコンプレッサー44が用いられる。エアコンプレッサー44は、エアーホース45、気体供給口8を介して反転容器1内の水26の上部に圧縮空気を供給する。気体供給口8の近傍には、気圧計9が取り付けられており、供給される圧縮空気の気圧が測定される。反転容器1には、反転容器1内の水26の水面レベルを測定する電極式水面計48が取り付けられ、そのアース電極と検出電極間が水に接触すると電流が流れて水面レベルが検出される。
【0028】
反転容器1の底部には、
図10に図示したような開口部50が設けられる。開口部50には、扁平にされたライニング材20が接触して通過する開口51aが形成されたシール部材51と、シール部材51から流出する水の水圧を受けて変位するシール弁62が設けられる。
【0029】
シール部材51は、例えば、ニトリルゴム(NBR)など水密性の高いゴムから構成され、
図11に図示したように、扁平にされたライニング材20の断面形状とほぼ同形状の開口51aを有している。シール部材51は、保持プレート52、53に保持された状態でフレーム54に嵌着され、連結プレート14を介して反転容器1の基台12に連結されたボックス56に取り付けられる。
【0030】
シール弁62は、保持プレート53に一面が結合されるボックス60の他面に、ピン61を中心に水平位置と垂直位置間を回動できるように、取り付けられる。ボックス60の他面に形成された開口60aは、
図12に示したように、シール部材51の開口51aより大きく、またシール弁62は、開口60aを塞ぐことができる大きさのプレート形状となっている。
【0031】
反転容器1とシール部材51間には、上下機構64により手動で上下される上部ブロック57と、ボックス56の底部に固定された下部ブロック58が配置される。シール部材51に障害が発生し、液漏れが多くなったときには、上下機構64の上部に取り付けられるハンドル(不図示)を操作することに、上部ブロック57を下降させ、シール機能を維持させることができる。
【0032】
このような構成で、反転容器1、水槽28、給水ポンプ42、エアコンプレッサー44などは、
図1に図示した状態で、作業トラック(不図示)の荷台に搭載されて現場に搬送され、
図13に示したように、反転ノズル4が、ライニングすべき既設管71に連続するマンホール70の近傍にくるような位置に移動される。なお、
図13は、反転装置の動作と機能を説明する図なので、各要素の配置、サイズなどは、他の図面に示したものと、同一でないものがあり、また一部省略されたり、誇張されたりしている。
【0033】
ライニング材20を、ガイドローラー34〜38を介して反転ノズル4に導き、その一端を折り返して反転ノズル4に気密に取り付ける。続いて、水26を水槽28内に供給し、給水ポンプ42を駆動して開口部50の開口を超え、反転ノズル4に水26が流入しない所定レベル26aまで水26を反転容器1に供給し、水上部に気密な密閉空間を形成する。
【0034】
熱水供給口16と熱水排水口17は、ライニング材を反転する時は使用しないので、空気が漏れないように、キャップ16a、17aで気密に閉鎖しておく。
【0035】
この状態で、エアコンプレッサー44を駆動し、反転容器1の密閉空間に圧縮空気を供給する。
図13で実線の矢印で示したように、圧縮空気が反転圧として反転ノズル4に作用するので、反転ノズル4に取り付けられたライニング材20は、仮想線で示したように、反転容器1外に反転、排出され、マンホール70、屈曲管72を経て、下水管などの既設管71内に挿入される。
【0036】
扁平にされたライニング材20とシール部材51の開口51aとの間には、僅かな隙間が発生するので、水26がシール部材51、シール弁62から流出し、反転容器1内の水26が所定レベル26aより低下する。このレベル低下により給水ポンプ42が作動して、水槽28の水26が反転容器1内に補給されるので、反転容器1内の水がほぼ所定のレベル26aに保たれるようになる。これにより、圧縮空気をライニング材20の連続反転に利用でき、ライニング材20の長さに限定されることなくライニング材20を反転し続けることができる。
【0037】
ライニング材20の反転が続きその終端部がシール部材51を通過すると、シール部材51からの水の流出が増大し、水圧が上昇する。この水圧の上昇により、シール弁62は、、
図14に示したように、垂直位置近傍まで回動し、開口60aからの水漏れが減少する。これにより、小径の熱水ホース21が開口60aを通過するときのシール機能が維持され、ライニング材20の終端がライニングすべき既設管の終端に達するまで連続してライニング材20を反転し続けることができる。
【0038】
すべての長さに渡ってライニング材20が反転してライニングすべき既設管の全域に渡って挿入され、その終端に接続された熱水ホース21の先端が既設管の終端からはみ出した段階で反転作業は終了する。
【0039】
上述した実施例では、反転容器内に所定レベルまで水を満たし、反転圧により漏水する分を補充することによりライニング材の長さに限定されずにライニング材を反転させる反転装置の反転ノズルについて説明したが、反転ノズルは、それに限定されず、従来技術で述べた一定長さのライニング材を反転容器に収納して、収納されたライニング材を反転させる反転装置の反転ノズルにも適用できる。