【解決手段】車両10の自動運転を実行する車両制御装置110であって、車両の走行経路を設定する走行経路設定部111と、周辺センサ120の検出信号を用いて車両の周辺情報を認識する周辺情報認識部112と、周辺情報を用いて、走行経路上の停車車両を検出する停車車両検出部113と、周辺情報を用いて、停車車両が移動を開始するか否かの推定をする移動推定部114と、移動推定部の推定結果に応じて車両の制御内容を決定する制御決定部115と、を備える。制御決定部は、停車車両が移動を開始すると推定した場合に、停車車両が移動するのを待機して、走行経路を走行する制御を行うよう決定し、停車車両が移動を開始しないと推定した場合に、走行経路設定部に走行経路を変更させ、走行経路設定部が変更した走行経路を走行する制御を行うよう決定する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1に示すように、車両10は、自動運転制御システム100を備える。本実施形態において、自動運転制御システム100は、車両制御装置110と、周辺センサ120と、自車位置センサ126と、道路情報記憶部130と、自動運転制御部210と、駆動力制御ECU(Electronic Control Unit)220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240と、を備える。車両制御装置110と、自動運転制御部210と、駆動力制御ECU220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240とは、車載ネットワーク250を介して接続される。
【0010】
周辺センサ120は、カメラ122と物体センサ124とを備える。カメラ122は、自車両の周囲を撮像して画像を取得する。物体センサ124は、自車両の周囲の状況を検出する。物体センサ124として、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、超音波センサ等の反射波を利用した物体センサが挙げられる。
【0011】
自車位置センサ126は、現在の車両10の車両位置を検出する。自車位置センサ126として、例えば、汎地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System(s)(GNSS))やジャイロセンサ等が挙げられる。
【0012】
道路情報記憶部130は、車両が走行予定の道路に関する詳細な道路情報等を記憶する。道路情報は、例えば、車線数、車線幅、各車線の中心座標、カーブ曲率、停止線位置、信号機位置、ガードレール位置等の情報を含む。
【0013】
車両制御装置110は、走行経路設定部111と、周辺情報認識部112と、停車車両検出部113と、移動推定部114と、制御決定部115と、を備える。車両制御装置110は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、これらの各部の機能を実現する。ただし、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウェア回路で実現してもよい。
【0014】
走行経路設定部111は、車両10の走行する経路を設定する。より具体的には、走行経路設定部111は、道路情報記憶部130に記憶された道路情報を用いて、予め定められた目的地までの走行経路を設定する。本実施形態における「走行経路」とは、目的地までの単なる道順ではなく、走行車線や道路内における走行位置等の詳細な経路を示す。
【0015】
周辺情報認識部112は、周辺センサ120の検出信号を用いて車両の周辺情報(以下、単に「周辺情報」という)を認識する。より具体的には、周辺情報認識部112は、カメラ122が撮像した画像および物体センサ124の出力信号に基づき、走行している道路の左右の区画線の存在とその位置や、信号機の存在とその位置や指示内容、他車両の存在、位置、大きさ、距離、進行方向、他車両の運転者の存在とその動作、他車両の周辺の人の存在、位置、等を周辺情報として認識する。なお、周辺情報認識部112は、信号機や、外部サーバ等との無線通信によってこれらの情報の一部または全部を取得し、認識してもよい。
【0016】
停車車両検出部113は、周辺情報認識部112が認識した周辺情報を用いて、走行経路設定部111が定めた走行経路上の停車車両を検出する。本実施形態において、「停車車両」とは、予め定めた時間以上停車している車両であり、駐車車両も含む。
【0017】
移動推定部114は、周辺情報認識部112が認識した周辺情報を用いて、停車車両検出部113が検出した停車車両が移動を開始するか否かの推定をする。本実施形態では、移動推定部114は、周辺情報認識部112が認識した周辺情報を用いて、停車車両の運転手の有無と、停車車両の運転手の動きと、停車車両のハザードランプの点灯の有無と、停車車両の走行車線内における位置と、停車車両の前方の信号機の指示内容と、停車車両周辺の人の動きと、の少なくとも一つ以上を認識し、これらに基づき停車車両が移動を開始するか否かを推定する。
【0018】
制御決定部115は、移動推定部114の推定結果に応じて、車両10の制御内容を決定し、車載ネットワーク250を通じて自動運転制御部210に車両10の制御を行うよう出力する。より具体的には、制御決定部115は、移動推定部114が停車車両が移動を開始すると推定した場合に、停車車両が移動するのを待機して走行経路の走行を維持するよう自動運転制御部210に出力し、移動推定部114が停車車両が移動を開始しないと推定した場合に、走行経路設定部111に走行経路を変更させ、走行経路設定部111が新たに設定した走行経路を走行するよう自動運転制御部210に出力する。
【0019】
自動運転制御部210は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、自動運転機能を実現する。自動運転制御部210は、例えば、走行経路設定部111が定めた経路に沿って走行するように、駆動力制御ECU220および制動力制御ECU230、操舵制御ECU240を制御する。自動運転制御部210は、例えば、車両10が隣車線に車線変更を行う場合に、車両10が走行している車線の基準線から隣車線の基準線を走行するように合流支援を行ってもよい。
【0020】
駆動力制御ECU220は、エンジンなど車両の駆動力を発生するアクチュエータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、アクセルペダルの操作量に応じてエンジンや電気モータである動力源を制御する。一方、自動運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、自動運転制御部210で演算された要求駆動力に応じて動力源を制御する。
【0021】
制動力制御ECU230は、車両の制動力を発生するブレーキアクチュエータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、制動力制御ECU230は、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキアクチュエータを制御する。一方、自動運転を行う場合、制動力制御ECU230は、自動運転制御部210で演算された要求制動力に応じてブレーキアクチュエータを制御する。
【0022】
操舵制御ECU240は、車両の操舵トルクを発生するモータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、操舵制御ECU240は、ステアリングハンドルの操作に応じてモータを制御して、ステアリング操作に対するアシストトルクを発生させる。これにより、運転者が少量の力でステアリングを操作でき、車両の操舵を実現する。一方、自動運転を行う場合、操舵制御ECU240は、自動運転制御部210で演算された要求操舵角に応じてモータを制御することで操舵を行う。
【0023】
図2に示す車両制御決定処理は、制御決定部115が車両10の制御内容を定める一連の処理である。より具体的には、制御決定部115が走行経路を維持するか変更するかを決定する処理である。この処理は車両10の走行中、車両制御装置110により繰り返し実行される処理であり、例えば、100ms毎に繰り返し実行される処理である。なお、この処理の開始時には走行経路が設定されているものとする。
【0024】
まず、周辺情報認識部112は、ステップS100で、周辺情報を認識する。より具体的には、カメラ122が撮影した車両10の周辺画像や、物体センサ124が検出した車両10の周辺状況から、周辺情報を認識する。
【0025】
次に、停車車両検出部113は、ステップS110において、停車車両があるか否かを判定する。より具体的には、停車車両検出部113は、ステップS100により認識した周辺情報を用いて停車車両を検出する。停車車両がない場合、ステップS140の処理に進む。一方、停車車両がある場合、移動推定部114は、ステップS120の処理に進む。
【0026】
続いて、移動推定部114は、ステップS120において、ステップS110で検出した停車車両が移動する可能性があるか否かを推定する。より具体的には、移動推定部114は、ステップS100により認識した周辺情報を用いて、ステップS110で検出した停車車両が移動を開始するか否かを推定する。移動推定部114の推定の詳細については後述する。移動する可能性がある場合、制御決定部115は、ステップS130の処理に進み、停車車両の移動が完了するのを待機し、ステップS140において走行経路設定部111が定めた走行経路を走行することを維持するよう制御を決定する。一方、移動する可能性がない場合、ステップS145の処理に進み、走行経路設定部111に走行経路を変更させ、変更した走行経路を走行するよう、自動運転制御部210を制御する。走行経路設定部111は、例えば、停車車両を避けるために車線変更を行う走行経路に変更する。
【0027】
移動推定部114は、周辺情報のパターンに応じて、停車車両が移動を開始するか否かを推定する。周辺情報のパターンは、周辺情報と推定結果との関係が定義され、周辺情報のパターンとして、例えば、以下のような条件のいずれか1つ以上を採用することが可能である。
【0028】
<条件1>
停車車両にドライバが不在である場合、移動する可能性はないと推定する。
なお、停車車両が無人運転車両である場合は、移動する可能性はないと推定しなくてもよい。
<条件2>
停車車両のドライバがカーナビを操作している場合、移動する可能性があると推定する。
<条件3>
停車車両の前方の信号機が停止を指示している場合、つまり赤信号が点灯している場合、移動する可能性があると推定する。
<条件4>
ハザードランプが点灯している場合、移動する可能性はないと推定する。
<条件5>
停車車両の走行車線内における停車位置が路肩と反対側であり、路肩と反対側の方向指示器が点灯している場合、移動する可能性があると推定する。
<条件6>
停車車両に人が乗り降りしている場合や荷物の積み下ろしを行っている場合、移動する可能性があると推定する。
【0029】
また、上記の条件1〜6やその他の条件を適宜組み合わせて周辺情報のパターンとすることもできる。周辺情報のパターンは、機械学習を用いて、過去の周辺情報と停車車両の移動開始の有無から生成することもできる。本実施形態において、移動推定部114は、
図3に示すような周辺情報のパターンに応じて、停車車両が移動を開始するか否かを推定する。
【0030】
以上で説明した本実施形態の車両制御装置110によれば、周辺センサ120の検出信号を用いて周辺情報認識部112が検出した周辺情報を用いて、停車車両検出部113が走行経路上の停車車両を検出し、移動推定部114が、停車車両の移動開始の推定を行うため、車車間通信を用いることなく停車車両の移動の開始を推定できる。また、移動推定部114が停車車両が移動を開始すると推定した場合、制御決定部115は、停車車両の移動を待機して、走行経路を走行するよう制御内容を定める。そのため、走行経路設定部111が設定した走行経路を維持することができる。
【0031】
B.第2実施形態:
図4に示す第2実施形態の車両制御決定処理は、車両を目標停車位置に停車するか否かを決定する点が
図2に示した第1実施形態の車両制御決定処理と異なる。本実施形態において「目標停車位置」とは、走行経路における目的地である。第2実施形態の自動運転制御システムの構成は、第1実施形態の自動運転制御システムの構成と同一であるため、自動運転制御システムの構成の説明は省略する。
【0032】
第2実施形態では、ステップS120(
図4)において停車車両の移動の可能性があると推定した場合に、
図2に示すステップS140の代わりに、ステップS150において、走行経路設定部111が設定した停車場所で停車する。一方、停車車両の移動の可能性がないと推定した場合に、
図2に示すステップS145の代わりに、ステップS155において、走行経路設定部111に目標停車位置を変更させ、変更した停車位置に停車するよう自動運転制御部210を制御する。走行経路設定部111は、例えば、目標停車位置を、停車車両の手前や奥に変更し、変更した目標停車位置に停車するよう走行経路を変更する。
【0033】
以上で説明した本実施形態の車両制御装置110によれば、周辺センサ120の検出信号を用いて周辺情報認識部112が検出した周辺情報を用いて、停車車両検出部113が走行経路上の停車車両を検出し、移動推定部114が、停車車両の移動開始の推定を行うため、車車間通信を用いることなく停車車両の移動の開始を推定できる。また、移動推定部114が停車車両が移動を開始すると推定した場合、制御決定部115は、停車車両の移動を待機して、走行経路における目標停車位置に停車するよう制御内容を定める。そのため、走行経路設定部111が設定した走行経路を変更すること無く、停車することができる。
【0034】
C.第3実施形態:
図5に示す第3実施形態の車両制御決定処理は、停車車両が移動の可能性がないと推定した場合に、推定確定条件を満たしているか否かに応じて再度推定を行う点が
図2に示した第1実施形態の車両制御決定処理と異なる。第3実施形態の自動運転制御システムの構成は、第1実施形態の自動運転制御システムの構成と同一であるため、自動運転制御システムの構成の説明は省略する。
【0035】
第3実施形態では、ステップS120(
図5)において停車車両が移動する可能性がないと推定された場合、移動推定部114は、ステップS135において、予め定めた条件(以下、「再推定条件」という)を満たすか否か判別する。再推定条件を満たさない場合、移動推定部114は、ステップS145の処理に進む。一方、再推定条件を満たす場合、移動推定部114は、ステップS120の処理に戻る。つまり、移動推定部114は、再度推定を行う。再推定条件として、例えば、以下のような条件のいずれか1つ以上を採用することが可能である。
【0036】
<再推定条件1>
停車車両を検出してから予め定められた閾値時間経過していないこと。
<再推定条件2>
停車車両との距離が予め定められた閾値距離以上であること。
<再推定条件3>
停車車両の周囲に人が居ること。
【0037】
上記の再推定条件1における閾値時間は、例えば、車両10が停車するために必要な時間であり、車両10の走行速度に応じて定める事ができる。
【0038】
上記の再推定条件2における閾値距離は、例えば、車両10が経路変更を行うことができる距離であり、車両10の走行速度に応じて定める事ができる。
【0039】
上記の再推定条件3が成立している場合、停車車両に乗車して車を動かす可能性が高い。そのため、この条件を採用して、移動推定部114が再度推定を行うことで、停車車両が移動すると推定する可能性があり、走行経路設定部111が設定した走行経路の走行を維持できる。
【0040】
また、上記の再推定条件1〜3やその他の条件を適宜組み合わせて再推定条件とすることもできる。
【0041】
以上で説明した本実施形態の車両制御装置110によれば、移動推定部114は、停車車両が移動を開始しないと推定した場合に、走行経路設定部111が変更した走行経路を走行する制御を行う前であって、かつ、再推定条件を満たす場合において、再度推定を行う。そのため、停車車両が移動を開始しないと推定した後であっても、停車車両が移動すると推定結果が変わる可能性があり、走行経路設定部111が設定した走行経路の走行を維持できる。
【0042】
D.その他の実施形態:
上述した実施形態において、制御決定部115は、車両制御決定処理のステップS130において、予め定められた時間以上待機しても、停車車両の移動が完了しない場合、ステップS145もしくはステップS155に進み、走行経路設定部111に走行経路もしくは目標停車位置を変更させてもよい。
【0043】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。