【解決手段】空調ダクト1における角形断面の2つのダクト部材2の内面に跨るようにダクト接続部材3を設ける。ダクト接続部材3を複数のアングル部材10で構成し、各アングル部材10の第1板部11には板状の突起13を形成し、該突起13に切り込み13dを形成する。第2板部12にはスリット14を形成する。ダクト部材2の周方向に隣接するアングル部材のうち一方の突起13を他方のスリット14に通すとともに、スリットに続く部分12dを切り込み13dに圧入する。
各アングル部材の第1板部又は第2板部が、幅方向の中央部から両縁へ向かって前記ダクト部材の内側へ傾斜された一対の傾斜側部を含むことを特徴とする請求項1に記載の空調ダクト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の空調ダクトにおけるフランジを含むダクト接続構造は構成が複雑であり、接続作業を行なうのに専門的な技能を要する。
特許文献2の角形ニップルは、サイズによっては嵩張って施工現場まで持ち運ぶのが容易でない。
本発明は、かかる事情に鑑み、空調用のダクト部材どうしを簡易でコンパクトな構造のダクト接続部材で簡単に接続可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明に係る空調ダクトは、
角形断面に形成された複数のダクト部材と、
隣接する2つのダクト部材の内面に跨って、これら2つのダクト部材どうしを接続するダクト接続部材と、
を備え、前記ダクト接続部材が、前記内面の周方向に沿って環状に連なる複数のアングル部材を含み、
各アングル部材が、互いに交差する第1板部及び第2板部を有し、
前記第1板部には板状の突起が形成され、該突起に切り込みが形成され、
前記第2板部にはスリットが形成され、
前記周方向に隣接するアングル部材のうち一方の突起が、前記隣接するアングル部材のうち他方の第2板部のスリットに通されるとともに、前記他方の第2板部におけるスリットに続く部分が、前記一方の突起の切り込みに圧入されていることを特徴とする。
前記ダクト接続部材を持ち運んだり保管したりする際は個々のアングル部材に分解しておく。これによって、ダクト接続部材がコンパクト化され、持ち運びや保管を容易化できる。施工現場などでアングル部材からダクト接続部材を組み立てる。隣接するアングル部材どうしは簡単かつ強固に接合できる。組み立てたダクト接続部材を介してダクト部材どうしを接続する。
【0006】
各アングル部材の第1板部又は第2板部が、幅方向の中央部から両縁へ向かって前記ダクト部材の内側へ傾斜された一対の傾斜側部を含むことが好ましい。
これによって、ダクト接続部材をダクト部材に嵌め込む際、ダクト部材の縁が傾斜側部に当たって案内されることによって、嵌め込み操作を容易化できる。またダクト接続部材の曲げ剛性が高まる。更に、寸法設定によって、ダクト接続部材の幅方向の中央部がダクト部材の内面に強く押し当たるようにできる。
【0007】
前記突起が、前記2つのダクト部材の端面どうし間に挟まれていることが好ましい。突起は板状であるため、ダクト部材どうし間に配置されても邪魔にならない。
【0008】
また、本発明に係るダクト接続部材は、角形断面に形成された2つの空調用のダクト部材の内面に跨って、これらダクト部材どうしを接続するダクト接続部材であって、
前記内面の周方向に沿って環状に連なる複数のアングル部材を含み、
各アングル部材が、互いに交差する第1板部及び第2板部を有し、
前記第1板部には板状の突起が形成され、該突起に切り込みが形成され、
前記第2板部にはスリットが形成され、
前記周方向に隣接するアングル部材のうち一方の突起が、前記隣接するアングル部材のうち他方の第2板部のスリットに通されるとともに、前記他方の第2板部におけるスリットに続く部分が、前記一方の突起の切り込みに圧入されることを特徴とする。
これによって、隣接するアングル部材どうしを簡単に、かつ強固に接合できる。圧入によって、アングル部材どうし間に抜け止め力が働く。ひいては、ダクト接続部材が安定的に組み立てられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空調用のダクト部材どうしを簡易でコンパクトな構造のダクト接続部材で簡単に接続できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態
図1〜
図3>
図1は、例えばオフィスビルなどの建物における空調ダクト1の一部分を示したものである。詳細な図示は省略するが、空調ダクト1は、空調機などから建物内の各空調エリアへ延びている。
【0012】
空調ダクト1は、複数のダクト部材2を含む。これらダクト部材2が一列に連なっている。ダクト部材2の内部が、空調空気が通る流路1cとなっている。
図2に示すように、ダクト部材2は四角形の断面(角形断面)に形成されている。ダクト部材2の主材は、好ましくは硬質の発泡樹脂からなる断熱材2aである。発泡樹脂としては、ポリイソシアヌレートフォームが挙げられるが、これに限定されるものではない。断熱材の厚みは例えば10mm〜200mm程度であるが、これに限定されるものではない。
図2においては省略するが、ダクト部材2の外周面はアルミシート2b(
図1、
図4)で覆われている。
【0013】
図1に示すように、隣接する2つのダクト部材2どうしの間にダクト接続部材3が設けられている。
図4に示すように、ダクト接続部材3は、前記2つのダクト部材2の内面に跨って、これら2つのダクト部材2どうしを接続している。
なお、前記隣接する2つのダクト部材2の外周面には、これらダクト部材2に跨って、アルミ粘着テープ4が貼り付けられている。
【0014】
図2に示すように、ダクト接続部材3は、4つ(複数)のアングル部材10によって構成されている。これらアングル部材10が、ダクト部材2の内面の周方向に沿って環状に連ねられることで、四角形の環状の接続部材3が形成されている。
アングル部材10の材質は、鋼、鉄、アルミなどの金属であるが、これに限定されるものではない。例えばアングル部材10は、亜鉛メッキ鋼板によって構成されているが、これに限定されるものではない。
【0015】
図3に示すように、各アングル部材10は、第1板部11と、第2板部12を有している。第1板部11及び第2板部12は、交差部10cにおいて互いに直角に交差している。第1板部11は相対的に短く、第2板部12は相対的に長い。なお、第1板部11と第2板部12とが互いに同程度の長さであってもよく、第1板部11が第2板部12より長くてもよい。
【0016】
図3及び
図4に示すように、アングル部材10の第1板部11及び第2板部12は、それぞれ幅方向(
図4において左右方向)の中央部の平坦部15と、幅方向の両側の一対の傾斜側部16を含む。傾斜側部16は、各板部11,12の平坦部15から幅方向の両縁へ向かってダクト1の断面内側(ダクト内側、
図4において下側)へ傾斜されている。これによって、第1板部11及び第2板部12がそれぞれダクト1の断面外側(ダクト外側、
図4において上側)へ向かって凸の山型断面形状に形成されている。
図6(c)に示すように、傾斜側部16の平坦部15に対する角度α
16は、好ましくは0°超45°以下、より好ましくはα
16=15°程度である。
【0017】
図5(a)に示すように、第1板部11には、切り起こしによる板状の突起13が形成されている。突起13は、第1板部11の平坦部15からダクト外側へ、平坦部15に対してほぼ垂直に突出されている。突起13の長手方向は、第1板部11の長手方向(
図5(a)において左右方向)に沿っている。突起13における第1板部11の先端側(
図5(a)において左側)を向く端部13eには、切り込み13dが形成されている。該切り込み13dによって、突起端部13eが平坦部15から切り離されている。
【0018】
図3に示すように、第2板部12における先端側(交差部10cとは反対側)の端部12eには、スリット14(突起嵌合穴)が形成されている。スリット14は、第2板部12の長手方向へ延びて、第2板部12の端縁に達している。スリット14の幅は、アングル部材10を構成する板材ひいては突起13の厚みと略等しいか、又は前記厚みより僅かに大きい。
【0019】
図2に示すように、四角形をなすダクト接続部材3の4つの辺の各々は、周方向に隣接する2つのアングル部材10のうち、一方のアングル部材10Aの第1板部11Aと他方のアングル部材10Bの第2板部12Bとによって構成されている。これら第1板部11A及び第2板部12Bは、ダクト接続部材3の一辺に沿って配置されるとともに、第2板部12Bの端部12eが第1板部11Aの外側面に被さるようにして、互いに重ねられて連結されている。
【0020】
詳しくは、
図4及び
図5(a)に示すように、第1板部11Aの突起13が、第2板部12Bのスリット14を通して第2板部12Bよりダクト外側へ突出されている。かつ、第2板部12Bの端部12eにおけるスリット14を挟んで両側部分が、第1板部11Aの突起13を挟み付けている。さらに、第2板部12Bにおけるスリット14の長手方向の奥側(交差部10c側)に続く部分12dが、切り込み13dに圧入されている。好ましくは、スリット14の奥端が、切り込み13dの奥端に突き当たっている。これによって、第1板部11Aと第2板部12Bどうし、ひいては隣接するアングル部材10A,10Bどうしが、互いの間に強い抜け止め力(摩擦抵抗)が働くように弾性変形した状態で接合されている。
【0021】
図4及び
図5(b)に示すように、空調ダクト1においては、平坦部15が、隣接する2つのダクト部材2に跨り、これらダクト部材2の内面に強く当たっている。逆に言うと、ダクト部材2がダクト接続部材3をダクト内側へ押圧している。
図4に示すように、突起13は、隣接する2つのダクト部材2の端面間に挟まれている。
図2に示すように、交差部10cは、ダクト部材2の内部のコーナー部2cに嵌っている。
【0022】
ダクト接続部材3は、次のようにして使用される。
図6(a)に示すように、好ましくは、ダクト接続部材3が空調ダクト1の施工現場で組み付けられるまでは、突起13が起こされておらず、該突起13となるべき部分13’が第1板部11と平行になるよう倒されている。突起13となるべき部分13’の縁部には、切り起こしのためのカッティング13cが施されている。
各アングル部材10は、板金加工等によって安価に作製できる。
ダクト接続部材3を持ち運んだり保管したりする際は、個々のアングル部材10に分解する。
図6(b)に示すように、これらアングル部材10の向きを揃えて重ねる。突起13を倒しておくことで、複数のアングル部材10の縁を揃えて密に積層できる。これによって、ダクト接続部材3をコンパクトにでき、持ち運びや保管を容易化できる。
【0023】
アングル部材10を積層した状態で空調ダクト1の施工現場まで搬入した後、4つのアングル部材10を四角形に組んで、ダクト接続部材3を組み立てる。
図6(c)に示すように、組み立てに際し、先ず、各アングル部材10の突起13をマイナスドライバー等の工具を用いて直角に起こす。好ましくは、突起13の基部には、前記工具が引っ掛けられるスリット状の穴部13b(
図5(a))が、切り込み13dと一直線をなすように形成されている。
そして、
図5(a)に示すように、前記4つのアングル部材10における、それぞれ隣接する2つのアングル部材10A,10Bのうち一方の第1板部11Aと他方の第2板部12Bの端部12eとを重ね、一方の突起13を他方のスリット14に通す。更に、一方の切り込み13dに他方のスリット14に続く部分12dを圧入し、スリット14の奥端を切り込み13dの奥端に突き当てる。圧入によって、第2板部12Bが突起端部13eをダクト外側(
図5(a)において上側)へ押す。このため、第1板部11Aが第2板部12Bに強く押し当てられる。したがって、第1板部11A及び第2板部12Bどうし間に抜け止め力(静止摩擦力)が働く。
【0024】
これによって、2つのアングル部材10A,10Bどうしを簡単に、かつ強固に接合できる。これらアングル部材10A,10Bは、大きな引き抜き力を加えない限り、分離されない。ひいては、4つのアングル部材10からなるダクト接続部材3を簡単に組み立てることができ、かつダクト接続部材3の形状を安定的に保持できる。
ダクト接続部材3の組み立ては、手作業で簡単にでき、ネジや溶接を必要としない。
さらに、板部11,12が山型断面形状であるため、ダクト接続部材3の曲げ剛性を高くできる。
【0025】
図7に示すように、該ダクト接続部材3の幅方向の一方側部分3aを、接続すべき2つのダクト部材2のうち一方のダクト部材2Aの端部の内周面に嵌め込む。このとき、
図7の二点鎖線にて示すように、ダクト接続部材3の一方側(同図において左側)の傾斜側部16がダクト部材2Aの端部に当たると、該傾斜側部16の傾斜に沿ってダクト接続部材3が案内されることによって、ダクト接続部材3をダクト部材2Aの端部に容易に挿し込むことができる。
さらに、
図7の実線にて示すように、ダクト接続部材3の平坦部15がダクト部材2Aの端部の内面に強く当たることで、ダクト接続部材3をダクト部材2Aの端部に安定的に設置できる。
【0026】
図7に示すように、ダクト接続部材3の幅方向の他方側部分3bは、一方のダクト部材2Aから突出させる。
図8に示すように、該他方側部分3bに、前記2つのダクト部材2のうち他方のダクト部材2Bの端部を嵌め込む。このとき、
図8の二点鎖線にて示すように、ダクト部材2Bの端部が、他方側(同図において右側)の傾斜側部16に当たると、該傾斜側部16の傾斜に沿ってダクト部材3Bが案内される。これによって、
図8の白抜き矢印にて示すように、ダクト部材2Bをダクト接続部材3に容易に挿し込むことができる。
さらに、
図8の実線及び
図4に示すように、ダクト接続部材3の平坦部15がダクト部材2Bの端部の内面に強く当たることで、ダクト接続部材3とダクト部材2Bとの間に抜け止め力(摩擦抵抗)が働く。このようにして、ダクト接続部材3を介して、ダクト部材2A,2Bどうしを簡単に接続できる。接続作業に専門的な技能を要さない。この結果、空調ダクト1を簡単に配管施工できる。
図4に示すように、突起13は、隣接するダクト部材2A,2Bの端面間に挟み付けられる。突起13は厚みの小さな板状であるため、ダクト部材2A,2Bどうし間に配置されても邪魔にならず、これらダクト部材2A,2Bの端面どうしを確実に当接できる。
図1に示すように、空調ダクト1の外周面には、隣接するダクト部材2に跨ってアルミ粘着テープ4を巻き付ける。
【0027】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、ダクト接続部材3の板金加工時に、突起13を切り起こして、第1板部11から突出させた状態にしてもよい。これによって、空調ダクト1の配管施工現場で、突起13を起こす作業を省略できる。
突起13が、スリット14に圧入状態で挿し込まれてもよい。
突起嵌合穴としてのスリット14は、第2板部12の先端縁(交差部10c側とは反対側の縁)まで達している必要はない。
アングル部材10の傾斜側部16を省略して、板部11,12を平坦部15だけで構成してもよい。角度α
16が、α
16=0°であってもよい。