【実施例】
【0138】
以下は、本発明の非限定的な化合物(その固体形態を含む)の合成を例示する。
実験は、全般的に、特定には酸素または水分に高感度を有する試薬または中間体が採用された場合、不活性雰囲気(窒素またはアルゴン)下で行われた。市販の溶媒および試薬は、全般的に、それ以上精製せずに使用した。必要に応じて、無水溶媒が採用され、全般的に、アクロスオーガニクス(Acros Organics)からのアクロシール(AcroSeal)(登録商標)製品、シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)からのアルドリッチ(Aldrich)(登録商標)シュア/シール(Sure/Seal)(商標)、またはEMDケミカルズ(EMD Chemicals)からのDriSolv(登録商標)製品が採用された。他のケースにおいて、市販の溶媒を、以下の水に関するQC基準が達成されるまで4Åの分子篩を充填したカラムに通過させた:a)ジクロロメタン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、およびテトラヒドロフランが<100ppm;b)メタノール、エタノール、1,4−ジオキサン、およびジイソプロピルアミンが<180ppm。極めて高感度の反応の場合、溶媒をさらに金属ナトリウム、水素化カルシウム、または分子篩で処理し、使用直前に蒸留した。生成物を全体的に真空中で乾燥させ、その後、さらなる反応に進なせるかまたは生物学的試験に供した。質量分析データは、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)、大気圧化学イオン化(APCI)またはガスクロマトグラフィー質量分析(GCMS)機器のいずれかから報告される。記号◆は、質量スペクトルにおいて塩素の同位体パターンが観察されたことを意味する。
【0139】
キラル分離を使用して、本発明の化合物の調製中に一部の中間体の鏡像異性体またはジアステレオマーを分離した。キラル分離が行われたら、分離された鏡像異性体を、それらの溶出順に従ってENT−1またはENT−2(またはDIAST−1もしくはDIAST−2)と名付けた。一部の実施態様において、ENT−1またはENT−2と名付けられた鏡像異性体は、他の鏡像異性体またはジアステレオマーを調製するための出発材料として使用することができる。このような状態において、その結果生じた調製された鏡像異性体は、それらの出発材料に従って、それぞれENT−X1およびENT−X2と名付けられる;同様に、調製されたジアステレオマーは、それらの出発材料に従って、それぞれDIAST−X1およびDIAST−X2(またはDIAST−)と名付けられる。複数の中間体を採用する合成において、DIAST−YおよびDIAST−Zの名称も同様に使用される。
【0140】
全般的に、検出可能な中間体を介して進行する反応の後にLCMSを行い、それに続く試薬を添加する前に、完全な変換がなされるまで進行させた。他の実施例または方法における合成参照手順に関して、反応条件(反応時間および温度)は変更が可能である。全般的に、反応の後に、薄層クロマトグラフィーまたは質量分析を行い、適切な場合はワークアップに供した。精製は、実験間で変更が可能であり、全般的に、溶離剤/勾配のために使用される溶媒および溶媒比を、適切なR
fまたは保持時間が提供されるように選択した。これらの調製および実施例における全ての出発材料は、商業的に入手可能であるか、または当業界において公知の方法によって、または本明細書に記載されるように調製できるかのいずれかである。
【0141】
P7の調製
tert−ブチル4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−カルボキシレート(P7)
【0142】
【化4】
【0143】
工程1.2−(4−ブロモ−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−2−イル)−5−クロロピリジン(C11)の合成。
トルエン(25mL)中の5−クロロ−2−エチニルピリジン(1.80g、13.1mmol)、3−ブロモベンゼン−1,2−ジオール(2.47g、13.1mmol)、およびトリルテニウムドデカカルボニル(167mg、0.261mmol)の混合物を1分間脱気し、次いで100℃で16時間加熱した。反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、珪藻土のパッドに通過させてろ過した;ろ液を真空中で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配:石油エーテル中、0%から1%の酢酸エチル)を使用して精製して、C11を黄色の油状物として得た。収量:1.73g、5.30mmol、40%。LCMS m/z 325.6(観察された臭素-塩素同位体パターン)[M+H]
+。
1H NMR(400MHz, クロロホルム-d)δ 8.63 (dd, J = 2.4, 0.7 Hz, 1H), 7.71 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 7.60 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 0.7 Hz, 1H), 6.97 (dd, J = 8.0, 1.4 Hz, 1H), 6.76 (dd, ABXパターンの成分, J = 7.8, 1.4 Hz, 1H), 6.72 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.0, 7.8 Hz, 1H), 2.10 (s, 3H)。
【0144】
工程2.tert−ブチル4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボキシレート(C12)の合成。
【0145】
[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(388mg、0.530mmol)を、1,4−ジオキサン(35mL)および水(6mL)中の、C11(1.73g、5.30mmol)、tert−ブチル4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボキシレート(1.64g、5.30mmol)、および炭酸セシウム(5.18g、15.9mmol)の懸濁液に添加した。反応混合物を90℃で4時間撹拌し、すぐにそれを酢酸エチル(30mL)および水(5mL)で希釈した。有機層を真空中で濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:石油エーテル中、0%から5%の酢酸エチル)に供して、C12を黄色のゴム状物として得た。収量:1.85g、4.31mmol、81%。LCMS m/z 451.0◆[M+Na
+]。
1H NMR (400MHz, クロロホルム-d)δ 8.62 (dd, J = 2.5, 0.8 Hz, 1H), 7.69 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 7.57 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 0.8 Hz, 1H), 6.84 - 6.79 (m, 2H), 6.78 - 6.73 (m, 1H), 6.39 - 6.33 (br m, 1H), 4.13 - 4.07 (m, 2H), 3.68 - 3.58 (m, 2H), 2.60 - 2.51 (br m, 2H), 2.07 (s, 3H), 1.49 (s, 9H)。
【0146】
工程3.tert−ブチル4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−カルボキシレート(P7)の合成。
【0147】
メタノール(100mL)中のC12(2.61g、6.08mmol)およびトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(ウィルキンソン触媒;563mg、0.608mmol)の溶液を真空中で脱気し、次いで水素でパージした;この脱気−パージサイクル合計3回を行った。次いで反応混合物を、60℃で、水素下(50psi)で16時間撹拌し、すぐにそれをろ過した。ろ液を真空中で濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:石油エーテル中、0%から10%の酢酸エチル)を使用して精製した;得られた材料をC12で行われた類似の水素添加からの材料(110mg、0.256mmol)と合わせて、P7を明るい黄色のゴム状物として得た。合わせた収量:2.05g、4.76mmol、75%。LCMS m/z 431.3◆[M+H]
+。
1H NMR (400MHz, クロロホルム-d)δ 8.62 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.69 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 7.57 (d, ABカルテットの半分, J = 8.4 Hz, 1H), 6.79 (dd, ABCパターンの成分, J = 7.8, 7.7 Hz, 1H), 6.72 (dd, ABCパターンの成分, J = 7.8, 1.3 Hz, 1H), 6.68 (br d, ABCパターンの成分, J = 7.9 Hz, 1H), 4.32 - 4.12 (br m, 2H), 2.91 - 2.73 (m, 3H), 2.05 (s, 3H), 1.90 - 1.62 (m, 4H), 1.48 (s, 9H)。
【0148】
P8およびP9の調製
tert−ブチル4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−カルボキシレート、ENT−1(P8)およびtert−ブチル4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−カルボキシレート、ENT−2(P9)
【0149】
【化5】
【0150】
P7(500mg、1.16mmol)のその成分である鏡像異性体への分離を、SFC{カラム:フェノメネックス(Phenomenex)Luxアミロース−1、5μm;移動相:9:1の二酸化炭素/[0.2%(メタノール中の7Mアンモニア)を含有する2−プロパノール]}を使用して実行した。最初に溶出する鏡像異性体をENT−1(P8)と名付け、2番目に溶出する鏡像異性体をENT−2(P9)と名付けた。
【0151】
P8収量:228mg、0.529mmol、46%。保持時間4.00分{カラム:フェノメネックスLuxアミロース−1、4.6×250mm、5μm;移動相A:二酸化炭素;移動相B:[0.2%(メタノール中の7Mアンモニア)を含有する2−プロパノール];勾配:5%Bを1.00分、次いで8.00分にわたり5%から60%B;流速:3.0mL/分;逆圧:120bar}。
【0152】
P9収量:229mg、0.531mmol、46%。保持時間4.50分(分析条件はP8に使用されたものと同一)。
P15の調製
メチル2−(クロロメチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボキシレート(P15)
【0153】
【化6】
【0154】
この全体の手順は、ラージスケールで行われた。全般的に、反応の前、加えて試薬の添加後、リアクターを−0.08から−0.05MPaに脱気し、次いで窒素を標準圧力まで充填した。このプロセスを全体で3回繰り返し、次いで酸素含量を評価して、それが≦1.0%であることを確認した。有機層の抽出および洗浄のプロセスのために、混合物を全体的に15〜60分撹拌し、次いで層分離の前に15〜60分静置した。
【0155】
工程1.(2S)−2−[(ベンジルオキシ)メチル]オキセタン(C25)の合成。
この反応は、およそ同じスケールの3つのバッチで行われた。2000Lのガラスが内張されたリアクターに、2−メチルプロパン−2−オール(774.7kg)を入れた。カリウムtert−ブトキシド(157.3kg、1402mol)を固体添加漏斗を介して添加し、混合物を30分撹拌した。次いでヨウ化トリメチルスルホキソニウム(308.2kg、1400mol)を同じ方式で添加し、反応混合物を55℃〜65℃で2〜3時間加熱し、その後すぐに(2S)−2−[(ベンジルオキシ)メチル]オキシラン(92.1kg、561mol)を5〜20kg/時間の速度で添加した。反応混合物を55℃〜65℃で25時間維持した後、それを25℃〜35℃に冷却し、珪藻土(18.4kg)に通過させてろ過した。ろ過ケークをtert−ブチルメチルエーテル(3×340kg)で濯ぎ、合わせたろ液を5000Lのリアクターに移し、純水(921kg)で処理し、15℃〜30℃で15〜30分撹拌した。次いで有機層を純水(920.5kg)中の塩化ナトリウム(230.4kg)の溶液を使用して2回洗浄し、減圧下(≦−0.08MPa)、≦45℃で濃縮した。n−ヘプタン(187kg)を添加し、得られた混合物を減圧下(≦−0.08MPa)、≦45℃で濃縮した;有機相を、カラムの上部に塩化ナトリウム(18.5kg)を用いたシリカゲルクロマトグラフィー(280kg)を使用して精製した。粗生成物をn−ヘプタン(513kg)を使用してカラム上にローディングし、次いでn−ヘプタン(688.7kg)および酢酸エチル(64.4kg)の混合物で溶出させた。3つのバッチを合わせて、C25を85%の純粋な淡黄色の油状物として得た(189.7kg、906mmol、54%)。
1H NMR (400MHz, クロロホルム-d), C25のピークのみ:δ 7.40 - 7.32 (m, 4H), 7.32 - 7.27 (m, 1H), 4.98 (dddd, J = 8.1, 6.7, 4.9, 3.7 Hz, 1H), 4.72 - 4.55 (m, 4H), 3.67 (dd, ABXパターンの成分, J = 11.0, 4.9 Hz, 1H), 3.62 (dd, ABXパターンの成分, J = 11.0, 3.7 Hz, 1H), 2.72 - 2.53 (m, 2H)。
【0156】
工程2.(2S)−オキセタン−2−イルメタノール(C26)の合成。
10%炭素担持パラジウム(30.7kg)を、添加漏斗を介して、3000Lのステンレス鋼オートクレーブリアクター中のテトラヒドロフラン(1270kg)中の85%純粋なC25(前の工程から;185.3kg、884.8mol)の10℃〜30℃の溶液に添加した。添加漏斗を純水およびテトラヒドロフラン(143kg)で濯ぎ、濯いだものを反応混合物に添加した。リアクターの内容物を窒素でパージした後、それらを同様に水素で、圧力を0.3〜0.5MPaに増加させ、次いで0.05MPaにベントしてパージした。この水素パージを5回繰り返し、その後すぐに水素圧力を0.3〜0.4MPaに増加させた。次いで反応混合物を35℃〜45℃に加熱した。水素圧力を0.3〜0.5MPaに13時間維持し、その後、混合物を0.05MPaにベントし、0.15〜0.2MPaに圧力を増加させ、次いで0.05MPaにベントすることにより、窒素で5回パージした。混合物を10℃〜25℃に冷却した後、それをろ過し、リアクターをテトラヒドロフラン(2×321kg)で濯いだ。ろ過ケークをこの濯ぎ液に2回浸漬し、次いでろ過した;減圧(≦−0.06MPa)での濃縮を≦40℃で行って、テトラヒドロフラン(251kg)中のC26(62.2kg、706mol、80%)を得た。
【0157】
工程3.(2S)−オキセタン−2−イルメチル4−メチルベンゼンスルホネート(C27)の合成。
4−(ジメチルアミノ)ピリジン(17.5kg、143mol)を、テトラヒドロフラン(251kg)中のC26(前の工程から;62.2kg、706mol)およびジクロロメタン(1240kg)中のトリエチルアミン(92.7kg、916mol)の10℃〜25℃の溶液に添加した。30分後、塩化p−トルエンスルホニル(174.8kg、916.9mol)を20〜40分のインターバルで少しずつ添加し、反応混合物を15℃〜25℃で16時間および20分撹拌した。純水(190kg)を添加した;撹拌した後、有機層を重炭酸ナトリウム水溶液(53.8kgの重炭酸ナトリウムおよび622kgの純水を使用して調製した)で洗浄し、次いで塩化アンモニウム水溶液(230kgの塩化アンモニウムおよび624kgの純水を使用して調製された)で洗浄した。純水(311kg)での最後の洗浄の後、有機層をシリカゲル(60.2kg)を予めローディングしたステンレス鋼のヌッチェフィルターに通過させてろ過した。ろ過ケークをジクロロメタン(311kg)に20分浸漬させ、次いでろ過した;合わせたろ液を、330〜400Lが残るまで減圧下(≦−0.05MPa)および≦40℃で濃縮した。次いでテトラヒドロフラン(311kg)を15℃〜30℃で添加し、同じ方式で混合物を濃縮して、最終容量を330〜400Lにした。テトラヒドロフランの添加と濃縮を、330〜400Lの体積になるまで再度繰り返して、テトラヒドロフラン(251.8kg)中のC27の淡黄色の溶液を得た(167.6kg、692mmol、98%)。
1H NMR (400MHz, クロロホルム-d), C27のピークのみ:δ 7.81 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.34 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 4.91 (ddt, J = 8.0, 6.7, 3.9 Hz, 1H), 4.62 - 4.55 (m, 1H), 4.53 - 4.45 (m, 1H), 4.14 (d, J = 3.9 Hz, 2H), 2.75 - 2.63 (m, 1H), 2.60 - 2.49 (m, 1H), 2.44 (s, 3H)。
【0158】
工程4.(2S)−2−(アジドメチル)オキセタン(C28)の合成。
N,N−ジメチルホルムアミド(473kg)、アジ化ナトリウム(34.7kg、534mol)、およびヨウ化カリウム(5.2kg、31mol)を、3000Lのガラスが内張されたリアクター中で、10℃〜25℃で合わせた。テトラヒドロフラン(125.4kg)中のC27(83.5kg、344.6mol)の添加の後、反応混合物を17時間および40分にわたり55℃〜65℃に加熱し、すぐにそれを25℃〜35℃に冷却し、底部のバルブから窒素を15分バブリングした。次いでtert−ブチルメチルエーテル(623kg)および純水(840kg)を添加し得られた水層をtert−ブチルメチルエーテル(312kgおよび294kg)で2回抽出した。合わせた有機層を、温度を10℃〜25℃に維持しながら純水(2×419kg)で洗浄して、上記の有機層の溶液(1236.8kg)中にC28(31.2kg、276mol、80%)を得た。
【0159】
工程5.1−[(2S)−オキセタン−2−イル]メタンアミン(C29)の合成。
10%炭素担持パラジウム(3.7kg)を、添加漏斗を介して、3000Lのステンレス鋼オートクレーブリアクター中のテトラヒドロフラン(328kg)中のC28[前の工程から;1264kg(31.1kgのC28、275mol)]の10℃〜30℃の溶液に添加した。添加漏斗をテトラヒドロフラン(32kg)で濯ぎ、濯いだものを、反応混合物に添加した。リアクターの内容物を窒素でパージした後、それらを同様に水素で、圧力を0.05〜0.15MPaに増加させ、次いで0.03〜0.04MPaにベントしてパージした。この水素パージを5回繰り返し、その後すぐに水素圧力を0.05〜0.07MPaに増加させた。反応温度を25℃〜33℃に増加させ、水素圧力を、3〜5時間毎に水素を交換しながら、0.05〜0.15MPaで22時間維持した。次いで混合物を、窒素で、圧力を0.15〜0.2MPaに増加させ、次いで0.05MPaにベントすることにより5回パージした。ろ過の後、テトラヒドロフラン(92kgおよび93kg)を使用してリアクターを洗浄し、次いでろ過ケークを浸漬した。合わせたろ液を減圧下(≦−0.07MPa)および≦45℃で濃縮して、テトラヒドロフラン(57.8kg)中のC29(18.0kg、207mol、75%)を得た。
1H NMR (400MHz, DMSO-d
6), C29のピークのみ:δ 4.62 (ddt, J = 7.6, 6.6, 5.1 Hz, 1H), 4.49 (ddd, J = 8.6, 7.3, 5.6 Hz, 1H), 4.37 (dt, J = 9.1, 5.9 Hz, 1H), 2.69 (d, J = 5.1 Hz, 2H), 2.55 - 2.49 (m, 1H), 2.39 (m, 1H)。
【0160】
工程6.メチル4−ニトロ−3−{[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]アミノ}安息香酸塩(C30)の合成。
炭酸カリウム(58.1kg、420mol)を、100Lのガラスが内張されたリアクター中のテトラヒドロフラン(148kg)中のメチル3−フルオロ−4−ニトロベンゾエート(54.8kg、275mol)の溶液に添加し、混合物を10分撹拌した。テトラヒドロフラン(212.9kg)中のC29(29.3kg、336mol)の溶液を添加し、反応混合物を20℃〜30℃で12時間撹拌し、その後すぐに酢酸エチル(151kg)を添加し、混合物をシリカゲル(29kg)に通過させてろ過した。ろ過ケークを酢酸エチル(150kgおよび151kg)で濯ぎ、合わせたろ液を、減圧下(≦−0.08MPa)および≦45℃で222〜281Lの体積に濃縮した。混合物を10℃〜30℃に冷却した後、n−ヘプタン(189kg)を添加し、撹拌を20分行い、混合物を減圧下(≦−0.08MPa)および≦45℃で222Lの体積に濃縮した。n−ヘプタン(181kg)を混合物に100〜300kg/時間の参照速度で再度添加し、撹拌を20分続けた。残留したテトラヒドロフランが≦5%になり、残留した酢酸エチルが10%〜13%になるまで、混合物をサンプリングした。混合物を40℃〜45℃に加熱し、1時間撹拌し、すぐにそれを5℃〜10℃/時間の速度で15℃〜25℃に冷却し、次いで15℃〜25℃で1時間撹拌した。ステンレス鋼の遠心分離機を使用してろ過し、ろ過ケークを得て、これを酢酸エチル(5.0kg)およびn−ヘプタン(34kg)の混合物で濯ぎ、次いでテトラヒドロフラン(724kg)と共に10℃〜30℃で15分撹拌した;ろ過により、大部分がC30で構成される黄色の固体を得た(57.3kg、210mol、76%)。
1H NMR (400MHz, DMSO-d
6) 8.34 (t, J = 5.8 Hz, 1H), 8.14 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.13 (dd, J = 8.9, 1.8 Hz, 1H), 4.99 (dddd, J = 7.7, 6.7, 5.3, 4.1 Hz, 1H), 4.55 (ddd, J = 8.6, 7.3, 5.8 Hz, 1H), 4.43 (dt, J = 9.1, 6.0 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.67 - 3.61 (m, 2H), 2.67 (dddd, J = 11.1, 8.6, 7.7, 6.2 Hz, 1H), 2.57 - 2.47 (m, 1H)。
【0161】
工程7.メチル2−(クロロメチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボキシレート(P15)の合成。
3000Lのオートクレーブリアクター中のテトラヒドロフラン(678kg)中のC30(前の工程から;51.8kg、190mol)の溶液を、10℃〜30℃で、10%炭素担持パラジウム(5.2kg)で処理した。添加パイプをテトラヒドロフラン(46kg)で濯ぎ、濯いだものを、反応混合物に添加した。リアクターの内容物を窒素でパージした後、それらを同様に水素で、圧力を0.1〜0.2MPaに増加させ、次いで0.02〜0.05MPaにベントしてパージした。この水素パージを5回繰り返し、その後すぐに水素圧力を0.1〜0.25MPaに増加させた。反応混合物を、20℃〜30℃で、2〜3時間毎に撹拌し、混合物を窒素で3回パージし、次いで水素で5回パージした;それぞれ最後の水素交換の後、水素圧力を0.1〜0.25MPaに増加させた。11.25時間の総反応時間の後、反応混合物を標準圧力にベントし、圧力を0.15〜0.2MPaに増加させ、次いで0.05MPaにベントすることによって窒素で5回パージした。次いでこれをろ過し、ろ過ケークをテトラヒドロフラン(64kgおよび63kg)で2回濯いだ;合わせた濯いだものとろ液を減圧下(≦−0.08MPa)および≦40℃で128〜160Lの体積に濃縮した。テトラヒドロフラン(169kg)を添加し、混合物を128〜160Lの体積に再度濃縮した;このプロセスを合計4回繰り返して、中間体メチル4−アミノ−3−{[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]アミノ}安息香酸塩の溶液を得た。
【0162】
この溶液に、テトラヒドロフラン(150kg)を添加し、続いて2−クロロ−1,1,1−トリメトキシエタン(35.1kg、227mol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(1.8kg、9.5mol)を添加した。反応混合物を25分撹拌した後、それを40℃〜45℃で5時間加熱し、すぐにそれを減圧下で135〜181Lの体積に濃縮した。2−プロパノール(142kg)を添加し、混合物を再度、135〜181Lの体積に濃縮し、その後すぐに2−プロパノール(36.5kg)および純水(90kg)を添加し、溶液が得られるまで撹拌を続けた。これをインラインの液体フィルターでろ過し、次いで150〜400kg/時間の参照速度で、20℃〜40℃で、純水(447kg)で処理した。混合物を20℃〜30℃に冷却した後、それを2時間撹拌し、遠心分離機を用いたろ過を介して固体を収集した。ろ過ケークを2−プロパノール(20.5kg)および純水(154kg)の溶液で濯いだ;乾燥させた後、P15を白色の固体として得た(32.1kg、109mol、57%)。
1H NMR (400MHz, クロロホルム-d)δ 8.14 - 8.11 (m, 1H), 8.01 (dd, J = 8.5, 1.1 Hz, 1H), 7.79 (br d, J = 8.6 Hz, 1H), 5.26 - 5.18 (m, 1H), 5.04 (s, 2H), 4.66 - 4.58 (m, 2H), 4.53 (dd, ABXパターンの成分, J = 15.7, 2.7 Hz, 1H), 4.34 (dt, J = 9.1, 6.0 Hz, 1H), 3.96 (s, 3H), 2.82 - 2.71 (m, 1H), 2.48 - 2.37 (m, 1H)。
【0163】
代替として、P15は、その全体が参照により組み入れられる米国特許第10,208,019号に記載される方法を使用して調製してもよい(この特許の第58列の中間体23を参照)。
【0164】
実施例1
2−({4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボン酸、DIAST−X2(
化合物1)[
P9から]
【0165】
【化7】
【0166】
工程1.5−クロロ−2−[2−メチル−4−(ピペリジン−4−イル)−1,3−ベンゾジオキソール−2−イル]ピリジン、ENT−X2、p−トルエンスルホン酸塩(C58)の合成[P9から]。
【0167】
酢酸エチル(2.7mL)中のP9(228mg、0.529mmol)の溶液を、p−トルエンスルホン酸一水和物(116mg、0.610mmol)で処理し、反応混合物を50℃で16時間加熱した。次いでこれを室温で一晩撹拌し、その後すぐにろ過を介して沈殿を収集し、酢酸エチルおよびヘプタン(1:1、2×20mL)の混合物で濯いで、C58を白色の固体として得た。収量:227mg、0.451mmol、85%。LCMS m/z 331.0◆[M+H]
+。
1H NMR (400MHz, DMSO-d
6):δ 8.73 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.61 - 8.46 (br m, 1H), 8.35 - 8.18 (br m, 1H), 8.02 (dd, J = 8.5, 2.5 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 7.8, 2H), 7.11 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 6.89 - 6.81 (m, 2H), 6.72 (pentet, J = 4.0 Hz, 1H), 3.45 - 3.27 (m, 2H, 仮定;水のピークによって部分的に不明瞭), 3.10 - 2.91 (m, 3H), 2.28 (s, 3H), 2.02 (s, 3H), 1.97 - 1.80 (m, 4H)。
【0168】
工程2.メチル2−({4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボキシレート、DIAST−Y2(C59)の合成[P9から]。
【0169】
N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.234mL、1.34mmol)を、アセトニトリル(2.2mL)中のC58(225mg、0.447mmol)の溶液に添加した。この混合物を45℃で5分撹拌した後、P15(120mg、0.407mmol)を添加し、撹拌を45℃で16時間続け、その後すぐにP15(11mg、37μmol)を再度添加した。追加の3時間撹拌した後、反応混合物を水(2.5mL)で処理し、そのまま室温に冷却した。さらなる水(5mL)を添加し、得られたスラリーを2時間撹拌し、その後すぐにろ過を介して固体を収集し、アセトニトリルおよび水の混合物(15:85、3×5mL)で洗浄して、C59のオフホワイト色の固体(252mg)を得た。
1H NMR分析によれば、この材料は多少のN,N−ジイソプロピルエチルアミン含有しており、これをそれに続く工程に直接用いた。LCMS m/z 589.1◆[M+H]
+。
1H NMR (400MHz, クロロホルム-d)8.61 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.96 (dd, J = 8.5, 1.5 Hz, 1H), 7.74 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.67 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 7.59 - 7.51 (m, 1H), 6.82 - 6.75 (m, 1H), 6.74 - 6.66 (m, 2H), 5.28 - 5.19 (m, 1H), 4.75 (dd, ABXパターンの成分, J = 15.3, 6.0 Hz, 1H), 4.68 (dd, ABXパターンの成分, J = 15.3, 3.4 Hz, 1H), 4.67 - 4.58 (m, 1H), 4.41 (ddd, J = 9.1, 5.9, 5.9 Hz, 1H), 3.95 (s, 2H), 3.95 (s, 3H), 3.07 - 2.89 (m, 2H), 2.81 - 2.69 (m, 2H), 2.53 - 2.41 (m, 1H), 2.37 - 2.22 (m, 2H), 2.05 (s, 3H), 1.93 - 1.74 (m, 4H)。
【0170】
工程3.2−({4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボン酸、DIAST−X2(化合物1)の合成[P9から]。
【0171】
メタノール(2mL)中のC59(前の工程から;250mg、≦0.407mmol)の懸濁液を40℃に加熱し、その後すぐに水酸化ナトリウム水溶液(1M;0.81mL、0.81mmol)を添加した。17時間後、反応混合物をそのまま室温に冷却し、pHを1Mクエン酸水溶液で5〜6に調整した。得られた混合物を水(2mL)で希釈し、2時間撹拌し、酢酸エチル(3×5mL)で抽出し、合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(5mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮して、泡沫状の固体を得た。この材料を酢酸エチルおよびヘプタンの混合物(1:1、4mL)中に溶解させ、50℃に加熱し、次いでそのまま冷却し、一晩撹拌した。ろ過により、化合物1を白色の固体として得た。収量:2工程にわたり、179mg、0.311mmol、76%。LCMS m/z 575.1◆[M+H]
+。
1H NMR (400MHz, DMSO-d
6) δ 12.73 (br s, 1H), 8.71 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 8.27 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 8.00 (dd, J = 8.5, 2.5 Hz, 1H), 7.80 (dd, J = 8.4, 1.6 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.83 - 6.72 (m, 3H), 5.14 - 5.06 (m, 1H), 4.77 (dd, ABXパターンの成分, J = 15.2, 7.2 Hz, 1H), 4.63 (dd, ABXパターンの成分, J = 15.2, 2.8 Hz, 1H), 4.50 - 4.42 (m, 1H), 4.37 (ddd, J = 9.0, 5.9, 5.9 Hz, 1H), 3.85 (AB カルテット, J
AB = 13.6 Hz, Δ□
AB = 71.5 Hz, 2H), 3.01 (br d, J = 11.2 Hz, 1H), 2.85 (br d, J = 11.2 Hz, 1H), 2.74 - 2.57 (m, 2H), 2.47 - 2.38 (m, 1H), 2.29 - 2.10 (m, 2H), 2.01 (s, 3H), 1.81 - 1.64 (m, 4H)。
【0172】
合成1S−1.化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の合成
1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム2−({4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボキシレート、DIAST−X2(化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩)の合成[P9から]。
【0173】
【化8】
【0174】
テトラヒドロフラン(10mL)中の化合物1(1.54g、2.68mmol)の混合物を、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオールの水溶液(トリス、1.0M;2.81mL、2.81mmol)で処理した。24時間後、反応混合物をエタノール(2×50mL)を用いて真空中で濃縮した。残留物をエタノール(15mL)で処理した。20時間撹拌した後、固体をろ過を介して収集し、冷たいエタノール(5mL)で洗浄して、化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩を白色の固体として得た。収量:1.41g、2.03mmol、76%。LCMS m/z 575.3◆[M+H]
+。
1H NMR (600MHz, DMSO-d
6) δ 8.71 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 8.21 (br s, 1H), 8.00 (dd, J = 8.5, 2.5 Hz, 1H), 7.79 (br d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.57 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.82 - 6.73 (m, 3H), 5.13 - 5.07 (m, 1H), 4.74 (dd, J = 15.3, 7.2 Hz, 1H), 4.61 (dd, J = 15.3, 2.9 Hz, 1H), 4.49 - 4.43 (m, 1H), 4.37 (ddd, J = 9.0, 5.9, 5.9 Hz, 1H), 3.93 (d, J = 13.6 Hz, 1H), 3.75 (d, J = 13.5 Hz, 1H), 3.01 (br d, J = 11.3 Hz, 1H), 2.86 (br d, J = 11.4 Hz, 1H), 2.73 - 2.59 (m, 2H), 2.48 - 2.37 (m, 1H), 2.27 - 2.20 (m, 1H), 2.19 - 2.12 (m, 1H), 2.01 (s, 3H), 1.82 - 1.66 (m, 4H)。mp = 184℃〜190℃。
【0175】
合成1S−2.化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の代替合成
2−メチルテトラヒドロフラン(90ml)中の化合物1(8.80gm、15.3mmol)の混合物を、37℃の水浴中で、ロータリーエバポレーターで、真空中で濃縮して、総体積を約54mlに低減した。混合物にイソプロパノール(90ml)を添加し、次いで得られた混合物を約54mlの体積に再度濃縮した。混合物にイソプロパノール(135ml)を添加し、続いてトリスアミン水溶液(3M;5.0ml、0.98当量)を添加した。得られた混合物/溶液を周囲温度で撹拌すると、約15分以内に固形の沈殿物が形成され始めた。次いで混合物を周囲温度で追加の5時間撹拌した。得られた混合物/スラリーを0℃に冷却し、冷却したスラリーをさらに約2時間撹拌した。スラリーをろ過し、冷たいイソプロパノール(3×15ml)で洗浄した。収集された固体を、収集漏斗上で約90分、空気乾燥させ、次いで真空オーブンに一晩移して乾燥させた。50℃/23inHg真空で約16時間後(わずかに窒素を流しながら)、8.66gmの化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩を白色の固体として得た;UPLCにより99.8面積%(収量:12.5mmol、81%)。LCMSおよび
1H NMRデータを得たが、これは、上記で示された合成1S−1におけるものと実質的に同じである。
【0176】
化合物1の形態Aの1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩(化合物1の無水トリス塩の形態Aとしても公知)の粉末X線回折(PXRD)データの獲得
化合物1のトリス塩の白色の固体(合成1S−1および合成1S−2の両方から)をPXRD分析に提出したところ、結晶性材料であることが見出された(これは、形態Aと名付けられる)。粉末X線回折分析を、Cu放射線源を備えたブルカーAXS D8エンデバー回折計を使用して実行した。発散スリットを15mmの連続照明で設定した。回折された放射を、2.99度に設定されたデテクターPSD開口部を備えたPSD−リンクスアイ(PSD-Lynx Eye)デテクターによって検出した。X線管電圧およびアンペア数を、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。データを、3.0〜40.0度の2−シータのシータ−シータゴニオメーターにおけるCu波長(CuK
α=1.5418λ)で、0.01度の段階サイズおよび1.0秒の段階時間を使用して収集した。散乱防止スクリーンを、1.5mmの固定した距離に設定した。データ収集中、サンプルを回転させた。シリコン製の低バックグラウンドのサンプルホルダー中にそれを設置することによってサンプルを調製し、収集中に回転させた。ブルカーDIFFRACプラス(DIFFRAC Plus)ソフトウェアを使用してデータを収集し、EVAディフラクトプラス(diffract plus)ソフトウェアによって分析を実行した。PXRDデータファイルは、ピーク検索の前に加工しなかった。EVAソフトウェア中のピーク検索アルゴリズムを使用して、1の閾値を用いて選択されたピークを使用して、予備的なピーク同定を行った。有効性を確認するために、調整を手動で行った;自動化アサインメントの出力を外観でチェックし、ピーク位置をピークの最大値まで調整した。≧3%の相対強度を有するピークを全般的に選択した。典型的には、解像されなかった、またはノイズと一致したピークは選択されなかった。USPで述べられたPXRDからのピーク位置に関連する典型的なエラーは±0.2°2−シータまでであった(USP−941)。合成1S−2により得られた形態AのサンプルからのPXRDの、2θ度および≧3.0%の相対強度を有する相対強度に関して表された回折ピークのリストを、表E1−1の上に示す。
【0177】
【表1】
【0178】
本明細書に記載される方法により得られた化合物1のトリス塩の無水(無水物)の結晶形態は、形態Aと名付けられる。形態Aは、例えば粉末X線回折パターン(PXRD)や
13C固体NMRなどの他の固体の特性を利用した方法に関して、その固有な固体状態のシグネチャーによって同定することができる。
【0179】
一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;15.7±0.2°;および17.6±0.2°から選択される位置で、少なくとも2つの特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;15.7±0.2°;および17.6±0.2°から選択される位置で、少なくとも3つの特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;15.7±0.2°;および17.6±0.2°から選択される位置で、特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。
【0180】
一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°および17.6±0.2°に特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。
一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;および17.6±0.2°にピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。
【0181】
一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;および15.7±0.2°にピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。
一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;15.7±0.2°;および17.6±0.2°にピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。
【0182】
一部の実施態様において、形態Aは、実質的に
図1で示される通りの粉末X線回折パターンを呈する。
化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態Aの固体NMR分析
固体NMR(ssNMR)分析を、ブルカー−バイオスピン・アバンスIII500MHz(
1H周波数)NMR分光計に配置されたCPMASプローブで実行した。化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態Aのサンプルを、4mmローターに充填した。15.0kHzのマジック角スピニング速度を使用した。
【0183】
プロトンデカップル交差分極マジック角スピニング(CPMAS)実験を使用して
13C ssNMRスペクトルを収集した。スペクトル獲得の間、80〜90kHzの位相変調させたプロトンデカップリング場を適用した。交差分極の接触時間を2msに設定し、リサイクル遅延を3〜8秒に設定した。スキャンの数を調整して十分なシグナル対ノイズ比を得て、各APIにつき2048スキャンを収集した。
13C化学シフトスケールを、結晶性アダマンタンの外部標準への
13C CPMAS実験を使用して参照し、その高磁場共鳴を29.5ppmに設定した。
【0184】
自動化ピークピッキングを、ブルカー−バイオスピン・トップスピン(TopSpin)バージョン3.6ソフトウェアを使用して実行した。全般的に、予備的なピーク選択のために3%相対強度の閾値を使用した。の出力自動化ピークピッキングを目視でチェックして有効性を確認し、必要に応じて調整を手動で行った。具体的な固体NMRピーク(ssNMR)値が本明細書で報告されているが、機器、サンプル、およびサンプル調製の差に起因して、これらのピーク値の範囲が存在する。これは、ピーク位置において固有の変動のためにssNMR分野においてよくあることである。
13C化学シフトのx軸値の典型的な変動性は、結晶性固体の場合、プラスまたはマイナス0.2ppmの範囲である。本明細書において報告されたssNMRピーク高さは、相対強度である。固体NMR強度は、CPMAS実験パラメーターの実際の設定およびサンプルの熱履歴に応じて様々であり得る。化学シフトのデータは、他の因子のなかでも特に、試験条件(すなわちスピン速度およびサンプルホルダー)、参照物質、およびデータ加工パラメーターに依存する。典型的には、ss−NMRの結果は、約±0.2ppmの範囲内まで正確である。
図2に、得られた形態Aの代表的な
13C ssNMRスペクトルを示す。表E1−2に、形態Aの
13C化学シフト[ppm]±0.2ppmを列挙する。
【0185】
【表2-1】
【0186】
【表2-2】
【0187】
実施例2
化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態2
化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態2の調製
化合物1(49.7mg)を、バイアル中でメタノール(0.828mL)と混合し、50℃に加熱した。次いでトリス(30.25μL、3M)のストック溶液を添加し、得られた混合物をゆっくり室温に冷却した。次いで混合物を室温でゆっくり蒸発させた(バイアルをヒュームフード中に置き、ふたをわずかに割って溶剤蒸発を可能にした)。化合物1のトリス塩の結晶は、メタノール/水の混合溶媒中での遅い蒸発によって形成された(この結晶形態は形態2と名付けられる)。
【0188】
単結晶X線分析
化合物1のトリス塩の形態2のサンプルを、単結晶分析のために試験した。データ収集を、ブルカーD8ベンチャー(Venture)回折計で、室温で実行した。データ収集は、オメガおよびファイスキャンからなっていた。
【0189】
単斜晶系クラスの空間群P2
1において、SHELXソフトウェアスイートを使用して、固有の位相により構造を解析した。その後、全行列最小二乗法によって構造を精密化した。全ての非水素原子を見つけ出し、異方性変位パラメーターを使用して精密化した。
【0190】
末端の環(C1−C2−C3−C4−C5・・・Cl1)は無秩序であった。この群のために無秩序モデルを試験したが、十分精密化されなかった。CIF_Checkモジュールは、上述したセグメントに基づいてレベル「A」を生じた。
【0191】
窒素および酸素に配置された水素原子をフーリエの差分布から見つけ出し、制限された距離で精密化した。残存する水素原子を計算された位置に置き、これをそれらの担体原子に乗せた。最終的な精密化は、全ての水素原子に対する等方性変位パラメーターを含んでいた。
【0192】
O5からN5へのプロトン移動のために、トリス塩が確認された。加えて、その構造は、1つの水分子を含有していた(したがって一水和物であった)。尤度法(Hooft 2008)を使用した絶対構造の分析を、PLATON(Spek 2010)を使用して、C22の公知の立体化学情報を用いて実行した(したがって、C6の立体化学情報を決定した)。精密化した構造を、SHELXTLプロッティングパッケージを使用してプロットした(
図3)。精密化した構造によれば、形態2は、化合物1のトリス塩の一水和物であり、その構造は、以下のように示すことができる:
【0193】
【化9】
【0194】
最終的なR指標は6.6%であった。最終的な差フーリエから、電子密度の喪失または配置ミスがないことが解明された。
表E2−1に、関連する結晶、データ収集および精密化を要約する。表E2−2からE2−4に、原子座標、結合距離、結合角および変位パラメーターを列挙する。
【0195】
【表3】
【0196】
【表4-1】
【0197】
【表4-2】
【0198】
【表5-1】
【0199】
【表5-2】
【0200】
【表5-3】
【0201】
【表5-4】
【0202】
【表5-5】
【0203】
等価な原子を生成するのに対称変換が使用される:
【0204】
【表6】
【0205】
計算/シミュレートされたPXRDデータ。
上記の単結晶X線分析により得られた情報を使用して、形態2のPXRDピークの位置および強度を計算/シミュレートすることができる(
図4を参照、ブルカーDIFFRAC.EVAバージョン5.0.0.22を使用)。形態2の≧3.0%の相対強度と共に2θ度および相対強度に対して表される計算/シミュレートされたPXRD回折ピークのリストを以下に示す。
【0206】
【表7】
【0207】
実施例3.化合物1のトリス塩の形態3
化合物1のトリス塩の形態3の調製(スラリーからスラリーへの変換)
化合物1のトリス塩の形態Aの無水形態(1.177グラム)を50mLのEasyMax(登録商標)リアクターに添加した。次いでアセトニトリルおよび水(27.9mLのアセトニトリルおよび2.4mLの水)の混合溶媒を添加した。得られた混合物(スラリー)を、2日にわたり室温(約25℃)で撹拌するオーバーヘッドパドルで撹拌した。次いで混合物を0℃に冷却し、約1時間撹拌した。次いで混合物を、ろ紙を介した吸引ろ過によってろ過し、収集した固体(ケーク)を2〜3mLの冷たいアセトニトリル(0℃)で2回濯いだ。得られたケークを漏斗上で1時間風乾させた。ケーク/漏斗を、さらに乾燥させるために真空オーブンに移した(Hg真空で50℃/約22、わずかに窒素を流しながら)。約5時間後、1.115gmの白色の固体を得た(形態3として設計された)。
【0208】
化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態3の代替の調製
代替として、化合物1のトリス塩の形態3の単結晶を、アセトニトリル/15%の水(v/v)中の化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の飽和溶液へのアセトニトリルの蒸気拡散によって調製した。
【0209】
単結晶のX線分析
化合物1のトリス塩の形態3のサンプルを、単結晶のX線分析のために試験した。代表的な結晶に対して、データ収集を、ブルカーD8ベンチャー回折計で、室温で実行した。データ収集は、オメガおよびファイスキャンからなっていた。
【0210】
単斜晶系の空間群P2
1において、SHELXソフトウェアスイート(SHELXTL、バージョン5.1、ブルカーAXS、1997)を使用して、固有の位相により構造を解析した。その後、全行列最小二乗法によって構造を精密化した。全ての非水素原子を見つけ出し、異方性変位パラメーターを使用して精密化した。
【0211】
窒素および酸素に配置された水素原子をフーリエの差分布から見つけ出し、制限された距離で精密化した。残存する水素原子を計算された位置に置き、これをそれらの担体原子に乗せた。最終的な精密化は、全ての水素原子に対する等方性変位パラメーターを含んでいた。
【0212】
尤度法を使用した絶対構造の分析(R.W.W. Hooftら、J. Appl. Cryst. (2008). 41. 96〜103を参照)を、PLATON(A.L. Spek, J. Appl. Cryst. 2003、36、7〜13を参照)を使用して実行した。提出されたサンプルが鏡像異性的に純粋であると仮定して、絶対構造(2つのキラル中心に関する立体化学情報を用いて)を割り当てた。
【0213】
最終的なR指標は5.1%であった。最終的な差フーリエから、電子密度の喪失または配置ミスがないことが解明された。精密化した構造を、SHELXTLプロッティングパッケージ(SHELXTL、バージョン5.1、ブルカーAXS、1997)を使用してプロットした(
図5)。絶対配置を 、フラック(Flack)の方法によって決定した(H.D. Flack、Acta Cryst. 1983、A39、867〜881を参照)。精密化した構造によれば、形態3は、化合物1:
【0214】
【化10】
【0215】
のトリス塩の一水和物であり、この水和物形態の化学名(立体化学情報を含む)は、2−({4−[(2S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボキシレートの1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩、一水和物である。
【0216】
表E3−1に、関連する結晶、データ収集および精密化を要約する。表E3−2からE3−4に、原子座標、結合距離、結合角および変位パラメーターを列挙する。
【0217】
【表8】
【0218】
【表9】
【0219】
【表10-1】
【0220】
【表10-2】
【0221】
【表10-3】
【0222】
【表10-4】
【0223】
【表11】
【0224】
化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩(化合物1のトリス塩の一水和物の形態3としても公知)の形態3の粉末X線回折(PXRD)データの獲得
形態3(例えば、本明細書に記載される方法に従って調製された化合物1のトリス塩の白色の固体)のサンプルをPXRD分析に提出したところ、結晶性材料であることが見出された(これは、形態3と名付けられる)。
【0225】
粉末X線回折分析を、Cu放射線源を備えたブルカーAXS D8エンデバー回折計(K−α平均)を使用して実行した。発散スリットを15mmの連続照明で設定した。回折された放射を、2.99度に設定されたデテクターPSD開口部を備えたPSD−リンクスアイデテクターによって検出した。X線管電圧およびアンペア数を、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。データを、シータ−シータゴニオメーターで、3.0〜40.0度2−シータのCu波長で、0.00999度の段階サイズおよび1.0秒の段階時間を使用して収集した。散乱防止スクリーンを、1.5mmの固定した距離に設定した。収集中、サンプルを15/分で回転させた。シリコン製の低バックグラウンドのサンプルホルダー中にそれを設置することによってサンプルを調製し、収集中に回転させた。ブルカーDIFFRACプラスソフトウェアを使用してデータを収集し、EVAディフラクトプラスソフトウェアによって分析を実行した。特定の実験で使用されたサンプルホルダーは、ファイル名内のコード名によって示される:DW=ディープウェルホルダー(Deep well holder)、SD=小さいディボットホルダー(small divot holder)およびFP=平坦なプレートホルダー(Flat plate holder)。
【0226】
PXRDデータファイルは、ピーク検索の前に加工しなかった。EVAソフトウェア中のピーク検索アルゴリズムを使用して、1の閾値を用いて選択されたピークおよび0.3の幅値を使用して、予備的なピーク同定を行った。自動化アサインメントの出力を目視でチェックして有効性を確認し、必要に応じて調整を手動で行った。≧3%の相対強度を有するピークを全般的に選択した。解像されなかった、またはノイズと一致したピークは選択されなかった。USPで述べられたPXRDからのピーク位置に関連する典型的なエラーは±0.2°2−シータまでであった(USP−941)。形態3のサンプルからの2θ度および≧3.0%の相対強度を有する相対強度に関して表されたPXRD回折ピークのリストを以下に示す。
【0227】
【表12】
【0228】
化合物1のトリス塩の形態3(一水和物)の固体NMR分析
固体NMR(ssNMR)分析を、ブルカー−バイオスピン・アバンスIII500MHz(
1H周波数)NMR分光計に配置されたCPMASプローブで実行した。化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態3、一水和物のサンプルを4mmローターに充填した。15.0kHzのマジック角スピニング速度を使用した。
【0229】
プロトンデカップル交差分極マジック角スピニング(CPMAS)実験を使用して
13C ssNMRスペクトルを収集した。スペクトル獲得の間、80〜90kHzの位相変調させたプロトンデカップリング場を適用した。交差分極の接触時間を2msに設定し、リサイクル遅延を3〜8秒に設定した。スキャンの数を調整して十分なシグナル対ノイズ比を得て、各APIにつき2048スキャンを収集した。
13C化学シフトスケールを結晶性アダマンタンの外部標準への
13C CPMAS実験を使用して参照し、その高磁場共鳴を29.5ppmに設定した。
【0230】
自動化ピークピッキングを、ブルカー−バイオスピン・トップスピンバージョン3.6ソフトウェアを使用して実行した。全般的に、予備的なピーク選択のために3%相対強度の閾値を使用した。自動化ピークピッキングの出力を目視でチェックして有効性を確認し、必要に応じて調整を手動で行った。具体的な固体NMRピーク値が本明細書で報告されているが、機器、サンプル、およびサンプル調製の差に起因して、これらのピーク値の範囲が存在する。これは、ピーク位置において固有の変動のために固体NMR分野においてよくあることである。
13C化学シフトのx軸値の典型的な変動性は、結晶性固体の場合、プラスまたはマイナス0.2ppmの範囲である。本明細書において報告された固体NMRのピーク高さは、相対強度である。固体NMR強度は、CPMAS実験パラメーターの実際の設定およびサンプルの熱履歴に応じて様々であり得る。化学シフトのデータは、他の因子のなかでも特に、試験条件(すなわちスピン速度およびサンプルホルダー)、参照物質、およびデータ加工パラメーターに依存する。典型的には、ss−NMRの結果は、約±0.2ppmの範囲内まで正確である。
【0231】
【表13】
【0232】
実施例AA.CHO GLP−1RクローンH6−アッセイ1
細胞中のcAMPレベルを測定するHTRF(均一時間分解時間分解蛍光)cAMP検出キット(cAMP HIレンジアッセイキット(Range Assay Kit);シスバイオ(CisBio)カタログ番号62AM6PEJ)を利用する細胞ベースの機能アッセイを用いて、GLP−1R媒介アゴニスト活性を決定した。この方法は、細胞によって生産された天然cAMPと色素d2で標識された外因性cAMPとの競合イムノアッセイである。トレーサー結合は、クリプテートで標識されたmAb抗cAMPによって可視化される。特異的なシグナル(すなわちエネルギー移動)は、標準または実験サンプルのいずれかにおいてcAMPの濃度に反比例する。
【0233】
ヒトGLP−1Rコード配列(NCBI参照配列NP_002053.3、天然に存在するバリアントGly168Serを含む)をpcDNA3(インビトロジェン(Invitrogen))にサブクローニングし、受容体を安定して発現する細胞株を単離した(クローンH6と名付けた)。
125I−GLP−1
7〜36(パーキン・エルマー(Perkin Elmer))を使用した飽和結合分析(ろ過アッセイ手順)は、この細胞株由来の原形質膜が、高いGLP−1R密度を発現すること(K
d:0.4nM、B
max:1900fmol/mgタンパク質)を示した。
【0234】
細胞を低温保存から取り出し、40mLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS−ロンザ(Lonza)、カタログ番号17−512Q)に再懸濁し、22℃で、800×gで5分遠心分離した。次いで細胞ペレットを、10mLの増殖培地[DMEM/F12、HEPESとの1:1混合物、L−Gln、500mL(DMEM/F12、ロンザ、カタログ番号12−719F)、10%熱不活性化ウシ胎児血清(ギブコ(Gibco)、カタログ番号16140−071)、5mLの100×Pen−Strep(ギブコ、カタログ番号15140−122)、5mLの100×L−グルタミン(ギブコ、カタログ番号25030−081)および500μg/mLゲネチシン(G418)(インビトロジェン、番号10131035)]に再懸濁した。増殖培地中の細胞懸濁液の1mLのサンプルを、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)ViCellでカウントして、細胞生存率および1mL当たりの細胞数を決定した。次いで、マトリックスコンビマルチドロップ(Matrix Combi Multidrop)試薬ディスペンサーを使用して、1ウェル当たり2000個の生存可能な細胞が送達されるように残存する細胞懸濁液を増殖培地で調整し、細胞を白色の384ウェルの組織培養で処理したアッセイプレート(コーニング3570)に分配した。次いでアッセイプレートを5%二酸化炭素中の加湿した環境で、37℃で48時間インキュベートした。
【0235】
試験しようとする様々な濃度の各化合物(DMSO中)を、100μMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX;シグマ、カタログ番号I5879)を含有するアッセイ緩衝液(カルシウム/マグネシウムを含むHBSS(ロンザ/バイオウィッタカー(BioWhittaker)、カタログ番号10−527F)/0.1%BSA(シグマアルドリッチ、カタログ番号A7409−1L)/20mMのHEPES(ロンザ/バイオウィッタカー、カタログ番号17−737E)で希釈した。最終的なDMSO濃度は、1%である。
【0236】
48時間後、増殖培地をアッセイプレートウェルから取り出し、細胞を、5%二酸化炭素中の加湿した環境で、アッセイ緩衝液で連続的に希釈した化合物20μLで、37℃で30分処理した。30分のインキュベーション後、10μLの標識されたd2 cAMPおよび10μLの抗cAMP抗体(両方とも細胞溶解緩衝液で1:20に希釈した;製造元のアッセイプロトコールに記載された通り)を、アッセイプレートの各ウェルに添加した。次いでプレートを室温でインキュベートし、60分後、エンビジョン(Envision)2104マルチラベルプレートリーダーを用いて、330nmの励起ならびに615および665nmの放出を使用して、HTRFシグナルにおける変化を読んだ。生データを、cAMP標準曲線からの補間法によってnM cAMPに変換し(製造元のアッセイプロトコールに記載された通り)、各プレートに含まれる完全アゴニストGLP−1
7〜36の飽和濃度(1μM)に対する作用のパーセントを決定した。EC
50決定を、4−パラメーターロジスティック用量応答方程式を使用した曲線フィッティングプログラムで分析されたアゴニスト用量応答曲線から行った。
【0237】
実施例BB.CHO GLP−1RクローンC6−アッセイ2
細胞中のcAMPレベルを測定するHTRF(均一時間分解時間分解蛍光)cAMP検出キット(cAMP HIレンジアッセイキット;シスバイオ(Cis Bio)カタログ番号62AM6PEJ)を利用する細胞ベースの機能アッセイを用いて、GLP−1R媒介アゴニスト活性を決定した。この方法は、細胞によって生産された天然cAMPと色素d2で標識された外因性cAMPとの競合イムノアッセイである。トレーサー結合は、クリプテートで標識されたmAb抗cAMPによって可視化される。特異的なシグナル(すなわちエネルギー移動)は、標準または実験サンプルのいずれかにおいてcAMPの濃度に反比例する。
【0238】
ヒトGLP−1Rコード配列(NCBI参照配列NP_002053.3、天然に存在するバリアントLeu260Pheを含む)をpcDNA5−FRT−TOにサブクローニングし、低い受容体密度を安定して発現するクローンCHO細胞株を、製造元(サーモフィッシャー(ThermoFisher))によって記載されるようにしてFlp−In(商標)T−Rex(商標)システムを使用して単離した。
125I−GLP−1(パーキン・エルマー)を使用した飽和結合分析(ろ過アッセイ手順)は、この細胞株由来の原形質膜(クローンC6と名付けた)が、クローンH6細胞株と比べて、低いGLP−1R密度を発現すること(K
d:0.3nM、B
max:240fmol/mgタンパク質)を示した。
【0239】
細胞を低温保存から取り出し、40mLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS−ロンザ、カタログ番号17−512Q)に再懸濁し、22℃で、800×gで5分遠心分離した。DPBSを吸引し、細胞ペレットを、10mLの完全増殖培地(DMEM:F12、HEPESとの1:1混合物、L−Gln、500mL(DMEM/F12、ロンザ、カタログ番号12−719F)、10%熱不活性化ウシ胎児血清(ギブコ、カタログ番号16140−071)、5mLの100×Pen−Strep(ギブコ、カタログ番号15140−122)、5mLの100×L−グルタミン(ギブコ、カタログ番号25030−081)、700μg/mLハイグロマイシン(インビトロジェン、カタログ番号10687010)および15μg/mLブラストサイジン(ギブコ、カタログ番号R21001)に再懸濁した。増殖培地中の細胞懸濁液の1mLのサンプルをベクトン・ディッキンソンViCellでカウントして、細胞生存率および1mL当たりの細胞数を決定した。次いで、マトリックスコンビマルチドロップ試薬ディスペンサーを使用して、1ウェル当たり1600個の生存可能な細胞が送達されるように残存する細胞懸濁液を増殖培地で調整し、細胞を白色の384ウェルの組織培養で処理したアッセイプレート(コーニング3570)に分配した。次いでアッセイプレートを、加湿した環境(95%O
2、5%CO
2)中で、37℃で48時間インキュベートした。
【0240】
試験しようとする様々な濃度の各化合物(DMSO中)を、100μMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX;シグマ、カタログ番号I5879)を含有するアッセイ緩衝液[カルシウム/マグネシウムを含むHBSS(ロンザ/バイオウィッタカー、カタログ番号10−527F)/0.1%BSA(シグマアルドリッチ、カタログ番号A7409−1L)/20mMのHEPES(ロンザ/バイオウィッタカーカタログ番号17−737E)]で希釈した。化合物/アッセイ緩衝液混合物中の最終的なDMSO濃度は、1%である。
【0241】
48時間後、増殖培地をアッセイプレートウェルから取り出し、および〆細胞を、加湿した環境(95%O
2、5%CO
2)中で、アッセイ緩衝液で連続的に希釈した化合物20μLで37℃で30分処理した。30分のインキュベーション後、10μLの標識されたd2 cAMPおよび10μLの抗cAMP抗体(両方とも細胞溶解緩衝液で1:20に希釈した;製造元のアッセイプロトコールに記載された通り)を、アッセイプレートの各ウェルに添加した。次いでプレートを室温でインキュベートし、60分後、エンビジョン2104マルチラベルプレートリーダーで、330nmの励起ならびに615および665nmの放出を使用して、HTRFシグナルにおける変化を読んだ。生データを、cAMP標準曲線からの補間法によってnM cAMPに変換し(製造元のアッセイプロトコールに記載された通り)、各プレートに含まれる完全アゴニストGLP−1の飽和濃度(1μM)に対する作用のパーセントを決定した。EC
50決定を、4−パラメーターロジスティック用量応答方程式を使用した曲線フィッティングプログラムで分析されたアゴニスト用量応答曲線から行った。
【0242】
表X−1において、アッセイデータを、列挙した複製の数(数値)に基づく相乗平均(EC
50s)および相加平均(Emax)として、有効数字2桁まで提示する。ブランクセルは、その実施例に関するデータがないこと、またはEmaxが計算されなかったことを意味する。
【0243】
【表14】
【0244】
本明細書で言及された全ての特許、特許出願および参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。