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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-91267(P2021-91267A)
(43)【公開日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】キャスター装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/06 20060101AFI20210521BHJP
【FI】
   B60B33/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-222149(P2019-222149)
(22)【出願日】2019年12月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】金井 孝
(57)【要約】
【課題】車輪の張出状態と格納状態とを容易に切り替えることができるキャスター装置を提供する。
【解決手段】車輪130と、車輪130を回転自在に支える車軸120と、車軸130を移動可能に支持する車軸可動経路を有する車軸支持体110と、を備え、車軸可動経路は、車輪130が車軸支持体110に格納される状態となる車軸120の格納位置決め部と、車輪130が車軸支持体110から張り出した状態となる車軸120の張出位置決め部と、を有し、車軸支持体110の上下動に応じて、車軸130を、格納位置決め部と張出位置決め部との間で交互に移動させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、
前記車輪を回転自在に支える車軸と、
前記車軸を移動可能に支持する車軸可動経路を有する車軸支持体と、を備え、
前記車軸可動経路は、前記車輪が前記車軸支持体に格納される状態となる前記車軸の位置を決める格納位置決め部と、前記車輪が前記車軸支持体から張り出した状態となる前記車軸の位置を決める張出位置決め部と、を有し、
前記車軸支持体の上下動に応じて、前記車軸が前記車軸移動経路を前記格納位置決め部と前記張出位置決め部との間で交互に移動することを特徴とするキャスター装置。
【請求項2】
前記車軸可動経路は、
前記格納位置決め部及び前記張出位置決め部よりも下方に位置する第1の車軸待機部及び第2の車軸待機部を有し、
前記格納位置決め部から前記第1の車軸待機部へ前記車軸を誘導する第1の誘導路と、
前記第1の車軸待機部から前記張出位置決め部へ前記車軸を誘導する第2の誘導路と、
前記車軸が、前記張出位置決め部から前記第1の車軸待機部へ移動しないように、前記第2の車軸待機部へ誘導する第3の誘導路と、
前記第2の車軸待機部から前記格納位置決め部へ前記車軸を誘導する第4の誘導路と
を有することを特徴とする請求項1に記載のキャスター装置。
【請求項3】
前記車軸が前記格納位置決め部にある状態で、前記車軸支持体を上昇させると、前記車軸が前記第1の誘導路に沿って前記第1の車軸待機部へ移動し、
前記車軸が前記第1の車軸待機部にある状態で、前記車軸支持体を下降させると、前記車軸が前記第2の誘導路に沿って前記張出位置決め部へ移動し、
前記車軸が前記張出位置決め部にある状態で、前記車軸支持体を上昇させると、前記車軸が前記第3の誘導路に沿って前記第2の車軸待機部へ移動し、
前記車軸が前記第2の車軸待機部にある状態で、前記車軸支持体を下降させると、前記車軸が前記第4の誘導路に沿って前記格納位置決め部に戻る
ことを特徴とする請求項2に記載のキャスター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品等を運搬するために用いられる運搬用部材に取り付けられるキャスター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の産業分野において、製品等を載置して所要の場所に運搬するために、平パレットやボックスパレット等の種々のパレットが広く利用されている。例えば、工場や倉庫等の各種施設では、パレット上に製品を載置した状態で当該パレットを搬送台車に載せ、この搬送台車を移動させてパレット上の製品を各製造工程や出荷場まで運搬することが行われている(例えば、特許文献1,2の「従来の技術」を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002‐96732号公報
【特許文献2】特開2003‐127862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、パレット上の製品を運搬する際には、当該パレットを搬送台車に載せ替える作業を行っている。ここで、例えば、パレットにキャスター装置が設けられていれば、搬送台車に載せ替えることなく、パレット自体を移動させて運搬することができる。しかしながら、運搬した場所でパレット上に製品を載置したまま保管する際や、トラックの荷台にパレットごと載せて搬送する際には、当該キャスター装置によりパレットが元の位置から動いてしまう等の不都合が生じる。そこで、車輪の張出状態と格納状態とをレバーによる手作業で切り替え可能なキャスター装置が知られているが、複数の車輪をその都度手作業で切り替えることは容易ではないという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、車輪の張出状態と格納状態とを容易に切り替えることができるキャスター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係るキャスター装置は、車輪と、前記車輪を回転自在に支える車軸と、前記車軸を移動可能に支持する車軸可動経路を有する車軸支持体と、を備える。前記車軸可動経路は、前記車輪が前記車軸支持体に格納される状態となる前記車軸の位置を決める格納位置決め部と、前記車輪が前記車軸支持体から張り出した状態となる前記車軸の位置を決める張出位置決め部と、を有している。そして、前記車軸支持体の上下動に応じて、前記車軸が前記車軸移動経路を前記格納位置決め部と前記張出位置決め部との間で交互に移動する。
【0007】
また、上記構成のキャスター装置において、前記車軸可動経路は、前記格納位置決め部及び前記張出位置決め部よりも下方に位置する第1の車軸待機部及び第2の車軸待機部を有し、前記格納位置決め部から前記第1の車軸待機部へ前記車軸を誘導する第1の誘導路と、前記第1の車軸待機部から前記張出位置決め部へ前記車軸を誘導する第2の誘導路と、前記車軸が、前記張出位置決め部から前記第1の車軸待機部へ移動しないように、前記第2の車軸待機部へ誘導する第3の誘導路と、前記第2の車軸待機部から前記格納位置決め部へ前記車軸を誘導する第4の誘導路とを有するように構成されることが好ましい。
【0008】
さらに、上記構成のキャスター装置において、前記車軸が前記格納位置決め部にある状態で、前記車軸支持体を上昇させると、前記車軸が前記第1の誘導路に沿って前記第1の車軸待機部へ移動し、前記車軸が前記第1の車軸待機部にある状態で、前記車軸支持体を下降させると、前記車軸が前記第2の誘導路に沿って前記張出位置決め部へ移動し、前記車軸が前記張出位置決め部にある状態で、前記車軸支持体を上昇させると、前記車軸が前記第3の誘導路に沿って前記第2の車軸待機部へ移動し、前記車軸が前記第2の車軸待機部にある状態で、前記車軸支持体を下降させると、前記車軸が前記第4の誘導路に沿って前記格納位置決め部に戻るように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るキャスター装置によれば、車軸支持体を上下動させるごとに、車輪が車軸支持体に格納された状態と、車輪が車軸支持体から張り出した状態とに、交互に切り替わる。このため、レバーによる手作業で、車輪の張出状態と格納状態とを切り替える従来のキャスター装置よりも、容易に車輪の張出状態と格納状態とを切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るキャスター装置を備えたパレットの斜視図である。
図2】上記キャスター装置の分解斜視図である。
図3】上記キャスター装置の正面図である。
図4】上記キャスター装置の車軸支持板を車輪側から見たときの正面図である。
図5】上記キャスター装置の昇降に伴って車軸可動経路の中を移動する車軸の位置を説明するための説明図である。
図6】上記キャスター装置の昇降に伴って車軸可動経路の中を移動する車軸の位置を説明するための説明図である。
図7】上記キャスター装置の車軸可動経路を形成するための構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。本発明の実施形態に係るキャスター装置100を備えたパレットPを図1に示しており、この図を参照してパレットPの構成について説明する。なお、説明の便宜上、図中に示す前後、左右および上下の矢印の方向を、前後方向、左右方向および上下方向として説明する。
【0012】
パレットPは、扁平な直方体形状に形成され、前後左右の各側面にはそれぞれフォークリフトの爪(フォーク)を挿入可能とする一対のフォーク挿入穴Pfが設けられている。パレットPの大きさは、例えば、縦横の幅が共に約1100[mm]、高さが約145[mm]である。パレットPの内部には、その上面に重量物を載置可能なように補強用の多数のリブ(図示省略)が形成されている。パレットPの上面には、例えば、製造工程で加工、塗装、熱処理等された製品(ワーク)が載置可能となっている。パレットPの下面には、前後左右の4箇所にそれぞれキャスター装置100が設けられている。
【0013】
キャスター装置100は、図2の分解斜視図に示すように、車輪130と、車輪130のベアリングBに固定され、車輪130を回転自在に支持する車軸120と、右側車軸支持板110R及び左側車軸支持板110Lによって構成され、車軸120を両側から挟むようにして支持する車軸支持体110と、車軸支持板取付用ネジ穴144を通して右側車軸支持板110R及び左側車軸支持板110Lの上面に穿設されたフランジ取付用ネジ穴114にネジ止めされるフランジ140とで構成されている。なお、図2に示したキャスター装置100は、フランジ140に穿設されたパレット取付用ネジ穴142を通してパレットPの下面に取り付けられている旋回機構(図示省略)にネジ止めされる。
【0014】
図2に示すように、右側車軸支持板110Rと左側車軸支持板110Lとが、車輪130を間に置いて互いに向き合う面には、各々、車軸120を両端から挟むように支持するための車軸可動経路が形成されている。ここで、右側車軸支持板110Rには右側車軸可動経路112Rが形成され、左側車軸支持板110Lには左側車軸可動経路112Lが形成されているが、図2には右側車軸可動経路112Rのみが図示されている。なお、以下では、右側車軸可動経路112Rと左側車軸可動経路112Lとを、まとめて言及する場合は「車軸可動経路112R,112L」と表記する。
【0015】
次に、車軸可動経路112R,112L内における車軸120の位置と、車軸支持体110に対する車輪130の位置との関係について図3を参照して説明する。図3は、図1に示したパレットPの前方からキャスター装置100を見たときの正面図である。この図に示すように、車軸120の両端は、右側車軸支持板110R及び左側車軸支持板110LがネジSCによってフランジ140にネジ止めされている状態で、各々、右側車軸可動経路112R及び左側車軸可動経路112Lに挟持されている。
【0016】
車軸120は、自重によって車軸可動経路112R,112Lの中を移動可能となっており(詳しくは後述する)、これにより車輪130は、図3において実線で示す張出状態と、一点鎖線で示す格納状態との2つの状態とに切り替わることが可能になっている。また、車輪130が格納状態にあるときは、車輪130と右側車軸支持板110R及び左側車軸支持板110Lの下面(車軸支持体110の接地面GP)とが共に接地しているが、キャスター装置100に掛かる荷重(例えばパレットPやパレットPに載置された荷物などの重さ)は車軸120には付加されず、車軸支持体110の接地面GPに付加されるようになっている。一方、車輪130が張出状態にあるときは、車輪130のみが接地し、キャスター装置100に掛かる荷重は、車軸120に対してのみ付加される。
【0017】
次に、車軸可動経路112R,112L内で車軸120が移動し得る位置について図4を参照して説明する。図4は、本実施形態の車軸支持板を車輪130側から見たときの図であり、図4(a)は右側車軸支持板110R、図4(b)は左側車軸支持板110Lを図示している。この図における上下方向および前後方向は、図1の上下方向および前後方向に準じている。したがって、この図において、前後方向は、右側車軸支持板110Rについては、紙面左方向が前方、紙面右方向が後方となる。これに対して、左側車軸支持板110Lについては、紙面右方向が前方、紙面左方向が後方となる。なお、上下方向については、車軸支持板110L及び110Rとも、紙面上方が上方向となり、紙面下方が下方向となる。
【0018】
また、図4においてハッチングで示す部分は、右側車軸支持板110R及び左側車軸支持板110Lの表面を示し、白抜きの部分は、右側車軸可動経路112R及び左側車軸可動経路112Lを示している。これらの車軸可動経路は、右側車軸可動経路112R及び左側車軸可動経路112Lの内周壁面IWと、外周壁面OWと、内周壁面IW及び外周壁面OWに挟まれた底面とによって形成された溝になっている。また、図4に示すように、右側車軸可動経路112R及び左側車軸可動経路112Lは、互いに面対称の形状になっている。
【0019】
本実施形態では、車軸支持体110(延いてはキャスター装置100)が上昇及び下降するごとに、車輪130が、図3に示した張出状態と格納状態との2つの状態とに切り替わる。この過程で、車軸可動経路112R,112L内における車軸120は、格納位置決め部P1、第1の車軸待機部P2、張出位置決め部P3、第2の車軸待機部P4という4つの位置を循環的に移動している。
【0020】
図4において、車輪130が格納状態(図3の一点鎖線の状態)のとき、車軸120は
格納位置決め部P1に位置している。格納位置決め部P1は、車軸支持体110の接地面GPから上方に最も離れた位置にある。格納位置決め部P1に車軸120が位置しているときは、車軸120と、車軸可動経路112R,112Lの各外周壁OWとの間に隙間ができている。このため、車輪130が格納状態にあるときは、キャスター装置100に掛かる荷重は車軸120には付加されず、車軸支持体110の接地面GPに付加されることになる。
【0021】
第1の車軸待機部P2は、車軸支持体110の接地面GPに最も近い位置に設けられており、格納位置決め部P1から第1の車軸待機部P2への車軸120の移動は、第1の誘導路G1によって誘導される。第1の誘導路G1は、車軸可動経路112R,112Lの各外周壁面OWにおいて、格納位置決め部P1から垂直に下がり、曲面を経て第1の車軸待機部P2まで続く下向きの傾斜面の部分に相当する。そして、車軸120は、第1の車軸待機部P2において、上方へ切り立つ外周壁面OWの段差によって受け止められる。
【0022】
車輪130が張出状態(図3の実線の状態)のとき、車軸120は張出位置決め部P3に位置し、車軸120に掛かる荷重は、張出位置決め部P3で支えられることになる。したがって、キャスター装置100に付加される荷重が、張出位置決め部P3にとどまっている状態の車軸120に集中するように、右側車軸支持板110R及び左側車軸支持板110Lに対するフランジ140の取付位置や、右側車軸支持板110R及び左側車軸支持板110Lの輪郭形状を定めてもよい。例えば、図4に示した右側車軸支持板110R及び左側車軸支持板110Lの輪郭形状は略L字形であるが、これを略T字形(より詳細には「T」の字を上下反転させた形状)にしてもよい。
【0023】
張出位置決め部P3は、右側車軸可動経路112R及び左側車軸可動経路112Lの上下方向において、格納位置決め部P1と第1の車軸待機部P2との間に位置している。第1の車軸待機部P2から張出位置決め部P3への車軸120の移動は、第2の誘導路G2によって誘導される。第2の誘導路G2は、車軸可動経路112R,112Lの各内周壁面IWにおいて、第1の車軸待機部P2の直上の位置から張出位置決め部P3まで続く上向きの傾斜面の部分に相当する。
【0024】
張出位置決め部P3は、内周壁面IWにおいて、第2の誘導路G2との接続位置からさらに上方へ窪んでいるため、第2の誘導路G2に沿って移動する車軸120を受け止めることができる。また、この窪みによって車軸120の位置が保持されるため、キャスター装置100を動かしたときに、安定してパレットPを移動させることができる。
【0025】
第2の車軸待機部P4は、右側車軸可動経路112R及び左側車軸可動経路112Lの上下方向において、少なくとも張出位置決め部P3よりも下方に設けられており、張出位置決め部P3から第2の車軸待機部P4への車軸120の移動は、第3の誘導路G3によって誘導される。第3の誘導路G3は、車軸可動経路112R,112Lの各外周壁面OWにおいて、張出位置決め部P3の直下から第2の車軸待機部P4まで続く下向きの傾斜面の部分に相当する。そして、車軸120は、第2の車軸待機部P4において、上方に向かって垂直に切り立つ外周壁面OWによって受け止められる。
【0026】
なお、第2の車軸待機部P4から格納位置決め部P1への車軸120の移動は、第4の誘導路G4によって誘導される。第4の誘導路G4は、車軸可動経路112R,112Lの各外周壁面OWにおいて、第2の車軸待機部P4から上方へ垂直に切り立ち、曲面を経て格納位置決め部P1まで続く上向きの傾斜面の部分に相当する。そして、車軸120は、格納位置決め部P1において、垂直に下がっている外周壁面OWの壁面によって受け止められる。
【0027】
次に、図5及び図6を参照して、キャスター装置100の上下動に伴う車軸120の動きについて説明する。なお、この図においては、右側車軸支持板110R(より詳細には右側車軸支持板110Rの車輪130側の面)及び車軸120のみを図示している。また、以下で説明する車軸120の移動は、右側車軸可動経路112Rを基準とした場合の移動であって、実際には車軸支持体110(延いてはキャスター装置100)が上下動しているときに、車軸120がその位置でとどまっている場面や、水平方向に動いている場面もある。
【0028】
まず、図5(a)に、車輪130が格納状態(図3の一点鎖線の状態)のときの車軸120の位置を示す。この状態では、車軸支持体110の接地面GP(図3参照)が地面Gに接地しており、車軸120は右側車軸可動経路112R内の格納位置決め部P1に位置している。この状態から、例えばキャスター装置100が取り付けられたパレットPがフォークリフトなどによって持ち上げられ、キャスター装置100が上方へ移動すると、図5(b)に示すように、車軸120は、車輪130の自重によって車軸可動経路112R,112L内を第1の誘導路G1(図4参照)に沿って下方へ移動し、やがて第1の車軸待機部P2でその移動が受け止められる。このとき、例えばパレットPが傾斜地に停止していたために、又はキャスター装置100が上昇する際に振動したために、車軸120が図5(b)中、左方向にブレてしまったとする。そのような場合であっても、車軸120が内周壁面IWの傾斜面に当接して図5(b)に示す破線の矢印に沿って第1の車軸待機部P2の方向へ移動することになる。
【0029】
そして、車軸120が第1の車軸待機部P2に位置しているときに、パレットPが降ろされると、キャスター装置100が下方へ移動して車輪130が地面Gに接し、さらにキャスター装置100が下方へ移動すると、図5(c)に示すように、車軸120は第2の誘導路G2(図4参照)に当接し、第2の誘導路G2に沿って張出位置決め部P3へと移動する。そして、張出位置決め部P3の窪みによって車軸120の移動が受け止められることで、車輪130の張出状態(図3参照)が維持され、車輪130によるパレットPの移動が可能となる。このとき、例えばパレットPが傾斜地に停止していたために、又はキャスター装置100が下降する際に振動したために、車軸120が図5(c)中、右方向にブレてしまったとする。そのような場合であっても、車軸120が内周壁面IWの傾斜面に当接して図5(c)に示す破線の矢印に沿って張出位置決め部P3の方向へ移動することになる。
【0030】
次に、車軸120が張出位置決め部P3に位置しているときに、キャスター装置100が上方へ移動すると、図6(a)に示すように、車軸120は、車輪130の自重によって右側車軸可動経路112R内を下方へ移動し、第3の誘導路G3(図4参照)に当接する。そして、さらにキャスター装置100が上方へ移動すると、車軸120は、第3の誘導路G3に沿って第2の車軸待機部P4へと移動し、第2の車軸待機部P4において、垂直に切り立つ外周壁面OWによって車軸120の移動が受け止められる。このとき、例えばパレットPが傾斜地に停止していたために、又はキャスター装置100が上昇する際に振動したために、車軸120が図6(a)中、右方向にブレてしまったとする。そのような場合であっても、車軸120が外周壁面OWの傾斜面に当接して図6(a)に示す破線の矢印に沿って第2の車軸待機部P4の方向へ移動することになる。
【0031】
そして、車軸120が第2の車軸待機部P4に位置しているときに、パレットPが降ろされ、キャスター装置100が下方へ移動して車輪130が地面Gに接し、さらにキャスター装置100が下方へ移動すると、図6(b)に示すように、車軸120は、第4の誘導路G4(図4参照)に沿って上方へ移動する。そして、車軸120は、第4の誘導路G4の傾斜面に沿って格納位置決め部P1へと移動し、格納位置決め部P1において垂直に下がる外周壁面OWによってその移動が受け止められる。このとき、例えばパレットPが
傾斜地に停止していたために、又はキャスター装置100が下降する際に振動したために、車軸120が図6(b)中、右方向にブレてしまったとする。そのような場合であっても、車軸120が内周壁面IWの傾斜面に当接して図6(b)に示す破線の矢印に沿って格納位置決め部P1の方向へ移動することになる。
【0032】
なお、車軸120が張出位置決め部P3にある状態で、キャスター装置100を上昇させたときに、仮に車軸120が第1の車軸待機部P2に戻ってしまったとすると、そのままキャスター装置100を下降させたときに、車軸120は再び張出位置決め部P3へ移動してしまう。したがって、車軸120が格納位置決め部P1まで戻れなくなってしまうのを避けるために、車軸120が第1の車軸待機部P2に戻らず、第2の車軸待機部P4へ移動するように、第3の誘導路G3によって誘導している。
【0033】
以上のように、車軸120が格納位置決め部P1に位置しているときに、キャスター装置100を一旦上昇させてから下降させると、車軸120が格納位置決め部P1→第1の車軸待機部P2→張出位置決め部P3と移動して、車輪130を格納状態から張出状態に遷移させることができる。次いで、車軸120が張出位置決め部P3に位置しているときに、キャスター装置100を一旦上昇させてから下降させると、車軸120が張出位置決め部P3→第2の車軸待機部P4→格納位置決め部P1と移動して、車輪130を張出状態から格納状態に遷移させることができる。
【0034】
なお、上述した実施形態では、車軸支持板における車軸可動経路(右側車軸可動経路112R及び左側車軸可動経路112L)を、図4において白抜きで示す形状に削ることで形成していたが、図7に示す構成によって車軸可動経路を形成してもよい。図7は、車軸可動経路を形成するための構成を示す分解斜視図であり、この図において、ハッチングで示す面を表面といい、ハッチングで示す面の裏側の面を裏面という。
【0035】
まず、図7(a)に示すように、車軸支持板210の表面に、車軸可動経路112Rの外周壁面OWの形状を有する開口OPを開ける。右側車軸支持板を作製する場合は、車軸支持板210の裏面に、車軸支持板210と同じ外形を有する塞ぎ板222の表面を、ネジ止め又は接着剤などで固定する。そして、塞ぎ板220によって一方の面が塞がれた開口OP内に、車軸可動経路112Rの内周壁面IWの形状を有する内周壁ブロック体220を配置する。このとき、開口OPから臨む塞ぎ板220の表面に対して、内周壁ブロック体220の裏面が接するように、かつ、車軸支持板210の外周壁面OWに対して、図4(a)において白抜きで示した形状を成すように、内周壁ブロック体220を配置する。そのように配置した内周壁ブロック体220を、ネジ止め又は接着剤などによって塞ぎ板222に固定する。
【0036】
一方、左側車軸支持板210Lを作製する場合は、車軸支持板210の表面に、塞ぎ板222の裏面を、ネジ止め又は接着剤などで固定する。そして、開口OPから臨む塞ぎ板220の裏面に対して、内周壁ブロック体220の表面が接するように、かつ、車軸支持板210の外周壁面OWに対して、図4(b)において白抜きで示した形状を成すように、内周壁ブロック体220を配置する。そのように配置した内周壁ブロック体220を、ネジ止め又は接着剤などによって塞ぎ板222に固定する。
【0037】
次に、図7(b)に示した構成は、図7(a)に示した車軸支持板210(ただし開口OPを設けていない状態)の表面(又は裏面)において、図4(a)に示した右側車軸可動経路(又は図4(b)に示した左側車軸可動経路)の外周壁面OWの位置に、その形状を成す溝GRを彫り、右側車軸支持板210R(又は左側車軸支持板210L)を形成する。そして、その溝GRの中に内周壁ブロック体220の裏面(又は表面)を固定することで、右側車軸支持板210R(又は左側車軸支持板210L)が完成する。このように
構成することで、塞ぎ板222を省略し、右側車軸支持板210R及び左側車軸支持板210Lを作成する際に、内周壁ブロック体220を共通化することができる。
【0038】
さらに、図7(c)に示した構成は、内周壁ブロック体220の厚さに塞ぎ板222の厚さを加えた板厚を有する塞ぎ板222の表面(又は裏面)から、図4(a)に示した右側車軸可動経路(又は図4(b)に示した左側車軸可動経路)の内周壁面IWの位置に、その形状を成す突出部PRを削り出して、右側塞ぎ板222R(又は左側塞ぎ板222L)を作り出す。そして、右側車軸支持板210Rを作成するときは、車軸支持板210の裏面から開口OP内に、右側塞ぎ板222Rの突出部PRが収まるように右側塞ぎ板222Rを固定する。これに対して左側車軸支持板210Lを作成するときは、車軸支持板210の表面から開口OP内に、左側塞ぎ板222Lの突出部PRが収まるように左側塞ぎ板222Lを固定する。このように構成することで内周壁ブロック体220を省略し、車軸支持体210を共通化することができる。なお、鍛造により、車軸支持板にフランジと可動経路とを製造する構成でも良い。
【0039】
このように、本実施形態のキャスター装置100によれば、フォークリフト等によってパレットPを持ち上げて降ろす度に、車輪130を張出状態と格納状態とに自動的に切り替えることができる。このため、従来のキャスター装置のように、車輪の張出状態と格納状態とを切り替える際のレバーによる切替作業の手間を省くことができる。また、従来のパレットのように搬送台車に載せ替える作業が必要なく、キャスター装置100によりパレットP自体を移動させてパレット上の製品を運搬することができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。上述の実施形態では、本発明に係るキャスター装置100をパレットPに備えた一例について説明したが、本発明は、製品を運搬するために用いられる種々の運搬用部材(例えば、編カゴ等)に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
100 キャスター装置
110 車軸支持体
110L 左側車軸支持板
110R 右側車軸支持板
112L 左側車軸可動経路
112R 右側車軸可動経路
114 フランジ取付用ねじ穴
120 車軸
130 車輪
140 フランジ
142 パレット取付用ねじ穴
144 車軸支持体取付用ねじ穴
B ベアリング
P パレット
Pf フォーク挿入穴
P1 格納位置決め部
P2 第1の車軸待機部
P3 張出位置決め部
P4 第2の車軸待機部
G1 第1の誘導路
G2 第2の誘導路
G3 第3の誘導路
G4 第4の誘導路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7