特開2021-91683(P2021-91683A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-916832−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩の固体形態
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-91683(P2021-91683A)
(43)【公開日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩の固体形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/14 20060101AFI20210521BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 9/02 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20210521BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20210521BHJP
【FI】
   C07D405/14CSP
   A61K31/4545
   A61P3/10
   A61P1/16
   A61P13/12
   A61P27/02
   A61P43/00 105
   A61P3/06
   A61P11/00
   A61P3/04
   A61P35/00
   A61P9/02
   A61P9/10 101
   A61P9/00
   A61P9/12
   A61P9/04
   A61P17/02
   A61P7/00
   A61P19/02
   A61P29/00
   A61P19/10
   A61P25/16
   A61P27/12
   A61P3/00
   A61P15/00
   A61P7/02
   A61P19/06
   A61P15/10
   A61P17/00
   A61P17/06
   A61P1/04
   A61P25/28
   A61P25/18
   A61P25/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】75
(21)【出願番号】特願2020-202383(P2020-202383)
(22)【出願日】2020年12月7日
(31)【優先権主張番号】62/946,084
(32)【優先日】2019年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ギャリー・イー・アスプネス
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ダブリュー・バグリー
(72)【発明者】
【氏名】ウェスリー・デウィット・クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エム・カート
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ジェームズ・エドモンズ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・イー・フラナガン
(72)【発明者】
【氏名】二木 建太郎
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・アンドリュー・グリフィス
(72)【発明者】
【氏名】キム・ウアード
(72)【発明者】
【氏名】ヤジン・リアン
(72)【発明者】
【氏名】クリス・リンベラキス
(72)【発明者】
【氏名】アリン・ティー・ロンドレーガン
(72)【発明者】
【氏名】アラン・エム・マシオウェツ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ウォルター・ピオトロウスキー
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・ビー・ラッゲリ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA05
4C063BB01
4C063CC81
4C063DD10
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC39
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA13
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA37
4C086ZA42
4C086ZA43
4C086ZA45
4C086ZA51
4C086ZA54
4C086ZA59
4C086ZA68
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC21
4C086ZC31
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】GLP−1Rによって調節される疾患、状態または障害の処置のためのGLP1アゴニストの固体形態を提供する。
【解決手段】2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩の固体形態、例えば、水和物(例えば一水和物)結晶形態(例えば形態2または形態3)、または非晶質形態;加えて、医薬組成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩の水和物の結晶形態。
【請求項2】
一水和物の結晶形態である、請求項1に記載の水和物の結晶形態。
【請求項3】
2θで、7.1±0.2°、7.6±0.2°、10.7±0.2°、および19.4±0.2°に少なくとも2つのピークを含む粉末X線回折パターン(PXRD)を有する形態2である、請求項2に記載の水和物の結晶形態。
【請求項4】
形態2が、2θで、7.1±0.2°、7.6±0.2°、10.7±0.2°、および19.4±0.2°に少なくとも3つのピークを含む粉末X線回折パターン(PXRD)を有する、請求項3に記載の一水和物の結晶形態。
【請求項5】
形態2が、2θで、7.1±0.2°、7.6±0.2°、10.7±0.2°、および19.4±0.2°にピークを含む粉末X線回折パターン(PXRD)を有する、請求項4に記載の一水和物の結晶形態。
【請求項6】
2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩の一水和物の結晶形態(形態3)であって、形態3は、2θで、3.7±0.2°、7.4±0.2°、9.9±0.2°、14.8±0.2°、および20.6±0.2°に少なくとも2つのピークを含むPXRDを有する、上記一水和物の結晶形態。
【請求項7】
PXRDが、2θで、3.7±0.2°、7.4±0.2°、および14.8±0.2°にピークを含む、請求項6に記載の一水和物の結晶形態。
【請求項8】
PXRDが、2θで、3.7±0.2°、7.4±0.2°、14.8±0.2°、および20.6±0.2°にピークを含む、請求項6に記載の一水和物の結晶形態。
【請求項9】
PXRDが、2θで、3.7±0.2°、7.4±0.2°、9.9±0.2°、14.8±0.2°、および20.6±0.2°にピークを含む、請求項6に記載の一水和物の結晶形態。
【請求項10】
54.7±0.2ppmおよび138.4±0.2ppmに化学シフトを含む13C ssNMRスペクトルを有する、請求項6〜9のいずれか一項に記載の一水和物の結晶形態。
【請求項11】
13C ssNMRスペクトルが、54.7±0.2ppm、138.4±0.2ppm、および156.6ppm±0.2ppmに化学シフトを含む、請求項10に記載の一水和物の結晶形態。
【請求項12】
13C ssNMRスペクトルが、42.8±0.2ppm、54.7±0.2ppm、128.2±0.2ppm、138.4±0.2ppm、および156.6±0.2ppmに化学シフトを含む、請求項10に記載の一水和物の結晶形態。
【請求項13】
実質的に純粋である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態。
【請求項14】
治療有効量の請求項1〜13のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
治療有効量の2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩(「化合物1のトリス塩」)および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、化合物1のトリス塩の少なくとも5%は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態として存在する、上記組成物。
【請求項16】
化合物1のトリス塩の少なくとも10%が、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態として存在する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
化合物1のトリス塩の少なくとも30%が、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態として存在する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
化合物1のトリス塩の少なくとも50%が、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態として存在する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
化合物1のトリス塩の少なくとも80%が、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態として存在する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項20】
化合物1のトリス塩の少なくとも90%が、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態として存在する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項21】
化合物1のトリス塩の少なくとも95%が、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態として存在する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項22】
2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩の非晶質形態。
【請求項23】
実質的に純粋である、請求項22に記載の非晶質形態。
【請求項24】
治療有効量の請求項22または23に記載の非晶質形態および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項25】
治療有効量の2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩(「化合物1のトリス塩」)および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、化合物1のトリス塩の少なくとも5%が、請求項22または23に記載の非晶質形態として存在する、上記医薬組成物。
【請求項26】
治療有効量の2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩(「化合物1のトリス塩」)および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、化合物1のトリス塩は、化合物1のトリス塩の結晶形態および化合物1のトリス塩の非晶質形態を含む、上記医薬組成物。
【請求項27】
治療有効量の2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩(「化合物1のトリス塩」)および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、化合物1のトリス塩は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態および請求項22または23に記載の非晶質形態を含む、上記医薬組成物。
【請求項28】
疾患または障害を処置するための方法であって、治療有効量の請求項1〜13のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態を、このような処置が必要な哺乳動物に投与することを含み、該疾患または障害は、T1D、T2DM、前糖尿病、特発性T1D、LADA、EOD、YOAD、MODY、栄養不良関連糖尿病、妊娠糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、肝臓のインスリン抵抗性、耐糖能障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、腎疾患、糖尿病性網膜症、脂肪細胞の機能不全、内臓脂肪の蓄積、睡眠時無呼吸、肥満症、摂食障害、他の薬剤の使用による体重の増加、過剰な糖への欲求、異常脂質血症、インスリン過剰血症、NAFLD、NASH、線維症、線維化を伴うNASH、硬変症、肝細胞癌、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、末梢血管疾患、高血圧、内皮機能不全、血管コンプライアンスの障害、うっ血性心不全、心筋梗塞、脳卒中、出血性脳卒中、虚血性発作、外傷性脳傷害、肺高血圧症、血管形成術後の再狭窄、間欠性跛行、食後の脂肪血症、代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、骨粗鬆症、パーキンソン病、左室肥大、末梢動脈疾患、黄斑変性症、白内障、糸球体硬化症、慢性腎不全、代謝症候群、X症候群、月経前症候群、狭心症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、一過性虚血発作、血管再狭窄、グルコース代謝の障害、空腹時血漿グルコースの障害を有する状態、高尿酸血症、痛風、勃起不全、皮膚および結合組織の障害、乾癬、足潰瘍、潰瘍性大腸炎、高アポBリポタンパク血症、アルツハイマー病、統合失調症、認知障害、炎症性腸疾患、短腸症候群、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、多嚢胞卵巣症候群、ならびに嗜癖からなる群から選択される、上記方法。
【請求項29】
疾患または障害を処置するための方法であって、治療有効量の請求項22または23に記載の非晶質形態を、このような処置が必要な哺乳動物に投与することを含み、該疾患または障害は、T1D、T2DM、前糖尿病、特発性T1D、LADA、EOD、YOAD、MODY、栄養不良関連糖尿病、妊娠糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、肝臓のインスリン抵抗性、耐糖能障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、腎疾患、糖尿病性網膜症、脂肪細胞の機能不全、内臓脂肪の蓄積、睡眠時無呼吸、肥満症、摂食障害、他の薬剤の使用による体重の増加、過剰な糖への欲求、異常脂質血症、インスリン過剰血症、NAFLD、NASH、線維症、線維化を伴うNASH、硬変症、肝細胞癌、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、末梢血管疾患、高血圧、内皮機能不全、血管コンプライアンスの障害、うっ血性心不全、心筋梗塞、脳卒中、出血性脳卒中、虚血性発作、外傷性脳傷害、肺高血圧症、血管形成術後の再狭窄、間欠性跛行、食後の脂肪血症、代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、骨粗鬆症、パーキンソン病、左室肥大、末梢動脈疾患、黄斑変性症、白内障、糸球体硬化症、慢性腎不全、代謝症候群、X症候群、月経前症候群、狭心症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、一過性虚血発作、血管再狭窄、グルコース代謝の障害、空腹時血漿グルコースの障害を有する状態、高尿酸血症、痛風、勃起不全、皮膚および結合組織の障害、乾癬、足潰瘍、潰瘍性大腸炎、高アポBリポタンパク血症、アルツハイマー病、統合失調症、認知障害、炎症性腸疾患、短腸症候群、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、多嚢胞卵巣症候群、ならびに嗜癖からなる群から選択される、上記方法。
【請求項30】
疾患または障害を処置するための方法であって、治療有効量の、2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩(「化合物1のトリス塩」)を、このような処置が必要な哺乳動物に投与することを含み、化合物1のトリス塩は、化合物1のトリス塩の結晶形態および化合物1のトリス塩の非晶質形態を含み、該疾患または障害は、T1D、T2DM、前糖尿病、特発性T1D、LADA、EOD、YOAD、MODY、栄養不良関連糖尿病、妊娠糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、肝臓のインスリン抵抗性、耐糖能障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、腎疾患、糖尿病性網膜症、脂肪細胞の機能不全、内臓脂肪の蓄積、睡眠時無呼吸、肥満症、摂食障害、他の薬剤の使用による体重の増加、過剰な糖への欲求、異常脂質血症、インスリン過剰血症、NAFLD、NASH、線維症、線維化を伴うNASH、硬変症、肝細胞癌、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、末梢血管疾患、高血圧、内皮機能不全、血管コンプライアンスの障害、うっ血性心不全、心筋梗塞、脳卒中、出血性脳卒中、虚血性発作、外傷性脳傷害、肺高血圧症、血管形成術後の再狭窄、間欠性跛行、食後の脂肪血症、代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、骨粗鬆症、パーキンソン病、左室肥大、末梢動脈疾患、黄斑変性症、白内障、糸球体硬化症、慢性腎不全、代謝症候群、X症候群、月経前症候群、狭心症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、一過性虚血発作、血管再狭窄、グルコース代謝の障害、空腹時血漿グルコースの障害を有する状態、高尿酸血症、痛風、勃起不全、皮膚および結合組織の障害、乾癬、足潰瘍、潰瘍性大腸炎、高アポBリポタンパク血症、アルツハイマー病、統合失調症、認知障害、炎症性腸疾患、短腸症候群、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、多嚢胞卵巣症候群、ならびに嗜癖からなる群から選択される、上記方法。
【請求項31】
疾患または障害を処置するための方法であって、治療有効量の、2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩(「化合物1のトリス塩」)を、このような処置が必要な哺乳動物に投与することを含み、化合物1のトリス塩は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水和物の結晶形態および請求項22または23に記載の非晶質形態を含み、該疾患または障害は、T1D、T2DM、前糖尿病、特発性T1D、LADA、EOD、YOAD、MODY、栄養不良関連糖尿病、妊娠糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、肝臓のインスリン抵抗性、耐糖能障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、腎疾患、糖尿病性網膜症、脂肪細胞の機能不全、内臓脂肪の蓄積、睡眠時無呼吸、肥満症、摂食障害、他の薬剤の使用による体重の増加、過剰な糖への欲求、異常脂質血症、インスリン過剰血症、NAFLD、NASH、線維症、線維化を伴うNASH、硬変症、肝細胞癌、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、末梢血管疾患、高血圧、内皮機能不全、血管コンプライアンスの障害、うっ血性心不全、心筋梗塞、脳卒中、出血性脳卒中、虚血性発作、外傷性脳傷害、肺高血圧症、血管形成術後の再狭窄、間欠性跛行、食後の脂肪血症、代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、骨粗鬆症、パーキンソン病、左室肥大、末梢動脈疾患、黄斑変性症、白内障、糸球体硬化症、慢性腎不全、代謝症候群、X症候群、月経前症候群、狭心症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、一過性虚血発作、血管再狭窄、グルコース代謝の障害、空腹時血漿グルコースの障害を有する状態、高尿酸血症、痛風、勃起不全、皮膚および結合組織の障害、乾癬、足潰瘍、潰瘍性大腸炎、高アポBリポタンパク血症、アルツハイマー病、統合失調症、認知障害、炎症性腸疾患、短腸症候群、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、多嚢胞卵巣症候群、ならびに嗜癖からなる群から選択される、上記方法。
【請求項32】
前記疾患または障害が、肥満症、NAFLD、NASH、線維化を伴うNASH、T2D、および心臓血管疾患から選択される、請求項28〜31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン塩の固体形態(例えば結晶形態);それを調製するためのプロセス;その医薬組成物、剤形、およびヒトなどの哺乳動物におけるGLP−1Rによって調節される疾患、状態または障害を処置することにおける使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、その罹患率の高まりと付随する健康上のリスクのために、大きな公衆の健康上の懸念である。この疾患は、インスリン生産、インスリン作用、またはその両方における欠陥が原因で起こる高いレベルの血中グルコースを特徴とする。糖尿病の2つの主要な形態として1型および2型が認められている。1型糖尿病(T1D)は、体の免疫系が、血中グルコースを制御するホルモンであるインスリンを作製する体内の唯一の細胞である膵臓ベータ細胞を破壊する場合に発症する。1型糖尿病を有する人は、生き延びるために、インスリンを注射またはポンプによって投与しなければならない。2型糖尿病(一般的にT2DMと称される)は通常、インスリン抵抗性から始まっているか、または許容できるグルコースレベルを維持するにはインスリン生産が不十分である場合のいずれかである。
【0003】
現在、高血糖症とそれに続くT2DMを処置するための様々な薬理学的なアプローチが利用可能である(Hampp, C.ら、Use of Antidiabetic Drugs in the U.S.、2003〜2012、Diabetes Care 2014、37、1367〜1374)。これらは、それぞれ異なる一次メカニズムを介して作用する6つの主要なクラスに分類することができる:(A)インスリン分泌促進物質であって、例えば、スルホニル尿素(例えば、グリピジド、グリメピリド、グリブリド)、メグリチニド(例えば、ナテグリニド(nateglidine)、レパグリニド)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害剤(例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、デュトグリプチン、リナグリプチン、サキサグリプチン(saxogliptin))、およびグルカゴン様ペプチド−1受容体(GLP−1R)アゴニスト(例えば、リラグルチド、アルビグルチド、エキセナチド、リキシセナチド、デュラグルチド、セマグルチド)などであり、これらは、膵臓ベータ細胞に作用することによってインスリンの分泌を強化する。スルホニル尿素およびメグリチニドは、効能および忍容性が限定的であり、体重の増加を引き起こし、しばしば低血糖症を誘発する。DPP−IV阻害剤は、効能が限定的である。販売されているGLP−1Rアゴニストは、皮下注射によって投与されるペプチドである。リラグルチドは加えて、肥満症の処置のために承認されている。(B)ビグアニド(例えば、メトホルミン)は、主として肝臓のグルコース生産を減少させることによって作用すると考えられる。ビグアニドはしばしば胃腸障害および乳酸アシドーシスを引き起こし、それらの使用は制限されている。(C)アルファ−グルコシダーゼの阻害剤(例えば、アカルボース)は、腸のグルコース吸収を減少させる。これらの薬剤はしばしば胃腸障害を引き起こす。(D)チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン、ロジグリタゾン)は、肝臓、筋肉および脂肪組織中の特異的な受容体(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体−ガンマ)に作用する。それらは脂質代謝を制御し、その後、インスリンの作用に対するこれらの組織の応答を強化する。これらの薬物の頻繁な使用は、体重の増加を引き起こす可能性があり、浮腫および貧血を誘発する可能性がある。(E)インスリンは、より重度の症例で、単独、または上記の薬剤と組み合わせるかのいずれかで使用されるが、その頻繁な使用も体重の増加を引き起こす可能性があり、低血糖症のリスクを有する。(F)ナトリウム−グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤(例えば、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、エルツグリフロジン)は、腎臓におけるグルコースの再吸収を阻害し、それによって血中グルコースレベルを低減させる。この薬物の新興クラスは、ケトアシドーシスや尿路感染を併発させる可能性がある。
【0004】
しかしながら、GLP−1RアゴニストおよびSGLT2阻害剤を除いて、このような薬物は効能が限定的であり、最も重要な問題、すなわちβ細胞機能の減衰とそれに伴う肥満症に対処していない。
【0005】
肥満症は、現代社会において高度に蔓延する慢性疾患であり、高血圧、高コレステロール血症、および冠動脈心疾患などの非常に多くの医学的問題に関連する。さらにこれは、T2DMおよびインスリン抵抗性と高度に相関を示し、その後者は、一般的に、インスリン過剰血症もしくは高血糖症、またはその両方を伴う。加えて、T2DMは、冠動脈疾患リスクの2倍から4倍の増加に関連する。現状で、高い効能で肥満症を解消する唯一の処置は、肥満外科手術であるが、この処置は、高価であり、危険がある。薬理学的介入は、一般的に、それより有効性が低く、副作用を伴う。したがって、より少ない副作用および便利な投与での、より有効な薬理学的介入への明白な必要性がある。
【0006】
T2DMは、最も一般的に高血糖症およびインスリン抵抗性に関連するが、T2DMに関連する他の疾患としては、肝臓のインスリン抵抗性、耐糖能障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、肥満症、異常脂質血症、高血圧、インスリン過剰血症、および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が挙げられる。
【0007】
NAFLDは、代謝症候群の肝臓における発現であり、脂肪変性、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、線維症、硬変症、最終的には肝細胞癌を含む広範な肝臓の状態である。NAFLDおよびNASHは、肝臓脂質が上昇した個体の最大の比率を占めることから、一次脂肪性肝疾患とみなされる。NAFLD/NASHの重症度は、脂質の存在、炎症細胞浸潤、肝細胞風船化、および線維症の程度に基づく。脂肪変性を有する全ての個体が必ずしもNASHに進行するとは限らないが、相当数がそうなる。
【0008】
GLP−1は、食物の摂取に応答して腸内のL細胞によって分泌される、長さが30アミノ酸のインクレチンホルモンである。GLP−1は、生理学的およびグルコース依存性の方式でインスリン分泌を刺激し、グルカゴン分泌を減少させ、胃内容排出を抑制し、食欲を減少させ、ベータ細胞の増殖を刺激することが示されている。非臨床的な実験においてGLP−1は、グルコース依存性インスリン分泌に重要な遺伝子の転写を刺激すること、およびベータ細胞の再生を促進することによって、ベータ細胞の能力の継続を促進する(Meierら、Biodrugs. 2003;17 (2): 93〜102)。
【0009】
健康な個体において、GLP−1は、膵臓によりグルコース依存性インスリン分泌を刺激し、その結果として末梢でのグルコース吸収の増加をもたらすことによって、食事後の血中グルコースレベルを制御するという重要な役割を果たす。GLP−1はまた、グルカゴン分泌も抑制し、肝臓のグルコース産出の低減をもたらす。加えて、GLP−1は、胃内容排出を遅延させ、小腸の運動を遅くして、食物吸収を遅延させる。T2DMを有する人において、正常な食後のGLP−1上昇は、起こらないかまたは低減される(Vilsboll Tら、Diabetes. 2001. 50;609〜613)。
【0010】
Holst(Physiol. Rev. 2007、87、1409)およびMeier(Nat. Rev. Endocrinol. 2012、8、728)は、GLP−1受容体アゴニスト、例えばGLP−1、リラグルチドおよびエキセンジン−4は、空腹時および食後血糖(FPGおよびPPG)を低減することによってT2DMを有する患者における血糖コントロールを改善する、以下の3つの主要な薬理活性を有することを記載している:(i)グルコース依存性インスリン分泌の増加(第1相および第2相の改善)、(ii)高血糖状態下でのグルカゴン抑制活性、(iii)結果として食事由来のグルコース吸収の遅れを引き起こす胃内容排出速度の遅延。
【0011】
心血管代謝疾患および関連疾患のための容易に施される防止および/または処置の必要が未だある。
2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸(本明細書では「化合物1」と称される)は、GLP1アゴニストである。
【0012】
【化1】
【0013】
化合物1(遊離酸の形態で、およびそのトリス塩としての両方)は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる2019年6月10日付けで出願された米国特許出願第16/436,311号および2019年6月11日付けで出願された国際出願PCT/IB2019/054867号の実施例10で調製された。そこでは、化合物1は、2−({4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボン酸、DIAST−X2と名付けられた:
【0014】
【化2】
【0015】
式中、化合物構造の左の部分のキラル中心は、「abs」と印付けられ、キラル中心が唯一の立体配置を有する(すなわち、そのキラル中心に関してラセミ化合物ではない)ことを示す。
【0016】
加えて、米国特許出願第16/436,311号および国際出願PCT/IB2019/054867号は、化合物1のトリス塩の無水結晶形態(形態Aとして設計された)を報告した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許出願第16/436,311号
【特許文献2】PCT/IB2019/054867号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Hampp, C.ら、Use of Antidiabetic Drugs in the U.S.、2003〜2012、Diabetes Care 2014、37、1367〜1374
【非特許文献2】Meierら、Biodrugs. 2003;17 (2): 93〜102
【非特許文献3】Vilsboll Tら、Diabetes. 2001. 50;609〜613
【非特許文献4】Holst(Physiol. Rev. 2007、87、1409)
【非特許文献5】Meier(Nat. Rev. Endocrinol. 2012、8、728)
【発明の概要】
【0019】
固体形態、例えば特定の薬物の結晶形態(例えば、無水物、水和物、溶媒和物などを含む)が、しばしば、薬物の調整し容易さ、安定性、溶解性、貯蔵安定性、配合し容易さ、取り扱いの容易さ、ならびにインビボにおける薬理および/または効能の重要な決定要素であることが周知である。同じ物質組成が異なる結晶格子の配列で結晶化すると、異なる結晶形態が生じ、結果として特定の多形形態に特異的な異なる熱力学的特性および安定性が生じる。2つまたはそれより多くの結晶形態が生じ得る場合、結晶形態のそれぞれを純粋な形態で作製するための方法があることが望ましい。どの結晶形態が好ましいかを決定する際に、結晶形の多数の特性を比較して、多くの物理的特性変数に基づいて好ましい結晶形を選ぶ必要がある。例えば調製し容易さ、安定性などの特定の態様が重要であるとみなされる一部の環境において、1つの結晶形態が好ましい場合があることが十分考えられる。他の状況では、より大きい溶解性および/または優れた薬物動態学のために、異なる結晶形態が好ましい場合がある。さらに、1つの純粋な結晶形態に関連する可能性がある利点のために、1つの物質の2つまたはそれより多くの結晶形態が存在し得る場合、多形の変換(すなわち、ある結晶形から別の結晶形への変換;またはある結晶形と非晶質の形態との間の変換)を防ぐかまたは最小化することが望ましい。このような多形の変換は、結晶形態を含有する配合物の調製中と、結晶形を含有する医薬剤形の貯蔵中の両方で起こる可能性がある。改善された薬物製剤、例えばより優れた生物学的利用率またはより優れた安定性を示す薬物製剤が常に求められていることから、既存の薬物分子の新しい、またはより純粋な固体(例えば結晶)形態の継続的な必要性がある。本明細書に記載される化合物1のトリス塩の新規の固体(例えば結晶)形態は、この目的および他の重要な目的に向けられたものである。
【0020】
発明の概要
本発明は、本明細書で提供される粉末X線回折データ、13C固体NMRデータ、および/または任意選択で単結晶スペクトルデータに従って特徴付けられた、2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸のトリス塩(例えば形態2または形態3)の固体形態、例えば水和物(例えば一水和物)の結晶形態、または非晶質形態を提供する。
【0021】
本発明はさらに、本発明の水和物(例えば一水和物)の結晶形態(例えば形態2または形態3)を含有する組成物を提供する。
本発明はさらに、本発明の水和物(例えば一水和物)の結晶形態(例えば形態2または形態3)を調製するための方法、例えば、形態3を調製するための方法であって、混合溶媒中で化合物1のトリス塩の無水結晶形態(例えば形態A)をスラリー化して、一水和物の結晶形態を形成することを含み、混合溶媒は、水およびアセトニトリルを含む、方法を提供する。
【0022】
本発明はさらに、疾患または障害を処置するための方法であって、治療有効量の本発明の水和物(例えば一水和物)の結晶形態(例えば形態2または形態3)を、このような処置が必要な哺乳動物に投与することを含み、該疾患または障害は、T1D、T2DM、前糖尿病、特発性T1D、LADA、EOD、YOAD、MODY、栄養不良関連糖尿病、妊娠糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、肝臓のインスリン抵抗性、耐糖能障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、腎疾患、糖尿病性網膜症、脂肪細胞の機能不全、内臓脂肪の蓄積、睡眠時無呼吸、肥満症、摂食障害、他の薬剤の使用による体重の増加、過剰な糖への欲求、異常脂質血症、インスリン過剰血症、NAFLD、NASH、線維症、線維化を伴うNASH、硬変症、肝細胞癌、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、末梢血管疾患、高血圧、内皮機能不全、血管コンプライアンスの障害、うっ血性心不全、心筋梗塞、脳卒中、出血性脳卒中、虚血性発作、外傷性脳傷害、肺高血圧症、血管形成術後の再狭窄、間欠性跛行、食後の脂肪血症、代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、骨粗鬆症、パーキンソン病、左室肥大、末梢動脈疾患、黄斑変性症、白内障、糸球体硬化症、慢性腎不全、代謝症候群、X症候群、月経前症候群、狭心症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、一過性虚血発作、血管再狭窄、グルコース代謝の障害、空腹時血漿グルコースの障害を有する状態、高尿酸血症、痛風、勃起不全、皮膚および結合組織の障害、乾癬、足潰瘍、潰瘍性大腸炎、高アポBリポタンパク血症(hyper apo B lipoproteinemia)、アルツハイマー病、統合失調症、認知障害、炎症性腸疾患、短腸症候群、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、多嚢胞卵巣症候群、および嗜癖からなる群から選択される、方法を提供する。
【0023】
本発明はさらに、GLP−1Rによって調節される疾患または障害を処置することにおける、2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボン酸のトリス塩の非晶質形態、その医薬組成物、およびその使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、Cu放射線源を備えたブルカー(Bruker)AXS D8エンデバー(Endeavor)回折計で行われた、化合物1のトリス塩の無水結晶形態(形態A)の観察された粉末X線回折パターンを示す。
図2図2は、ブルカー−バイオスピン・アバンス(Avance)III 500MHz(H周波数)NMR分光計に配置されたブルカー−バイオスピン(BioSpin)CPMASプローブで実行された、化合物1のトリス塩の形態Aの観察された13C ssNMRパターンを示す。ハッシュマークでマークされたピークおよび灰色の影を付けたボックスは、スピニングサイドバンドである。
図3図3は、化合物1のトリス塩の一水和物の結晶形態(形態2)の例示的な単一の結晶構造を示す。
図4図4は、化合物1のトリス塩の形態2の、その単結晶X線データ分析情報に基づく計算/シミュレートされたPXRDパターンを示す。
図5図5は、化合物1のトリス塩の一水和物の結晶形態(形態3)の例示的な単一の結晶構造を示す。
図6図6は、Cu放射線源を備えたブルカーAXS D8エンデバー回折計で行われた、化合物1のトリス塩の形態3の観察された粉末X線回折パターンを示す。
図7図7は、ブルカー−バイオスピン・アバンスIII500MHz(H周波数)NMR分光計に配置されたブルカー−バイオスピンCPMASプローブで実行された、化合物1のトリス塩の形態3の観察された13C ssNMRパターンを示す。ハッシュマークでマークされたピークおよび灰色の影を付けたボックスは、スピニングサイドバンドである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
第1の側面において、本発明は、化合物1のトリス塩の水和物(例えば一水和物)の結晶形態であって、例えば、単結晶X線データ、粉末X線回折パターン(PXRD)、および他の固体の特性を利用した方法、例えば固体NMRに関するその固有な固体状態のシグネチャーによって同定することができる、結晶形態を提供する。本明細書で開示された化合物1のトリス塩の水和物の結晶形態は、結晶性材料/複合体の結晶格子中に化合物1のトリス塩と水(水和物の水)の両方を含む結晶性材料/複合体を指す。
【0026】
第2の側面において、本発明は、本明細書において形態2と指定された化合物1のトリス塩の一水和物の結晶形態を提供する。化合物1のトリス塩の一水和物の結晶形態(形態2)は、例えば、単結晶X線データ、粉末X線回折パターン(PXRD)、および他の固体の特性を利用した方法に関するその固有な固体状態のシグネチャーによって同定することができる。
【0027】
形態2は、溶媒中の化合物1のトリス塩溶液の遅い溶剤蒸発により形態2を沈殿させることによって調製でき、この場合、溶媒は、プロトン性有機溶媒(水と混和性である)中、例えばメタノールまたはエタノールなどのアルコール中、約3%〜約10%(例えば約2%〜約5%、または約3%〜約4%、v/v)の水を含む。一部の実施態様において、形態2は、溶媒中の化合物1のトリス塩溶液の遅い溶剤蒸発によって調製され、この場合、溶媒は、メタノール中、約2%〜約5%(または例えば約3%〜約4%、v/v)の水を含む。一部の実施態様において、化合物1のトリス塩の溶液は、例えば、水と混和性であるプロトン性有機溶媒(例えばメタノール(methonal)などのアルコール)中の化合物1の溶液をトリスの水溶液と混合することによって、インサイチュで生成される。
【0028】
形態2は、図4に示されるものと実質的に同じ計算/シミュレートされたPXRDパターンを有する。図4のPXRDパターンにおけるシミュレートされたピークの配置および強度は、表E2−5に提供される。2θ±0.2°2θとして表される形態2の一部の特徴的なPXRDピークは、7.1、7.6、10.7、および19.4(回折角)におけるものである。一部の実施態様において、形態2は、7.1、7.6、10.7、および19.4において、2θ±0.2°2θの単位で、少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターン(PXRD)を有する。一部の実施態様において、形態2は、7.1、7.6、10.7、および19.4において、2θ±0.2°2θの単位で、少なくとも2つのピークを含むPXRDを有する。一部の実施態様において、形態2は、7.1および10.7において、2θ±0.2°2θの単位で、少なくとも2つのピークを含むPXRDを有する。一部の実施態様において、形態2は、7.1および7.6において、2θ±0.2°2θの単位で、少なくとも2つのピークを含むPXRDを有する。一部の実施態様において、形態2は、7.1、7.6、および10.7において、2θ±0.2°2θの単位で、少なくとも3つのピークを含むPXRDを有する。一部の実施態様において、形態2は、7.1、7.6、および19.4において、2θ±0.2°2θの単位で、少なくとも3つのピークを含むPXRDを有する。一部の実施態様において、形態2は、7.1、7.6、10.7、および19.4において、2θ±0.2°2θの単位で、少なくとも4つのピークを含むPXRDを有する。
【0029】
第3の側面において、本発明は、本明細書において形態3と指定された化合物1のトリス塩の一水和物の結晶形態を提供する。化合物1のトリス塩の一水和物の結晶形態(形態3)は、例えば、単結晶X線データ、PXRD、13C ssNMR、および他の固体の特性を利用した方法に関するその固有な固体状態のシグネチャーによって同定することができる。
【0030】
形態3は、スラリーからスラリーへの変換によって調製することができる。溶媒系中の形態A(化合物1のトリス塩の無水形態)のスラリーは、形態Aから形態3に変換するのに十分な程度に長い期間にわたり撹拌され、この場合、溶媒系は、非プロトン性有機溶媒(例えばアセトニトリルまたはテトラヒドロフラン)および水を含む。一部の実施態様において、溶媒系は、アセトニトリルおよび水を含み、溶媒系中の水とアセトニトリルとの比率は、約2:98〜約15:85(例えば約8:92v/v)である。一部の実施態様において、溶媒系(mLで)と形態A(グラムで)との比率は、約10:1〜約40:1、例えば、約15:1〜約30:1、または約25:1〜約35:1である。スラリーからスラリーへの変換は、室温で十分に混合/撹拌しながら行うことができる。出発材料である形態Aの調製(およびその物理的な特徴的な特性)は、実施例1に示される。形態Aの形態3への変換は、PXRDによってモニター/評価することができる。
【0031】
代替として、形態3は、溶媒系中の化合物1のトリス塩の濃縮(例えば飽和)溶液へのアセトニトリルの蒸気拡散によって調製することができ、この場合、溶媒系は、アセトニトリルおよび水の混合物であり、溶媒系中の水のパーセンテージは、約10体積%より高く、例えば約15%である。一部の実施態様において、飽和溶液、濃縮(例えば飽和)溶液中の化合物1のトリス塩は、インサイチュで、例えば、アセトニトリル中の化合物1の溶液をトリスの水溶液と混合することによって(例えば、約1:1のモル比で)生成することができる。代替として、アセトニトリルは、本明細書に記載される蒸気拡散方法において、水と混和性である別の非プロトン性有機溶媒(例えばテトラヒドロフラン)で置き換えてもよい[すなわち、形態3は、溶媒系中の化合物1のトリス塩の濃縮(例えば飽和)溶液への非プロトン性溶媒の蒸気拡散によって調製することができ、この場合、溶媒系は、非プロトン性有機溶媒および水の混合物である]。
【0032】
形態3は、図6に示されるものと実質的に同じPXRDパターンを有する。図6におけるPXRDパターンのピークの配置および強度は、表E3−5に提供される。2θ±0.2°2θとして表される形態3の一部の特徴的なPXRDピークは、3.7、7.4、9.9、14.8、および20.6(回折角)にある。一部の実施態様において、形態3は、2θ±0.2°2θの単位で、3.7、7.4、9.9、14.8、および20.6に少なくとも1、2、3、または4つのピークを含むPXRDを有する。一部の実施態様において、形態3は、2θ±0.2°2θの単位で、3.7、7.4、9.9、14.8、および20.6に少なくとも2または3つのピークを含むPXRDを有する。一部の実施態様において、形態3は、2θ±0.2°2θの単位で、7.4および14.8に2つのピークを含むPXRDを有する。一部の実施態様において、形態3は、2θ±0.2°2θの単位で、3.7、7.4、および14.8に3つのピークを含むPXRDを有する。一部の実施態様において、形態3は、2θ±0.2°2θの単位で、3.7、7.4、14.8、および20.6に4つのピークを含むPXRDを有する。一部の実施態様において、形態3は、2θ±0.2°2θの単位で、3.7、7.4、9.9、14.8、および20.6に5つのピークを含むPXRDを有する。一部の実施態様において、形態3は、2θ±0.2°2θの単位で、3.7、7.4、9.9、11.1、14.8、18.2、20.6、23.5、24.3、および24.6にピークを含むPXRDを有する。
【0033】
形態3は、図7に示されるものと実質的に同じ13C ssNMRスペクトルを有する。図7で示されるような形態3の13C化学シフト(±0.2ppm)は、表E3−6に列挙される。ppmとして表される形態3の一部の特徴的な13C ssNMR化学シフトは、42.8、54.7、128.2、138.4および156.6±0.2ppmにある。
【0034】
一部の実施態様において、形態3は、54.7および138.4±0.2ppmに化学シフトを含む13C ssNMRスペクトルを有する。一部の実施態様において、形態3は、54.7、138.4および156.6ppm±0.2ppmに化学シフトを含む13C ssNMRスペクトルを有する。
【0035】
第4の側面において、本発明はさらに、化合物1のトリス塩の非晶質形態を提供する。化合物1のトリス塩の非晶質形態は、示差的な粉末X線回折パターンを生じない(すなわち、そのPXRDは、形態Aまたは形態3のPXRDにおける場合のように鋭いピークを有さない)。化合物1のトリス塩の非晶質形態は、例えば、凍結乾燥プロセス(化合物1のトリス塩の溶液から開始する)によって調製することができる。
【0036】
いずれの本発明の固体形態も実質的に純粋であってもよい。本明細書で使用される場合、特定の固体形態(例えば結晶形態)に対して言及される用語「実質的に純粋な」は、特定の固体形態(例えば結晶形態)に含まれる化合物1のトリス塩の他のあらゆる物理的形態が、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、または1重量%未満であることを意味する。
【0037】
用語「実質的に同じ」は、X線粉末回折パターンを記載するのに使用される場合、ピークが±0.2°2θの標準偏差以内であるパターンを含むことを意味する。
用語「実質的に同じ」は、13C ssNMRスペクトルを記載するのに使用される場合、化学シフトが±0.2ppmの標準偏差以内である13C ssNMRスペクトルを含むことを意味する。
【0038】
用語「約」は、一般的に、所与の値または範囲の10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内であることを意味する。代替として、用語「約」は、当業者によって検討される場合に許容できる標準誤差以内であることを意味する。
【0039】
用語「トリス」は、1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミン、を意味し、これはまた、THAM、トロメタミン、または2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオールとしても公知である。
【0040】
化合物1のトリス塩は、1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミンを使用して製造された化合物1の塩を意味する。トリスは、化合物1のカルボン酸部分に関連する。別段の指定がない限り、化合物1のトリス塩と述べられる場合、対イオンと化合物1とが、約1:1(すなわち0.9:1.0から1.0:0.9、例えば、0.95:1.00から1.00:0.95)の化学量論的な比率にある。化合物1のトリス塩別の化学名は、1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム2−((4−((S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−4−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)−1−(((S)−オキセタン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−カルボキシレートであり、これはまた、例えば、以下の構造の1つによって表すこともできる。
【0041】
【化3】
【0042】
当業者は、同じ化合物(同じ塩を含む)を名付けるのに複数の学術名が使用できることを容易に理解するであろう。
用語「一水和物」は、化合物(または塩)の結晶形態を記載するのに使用される場合、水和物の水と化合物(または塩)との化学量論的な比率が、約1:1(例えば、0.9:1.0から1.1:1.0)であることを意味する。
【0043】
別の実施態様において、本発明は、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤と混合された、本発明の結晶形態(例えば形態3)を含む医薬組成物を提供する。これは、本明細書で論じられる少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤および1つまたはそれより多くの他の治療剤と混合された、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の結晶形態(例えば形態3)を含む医薬組成物を含むと予想される。
【0044】
別の実施態様において、本発明は、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤と混合された、本発明の非晶質形態を含む医薬組成物を提供する。これは、本明細書で論じられる少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤および1つまたはそれより多くの他の治療剤と混合された、本発明の非晶質形態を含む医薬組成物を含むと予想される。
【0045】
別の実施態様において、本発明は、治療有効量の化合物1のトリス塩および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、化合物1のトリス塩の少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%が、本発明の固体形態(例えば、形態2、形態3、または非晶質形態)の1つとして存在する、医薬組成物を提供する。
【0046】
別の実施態様において、本発明は、治療有効量の化合物1のトリス塩および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、化合物1のトリス塩は、少なくとも2つの固体形態として、例えば、結晶形態および非晶質形態として存在する、医薬組成物を提供する。
【0047】
別の実施態様において、本発明は、治療有効量の化合物1のトリス塩および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、化合物1のトリス塩は、少なくとも2つの固体形態として、例えば、本発明の結晶形態(例えば、形態2または形態3)および非晶質形態として存在する、医薬組成物を提供する。さらなる実施態様において、本発明は、治療有効量の化合物1のトリス塩および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、化合物1のトリス塩は、2つの固体形態で存在し、その一方は非晶質形態であり、他方は形態3である、医薬組成物を提供する。
【0048】
別の実施態様において、本発明は、治療有効量の化合物1のトリス塩および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、化合物1のトリス塩は、2つの固体形態で存在し、その一方は非晶質であり、他方は形態2である、医薬組成物を提供する。
【0049】
別の実施態様において、本発明は、治療有効量の化合物1のトリス塩および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、化合物1のトリス塩は、2つの固体形態で存在し、その一方は形態Aであり、他方は形態3である、医薬組成物を提供する。
【0050】
本発明はまた、以下の実施態様も含む:
医薬として使用するための、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の固体形態(例えば形態2、形態3、または非晶質形態);
T2DM、前糖尿病、肥満症、NASH(例えば線維化を伴うNASH)、NAFLD、および心臓血管疾患を含む本明細書で論じられる心血管代謝疾患および関連する疾患の防止および/または処置で使用するための、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の固体形態(例えば形態2、形態3、または非晶質形態);
治療有効量の本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の固体形態(例えば形態2、形態3、または非晶質形態)を対象に投与することを含む、GLP−1Rのアゴニストが指示される疾患を、このような防止および/または処置を必要とする対象において処置する方法;
GLP−1Rのアゴニストが指示される疾患または状態を処置するための医薬品を製造するための、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の固体形態(例えば形態2、形態3、または非晶質形態)の使用;
GLP−1Rのアゴニストが指示される疾患または状態の処置で使用するための本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の固体形態(例えば形態2、形態3、または非晶質形態);または
本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の固体形態(例えば形態2、形態3、または非晶質形態)を含む、GLP−1Rのアゴニストが指示される疾患または状態を処置するための医薬組成物。
【0051】
本発明はまた、以下の実施態様も含む:
医薬として使用するための、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の結晶形態(例えば形態3);
T2DM、前糖尿病、肥満症、NASH(例えば線維化を伴うNASH)、NAFLD、および心臓血管疾患を含む本明細書で論じられる心血管代謝疾患および関連する疾患の防止および/または処置で使用するための、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の結晶形態(例えば形態3);
治療有効量の本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の結晶形態(例えば形態3)を対象に投与することを含む、GLP−1Rのアゴニストが指示される疾患を、このような防止および/または処置を必要とする対象において処置する方法;
GLP−1Rのアゴニストが指示される疾患または状態を処置するための医薬品を製造するための、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の結晶形態(例えば形態3)の使用;
GLP−1Rのアゴニストが指示される疾患または状態の処置で使用するための、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の結晶形態(例えば形態3);または
GLP−1Rのアゴニストが指示される疾患または状態を処置するための、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の結晶形態(例えば形態3)を含む医薬組成物。
【0052】
本発明の固体形態の全ての例は、あらゆる数の本明細書に記載されるそれぞれ個々の実施態様とのあらゆる組合せで、個々に、または一緒の群で特許請求することができる。
本発明はまた、T2DM、前糖尿病、肥満症、NASH(例えば線維化を伴うNASH)、NAFLD、および心臓血管疾患を含む本明細書で論じられる心血管代謝疾患および関連する疾患の処置および/または防止で使用するための、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の固体形態(例えば形態2、形態3、または非晶質形態)を含む医薬組成物にも関する。
【0053】
本発明はまた、T2DM、前糖尿病、肥満症、NASH(例えば線維化を伴うNASH)、NAFLD、および心臓血管疾患を含む本明細書で論じられる心血管代謝疾患および関連する疾患の処置および/または防止で使用するための、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の結晶形態(例えば形態3)を含む医薬組成物にも関する。
【0054】
本発明の別の実施態様は、GLP−1Rアゴニストが指示される疾患および/または障害の処置および/または防止で使用するための、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された、本発明の固体形態(例えば形態2、形態3、または非晶質形態)、例えば本発明の結晶形態(例えば形態3)であって、上記疾患および/または障害は、糖尿病(T1Dおよび/またはT2DM、前糖尿病を含む)、特発性T1D(1b型)、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、早発性T2DM(EOD)、若年性非典型糖尿病(YOAD)、若年発症成人型糖尿病(MODY)、栄養不良関連糖尿病、妊娠糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、肝臓のインスリン抵抗性、耐糖能障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、腎疾患(例えば、急性腎臓障害、尿細管機能障害、近位尿細管への炎症促進性の変化)、糖尿病性網膜症、脂肪細胞の機能不全、内臓脂肪の蓄積、睡眠時無呼吸、肥満症(視床下部性肥満症および単一遺伝子性肥満症を含む)および関連の共存症(例えば、変形性関節症および尿失禁)、摂食障害(気晴らし食い症候群、神経性食欲亢進、および症候性肥満症、例えばプラダー−ウィリーおよびバルデー−ビードル症候群を含む)、他の薬剤の使用による体重の増加(例えば、ステロイドおよび抗精神病薬の使用による)、過剰な糖への欲求、異常脂質血症(高脂血症、高トリグリセリド血症、総コレステロールの増加、高LDLコレステロール、および低HDLコレステロールを含む)、インスリン過剰血症、NAFLD(関連の疾患、例えば脂肪変性、NASH、線維症、線維化を伴うNASH、硬変症、および肝細胞癌を含む)、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患を含む)、末梢血管疾患、高血圧、内皮機能不全、血管コンプライアンスの障害、うっ血性心不全、心筋梗塞(例えば壊死およびアポトーシス)、脳卒中、出血性脳卒中、虚血性発作、外傷性脳傷害、肺高血圧症、血管形成術後の再狭窄、間欠性跛行、食後の脂肪血症、代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、骨粗鬆症、パーキンソン病、左室肥大、末梢動脈疾患、黄斑変性症、白内障、糸球体硬化症、慢性腎不全、代謝症候群、X症候群、月経前症候群、狭心症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、一過性虚血発作、血管再狭窄、グルコース代謝の障害、空腹時血漿グルコースの障害を有する状態、高尿酸血症、痛風、勃起不全、皮膚および結合組織の障害、乾癬、足潰瘍、潰瘍性大腸炎、高アポBリポタンパク血症、アルツハイマー病、統合失調症、認知障害、炎症性腸疾患、短腸症候群、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、多嚢胞卵巣症候群、ならびに嗜癖(例えば、アルコールおよび/または薬物乱用)を含む、上記固体形態に関する。
【0055】
室温:RT(15〜25℃)。
メタノール:MeOH。
エタノール:EtOH。
【0056】
イソプロパノール:iPrOH。
酢酸エチル:EtOAc。
テトラヒドロフラン:THF。
【0057】
トルエン:PhCH
炭酸セシウム:CsCO
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド:LiHMDS。
【0058】
ナトリウムt−ブトキシド:NaOtBu。
カリウムt−ブトキシド:KOtBu。
リチウムジイソプロピルアミド:LDA。
【0059】
トリエチルアミン:NEt
N,N−ジイソプロピルエチルアミン:DIPEA。
炭酸カリウム:KCO
【0060】
ジメチルホルムアミド:DMF。
ジメチルアセトアミド:DMAc。
ジメチルスルホキシド:DMSO。
【0061】
N−メチル−2−ピロリジノン:NMP。
水素化ナトリウム:NaH。
トリフルオロ酢酸:TFA。
【0062】
無水トリフルオロ酢酸:TFAA。
無水酢酸:AcO。
ジクロロメタン:DCM。
【0063】
1,2−ジクロロエタン:DCE。
塩酸:HCl。
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン:DBU。
【0064】
ボラン−ジメチルスルフィド複合体:BH−DMS。
ボラン−テトラヒドロフラン複合体:BH−THF。
水素化アルミニウムリチウム:LAH。
【0065】
酢酸:AcOH。
アセトニトリル:MeCN。
p−トルエンスルホン酸:pTSA。
【0066】
ジベンジリデンアセトン:DBA。
2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン:BINAP。
1,1’−フェロセンジイル−ビス(ジフェニルホスフィン):dppf。
【0067】
1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン:DPPP。
3−クロロ過安息香酸:m−CPBA。
tert−ブチルメチルエーテル:MTBE。
【0068】
メタンスルホニル:Ms。
N−メチルピロリジノン:NMP。
薄層クロマトグラフィー:TLC。
【0069】
超臨界流体クロマトグラフィー:SFC。
4−(ジメチルアミノ)ピリジン:DMAP。
tert−ブチロキシカルボニル:Boc。
【0070】
トリフェニルホスフィン:PhP。
1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム3−オキシドヘキサフルオロホスフェート:HATU。
【0071】
石油エーテル:PE。
2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート:HBTU。
【0072】
2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール:トリス。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム:Pd(dba)
H核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、全てのケースで提唱された構造と一致した。特徴的な化学シフト(δ)は、重水素化溶媒中の残留したプロトンシグナルに対する百万分率で示され(7.27ppmでCHCl;3.31ppmでCDHOD;1.94ppmでMeCN;2.50ppmでDMSO)、主要なピークの呼称の従来の略語を使用して報告される:例えば、s、シングレット;d、ダブレット;t、トリプレット;q、カルテット;m、マルチプレット;br、ブロード。記号^は、水のピークによってピークが部分的に不明瞭であるため、H NMRピーク領域が仮定であることを意味する。記号^^は、溶媒のピークによってピークが部分的に不明瞭であるため、H NMRピーク領域が仮定であることを意味する。
【0073】
後述される化合物および中間体は、ACD/ChemSketch 2012、ChemDraw、ファイルバージョンC10H41、Build 69045(アドバンストケミストリーデベロップメント社(Advanced Chemistry Development, Inc.)、トロント、オンタリオ州、カナダ)と共に提供された命名規則を使用して命名した。ACD/ChemSketch 2012と共に提供された命名規則は当業者周知であり、ACD/ChemSketch 2012と共に提供される命名規則は、全般的に、有機化学の学術名に対するIUPAC(国際純正および応用化学連合)の推奨およびCASインデックスのルールと適合すると考えられる。ここで留意すべきことに、化学名は、丸括弧のみを有する場合もあれば、または丸括弧と角括弧を有する場合もある。立体化学の記述子も、命名規則に応じて、名称それ自体の内の異なる位置に設置される場合がある。当業者であれば、これらのフォーマット化のバリエーションを理解し、それらが同じ化学構造を提供することを理解しているであろう。
【0074】
医薬的に許容される塩は、酸付加塩および塩基性塩を含む。
好適な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。その例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシレート、クエン酸塩、サイクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシレート、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルクロネート、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、硫酸メチル、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタメート、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、1,5−ナフタレンジスルホン酸(naphathalenedisulfonic acid)およびキシナホ酸塩が挙げられる。
【0075】
好適な塩基性塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。その例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン(ジオラミン)、グリシン、リシン、マグネシウム、メグルミン、2−アミノエタノール(オラミン)、カリウム、ナトリウム、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール(トリスまたはトロメタミン)および亜鉛塩が挙げられる。
【0076】
また酸および塩基の半塩(hemisalt)、例えば、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩も形成することができる。好適な塩の総論に関しては、StahlおよびWermuthによる、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use(Wiley-VCH、2002)を参照されたい。
【0077】
医薬的に許容される塩は、3つの方法:
(i)化合物を望ましい酸または塩基と反応させることによる方法;
(ii)化合物の好適な前駆体から酸または塩基不安定性の保護基を除去することによる、または望ましい酸または塩基を使用して、好適な環状前駆体、例えばラクトンまたはラクタムを開環することによる方法;または
(iii)適切な酸または塩基との反応によって、または好適なイオン交換カラムの使用によって、化合物の1つの塩を別のものに変換することによる方法
のうち1つまたはそれより多くによって調製することができる。
【0078】
全ての3つの反応は、典型的には溶液中で行われる。得られた塩は、沈殿で析出させ、ろ過によって収集してもよいし、または溶媒の蒸発により回収してもよい。得られた塩におけるイオン化の程度は、完全にイオン化された状態からほとんどイオン化されていない状態まで様々であり得る。
【0079】
化合物および医薬的に許容される塩は、非溶媒和の形態や溶媒和の形態で存在していてもよい。用語「溶媒和物」は、本明細書において、化合物またはその塩と、1つまたはそれより多くの医薬的に許容される溶媒分子、例えばエタノールとを含む分子複合体を記載するのに使用される。用語「水和物」は、前記溶媒が水である場合に採用される。例えば、本明細書で開示された化合物1のトリス塩の水和物の結晶形態は、結晶性材料/複合体の結晶格子中に化合物1のトリス塩と水(水和物の水)の両方を含む結晶性材料/複合体を指す。
【0080】
有機水和物に関して現在容認された分類システムは、隔離部位水和物、チャネル水和物、または金属イオンが配位された水和物を定義するものである(K. R. MorrisによるPolymorphism in Pharmaceutical Solids (H. G. Brittain編、Marcel Dekker、1995を参照されたい)。隔離部位水和物(isolated site hydrate)は、水分子が、有機分子の介在により互いの直接接触を分離させている水和物である。チャネル水和物において、水分子は結晶格子のチャネル中にあり、そこでそれらは他の水分子と隣り合っている。金属イオンが配位した水和物において、水分子は金属イオンに結合する。
【0081】
溶媒または水が強く結合している場合、その複合体は、水分量とは無関係に明確な化学量論を有し得る。しかしながら、溶媒または水が弱く結合している場合、チャネル溶媒和物および吸湿性化合物の場合のように、水/溶媒の含量は、水分量および乾燥条件に依存する可能性がある。このようなケースにおいて、非化学量論が標準になる。
【0082】
また、薬物と少なくとも1つの他の成分とが化学量論量または非化学量論量で存在する多成分複合体(塩および溶媒和物以外)も本発明の範囲内に含まれる。このタイプの複合体としては、クラスレート(薬物−宿主包接錯体)および共結晶が挙げられる。後者は、典型的には、非共有結合による相互作用を介して一緒に結合した中性分子成分の結晶性複合体と定義されるが、中性分子と塩との複合体であってもよい。共結晶は、溶媒からの再結晶による溶融結晶化によって、または物理的に成分を一緒にグライディングすることによって調製することができる。O. AlmarssonおよびM. J. ZaworotkoによるChem Commun、17、1889〜1896(2004)を参照されたい。多成分複合体の全般的な総論については、HaleblianによるJ Pharm Sci、64(8)、1269〜1288(1975年8月)を参照されたい。
【0083】
本発明の化合物は、完全に非晶質の状態から完全に結晶性の状態に至る固体状態の連続体で存在していてもよい。用語「非晶質」は、材料が分子レベルで長距離秩序を失っており、温度に応じて固体または液体の物理的特性を示す可能性がある状態を指す。典型的には、このような材料は、固体の特性を示しながらも示差的なX線回折パターンを呈さず、より形式的には液体として説明される。加熱すると、固体特性から液体特性への変化が起こり、これは、典型的には二次的な状態変化(「ガラス転移」)によって特徴付けられる。用語「結晶性」は、材料が分子レベルで規則的な秩序だった内部構造を有し、明確なピークを有する示差的なX線回折パターンを呈する固相を指す。このような材料は、十分に加熱すると液体の特性を呈すると予想されるが、固体から液体への変化は、典型的には一次相変化(「融点」)によって特徴付けられる。
【0084】
化合物はまた、好適な条件に供されると、中間状態(中間相または液晶)で存在する場合もある。中間状態は、真の結晶状態と真の液体状態(溶融物または溶液のいずれか)との間の中間体である。温度変化の結果として生じる液晶性は「サーモトロピック」と記載され、第2の成分、例えば水または別の溶媒の添加の結果生じるものは、「リオトロピック」と記載される。リオトロピック中間相を形成する可能性のある化合物は、「両親媒性」と記載され、イオン性(例えば−COONa、−COO、または−SONa)または非イオン性(例えば−N(CH)極性頭部基を有する分子からなる。より詳細な情報については、N. H. HartshorneおよびA. StuartによるCrystals and the Polarizing Microscope、第4版(Edward Arnold、1970)を参照されたい。
【0085】
一部の化合物は、多形および/または1つまたはそれより多くの種類の異性(例えば光学、幾何または互変異性の異性)を呈する可能性がある。本発明の結晶形態はまた、同位体標識されていてもよい。このようなバリエーションは、バリエーションそのものとしてそれらの構造的特徴を参照することにより定義される化合物1またはその塩に事実上含まれ、それゆえに本発明の範囲内である。
【0086】
1つまたはそれより多くの不斉炭素原子を含有する化合物は、2つまたはそれより多くの立体異性体として存在し得る。化合物がアルケニルまたはアルケニレン基を含有する場合、幾何シス/トランス(またはZ/E)異性体が考えられる。構造異性体が低いエネルギー障壁を介して相互に変換可能である場合、互変異性異性(「互変異性」)が生じ得る。これは、例えばイミノ、ケトまたはオキシム基を含有する化合物において、プロトン互変異性の形態をとることができ、または芳香族部分を含有する化合物において、いわゆる原子価互変異性の形態をとることができる。その結果として、単一の化合物が1つより多くのタイプの異性を呈し得ることになる。
【0087】
特定の医薬的に許容される化合物1の塩はまた、光学的に活性な対イオン(例えばd−乳酸イオンまたはl−リシン)を含有していてもよいし、またはラセミの対イオン(例えばdl−酒石酸イオンまたはdl−アルギニン)を含有していてもよい。
【0088】
シス/トランス異性体は、当業者周知の従来の技術、例えばクロマトグラフィーおよび分別結晶法によって分離することができる。
個々の鏡像異性体の調製/単離のための従来の技術としては、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用するラセミ化合物(または塩もしくは誘導体のラセミ化合物)の分割が挙げられる。代替として、キラルエステルを含有するラセミ前駆体は、酵素による分割によって分離することができる(例えば、A. C. L. M. CarvahoらによるInt J Mol Sci 29682〜29716(2015)を参照)。化合物が酸性または塩基性部分を含有する場合において、塩は、光学的に純粋な塩基または酸、例えば1−フェニルエチルアミンまたは酒石酸を用いて形成することができる。得られたジアステレオマー混合物は、分別結晶化によって分離することができ、ジアステレオマー塩の一方または両方は、当業者周知の手段によって対応する純粋な鏡像異性体に変換される。代替として、ラセミ化合物(またはラセミ前駆体)を、好適な光学的に活性な化合物、例えばアルコール、アミンまたはベンジルの塩化物と共有結合で反応させてもよい。得られたジアステレオマー混合物は、当業者周知の手段によるクロマトグラフィーおよび/または分別結晶化によって分離して、2つまたはそれより多くのキラル中心を有する単一の鏡像異性体として分離したジアステレオマーを得ることができる。キラル化合物(およびそのキラル前駆体)は、非対称樹脂(asymmetric resin)でのクロマトグラフィー、典型的にはHPLCを使用して、炭化水素、典型的にはヘプタンまたはヘキサンからなり、0から50体積%のイソプロパノール、典型的には2%から20%、および0から5体積%のアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミンを含有する移動相を用いて、鏡像異性的に富化された形態で得ることができる。溶出液を濃縮して、富化された混合物が得られる。亜臨界および超臨界流体を使用するキラルクロマトグラフィーを採用してもよい。本発明の一部の実施態様において有用なキラルクロマトグラフィーのための方法は、当業界において公知である(例えば、Smith、Roger M.、Loughborough University、Loughborough、UK;Chromatographic Science Series (1998)、75 (充填済みカラムを含むSFC(SFC with Packed Columns))、223〜249頁およびそこで引用された文献を参照)。本明細書における一部の関連する実施例において、カラムは、ダイセル(Daicel)(登録商標)ケミカルインダストリーズ社(Chemical Industries, Ltd.)、東京、日本の子会社である、キラルテクノロジー社、米国ペンシルベニア州ウェストチェスターから得た。
【0089】
いずれかのラセミ化合物が結晶化するとき、2つの異なるタイプの結晶が生じる可能性がある。第1のタイプは、上述したラセミ化合物(真のラセミ化合物)であり、この場合、両方の鏡像異性体を等モル量で含有する、結晶の1つの均一な形態が生産される。第2のタイプは、ラセミ混合物または凝集体であり、この場合、それぞれ単一の鏡像異性体を含む、結晶の2つの形態が等モル量で生産される。ラセミ混合物中に存在する結晶形の両方が同一な物理的特性を有するが、それらは、真のラセミ化合物と比較して異なる物理的特性を有する可能性がある。ラセミ混合物は、当業者公知の従来の技術によって分離することができる。例えば、E. L. ElielおよびS. H. WilenによるStereochemistry of Organic Compounds (Wiley、1994)を参照されたい。
【0090】
化合物1およびその塩は、本明細書では単一の互変異性体の形態で述べられているが、あらゆる可能な互変異性体の形態が本発明の範囲内に含まれることを強調されなければならない。
【0091】
本発明は、1つまたはそれより多くの原子が、を同じ原子番号有するが、自然界で優勢な原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子で置き換えられている、全ての医薬的に許容される同位体で標識された化合物1またはその塩を含む。
【0092】
本発明の化合物に含まれるのに好適な同位体の例としては、水素の同位体、例えばHおよびH、炭素の同位体、例えば11C、13Cおよび14C、塩素の同位体、例えば36Cl、窒素の同位体、例えば13Nおよび15N、ならびに酸素の同位体、例えば15O、17Oおよび18Oが挙げられる。
【0093】
特定の同位体で標識された化合物1またはその塩、例えば放射性同位体を取り込んだものは、薬物および/または基質の組織分布研究において有用である。放射性同位体であるトリチウム、すなわちH、および炭素−14、すなわち14Cが、それらの取込み易さとすぐに使える検出手段を考慮すれば、この目的にとって特に有用である。
【0094】
より重い同位体、例えば重水素、すなわちHでの置換は、より大きい代謝的安定性に起因する特定の治療的利点、例えば、インビボでの半減期の増加または必要な投薬量の低減をもたらす可能性がある。
【0095】
陽電子放射性同位体、例えば11C、18F、15Oおよび13Nでの置換は、基質受容体の占有を検査するための陽電子放射断層撮影(PET)研究において有用であり得る。
【0096】
同位体で標識された化合物は、一般的に、当業者公知の従来の技術によって調製してもよいし、またはこれまでに採用された標識されていない試薬の代わりに適切な同位体で標識された試薬を使用した、添付の実施例および調製に記載されるものに類似したプロセスによって調製してもよい。
【0097】
本発明による医薬的に許容される溶媒和物は、結晶化の溶媒が、同位体で置換できる溶媒和物、例えばDO、d−アセトン、d−DMSOであり得る溶媒和物を含む。
投与および投与量
典型的には、本発明の化合物(結晶形態で)は、本明細書に記載される状態を処置するのに有効な量で投与される。本発明の化合物は、化合物それ自体として、または代替として、医薬的に許容される塩として投与することができる。投与および投与量の目的に関して、化合物それ自体またはその医薬的に許容される塩は、単に本発明の化合物と称される。
【0098】
本発明の化合物は、あらゆる好適な経路によって、このような経路に適合させた医薬組成物の形態で、さらに、意図された処置に有効な用量で投与される。本発明の化合物は、経口、直腸、膣、非経口、または局所投与されてもよい。
【0099】
本発明の化合物は、経口投与されてもよい。経口投与は、化合物が消化管に入るように嚥下することを含むこともあり、または化合物が口から直接血流に入る頬側または舌下投与が採用されることもある。
【0100】
別の実施態様において、本発明の化合物はまた、血流、筋肉または内臓に直接投与することもできる。非経口投与のための好適な手段としては、静脈内、動脈内、腹膜内、髄腔内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内および皮下が挙げられる。非経口投与に好適なデバイスとしては、有針(微細針を含む)インジェクター、無針インジェクター、および輸注技術が挙げられる。
【0101】
別の実施態様において、本発明の化合物はまた、皮膚または粘膜に局所的に、すなわち皮膚に、または経皮で投与することもできる。別の実施態様において、本発明の化合物はまた、鼻腔内に、または吸入によって投与することもできる。別の実施態様において、本発明の化合物は、直腸または膣に投与されてもよい。別の実施態様において、本発明の化合物はまた、目または耳に直接投与されてもよい。
【0102】
本発明の化合物および/または前記化合物を含有する組成物のための投薬レジメンは、患者のタイプ、年齢、体重、性別および医学的状態;状態の重症度;投与経路;ならびに採用される特定の化合物の活性などの様々な要因に基づく。したがって、投薬レジメンは、広範に変更することができる。一実施態様において、本発明の化合物の1日当たりの総用量は、本明細書で論じられる指定された状態を処置する場合、典型的には、約0.001〜約100mg/kg(すなわち、本発明の化合物のmg/体重のkg)である。別の実施態様において、本発明の化合物の1日当たりの総用量は、約0.01〜約30mg/kgであり、別の実施態様において、約0.03〜約10mg/kgであり、さらに別の実施態様において、約0.1〜約3である。本発明の化合物の投与が1日に複数回繰り返されること(典型的には4回を超えない)は珍しいことではない。1日当たりの複数回用量は、典型的には、必要に応じて1日当たりの総用量を増加させるのに使用することができる。
【0103】
経口投与の場合、組成物は、患者への投薬量の症候に基づく調整に応じて、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、30.0、50.0、75.0、100、125、150、175、200、250および500ミリグラムの活性成分を含有する錠剤の形態で提供することができる。医薬は、典型的には、約0.01mg〜約500mgの活性成分を含有し、または別の実施態様において、約1mg〜約100mgの活性成分を含有する。静脈内の場合、用量は、一定速度の輸注の間、約0.01〜約10mg/kg/分の範囲であり得る。
【0104】
本発明に係る好適な対象としては、哺乳類対象が挙げられる。一実施態様において、ヒトが好適な対象である。ヒト対象は、どちらの性別であってもよく、どのような発達段階であってもよい。
【0105】
医薬組成物
別の実施態様において、本発明は、医薬組成物を含む。このような医薬組成物は、本発明の化合物と、それと共に存在する医薬的に許容される担体を含む。他の薬理学的に活性な物質も存在し得る。「医薬的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、生理学的に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などを含む。医薬的に許容される担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1種またはそれより多く、加えてそれらの組合せが挙げられ、さらに、組成物中に、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、または多価アルコール、例えばマンニトール、またはソルビトールが含まれていてもよい。医薬的に許容される物質、例えば湿潤剤または少量の補助剤、例えば湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤は、抗体または抗体部分の貯蔵寿命または有効性を強化する。
【0106】
本発明の組成物は、様々な形態をとることができる。これらの形態としては、例えば、液体、半固体および固体剤形、例えば液状の溶液(例えば、注射可能な、および不溶解性の溶液)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、粉剤、リポソームおよび坐剤が挙げられる。形態は、意図された投与様式および治療用途に依存する。
【0107】
典型的な組成物は、注射可能な、または不溶解性の溶液の形態、例えば、一般的に抗体を用いたヒトの受身免疫に使用されるものと類似した組成物の形態である。1つの投与様式は、非経口(例えば静脈内、皮下、腹膜内、筋肉内)である。別の実施態様において、抗体は、静脈内への輸注または注射によって投与される。さらに別の実施態様において、抗体は、筋肉内または皮下注射によって投与される。
【0108】
固体剤形の経口投与は、例えば、それぞれ予め決定された量の少なくとも1種の本発明の化合物を含有する別々の単位、例えばハードまたはソフトカプセル剤、丸剤、カシェ剤、ロゼンジ剤、または錠剤で存在していてもよい。別の実施態様において、経口投与は、粉剤または顆粒剤の形態であってもよい。別の実施態様において、経口剤形は、舌下であり、例えばロゼンジなどである。このような固体剤形において、本発明の化合物は通常、1種またはそれより多くのアジュバントと組み合わされる。このようなカプセル剤または錠剤は、放出制御製剤を含有していてもよい。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでいてもよいし、または腸溶コーティングを用いて調製されてもよい。
【0109】
別の実施態様において、経口投与は、液状の剤形でなされてもよい。経口投与用液体剤形としては、例えば、当業界において一般的に使用される不活性希釈剤(例えば、水)を含有する、医薬的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。このような組成物はまた、アジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、香味料(例えば、甘味剤)、および/または着香料も含んでいてもよい。
【0110】
別の実施態様において、本発明は、非経口剤形を含む。「非経口投与」としては、例えば、皮下注射、静脈注射、腹腔内、筋肉内注射、胸骨内注射、および輸注が挙げられる。注射製剤(すなわち、滅菌された注射可能な水性または油性懸濁液)は、好適な分散剤、湿潤剤、および/または懸濁化剤を使用する公知の技術に従って製剤化してもよい。
【0111】
別の実施態様において、本発明は、局所剤形を含む。「局所投与」としては、例えば、経皮投与、例えば経皮パッチまたはイオン導入デバイスを介した経皮投与、眼球内投与、または鼻腔内もしくは吸入投与が挙げられる。局所投与のための組成物としてはまた、例えば、局所用のゲル剤、スプレー剤、軟膏剤、およびクリーム剤も挙げられる。局所製剤は、皮膚または他の罹患した領域を介した活性成分の吸収または浸透を強化する化合物を含んでいてもよい。本発明の化合物が経皮デバイスによって投与される場合、投与は、リザーバおよび多孔質膜タイプのパッチ、または固体マトリックス種のパッチのいずれかを使用して達成されると予想される。この目的のために典型的な製剤としては、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、散布剤、包帯剤、発泡体、フィルム剤、皮膚用パッチ剤、カシェ剤、インプラント、スポンジ、繊維、包帯およびマイクロエマルジョンが挙げられる。リポソームも使用することができる。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。浸透促進剤が取り込まれていてもよく、例えば、B. C. FinninおよびT. M. Morgan、J. Pharm. Sci.、第88巻、955〜958頁、1999を参照されたい。
【0112】
目への局所投与に好適な製剤としては、例えば、点眼剤が挙げられ、この場合、本発明の化合物は、好適な担体中に溶解または懸濁される。眼または耳への投与に好適な典型的な製剤は、等張のpH調整した滅菌生理食塩水中のミクロンサイズにした懸濁液または溶液の液滴の形態であってもよい。眼および耳への投与に好適な他の製剤としては、軟膏、生分解性(すなわち、吸収性のゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(すなわち、シリコーン)インプラント、カシェ剤、レンズ、ならびに微粒子または小胞系、例えばニオゾーム(niosome)もしくはリポソームが挙げられる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロース系ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはメチルセルロース、またはヘテロ多糖ポリマー、例えば、ジェランガムなどのポリマーは、保存剤、例えば塩化ベンザルコニウムと共に取り込まれていてもよい。このような製剤はまた、イオン導入によっても送達することができる。
【0113】
鼻腔内投与または吸入による投与の場合、本発明の化合物は、患者により絞り出されるかまたは汲み出される、ポンプスプレー容器からの溶液または懸濁液の形態で、または好適な噴射剤の使用による加圧した容器またはネブライザーからのエアロゾルスプレー供給として、うまく送達される。鼻腔内投与に好適な製剤は、典型的には、乾燥粉末吸入器からの乾燥粉末(単独で、混合物として、例えば、ラクトースとの乾燥ブレンドで、または混合された成分の粒子、例えば、リン脂質、例えばホスファチジルコリンと混合された粒子としてのいずれか)の形態で投与されるか、または好適な噴射剤、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンを使用する、または使用しない、加圧した容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、微細なミストを生産するのに電気流体力学を使用するアトマイザー)、またはネブライザーからのエアロゾルスプレーとして投与される。鼻腔内での使用の場合、粉末は、生体接着剤、例えば、キトサンまたはシクロデキストリンを含んでいてもよい。
【0114】
別の実施態様において、本発明は、直腸用剤形を含む。このような直腸用剤形は、例えば、坐剤の形態であってもよい。カカオバターは、従来の坐剤基剤であるが、必要に応じて様々な代用物を使用してもよい。
【0115】
薬学分野において公知の他の担体材料および投与様式も使用することができる。本発明の医薬組成物は、周知の調剤技術、例えば有効な製剤および投与手順のいずれかによって調製することができる。有効な製剤および投与手順に関する上記の考察は当業界において周知であり、標準的な教本に記載されている。薬物の製剤は、例えば、Hoover、John E.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、Pennsylvania、1975; Libermanら編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、New York、N.Y.、1980;およびKibbeら編、Handbook of Pharmaceutical Excipients(第3版)、American Pharmaceutical Association、Washington、1999で論じられている。
【0116】
共投与
本発明の化合物は、単独で使用してもよいし、または他の治療剤と組み合わせて使用してもよい。本発明は、本明細書に記載のあらゆる実施態様の化合物、もしくはそれらの医薬的に許容される塩、または前記化合物もしくは塩の医薬的に許容される溶媒和物は、本明細書で論じられる1種またはそれより多くの他の治療剤と組み合わせて使用される、本明細書において定義される使用、方法または組成物のいずれかを提供する。これは、本明細書に記載される実施態様のいずれかで定義された本発明の結晶形態、および本明細書で論じられる1種またはそれより多くの他の治療剤を含む、GLP−1Rのアゴニストが指示される疾患または状態を処置するための医薬組成物を含むと予想される。
【0117】
2種またはそれより多くの化合物を「組み合わせて」投与することは、化合物の全てが、それぞれ同じ時間枠内で生物学的作用をもたらすことができる程十分に近い時間で投与されることを意味する。1つの薬剤の存在は、他の化合物の生物学的作用を変更してもよい。2種またはそれより多くの化合物が、同時に、並行して、または逐次的に投与されてもよい。加えて、同時投与は、投与の前に化合物を混合することによって行われてもよいし、または同一または異なる投与部位に、同じ時点で、ただし別々の剤形として化合物を投与することによって行われてもよい。
【0118】
フレーズ「並列の投与」、「共投与」、「同時投与」、および「同時に投与される」は、化合物が組み合わせて投与されることを意味する。
別の実施態様において、本発明は、本発明の化合物を1種またはそれより多くの他の医薬物質と組み合わせて投与することを含む処置方法であって、1種またはそれより多くの他の医薬物質は、本明細書で論じられる薬剤から選択することができる、方法を提供する。
【0119】
一実施態様において、本発明の化合物は、抗糖尿病剤と共に、例えば、これらに限定されないが、具体的に命名された薬剤の医薬的に許容される塩、ならびに前記薬剤および塩の医薬的に許容される溶媒和物を含む、ビグアニド(例えば、メトホルミン)、スルホニル尿素(例えば、トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グリメピリド、またはグリピジド)、チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン、ロジグリタゾン、またはロベグリタゾン)、グリタザル(glitazar)(例えば、サログリタザル、アレグリタザル、ムラグリタザルまたはテサグリタザル)、メグリチニド(例えば、ナテグリニド、レパグリニド)、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP−4)阻害剤(例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、ゲミグリプチン、アナグリプチン、テネリグリプチン、アログリプチン、トレラグリプチン、デュトグリプチン、またはオマリグリプチン)、グリタゾン(例えば、ピオグリタゾン、ロジグリタゾン、バラグリタゾン、リボグリタゾン、またはロベグリタゾン)、ナトリウム−グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤(例えば、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、イプラグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、エタボン酸セルグリフロジン、エタボン酸レモグリフロジン、またはエルツグリフロジン)、SGLTL1阻害剤、GPR40アゴニスト(FFAR1/FFA1アゴニスト、例えばファシグリファム)、グルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド(GIP)およびその類似体、アルファグルコシダーゼ阻害剤(例えばボグリボース、アカルボース、またはミグリトール)、またはインスリンもしくはインスリン類似体などの抗糖尿病剤と共に投与される。
【0120】
別の実施態様において、本発明の化合物は、抗肥満薬と共に、例えば、これらに限定されないが、具体的に命名された薬剤の医薬的に許容される塩、ならびに前記薬剤および塩の医薬的に許容される溶媒和物を含む、ペプチドYYまたはその類似体、神経ペプチドY受容体2型(NPYR2)アゴニスト、NPYR1またはNPYR5アンタゴニスト、カンナビノイド受容体1型(CB1R)アンタゴニスト、リパーゼ阻害剤(例えば、オーリスタット)、ヒト膵島ペプチド(human proislet peptide、HIP)、メラノコルチン受容体4アゴニスト(例えば、セトメラノチド(setmelanotide))、メラニン凝集ホルモン受容体1アンタゴニスト、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト(例えばオベチコール酸)、ゾニサミド、フェンテルミン(単独で、またはトピラメートと組み合わせて)、ノルエピネフリン/ドーパミン再取り込み阻害剤(例えば、ブプロプリオン)、オピオイド受容体アンタゴニスト(例えば、ナルトレキソン)、ノルエピネフリン/ドーパミン再取り込み阻害剤とオピオイド受容体アンタゴニストとの組合せ(例えば、ブプロピオンとナルトレキソンとの組合せ)、GDF−15類似体、シブトラミン、コレシストキニンアゴニスト、アミリンおよびその類似体(例えば、プラムリンチド)、レプチンおよびその類似体(例えば、メトロレプチン(metroleptin))、セロトニン作用剤(例えば、ロルカセリン(Iorcaserin))、メチオニンアミノペプチダーゼ2(MetAP2)阻害剤(例えば、ベロラニブ(beloranib)またはZGN−1061)、フェンジメトラジン、ジエチルプロピオン、ベンズフェタミン、SGLT2阻害剤(例えば、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、イプラグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、エタボン酸セルグリフロジン、エタボン酸レモグリフロジン、またはエルツグリフロジン)、SGLTL1阻害剤、二重SGLT2/SGLT1阻害剤、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)モジュレーター、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)活性化剤、ビオチン、MAS受容体モジュレーター、またはグルカゴン受容体アゴニスト(単独で、または別のGLP−1Rアゴニスト、例えば、リラグルチド、エキセナチド、デュラグルチド、アルビグルチド、リキシセナチド、またはセマグルチドと組み合わせて)と共に投与される。
【0121】
別の実施態様において、本発明の化合物は、NASHを処置するための薬剤、例えば、これらに限定されないが、具体的に命名された薬剤の医薬的に許容される塩、ならびに前記薬剤および塩の医薬的に許容される溶媒和物を含む、以下:PF−05221304、FXRアゴニスト(例えば、オベチコール酸)、PPARα/δアゴニスト(例えば、エラフィブラノール)、合成脂肪酸−胆汁酸コンジュゲート(例えば、アラムコール)、カスパーゼ阻害剤(例えば、エムリカサン)、抗リシルオキシダーゼホモログ2(LOXL2)モノクローナル抗体(例えば、シムツズマブ(simtuzumab))、ガレクチン3阻害剤(例えば、GR−MD−02)、MAPK5阻害剤(例えば、GS−4997)、ケモカイン受容体2(CCR2)とCCR5のデュアルアンタゴニスト(例えば、セニクリビロック)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)アゴニスト(例えば、BMS−986036)、ロイコトリエンD4(LTD4)受容体アンタゴニスト(例えば、チペルカスト)、ナイアシン類似体(例えば、ARI3037MO)、ASBT阻害剤(例えば、ボリキシバット(volixibat))、アセチル−CoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤(例えば、NDI010976またはPF−05221304)、ケトヘキソキナーゼ(KHK)阻害剤、ジアシルグリセリルアシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)阻害剤、CB1受容体アンタゴニスト、抗CB1R抗体、またはアポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤などの1つまたはそれより多くと組み合わせて投与される。
【0122】
本明細書に記載される疾患または障害(例えばNASH)を処置するために本発明の化合物と組み合わせて使用できる一部の具体的な化合物としては、以下が挙げられる:
4−(4−(1−イソプロピル−7−オキソ−1,4,6,7−テトラヒドロスピロ[インダゾール−5,4’−ピペリジン]−1’−カルボニル)−6−メトキシピリジン−2−イル)安息香酸であって、これは、選択的ACC阻害剤の例であり、その開示があらゆる目的のためにここでの参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる国際出願PCT/IB2011/054119号の米国の国内段階である米国特許第8,859,577号の実施例9では、遊離酸として調製された。4−(4−(1−イソプロピル−7−オキソ−1,4,6,7−テトラヒドロスピロ[インダゾール−5,4’−ピペリジン]−1’−カルボニル)−6−メトキシピリジン−2−イル)安息香酸の結晶形、例えば無水モノトリス形態(形態1)およびモノトリス塩の三水和物(形態2)などは、国際PCT出願PCT/IB2018/058966号に記載されており、この開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる;
(S)−2−(5−((3−エトキシピリジン−2−イル)オキシ)ピリジン−3−イル)−N−(テトラヒドロフラン−3−イル)ピリミジン−5−カルボキサミド、またはその医薬的に許容される塩、およびその結晶性固体形態(形態1および形態2)であって、これは、その開示があらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第10,071,992号の実施例1に記載されるDGAT2阻害剤の例である;
[(1R,5S,6R)−3−{2−[(2S)−2−メチルアゼチジン−1−イル]−6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−4−イル}−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−6−イル]酢酸、またはその医薬的に許容される塩(その結晶性遊離酸形態を含む)であって、これは、ケトヘキソキナーゼ阻害剤の例であり、その開示があらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第9,809,579号の実施例4に記載されている;および
FXRアゴニストであるトロピフェクサー(Tropifexor)またはその医薬的に許容される塩であって、これは、その開示があらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第9,150,568号の実施例1−1Bに記載されている。
【0123】
本発明のこれらの薬剤および化合物は、医薬的に許容される媒体、例えば生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液などと組み合わせることができる。特定の投薬レジメン、すなわち用量、タイミングおよび繰り返しは、特定の個体およびその個体の病歴に依存すると予想される。
【0124】
許容できる担体、賦形剤、または安定剤は、採用された投薬量および濃度でレシピエントにとって非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;塩化ナトリウムなどの塩;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニンなど;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量の(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、またはIgなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸;単糖、二糖、および他の炭水化物、例えばを含むグルコース、マンノース、またはデキストリンなど;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩を形成する対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/またはトウィーン(TWEEN)(商標)、プルロニック(PLURONICS)(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤を含んでいてもよい。
【0125】
これらの薬剤および/または本発明の化合物を含有するリポソームは、米国特許第4,485,045号および4,544,545号に記載されるような当業界において公知の方法によって調製される。循環時間が強化されたリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発方法によって生成することができる。リポソームを、既定の孔径を有するフィルターを介して押し出して、望ましい直径を有するリポソームを得る。
【0126】
これらの薬剤および/または本発明の化合物はまた、例えばコアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に封じ込められていてもよく、例えば、それぞれコロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中の、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中に封じ込められていてもよい。このような技術は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing (2000)に開示されている。
【0127】
持続放出製剤を使用してもよい。持続放出製剤の好適な例としては、式I、II、III、IV、またはVの化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸塩)、または’ポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸と7エチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解可能な乳酸−グリコール酸コポリマー、例えば、リュープロンデポ(LUPRON DEPOT)(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドで構成される注射可能なマイクロスフェア)で使用されるもの、スクロース酢酸イソブチル、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0128】
静脈内投与のために使用される製剤は、滅菌されていなければならない。これは、例えば、ろ過滅菌膜を介したろ過によって容易に達成される。本発明の化合物は、一般的に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって突き刺し可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0129】
好適な乳剤は、商業的に入手可能な脂肪乳剤、例えばイントラリピド(Intralipid)(商標)、リポシン(Liposyn)(商標)、インフォヌトロール(Infonutrol)(商標)、リポファンディン(Lipofundin)(商標)およびリピフィサン(Lipiphysan)(商標)を使用して調製することができる。活性成分は、予備混合した乳剤組成物中に溶解させるか、または代替として、油(例えば、ダイズ油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油またはアーモンド油)中に溶解させるかのいずれであってもよく、乳剤は、リン脂質(例えば、卵のリン脂質、ダイズのリン脂質またはダイズレシチン)および水と混合すると形成される。乳剤の張度を調整するために、例えばグリセロールまたはグルコースなどの他の成分が添加されてもよいことが理解されるものとする。好適な乳剤は、典型的には、最大20%、例えば5〜20%の油を含有すると予想される。脂肪乳剤は、0.1〜1.0μm、特定には0.1〜0.5μmの範囲の脂肪滴を含んでいてもよく、5.5〜8.0の範囲のpHを有していてもよい。
【0130】
乳剤組成物は、本発明の化合物を、イントラリピド(商標)またはそれらの成分(ダイズ油、卵のリン脂質、グリセロールおよび水)と混合することによって調製されたものであってもよい。
【0131】
吸入または通気のための組成物としては、医薬的に許容される水性もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物中の溶液および懸濁液、ならびに粉末が挙げられる。液体または固体組成物は、上記で詳述したような好適な医薬的に許容される賦形剤を含有していてもよい。一部の実施態様において、組成物は、局所または全身性作用のために、口腔または鼻の呼吸経路によって投与される。好ましくは滅菌された医薬的に許容される溶媒中の組成物は、ガスの使用によって噴霧され得る。噴霧された溶液は、噴霧デバイスから直接吸い込ませてもよいし、または噴霧デバイスをフェイスマスク、テントまたは間欠的陽圧呼吸器に取り付けてもよい。溶液、懸濁液または粉末組成物は、適切な方式で製剤を送達するデバイスから、好ましくは口腔または経鼻で投与されてもよい。
【0132】
キット
本発明の別の形態によれば、本発明の固体形態(例えば形態3などの結晶形態)または本発明の固体形態(例えば形態3などの結晶形態)を含む医薬組成物を含むキットが提供される。キットは、本発明の固体形態(例えば形態3などの結晶形態)またはその医薬組成物に加えて、診断剤または治療剤を含んでいてもよい。キットはまた、診断または治療方法における使用説明書を含んでいてもよい。一部の実施態様において、キットは、本発明の結晶形態および診断剤を含む。他の実施態様において、キットは、本発明の結晶形態、またはその医薬組成物を含む。
【0133】
さらに別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載される処置方法を実行することにおいて使用するのに好適なキットを含む。一実施態様において、キットは、本発明の方法を行うのに十分な量の本発明の固体形態(例えば形態3などの結晶形態)の1つまたはそれより多くを含む第1の剤形を含有する。別の実施態様において、キットは、本発明の方法を行うのに十分な量の本発明の1つまたはそれより多くの固体形態(例えば形態3などの結晶形態)、および投薬のための容器および投薬のための容器を含む。
【0134】
調製
化合物1、そのトリス塩、および化合物1のトリス塩の結晶形態は、合成有機化学分野の当業者共通の一般知識を使用して、後述される一般的な方法および具体的な方法によって調製することができる。このような共通の一般知識は、標準的な参考書、例えば、Comprehensive Organic Chemistry、BartonおよびOllis編、Elsevier;Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations、Larock、John Wiley and Sons;およびCompendium of Organic Synthetic Methods、I〜XII巻(Wiley-Interscienceにより出版)に見出すことができる。本明細書において使用される出発材料は、商業的に入手可能であるか、または当業界において公知の慣例的な方法によって調製することができる。
【0135】
本発明の化合物、塩、および結晶形態の調製において、本明細書に記載される調製方法の一部は、遠位の官能基(例えば、前駆体中の第一アミン、第二アミン、カルボキシル)の保護を必要とする場合があることに留意する。このような保護への必要性は、遠位の官能基および調製方法の条件の性質に応じて様々であると予想される。このような保護への必要性は、当業者によって容易に決定される。このような保護/脱保護方法の使用も、当業界における能力の範囲内である。保護基およびその使用の一般的な説明については、T.W. Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991を参照されたい。
【0136】
例えば、特定の化合物は、保護されていないままだと分子の他の部位における反応に干渉する可能性がある第一アミンまたはカルボン酸官能基を含有する。したがって、このような官能基は、後続の工程で除去できる適切な保護基によって保護することができる。アミンおよびカルボン酸保護のための好適な保護基としては、ペプチド合成において一般的に使用される保護基(例えば、アミンおよび低級アルキルには、N−t−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、および9−フルオレニルメチルエノキシカルボニル(Fmoc)またはカルボン酸には、ベンジルエステル)が挙げられ、これらは、一般的に、記載された反応条件下で化学的に反応性ではなく、典型的には、化合物中の他の官能基を化学的に変更することなく除去することができる。
【0137】
後述されるスキームは、本発明の化合物の調製で採用される手法の一般的な説明を提供することを意図する。本発明の化合物の一部は、立体化学記号(R)または(S)で示される単一または複数のキラル中心を含有していてもよい。当業者であれば、合成の変換の全ては、材料が、鏡像異性的に富化されているか、またはラセミ体であるかどうかにかかわらず、類似の方式で実行できることを理解できるであろう。さらに、望ましい光学的に活性な材料への分割は、例えば本明細書に、さらに化学文献に記載されるような周知の方法を使用して、過程のうちあらゆる望ましいポイントで行うことができる。例えば、中間体および最終産物は、キラルクロマトグラフ方法を使用して分離することができる。代替として、キラル塩は、鏡像異性的に富化された中間体および最終的な化合物を単離するのに利用してもよい。
【実施例】
【0138】
以下は、本発明の非限定的な化合物(その固体形態を含む)の合成を例示する。
実験は、全般的に、特定には酸素または水分に高感度を有する試薬または中間体が採用された場合、不活性雰囲気(窒素またはアルゴン)下で行われた。市販の溶媒および試薬は、全般的に、それ以上精製せずに使用した。必要に応じて、無水溶媒が採用され、全般的に、アクロスオーガニクス(Acros Organics)からのアクロシール(AcroSeal)(登録商標)製品、シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)からのアルドリッチ(Aldrich)(登録商標)シュア/シール(Sure/Seal)(商標)、またはEMDケミカルズ(EMD Chemicals)からのDriSolv(登録商標)製品が採用された。他のケースにおいて、市販の溶媒を、以下の水に関するQC基準が達成されるまで4Åの分子篩を充填したカラムに通過させた:a)ジクロロメタン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、およびテトラヒドロフランが<100ppm;b)メタノール、エタノール、1,4−ジオキサン、およびジイソプロピルアミンが<180ppm。極めて高感度の反応の場合、溶媒をさらに金属ナトリウム、水素化カルシウム、または分子篩で処理し、使用直前に蒸留した。生成物を全体的に真空中で乾燥させ、その後、さらなる反応に進なせるかまたは生物学的試験に供した。質量分析データは、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)、大気圧化学イオン化(APCI)またはガスクロマトグラフィー質量分析(GCMS)機器のいずれかから報告される。記号◆は、質量スペクトルにおいて塩素の同位体パターンが観察されたことを意味する。
【0139】
キラル分離を使用して、本発明の化合物の調製中に一部の中間体の鏡像異性体またはジアステレオマーを分離した。キラル分離が行われたら、分離された鏡像異性体を、それらの溶出順に従ってENT−1またはENT−2(またはDIAST−1もしくはDIAST−2)と名付けた。一部の実施態様において、ENT−1またはENT−2と名付けられた鏡像異性体は、他の鏡像異性体またはジアステレオマーを調製するための出発材料として使用することができる。このような状態において、その結果生じた調製された鏡像異性体は、それらの出発材料に従って、それぞれENT−X1およびENT−X2と名付けられる;同様に、調製されたジアステレオマーは、それらの出発材料に従って、それぞれDIAST−X1およびDIAST−X2(またはDIAST−)と名付けられる。複数の中間体を採用する合成において、DIAST−YおよびDIAST−Zの名称も同様に使用される。
【0140】
全般的に、検出可能な中間体を介して進行する反応の後にLCMSを行い、それに続く試薬を添加する前に、完全な変換がなされるまで進行させた。他の実施例または方法における合成参照手順に関して、反応条件(反応時間および温度)は変更が可能である。全般的に、反応の後に、薄層クロマトグラフィーまたは質量分析を行い、適切な場合はワークアップに供した。精製は、実験間で変更が可能であり、全般的に、溶離剤/勾配のために使用される溶媒および溶媒比を、適切なRまたは保持時間が提供されるように選択した。これらの調製および実施例における全ての出発材料は、商業的に入手可能であるか、または当業界において公知の方法によって、または本明細書に記載されるように調製できるかのいずれかである。
【0141】
P7の調製
tert−ブチル4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−カルボキシレート(P7)
【0142】
【化4】
【0143】
工程1.2−(4−ブロモ−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−2−イル)−5−クロロピリジン(C11)の合成。
トルエン(25mL)中の5−クロロ−2−エチニルピリジン(1.80g、13.1mmol)、3−ブロモベンゼン−1,2−ジオール(2.47g、13.1mmol)、およびトリルテニウムドデカカルボニル(167mg、0.261mmol)の混合物を1分間脱気し、次いで100℃で16時間加熱した。反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、珪藻土のパッドに通過させてろ過した;ろ液を真空中で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配:石油エーテル中、0%から1%の酢酸エチル)を使用して精製して、C11を黄色の油状物として得た。収量:1.73g、5.30mmol、40%。LCMS m/z 325.6(観察された臭素-塩素同位体パターン)[M+H]+1H NMR(400MHz, クロロホルム-d)δ 8.63 (dd, J = 2.4, 0.7 Hz, 1H), 7.71 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 7.60 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 0.7 Hz, 1H), 6.97 (dd, J = 8.0, 1.4 Hz, 1H), 6.76 (dd, ABXパターンの成分, J = 7.8, 1.4 Hz, 1H), 6.72 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.0, 7.8 Hz, 1H), 2.10 (s, 3H)。
【0144】
工程2.tert−ブチル4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボキシレート(C12)の合成。
【0145】
[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(388mg、0.530mmol)を、1,4−ジオキサン(35mL)および水(6mL)中の、C11(1.73g、5.30mmol)、tert−ブチル4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボキシレート(1.64g、5.30mmol)、および炭酸セシウム(5.18g、15.9mmol)の懸濁液に添加した。反応混合物を90℃で4時間撹拌し、すぐにそれを酢酸エチル(30mL)および水(5mL)で希釈した。有機層を真空中で濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:石油エーテル中、0%から5%の酢酸エチル)に供して、C12を黄色のゴム状物として得た。収量:1.85g、4.31mmol、81%。LCMS m/z 451.0◆[M+Na+]。1H NMR (400MHz, クロロホルム-d)δ 8.62 (dd, J = 2.5, 0.8 Hz, 1H), 7.69 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 7.57 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 0.8 Hz, 1H), 6.84 - 6.79 (m, 2H), 6.78 - 6.73 (m, 1H), 6.39 - 6.33 (br m, 1H), 4.13 - 4.07 (m, 2H), 3.68 - 3.58 (m, 2H), 2.60 - 2.51 (br m, 2H), 2.07 (s, 3H), 1.49 (s, 9H)。
【0146】
工程3.tert−ブチル4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−カルボキシレート(P7)の合成。
【0147】
メタノール(100mL)中のC12(2.61g、6.08mmol)およびトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(ウィルキンソン触媒;563mg、0.608mmol)の溶液を真空中で脱気し、次いで水素でパージした;この脱気−パージサイクル合計3回を行った。次いで反応混合物を、60℃で、水素下(50psi)で16時間撹拌し、すぐにそれをろ過した。ろ液を真空中で濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:石油エーテル中、0%から10%の酢酸エチル)を使用して精製した;得られた材料をC12で行われた類似の水素添加からの材料(110mg、0.256mmol)と合わせて、P7を明るい黄色のゴム状物として得た。合わせた収量:2.05g、4.76mmol、75%。LCMS m/z 431.3◆[M+H]+1H NMR (400MHz, クロロホルム-d)δ 8.62 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.69 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 7.57 (d, ABカルテットの半分, J = 8.4 Hz, 1H), 6.79 (dd, ABCパターンの成分, J = 7.8, 7.7 Hz, 1H), 6.72 (dd, ABCパターンの成分, J = 7.8, 1.3 Hz, 1H), 6.68 (br d, ABCパターンの成分, J = 7.9 Hz, 1H), 4.32 - 4.12 (br m, 2H), 2.91 - 2.73 (m, 3H), 2.05 (s, 3H), 1.90 - 1.62 (m, 4H), 1.48 (s, 9H)。
【0148】
P8およびP9の調製
tert−ブチル4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−カルボキシレート、ENT−1(P8)およびtert−ブチル4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−カルボキシレート、ENT−2(P9)
【0149】
【化5】
【0150】
P7(500mg、1.16mmol)のその成分である鏡像異性体への分離を、SFC{カラム:フェノメネックス(Phenomenex)Luxアミロース−1、5μm;移動相:9:1の二酸化炭素/[0.2%(メタノール中の7Mアンモニア)を含有する2−プロパノール]}を使用して実行した。最初に溶出する鏡像異性体をENT−1(P8)と名付け、2番目に溶出する鏡像異性体をENT−2(P9)と名付けた。
【0151】
P8収量:228mg、0.529mmol、46%。保持時間4.00分{カラム:フェノメネックスLuxアミロース−1、4.6×250mm、5μm;移動相A:二酸化炭素;移動相B:[0.2%(メタノール中の7Mアンモニア)を含有する2−プロパノール];勾配:5%Bを1.00分、次いで8.00分にわたり5%から60%B;流速:3.0mL/分;逆圧:120bar}。
【0152】
P9収量:229mg、0.531mmol、46%。保持時間4.50分(分析条件はP8に使用されたものと同一)。
P15の調製
メチル2−(クロロメチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボキシレート(P15)
【0153】
【化6】
【0154】
この全体の手順は、ラージスケールで行われた。全般的に、反応の前、加えて試薬の添加後、リアクターを−0.08から−0.05MPaに脱気し、次いで窒素を標準圧力まで充填した。このプロセスを全体で3回繰り返し、次いで酸素含量を評価して、それが≦1.0%であることを確認した。有機層の抽出および洗浄のプロセスのために、混合物を全体的に15〜60分撹拌し、次いで層分離の前に15〜60分静置した。
【0155】
工程1.(2S)−2−[(ベンジルオキシ)メチル]オキセタン(C25)の合成。
この反応は、およそ同じスケールの3つのバッチで行われた。2000Lのガラスが内張されたリアクターに、2−メチルプロパン−2−オール(774.7kg)を入れた。カリウムtert−ブトキシド(157.3kg、1402mol)を固体添加漏斗を介して添加し、混合物を30分撹拌した。次いでヨウ化トリメチルスルホキソニウム(308.2kg、1400mol)を同じ方式で添加し、反応混合物を55℃〜65℃で2〜3時間加熱し、その後すぐに(2S)−2−[(ベンジルオキシ)メチル]オキシラン(92.1kg、561mol)を5〜20kg/時間の速度で添加した。反応混合物を55℃〜65℃で25時間維持した後、それを25℃〜35℃に冷却し、珪藻土(18.4kg)に通過させてろ過した。ろ過ケークをtert−ブチルメチルエーテル(3×340kg)で濯ぎ、合わせたろ液を5000Lのリアクターに移し、純水(921kg)で処理し、15℃〜30℃で15〜30分撹拌した。次いで有機層を純水(920.5kg)中の塩化ナトリウム(230.4kg)の溶液を使用して2回洗浄し、減圧下(≦−0.08MPa)、≦45℃で濃縮した。n−ヘプタン(187kg)を添加し、得られた混合物を減圧下(≦−0.08MPa)、≦45℃で濃縮した;有機相を、カラムの上部に塩化ナトリウム(18.5kg)を用いたシリカゲルクロマトグラフィー(280kg)を使用して精製した。粗生成物をn−ヘプタン(513kg)を使用してカラム上にローディングし、次いでn−ヘプタン(688.7kg)および酢酸エチル(64.4kg)の混合物で溶出させた。3つのバッチを合わせて、C25を85%の純粋な淡黄色の油状物として得た(189.7kg、906mmol、54%)。1H NMR (400MHz, クロロホルム-d), C25のピークのみ:δ 7.40 - 7.32 (m, 4H), 7.32 - 7.27 (m, 1H), 4.98 (dddd, J = 8.1, 6.7, 4.9, 3.7 Hz, 1H), 4.72 - 4.55 (m, 4H), 3.67 (dd, ABXパターンの成分, J = 11.0, 4.9 Hz, 1H), 3.62 (dd, ABXパターンの成分, J = 11.0, 3.7 Hz, 1H), 2.72 - 2.53 (m, 2H)。
【0156】
工程2.(2S)−オキセタン−2−イルメタノール(C26)の合成。
10%炭素担持パラジウム(30.7kg)を、添加漏斗を介して、3000Lのステンレス鋼オートクレーブリアクター中のテトラヒドロフラン(1270kg)中の85%純粋なC25(前の工程から;185.3kg、884.8mol)の10℃〜30℃の溶液に添加した。添加漏斗を純水およびテトラヒドロフラン(143kg)で濯ぎ、濯いだものを反応混合物に添加した。リアクターの内容物を窒素でパージした後、それらを同様に水素で、圧力を0.3〜0.5MPaに増加させ、次いで0.05MPaにベントしてパージした。この水素パージを5回繰り返し、その後すぐに水素圧力を0.3〜0.4MPaに増加させた。次いで反応混合物を35℃〜45℃に加熱した。水素圧力を0.3〜0.5MPaに13時間維持し、その後、混合物を0.05MPaにベントし、0.15〜0.2MPaに圧力を増加させ、次いで0.05MPaにベントすることにより、窒素で5回パージした。混合物を10℃〜25℃に冷却した後、それをろ過し、リアクターをテトラヒドロフラン(2×321kg)で濯いだ。ろ過ケークをこの濯ぎ液に2回浸漬し、次いでろ過した;減圧(≦−0.06MPa)での濃縮を≦40℃で行って、テトラヒドロフラン(251kg)中のC26(62.2kg、706mol、80%)を得た。
【0157】
工程3.(2S)−オキセタン−2−イルメチル4−メチルベンゼンスルホネート(C27)の合成。
4−(ジメチルアミノ)ピリジン(17.5kg、143mol)を、テトラヒドロフラン(251kg)中のC26(前の工程から;62.2kg、706mol)およびジクロロメタン(1240kg)中のトリエチルアミン(92.7kg、916mol)の10℃〜25℃の溶液に添加した。30分後、塩化p−トルエンスルホニル(174.8kg、916.9mol)を20〜40分のインターバルで少しずつ添加し、反応混合物を15℃〜25℃で16時間および20分撹拌した。純水(190kg)を添加した;撹拌した後、有機層を重炭酸ナトリウム水溶液(53.8kgの重炭酸ナトリウムおよび622kgの純水を使用して調製した)で洗浄し、次いで塩化アンモニウム水溶液(230kgの塩化アンモニウムおよび624kgの純水を使用して調製された)で洗浄した。純水(311kg)での最後の洗浄の後、有機層をシリカゲル(60.2kg)を予めローディングしたステンレス鋼のヌッチェフィルターに通過させてろ過した。ろ過ケークをジクロロメタン(311kg)に20分浸漬させ、次いでろ過した;合わせたろ液を、330〜400Lが残るまで減圧下(≦−0.05MPa)および≦40℃で濃縮した。次いでテトラヒドロフラン(311kg)を15℃〜30℃で添加し、同じ方式で混合物を濃縮して、最終容量を330〜400Lにした。テトラヒドロフランの添加と濃縮を、330〜400Lの体積になるまで再度繰り返して、テトラヒドロフラン(251.8kg)中のC27の淡黄色の溶液を得た(167.6kg、692mmol、98%)。1H NMR (400MHz, クロロホルム-d), C27のピークのみ:δ 7.81 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.34 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 4.91 (ddt, J = 8.0, 6.7, 3.9 Hz, 1H), 4.62 - 4.55 (m, 1H), 4.53 - 4.45 (m, 1H), 4.14 (d, J = 3.9 Hz, 2H), 2.75 - 2.63 (m, 1H), 2.60 - 2.49 (m, 1H), 2.44 (s, 3H)。
【0158】
工程4.(2S)−2−(アジドメチル)オキセタン(C28)の合成。
N,N−ジメチルホルムアミド(473kg)、アジ化ナトリウム(34.7kg、534mol)、およびヨウ化カリウム(5.2kg、31mol)を、3000Lのガラスが内張されたリアクター中で、10℃〜25℃で合わせた。テトラヒドロフラン(125.4kg)中のC27(83.5kg、344.6mol)の添加の後、反応混合物を17時間および40分にわたり55℃〜65℃に加熱し、すぐにそれを25℃〜35℃に冷却し、底部のバルブから窒素を15分バブリングした。次いでtert−ブチルメチルエーテル(623kg)および純水(840kg)を添加し得られた水層をtert−ブチルメチルエーテル(312kgおよび294kg)で2回抽出した。合わせた有機層を、温度を10℃〜25℃に維持しながら純水(2×419kg)で洗浄して、上記の有機層の溶液(1236.8kg)中にC28(31.2kg、276mol、80%)を得た。
【0159】
工程5.1−[(2S)−オキセタン−2−イル]メタンアミン(C29)の合成。
10%炭素担持パラジウム(3.7kg)を、添加漏斗を介して、3000Lのステンレス鋼オートクレーブリアクター中のテトラヒドロフラン(328kg)中のC28[前の工程から;1264kg(31.1kgのC28、275mol)]の10℃〜30℃の溶液に添加した。添加漏斗をテトラヒドロフラン(32kg)で濯ぎ、濯いだものを、反応混合物に添加した。リアクターの内容物を窒素でパージした後、それらを同様に水素で、圧力を0.05〜0.15MPaに増加させ、次いで0.03〜0.04MPaにベントしてパージした。この水素パージを5回繰り返し、その後すぐに水素圧力を0.05〜0.07MPaに増加させた。反応温度を25℃〜33℃に増加させ、水素圧力を、3〜5時間毎に水素を交換しながら、0.05〜0.15MPaで22時間維持した。次いで混合物を、窒素で、圧力を0.15〜0.2MPaに増加させ、次いで0.05MPaにベントすることにより5回パージした。ろ過の後、テトラヒドロフラン(92kgおよび93kg)を使用してリアクターを洗浄し、次いでろ過ケークを浸漬した。合わせたろ液を減圧下(≦−0.07MPa)および≦45℃で濃縮して、テトラヒドロフラン(57.8kg)中のC29(18.0kg、207mol、75%)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6), C29のピークのみ:δ 4.62 (ddt, J = 7.6, 6.6, 5.1 Hz, 1H), 4.49 (ddd, J = 8.6, 7.3, 5.6 Hz, 1H), 4.37 (dt, J = 9.1, 5.9 Hz, 1H), 2.69 (d, J = 5.1 Hz, 2H), 2.55 - 2.49 (m, 1H), 2.39 (m, 1H)。
【0160】
工程6.メチル4−ニトロ−3−{[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]アミノ}安息香酸塩(C30)の合成。
炭酸カリウム(58.1kg、420mol)を、100Lのガラスが内張されたリアクター中のテトラヒドロフラン(148kg)中のメチル3−フルオロ−4−ニトロベンゾエート(54.8kg、275mol)の溶液に添加し、混合物を10分撹拌した。テトラヒドロフラン(212.9kg)中のC29(29.3kg、336mol)の溶液を添加し、反応混合物を20℃〜30℃で12時間撹拌し、その後すぐに酢酸エチル(151kg)を添加し、混合物をシリカゲル(29kg)に通過させてろ過した。ろ過ケークを酢酸エチル(150kgおよび151kg)で濯ぎ、合わせたろ液を、減圧下(≦−0.08MPa)および≦45℃で222〜281Lの体積に濃縮した。混合物を10℃〜30℃に冷却した後、n−ヘプタン(189kg)を添加し、撹拌を20分行い、混合物を減圧下(≦−0.08MPa)および≦45℃で222Lの体積に濃縮した。n−ヘプタン(181kg)を混合物に100〜300kg/時間の参照速度で再度添加し、撹拌を20分続けた。残留したテトラヒドロフランが≦5%になり、残留した酢酸エチルが10%〜13%になるまで、混合物をサンプリングした。混合物を40℃〜45℃に加熱し、1時間撹拌し、すぐにそれを5℃〜10℃/時間の速度で15℃〜25℃に冷却し、次いで15℃〜25℃で1時間撹拌した。ステンレス鋼の遠心分離機を使用してろ過し、ろ過ケークを得て、これを酢酸エチル(5.0kg)およびn−ヘプタン(34kg)の混合物で濯ぎ、次いでテトラヒドロフラン(724kg)と共に10℃〜30℃で15分撹拌した;ろ過により、大部分がC30で構成される黄色の固体を得た(57.3kg、210mol、76%)。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) 8.34 (t, J = 5.8 Hz, 1H), 8.14 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.13 (dd, J = 8.9, 1.8 Hz, 1H), 4.99 (dddd, J = 7.7, 6.7, 5.3, 4.1 Hz, 1H), 4.55 (ddd, J = 8.6, 7.3, 5.8 Hz, 1H), 4.43 (dt, J = 9.1, 6.0 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.67 - 3.61 (m, 2H), 2.67 (dddd, J = 11.1, 8.6, 7.7, 6.2 Hz, 1H), 2.57 - 2.47 (m, 1H)。
【0161】
工程7.メチル2−(クロロメチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボキシレート(P15)の合成。
3000Lのオートクレーブリアクター中のテトラヒドロフラン(678kg)中のC30(前の工程から;51.8kg、190mol)の溶液を、10℃〜30℃で、10%炭素担持パラジウム(5.2kg)で処理した。添加パイプをテトラヒドロフラン(46kg)で濯ぎ、濯いだものを、反応混合物に添加した。リアクターの内容物を窒素でパージした後、それらを同様に水素で、圧力を0.1〜0.2MPaに増加させ、次いで0.02〜0.05MPaにベントしてパージした。この水素パージを5回繰り返し、その後すぐに水素圧力を0.1〜0.25MPaに増加させた。反応混合物を、20℃〜30℃で、2〜3時間毎に撹拌し、混合物を窒素で3回パージし、次いで水素で5回パージした;それぞれ最後の水素交換の後、水素圧力を0.1〜0.25MPaに増加させた。11.25時間の総反応時間の後、反応混合物を標準圧力にベントし、圧力を0.15〜0.2MPaに増加させ、次いで0.05MPaにベントすることによって窒素で5回パージした。次いでこれをろ過し、ろ過ケークをテトラヒドロフラン(64kgおよび63kg)で2回濯いだ;合わせた濯いだものとろ液を減圧下(≦−0.08MPa)および≦40℃で128〜160Lの体積に濃縮した。テトラヒドロフラン(169kg)を添加し、混合物を128〜160Lの体積に再度濃縮した;このプロセスを合計4回繰り返して、中間体メチル4−アミノ−3−{[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]アミノ}安息香酸塩の溶液を得た。
【0162】
この溶液に、テトラヒドロフラン(150kg)を添加し、続いて2−クロロ−1,1,1−トリメトキシエタン(35.1kg、227mol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(1.8kg、9.5mol)を添加した。反応混合物を25分撹拌した後、それを40℃〜45℃で5時間加熱し、すぐにそれを減圧下で135〜181Lの体積に濃縮した。2−プロパノール(142kg)を添加し、混合物を再度、135〜181Lの体積に濃縮し、その後すぐに2−プロパノール(36.5kg)および純水(90kg)を添加し、溶液が得られるまで撹拌を続けた。これをインラインの液体フィルターでろ過し、次いで150〜400kg/時間の参照速度で、20℃〜40℃で、純水(447kg)で処理した。混合物を20℃〜30℃に冷却した後、それを2時間撹拌し、遠心分離機を用いたろ過を介して固体を収集した。ろ過ケークを2−プロパノール(20.5kg)および純水(154kg)の溶液で濯いだ;乾燥させた後、P15を白色の固体として得た(32.1kg、109mol、57%)。1H NMR (400MHz, クロロホルム-d)δ 8.14 - 8.11 (m, 1H), 8.01 (dd, J = 8.5, 1.1 Hz, 1H), 7.79 (br d, J = 8.6 Hz, 1H), 5.26 - 5.18 (m, 1H), 5.04 (s, 2H), 4.66 - 4.58 (m, 2H), 4.53 (dd, ABXパターンの成分, J = 15.7, 2.7 Hz, 1H), 4.34 (dt, J = 9.1, 6.0 Hz, 1H), 3.96 (s, 3H), 2.82 - 2.71 (m, 1H), 2.48 - 2.37 (m, 1H)。
【0163】
代替として、P15は、その全体が参照により組み入れられる米国特許第10,208,019号に記載される方法を使用して調製してもよい(この特許の第58列の中間体23を参照)。
【0164】
実施例1
2−({4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボン酸、DIAST−X2(化合物1)[P9から]
【0165】
【化7】
【0166】
工程1.5−クロロ−2−[2−メチル−4−(ピペリジン−4−イル)−1,3−ベンゾジオキソール−2−イル]ピリジン、ENT−X2、p−トルエンスルホン酸塩(C58)の合成[P9から]。
【0167】
酢酸エチル(2.7mL)中のP9(228mg、0.529mmol)の溶液を、p−トルエンスルホン酸一水和物(116mg、0.610mmol)で処理し、反応混合物を50℃で16時間加熱した。次いでこれを室温で一晩撹拌し、その後すぐにろ過を介して沈殿を収集し、酢酸エチルおよびヘプタン(1:1、2×20mL)の混合物で濯いで、C58を白色の固体として得た。収量:227mg、0.451mmol、85%。LCMS m/z 331.0◆[M+H]+1H NMR (400MHz, DMSO-d6):δ 8.73 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.61 - 8.46 (br m, 1H), 8.35 - 8.18 (br m, 1H), 8.02 (dd, J = 8.5, 2.5 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 7.8, 2H), 7.11 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 6.89 - 6.81 (m, 2H), 6.72 (pentet, J = 4.0 Hz, 1H), 3.45 - 3.27 (m, 2H, 仮定;水のピークによって部分的に不明瞭), 3.10 - 2.91 (m, 3H), 2.28 (s, 3H), 2.02 (s, 3H), 1.97 - 1.80 (m, 4H)。
【0168】
工程2.メチル2−({4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボキシレート、DIAST−Y2(C59)の合成[P9から]。
【0169】
N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.234mL、1.34mmol)を、アセトニトリル(2.2mL)中のC58(225mg、0.447mmol)の溶液に添加した。この混合物を45℃で5分撹拌した後、P15(120mg、0.407mmol)を添加し、撹拌を45℃で16時間続け、その後すぐにP15(11mg、37μmol)を再度添加した。追加の3時間撹拌した後、反応混合物を水(2.5mL)で処理し、そのまま室温に冷却した。さらなる水(5mL)を添加し、得られたスラリーを2時間撹拌し、その後すぐにろ過を介して固体を収集し、アセトニトリルおよび水の混合物(15:85、3×5mL)で洗浄して、C59のオフホワイト色の固体(252mg)を得た。H NMR分析によれば、この材料は多少のN,N−ジイソプロピルエチルアミン含有しており、これをそれに続く工程に直接用いた。LCMS m/z 589.1◆[M+H]+1H NMR (400MHz, クロロホルム-d)8.61 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.96 (dd, J = 8.5, 1.5 Hz, 1H), 7.74 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.67 (dd, ABXパターンの成分, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 7.59 - 7.51 (m, 1H), 6.82 - 6.75 (m, 1H), 6.74 - 6.66 (m, 2H), 5.28 - 5.19 (m, 1H), 4.75 (dd, ABXパターンの成分, J = 15.3, 6.0 Hz, 1H), 4.68 (dd, ABXパターンの成分, J = 15.3, 3.4 Hz, 1H), 4.67 - 4.58 (m, 1H), 4.41 (ddd, J = 9.1, 5.9, 5.9 Hz, 1H), 3.95 (s, 2H), 3.95 (s, 3H), 3.07 - 2.89 (m, 2H), 2.81 - 2.69 (m, 2H), 2.53 - 2.41 (m, 1H), 2.37 - 2.22 (m, 2H), 2.05 (s, 3H), 1.93 - 1.74 (m, 4H)。
【0170】
工程3.2−({4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボン酸、DIAST−X2(化合物1)の合成[P9から]。
【0171】
メタノール(2mL)中のC59(前の工程から;250mg、≦0.407mmol)の懸濁液を40℃に加熱し、その後すぐに水酸化ナトリウム水溶液(1M;0.81mL、0.81mmol)を添加した。17時間後、反応混合物をそのまま室温に冷却し、pHを1Mクエン酸水溶液で5〜6に調整した。得られた混合物を水(2mL)で希釈し、2時間撹拌し、酢酸エチル(3×5mL)で抽出し、合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(5mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮して、泡沫状の固体を得た。この材料を酢酸エチルおよびヘプタンの混合物(1:1、4mL)中に溶解させ、50℃に加熱し、次いでそのまま冷却し、一晩撹拌した。ろ過により、化合物1を白色の固体として得た。収量:2工程にわたり、179mg、0.311mmol、76%。LCMS m/z 575.1◆[M+H]+1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 12.73 (br s, 1H), 8.71 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 8.27 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 8.00 (dd, J = 8.5, 2.5 Hz, 1H), 7.80 (dd, J = 8.4, 1.6 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.83 - 6.72 (m, 3H), 5.14 - 5.06 (m, 1H), 4.77 (dd, ABXパターンの成分, J = 15.2, 7.2 Hz, 1H), 4.63 (dd, ABXパターンの成分, J = 15.2, 2.8 Hz, 1H), 4.50 - 4.42 (m, 1H), 4.37 (ddd, J = 9.0, 5.9, 5.9 Hz, 1H), 3.85 (AB カルテット, JAB = 13.6 Hz, Δ□AB = 71.5 Hz, 2H), 3.01 (br d, J = 11.2 Hz, 1H), 2.85 (br d, J = 11.2 Hz, 1H), 2.74 - 2.57 (m, 2H), 2.47 - 2.38 (m, 1H), 2.29 - 2.10 (m, 2H), 2.01 (s, 3H), 1.81 - 1.64 (m, 4H)。
【0172】
合成1S−1.化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の合成
1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム2−({4−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボキシレート、DIAST−X2(化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩)の合成[P9から]。
【0173】
【化8】
【0174】
テトラヒドロフラン(10mL)中の化合物1(1.54g、2.68mmol)の混合物を、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオールの水溶液(トリス、1.0M;2.81mL、2.81mmol)で処理した。24時間後、反応混合物をエタノール(2×50mL)を用いて真空中で濃縮した。残留物をエタノール(15mL)で処理した。20時間撹拌した後、固体をろ過を介して収集し、冷たいエタノール(5mL)で洗浄して、化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩を白色の固体として得た。収量:1.41g、2.03mmol、76%。LCMS m/z 575.3◆[M+H]+1H NMR (600MHz, DMSO-d6) δ 8.71 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 8.21 (br s, 1H), 8.00 (dd, J = 8.5, 2.5 Hz, 1H), 7.79 (br d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.57 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.82 - 6.73 (m, 3H), 5.13 - 5.07 (m, 1H), 4.74 (dd, J = 15.3, 7.2 Hz, 1H), 4.61 (dd, J = 15.3, 2.9 Hz, 1H), 4.49 - 4.43 (m, 1H), 4.37 (ddd, J = 9.0, 5.9, 5.9 Hz, 1H), 3.93 (d, J = 13.6 Hz, 1H), 3.75 (d, J = 13.5 Hz, 1H), 3.01 (br d, J = 11.3 Hz, 1H), 2.86 (br d, J = 11.4 Hz, 1H), 2.73 - 2.59 (m, 2H), 2.48 - 2.37 (m, 1H), 2.27 - 2.20 (m, 1H), 2.19 - 2.12 (m, 1H), 2.01 (s, 3H), 1.82 - 1.66 (m, 4H)。mp = 184℃〜190℃。
【0175】
合成1S−2.化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の代替合成
2−メチルテトラヒドロフラン(90ml)中の化合物1(8.80gm、15.3mmol)の混合物を、37℃の水浴中で、ロータリーエバポレーターで、真空中で濃縮して、総体積を約54mlに低減した。混合物にイソプロパノール(90ml)を添加し、次いで得られた混合物を約54mlの体積に再度濃縮した。混合物にイソプロパノール(135ml)を添加し、続いてトリスアミン水溶液(3M;5.0ml、0.98当量)を添加した。得られた混合物/溶液を周囲温度で撹拌すると、約15分以内に固形の沈殿物が形成され始めた。次いで混合物を周囲温度で追加の5時間撹拌した。得られた混合物/スラリーを0℃に冷却し、冷却したスラリーをさらに約2時間撹拌した。スラリーをろ過し、冷たいイソプロパノール(3×15ml)で洗浄した。収集された固体を、収集漏斗上で約90分、空気乾燥させ、次いで真空オーブンに一晩移して乾燥させた。50℃/23inHg真空で約16時間後(わずかに窒素を流しながら)、8.66gmの化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩を白色の固体として得た;UPLCにより99.8面積%(収量:12.5mmol、81%)。LCMSおよびH NMRデータを得たが、これは、上記で示された合成1S−1におけるものと実質的に同じである。
【0176】
化合物1の形態Aの1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩(化合物1の無水トリス塩の形態Aとしても公知)の粉末X線回折(PXRD)データの獲得
化合物1のトリス塩の白色の固体(合成1S−1および合成1S−2の両方から)をPXRD分析に提出したところ、結晶性材料であることが見出された(これは、形態Aと名付けられる)。粉末X線回折分析を、Cu放射線源を備えたブルカーAXS D8エンデバー回折計を使用して実行した。発散スリットを15mmの連続照明で設定した。回折された放射を、2.99度に設定されたデテクターPSD開口部を備えたPSD−リンクスアイ(PSD-Lynx Eye)デテクターによって検出した。X線管電圧およびアンペア数を、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。データを、3.0〜40.0度の2−シータのシータ−シータゴニオメーターにおけるCu波長(CuKα=1.5418λ)で、0.01度の段階サイズおよび1.0秒の段階時間を使用して収集した。散乱防止スクリーンを、1.5mmの固定した距離に設定した。データ収集中、サンプルを回転させた。シリコン製の低バックグラウンドのサンプルホルダー中にそれを設置することによってサンプルを調製し、収集中に回転させた。ブルカーDIFFRACプラス(DIFFRAC Plus)ソフトウェアを使用してデータを収集し、EVAディフラクトプラス(diffract plus)ソフトウェアによって分析を実行した。PXRDデータファイルは、ピーク検索の前に加工しなかった。EVAソフトウェア中のピーク検索アルゴリズムを使用して、1の閾値を用いて選択されたピークを使用して、予備的なピーク同定を行った。有効性を確認するために、調整を手動で行った;自動化アサインメントの出力を外観でチェックし、ピーク位置をピークの最大値まで調整した。≧3%の相対強度を有するピークを全般的に選択した。典型的には、解像されなかった、またはノイズと一致したピークは選択されなかった。USPで述べられたPXRDからのピーク位置に関連する典型的なエラーは±0.2°2−シータまでであった(USP−941)。合成1S−2により得られた形態AのサンプルからのPXRDの、2θ度および≧3.0%の相対強度を有する相対強度に関して表された回折ピークのリストを、表E1−1の上に示す。
【0177】
【表1】
【0178】
本明細書に記載される方法により得られた化合物1のトリス塩の無水(無水物)の結晶形態は、形態Aと名付けられる。形態Aは、例えば粉末X線回折パターン(PXRD)や13C固体NMRなどの他の固体の特性を利用した方法に関して、その固有な固体状態のシグネチャーによって同定することができる。
【0179】
一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;15.7±0.2°;および17.6±0.2°から選択される位置で、少なくとも2つの特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;15.7±0.2°;および17.6±0.2°から選択される位置で、少なくとも3つの特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;15.7±0.2°;および17.6±0.2°から選択される位置で、特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。
【0180】
一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°および17.6±0.2°に特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。
一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;および17.6±0.2°にピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。
【0181】
一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;および15.7±0.2°にピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。
一部の実施態様において、形態Aは、2θで、7.7±0.2°;15.2±0.2°;15.7±0.2°;および17.6±0.2°にピークを含む粉末X線回折パターンを呈する。
【0182】
一部の実施態様において、形態Aは、実質的に図1で示される通りの粉末X線回折パターンを呈する。
化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態Aの固体NMR分析
固体NMR(ssNMR)分析を、ブルカー−バイオスピン・アバンスIII500MHz(H周波数)NMR分光計に配置されたCPMASプローブで実行した。化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態Aのサンプルを、4mmローターに充填した。15.0kHzのマジック角スピニング速度を使用した。
【0183】
プロトンデカップル交差分極マジック角スピニング(CPMAS)実験を使用して13C ssNMRスペクトルを収集した。スペクトル獲得の間、80〜90kHzの位相変調させたプロトンデカップリング場を適用した。交差分極の接触時間を2msに設定し、リサイクル遅延を3〜8秒に設定した。スキャンの数を調整して十分なシグナル対ノイズ比を得て、各APIにつき2048スキャンを収集した。13C化学シフトスケールを、結晶性アダマンタンの外部標準への13C CPMAS実験を使用して参照し、その高磁場共鳴を29.5ppmに設定した。
【0184】
自動化ピークピッキングを、ブルカー−バイオスピン・トップスピン(TopSpin)バージョン3.6ソフトウェアを使用して実行した。全般的に、予備的なピーク選択のために3%相対強度の閾値を使用した。の出力自動化ピークピッキングを目視でチェックして有効性を確認し、必要に応じて調整を手動で行った。具体的な固体NMRピーク(ssNMR)値が本明細書で報告されているが、機器、サンプル、およびサンプル調製の差に起因して、これらのピーク値の範囲が存在する。これは、ピーク位置において固有の変動のためにssNMR分野においてよくあることである。13C化学シフトのx軸値の典型的な変動性は、結晶性固体の場合、プラスまたはマイナス0.2ppmの範囲である。本明細書において報告されたssNMRピーク高さは、相対強度である。固体NMR強度は、CPMAS実験パラメーターの実際の設定およびサンプルの熱履歴に応じて様々であり得る。化学シフトのデータは、他の因子のなかでも特に、試験条件(すなわちスピン速度およびサンプルホルダー)、参照物質、およびデータ加工パラメーターに依存する。典型的には、ss−NMRの結果は、約±0.2ppmの範囲内まで正確である。図2に、得られた形態Aの代表的な13C ssNMRスペクトルを示す。表E1−2に、形態Aの13C化学シフト[ppm]±0.2ppmを列挙する。
【0185】
【表2-1】
【0186】
【表2-2】
【0187】
実施例2
化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態2
化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態2の調製
化合物1(49.7mg)を、バイアル中でメタノール(0.828mL)と混合し、50℃に加熱した。次いでトリス(30.25μL、3M)のストック溶液を添加し、得られた混合物をゆっくり室温に冷却した。次いで混合物を室温でゆっくり蒸発させた(バイアルをヒュームフード中に置き、ふたをわずかに割って溶剤蒸発を可能にした)。化合物1のトリス塩の結晶は、メタノール/水の混合溶媒中での遅い蒸発によって形成された(この結晶形態は形態2と名付けられる)。
【0188】
単結晶X線分析
化合物1のトリス塩の形態2のサンプルを、単結晶分析のために試験した。データ収集を、ブルカーD8ベンチャー(Venture)回折計で、室温で実行した。データ収集は、オメガおよびファイスキャンからなっていた。
【0189】
単斜晶系クラスの空間群P2において、SHELXソフトウェアスイートを使用して、固有の位相により構造を解析した。その後、全行列最小二乗法によって構造を精密化した。全ての非水素原子を見つけ出し、異方性変位パラメーターを使用して精密化した。
【0190】
末端の環(C1−C2−C3−C4−C5・・・Cl1)は無秩序であった。この群のために無秩序モデルを試験したが、十分精密化されなかった。CIF_Checkモジュールは、上述したセグメントに基づいてレベル「A」を生じた。
【0191】
窒素および酸素に配置された水素原子をフーリエの差分布から見つけ出し、制限された距離で精密化した。残存する水素原子を計算された位置に置き、これをそれらの担体原子に乗せた。最終的な精密化は、全ての水素原子に対する等方性変位パラメーターを含んでいた。
【0192】
O5からN5へのプロトン移動のために、トリス塩が確認された。加えて、その構造は、1つの水分子を含有していた(したがって一水和物であった)。尤度法(Hooft 2008)を使用した絶対構造の分析を、PLATON(Spek 2010)を使用して、C22の公知の立体化学情報を用いて実行した(したがって、C6の立体化学情報を決定した)。精密化した構造を、SHELXTLプロッティングパッケージを使用してプロットした(図3)。精密化した構造によれば、形態2は、化合物1のトリス塩の一水和物であり、その構造は、以下のように示すことができる:
【0193】
【化9】
【0194】
最終的なR指標は6.6%であった。最終的な差フーリエから、電子密度の喪失または配置ミスがないことが解明された。
表E2−1に、関連する結晶、データ収集および精密化を要約する。表E2−2からE2−4に、原子座標、結合距離、結合角および変位パラメーターを列挙する。
【0195】
【表3】
【0196】
【表4-1】
【0197】
【表4-2】
【0198】
【表5-1】
【0199】
【表5-2】
【0200】
【表5-3】
【0201】
【表5-4】
【0202】
【表5-5】
【0203】
等価な原子を生成するのに対称変換が使用される:
【0204】
【表6】
【0205】
計算/シミュレートされたPXRDデータ。
上記の単結晶X線分析により得られた情報を使用して、形態2のPXRDピークの位置および強度を計算/シミュレートすることができる(図4を参照、ブルカーDIFFRAC.EVAバージョン5.0.0.22を使用)。形態2の≧3.0%の相対強度と共に2θ度および相対強度に対して表される計算/シミュレートされたPXRD回折ピークのリストを以下に示す。
【0206】
【表7】
【0207】
実施例3.化合物1のトリス塩の形態3
化合物1のトリス塩の形態3の調製(スラリーからスラリーへの変換)
化合物1のトリス塩の形態Aの無水形態(1.177グラム)を50mLのEasyMax(登録商標)リアクターに添加した。次いでアセトニトリルおよび水(27.9mLのアセトニトリルおよび2.4mLの水)の混合溶媒を添加した。得られた混合物(スラリー)を、2日にわたり室温(約25℃)で撹拌するオーバーヘッドパドルで撹拌した。次いで混合物を0℃に冷却し、約1時間撹拌した。次いで混合物を、ろ紙を介した吸引ろ過によってろ過し、収集した固体(ケーク)を2〜3mLの冷たいアセトニトリル(0℃)で2回濯いだ。得られたケークを漏斗上で1時間風乾させた。ケーク/漏斗を、さらに乾燥させるために真空オーブンに移した(Hg真空で50℃/約22、わずかに窒素を流しながら)。約5時間後、1.115gmの白色の固体を得た(形態3として設計された)。
【0208】
化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態3の代替の調製
代替として、化合物1のトリス塩の形態3の単結晶を、アセトニトリル/15%の水(v/v)中の化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の飽和溶液へのアセトニトリルの蒸気拡散によって調製した。
【0209】
単結晶のX線分析
化合物1のトリス塩の形態3のサンプルを、単結晶のX線分析のために試験した。代表的な結晶に対して、データ収集を、ブルカーD8ベンチャー回折計で、室温で実行した。データ収集は、オメガおよびファイスキャンからなっていた。
【0210】
単斜晶系の空間群P2において、SHELXソフトウェアスイート(SHELXTL、バージョン5.1、ブルカーAXS、1997)を使用して、固有の位相により構造を解析した。その後、全行列最小二乗法によって構造を精密化した。全ての非水素原子を見つけ出し、異方性変位パラメーターを使用して精密化した。
【0211】
窒素および酸素に配置された水素原子をフーリエの差分布から見つけ出し、制限された距離で精密化した。残存する水素原子を計算された位置に置き、これをそれらの担体原子に乗せた。最終的な精密化は、全ての水素原子に対する等方性変位パラメーターを含んでいた。
【0212】
尤度法を使用した絶対構造の分析(R.W.W. Hooftら、J. Appl. Cryst. (2008). 41. 96〜103を参照)を、PLATON(A.L. Spek, J. Appl. Cryst. 2003、36、7〜13を参照)を使用して実行した。提出されたサンプルが鏡像異性的に純粋であると仮定して、絶対構造(2つのキラル中心に関する立体化学情報を用いて)を割り当てた。
【0213】
最終的なR指標は5.1%であった。最終的な差フーリエから、電子密度の喪失または配置ミスがないことが解明された。精密化した構造を、SHELXTLプロッティングパッケージ(SHELXTL、バージョン5.1、ブルカーAXS、1997)を使用してプロットした(図5)。絶対配置を 、フラック(Flack)の方法によって決定した(H.D. Flack、Acta Cryst. 1983、A39、867〜881を参照)。精密化した構造によれば、形態3は、化合物1:
【0214】
【化10】
【0215】
のトリス塩の一水和物であり、この水和物形態の化学名(立体化学情報を含む)は、2−({4−[(2S)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1−[(2S)−オキセタン−2−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボキシレートの1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩、一水和物である。
【0216】
表E3−1に、関連する結晶、データ収集および精密化を要約する。表E3−2からE3−4に、原子座標、結合距離、結合角および変位パラメーターを列挙する。
【0217】
【表8】
【0218】
【表9】
【0219】
【表10-1】
【0220】
【表10-2】
【0221】
【表10-3】
【0222】
【表10-4】
【0223】
【表11】
【0224】
化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩(化合物1のトリス塩の一水和物の形態3としても公知)の形態3の粉末X線回折(PXRD)データの獲得
形態3(例えば、本明細書に記載される方法に従って調製された化合物1のトリス塩の白色の固体)のサンプルをPXRD分析に提出したところ、結晶性材料であることが見出された(これは、形態3と名付けられる)。
【0225】
粉末X線回折分析を、Cu放射線源を備えたブルカーAXS D8エンデバー回折計(K−α平均)を使用して実行した。発散スリットを15mmの連続照明で設定した。回折された放射を、2.99度に設定されたデテクターPSD開口部を備えたPSD−リンクスアイデテクターによって検出した。X線管電圧およびアンペア数を、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。データを、シータ−シータゴニオメーターで、3.0〜40.0度2−シータのCu波長で、0.00999度の段階サイズおよび1.0秒の段階時間を使用して収集した。散乱防止スクリーンを、1.5mmの固定した距離に設定した。収集中、サンプルを15/分で回転させた。シリコン製の低バックグラウンドのサンプルホルダー中にそれを設置することによってサンプルを調製し、収集中に回転させた。ブルカーDIFFRACプラスソフトウェアを使用してデータを収集し、EVAディフラクトプラスソフトウェアによって分析を実行した。特定の実験で使用されたサンプルホルダーは、ファイル名内のコード名によって示される:DW=ディープウェルホルダー(Deep well holder)、SD=小さいディボットホルダー(small divot holder)およびFP=平坦なプレートホルダー(Flat plate holder)。
【0226】
PXRDデータファイルは、ピーク検索の前に加工しなかった。EVAソフトウェア中のピーク検索アルゴリズムを使用して、1の閾値を用いて選択されたピークおよび0.3の幅値を使用して、予備的なピーク同定を行った。自動化アサインメントの出力を目視でチェックして有効性を確認し、必要に応じて調整を手動で行った。≧3%の相対強度を有するピークを全般的に選択した。解像されなかった、またはノイズと一致したピークは選択されなかった。USPで述べられたPXRDからのピーク位置に関連する典型的なエラーは±0.2°2−シータまでであった(USP−941)。形態3のサンプルからの2θ度および≧3.0%の相対強度を有する相対強度に関して表されたPXRD回折ピークのリストを以下に示す。
【0227】
【表12】
【0228】
化合物1のトリス塩の形態3(一水和物)の固体NMR分析
固体NMR(ssNMR)分析を、ブルカー−バイオスピン・アバンスIII500MHz(H周波数)NMR分光計に配置されたCPMASプローブで実行した。化合物1の1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム塩の形態3、一水和物のサンプルを4mmローターに充填した。15.0kHzのマジック角スピニング速度を使用した。
【0229】
プロトンデカップル交差分極マジック角スピニング(CPMAS)実験を使用して13C ssNMRスペクトルを収集した。スペクトル獲得の間、80〜90kHzの位相変調させたプロトンデカップリング場を適用した。交差分極の接触時間を2msに設定し、リサイクル遅延を3〜8秒に設定した。スキャンの数を調整して十分なシグナル対ノイズ比を得て、各APIにつき2048スキャンを収集した。13C化学シフトスケールを結晶性アダマンタンの外部標準への13C CPMAS実験を使用して参照し、その高磁場共鳴を29.5ppmに設定した。
【0230】
自動化ピークピッキングを、ブルカー−バイオスピン・トップスピンバージョン3.6ソフトウェアを使用して実行した。全般的に、予備的なピーク選択のために3%相対強度の閾値を使用した。自動化ピークピッキングの出力を目視でチェックして有効性を確認し、必要に応じて調整を手動で行った。具体的な固体NMRピーク値が本明細書で報告されているが、機器、サンプル、およびサンプル調製の差に起因して、これらのピーク値の範囲が存在する。これは、ピーク位置において固有の変動のために固体NMR分野においてよくあることである。13C化学シフトのx軸値の典型的な変動性は、結晶性固体の場合、プラスまたはマイナス0.2ppmの範囲である。本明細書において報告された固体NMRのピーク高さは、相対強度である。固体NMR強度は、CPMAS実験パラメーターの実際の設定およびサンプルの熱履歴に応じて様々であり得る。化学シフトのデータは、他の因子のなかでも特に、試験条件(すなわちスピン速度およびサンプルホルダー)、参照物質、およびデータ加工パラメーターに依存する。典型的には、ss−NMRの結果は、約±0.2ppmの範囲内まで正確である。
【0231】
【表13】
【0232】
実施例AA.CHO GLP−1RクローンH6−アッセイ1
細胞中のcAMPレベルを測定するHTRF(均一時間分解時間分解蛍光)cAMP検出キット(cAMP HIレンジアッセイキット(Range Assay Kit);シスバイオ(CisBio)カタログ番号62AM6PEJ)を利用する細胞ベースの機能アッセイを用いて、GLP−1R媒介アゴニスト活性を決定した。この方法は、細胞によって生産された天然cAMPと色素d2で標識された外因性cAMPとの競合イムノアッセイである。トレーサー結合は、クリプテートで標識されたmAb抗cAMPによって可視化される。特異的なシグナル(すなわちエネルギー移動)は、標準または実験サンプルのいずれかにおいてcAMPの濃度に反比例する。
【0233】
ヒトGLP−1Rコード配列(NCBI参照配列NP_002053.3、天然に存在するバリアントGly168Serを含む)をpcDNA3(インビトロジェン(Invitrogen))にサブクローニングし、受容体を安定して発現する細胞株を単離した(クローンH6と名付けた)。125I−GLP−17〜36(パーキン・エルマー(Perkin Elmer))を使用した飽和結合分析(ろ過アッセイ手順)は、この細胞株由来の原形質膜が、高いGLP−1R密度を発現すること(K:0.4nM、Bmax:1900fmol/mgタンパク質)を示した。
【0234】
細胞を低温保存から取り出し、40mLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS−ロンザ(Lonza)、カタログ番号17−512Q)に再懸濁し、22℃で、800×gで5分遠心分離した。次いで細胞ペレットを、10mLの増殖培地[DMEM/F12、HEPESとの1:1混合物、L−Gln、500mL(DMEM/F12、ロンザ、カタログ番号12−719F)、10%熱不活性化ウシ胎児血清(ギブコ(Gibco)、カタログ番号16140−071)、5mLの100×Pen−Strep(ギブコ、カタログ番号15140−122)、5mLの100×L−グルタミン(ギブコ、カタログ番号25030−081)および500μg/mLゲネチシン(G418)(インビトロジェン、番号10131035)]に再懸濁した。増殖培地中の細胞懸濁液の1mLのサンプルを、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)ViCellでカウントして、細胞生存率および1mL当たりの細胞数を決定した。次いで、マトリックスコンビマルチドロップ(Matrix Combi Multidrop)試薬ディスペンサーを使用して、1ウェル当たり2000個の生存可能な細胞が送達されるように残存する細胞懸濁液を増殖培地で調整し、細胞を白色の384ウェルの組織培養で処理したアッセイプレート(コーニング3570)に分配した。次いでアッセイプレートを5%二酸化炭素中の加湿した環境で、37℃で48時間インキュベートした。
【0235】
試験しようとする様々な濃度の各化合物(DMSO中)を、100μMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX;シグマ、カタログ番号I5879)を含有するアッセイ緩衝液(カルシウム/マグネシウムを含むHBSS(ロンザ/バイオウィッタカー(BioWhittaker)、カタログ番号10−527F)/0.1%BSA(シグマアルドリッチ、カタログ番号A7409−1L)/20mMのHEPES(ロンザ/バイオウィッタカー、カタログ番号17−737E)で希釈した。最終的なDMSO濃度は、1%である。
【0236】
48時間後、増殖培地をアッセイプレートウェルから取り出し、細胞を、5%二酸化炭素中の加湿した環境で、アッセイ緩衝液で連続的に希釈した化合物20μLで、37℃で30分処理した。30分のインキュベーション後、10μLの標識されたd2 cAMPおよび10μLの抗cAMP抗体(両方とも細胞溶解緩衝液で1:20に希釈した;製造元のアッセイプロトコールに記載された通り)を、アッセイプレートの各ウェルに添加した。次いでプレートを室温でインキュベートし、60分後、エンビジョン(Envision)2104マルチラベルプレートリーダーを用いて、330nmの励起ならびに615および665nmの放出を使用して、HTRFシグナルにおける変化を読んだ。生データを、cAMP標準曲線からの補間法によってnM cAMPに変換し(製造元のアッセイプロトコールに記載された通り)、各プレートに含まれる完全アゴニストGLP−17〜36の飽和濃度(1μM)に対する作用のパーセントを決定した。EC50決定を、4−パラメーターロジスティック用量応答方程式を使用した曲線フィッティングプログラムで分析されたアゴニスト用量応答曲線から行った。
【0237】
実施例BB.CHO GLP−1RクローンC6−アッセイ2
細胞中のcAMPレベルを測定するHTRF(均一時間分解時間分解蛍光)cAMP検出キット(cAMP HIレンジアッセイキット;シスバイオ(Cis Bio)カタログ番号62AM6PEJ)を利用する細胞ベースの機能アッセイを用いて、GLP−1R媒介アゴニスト活性を決定した。この方法は、細胞によって生産された天然cAMPと色素d2で標識された外因性cAMPとの競合イムノアッセイである。トレーサー結合は、クリプテートで標識されたmAb抗cAMPによって可視化される。特異的なシグナル(すなわちエネルギー移動)は、標準または実験サンプルのいずれかにおいてcAMPの濃度に反比例する。
【0238】
ヒトGLP−1Rコード配列(NCBI参照配列NP_002053.3、天然に存在するバリアントLeu260Pheを含む)をpcDNA5−FRT−TOにサブクローニングし、低い受容体密度を安定して発現するクローンCHO細胞株を、製造元(サーモフィッシャー(ThermoFisher))によって記載されるようにしてFlp−In(商標)T−Rex(商標)システムを使用して単離した。125I−GLP−1(パーキン・エルマー)を使用した飽和結合分析(ろ過アッセイ手順)は、この細胞株由来の原形質膜(クローンC6と名付けた)が、クローンH6細胞株と比べて、低いGLP−1R密度を発現すること(K:0.3nM、Bmax:240fmol/mgタンパク質)を示した。
【0239】
細胞を低温保存から取り出し、40mLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS−ロンザ、カタログ番号17−512Q)に再懸濁し、22℃で、800×gで5分遠心分離した。DPBSを吸引し、細胞ペレットを、10mLの完全増殖培地(DMEM:F12、HEPESとの1:1混合物、L−Gln、500mL(DMEM/F12、ロンザ、カタログ番号12−719F)、10%熱不活性化ウシ胎児血清(ギブコ、カタログ番号16140−071)、5mLの100×Pen−Strep(ギブコ、カタログ番号15140−122)、5mLの100×L−グルタミン(ギブコ、カタログ番号25030−081)、700μg/mLハイグロマイシン(インビトロジェン、カタログ番号10687010)および15μg/mLブラストサイジン(ギブコ、カタログ番号R21001)に再懸濁した。増殖培地中の細胞懸濁液の1mLのサンプルをベクトン・ディッキンソンViCellでカウントして、細胞生存率および1mL当たりの細胞数を決定した。次いで、マトリックスコンビマルチドロップ試薬ディスペンサーを使用して、1ウェル当たり1600個の生存可能な細胞が送達されるように残存する細胞懸濁液を増殖培地で調整し、細胞を白色の384ウェルの組織培養で処理したアッセイプレート(コーニング3570)に分配した。次いでアッセイプレートを、加湿した環境(95%O2、5%CO)中で、37℃で48時間インキュベートした。
【0240】
試験しようとする様々な濃度の各化合物(DMSO中)を、100μMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX;シグマ、カタログ番号I5879)を含有するアッセイ緩衝液[カルシウム/マグネシウムを含むHBSS(ロンザ/バイオウィッタカー、カタログ番号10−527F)/0.1%BSA(シグマアルドリッチ、カタログ番号A7409−1L)/20mMのHEPES(ロンザ/バイオウィッタカーカタログ番号17−737E)]で希釈した。化合物/アッセイ緩衝液混合物中の最終的なDMSO濃度は、1%である。
【0241】
48時間後、増殖培地をアッセイプレートウェルから取り出し、および〆細胞を、加湿した環境(95%O2、5%CO)中で、アッセイ緩衝液で連続的に希釈した化合物20μLで37℃で30分処理した。30分のインキュベーション後、10μLの標識されたd2 cAMPおよび10μLの抗cAMP抗体(両方とも細胞溶解緩衝液で1:20に希釈した;製造元のアッセイプロトコールに記載された通り)を、アッセイプレートの各ウェルに添加した。次いでプレートを室温でインキュベートし、60分後、エンビジョン2104マルチラベルプレートリーダーで、330nmの励起ならびに615および665nmの放出を使用して、HTRFシグナルにおける変化を読んだ。生データを、cAMP標準曲線からの補間法によってnM cAMPに変換し(製造元のアッセイプロトコールに記載された通り)、各プレートに含まれる完全アゴニストGLP−1の飽和濃度(1μM)に対する作用のパーセントを決定した。EC50決定を、4−パラメーターロジスティック用量応答方程式を使用した曲線フィッティングプログラムで分析されたアゴニスト用量応答曲線から行った。
【0242】
表X−1において、アッセイデータを、列挙した複製の数(数値)に基づく相乗平均(EC50s)および相加平均(Emax)として、有効数字2桁まで提示する。ブランクセルは、その実施例に関するデータがないこと、またはEmaxが計算されなかったことを意味する。
【0243】
【表14】
【0244】
本明細書で言及された全ての特許、特許出願および参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】
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