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特開2021-92507立体形状計測システム及び装着物製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-92507(P2021-92507A)
(43)【公開日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】立体形状計測システム及び装着物製造システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20210521BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20210521BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20210521BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20210521BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20210521BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20210521BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20210521BHJP
【FI】
   G01B11/24 K
   G06F17/50 624A
   G06F17/50 624F
   G06F17/50 608A
   G06F17/50 601D
   G06F17/50 680F
   B29C64/386
   B29C64/393
   B33Y50/00
   B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-224671(P2019-224671)
(22)【出願日】2019年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】392000486
【氏名又は名称】株式会社エルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 隆和
【テーマコード(参考)】
2F065
4F213
5B046
5B146
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065AA22
2F065AA30
2F065AA53
2F065BB27
2F065CC16
2F065DD03
2F065DD06
2F065EE00
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065SS13
4F213AH63
4F213WA25
4F213WA41
4F213WA97
4F213WL02
4F213WL85
5B046AA05
5B046BA08
5B046EA09
5B046FA18
5B046HA07
5B146AA11
5B146BA04
5B146DE12
5B146DG06
5B146EA01
5B146EA02
5B146EA17
5B146EC04
(57)【要約】
【課題】物体の立体形状を容易に計測できるシステム、及び該物体に装着される装着物を容易に製造できるシステムを提供する。
【解決手段】所定のグリッドパターンが表示されたディスプレイを背景として撮影された、物体の正面画像及び側面画像を取得する画像取得手段41と、前記ディスプレイを備えた端末である背景用端末の識別子を取得する端末識別子取得手段41と、前記識別子から特定される前記ディスプレイの仕様と、前記正面画像及び側面画像中に含まれる前記所定のグリッドパターンとに基づいて、前記正面画像及び側面画像の歪みを補正する画像補正手段42と、補正後の前記正面画像及び側面画像に基づいて前記物体の寸法を計測する計測手段43と、計測された寸法に基づいて3D設計データを生成する3D設計データ生成手段46と、前記3D設計データに基づいて前記物体に装着される装着物を造形する3Dプリンタ60とを有するシステム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイを有し、該ディスプレイに所定のグリッドパターンを表示するグリッド表示用端末と、
前記グリッドパターンが表示された前記ディスプレイを背景として計測対象物体を複数の方向から撮影することによって得られた複数の画像を取得する画像取得手段と、
前記グリッドパターンの仕様に関する情報であるグリッド仕様情報を記憶するグリッド仕様情報記憶手段と、
前記グリッド仕様情報と、前記複数の画像の各々に含まれる前記グリッドパターンとに基づいて、前記複数の画像のそれぞれの歪みを補正する画像補正手段と、
前記画像補正手段による補正後の前記複数の画像と、前記グリッド仕様情報とに基づいて前記計測対象物体の立体形状を計測する計測手段と、
を有することを特徴とする立体形状計測システム。
【請求項2】
更に、前記グリッド表示用端末の識別子を取得する端末識別子取得手段を有し、
前記画像補正手段が、前記識別子から特定される前記ディスプレイの仕様と、前記グリッド仕様情報と、前記複数の画像の各々に含まれる前記グリッドパターンとに基づいて、前記複数の画像のそれぞれの歪みを補正することを特徴とする請求項1に記載の立体形状計測システム。
【請求項3】
前記グリッド表示用端末が、前記計測対象物体の計測を希望するユーザが保有しているスマートフォン又はタブレット端末であることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体形状計測システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の立体形状計測システムと、
該立体形状計測システムによって計測された前記計測対象物体の立体形状に基づいて、該計測対象物体に装着される装着物の3D設計データを生成する3D設計データ生成手段と、
前記3D設計データに基づいて前記装着物を造形する3Dプリンタと、
を有することを特徴とする装着物製造システム。
【請求項5】
更に、前記装着物の素材又は形状についての前記ユーザの希望に関する情報であるオプション情報を取得するオプション情報取得手段を有し、
前記3D設計データ生成手段が、前記計測手段によって計測された寸法と、前記オプション情報取得手段によって取得されたオプション情報とに基づいて前記3D設計データを生成することを特徴とする請求項4に記載の装着物製造システム。
【請求項6】
前記計測対象物体の計測を請け負う事業者が管理するコンピュータにインストールされる事業者用プログラムであって、前記コンピュータを請求項1〜3のいずれかに記載の立体形状計測システムにおける各手段として機能させることを特徴とする事業者用プログラム。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の立体形状計測システムにおいて、前記グリッド表示用端末とは別のスマートフォン又はタブレット端末である、前記ユーザが保有する撮影用端末にインストールされるユーザ用プログラムであって、前記撮影用端末を、
前記所定のグリッドパターンを表示した前記グリッド表示用端末を背景として前記計測対象物体を複数の方向から撮影するよう、前記ユーザに指示する撮影指示手段、並びに
前記計測対象物体を複数の方向から撮影して得られた複数の画像を、前記計測対象物体の計測を請け負う事業者が管理するコンピュータに送信する送信手段
として機能させることを特徴とするユーザ用プログラム。
【請求項8】
前記撮影用端末を、更に、
前記グリッド表示用端末の識別子を前記ユーザに入力させる識別子入力受付手段、及び
前記識別子を前記事業者が管理する前記コンピュータに送信する識別子送信手段
として機能させることを特徴とする請求項7に記載のユーザ用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の立体形状を計測するシステム、及び該物体に装着される装着物を製造するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘバーデン結節は、更年期以降の女性に多く発生する指の疾患であり、人差し指から小指に掛けて第1関節付近に腫れ又は変形が生じ、痛みを伴うことが多い。更に、ヘバーデン結節の患者の指には、ミューカシストとよばれる水疱状の突起が生じることがあり、該突起が物に当たると強い痛みを生じる。
【0003】
ヘバーデン結節の原因には、女性ホルモンであるエストロゲンの減少の影響が指摘されているが、詳しい原因は未だ解明されておらず、治療法も確立していない。そのため、ヘバーデン結節の患者に対しては、指にテーピング等を施すことによって、関節に掛かる負荷を軽減すると共に、患部の保護及び痛みの緩和を図るといった対処法が採られることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−177941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、テーピングによる固定は、テープを指に巻回する手間があること、及び水仕事等によってテープが剥がれやすくなること等の問題がある。そこで、テーピングに代わる指の固定及び保護手段として、特許文献1には、伸縮性を有する樹脂成形体から成る筒状の装具が記載されている。このような装具は、指を通すだけで患部に容易に装着できると共に、水に強く耐久性が高いといった利点がある。しかしながら、指の形状(すなわち、指の長さ及び太さ、腫れ又は変形の度合い、並びにミューカシストの有無及び位置等)には、個人差があるため、このような樹脂成形体から成る装具は、必ずしも全ての患者の指にフィットするものではなく、患部の固定効果を十分に発揮できない場合があった。
【0006】
個々の患者の指にフィットする装具を製造するためには、患者の指の正確な立体形状を知る必要があり、そのためには、装具の販売店やメーカの拠点等に専門の計測員や3Dスキャナなどの計測具を配置して患者の指を採寸する必要がある。そのため、メーカにとっては受注に係るコストが大きく、患者にとっては装具の注文に係る労力が大きいという問題があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、手指等の物体の立体形状を容易に計測することのできるシステム、及び計測された立体形状に基づいて該物体に装着される装着物を容易に製造することのできるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る立体形状計測システムは、
ディスプレイを有し、該ディスプレイに所定のグリッドパターンを表示するグリッド表示用端末と、
前記グリッドパターンが表示された前記ディスプレイを背景として計測対象物体を複数の方向から撮影することによって得られた複数の画像を取得する画像取得手段と、
前記グリッドパターンの仕様に関する情報であるグリッド仕様情報を記憶するグリッド仕様情報記憶手段と、
前記グリッド仕様情報と、前記複数の画像の各々に含まれる前記グリッドパターンとに基づいて、前記複数の画像のそれぞれの歪みを補正する画像補正手段と、
前記画像補正手段による補正後の前記複数の画像と、前記グリッド仕様情報とに基づいて前記計測対象物体の立体形状を計測する計測手段と、
を有することを特徴としている。
【0009】
上記本発明に係る立体形状計測システムは、更に、
前記グリッド表示用端末の識別子を取得する端末識別子取得手段を有し、
前記画像補正手段が、前記識別子から特定される前記ディスプレイの仕様と、前記グリッド仕様情報と、前記複数の画像の各々に含まれる前記グリッドパターンとに基づいて、前記複数の画像のそれぞれの歪みを補正するものであってもよい。
【0010】
上記本発明に係る立体形状計測システムは、
前記グリッド表示用端末が、前記計測対象物体の計測を希望するユーザが保有しているスマートフォン又はタブレット端末であることが望ましい。
【0011】
また、上記課題を解決するためになされた本発明に係る装着物製造システムは、
前記立体形状計測システムと、
該立体形状計測システムによって計測された前記計測対象物体の立体形状に基づいて、該計測対象物体に装着される装着物の3D設計データを生成する3D設計データ生成手段と、
前記3D設計データに基づいて前記装着物を造形する3Dプリンタと、
を有することを特徴としている。
【0012】
上記本発明に係る装着物製造システムは、更に、
前記装着物の素材又は形状についての前記ユーザの希望に関する情報であるオプション情報を取得するオプション情報取得手段を有し、
前記3D設計データ生成手段が、前記計測手段によって計測された寸法と、前記オプション情報取得手段によって取得されたオプション情報とに基づいて前記3D設計データを生成するものとすることが望ましい。
【0013】
本発明は更に、上記立体形状計測システムにおいて、前記計測対象物体の計測を請け負う事業者が管理するコンピュータにインストールされる事業者用プログラムであって、前記コンピュータを前記立体形状計測システムにおける各手段として機能させるための事業者用プログラムをも提供する。
【0014】
本発明は更に、上記立体形状計測システムにおいて、前記グリッド表示用端末とは別のスマートフォン又はタブレット端末である、前記ユーザが保有する撮影用端末にインストールされるユーザ用プログラムであって、前記撮影用端末を、
前記所定のグリッドパターンを表示した前記グリッド表示用端末を背景として前記計測対象物体を複数の方向から撮影するよう、前記ユーザに指示する撮影指示手段、並びに
前記計測対象物体を複数の方向から撮影して得られた複数の画像を、前記計測対象物体の計測を請け負う事業者が管理するコンピュータに送信する送信手段
として機能させるためのユーザ用プログラムをも提供する。
【0015】
前記本発明に係るユーザ用プログラムは、前記撮影用端末を、更に、
前記グリッド表示用端末の識別子を前記ユーザに入力させる識別子入力受付手段、及び
前記識別子を前記事業者が管理する前記コンピュータに送信する識別子送信手段
として機能させるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成を有する本発明に係る立体形状計測システムによれば、種々の被計測物体(例えば、人の手指)の立体形状を容易且つ正確に計測することができる。また、上記本発明に係る装着物製造システムによれば、前記立体形状計測システムによって計測された立体形状に基づいて、該被計測物体に応じた立体形状を有する装着物(例えば、前記手指に装着される装具)を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る手指関節保護装具の製造システムを示す概略構成図。
図2】前記システムにおける第2端末の要部構成を示すブロック図。
図3】前記システムにおける第2端末の動作を説明するフローチャート。
図4】前記システムにおける患者手指の正面画像の撮影方法を説明する模式図。
図5】前記システムにおける患者手指の側面画像の撮影方法を説明する模式図。
図6】前記システムにおけるデータ処理装置の動作を説明するフローチャート。
図7】前記正面画像の補正工程を説明する模式図。
図8】計測値の誤差を補正する工程を説明する模式図。
図9】補正後の計測値に基づいて患者手指の3Dモデルを作成する方法を説明する模式図。
図10】前記システムによって製造される手指関節保護装具の代表的構成例を示す側面図。
図11】前記手指関節保護装具の指先開放部を大きくした構成例を示す側面図。
図12】手指にミューカシストが生じた患者に好適な手指関節保護装具の構成例を示す正面図。
図13】手指にミューカシストが生じた患者に好適な手指関節保護装具の別の構成例を示す正面図。
図14】掌側にスリットを備えた手指関節保護装具の構成例を示す裏面図。
図15】第1端末に表示されるグリッドパターンの別の例を示す模式図。
図16】第1端末に表示されるグリッドパターンの更に別の例を示す模式図。
図17】第1端末に表示される、患者手指を配置すべき位置を表すグラフィックの別の例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明を行う。なお、ここでは、本発明に係る立体形状計測システム及び装着物製造システムを、へバーデン結節等のような変形性関節症の患者の手指の計測、及び該患者の手指に装着して患部を固定及び保護するための手指関節保護装具の製造を行うシステムに適用した実施形態について説明する。但し、本発明に係る立体形状計測システムは、手指以外の物体の立体形状の測定にも適用可能であることはいうまでもない。同様に、本発明に係る装着物製造システムは、手指関節保護装具以外の装着物(例えば、手指若しくは手指以外の所定の物体に取り付けられる装飾具、前記所定の物体に取り付けられるカバー、又は前記所定の物体を収容するケース等)の製造にも適用可能であることはいうまでもない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る手指関節保護装具の製造システム(以下、単に「システム」とよぶ)の概略構成図である。このシステムは、手指関節保護装具(以下、単に「装具」とよぶ)を注文しようとするユーザ(患者本人又はその代理人)が保有する第1端末10(本発明におけるグリッド表示用端末に相当)及び第2端末20(本発明における撮影用端末に相当)、並びに装具の製造者(本発明における事業者に相当)が管理するデータ処理装置40、及び3Dプリンタ60を備えている。第1端末10及び第2端末20は、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン、又は携帯電話等の、カメラを備えた情報通信端末である。第1端末10、第2端末20、及びデータ処理装置40は、インターネット等の通信ネットワークNWを介して互いに接続されている。また、データ処理装置40と3Dプリンタ60は、通信ケーブル又は無線LANによって接続されている。なお、データ処理装置40と3Dプリンタ60を、通信ネットワークNWを介して接続するようにしてもよい。
【0020】
データ処理装置40は、通信部41(本発明における画像取得手段、端末識別子取得手段、及びオプション情報取得手段に相当)、画像補正部42、計測部43、計測値補正部44、3Dモデル生成部45、3D設計データ生成部46、受信データ記憶部47、ディスプレイ仕様データベース48、グリッド仕様情報記憶部49、及び基本設計データ記憶部50を備えている。
【0021】
データ処理装置40の実態は、CPU、メモリ、及び大容量記憶媒体(ハードディスク等)を備えたコンピュータであり、通信部41、画像補正部42、計測部43、計測値補正部44、3Dモデル生成部45、及び3D設計データ生成部46は、該コンピュータに予めインストールされた所定のプログラム(本発明における事業者用プログラムに相当)をCPUで実行することによって実現される機能ブロックである。
【0022】
受信データ記憶部47、ディスプレイ仕様データベース48、グリッド仕様情報記憶部49、及び基本設計データ記憶部50は、例えば、前記大容量記憶媒体を論理的に分割することによって実現される。なお、ディスプレイ仕様データベース48、グリッド仕様情報記憶部49、又は基本設計データ記憶部50は、ネットワークNW又は信号線を介してデータ処理装置40に接続された別のコンピュータ上の大容量記憶媒体によって実現されるものであってもよい。基本設計データ記憶部50には、装具の基本的な形状及び寸法に関するデータが記憶されている。また、ディスプレイ仕様データベース48には、各種の情報通信端末について、その識別子(例えば、メーカー名、機種名、又は型番等)と、該情報通信端末に設けられたディスプレイの仕様(例えば、該ディスプレイの表示領域の物理サイズ、すなわち縦方向及び横方向の実際の寸法、及び該ディスプレイの解像度又はドットピッチ等)に関する情報とが互いに関連付けて記憶されている。
【0023】
図2は、第2端末20の概略構成図である。第2端末20は、カメラ21、記憶部22、通信部23、表示部(ディスプレイ)24、及び入力部(タッチパネル)25のほかに、専用のアプリケーションプログラム(本発明におけるユーザ用プログラムに相当)によって実現される機能ブロックとして、ユーザ情報入力受付部31、識別子入力受付部32、撮影指示部33、オプション情報入力受付部34、及びデータ送信部35(本発明における送信手段及び識別子送信手段に相当)を備えている。
【0024】
以下、前記システムを用いた装具の製造方法について、図3及び図6のフローチャートを参照しつつ説明する。図3は、第2端末20の動作を示すフローチャートであり、図6は、データ処理装置40における処理の流れを示すフローチャートである。
【0025】
まず、ユーザは、装具の注文に際して、予め、自身が保有する第1端末10及び第2端末20を用いて所定のURLにアクセスし、各端末に専用のアプリケーションプログラムをダウンロードして、これをインストールする。以下、第1端末10にインストールされたプログラムを「第1端末用アプリ」とよび、第2端末20にインストールされたプログラムを「第2端末用アプリ」とよぶ。ユーザが第2端末20において、第2端末用アプリを実行させることによって、図2を参照して説明した各機能ブロックが具現化される。
【0026】
ユーザが第2端末20において第2端末用アプリを起動すると、ユーザ情報入力受付部31が表示部24を制御することにより、表示部24に、ユーザ情報(ユーザの氏名及び住所等)を入力するよう促すメッセージが表示される(ステップS11)。ユーザが第2端末20の入力部25を操作してユーザ情報を入力すると、入力されたユーザ情報は一旦、第2端末20の記憶部22に記憶される。
【0027】
続いて、識別子入力受付部32が表示部24を制御することにより、第2端末20の表示部24に、第1端末10の識別子(例えば、メーカー名、機種名、及び型番)を入力するよう促すメッセージが表示される(ステップS12)。ユーザが第2端末20の入力部25を操作して前記識別子を入力すると、該識別子は一旦、第2端末20の記憶部22に記憶される。
【0028】
続いて、撮影指示部33が表示部24を制御することにより、第1端末用アプリの起動を促すメッセージが、第2端末20の表示部24に表示される(ステップS13)。ユーザは、前記メッセージに従って第1端末10を操作することにより第1端末用アプリを起動させる。これにより、第1端末のディスプレイ(表示部)11には、所定のグリッドパターン12と、患者手指70を配置すべき位置を表すグラフィック(例えば、図形、記号、イラスト、写真、又は文字等)13が表示される(図4参照)。ここで、グリッドパターン12とは、ディスプレイ11を複数に分割する仮想的な格子の各交点位置を表す図形であり、図4のように前記交点に小円を配置したものとするほか、前記交点にその他の図形、例えば、図15に示すような十字マークを配置したもの、又は図16のような格子状の線から成るものなどとすることができる。なお、第1端末10に表示されるグリッドパターンの仕様(例えば、前記交点の間隔等)に関する情報は、予めデータ処理装置40のグリッド仕様情報記憶部49に記憶されている。
【0029】
続いて、ユーザが第2端末20の入力部25で所定の操作を行うと、撮影指示部33が表示部24を制御することにより、患者手指70(本発明における計測対象物体に相当)の正面画像を撮影するよう促すメッセージが、第2端末20の表示部24に表示される(ステップS14)。具体的には、例えば、(1)前記グリッドパターン12を表示している第1端末10のディスプレイ11の上に、患者手指70を、掌側をディスプレイ11に向けた状態で乗せること、及び(2)その状態で第2端末20のカメラ21を用いて患者手指を第1端末10と共に撮影すること、を指示するメッセージが表示される。ユーザは該メッセージに従って、第1端末10のディスプレイ11上に患者手指(ここでは人差し指)を配置し(図4)、第2端末20に設けられたカメラ21を用いて患者手指70の正面画像を撮影する。これにより得られた正面画像は、第2端末20の記憶部22に記憶される。
【0030】
前記正面画像の撮影が完了すると、続いて、撮影指示部33が表示部24を制御することにより、患者手指70の側面画像を撮影するよう促すメッセージが、第2端末20の表示部24に表示される(ステップS15)。具体的には、例えば、(1)前記グリッドパターン12を表示している第1端末10のディスプレイ11の上に、患者手指70を、掌を左又は右に向けた状態で乗せること、及び(2)その状態で第2端末20のカメラ21を用いて患者手指を第1端末10と共に撮影すること、を指示するメッセージが表示される。ユーザは該メッセージに従って、第1端末10のディスプレイ11上に患者手指を配置し(図5)、第2端末20に設けられたカメラ21を用いて患者手指の側面画像を撮影する。これにより得られた側面画像は、第2端末20の記憶部22に記憶される。
【0031】
なお、撮影指示部33は、上記のステップS14及びS15において第2端末20の表示部24に撮影を促すメッセージを表示させた後に、ユーザに前記グラフィック13の消去を指示するよう促すメッセージを、表示部24に表示させるようにしてもよい。ユーザが該メッセージに従って、第2端末20の入力部25で所定の操作を行うと、通信部23を介して、第1端末10へ、ディスプレイ11上の前記グラフィック13を消去するよう指示が送られる。なお、当該指示はBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、又は赤外線通信等の近距離無線通信を介して第2端末20から第1端末10に送られる。このような構成によれば、グラフィック13を参照しつつ患者手指70をディスプレイ11上の適切な位置に配置した後に、ディスプレイ11から前記グラフィック13を消去し、グリッドパターン12のみを表示させた状態で患者手指70を撮影することができる。これにより、画像中に写り込んだ前記グラフィック13によって、後述の画像補正及び計測の精度が低下するのを防ぐことができる。なお、図4及び図5では、患者手指70を配置すべき位置を表すグラフィック13を細い点線としたが、撮影時に当該グラフィック13を消去できる構成とする場合には、患者手指70を乗せる位置がより分かりやすくなるよう、当該グラフィック13を太線又は実線としてもよい。あるいは、このような線に代えて、患者手指70を配置すべき位置を表す、その他のグラフィックを表示してもよい。なお、前記その他のグラフィックは、例えば、図17に示すような、患者手指70をディスプレイ11上の正しい位置に正しい向きで配置した状態を表す画像(イラスト又は写真)等とすることができる。
【0032】
以上により、患者手指の正面画像と側面画像(これらが本発明における複数の画像に相当する)の撮影が完了すると、第2端末20のオプション情報入力受付部34が表示部24を制御することにより、オプション情報の入力を促すメッセージが、第2端末20の表示部24に表示される(ステップS16)。ユーザはこのメッセージに従って、第2端末20の入力部25を操作してオプション情報を入力する。このとき、前記オプション情報としては、例えば、装具の素材又は形状についてユーザが希望する各種の事項を入力することができる。なお、装具の素材に関するユーザの希望事項としては、例えば、装具の色、柔軟度合い、材質等を入力することができる。また、装具の形状に関するユーザの希望事項としては、例えば、装具の厚さ、指へのフィット度合い、水疱(ミューカシスト)の有無、位置、大きさ、及び水疱を装具でカバーするか否か、装具の着脱を容易とするためのスリット(後述)の有無、又は装具の指先開放部(後述)の大小等を入力することができる。なお、オプション情報は、ユーザが文字で直接入力するほか、複数の選択肢の中からユーザに選択させるようにしてよい。また、患者による手指の使用状況(例えば、手先を使う作業を行う頻度等)をユーザに選択させることにより、自動的に装具の柔軟度合い、厚さ、フィット度合い、又は指先開放部の大小等のオプション情報が自動的に選択されるようにしてもよい。
【0033】
オプション情報の入力を完了した上で、ユーザが第2端末20の入力部25で所定の操作を行うと、データ送信部35が通信部23を制御することにより、記憶部22に記憶されていたユーザ情報、第1端末の識別子の情報(以下、「識別子情報」とよぶ)、患者手指の正面画像及び側面画像、並びにオプション情報が、通信ネットワークNWを介してデータ処理装置40に送信される(ステップS17)。
【0034】
ステップS17で送信されたデータは、データ処理装置40の通信部41によって受信され(ステップS21)、互いに関連付けられた状態で受信データ記憶部47に記憶される。
【0035】
続いて、データ処理装置40の画像補正部42が、患者手指の撮影時に第1端末10と第2端末20とが正対していなかったことに起因する正面画像又は側面画像の歪み(台形歪み)及び傾き(水平面内での回転)、並びにカメラ21のレンズの歪曲収差に起因する各画像の歪み等をアフィン変換などの変換手法を利用して補正する。
【0036】
具体的には、まず、画像補正部42が、所定のユーザ情報に関連付けて記憶されている識別子情報を受信データ記憶部47から読み出し、該識別子情報をディスプレイ仕様データベース48に照合することにより、第1端末10に設けられたディスプレイ11の仕様に関する情報(以下、「ディスプレイ仕様情報」とよぶ」)を特定する(ステップS22)。
【0037】
次に、画像補正部42が、同じユーザ情報に関連付けて記憶されている患者手指の正面画像を受信データ記憶部47から読み出し、該画像に写っている第1端末10のディスプレイ11の頂点(四隅)と該ディスプレイ11に表示されているグリッドパターン12を抽出して、該画像中におけるそれらの座標を特定する。更に、画像補正部42は、前記ディスプレイ仕様情報と、前記グリッド仕様情報(例えば、グリッドパターン12に含まれる各点の間隔等の情報)とに基づいて、実際の第1端末10上におけるディスプレイ11の各頂点とグリッドパターン12に含まれる各点の座標を特定する。なお、これらの座標は、例えば、ディスプレイ11左下の頂点を原点とする相対座標とする。続いて、画像補正部42が、前記正面画像中における前記各点の座標と、実際の第1端末10上における前記各点の座標とを比較し、対応する点同士の座標のずれに基づいて前記正面画像の歪み量及び傾き量を特定する。なお、前記「対応する点」は、画像補正部42が自動的に指定してもよく、ユーザが手動で指定してもよい。次に、特定した前記歪み量及び傾き量に基づいて、前記正面画像における前記各点の座標を前記実際の第1端末10における各点の座標に一致させるための変換式を算出し、該変換式を前記正面画像に適用することによって、歪み及び傾きのない正面画像を生成する(ステップS23)。図7は、この画像補正処理の概要を示す模式図である。図7(a)は、実際の第1端末10と補正前の正面画像との対応関係の一例を示し、図7(b)は、補正後の正面画像の一例を示している。
【0038】
以上により、正面画像の補正が完了したら、画像補正部42が同じユーザ情報に関連付けて記憶されている患者手指の側面画像を受信データ記憶部47から読み出し、同様にして該画像の歪み及び傾きを補正する。なお、正面画像の補正と側面画像の補正は逆の順で行ってもよい。
【0039】
正面画像及び側面画像の補正が完了すると、計測部43が、前記補正後の正面画像及び側面画像に基づいて患者手指の幅方向及び厚さ方向の寸法を、長さ方向に亘って一定間隔(例えば1mm間隔)で計測する(ステップS24)。なお、前記幅方向の寸法は、補正後の正面画像における患者手指の幅と該画像中におけるグリッドパターンに含まれる各点の間隔との比率、及び実際の第1端末10のディスプレイ11上におけるグリッドパターン間隔の実寸に基づいて求めることができる。同様に、前記厚さ方向の寸法は、補正後の側面画像中における患者手指の幅と該画像中におけるグリッドパターン間隔との比率、及び実際の第1端末10のディスプレイ11上におけるグリッドパターン間隔の実寸に基づいて求めることができる。なお、実際の第1端末10のディスプレイ11上におけるグリッドパターン12の間隔の実寸は、上述のディスプレイ仕様情報と、グリッド仕様情報記憶部49から読み出したグリッド仕様情報に基づいて特定することができる。
【0040】
続いて、計測値補正部44が、正面画像及び側面画像が平行投影図でないことに起因する計測値の誤差を補正する。図8は、第1端末10のディスプレイ11の上に患者手指を乗せ、その断面を楕円で示した模式図である。同図に示すように、第2端末20のカメラ21による撮影は平行投影ではなく透視投影であり、撮影時に手前にあるものが大きく写るため、該カメラで撮影された画像から算出された寸法と実際の寸法との間には誤差が生じる。そこで、計測値補正部44は、ステップS24で求められた各長さ位置における指の幅方向の寸法及び厚み方向の寸法を、以下のようにして補正する(ステップS25)。
【0041】
第2端末20のカメラ21から第1端末10のディスプレイ11までの距離をL1、患者手指70の断面の中心からディスプレイ11までの距離をL2、カメラ21の視野の中心線から患者手指70の輪郭位置までの見かけの距離(すなわちステップS24で求められた幅方向の寸法の1/2)をW1、カメラ21の視野の中心線から患者手指70の輪郭位置までの実際の距離(すなわち実際の指幅の1/2)をW2とすると、W1/L1=W2/(L1―L2)であるから、W2=W1・(L1−L2)/L1 … 式(1)となる。そこで、患者手指の幅方向の寸法を補正する際には、計測部43によって求められた、或る長さ位置における幅方向の寸法の1/2をW1とし、計測部43によって求められた同じ長さ位置における厚さ方向の寸法の1/2をL2として、式(1)より前記W2を求める。このW2を二倍した値が、当該長さ位置における実際の患者手指の幅となる。同様に、患者手指の厚さ方向の寸法を補正する際には、計測部43によって求められた或る長さ位置における厚さ方向の寸法の1/2をW1とし、計測部43によって求められた同じ長さ位置における幅方向の寸法の1/2をL2として(又は、前記W2の値をL2として)、式(1)より前記W2を求める。このW2を二倍した値が当該長さ位置における実際の患者手指の厚さとなる。
【0042】
なお、上記において、第2端末20のカメラ21から第1端末10のディスプレイ11までの距離L1は次のようにして求めることができる。すなわち、カメラ21の水平方向における画素数をPx、画角をθvとすると、1画素当たりの画角はθv/Pxとなる。カメラ21で撮影された画像中でディスプレイ11が占める水平方向の画素数をPdとすると、該ディスプレイ11が占める画角はPd・θv/Pxとなる。ここで、ディスプレイ11の実際の幅をWdとすると、L1・tan(Pd・θv/2Px)=Wd/2であるから、L1=Wd/2tan(Pd・θv/2Px)により、距離L1を求めることができる。
【0043】
続いて、3Dモデル生成部45が、患者手指70の各長さ位置における補正後の幅及び厚さに基づいて、患者手指の3Dモデルを作成する(ステップS26)。具体的には、例えば、患者手指70の断面を楕円形と仮定し、患者手指70の長さ方向の各位置について、前記補正後の幅方向の寸法を長軸の長さとし、前記補正後の厚さ方向の寸法を短軸の長さとする楕円を作成する。そして得られた複数の楕円を前記一定間隔(上記の例では1mm間隔)で順番に並べ、それらの楕円の輪郭を繋ぐことによって、先端部が閉鎖された略円筒状の3Dモデルを得ることができる。図9は、この3Dモデル90の各部と患者手指70の各部との対応関係を示す模式図である。同図では簡略化のため、患者手指70の長さ方向の3カ所の位置A、B、Cについて、3Dモデル90との対応関係を示している。なお、同図において3Dモデル90は指の基端側から見た状態を示している。
【0044】
次に、3D設計データ生成部46が、上記で作成された患者手指の3Dモデル90と、基本設計データ記憶部50に予め記憶されている装具の基本的形状及び寸法に関するデータ(基本設計データ)、及び前記ユーザ情報に関連付けて受信データ記憶部47記憶されているオプション情報に基づいて、装具(本発明における装着物に相当)の3D設計データを作成する(ステップS27)。具体的には、例えば、前記3Dモデル90及びオプション情報に基づいて、前記基本設計データを修正することによって、製造しようとする装具の3D設計データを作成する。
【0045】
以上により作成された装具の3D設計データは、データ処理装置40から3Dプリンタ60に送出される(ステップS28)。なお、前記オプション情報に装具の色、柔軟度合い、又は材質等の情報が含まれている場合には、それらに対応した樹脂素材を指定する情報を、前記3D設計データと共に3Dプリンタ60に送出する。
【0046】
3Dプリンタ60では、予め定めされた樹脂素材、又は前記3D設計データと共に送出された情報によって指定された樹脂素材を、前記3D設計データに従って三次元的に造形することによって装具が製造される。以上により完成した装具は、ユーザ情報に含まれる住所宛に郵便又は宅配便によって配送される。
【0047】
以上によって製造される装具の各種の構成例を図10図14に示す。なお、これらの図では、各装具を患者手指70に装着した状態を示している。
【0048】
図10は、人差し指第一関節部を保護するための装具80の代表的構造例である。この装具80は、患者手指70の第一関節を挟んで先端側に配置される第1リング部81と、前記関節を挟んで基端側に配置される第2リング部82と、これらのリング部81、82を互いに接続するブリッジ部83とを備えている。
【0049】
図11は、キーボード若しくはスマートフォンの操作、又は楽器の演奏などで指先を多用する患者に適した装具の構成例である。基本的な構成は、上記代表的構造例と同じであるが、第1リング部81の先端側の開口である指先開放部84が上記代表的構造例よりも大きくなっている。
【0050】
図12は、手指にミューカシスト(水疱)が生じた患者に好適な装具の構成例である。この装具80は、第1リング部81のうち、ミューカシスト71に対応する位置に切り欠き85が設けられており、装具80がミューカシスト71に接触しない構成となっている。このような装具80によれば、ミューカシスト71と装具80が接触することによる疼痛を防ぐことができる。なお、切り欠き85の位置及び大きさは図示したものに限定されるものではなく、上述のオプション情報としてユーザが指定したミューカシストの位置及び大きさに基づいて適宜決定される。
【0051】
図13は、手指にミューカシストが生じた患者に好適な装具の別の構成例である。この装具80は、第1リング部81のうち、ミューカシスト71に対応する位置に、ミューカシスト71を覆うドーム状のカバー部86が設けられている。このような装具80は、ミューカシスト71が外部の物体(すなわち装具80以外の物体)に接触することによる疼痛を防ぐことができるため、特に、ミューカシスト71と外部の物体が接触しやすい作業を頻繁に行う患者に適している。なお、カバー部86の位置及び大きさも図示したものに限定されるものではなく、上述のオプション情報としてユーザが指定したミューカシストの位置及び大きさに基づいて適宜決定される。
【0052】
図14は、第1リング部81及び第2リング部82の掌側にスリット87を備えた装具の構成例である。このようなスリット87を設けることにより、患者手指70への装具80の脱着が容易となる。
【0053】
なお、本実施形態に係るシステムによって製造される装具は、ヘバーデン結節以外の手指の関節症(例えば、関節リウマチ、ブシャール結節、又は腱鞘炎等)に適用されるものであってもよい。
【0054】
以上の通り、本実施形態に係るシステムによれば、装具80を注文しようとするユーザが、自身のスマートフォン等の端末(第2端末)にインストールされた専用アプリからの指示に従って、患者手指70の撮影を含む一連の注文作業を行うことができる。そのため、患者手指70の採寸のために患者が販売店やメーカの拠点等に足を運ぶ手間を省くことができる。また、撮影された患者手指70の画像データは、通信ネットワークNWを通じて3Dプリンタ60を保有するメーカの拠点等に設けられたデータ処理装置40に送られ、該画像データから患者手指70の精密な寸法が計測される。そのため、メーカは、患者手指70の採寸のために、自社の拠点や販売店の店頭等に専門の計測員を配置したり、3Dスキャナ等の計測装置を設置したりする必要がなく、受注に掛かるコストを抑えることができる。
【0055】
更に、ユーザに、所定のグリッドパターンをディスプレイ11に表示した第1端末10を背景とする患者手指70の撮影を行わせると共に、第1端末10の識別子を入力させ、該識別子から特定される前記ディスプレイの仕様と撮影された画像中のグリッドパターンとに基づいて、手指画像の各種歪みを補正することにより、手指寸法の精密な測定が可能となる。更に、患者手指70を撮影する際に、自発光するディスプレイ11を背景とすることにより、計測の大きな誤差要因となる照明の位置や明るさの影響を排除することもできる。
【0056】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。
【0057】
例えば、第2端末20は、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン、又は携帯電話等の、カメラを備えた情報通信端末のほか、通信機能を有しないデジタルカメラであってもよい。その場合、第2端末20で撮影した患者の手指画像のデータは、該デジタルカメラとは別体に構成された情報通信端末(例えば第1端末)からデータ処理装置40へ送信される。このとき、ユーザ情報、識別子情報、及びオプション情報は、例えば、前記別体に構成された情報通信端末を用いて入力され、前記画像と共に、該端末からデータ処理装置へと送信されるものとする。
【0058】
また、上記実施形態では、第1端末用アプリと第2端末用アプリを別々のプログラムとしたが、これらは単一のプログラムに設けられた機能の一部としてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、データ処理装置40がディスプレイ仕様データベース48を有し、通信部41にて受信した第1ユーザ端末10の識別子を該ディスプレイ仕様データベース48に照合することによって第1ユーザ端末10のディスプレイ11の仕様を特定し、該ディスプレイ11の仕様情報と、グリッド仕様情報記憶部49に予め記憶されている所定のグリッドパターンの仕様情報とに基づいて、第1ユーザ端末10のディスプレイ11上におけるグリッド間隔の実際の寸法を求めるものとしたが、これに限らず、上述の第1端末用アプリにて、第1ユーザ端末10の機種情報等(ユーザが入力してもアプリによって自動的に特定されても良い)から第1ユーザ端末10に設けられたディスプレイ11の仕様を特定し、該仕様に基づいて、ディスプレイ11上におけるグリッドパターン12の実際の間隔が予め定められた寸法となるように、第1ユーザ端末10を制御するようにしてもよい。この場合、データ処理装置40がディスプレイ仕様データベース48を有している必要はなく、前記ディスプレイ11上におけるグリッド間隔の「予め定められた寸法」をグリッド仕様情報記憶部49に記憶させておき、該「予め定められた寸法」を、画像補正部42における画像の補正や、計測部43における計測に利用する。
【0060】
また、上記実施形態では、画像補正部42において、グリッド仕様情報及びディスプレイ仕様情報を利用して画像の補正を行うものとしたが、画像補正部42における画像の補正方法はこれに限定されるものではない。例えば、画像補正部42では、第1ユーザ端末10に表示されるグリッドパターン12が、互いに平行且つ等間隔に並んだ複数の縦線と、前記縦線に直行し、且つ等間隔(前記縦線と同じ間隔)で並んだ複数の横線とから成る理想的な格子(又は該理想的な格子の各交点に配置された点の集合)であると仮定し、計測対象物を互いに異なる方向から撮影して得られた複数の画像の各々に映り込んでいるグリッドパターン12が、該理想的な格子(又は該格子の各交点)と一致するように、該複数の画像をそれぞれ補正するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、計測対象物体である患者手指70を、手の甲側から撮影した画像(正面画像)と、横側から撮影した画像(側面画像)の2枚の画像に基づいて患者手指70の立体形状を計測するものとしたが、これに限らず、計測対象物体を互いに異なる3つ以上の方向から撮影して得られた3枚以上の画像に基づいて、該計測対象物体の立体形状を計測するものとしてもよい。なお、計測対象物体を撮影する方向は、互いに直交する方向であることが望ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0062】
10…第1端末
11…ディスプレイ
12…グリッドパターン
13…患者手指を配置すべき位置を表すグラフィック
20…第2端末
21…カメラ
22…記憶部
23…通信部
24…表示部
25…入力部
31…ユーザ情報入力受付部
32…識別子入力受付部
33…撮影指示部
34…オプション情報入力受付部
35…データ送信部
40…データ処理装置
41…通信部
42…画像補正部
43…計測部
44…計測値補正部
45…3Dモデル生成部
46…3D設計データ生成部
47…受信データ記憶部
48…ディスプレイ仕様データベース
49…グリッド仕様情報記憶部
50…基本設計データ記憶部
60…3Dプリンタ
70…患者手指
71…ミューカシスト
80…手指関節保護装具
90…3Dモデル
NW…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17