特開2021-95339(P2021-95339A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2021095339-尿素生成法 図000021
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-95339(P2021-95339A)
(43)【公開日】2021年6月24日
(54)【発明の名称】尿素生成法
(51)【国際特許分類】
   C07C 273/04 20060101AFI20210528BHJP
   C07C 275/00 20060101ALI20210528BHJP
   C07C 273/00 20060101ALI20210528BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20210528BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210528BHJP
【FI】
   C07C273/04
   C07C275/00
   C07C273/00
   B01J31/02 102Z
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-225193(P2019-225193)
(22)【出願日】2019年12月13日
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「NEDO 先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/産業廃水からの反応性窒素の高濃縮・資源化技術」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】眞中 雄一
(72)【発明者】
【氏名】本倉 健
(72)【発明者】
【氏名】長塚 祐樹
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA04
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA22B
4G169BA47A
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE02A
4G169BE02B
4G169BE14A
4G169BE14B
4G169BE15A
4G169BE15B
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE36A
4G169BE36B
4G169BE37B
4G169CB25
4G169CB61
4G169DA02
4G169DA05
4G169EC30
4H006AA02
4H006AC57
4H006BA51
4H006BA53
4H006BB21
4H006BB22
4H006BB24
4H006BB41
4H006BB42
4H006BC10
4H006BC11
4H006BE14
4H006BE41
4H039CA99
4H039CD10
4H039CD40
(57)【要約】
【課題】低圧下で二酸化炭素とアンモニアから尿素を生成する方法を提供する。
【解決手段】一態様において、高極性溶媒に溶解しているアンモニアを基質とし、有機強塩基を触媒として、尿素を生成する。アンモニウム塩を反応中間体として経由し、少なくとも反応中間体に触媒が作用することで尿素が生成する。基質にはさらに二酸化炭素が含まれる。反応中間体はアンモニア及び二酸化炭素から生成する。アンモニウム塩は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかである。他の態様において高極性溶媒に溶解しているアンモニウム塩を基質とし、有機強塩基を触媒として、尿素を生成する。アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高極性溶媒に溶解しているアンモニアを基質とし、少なくとも以下のいずれかの有機強塩基を触媒として、尿素を生成する方法:
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、
2,3-ジアミノトルエン、
1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、
3,4-ジアミノトルエン、
N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、
ジアザビシクロノネン、
トリエチルアミン、
1,1,3,3-テトラメチルグアニジン及び
ジアザビシクロウンデセン。
【請求項2】
アンモニウム塩を反応中間体として経由し、
少なくとも前記反応中間体に前記触媒が作用することで尿素が生成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基質にはさらに二酸化炭素が含まれ、
前記反応中間体はアンモニア及び二酸化炭素から生成し、
前記アンモニウム塩は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかである、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機強塩基はアセトニトリル中においてpKaが20より大きい、
請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機強塩基は少なくとも以下のいずれかの化合物である:
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン
ジアザビシクロノネン
1,1,3,3-テトラメチルグアニジン及び、
ジアザビシクロウンデセン、
請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記有機強塩基を前記高極性溶媒に溶解することで前記触媒として用いる、
請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記有機強塩基を担体に結合することで前記触媒として用いる、
請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記高極性溶媒は非プロトン性極性溶媒を含有する、
請求項2〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記非プロトン性極性溶媒は比誘電率が30以上である、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記非プロトン性極性溶媒はN-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル及びジメチルスルホキシドの少なくともいずれかである、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記高極性溶媒はさらに水を含有し、
前記水が前記高極性溶媒中に占める割合は50重量%よりも小さい、
請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
アンモニアを含有する水に対して、その水の一部を前記非プロトン性極性溶媒に置換し、又はその水よりも多い前記非プロトン性極性溶媒を加えることで、前記高極性溶媒に溶解している前記アンモニアを得る前工程をさらに備える、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記反応中間体から尿素を生成する反応を140℃以下で、さらに5気圧以下の環境下で行う、
請求項2〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
高極性溶媒に溶解しているアンモニウム塩を基質とし、有機強塩基を触媒として、尿素を生成する方法であって、
前記アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかであり、
140℃以下で、さらに5気圧以下の環境下で行い、
前記有機強塩基は少なくとも以下のいずれかである:
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、
2,3-ジアミノトルエン、
1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、
3,4-ジアミノトルエン、
N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、
ジアザビシクロノネン、
トリエチルアミン、
1,1,3,3-テトラメチルグアニジン及び
ジアザビシクロウンデセン、
方法。
【請求項15】
ジメチルスルホキシド及びヘキサンの少なくともいずれかを含有する溶媒に溶解しているアンモニアを基質とし、ホスファゼン塩基を触媒として、尿素を生成する方法。
【請求項16】
ジメチルスルホキシド及びヘキサンの少なくともいずれかを含有する溶媒に溶解しているアンモニウム塩を基質とし、ホスファゼン塩基を触媒として、尿素を生成する方法であって、
前記アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかであり、
140℃以下で、さらに5気圧以下の環境下で行う、
方法。
【請求項17】
ジアザビシクロウンデセンに溶解しているアンモニウム塩を基質とし、ジアザビシクロウンデセンそれ自体を溶媒として、尿素を生成する方法であって、
前記アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかであり、
140℃以下で、さらに5気圧以下の環境下で行う、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は尿素生成法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアと二酸化炭素を基質とし、これらを120℃に加熱し、さらに150気圧に加圧することで尿素を生成することができる。この方法では高圧により反応が促進されるので触媒を用いなくともよい。
【0003】
【化1】
【0004】
非特許文献1は二酸化炭素とアンモニアからカルバミン酸アンモニウムを生成し、さらにカルバミン酸アンモニウムからCu(II)及びZn(II)の触媒の存在下で尿素を生成することを開示している。この方法は触媒を用いない方法に比べて低圧下で尿素を生成するのに適する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Francesco Barzagli, Fabrizio Mani and Maurizio Peruzzini, From greenhouse gas to feedstock: formation of ammonium carbamate from CO2 and NH3 in organic solvents and its catalytic conversion into urea under mild conditions, Green Chemistry, Royal Society of Chemistry, March 22 2011, Vol. 13, Issue 13, p. 1267-1274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は低圧下で二酸化炭素とアンモニアから尿素を生成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> 高極性溶媒に溶解しているアンモニアを基質とし、少なくとも以下のいずれかの有機強塩基を触媒として、尿素を生成する方法:
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、
2,3-ジアミノトルエン、
1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、
3,4-ジアミノトルエン、
N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、
ジアザビシクロノネン、
トリエチルアミン、
1,1,3,3-テトラメチルグアニジン及び
ジアザビシクロウンデセン。
<2> アンモニウム塩を反応中間体として経由し、
少なくとも前記反応中間体に前記触媒が作用することで尿素が生成する、
<1>に記載の方法。
<3> 基質にはさらに二酸化炭素が含まれ、
前記反応中間体はアンモニア及び二酸化炭素から生成し、
前記アンモニウム塩は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかである、
<2>に記載の方法。
<4> 前記有機強塩基はアセトニトリル中においてpKaが20より大きい、
<2>又は<3>に記載の方法。
<5> 前記有機強塩基は少なくとも以下のいずれかの化合物である:
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン
ジアザビシクロノネン
1,1,3,3-テトラメチルグアニジン及び、
ジアザビシクロウンデセン、
<2>又は<3>に記載の方法。
<6> 前記有機強塩基を前記高極性溶媒に溶解することで前記触媒として用いる、
<2>〜<5>のいずれかに記載の方法。
<7> 前記有機強塩基を担体に結合することで前記触媒として用いる、
<2>〜<5>のいずれかに記載の方法。
<8> 前記高極性溶媒は非プロトン性極性溶媒を含有する、
<2>〜<7>のいずれかに記載の方法。
<9> 前記非プロトン性極性溶媒は比誘電率が30以上である、
<8>に記載の方法。
<10> 前記非プロトン性極性溶媒はN-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル及びジメチルスルホキシドの少なくともいずれかである、
<9>に記載の方法。
<11> 前記高極性溶媒はさらに水を含有し、
前記水が前記高極性溶媒中に占める割合は50重量%よりも小さい、
<8>〜<10>のいずれかに記載の方法。
<12> アンモニアを含有する水に対して、その水の一部を前記非プロトン性極性溶媒に置換し、又はその水よりも多い前記非プロトン性極性溶媒を加えることで、前記高極性溶媒に溶解している前記アンモニアを得る前工程をさらに備える、
<11>に記載の方法。
<13> 前記反応中間体から尿素を生成する反応を140℃以下で、さらに5気圧以下の環境下で行う、
<2>〜<12>のいずれかに記載の方法。
<14> 高極性溶媒に溶解しているアンモニウム塩を基質とし、有機強塩基を触媒として、尿素を生成する方法であって、
前記アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかであり、
140℃以下で、さらに5気圧以下の環境下で行い、
前記有機強塩基は少なくとも以下のいずれかである:
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、
2,3-ジアミノトルエン、
1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、
3,4-ジアミノトルエン、
N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、
ジアザビシクロノネン、
トリエチルアミン、
1,1,3,3-テトラメチルグアニジン及び
ジアザビシクロウンデセン、
方法。
<15> ジメチルスルホキシド及びヘキサンの少なくともいずれかを含有する溶媒に溶解しているアンモニアを基質とし、ホスファゼン塩基を触媒として、尿素を生成する方法。
<16> ジメチルスルホキシド及びヘキサンの少なくともいずれかを含有する溶媒に溶解しているアンモニウム塩を基質とし、ホスファゼン塩基を触媒として、尿素を生成する方法であって、
前記アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかであり、
140℃以下で、さらに5気圧以下の環境下で行う、
方法。
<17> ジアザビシクロウンデセンに溶解しているアンモニウム塩を基質とし、ジアザビシクロウンデセンそれ自体を触媒として、尿素を生成する方法であって、
前記アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかであり、
140℃以下で、さらに5気圧以下の環境下で行う、
方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により低圧下で二酸化炭素とアンモニアから尿素を生成する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】反応器の模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
<1.基質と生成物>
【0011】
本実施形態の方法ではアンモニアを反応物又は基質として尿素を生成する。アンモニアは高極性溶媒(Polar Solvent)に溶解している。反応はアンモニアが溶けている高極性溶媒中で起きる。反応において塩基(Base)を触媒とする。一態様において塩基は有機強塩基である。
【0012】
【化2】
【0013】
一態様において上記反応ではアンモニウム塩を反応中間体として経由する。また少なくとも反応中間体に触媒が作用することで尿素が生成する。
【0014】
一態様において基質にはさらに二酸化炭素が含まれる。反応中間体であるアンモニウム塩はアンモニア及び二酸化炭素から生成する。アンモニウム塩は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかである、
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
本実施形態の他の方法では上述のアンモニウム塩を反応物又は基質として尿素を生成する。アンモニウム塩は高極性溶媒に溶解している。反応はアンモニウム塩が溶けている高極性溶媒中で起きる。反応において塩基(Base)を触媒とする。一態様において塩基は有機強塩基である。
【0019】
一態様において反応中間体から尿素を生成する反応を90℃〜150℃で行う。温度は140,130,120,110及び100℃のいずれかでもよい。
【0020】
一態様において反応中間体から尿素を生成する反応を100気圧よりも低い圧力下に置かれた高極性溶媒中で行う。圧力は10,9,8,7,6,5,4,3,2及び1気圧でもよい。
【0021】
<2.有機強塩基>
【0022】
一態様において有機強塩基は以下に示すような化合物である。
【0023】
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(MTBD)
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(TBD)
2,3-ジアミノトルエン
1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(proton sponge, 商標, pKa=18.6 in MeCN)
3,4-ジアミノトルエン
N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP, pKa=18.0 in MeCN)
ジアザビシクロノネン(DBN,1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)
トリエチルアミン(TEA, pKa=18.6 in MeCN)
1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)
ジアザビシクロウンデセン(DBU, 商標)
pKaは共役酸の酸解離定数を表す。
【0024】
他の一態様において、有機強塩基はアセトニトリル(MeCN)中におけるpKaが20より大きい。pKaは21,22,23,24,25及び26のいずれかの値以上であることが好ましい。一態様において有機強塩基のかかるpKaは40より小さい。好ましい有機強塩基として特に以下が挙げられる。
【0025】
【化6】

1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(TBD, pKa=26.0 in MeCN)
【0026】
【化7】

1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(MTBD, pKa=25.5 in MeCN)
【0027】
【化8】

ジアザビシクロノネン(DBN, pKa=23.4 in MeCN)
【0028】
【化9】

1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG, pKa=23.3 in MeCN)
【0029】
【化10】

ジアザビシクロウンデセン(DBU, pKa=24.3 in MeCN)
【0030】
一態様において、これらの有機強塩基を高極性溶媒に溶解することでいわゆる均一系の触媒として用いる。他の態様において、有機強塩基を担体に結合したものをいわゆる不均一系の触媒として用いる。不均一系の触媒は固相の触媒でもよい。担体はポリスチレンを始めとする高分子でもよい。結合は共役であってもよい。1個の担体に複数の有機強塩基が結合することで、複数の有機強塩基部分(moiety)となっていてもよい。
【0031】
一態様において基質量に対する有機強塩基量の比を0.01〜10モル当量とする。比は0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9及び1モル当量のいずれかでもよい。1個の担体に複数の有機強塩基が結合して部分(moiety)となっている場合は、基質の量(モル)に対する個々の部分(moiety)の総量(モル)の比を、基質量に対する有機強塩基量の比と考えてよい。
【0032】
<3.高極性溶媒>
【0033】
一態様において高極性溶媒は非プロトン性極性溶媒を含有する。一態様において非プロトン性極性溶媒は比誘電率が30以上であることが好ましい。一態様において非プロトン性極性溶媒はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトニトリル(MeCN)及びジメチルスルホキシド(DMSO)の少なくともいずれかである。
【0034】
高極性溶媒は混合溶媒でもよく、単一化合物からなる溶媒でもよい。一態様において高極性溶媒は非プロトン性極性溶媒が主体で、さらに水を含有する。一態様において水が高極性溶媒中に占める割合は50重量%よりも小さい。水が高極性溶媒中に占める割合は40,30,20,10,9,8,7,6,5,4,3,2及び1重量%のいずれかでもよい。
【0035】
<4.反応機構>
【0036】
基質としてカルバミン酸アンモニウムを、有機強塩基としてDBUを用いる場合の反応機構を下記式に示す。右上に基質のカルバミン酸アンモニウムを示す。まずDBUとカルバミン酸アンモニウムとがカチオン交換反応を起こす。これによりカルバミン酸のDBU塩とNH3が生成する。DBU塩のカルボニル基は、求電子性が高くなっている。したがってNH3がDBU塩を求核攻撃する。これに続いて尿素が生成する。さらに脱水する。またDBUが再生する。
【0037】
【化11】
【0038】
<5.反応器>
【0039】
図1は反応器10を示す。反応器10は連続式の槽型反応器である。反応器10は回分式の反応器でもよい。反応器10は管型反応器でもよい。
【0040】
図1においてアンモニアを含有する被処理水14が投入口11から反応器10に入る。反応器10内には非プロトン性極性溶媒が蓄えられている。アンモニアは非プロトン性極性溶媒に溶け込む。これにより高極性溶媒に溶解しているアンモニアを得ることができる。
【0041】
図1において高極性溶媒に溶解しているアンモニアを得るには次のようにする。一態様においてはアンモニアを含有する被処理水14に対して、その水分の一部を非プロトン性極性溶媒に置換する。他の態様においてはアンモニアを含有する被処理水14に対して、その水分よりも多い非プロトン性極性溶媒を加える。あるいはアンモニアを含有する被処理水14を、その水分よりも多い非プロトン性極性溶媒に混合する。
【0042】
図1において反応器10内の高極性溶媒には、さらに二酸化炭素を添加する。アンモニアと二酸化炭素によって上述の化学反応が起こることで尿素が生成する。尿素を反応器10内から取り出す。
【0043】
図1において回収口から処理水15を取り出す。この時、非プロトン性極性溶媒及び有機強塩基は取り出さずに反応器10内で再利用するのがよい。処理水15に含まれるアンモニアは、元の被処理水14に含まれるアンモニアよりも少ない。上記の化学反応はアンモニアを含有する水からアンモニアを除去する手段として利用できる。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0045】
一態様において有機強塩基をホスファゼン塩基に置き換えることができる。ホスファゼン塩基の例示はP4-t-Buである。この時、高極性溶媒はDMSOを含有するものであることが好ましい。また高極性溶媒を、ヘキサンを含有する溶媒に置き換えてもよい。
【0046】
【化12】
P4-t-Bu, pKa=42.1 in MeCN
<https://en.wikipedia.org/wiki/P4-t-Bu>より引用。
【0047】
一例においてDMSO及びヘキサンの少なくともいずれかを含有する溶媒に溶解しているアンモニウム塩を基質とし、ホスファゼン塩基を触媒として、尿素を生成する。アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかである。反応は140℃以下で、さらに5気圧以下の環境下で行うことが好ましい。
【0048】
他の態様において、高極性溶媒をジアザビシクロウンデセンに置き換えることができる。ジアザビシクロウンデセンに溶解しているアンモニウム塩を基質とし、ジアザビシクロウンデセンそれ自体を触媒として、尿素を生成する。アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムの少なくともいずれかである。反応は140℃以下で、さらに5気圧以下の環境下で行うことが好ましい。
【実施例】
【0049】
<1.溶媒NMPに対する有機強塩基の比較>
【0050】
表1に示すように溶媒としてNMPを用いた。NMPに溶解した3.8 mmolのカルバミン酸アンモニウム(AC)を基質として用いた。表のBaseの欄に示す有機強塩基を溶媒に溶解した。反応はオートクレーブ中で140℃、24時間行った。オートクレーブ庫内の気圧は5気圧以下であった。
【0051】
反応で得られた溶液をFearon反応によって呈色させた。Fearon反応は尿素の一般的な呈色方法として知られている。反応産物量を紫外可視分光法(UV/Vis, Ultraviolet Visible Absorption Spectroscopy)による測定に基づき割り出した。尿素の吸光スペクトルのピークは479±5 (nm)である。以下同様である。
【0052】
【表1】
【0053】
DIPEAはN,N-ジイソプロピルエチルアミンを表す。
DABCOは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを表す。
“Abs.”は尿素の吸光スペクトルのピークにおける吸光度を表す。
「希釈率」は反応後の溶液を10(mL)に希釈した時に1.0となるようにして算出する。式で表すと以下のとおりである。
【0054】
(希釈率)=(希釈後の反応溶液の体積 (mL))/10 (mL)
【0055】
“Yield (mmol)”は尿素の収量を表している。検量線から算出した尿素量に「希釈率」を乗じてYield (mmol)を算出する。「尿素量」は吸光度測定を受けるために希釈された試料中の尿素の量である。検量線は以下の回帰直線で表される。検量線作成に用いた母集団のAbs.は0.050-0.700程度であった。
【0056】
Abs. = 1.0807 x (尿素量) + 0.0022
【0057】
“Yield (%)”は収率を表している。検量線から算出したYield(mmol)と本反応系で用いた基質の使用量(mmol)との比を百分率で表す。なお、Yield (%)が0%であることは小数点第一位で四捨五入していることによる。Yield (%)が0%でも若干量の反応産物が得られている。
以下同様である。
【0058】
備考中の“Base=0.1eq.”の表記は、投入した基質に対して有機強塩基(Base)を0.1モル当量投入したことを表す。
備考中の“AC:Base=10:1”の表記は、カルバミン酸アンモニウムの投入量(mmol)と有機強塩基(Base)の投入量(mmol)の比が10:1であることを表す。
備考中の“DBU=1eq.”の表記は、投入した基質に対して有機強塩基(Base)を1モル当量投入したことを表す。
備考中の“DBU=0.2eq.”の表記は、投入した基質に対して有機強塩基(Base)を0.2モル当量投入したことを表す。
以下同様である。
【0059】
<2.溶媒DMSOに対する有機強塩基の比較>
【0060】
表2に示すように溶媒としてDMSOを用いた。DMSOに溶解したカルバミン酸アンモニウム(AC)を基質として用いた。基質の量(Substrate (mmol))は表に表す。表のBaseの欄に示す有機強塩基を溶媒に溶解した。ただしPS-DBUはポリスチレン担体に固定された固相のDBUである。PS-DBUは溶媒に添加することで、溶媒に接触させるのみとした。反応はオートクレーブ中140℃で行った。反応時間(Time (h))は表に示す。オートクレーブ庫内の気圧は5気圧以下であった。
【0061】
【表2】
【0062】
備考中の“Base=1eq.”の表記は、投入した基質に対して有機強塩基(Base)を1モル当量投入したことを表す。
以下同様である。
【0063】
<3.温度の比較>
【0064】
表3に示す様々な温度で反応を行った。溶媒としてDMSOを用いた。DMSOに溶解したカルバミン酸アンモニウム(AC)を基質として用いた。基質の量(Substrate (mmol))は表に表す。DBUを溶媒に溶解した。反応はオートクレーブ中、表に示す各温度で行った。反応時間(Time (h))は表に示す。オートクレーブ庫内の気圧は5気圧以下であった。
【0065】
【表3】
【0066】
<4.有機強塩基DBUに対する溶媒の比較>
【0067】
表4に示す様々な溶媒で反応を行った。各溶媒に溶解したカルバミン酸アンモニウム(AC)を基質として用いた。基質の量(Substrate (mmol))は表に表す。No.34を除き、有機強塩基DBUを溶媒に溶解した。反応はオートクレーブ中、表に示す各温度で行った。反応時間(Time (h))は表に示す。オートクレーブ庫内の気圧は5気圧以下であった。
【0068】
【表4】
【0069】
表中のNo.34のSolvent(-)の表記は、無溶媒条件を表す。すなわちカルバミン酸アンモニウム(AC)を0.2モル当量のDBUに溶解し尿素を生成した。ここでは触媒として働くDBUそれ自体を溶媒として用いた。
【0070】
<5.有機強塩基P4-t-Buに対する溶媒の比較>
【0071】
表5に示す様々な溶媒で反応を行った。各溶媒に溶解したカルバミン酸アンモニウム(AC)を基質として用いた。基質の量(Substrate (mmol))は表に表す。有機強塩基P4-t-Buを溶媒に溶解した。反応はオートクレーブ中、140℃で行った。反応時間(Time (h))は表に示す。オートクレーブ庫内の気圧は5気圧以下であった。
【0072】
【表5】
【0073】
ホスファゼン塩基に適した溶媒はDBUに適した溶媒と一部共通し、一部異なる。ホスファゼン塩基の親水性及び疎水性はDBUを始めとする有機強塩基とは大きく異なる点や、またホスファゼン塩基の分子サイズはDBUを始めとする有機強塩基とは大きく異なる点がその原因と考えられる。
【0074】
<6.基質の比較>
【0075】
表6に示すカルバミン酸アンモニウム(AC)以外の様々な基質でも反応を行った。溶媒としてDMSOを用いた。DMSOに溶解した各基質を用いた。基質の量は3.64 mmolであった。有機強塩基DBUを溶媒に溶解した。反応はオートクレーブ中、140℃で行った。反応時間(Time (h))は表に示す。オートクレーブ庫内の気圧は5気圧以下であった。
【0076】
【表6】
【0077】
CO2とNH3を基質として用いるためにカルバミン酸アンモニウムの溶液を蓄えたポットをオートクレーブ内で加熱することで、炭酸ガス(CO2(g))とアンモニアガス(NH3(g))を放出させた。さらに同じオートクレーブ内にあるDBUを溶解したDMSOを蓄えたポットに炭酸ガスとアンモニアガスとを取り込ませた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
上記実施形態に係る尿素生成法は、産業廃水から反応性窒素を高濃縮した後に、アンモニアとして濃縮された反応性窒素を、尿素として資源化するために利用できる。
【符号の説明】
【0079】
10 反応器、 11 投入口、 14 被処理水、 15 処理水
図1