【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
環状の第1ケースと、
前記第1ケースに回転自在に組み合わされる環状の第2ケースと、
前記第1ケースと前記第2ケースとの間に挟まれる中間部材と、
を備えるスラスト軸受であって、
前記第1ケースに係合する第1係合部と、前記第2ケースに係合する第2係合部とを有する接続部材を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、接続部材を介して第1ケースと第2ケースとを組み合わせることができるため、2つのケースの剛性を高めても接続部材を介して組み付けることができ、第1ケースと第2ケースとのどちらでも荷重を受け止めることができるとともに、組み立ても容易なスラスト軸受を提供することができる。
【0012】
[2]また、本発明は、
前記接続部材は、前記第2ケース側から前記第1ケース側へ向かって延び、先端が径方向外側又は内側に向かって突出した第1係合フック(例えば、実施形態の第1係合フック7、第3係合フック57。以下同一。)を備え、
前記第1ケースには、前記第1係合フックと係合する第1被係合部(例えば、実施形態の環状突条部23、第3被係合部24。以下同一。)が設けられ、
前記第1係合部は前記第1係合フックであり、
前記第2ケースには、前記第1係合フックの径方向内側または外側に沿って延び、前記第1係合フックが径方向に撓んで第1被係合部との係合が解除されることを阻止するように前記第1係合フックを支える係合維持部が設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、第2ケースの係合維持部が第1係合フックを径方向から支えることにより第1係合フックが径方向に撓むことを規制するため、第1係合フックと第1被係合部との係合が解除されることが阻止され、接続部材を介して第1ケースと第2ケースとを強固に組み付けることができる。
【0014】
[3]また、本発明においては、
前記第1ケースは、第1内周面を備え、
前記第1係合フックは、前記第2ケース側から前記第1内周面の内側へ向かって延び、且つ先端が径方向外側に向かって突出しており、
前記第1被係合部は、前記第1内周面に設けられ、
前記第2ケースには、前記第1係合フックの内側へ延び、前記第1係合フックが内側に撓んで第1被係合部との係合が解除されることを阻止するように前記第1係合フックを内側から支える前記係合維持部が設けられ、
前記係合維持部は、筒形状であり、且つ外周面にリブを備え、前記リブが前記第1係合フックを内側から支持することが好ましい。
【0015】
本発明によれば、係合維持部が外周面にリブを備える筒形状であり、リブで第1係合フックを支えるように構成されているため、係合維持部を薄肉に設計することができる。さらに、リブで第1係合フックを支えるため、薄肉にした分だけ第1係合フックが内側に撓み易くなることもなくリブでしっかりと第1係合フックを支えることができる。
【0016】
[4]また、本発明においては、
前記第2係合部は、前記第1係合フックとは反対方向の第1ケース側から第2ケース側に向かって延び且つ先端が径方向内側に突出した第2係合フックで構成され、
前記第2ケースは前記第2係合フックが係合する第2被係合部が設けられ、
前記第2係合フックの先端は、前記第2ケースと前記第1ケースとを組み付けるときに、前記リブと接触しないように周方向に位相をずらして配置されていることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、第2係合部が、第1係合フックとは反対方向に延び且つ先端が径方向内側に突出した第2係合フックで構成されている場合において、第2係合フックがリブに接触することがないため、第2ケースを接続部材に係合させるときに、第2係合フックを径方向外側へ押し広げる領域を減少させることができ、第2ケースを接続部材に容易に係合させることができる。
【0018】
[5]また、本発明においては、
前記第2係合部は、前記第1係合フック又は前記接続部材の内周縁部から下方に垂下する筒状の第1延在部から径方向内側へ延びる張出部と、前記張出部から前記係合維持部の内周面に沿って第2ケース側へ延びる折返部と、前記折返部の前記係合維持部と対向する対向面に設けられた係合凹部と、で構成され、
前記係合凹部は、前記係合維持部の内周面から径方向内側へ突出する係合凸部と係合するように構成することもできる。
【0019】
本発明によれば、第2ケースの係合維持部が第1係合フックを内側から支えることにより第1係合フックが内側に撓むことを規制するため、第1係合フックと第1被係合部との係合が解除されることが阻止され、接続部材を介した第1ケースと第2ケースとを強固に組み付けることができる。また、第2係合部としての係合凹部と、第2ケースの係合凸部とが係合して、第2ケースと接続部材とがしっかりと接続される。
【0020】
[6]また、本発明においては、前記第1ケース及び前記第2ケースを、補強繊維を含有する強化合成樹脂で成形し、前記接続部材を、熱可塑性合成樹脂で成形することができる。
【0021】
第1ケース及び第2ケースを強化合成樹脂で成形することにより、第1ケース及び第2ケースのいずれも荷重を受け止めることができ、接続部材を熱可塑性合成樹脂で成形することにより第1ケースと第2ケースとをしっかりと一体化させることができる。
【0022】
[7]また、本発明においては、
前記中間部材は、前記第1ケースと一体に回転し、
前記接続部材は、前記第2ケースと一体に回転し、
前記中間部材には、前記接続部材と接触して回転方向に摺動可能な第1摺動面が設けられ、
前記接続部材には、前記第1摺動面に接触して回転方向に摺動可能な第2摺動面が設けられていることが好ましい。
【0023】
第1ケース及び第2ケースを強化合成樹脂などの剛性の高い材料で成形する場合、第1ケースと第2ケースの間に1つの中間部材を配置するだけでは、強化合成樹脂に含まれる補強繊維により、中間部材が異常摩耗してしまうことが分かった。
【0024】
そこで、中間部材の第1摺動面と接続部材の第2摺動面の間で摺動するように構成すれば、第1ケースと第2ケースの剛性を高めても、強化合成樹脂に含まれる補強繊維による中間部材の異常摩耗を防止し、良好な摺動性を得ることができる。
【0025】
[8]また、本発明のサスペンション装置は、
前記スラスト軸受と、シリンダと、ロッドと、コイルスプリングと、バンプストッパー部材と、を備え、
前記第1ケースと前記第2ケースの何れか一方は、前記コイルスプリングの荷重を受け止めるスプリング荷重受部を備え、
前記第1ケースと前記第2ケースの何れか他方は、前記バンプストッパー部材の荷重を受け止めるバンプストッパー荷重受部を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、第1ケースと第2ケースの何れか一方に設けられたスプリング荷重受部で、コイルスプリングの荷重を受け止め、他方のケースに設けられたバンプストッパー荷重受部でバンプストッパー部材からの荷重を受け止めることができるため、第1ケース又は第2ケースの何れか1つでコイルスプリングとダンパの両方の荷重を受けるサスペンション装置と比較して、コイルスプリングとバンプストッパー部材とのレイアウト自由度を向上させることができる。
【0027】
[9]また、本発明のスラスト軸受の製造方法は、
環状の第1ケースと、
前記第1ケースに回転自在に組み合わされる環状の第2ケースと、
前記第1ケースと前記第2ケースとの間に挟まれる中間部材と、
を備えるスラスト軸受の製造方法であって、
前記スラスト軸受は、前記第1ケースに係合する第1係合部と、前記第2ケースに係合する第2係合部とを有する接続部材を備え
前記第1ケースは、第1内周面を備え、
前記接続部材は、前記第1内周面の内側へ延び、先端が径方向外側に向かって突出した第1係合フックと、を備え、
前記第1内周面には、前記第1係合フックと係合する第1被係合部が設けられ、
前記第1係合部は前記第1係合フックであり、
前記第2ケースには、前記第1係合フックの内側へ延び、前記第1係合フックが内側に撓んで第1被係合部との係合が解除されることを阻止するように前記第1係合フックを内側から支える係合維持部が設けられ、
前記第1ケースに前記中間部材を介して前記接続部材を組み付けて、前記第1係合フックと前記第1被係合部とを係合させる第1ケース組付け工程と、
前記第1ケース組付け工程よりも後ろの工程であり、前記第2ケースを前記接続部材に組み付けて、前記係合維持部によって前記第1係合フックと前記第1被係合部との係合が解除されることを阻止する第2ケース組付け工程と、
を有することを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、第1ケース組付け工程においては、第2ケースはまだ組付けられていないため、第1係合フックは径方向内側へ容易に撓むことができ、第1係合フックを第1被係合部に容易に係合させることができる。
【0029】
また、第2ケース組付け工程の後は、第2ケースの係合維持部が第1係合フックを内側から支えることにより第1係合フックが径方向内側に撓むことを規制するため、第1係合フックと第1被係合部との係合が解除されることが阻止され、接続部材を介した第1ケースと第2ケースとを強固に組み付けることができる。