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特開2021-91538搬送装置、搬送装置において加振モータの設置位置を定める方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-91538(P2021-91538A)
(43)【公開日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送装置において加振モータの設置位置を定める方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 27/20 20060101AFI20210521BHJP
【FI】
   B65G27/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-224415(P2019-224415)
(22)【出願日】2019年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】安達 健太
(72)【発明者】
【氏名】竹本 皓樹
【テーマコード(参考)】
3F037
【Fターム(参考)】
3F037AA02
3F037CA08
3F037CB06
(57)【要約】
【課題】トラフのピッチング振動を抑制した搬送装置を提供する。
【解決手段】トラフ2に対する加振力を発生する第1加振モータ3と、前記トラフ2に対する前記第1加振モータ3とは異なる加振力を発生する第2加振モータ4と、前記トラフ2の幅方向視にて、前記第1加振モータ3が有する回転軸31の回転中心と前記第2加振モータ4が有する回転軸41の回転中心とを結ぶ、モータ間基準線L1が、搬送装置1において振動する部分の重心Gと仮想的に設定した前記トラフ2の加振点Fとを結ぶ線に対して直交して前記加振点Fを通る加振基準線L2に対し、鋭角または鈍角で交差する搬送装置1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラフを楕円振動させることで、前記トラフ上の被搬送物を一方向に搬送する搬送装置において、
前記トラフの幅方向に延びる回転軸及び当該回転軸に設けられた偏心錘が回転することで、前記トラフに対する加振力を発生する第1加振モータと、
前記トラフの幅方向に延びる回転軸及び当該回転軸に設けられた偏心錘が回転することで、前記トラフに対する前記第1加振モータとは異なる加振力を発生する第2加振モータと、
前記トラフの幅方向視にて、前記第1加振モータが有する前記回転軸の回転中心と前記第2加振モータが有する前記回転軸の回転中心とを結ぶ、モータ間基準線が、前記搬送装置において振動する部分の重心と仮想的に設定した前記トラフの加振点とを結ぶ線に対して直交して前記加振点を通る加振基準線に対し、鋭角または鈍角で交差することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記第1加振モータと前記第2加振モータとが前記トラフを挟んで上下に位置することを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の搬送装置で、前記第1加振モータ及び前記第2加振モータに関し、加振モータの設置位置を定める方法において、
前記角度を設定するに際し、前記第1加振モータが有する前記回転軸の回転中心と前記加振点との前記モータ間基準線上の距離、及び、前記第2加振モータが有する前記回転軸の回転中心と前記加振点との前記モータ間基準線上の距離を、前記設定前後で不変とすることを特徴とする、加振モータの設置位置を定める方法。
【請求項4】
前記搬送装置が、前記第1加振モータ及び前記第2加振モータの加振力により振動する振動部と、前記振動部を支持する基台と、前記振動部と前記基台とを接続し、前記振動部から前記基台に伝わる振動を吸収する防振接続部と、を有し、
前記角度の設定後、前記防振接続部を前記加振点に対して、前記被搬送物の搬送方向で対称に配置させることを特徴とする、請求項3に記載の加振モータの設置位置を定める方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路であるトラフを楕円振動させることで、前記トラフ上の被搬送物を一方向に搬送する搬送装置、及び、搬送装置において加振モータの設置位置を定める方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラフを楕円振動させる搬送装置として、例えば、特許文献1に記載の加振装置を備えた搬送装置がある。特許文献1に記載の加振装置では、回転中心から重心までの距離に質量を乗じた値が異なる一対の錘を各々逆回転させることで、各錘により異なる遠心力を生じさせて楕円振動を得ている。楕円振動を用いることで、直線振動を用いるよりも被搬送物の搬送速度を増大できることが知られている。
【0003】
ところが、楕円振動のうち短軸成分はトラフに対してピッチング振動を生じさせる。トラフ上の被搬送物は、ピッチング振動を受けるとトラフから受ける鉛直方向の力の大きさが変化してしまう。これにより搬送方向への搬送が阻害され、搬送能力が低下してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−354714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、トラフのピッチング振動を抑制した搬送装置、及び、搬送装置において加振モータの設置位置を定める方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な構成の一つは、トラフを楕円振動させることで、前記トラフ上の被搬送物を一方向に搬送する搬送装置において、前記トラフの幅方向に延びる回転軸及び当該回転軸に設けられた偏心錘が回転することで、前記トラフに対する加振力を発生する第1加振モータと、前記トラフの幅方向に延びる回転軸及び当該回転軸に設けられた偏心錘が回転することで、前記トラフに対する前記第1加振モータとは異なる加振力を発生する第2加振モータと、前記トラフの幅方向視にて、前記第1加振モータが有する前記回転軸の回転中心と前記第2加振モータが有する前記回転軸の回転中心とを結ぶ、モータ間基準線が、前記搬送装置において振動する部分の重心と仮想的に設定した前記トラフの加振点とを結ぶ線に対して直交して前記加振点を通る加振基準線に対し、鋭角または鈍角で交差することを特徴とする搬送装置である。
【0007】
この構成によれば、モータ間基準線が加振基準線に対し、鋭角または鈍角で交差するように設定される。この設定により、搬送装置における重心の位置において、トラフにピッチング振動を生じさせるモーメントを低減できる。
【0008】
また、前記第1加振モータと前記第2加振モータとが前記トラフを挟んで上下に位置することができる。
【0009】
この構成によれば、目標の楕円振動を実現するための重心と加振点の関係を設定しやすい。
【0010】
そして本発明の例示的な構成の一つは、前記搬送装置で、前記第1加振モータ及び前記第2加振モータに関し、加振モータの設置位置を定める方法において、前記角度を設定するに際し、前記第1加振モータが有する前記回転軸の回転中心と前記加振点との前記モータ間基準線上の距離、及び、前記第2加振モータが有する前記回転軸の回転中心と前記加振点との前記モータ間基準線上の距離を、前記設定前後で不変とすることを特徴とする、加振モータの設置位置を定める方法である。
【0011】
この構成によれば、第1加振モータが有する前記回転軸の回転中心と前記加振点との距離、及び、前記第2加振モータが有する前記回転軸の回転中心と前記加振点との距離が前記設定前後で不変であるため、試行錯誤的に調整を行っていく場合であっても、前記各距離を調整のたびに変動させることに比べると、各加振モータの位置を適切な位置に収束させる作業を早くでき、トラフにピッチング振動を生じさせるモーメントを低減するための調整が容易である。
【0012】
また、前記搬送装置が、前記第1加振モータ及び前記第2加振モータの加振力により振動する振動部と、前記振動部を支持する基台と、前記振動部と前記基台とを接続し、前記振動部から前記基台に伝わる振動を吸収する防振接続部と、を有し、前記角度の設定後、前記防振接続部を前記加振点に対して、前記被搬送物の搬送方向で対称に配置させることができる。
【0013】
この構成によれば、防振接続部が加振点に対して対称位置に配置されたことで、加振と防振のバランスが取れるため、前記交差角度の設定とは別に、ピッチング振動を有効に低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、トラフに生じるモーメントを低減することにより、トラフのピッチング振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送装置の基本構成を示す側面図である(架台は図示しない)。
図2】前記搬送装置において、第1加振モータ、第2加振モータの配置要領を示す、要部を概略的に示した側面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る搬送装置の基本構成を示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る搬送装置との対比のため、ピッチング振動が生じるような構成を示す、要部を概略的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。
【0017】
本実施形態の搬送装置1の基本構成を図1に示す。この搬送装置1は、主に、トラフ2、第1加振モータ3、第2加振モータ4を備える。
【0018】
トラフ2は、例えば板状体が用いられており、上方が開口するように縦断面形状が横倒しコの字状とされていて、幅方向(図1の紙面表裏方向)の寸法に対して長手方向の寸法が大きく形成されている。図示しない被搬送物(例えば、砂糖等の粉粒体であるがこれに限られない)は、このトラフ2の上面21に載せられて長手方向の一方向(図示左方から右方に向かう方向)に搬送される。つまり、このトラフ2の上面21は搬送面として機能する。本実施形態のトラフ2は、振動する振動部を支持する基台としての、図示しない架台に吊り下げ支持されていて、水平方向に設けられている。なおトラフ2は、搬送方向で被搬送物の搬送が可能な範囲で勾配(上り勾配または下り勾配)を有していてもよい。架台からの吊り下げ部分には、振動部から基台(架台)に伝わる振動を吸収する防振接続部としての防振ばね5が設けられていて、加振源(第1加振モータ3、第2加振モータ4)の加振力が有効にトラフ2に伝達され、トラフ2に楕円振動を生じる。本実施形態において、防振ばね5はトラフ2の下部を弾性支持している。防振ばね5には、共振周波数が搬送装置1の駆動周波数よりも十分に低い、低剛性のばねが用いられている。また、防振ばね5は、トラフ2の加振点Fに対して、被搬送物の搬送方向で対称に配置されている。
【0019】
第1加振モータ3はトラフ2に対して上方に固定されている。具体的に、第1加振モータ3はトラフ2の幅方向両端に設けられた上ブラケット6に固定されていて、トラフ2において被搬送物が搬送されるラインを跨ぐように設けられている。上ブラケット6により、第1加振モータ3の加振力がトラフ2に伝達される。第1加振モータ3が有する回転軸31(図2に示した黒丸部分に相当)はトラフ2の幅方向に延びている。回転軸31には図示しない偏心錘が一体的に設けられている。偏心錘は、回転軸31に固定されていて回転軸31と共に回転する。偏心錘は公知の構成を有し(第2加振モータ4の偏心錘も同様)、例えば特開平4−354714号公報(特許文献1)に示された略半円形のように、回転対称ではない形状とされている。この形状により、偏心錘の重心は、回転軸31の軸心から外れた位置となる。このため、第1加振モータ3の回転軸31が回転することで遠心力が発生する。これがトラフ2に対する加振力となる。
【0020】
第2加振モータ4はトラフ2に対して下方に固定されている。つまり、第2加振モータ4は第1加振モータ3とはトラフ2の反対側(トラフ2を挟んだ反対側)に設けられている。具体的に、第2加振モータ4は、下ブラケット7を介して、トラフ2の下方に吊り下げられている。下ブラケット7により、第2加振モータ4の加振力がトラフ2に伝達される。このように、第1加振モータ3と第2加振モータ4とを、トラフ2を挟んで上下に位置させることにより、目標の楕円振動を実現するための重心Gと加振点Fの関係を設定しやすい。本実施形態の第2加振モータ4は、第1加振モータ3よりも被搬送物の搬送方向で下流側(図示右側)に設けられている。このため、図2に示すように、第1加振モータ3が有する回転軸31の回転中心と第2加振モータ4が有する回転軸41の回転中心とを結ぶ線(モータ間基準線L1)は、左上から右下に向かう直線となる。ただし、第1加振モータ3と第2加振モータ4の位置関係は、トラフ2を挟んで上下に位置する関係や、モータ間基準線L1が前記直線になる関係に限定されない。
【0021】
また、第1加振モータ3及び第2加振モータ4の組が、トラフ2に対してトラフ2の長手方向(本実施形態では水平方向)に移動可能とされている。これは、後述する微調整作業の際に加振点Fを移動させるためである。
【0022】
第2加振モータ4は第1加振モータ3と、公知の現象である「引き込み現象」により同期して回転する。第2加振モータ4の回転方向M4は第1加振モータ3の回転方向M3と逆方向に設定されている。第1加振モータ3と同じく、第2加振モータ4が有する回転軸41(図2に示した黒丸部分に相当)はトラフ2の幅方向に延びている。回転軸41には第1加振モータ3と同じく、図示しない偏心錘が一体的に設けられている。ただし、第2加振モータ4の偏心錘は、例えば特開平4−354714号公報(特許文献1)に示されたように、第1加振モータ3の偏心錘と異なる形状とされている。よってこの偏心錘は、重量と重心位置の少なくとも一つが第1加振モータ3の偏心錘と異なっている。第1加振モータ3と同じく、第2加振モータ4の回転軸41が回転することで遠心力が発生する。これがトラフ2に対する、第1加振モータ3とは異なる加振力となる。なお、図2図4では、各加振モータ3,4を示す円に大小をつけることで、これを模式的に表現している。
【0023】
このように各加振モータ3,4(詳しくは各偏心錘)が設定されたことにより、側面視(トラフ2の幅方向視)にて、搬送装置1においてトラフ2を含んで振動する部分の重心Gと加振点Fとを結ぶ直線に対し、直交する方向に配置された、各加振モータ3,4による加振力が相殺されないことになるから、各加振モータ3,4の回転により、図4に示すように、加振点Fにおいて楕円軌跡の加振力Fx,Fyが発生する。楕円軌跡の方向は、図4に示した直線であるモータ間基準線L1に沿う方向が短軸方向で、これと直交する方向が長軸方向である。
【0024】
しかし、図4に示した各加振モータ3,4の配置では、楕円振動のうち短軸成分の加振力Fyがトラフ2に対してピッチング振動を生じさせる。この短軸成分の加振力Fyは、近似的には正弦波振動である。ピッチング振動とはすなわち、トラフ2に重心Gまわりで一方向(時計回り)と他方向(反時計回り)に交互に回転する挙動である。この挙動(ピッチング振動)により、搬送能力の低下をまねくことがある。このピッチング振動への対策として、本実施形態の搬送装置1では、図4に示した状態を図2に示した状態に変化させるようにして各加振モータ3,4を配置している。なお、図2図4とでは、対応する部分に同一の符号を付して示している。
【0025】
各加振モータ3,4の配置に際しては、まず、目標とする楕円振動軌跡の長軸側の振幅より、各加振モータ3,4の加振力の和を決定する。また、目標とする楕円振動軌跡の短軸側の振幅より、各加振モータ3,4の加振力の差を決定する。これらから、各加振モータ3,4の必要な加振力を決定できる。従って、各加振モータ3,4の出力及び偏心錘の組み合わせを決定できる。
【0026】
次に、図2に示すように、仮想的にトラフ2の加振点F(設計上の加振点F)を設定する。搬送装置1において振動する部分である振動部(具体的には、防振ばね5に吊り下げられた「一かたまり」の部分)の重心Gと加振点Fとの距離rは任意に設定する。また、重心Gと加振点Fとを結ぶ直線の角度は、目標とする振動角α(すなわち、楕円軌跡における長軸方向の、水平線LLに対する角度)に一致させる。
【0027】
本実施形態においては、トラフ2の幅方向視(図2に示された状態)にて、第1加振モータ3が有する回転軸31の回転中心と第2加振モータ4が有する回転軸41の回転中心とを結ぶ線をモータ間基準線L1とする。そして、重心Gと仮想的に設定したトラフ2の加振点Fとを結ぶ直線L0に対して直交して加振点Fを通る線を加振基準線L2とする。モータ間基準線L1を、加振基準線L2に対し、鋭角または鈍角、つまり、90度を除く角度で交差するよう設定する。
【0028】
前記交差に係る交差角度は以下の関係式をもって設定される。

sinβ=r(r−r)/2r

β…モータ間基準線L1の加振基準線L2に対する交差角度
r…重心Gと仮想的に設定したトラフ2の加振点Fとの距離
…第1加振モータ3が有する回転軸31の回転中心と仮想的に設定したトラフ2の加振点Fとの距離
…第2加振モータ4が有する回転軸41の回転中心と仮想的に設定したトラフ2の加振点Fとの距離

なお、三つの変数(r、r、r)に対して関係式が一つであるため、計算は試行錯誤的になされる必要がある。また、rとrの比率は、各加振モータ3,4の回転により生じる遠心力の大小比の逆数となっている。
【0029】
以上、モータ間基準線L1が加振基準線L2に対し、90度を除く角度で交差するような、加振モータ3,4の配置位置の設定方法によると、図2に示すように、搬送装置1における重心Gの位置において、モータ間基準線L1が加振基準線L2と一致(交差角度0度)していた際(図4参照)に楕円振動のうち短軸成分により生じていた回転モーメントを釣り合わせる(相殺させる)ことができる。従って、重心Gの位置でトラフ2にピッチング振動を生じさせるモーメントを低減でき、この結果、搬送装置1において振動する部分に重心Gまわりの回転力がかかりにくくなることから、トラフ2のピッチング振動を抑制できる。ピッチング振動を抑制することで、被搬送物に楕円振動を有効に伝達できるから、搬送速度を増大できて搬送能力を向上できる。また、搬送が安定的になされ、被搬送物に搬送に要する以外の外力がかかりにくくなるため、損傷を生じさせにくい。また、搬送能力を低下させずにトラフ2の幅方向寸法を縮小できるため、搬送装置1をコンパクト化できる。
【0030】
本実施形態では、加振点Fにおいては楕円振動を実現させつつ、重心Gにおいてはモーメントの釣り合いをなすことができるため、搬送能力の低下を抑制した楕円振動をトラフ2に生じさせられる。また本実施形態では、基本的に、モータ間基準線L1を加振基準線L2に対し、加振点Fまわりに周方向にずらすだけ(図4に示す状態から図2に示す状態に変化させるだけ)でトラフ2のピッチング振動を抑制できることから、他の方法に比べ、ピッチング振動への対策が容易である(ただし、十分な対策のためには、後述する微調整も必要である)。
【0031】
ここで、前記交差角度βを設定するに際し、第1加振モータ3が有する回転軸31の回転中心と加振点Fとのモータ間基準線L1上の距離(前記r)、及び、第2加振モータ4が有する回転軸41の回転中心と加振点Fとのモータ間基準線L1上の距離(前記r)を、前記設定前後で不変とする。こうして交差角度βを設定することで、ピッチング振動への対策に係る作業が、一次的には、モータ間基準線L1を、加振点Fを回転中心として交差角度β分、周方向に回転させる作業だけで可能である。
【0032】
ただし、ピッチング振動への対策を十分になすためには、前記一次的な作業であるモータ間基準線L1の回転作業の後に、二次的な作業である微調整作業が必要であることが多い。なお、設計段階でモータ位置の設定が完全にできていれば、現物の搬送装置1において微調整作業を行う必要はない。つまり、微調整作業は本発明において必須ではない。微調整作業が必要になることの理由は、モータ間基準線L1を回転させるに伴い、各加振モータ3,4の位置も変わってしまうので、重心Gの位置が変化し、振動角αが設計の目標値からずれるからである。微調整作業は、交差角度βを設定することで重心Gの位置が変わったことに対応し、振動角α一定の条件のもとで各加振モータ3,4の位置をずらす(例えばトラフ2の長手方向に移動させる)ことで補正をかけ、前記関係式が満たされるようにする作業である。例えば、各加振モータ3,4の位置を少しずつ試行錯誤的にずらしていくことや、連立方程式を立てて計算することにより補正をかけることが考えられるが、この微調整作業は、その他に種々の手法をとることができる。
【0033】
なお、前記微調整作業は、加振モータ3,4の位置関係(具体的には、前記三つの変数(r、r、r))を変えないで行われる。こうすることで、繰り返しを伴う微調整作業のように、試行錯誤的に調整を行っていく場合であっても、前記各変数を調整のたびに変動させることに比べると、各加振モータの位置を適切な位置に収束させる作業を早くできるとのメリットがある。
【0034】
前記微調整作業の後、防振ばね5を定まった加振点Fに対して、被搬送物の搬送方向で対称に配置させる。こうすることで、加振と防振のバランスが取れるため、前記交差角度βの設定とは別に(本実施形態では追加的に)、ピッチング振動を有効に低減できる。
【0035】
以上のように本実施形態では、トラフ2にピッチング振動を生じさせるモーメントを低減するための調整が容易である。
【0036】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0037】
搬送装置1は前記実施形態のような吊り下げ式ではなく、例えば、図3に示すような、基台としての架台8に対し、防振接続部としての防振ばねまたは防振ゴムを介して下方から支持される据え置き式であってもよい。
【0038】
また、重心Gの位置を調整するため、搬送装置1にバランスウェイトを配置してもよい。
【0039】
また、搬送装置1の駆動周波数が共振周波数よりも低い構成であってもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、第2加振モータ4は第1加振モータ3とはトラフ2の反対側(トラフ2を挟んだ反対側)に設けられていた。しかし、第1加振モータ3、第2加振モータ4のトラフ2に対する位置関係はこれに限定されない。第1加振モータ3及び第2加振モータ4の両方がトラフ2の上方または下方に設けられることもできる。
【0041】
また、第1加振モータ3と第2加振モータ4の加振力の大小関係は特に限定されない。また、加振モータを3台以上使用することもできる。
【0042】
また、前記実施形態では、第1加振モータ3及び第2加振モータ4の組を、トラフ2に対してトラフ2の長手方向(水平方向)に移動可能に設けていた。しかしこれに限定されず、第1加振モータ3または第2加振モータ4を、トラフ2に接近離反する方向(上下方向)に移動可能に設けることもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 搬送装置
2 トラフ
21 トラフの上面(搬送面)
3 第1加振モータ
31 第1加振モータの回転軸
4 第2加振モータ
41 第2加振モータの回転軸
5 防振接続部、防振ばね
8 基台、架台
F トラフの加振点
G 搬送装置の振動部分の重心
L1 モータ間基準線
L2 加振基準線
β モータ間基準線と加振基準線との交差角度
図1
図2
図3
図4