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特開2021-9367運転モード最適化エンジン次数キャンセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-9367(P2021-9367A)
(43)【公開日】2021年1月28日
(54)【発明の名称】運転モード最適化エンジン次数キャンセル
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20201225BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20201225BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20201225BHJP
【FI】
   G10K11/178 100
   G10K15/04 302J
   B60R11/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-108528(P2020-108528)
(22)【出願日】2020年6月24日
(31)【優先権主張番号】62/869,247
(32)【優先日】2019年7月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16/898,637
(32)【優先日】2020年6月11日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】512168283
【氏名又は名称】ハーマン インターナショナル インダストリーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ジェイ. バスター
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ ゴメス
(72)【発明者】
【氏名】アディティヤ クマール
【テーマコード(参考)】
3D020
5D061
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BA11
3D020BC01
3D020BE04
5D061FF02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】運転モード最適化エンジン次数キャンセル(EOC)の提供する。
【解決手段】EOCシステム400は、エンジン及び他の回転シャフトのRPMに基づいてノイズ信号生成器408によりフィードフォワードノイズ信号を生成し、スピーカ424を通してアンチノイズを放射することによって車室内のSPLを低減するために、それらの信号及び適応的に構成されたWフィルタ418を使用する。EOCシステムは、現在の車両運転モードを示す信号の分析に基づいて異なる車両運転モードを検出するための運転モード検出器462を含む。検出時、EOCシステムは、現在の車両運転モードに基づいてEOCアルゴリズムのための多様な調整パラメータを適応的に調整し、どのエンジン次数がその運転モード中に優位であるのかに基づいて、現在の車両運転モードに従ってノイズキャンセルのためのエンジン次数の異なるセットを選択的にターゲットとする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両運転モードに基づいてエンジン次数キャンセル(EOC)システムを動的に調整するための方法であって、
複数の車両運転モードのそれぞれのためにEOC調整パラメータのセットをメモリに記憶することであって、EOC調整パラメータの各セットが車両運転モード間で異なる、前記記憶することと、
現在の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの第1のセットを適用することと、
車両動作状態を示す少なくとも1つの信号を受信することと、
前記少なくとも1つの信号に基づいて前記現在の車両運転モードの変化を検出することと、
前記現在の車両運転モードの変化に応えてEOC調整パラメータの第2のセットを適用すること
とを含む、前記方法。
【請求項2】
前記現在の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの前記第1のセットを適用することが、
第1の車両運転モードが前記現在の車両運転モードであるときに、前記第1の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの前記第1のセットをメモリから選択することと、
EOC中にEOC調整パラメータの前記第1のセットを利用すること
とを含み、
現在の車両運転モードの前記変化に応えてEOC調整パラメータの前記第2のセットを適用することが、
前記第1の車両運転モードから第2の車両運転モードへの現在の車両運転モードの前記変化に応えて、前記第2の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの前記第2のセットをメモリから選択することと、
前記現在の車両運転モードが第2の車両運転モードであるときに、EOC中にEOC調整パラメータの前記第2のセットを利用すること
とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータの前記セットが、少なくともステップサイズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータの前記セットが、少なくとも漏れ値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータの前記セットが、アンチノイズ信号及びノイズ信号の1つに適用される少なくとも利得を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータの前記セットが、エラー信号に適用される少なくとも音圧レベル閾値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの信号が、クルーズコントロールの連動を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの信号が、毎分回転数(RPM)、速度、及びトルクのうちの少なくとも1つを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの信号に基づいて前記現在の車両運転モードの前記変化を検出することが、
RPM、速度、及びトルクのうちの少なくとも1つの変化率を決定することと、
前記変化率を1つ以上の所定の閾値と比較すること
とを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の車両運転モードが、少なくともパーシャルオープンスロットル運転モード及び定速運転モードを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の車両運転モードが、ワイドオープンスロットル運転モードをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
エンジン次数キャンセル(EOC)システムであって、
適応伝達特性及びノイズ信号生成器から受信するノイズ信号に基づいて、アンチノイズ信号を生成するように構成された少なくとも1つの制御可能フィルタであって、前記少なくとも1つの制御可能フィルタの前記適応伝達特性がフィルタ係数のセットにより特徴付けられる、前記少なくとも1つの制御可能なフィルタと、
適応フィルタコントローラであって、
複数の車両運転モードのそれぞれのために、EOC調整パラメータの各セットが車両運転モード間で異なる、EOC調整パラメータのセットを記憶し、
現在の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの前記セットを適用し、
車両の客室に位置するマイクから受信する前記ノイズ信号及びエラー信号に基づいて、フィルタ係数の前記セットを適応させる
ようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを含む前記適応フィルタコントローラと、
少なくとも前記適応フィルタコントローラと通信する運転モード検出器であって、
車両動作状態を示す少なくとも1つの信号を受信し、
前記少なくとも1つの信号を分析して前記現在の車両運転モードを決定し、
前記現在の車両運転モードを示す運転モード信号を前記適応フィルタコントローラに送信する
ようにプログラムされたプロセサ及びメモリを含む前記運転モード検出器と
を備える、前記エンジン次数キャンセル(EOC)システム。
【請求項13】
前記運転モード検出器が、前記現在の車両運転モードの変化を検出することに応えて前記運転モード信号を送信する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータの前記セットが、ステップサイズ及び漏れ値のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数の車両運転モードが、少なくともパーシャルオープンスロットル運転モード及び定速運転モードを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
車両動作状態を示す前記少なくとも1つの信号が、毎分回転数(RPM)、速度、及びトルクのうちの少なくとも1つを示す、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
車両動作状態を示す前記少なくとも1つの信号が、トランスミッションギアの状態を示す、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
車両運転モードに基づいて、エンジン次数キャンセル(EOC)システムにおけるアクティブノイズキャンセルのために優位なエンジン次数を動的にターゲットとするための方法であって、
複数の車両運転モードのそれぞれのために優位なエンジン次数のセットを記憶することであって、優位なエンジン次数の各セットが車両運転モード間で異なる、前記記憶することと、
車両動作状態を示す少なくとも1つの信号を受信することと、
前記少なくとも1つの信号に基づいて現在の車両運転モードを検出することと、
前記現在の車両運転モードに対応する優位なエンジン次数の前記セットを選択することと、
前記現在の車両運転モードに対応する優位なエンジン次数の前記セットの各エンジン次数にノイズキャンセルを適用すること
とを含む、前記方法。
【請求項19】
前記現在の車両運転モードの変化を検出することに応えて優位なエンジン次数の異なるセットを選択することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の車両運転モードのそれぞれが、車両トランスミッションの異なる状態に対応する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年7月1日に出願された米国仮出願第62/869,247号の利益を主張し、この開示は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、エンジン次数キャンセルに関し、より具体的には、検出した車両運転モードに基づいてエンジン次数キャンセル及び対応する調整パラメータを最適化することを対象とする。
【背景技術】
【0003】
アクティブノイズコントロール(ANC)システムは、フィードフォワード構造及びフィードバック構造を使用し、望ましくないノイズを減衰して、車室内等の傾聴環境内での望ましくないノイズを適応的に除去する。ANCシステムは、概して、キャンセル音波を生成して不要な可聴ノイズと相殺的に干渉することによって不要なノイズをキャンセルするまたは低減する。相殺的干渉は、大きさはほぼ同じであるが、位相がノイズと反対である「アンチノイズ」とが結合して、ある場所での音圧レベル(SPL)を低減するときに生じる。車両車室の傾聴環境では、望ましくないノイズの潜在的な発生源は、エンジン、車両のタイヤと車両が走行している路面との間の相互作用、及び/または車両の他の部分の振動により放射される音からくる。したがって、不要なノイズは、速度、道路状況、及び車両の動作状態に伴い変化する。
【0004】
エンジン次数キャンセル(EOC)システムは、車両のエンジン及び排気システムまたは他の回転ドライブトレイン構成要素からの狭帯域のアコースティックエミッション及び振動エミッションを起源とする不要な車両内部ノイズのレベルを低減するために車両に実装される特定のANCシステムである。EOCシステムは、毎分回転数(RPM)等、エンジンまたは他の回転シャフト角速度に基づいてフィードフォワードノイズ信号を生成し、スピーカを通してアンチノイズを放射することによって車室内のSPLを低減するために、それらの信号及び適応的に構成されたWフィルタを使用する。
【0005】
EOCシステムは、通常、ドライブシャフトに取り付けられたセンサからのRPM入力と、車両の車室内部の多様な位置に位置するマイクの信号の両方に基づいてWフィルタを連続的に適応させる最小平均二乗(LMS)適応フィードフォワードシステムである。EOCシステムを調整するとき、エンジニアは単一のワイドオープンスロットル(WOT)データランから始める。乗員の耳で測定した音をRPMと対比して調べると、優位なエンジン次数が識別される。エンジン次数ごとに、主要なEOCアルゴリズムパラメータのそれぞれの単一の値が識別される。これらのEOCアルゴリズムパラメータは、通常、ステップサイズ、安定性SPL閾値、漏れ、利得等を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の多様な態様は、現在の車両運転モードに基づいてEOCシステムにおいてエンジン次数キャンセル(EOC)パラメータを最適化することに関する。1つ以上の例示的な実施形態では、車両運転モードに基づいてEOCシステムを動的に調整する方法が提供される。方法は、以下のステップ、つまり複数の車両運転モードのそれぞれのためにEOC調整パラメータのセットをメモリに記憶するステップであって、EOC調整パラメータの各セットが車両運転モード間で異なる、記憶するステップと、現在の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの第1のセットを適用するステップと、車両動作状態を示す少なくとも1つの信号を受信するステップと、少なくとも1つの信号に基づいて現在の車両運転モードの変化を検出するステップと、現在の車両運転モードの変化に応えてEOC調整パラメータの第2のセットを適用するステップとを含んでよい。
【0007】
実施態様は、以下の特徴の1つ以上を含んでよい。現在の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの第1のセットを適用するステップは、第1の車両運転モードが現在の車両運転モードであるときに第1の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの第1のセットをメモリから選択すること、及びEOC調整パラメータの第1のセットを利用することを含んでよい。さらに、現在の車両運転モードの変化に応えてEOC調整パラメータの第2のセットを適用するステップは、第1の車両運転モードから第2の車両運転モードへの現在の車両運転モードの変化に応えて、第2の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの第2のセットをメモリから選択すること、及び現在の車両運転モードが第2の車両運転モードであるとき、EOC中にEOC調整パラメータの第2のセットを利用することを含んでよい。
【0008】
複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータのセットは、少なくともステップサイズ、漏れ値、アンチノイズ信号及びノイズ信号の1つに適用される利得、またはエラー信号に印加される音圧レベル閾値を含んでよい。車両動作状態を示す信号は、クルーズコントロールの連動を示す場合がある。代わりに、車両動作状態を示す信号は、毎分回転数(RPM)、速度、及びトルクのうちの少なくとも1つを示してよい。したがって、少なくとも1つの信号に基づいて現在の車両運転モードの変化を検出することは、RPM、速度、及びトルクのうちの少なくとも1つの変化率を決定すること、及び変化率を1つ以上の所定の閾値と比較することを含んでよい。
【0009】
複数の車両運転モードは、少なくともパーシャルオープンスロットル(partially open throttle)運転モード及び定速運転モードを含んでよい。複数の車両運転モードはさらに、ワイドオープンスロットル運転モードを含んでもよい。
【0010】
本開示の1つ以上の追加の実施形態は、エンジン次数キャンセル(EOC)システムを対象とする。EOCシステムは、適応伝達特性、及びノイズ信号生成器から受信するノイズ信号に基づいてアンチノイズ信号を生成するように構成された少なくとも1つの制御可能フィルタを含んでよい。少なくとも1つの制御可能フィルタの適応伝達特性は、フィルタ係数のセットにより特徴付けられてよい。EOCシステムは、複数の車両運転モードのそれぞれのために、EOC調整パラメータの各セットが車両運転モード間で異なるEOC調整パラメータのセットを記憶し、現在の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータのセットを適用し、車両の車室に位置するマイクから受信するノイズ信号及びエラー信号に基づいてフィルタ係数のセットを適応させるようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを含む適応フィルタコントローラをさらに含んでよい。また、EOCシステムは、少なくとも適応フィルタコントローラと通信する運転モード検出器を含んでもよい。運転モード検出器は、車両動作状態を示す少なくとも1つの信号を受信し、少なくとも1つの信号を分析して現在の車両運転モードを決定し、現在の車両運転モードを示す運転モード信号を適応フィルタコントローラに送信するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを含んでよい。
【0011】
実施態様は、以下の特徴の1つ以上を含んでよい。運転モード検出器は、現在の車両運転モードの変化を検出することに応えて運転モード信号を送信してよい。複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータのセットは、ステップサイズ及び漏れ値のうちの少なくとも1つを含んでよい。複数の車両運転モードは、少なくともパーシャルオープンスロットル運転モード及び定速運転モードを含んでよい。車両動作状態を示す少なくとも1つの信号は、毎分回転数(RPM)、速度、及びトルクのうちの少なくとも1つを示してよい。車両動作状態を示す少なくとも1つの信号は、トランスミッションギアの状態を示してよい。
【0012】
本開示の1つ以上の追加の実施形態は、車両運転モードに基づいてエンジン次数キャンセル(EOC)システムにおけるアクティブノイズキャンセルのために優位なエンジン次数を動的にターゲットとするための方法を対象とする。方法は、複数の車両運転モードのそれぞれのために優位なエンジン次数のセットを記憶することであって、優位なエンジン次数の各セットが車両運転モード間で異なる、記憶することと、車両動作状態を示す少なくとも1つの信号を受信することと、少なくとも1つの信号に基づいて現在の車両運転モードを検出することと、現在の車両運転モードに対応する優位なエンジン次数のセットを選択することと、現在の車両運転モードに対応する優位なエンジン次数のセットにおいて各エンジン次数にノイズキャンセルを適用することとを含んでよい。
【0013】
実施態様は、以下の特徴の1つ以上を含んでよい。方法は、現在の車両運転モードの変化を検出することに応えて優位なエンジン次数の異なるセットを選択することをさらに含んでよい。複数の車両運転モードのそれぞれは、車両トランスミッションの異なる状態に対応する場合がある。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
車両運転モードに基づいてエンジン次数キャンセル(EOC)システムを動的に調整するための方法であって、
複数の車両運転モードのそれぞれのためにEOC調整パラメータのセットをメモリに記憶することであって、EOC調整パラメータの各セットが車両運転モード間で異なる、上記記憶することと、
現在の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの第1のセットを適用することと、
車両動作状態を示す少なくとも1つの信号を受信することと、
上記少なくとも1つの信号に基づいて上記現在の車両運転モードの変化を検出することと、
上記現在の車両運転モードの変化に応えてEOC調整パラメータの第2のセットを適用すること
とを含む、上記方法。
(項目2)
上記現在の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの上記第1のセットを適用することが、
第1の車両運転モードが上記現在の車両運転モードであるときに、上記第1の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの上記第1のセットをメモリから選択することと、
EOC中にEOC調整パラメータの上記第1のセットを利用すること
とを含み、
現在の車両運転モードの上記変化に応えてEOC調整パラメータの上記第2のセットを適用することが、
上記第1の車両運転モードから第2の車両運転モードへの現在の車両運転モードの上記変化に応えて、上記第2の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの上記第2のセットをメモリから選択することと、
上記現在の車両運転モードが第2の車両運転モードであるときに、EOC中にEOC調整パラメータの上記第2のセットを利用すること
とを含む、上記項目に記載の方法。
(項目3)
上記複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータの上記セットが、少なくともステップサイズを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
上記複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータの上記セットが、少なくとも漏れ値を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
上記複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータの上記セットが、アンチノイズ信号及びノイズ信号の1つに適用される少なくとも利得を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
上記複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータの上記セットが、エラー信号に適用される少なくとも音圧レベル閾値を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
上記少なくとも1つの信号が、クルーズコントロールの連動を示す、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
上記少なくとも1つの信号が、毎分回転数(RPM)、速度、及びトルクのうちの少なくとも1つを示す、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
上記少なくとも1つの信号に基づいて上記現在の車両運転モードの上記変化を検出することが、
RPM、速度、及びトルクのうちの少なくとも1つの変化率を決定することと、
上記変化率を1つ以上の所定の閾値と比較すること
とを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
上記複数の車両運転モードが、少なくともパーシャルオープンスロットル運転モード及び定速運転モードを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
上記複数の車両運転モードが、ワイドオープンスロットル運転モードをさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
エンジン次数キャンセル(EOC)システムであって、
適応伝達特性及びノイズ信号生成器から受信するノイズ信号に基づいて、アンチノイズ信号を生成するように構成された少なくとも1つの制御可能フィルタであって、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記適応伝達特性がフィルタ係数のセットにより特徴付けられる、上記少なくとも1つの制御可能なフィルタと、
適応フィルタコントローラであって、
複数の車両運転モードのそれぞれのために、EOC調整パラメータの各セットが車両運転モード間で異なる、EOC調整パラメータのセットを記憶し、
現在の車両運転モードに対応するEOC調整パラメータの上記セットを適用し、
車両の客室に位置するマイクから受信する上記ノイズ信号及びエラー信号に基づいて、フィルタ係数の上記セットを適応させる
ようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを含む上記適応フィルタコントローラと、
少なくとも上記適応フィルタコントローラと通信する運転モード検出器であって、
車両動作状態を示す少なくとも1つの信号を受信し、
上記少なくとも1つの信号を分析して上記現在の車両運転モードを決定し、
上記現在の車両運転モードを示す運転モード信号を上記適応フィルタコントローラに送信する
ようにプログラムされたプロセサ及びメモリを含む上記運転モード検出器と
を備える、上記エンジン次数キャンセル(EOC)システム。
(項目13)
上記運転モード検出器が、上記現在の車両運転モードの変化を検出することに応えて上記運転モード信号を送信する、上記項目に記載のシステム。
(項目14)
上記複数の車両運転モードのそれぞれのためのEOC調整パラメータの上記セットが、ステップサイズ及び漏れ値のうちの少なくとも1つを含む、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目15)
上記複数の車両運転モードが、少なくともパーシャルオープンスロットル運転モード及び定速運転モードを含む、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目16)
車両動作状態を示す上記少なくとも1つの信号が、毎分回転数(RPM)、速度、及びトルクのうちの少なくとも1つを示す、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目17)
車両動作状態を示す上記少なくとも1つの信号が、トランスミッションギアの状態を示す、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目18)
車両運転モードに基づいて、エンジン次数キャンセル(EOC)システムにおけるアクティブノイズキャンセルのために優位なエンジン次数を動的にターゲットとするための方法であって、
複数の車両運転モードのそれぞれのために優位なエンジン次数のセットを記憶することであって、優位なエンジン次数の各セットが車両運転モード間で異なる、上記記憶することと、
車両動作状態を示す少なくとも1つの信号を受信することと、
上記少なくとも1つの信号に基づいて現在の車両運転モードを検出することと、
上記現在の車両運転モードに対応する優位なエンジン次数の上記セットを選択することと、
上記現在の車両運転モードに対応する優位なエンジン次数の上記セットの各エンジン次数にノイズキャンセルを適用すること
とを含む、上記方法。
(項目19)
上記現在の車両運転モードの変化を検出することに応えて優位なエンジン次数の異なるセットを選択することをさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
上記複数の車両運転モードのそれぞれが、車両トランスミッションの異なる状態に対応する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(摘要)
エンジン次数キャンセル(EOC)システムは、エンジン及び他の回転シャフトのRPMに基づいてフィードフォワードノイズ信号を生成し、スピーカを通してアンチノイズを放射することによって車室内のSPLを低減するために、それらの信号及び適応的に構成されたWフィルタを使用する。EOCシステムは、現在の車両運転モードを示す信号の分析に基づいて異なる車両運転モードを検出するための運転モード検出器を含んでよい。検出時、EOCシステムは、現在の車両運転モードに基づいてEOCアルゴリズムのための多様な調整パラメータを適応的に調整してよい。また、EOCシステムは、どのエンジン次数がその運転モード中に優位であるのかに基づいて、現在の車両運転モードに従ってノイズキャンセルのためのエンジン次数の異なるセットを選択的にターゲットとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の1つ以上の実施形態に係る、エンジン次数キャンセル(EOC)システムを有する車両のブロック図である。
図2】本開示の1つ以上の実施形態に係る、図1に示すノイズ信号生成器の詳細な図である。
図3】いくつかの異なる車両運転モードのためのエンジン次数と対比して音圧レベル(SPL)を示す例示的なグラフである。
図4】本開示の1つ以上の実施形態に係る、運転モード検出器を含むEOCシステムを表す概略ブロック図である。
図5】本開示の1つ以上の実施形態に従って、車両運転モードに基づいてEOC調整パラメータを最適化するための方法を示す例示的なフローチャートである。
図6】本開示の1つ以上の実施形態に従って、所与の運転モードまたは運転シナリオのために適用されてよいEOC調整パラメータを示す例示的な表である。
図7】2つの異なる運転モードの車両について測定されたエンジン次数と対比して相対的なSPLを示す例示的なプロットである。
図8】本開示の1つ以上の実施形態に従って、EOCのためにターゲットとされてよい所与の運転モードまたは運転シナリオのための優位なエンジン次数を示す例示的な表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書中に開示されるが、開示される実施形態は、様々な形式及び代替の形式で具現化され得る本発明の単なる例示にすぎないことを理解されたい。図は必ずしも縮尺通りではなく、一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張または最小限に抑えられる場合がある。したがって、本明細書に開示される具体的な構造上の及び機能上の詳細は、限定的と解釈されるべきではなく、本発明を様々に利用するために単に当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0016】
本明細書に説明するコントローラまたはデバイスの任意の1つ以上は、さまざまなプログラミング言語及び/または技術を使用し、作成されたコンピュータプログラムからコンパイルまたは解釈され得るコンピュータ実行可能命令を含む。一般に、(マイクロプロセッサ等の)プロセッサは、例えばメモリ、コンピュータ可読媒体等から命令を受け取り、命令を実行する。処理ユニットは、ソフトウェアプログラムの命令を実行できる非一過性コンピュータ可読記憶媒体を含む。コンピュータ可読記憶媒体は、電子記憶装置、磁気記憶装置、光学記憶装置、電磁記憶装置、半導体記憶装置、またはその任意の適切な組み合わせであってよいが、これに限定されるものではない。
【0017】
図1は、ノイズ信号生成器108を有する車両102のためのエンジン次数キャンセル(EOC)システム100を示す。ノイズ信号生成器108は、車両のエンジン及び排気システム110を起源とする、各エンジン次数の可聴エンジン次数ノイズに対応する基準ノイズ信号X(n)を生成してよい。EOCシステム100は、1つ以上のマイク112を使用するノイズ信号生成器108からのノイズ信号X(n)の適応フィルタリングによりアンチノイズを生成する、フィードフォワード及びフィードバックアクティブノイズコントロール(ANC)のフレームワークまたはシステム104と統合されてよい。アンチノイズ信号Y(n)は、次いで1つ以上のスピーカ124を通して再生されてよい。S(z)は、単一のスピーカ124と単一のマイク112との間の伝達関数を表す。図1は、簡単にするためだけに単一のノイズ信号生成器108、マイク112、及びスピーカ124を示すが、典型的なEOCシステムは、複数のスピーカ124(例えば、4〜8)、及びマイク112(例えば、4〜6)に加えて複数のエンジン次数ノイズ信号生成器108を含む場合があることに留意されたい。
【0018】
図2を参照すると、ノイズ信号生成器108はRPMセンサ242を含んでよく、RPMセンサ242は、エンジン回転速度を示す、エンジンドライブシャフトまたは他の回転シャフトの回転を示すRPM信号244(例えば、方形波信号)を提供してよい。一部の実施形態では、RPM信号244は、車両ネットワークバス(図示せず)から得られてもよい。放射エンジン次数はドライブシャフトRPMに正比例するので、RPM信号244は、エンジン及び排気システムを含むドライブトレインによって生じる周波数を表す。したがって、RPMセンサ242からの信号は、車両のためのエンジン次数のそれぞれに対応する基準エンジン次数信号を生成するために使用されてよい。したがって、RPM信号244は、RPM対エンジン次数周波数のルックアップテーブル246と併せて使用されてよい。
【0019】
より具体的には、ルックアップテーブル246は、RPM信号244を1つ以上のエンジン次数周波数に変換するために使用されてよい。ルックアップテーブル246から取り出される、検知されたRPMでの所与の検知された所与のエンジン次数の周波数は、発振器または周波数生成器248に供給され、それによって所与の周波数で正弦波を生成してよい。この正弦波は、所与のエンジン次数のエンジン次数ノイズを示すノイズ信号X(n)を表す。複数のエンジン次数がある場合があるので、EOCシステム100は、RPM信号244に基づいてエンジン次数ごとにノイズ信号X(n)を生成するために複数のノイズ信号生成器108及び/または周波数生成器248を含んでよい。
【0020】
1800RPMの速度で回転しているエンジンは、基本エンジン次数周波数、つまり一次エンジン次数周波数に相当する30Hz(1800/60=30)で実行中であると言うことができる。4気筒エンジンの場合、各クランク回転中に2気筒が点火され、1800RPMでの4気筒エンジンの音を定義する60Hz(30x2=60)の優位周波数を生じさせる。4気筒エンジンでは、周波数がエンジンの回転速度の2倍であるため、それは「第2のエンジン次数」とも呼ばれる。1800RPMでは、4気筒エンジンの他の優位なエンジン次数は、120Hzで4次、及び180Hzで6次である。6気筒エンジンでは、点火頻度は優位な第3のエンジン次数を生じさせ、V10で、それが優位である第5のエンジン次数となる。RPMが増加するにつれて、点火頻度も比例して増加する。上述したように、EOCシステム100は、RPM信号244に基づいてエンジン次数ごとにノイズ信号X(n)を生成するために、複数のノイズ信号生成器108及び/または周波数発生機248を含んでよい。さらに、EOCシステム100内のANCフレームワーク104(例えば、制御可能フィルタ118、適応フィルタコントローラ120、二次経路フィルタ122)は、これらの複数のエンジン次数のそれぞれを低減するまたはキャンセルするために調整されてよい。例えば、第2の、第4の、及び第6のエンジン次数を低減するEOCシステムは、エンジン次数ごとに1つ、ANCフレームワークまたはサブシステム104の3つを必要とする。エラーマイク112及びアンチノイズスピーカ124等の特定のシステム構成要素は、すべてのシステムまたはサブシステムに共通であってよい。
【0021】
図1を参照し直すと、エンジン及び排気システム110を起源とするノイズ及び振動の特性周波数は、ノイズ信号生成器108内に任意選択で含まれるRPMセンサ242の1つ以上により検知されてよい。ノイズ信号生成器108は、特定のエンジン次数周波数を表す信号であるノイズ信号X(n)を出力してよい。上述したように、ノイズ信号X(n)は、対象の異なるエンジン次数で可能である。さらに、これらのノイズ信号は、別々に使用される場合もあれば、当業者により既知の多様な方法で結合される場合もある。ノイズ信号X(n)は、二次経路フィルタ122により二次経路(つまり、アンチノイズスピーカ124とエラーマイク112との間の伝達関数)を推定するモデル化された伝達特性S’(z)でフィルタリングされてよい。
【0022】
ドライブトレインノイズ(例えば、エンジン、ドライブシャフト、または排気のノイズ)は、機械的に及び/または音響的に客室に伝達され、車両102内部の1つ以上のマイク112によって受け取られる。1つ以上のマイク112は、例えば、図1に示すように、座席116のヘッドレスト114に位置してよい。代わりに、1つ以上のマイク112は、車両102のヘッドライナ、または車両102内部の乗員が聞く音響雑音場を検知するためのなんらかの他の適切な場所に位置してもよい。エンジン、ドライブシャフト、及び/または排気のノイズは、一次経路(つまり、実際のノイズ源とエラーマイクとの間の伝達関数)を表す伝達特性P(z)に従ってマイク112に伝達される。
【0023】
マイク112は、マイク112により検出される車両102の車室内に存在するノイズを表すエラー信号e(n)を出力してよい。EOCシステム100では、制御可能フィルタ118の適応伝達特性W(z)は、適応フィルタコントローラ120により制御されてよい。適応フィルタコントローラ120は、エラー信号e(n)、及び任意選択でフィルタ122によってモデル化された伝達特性S’(z)でフィルタリングされるノイズ信号X(n)に基づいて、既知の最小平均二乗(LMS)アルゴリズムに従って動作してよい。制御可能フィルタ118は、多くの場合Wフィルタと呼ばれる。LMS適応フィルタコントローラ120は、エラー信号e(n)に基づいて伝達特性W(z)フィルタ係数を更新するように構成された積算クロススペクトルを提供してよい。ノイズキャンセルの改善につながるW(z)を適応させるまたは更新するプロセスを収束と呼ぶ。収束は、所与の入力信号のために適応の速度を抑制するステップサイズにより制御されるエラー信号e(n)を最小限に抑えるWフィルタを作成することを指す。ステップサイズは、アルゴリズムが、制御可能Wフィルタ118の各更新に基づいてWフィルタ係数の大きさの変化を制限することによって、e(n)を最小限に抑えるためにどれほど速く収束するのかを決定する倍率である。
【0024】
アンチノイズ信号Y(n)は、識別された伝達特性W(z)及びノイズ信号、またはノイズ信号X(n)の組み合わせに基づいて制御可能フィルタ118及び適応フィルタコントローラ120により形成された適応フィルタにより生成されてよい。アンチノイズ信号Y(n)は、理想的には、スピーカ124を通して再生されるときに、乗員の耳、及び車両車室の乗員に聞こえるエンジン次数ノイズと実質的に反対の位相であり、エンジン次数ノイズの大きさと同一であるマイク112の近くでアンチノイズが生成されるような波形を有する。スピーカ124からのアンチノイズは、マイク112に近い車両車室内のエンジン次数ノイズと結合して、この場所でのエンジン次数ノイズ誘発音圧レベル(SPL)の低減を生じさせ得る。特定の実施形態では、EOCシステム100は、音響エネルギーセンサ、音響強度センサ、または音響粒子速度センサもしくは加速度センサ等の客室内の他の音響センサからセンサ信号を受信してエラー信号e(n)を生成してよい。
【0025】
車両は、多くの場合、エンジンRPMに比して他の速度で回転している他のシャフトを有する。例えば、ドライブシャフトは、トランスミッションにより設定された現在のギア比によってエンジンに関連付けられた速度で回転する。ドライブシャフトはある程度の偏心度を有する場合があるので、ドライブシャフトが完全な回転バランスを有さない場合がある。回転時、偏心度は、車両に振動力をかける回転アンバランスを生じさせ、これらの振動により客室の中で可聴音を生じる場合がある。エンジンとは異なる速度で回転する他の回転シャフトは、その差動装置でのギア比により設定された速度で回転するハーフシャフト、つまりアクセルを含む。特定の実施形態では、ノイズ信号生成器108は、ドライブシャフトまたはハーフシャフト等、異なる回転シャフト上にRPMセンサを有することができる。
【0026】
車両102の動作中、プロセッサ128は、ノイズ信号生成器108の中のRPMセンサ242及びマイク112からデータを収集し、任意選択で処理して、車両102が使用するデータ及び/またはパラメータを含むデータベースまたはマップを構築してよい。収集したデータは、車両102が将来使用するためにストレージ130にローカルにまたはクラウドに記憶されてよい。ストレージ130にローカルに記憶するために役立つ場合があるEOCシステム100に関係するデータのタイプの実施例は、RPM履歴、マイクスペクトルまたは時間依存性信号、マイクベースの音響性能データ、運転モードに基づいたEOC調整パラメータ及び優位なエンジン次数等を含むが、これに限定されるものではない。さらに、プロセッサ128は、RPMセンサ及びマイクのデータを分析し、EOCシステム100に適用されるパラメータのセットを決定するために重要な特徴を抽出してよい。パラメータのセットは、イベントによってトリガされるときに選択されてよい。1つ以上の実施形態では、プロセッサ128及びストレージ130は、適応フィルタコントローラ120等の1つ以上のEOCシステムコントローラと統合されてよい。
【0027】
図1に示す簡略化したEOCシステムの概略図は、S(z)で表す、各スピーカ124と各マイク112との間の1つの二次経路を示す。上述したように、EOCシステムは、通常、複数のスピーカ、マイク、及びノイズ信号生成器を有する。したがって、6スピーカ、6マイクのEOCシステムは、合計36の二次経路を有する(つまり、6x6)。相応して、6スピーカ、6マイクのEOCシステムは、同様に、二次経路ごとに伝達関数を推定する36S’(z)のフィルタ(つまり、二次経路フィルタ122)を有してよい。図1に示すように、EOCシステムは、ノイズ信号生成器108からの各ノイズ信号X(n)と各スピーカ124との間に1つのW(z)フィルタ(つまり、制御可能フィルタ118)も有する。5ノイズ信号生成器、6スピーカのEOCシステムは、30のW(z)フィルタを有してよい。代わりに、6周波数生成器248、6スピーカのEOCシステムは36のW(z)フィルタを有してよい。
【0028】
上述したように、EOCシステムは、単一のワイドオープンスロットル(WOT)データ記録セッションで開始して調整できる。優位なエンジン次数は、乗員の耳で記録された音をRPMと対比して調べることによって識別される。エンジン次数ごとに、主要なEOCアルゴリズムパラメータのそれぞれの単一の値が通常識別される。これらのEOCアルゴリズムパラメータは、通常、ステップサイズ、安定性SPL閾値、漏れ、利得等を含む。上述したように、ステップサイズは、アルゴリズムが、制御可能Wフィルタの各更新に基づいてWフィルタ係数の大きさの変化を制限することによって、エラー信号e(n)を最小限に抑えるためにどれほど速く収束するのかを決定する倍率である。適応LMSフィルタリングでは、漏れはWフィルタ更新プロセスのステップを指す。Wフィルタは、以前のWフィルタにエラー信号及びステップサイズに基づいた項を追加することによって適応する。この更新項を追加するとき、以前のWフィルタを1未満の項で乗算することによって以前のWフィルタを削減することもできる。漏れを使用することは、適応中に以前のWフィルタの大きさに1未満の係数を乗算するプロセスである。安定性SPL閾値は、エラーマイク出力信号(つまり、エラー信号e(n))に適用される閾値を指し、EOCシステムは、これを超えると少なくとも一時的に動作を停止される。最後に、利得は、X(n)の振幅の増加または減少を生じさせる、周波数生成器248またはノイズ信号生成器108内の任意の構成要素の出力の振幅の増加または減少を指す。代替実施形態では、利得は、アンチノイズ信号Y(n)の振幅の増加または減少を指すであろう。別の代替実施形態では、利得は、制御可能フィルタ118の振幅の増加または減少を指すであろう。運転モードに基づいてアンチノイズ信号Y(n)でまたはノイズ信号X(n)で利得を調整する考えられる利点は、新しい運転モードにより迅速に適応することである。例えば、より高いエンジンノイズ運転モードからより低いエンジンノイズ運転モードに移動するとき、アンチノイズ信号Y(n)の利得を減少させると、ステップサイズによりゲート制御されるWフィルタ更新プロセスだけに依存するよりも迅速に、Wフィルタが、アンチノイズの新しいより低い所望されるレベルに適応するのを支援する場合がある。
【0029】
エンジン次数ごとのこれらのアルゴリズムパラメータのそれぞれの単一の値は、すべての車両運転シナリオに最適なEOC経験を提供しない(例えば、WOT対定速運転)。さらに、WOTイベント中の優位なエンジン次数は、アイドルモード及び他の車両運転モード中の優位な次数と必ずしも同一ではない。本開示の1つ以上の実施形態は、現在の車両動作状態または運転モードに基づいてEOCアルゴリズムパラメータの最適なセットを選択することを対象とする。
【0030】
WOTイベント中、経時的なエンジンまたは他のシャフトのRPMの変化は大きいため、エンジン次数の周波数も急速に変化する。大部分の場合、WOT状況は、定速運転シナリオまたはパーシャルオープンスロットル運転シナリオに比較してより高いトルク要求に起因する最高の内部ノイズレベルを示す。エンジン次数周波数が急速に変化しているとき、またはエンジンノイズレベルが高いときにEOCが収束を維持するためには(つまり、EOCシステムがエンジン次数ノイズを低減し続けるためには)、通常、大きいステップサイズが必要とされる。相対的に大きいステップサイズを使用し、急速に変化する周波数で安定性を維持する(つまり、発散を回避する)ためには、追加の漏れを使用する必要もある。
【0031】
しかしながら、車両が定常状態で操作されるとき、RPMは本質的に一定であり、車両の音特性は変化する。この場合、LMSベースのEOCシステムは小さいステップサイズで最小の音響エネルギーにより正確に収束するため、ノイズキャンセルを改善するためにステップサイズを低減してよい。さらに、小さなステップサイズは、LMSアルゴリズムがいくつかのWフィルタ(大きさ及び位相の値)間で振動し、キャンセルレベルで可聴かつ望ましくない変動を生じさせる「ANCの揺れ(wobble)」または「ANCの移動(wander)」の可聴性を低減するために利用されてよい。さらに、この小さいステップサイズは、安定性を維持するために高い漏れ値を必要としない。したがって、漏れは、EOCキャンセル深度をさらに改善し、車両内部をさらに静かにするために低減するまたは排除することができる。したがって、積極的な漏れ及びステップサイズはWOT中に最善のEOCを提供し得る。一方、積極的ではない漏れ及びステップサイズは、定常状態中に最善なEOCを提供し得る。
【0032】
EOC調整パラメータの任意の単一のセットは、当然ながらすべての運転状態でノイズキャンセルの性能または安定性を損なわせる。また、運転シナリオに依存するEOCパラメータを利用すると、特定のEOC調整は容易になる場合がある。例えば、既知のコーナーの場合は、高速道路速度で長時間車両を操作した後のEOCアルゴリズムの発散(つまり、定常状態RPM)である。この運転モードに調整パラメータの別個のセットを提供することによって、妥協は不必要となり、発散回避または安定性が改善される。
【0033】
単にWOT及び定速以上に可能なより多くの運転シナリオがある。調整パラメータの中間値は、中間、つまりパーシャルオープンスロットル(POT)位置で可能である場合がある。運転モードは、車両コントローラエリアネットワーク(CAN)バスからまたは他のシステムからの考えられる追加の入力とともに、RPM、速度、及びトルクの時間履歴を監視することによって検出し、ラベルを付けることができる。検出し、ラベルを付け得る多様な運転モードの非限定的な実施例は、WOT、けん引、多様な速度(例えば、75mph、60mph、及び30mph)での定常状態、気筒休止、コーストダウン、パーシャルオープンスロットル(POT)、アイドル等を含んでよい。図3は、客室の中のエンジン次数ノイズに対する運転モードの影響を明示するために、上述した運転モードのいくつかについてエンジン次数と対比して客室内のSPLを示すグラフである。
【0034】
RPM、速度、及びトルクの時間履歴を監視することに加えて、クルーズコントロールの連動またはトランスミッションギアの状態を監視することは、車両運転モードを識別する他の考えられる方法である。例えば、WOT(ワイドオープンスロットル)状態は、RPMの変化率、複数のギアの突然のシフトダウン、エンジン(気筒)の中への燃料流入率、車両速度の変化率、ペダル位置、エンジンのトルク出力の変化率、車両加速度の値等により検出できる。POT(パーシャルオープンスロットル)状態は、WOTについて上述した同じ数量の下限閾値である。
【0035】
けん引は、「通常の運転」と比較してRPMごとに上昇したエンジントルクによって検出されてよい。例えば、エンジン出力トルクの範囲は「通常の運転」のために記憶されてよい。トルクがこの値の範囲を超えると、次いで「けん引」モードが識別されてよい。特に言及していないが、(例えば、山を登るときのための)「傾斜運転」モードは、検出方法と理想的なEOCパラメータ選択の両方においてけん引モードに類似している。2つのモードは、例えば水平位置に対する車両の角度を示す角度位置センサからの入力で区別できるであろう。
【0036】
定速運転モードは、特定の期間中のRPMのゼロまたはごくわずかな変化率によって検出されてよい。気筒休止は、CANメッセージによってまたは異なるエンジン次数の音響検出によって検出されてよい。例えば、8気筒エンジンが2気筒の動作を停止すると、8気筒エンジンは、8気筒エンジンにより放射される第2の、第4の、及び第6のエンジン次数よりむしろ、6気筒エンジンのエンジン次数(つまり、第3の、第6の、及び第9のエンジン次数)を放射する。コーストダウン運転モードは、RPMの負の変化率によって、または特定の力の公差内でのブレーキの適用によって検出されてよい。
【0037】
アイドル状態は、エンジンがコールドアイドルRPMとウォームアイドルRPMとの間の定速で動作していることによって識別されることができる。代替の、つまり補助的な識別方法は、車両のエンジンがオンであるが、車両速度が実質的にゼロであることを単に検出することである。また、トランスミッションギアの状態は、アイドルの識別を支援する場合もあるが、ギア状態はアイドル時パーキングまたはドライブのどちらかであってよい。
【0038】
図4は、本開示の1つ以上の実施形態に係るEOCシステム400を表す概略ブロック図である。EOCシステム400は、当業者により理解されるように、フィルタX(Filtered−X)最小二乗平均(FX−LMS)EOCシステムである場合がある。EOCシステム100と同様に、EOCシステム400は、それぞれ上述した要素108、110、112、118、120、122、及び124の動作と一致する要素408、410、412、418、420、422、及び424を含んでよい。また、図4は、図1に関して説明した一次経路P(z)及び二次経路S(z)を示す。エンジン次数ノイズは狭帯域であるため、エラーマイク信号e(n)は、LMSベースの適応フィルタコントローラ420に移行する前に、バンドパスフィルタ450によりフィルタリングされ得る。一実施形態では、ノイズ信号生成器408により出力されるノイズ信号X(n)は、同じバンドパスフィルタパラメータを使用し、バンドパスフィルタリングされる。多様なエンジン次数の周波数は異なるため、各エンジン次数は、異なるハイパスフィルタ及びローパスフィルタのコーナー周波数を有する独自のバンドパスフィルタを有してよい。周波数発生器及び対応するノイズキャンセル構成要素の数は、最終的には、特定の車両についてレベルの低減が所望されるエンジン次数の数に基づいて変わる。
【0039】
車両運転モードを検出するために、EOCシステム400は、運転モード検出器462をさらに含んでよい。運転モード検出器462は、上述したような多様な運転モードまたは運転シナリオを識別し、ラベルを付けるようにプログラムされた、プロセッサ128及びストレージ130等のプロセッサ及びメモリ(図示せず)を含んでよい。再び、この運転モード検出は、RPM、速度及びトルクの時間履歴、クルーズコントロールの連動、トランスミッションギアの状態等を監視することを伴う場合がある。運転モード検出器462は、車両の運転モードを検出するための専用のコントローラである場合もあれば、LMS適応フィルタコントローラ420等のEOCシステム400の中の別のコントローラまたはプロセッサと統合される場合もある。代わりに、運転モード検出器462は、EOCシステムの他の構成要素とは別個である車両102内の別のコントローラまたはプロセッサに統合されてもよい。
【0040】
運転モード検出方式は、誘導信号の任意の分析期間の後に特定の運転モードの識別をもたらすことができる。例えば、運転モードは、わずか10ミリ秒のデータ分析後に識別される場合があり、検出の改善は100ミリ秒後に発生する場合がある。さらに、運転モード検出は、規則正しい時間間隔で継続的に、及び/または特定のイベントに応えて利用されてよい。このようなイベントは、CANメッセージの受信、クルーズコントロールの連動を識別する入力、トランスミッション状態がドライブからパーキングに変化したことを識別する入力、アクセルペダルが完全に踏み込まれていることを示す信号の受信等を含んでよいが、これに限定されるものではない。
【0041】
図5は、本開示の1つ以上の実施形態に従って、車両運転モードに基づいてEOC調整パラメータを最適化するための方法500を示す例示的なフローチャートである。上述したタイプを含むセンサデータは、ステップ510で取得されてよい。例えば、システムは、車両運転状態を示す信号を監視または受信してよい。上述したように、これは、クルーズコントロールの連動、トランスミッションギアの状態等を示す信号だけではなく、RPM、速度、及びトルクの時間履歴、ペダル位置、燃料流量を監視することを伴ってよい。ステップ520で、データは分析され、統計が計算されてよい。例えば、運転モード検出器462または別のコントローラは、RPMの変化率、車両速度の変化率、またはエンジンのトルク出力の変化率を計算してよい。ステップ530で、結果として生じる統計は、速度、ペダル位置、トルク等に関係する所定の閾値に比較されてよい。例えば、第1の下限閾値と第2の上限閾値との間のRPM、速度、またはトルクの変化率は、POT運転モードを示してよい。一方、第2の上限閾値を超える変化率は、WOT運転モードを示してよい。さらに、CANメッセージは、任意選択で受信され、特定の運転モードを識別するCANメッセージのリストと比較されてよい。
【0042】
運転モード検出器462は、ステップ540に示すように、運転モードの変化が発生したかどうかを判断してよい。運転モードが変化していない場合、パラメータ変更は必要ではなく、新しいセンサデータは、示すようにステップ510で取得されてよい。しかしながら、ステップ540で新しい運転モードが検出される場合、運転モード検出器462は、現在の運転モードまたは運転シナリオを示す信号466を適応フィルタコントローラ420に送信してよい。信号466に応えて、適応フィルタコントローラ420は、ステップ550に示すように、LMSアルゴリズムパラメータの1つ以上を修正してよい。例えば、ステップサイズ及び漏れは、車両の現在のRPMの変化率に応じて適切な値に調整できる。
【0043】
図6は、各運転シナリオに対するEOC調整パラメータを示す例示的な表600である。上述した4つの主要な調整パラメータは、EOCシステム性能を最大限にするために運転モードに基づいてインテリジェントに調整されてよい。示すように、各調整パラメータは検出された運転モードに基づいて別々の状態(例えば、高/低、高/中/低)を割り当てられてよい。調整パラメータごとに、それぞれの状態と関連付けられた対応する値が、適応フィルタコントローラ420によってEOCアルゴリズムで適用されてよい。代わりに、表600は、多様な運転モードに基づいてEOCをさらに最適化するために調整パラメータごとに特定の数値を含んでよい。これらの特定の数値は、事前に決定されてよく、メモリ130に記憶されてよい。例えば、低ステップサイズ運転モードから中ステップサイズ運転モードに移動するとき、ステップサイズは、10dBまたは20dB等の所定の量、増加されてよい。中ステップサイズ運転モードから低ステップサイズ運転モードに戻るとき、ステップサイズは、10または20dB等の所定の量、減少されてよい。一実施形態では、高漏れ運転モードから低漏れ運転モードに移動するとき、漏れ値は、50%または73%等の所定の量、減少されてよい。別の実施形態では、高安定性SPL閾値から低安定性SPL閾値に移動するとき、SPL閾値は、10dB等の所定の量、低減されてよい。
【0044】
1つ以上の実施形態では、新しい運転モード(つまりギアシフト)が識別される(つまり、運転モードの変化が検出される)と、ステップサイズは、この新しい運転モードでの適応時間を減少させるために最初に短期間増加されてよい。この短い継続時間に続いて、(ステップサイズを含む)主要なチューニングパラメータは、検出した特定の運転モードに基づいて、図6の表600に従って調整されることができる。
【0045】
EOC調整パラメータを変更することに加えて、優位なエンジン次数からのエンジン次数ノイズは、運転モード及び/またはトランスミッションモードに基づいて低減されてよい。処理力及び他のEOCシステムの制限により、EOCシステム400及びその対応するアルゴリズムは、低減し得るエンジン次数のノイズ振幅の数で制限される場合がある。コンピュータが「標準的な」プログラムを実行中に処理できるマシンコード命令の数は、MIPS(百万命令/秒)で測定される。したがって、例えば、所与のMIPS及びメモリ制限の場合、EOCアルゴリズムは、5つのエンジン次数の振幅しか低減できない場合がある。より多くのエンジン次数をキャンセルするには、利用できないまたは望ましくない場合がある、追加のデジタル信号処理(DSP)リソースが必要になるであろう。ただし、5つの優位なエンジン次数は、種々の運転モードまたはトランスミッションモードで異なる場合がある。
【0046】
トランスミッションモードは、スポーツ、エコノミー(ECO)、スノー、けん引、バハ(Baja)、ロック、及びトラックを含むことができるが、これに限定されるものではない。トランスミッションモードは、トルク要求及びエンジン上のギアシフトポイントを変更し、それによってエンジン次数レベルを変更する。図7は、2つの異なる運転モードの1つの車両で測定されたエンジン次数と対比して相対的なSPLを示す例示的なプロットである。第1の運転モードでの測定値は、車両が静止し、エンジンがウォームアイドル速度である間に採取された。第2の運転モードの測定値は、WOTの間に採取された。図7に示すように、5つの優位なエンジン次数は、これらの2つの車両運転モードで異なっている。さらに、単一の最も優位なエンジン次数もこれらの2つの運転モード間で異なる。5つの最も優位なエンジン次数のうちの2つは、これらの2つの運転モード間で15dBを超えて異なる。
【0047】
したがって、すべてのエンジン次数をキャンセルするためにDSPリソースを専用にすることなくEOCを最適化するために、EOCシステム400及び対応するアルゴリズムは、単にWOTでの優位なエンジン次数だけではなく各運転モードでの優位なエンジン次数をターゲットとしてよい。EOCシステムがノイズキャンセルに対して5つのエンジン次数をターゲットとすることができる場合、次いでアルゴリズムは、運転モードまたはトランスミッションモードに基づいてターゲットとするための5つの最も優位なエンジン次数を選択してよい。車両運転モードを識別するためにギアまたはトランスミッションの状態を使用する追加の利点は、ドライブラインのキャンセルに関係している。一般に理解されるように、客室内の特定の音響音はドライブシャフトの回転アンバランスによって誘発される振動を起源としている。トランスミッションギアごとに、ドライブシャフトRPMは、(異なるギア比に起因する)異なる係数によってエンジンRPMに関連付けられる。したがって、ギアごとに、RPM対周波数のルックアップテーブルの異なるセットが、EOCアルゴリズムが車両の中のドライブラインに誘発されたノイズをキャンセルするために必要とされる。同様に、運転状態ごとに、RPM対周波数のルックアップテーブルの異なるセットが、EOCアルゴリズムが各運転モードで優位なエンジン次数をターゲットとするように利用されてよい。
【0048】
上記を考慮して、運転モードを識別すると、特定のエンジン次数の最適なノイズキャンセルを生じさせる理想的な適応パラメータがロードされ得るだけでなく、その特定の新しい運転モードのために優位なエンジン次数のリストもロードされ得る。図6と同様に、図8は、各運転シナリオに対する特定のエンジンのための優位なエンジン次数を示す例示的な表800である。これにより、車両の全体的なノイズフロアが全体的に低くなり、それによって車両の乗員が経験するノイズキャンセル性能がさらに最適化される。
【0049】
例示的な実施形態が上述されているが、これらの実施形態が本発明のすべての可能な形式を説明することは意図されていない。むしろ、明細書で使用する言葉は限定ではなく説明のための言葉であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多様な変更が成され得ることが理解される。さらに、様々な実装実施形態の特徴は、本発明のさらなる実施形態を形成するために結合されてよい。
【0050】
図1及び図4は、それぞれLMSベースの適応フィルタコントローラ120及び420を示すが、最適な制御可能Wフィルタ118及び418を適応させる、または作成するための他の方法及びデバイスが可能である。例えば、1つ以上の実施形態では、ニューラルネットワークが、LMS適応フィルタコントローラの代わりにWフィルタを作成し、最適化するために利用され得る。他の実施形態では、LMS適応フィルタコントローラの代わりに最適なWフィルタを作成するために、機械学習または人工知能が使用され得る。
【0051】
当業者は、機能的に同等の処理ステップを時間領域または周波数領域のどちらかで行うことができることを理解する。したがって、図中の各信号処理ブロックについて明示的に述べていないが、信号処理は、時間領域、周波数領域、またはその組み合わせのいずれかで発生する場合がある。さらに、多様な処理ステップはデジタル信号処理の典型的な用語で説明されているが、同等のステップは、本開示の範囲から逸脱することなくアナログ信号処理を使用し、実行し得る。
【0052】
用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、「含む(includes)」、またはその任意の変形は、非排他的包含を参照することを意図しており、それにより要素の一覧を含むプロセス、方法、物品、組成物、または装置は、列挙されるそれらの要素だけを含むのではなく、明示的に示されていない、またはこのようなプロセス、方法、物品、組成物、または装置に固有ではない他の要素を含んでもよい。本発明の主題の実践において使用される上述の構造、配置、用途、比率、要素、材料、または構成要素の他の組み合わせ及び/または修正は、具体的に列挙されていないものに加えて、変更され得る、またはそれ以外の場合、特定の環境、製造仕様、設計パラメータ、または他の動作要件に、同一の一般的な原理から逸脱することなく特に適応され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8