(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-95800(P2021-95800A)
(43)【公開日】2021年6月24日
(54)【発明の名称】防熱扉およびパッキンユニット
(51)【国際特許分類】
E06B 7/22 20060101AFI20210528BHJP
F25D 23/02 20060101ALI20210528BHJP
E05F 15/44 20150101ALI20210528BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20210528BHJP
【FI】
E06B7/22 B
F25D23/02 301F
E05F15/44
F16J15/10 S
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-228851(P2019-228851)
(22)【出願日】2019年12月19日
(11)【特許番号】特許第6733982号(P6733982)
(45)【特許公報発行日】2020年8月5日
(71)【出願人】
【識別番号】504406885
【氏名又は名称】株式会社 モリテック
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】森口 益光
【テーマコード(参考)】
2E036
2E052
3J040
3L102
【Fターム(参考)】
2E036AA03
2E036BA01
2E036CA01
2E036CA03
2E036DA02
2E036DA06
2E036EB02
2E036EC04
2E036FA10
2E036GA07
2E036HA02
2E036HB01
2E052AA02
2E052AA07
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA15
2E052EB01
2E052EC02
2E052GA03
2E052GB06
2E052GB13
2E052GC07
2E052GD09
2E052HA01
3J040BA07
3J040EA16
3J040EA21
3J040EA25
3J040EA44
3J040FA06
3J040HA12
3J040HA22
3L102JA02
3L102KA08
3L102KB22
3L102KC02
3L102KC03
3L102KC07
3L102KD11
3L102LE03
(57)【要約】
【課題】保管物品等の接触を適切に検出でき、誤操作も防止できる防熱扉および防熱扉に設けられるパッキンユニットを提供する。
【解決手段】室内を室外から防熱する防熱扉10であって、扉本体11と、扉本体11の端面11aに扉本体11の端面11aの長手方向に沿って設けられたパッキン部材12と、パッキン部材12と物体の接触を検出するセンサ部15と、を備えており、パッキン部材12が、扉本体11の端面11aと対向する内面と扉本体11の端面11aとの間に空間を形成するように設けられており、センサ部15が、パッキン部材12の内面に設けられた第一電極16と、扉本体11の端面11aに設けられた第二電極17と、を備えており、パッキン部材12は、扉本体11の端面11aに向かう力が加わると、センサ部15の第一電極16と第二電極17とが接触するように変形するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内を室外から防熱する防熱扉であって、
扉本体と、
該扉本体の端面に該扉本体の端面の長手方向に沿って設けられたパッキン部材と、
該パッキン部材と物体との接触を検出するセンサ部と、を備えており、
前記パッキン部材が、
前記扉本体の端面と対向する内面と前記扉本体の端面との間に空間を形成するように設けられており、
前記センサ部が、
前記パッキン部材の内面に設けられた第一電極と、前記扉本体の端面に設けられた第二電極と、を備えており、
前記パッキン部材は、
前記扉本体の端面に向かう力が加わると、前記センサ部の第一電極と前記第二電極とが接触するように変形するものである
ことを特徴とする防熱扉。
【請求項2】
前記パッキン部材は、
内面に前記センサ部の第一電極が取り付けられる接触壁と、
該接触壁における前記扉本体の端面の長手方向に沿って延びる一対の側端縁と前記扉本体との間を連結する一対の側壁と、を備えており、
該一対の側壁は、
前記接触壁に対して前記扉本体の端面に向かう方向に沿った力が加わると、前記接触壁が前記扉本体の端面に接近するように前記接触壁の一対の側端と前記扉本体の端面との間で変形し、前記力が除去されると元の形状に復元する機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の防熱扉。
【請求項3】
前記一対の側壁は、
前記接触壁の一対の側端縁と前記扉本体の端面との間に屈曲部を有している
ことを特徴とする請求項2記載の防熱扉。
【請求項4】
前記センサ部は、
前記第一電極は、
前記扉本体の端面の長手方向に沿って延びる軸状部と、該軸状部に連結された接触部と、を備えており、
前記第二電極は、
前記扉本体の端面の長手方向に沿って延びる、前記第一電極が接触する接触面を有しており、
前記第一電極は、
前記パッキン部材に力が加わっていない状態では、前記第二電極の接触面の幅方向の中間に位置するように配設されている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の防熱扉。
【請求項5】
前記センサ部の第一電極が、導電性樹脂によって形成されている
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の防熱扉。
<パッキンユニット>
【請求項6】
扉の端面に設置されるユニットであって、
扉の端面に取り付けられる保持部材と、
該保持部材との間に空間を形成するように設けられたパッキン部材と、
該パッキン部材と物体との接触を検出するセンサ部と、を備えており、
前記センサ部が、
前記パッキン部材の内面に設けられた第一電極と、前記保持部材に設けられた第二電極と、を備えており、
前記パッキン部材は、
前記保持部材に向かう力が加わると、前記センサ部の第一電極と前記第二電極とが接触するように変形するものである
ことを特徴とするパッキンユニット。
【請求項7】
前記パッキン部材は、
内面に前記センサ部の第一電極が取り付けられる接触壁と、
該接触壁の一対の側端縁と前記保持部材との間を連結する一対の側壁と、を備えており、
該一対の側壁は、
前記接触壁に対して前記保持部材に向かう方向に沿った力が加わると、前記接触壁が前記保持部材に接近するように前記接触壁の一対の側端と前記保持部材との間で変形し、前記力が除去されると元の形状に復元する機能を有している
ことを特徴とする請求項6記載のパッキンユニット。
【請求項8】
前記一対の側壁は、
前記接触壁の一対の側端縁と前記保持部材との間に屈曲部を有している
ことを特徴とする請求項2記載のパッキンユニット。
【請求項9】
前記センサ部は、
前記第一電極は、
軸状部と、該軸状部に連結された接触部と、を備えており、
前記第二電極は、
前記第一電極が接触する接触面を有しており、
前記第一電極は、
前記パッキン部材に力が加わっていない状態では、前記第二電極の接触面の幅方向と中間に位置するように配設されている
ことを特徴とする請求項6、7または8記載のパッキンユニット。
【請求項10】
前記センサ部の第一電極が、導電性樹脂によって形成されている
ことを特徴とする請求項6、7、8または9記載のパッキンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防熱扉およびパッキンユニットに関する。さらに詳しくは、冷蔵倉庫や冷凍倉庫などの搬入搬出口を外部と開閉可能に遮断する防熱扉および防熱扉に設けられるパッキンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や水産物、冷凍食品などの保管物品を保管する冷凍倉庫や冷蔵倉庫は外部と気密性および断熱性を高くした建屋で構成されている。このような冷凍倉庫や冷蔵倉庫には、保管物品を搬入搬出するための搬入搬出口が設けられており、この搬入搬出口を気密かつ断熱するための扉(以下防熱扉という)が設けられている。
【0003】
防熱扉として、一対の防熱扉を互いに接近離間するようにスライドして開閉する構造のものがある。このような防熱扉では、建屋の壁面と防熱扉との間、および、一対の防熱扉の対向する端面(以下、単に先端面という)にパッキンが設けられている。そして、一対の防熱扉を閉めると、パッキンによって建屋の内部と外部との間が気密に密閉できるようになっている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
一方、一対の防熱扉が開いている状態から閉じる方向に移動している状況において、タイミングによっては、保管物品や保管物品を搬入搬出する車両、作業者等(以下、保管物品等という場合がある)が一対の防熱扉に挟まれたり、一対の防熱扉の移動に起因して保管物品等が損傷したりする可能性がある。このため、一対の防熱扉には、通常、保管物品等が防熱扉に接触したり一対の防熱扉間に保管物品等が挟まれたりしたことを検出すると、一対の防熱扉の移動を停止させる動作や一対の防熱扉を開く方向に移動させる動作(以下安全動作という)をさせるようになっている。例えば、防熱扉の先端部にワイヤー等を設けておき、このワイヤー等に保管物品等が接触すると安全動作をするようになっている。
【0005】
しかし、一対の防熱扉の先端部にワイヤー等を設けた場合には、防熱扉自体の構造が複雑になる。つまり、一対の防熱扉の先端部に、建屋の内部と外部との間を気密に密閉する機能(パッキンなど)以外に、保管物品等の接触を検出するための機能を発揮する装置が必要になるので、防熱扉自体の構造が複雑になる。
【0006】
ところで、防熱扉ではないが、エレベータや車両の自動ドアにおいて、人等が挟まれること防止するための機構が開発されている。
【0007】
例えば、特許文献3では、自動車のドアに設けられるセンサであって、一対の電極を内部に設けたセンサが開示されている。このセンサでは、ドアの閉鎖に伴って障害物がセンサに接触するとセンサが変形して一対の電極が接触するので、ドアが障害物を挟んだことを検出できる。
【0008】
しかし、特許文献3の技術は、ドアが正常に閉じた場合にはセンサの変形が生じないものである。つまり、障害物検出のために上記センサを別途設けているので、上述した防熱扉にワイヤー等を設ける場合と同様に、ドア自体の構造が複雑になる。
【0009】
一方、特許文献4には、ドアの先端に設けられた軟質縁ゴムの内部にコードスイッチを設けた車輌用ドアの戸挟み防止装置が開示されている。この特許文献4の技術では、一対のドアの先端が接近して閉じたときに、一対のドア間に5〜25mmの物体が挟まれるとセンサが戸挟みを検出するようになっている。つまり、5〜25mmの物体が一対のドア間に挟まれると、軟質縁ゴムおよびコードスイッチが変形して戸挟みを検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭54−94669号公報
【特許文献2】特開2008−25873号公報
【特許文献3】特開2019−139873号公報
【特許文献4】特開2010−111338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、車輌用ドアのパッキンに使用されている軟質縁ゴムは、人が軽く接触した程度では変形しない程度の剛性を有している。つまり、ある程度の強い力で物体を挟んだ場合に、軟質縁ゴムとともにコードスイッチが変形することによって戸挟みを検出するようになっている。しかも、特許文献4では、一定以上扉が閉まった状態でなければ安全動作が作動されないようになっているので、軟質縁ゴムと接触しただけでは安全動作は実施されない。
【0012】
一方、冷凍倉庫等では、保管物品等を搬入搬出する際に、一対の防熱扉の位置に係らず、一対の防熱扉の先端に保管物品等が接触した場合には迅速に安全動作が実施されることが望ましい。
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、保管物品等の接触を適切に検出でき、誤操作も防止できる防熱扉および防熱扉に設けられるパッキンユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の防熱扉は、室内を室外から防熱する防熱扉であって、扉本体と、該扉本体の端面に該扉本体の端面の長手方向に沿って設けられたパッキン部材と、該パッキン部材と物体の接触を検出するセンサ部と、を備えており、前記パッキン部材が、前記扉本体の端面と対向する内面と前記扉本体の端面との間に空間を形成するように設けられており、前記センサ部が、前記パッキン部材の内面に設けられた第一電極と、前記扉本体の端面に設けられた第二電極と、を備えており、前記パッキン部材は、前記扉本体の端面に向かう力が加わると、前記センサ部の第一電極と前記第二電極とが接触するように変形するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の防熱扉によれば、パッキン部材に物体等が接触してパッキン部材が扉本体の端面に向かって押されれば、第一電極と第二電極が接触する。第一電極と第二電極とが接触したことを検出すれば、物体等のパッキン部材への接触を検出することができる。物体等のパッキン部材への接触を検出した際に扉本体の移動を停止したり扉本体を逆方向に移動させたりすれば、物体等を挟んだり扉などで物体を損傷することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の防熱扉10の説明図であって、(A)は概略横断面図であり、(B)は概略部分側面図である。
【
図2】本実施形態の防熱扉10において、パッキン部材12の接触壁13が扉本体11の端面に向かって移動する状況の概略説明図である。
【
図3】本実施形態の防熱扉10を一対設けた倉庫Wの概略説明図であり、一対の防熱扉10,10が接近している状況であり、(B)は一対の防熱扉10,10が閉じた状況である。
【
図4】(A)は側壁14に屈曲部14vが設けられたパッキン部材12の概略説明図であり、(B)パッキンユニットPUの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の防熱扉は、冷凍倉庫や冷蔵倉庫の開口を開閉する防熱扉であって、防熱扉に物体等が接触した際に、物体等の接触を検出することができるようにしたことに特徴を有している。
【0018】
また、本実施形態の防熱扉に採用されるパッキンユニットは、冷凍倉庫や冷蔵倉庫の開口を開閉する防熱扉に限られず、入り口や開口を開閉する種々の扉に使用することができる。
【0019】
<倉庫W>
まず、本実施形態の防熱扉10を説明する前に、本実施形態の防熱扉10が設けられた倉庫W(冷蔵倉庫や冷蔵倉庫等)を説明する。以下では、倉庫Wに防熱扉10が一対設けられている場合を説明するが、倉庫Wには、防熱扉10を一枚だけ設けてもよい。その場合には、防熱扉10の端面は、扉が閉まったときに、その先端面(後述するパッキン部材12)は戸当たりに接触するようになっていればよい。
【0020】
倉庫Wは、内部に野菜や水産物、冷凍食品などの保管物品を収容する空間を有する建屋である。
図3に示すように、この倉庫Wの壁WAには、内部に物品を搬入搬出するための搬入搬出口Whが設けられており、この搬入搬出口Whを開閉するために、一対の防熱扉10,10が設けられている。
【0021】
図3に示すように、一対の防熱扉10,10は、搬入搬出口Whが形成されている壁面WAにおいて、搬入搬出口Whの上方に設けられた移動機構20により移動されるように設けられている。
【0022】
移動機構20は、搬入搬出口Whの上方に設けられた一対のレール21,21を備えており、この一対のレール21,21にローラ等を有する吊り下げ部材22aを介して、一対の防熱扉10,10がそれぞれ吊り下げられている。
【0023】
また、一対の防熱扉10,10には、それぞれチェーン23が巻き掛けられたスプロケットを有する吊り下げ部材22bが設けられている。各チェーン23の両端部はそれぞれスプロケットに巻き掛けられており、各スプロケットがそれぞれ駆動モータ24の主軸に取り付けられている。つまり、一対のチェーン23,23は、一対の駆動モータ24によってそれぞれ移動されるようになっている。一対の駆動モータ24,24は、制御部25によってその作動が制御されている。例えば、一対の駆動モータ24,24は、同じタイミングかつ逆方向に同じ距離だけ一対の防熱扉10,10が移動するように、制御部25によってその作動が制御されている。
【0024】
そして、制御部25には、一対の防熱扉10,10の近傍、具体的には、一対の防熱扉10,10が接触している位置の近傍に設けられたセンサ26が電気的に接続されている。このセンサ26は、物品などが一対の防熱扉10,10に接近したことを検出する機能を有するものである。
【0025】
かかる構成となっているので、センサ26が一対の防熱扉10,10の近傍に保管物品等が接近したことを検出すると、センサ26から制御部25に信号が送信される。この信号を受けた制御部25は、一対の駆動モータ24,24を駆動して一対のスプロケットを介して一対のチェーン23,23を移動させる。すると、一対のチェーン23,23の移動に伴ってスプロケットとともに吊り下げ部材22bが移動するので、吊り下げ部材22bとともに一対の防熱扉10,10を互いに離間するように(つまり一対の防熱扉10,10が開くように)移動させることができる。そして、一対の防熱扉10,10が開いてから一定の時間が経過すると、制御部25は一対の駆動モータ24,24を駆動して、一対の防熱扉10,10を互いに接近するように(つまり一対の防熱扉10,10が閉じるように)移動させることができる(
図3(A)→(B))。
【0026】
なお、移動機構20は、各防熱扉10を直線的に移動させるものでもよいし、一対の防熱扉10,10が接近離間する際に、上下方向や壁面WAを直交する方向に移動するようになっていてもよい。例えば、一対の防熱扉10,10が互いに接近する際には、一対の防熱扉10,10が閉まる少し前(つまり一対の防熱扉10,10が接触する少し前)から下方に移動しつつ壁面WAに接近するように移動するようにしてもよい。逆に言えば、一対の防熱扉10,10が離間してから一定の期間は、一対の防熱扉10,10が上方に移動しつつ壁面WAから離間するように移動させてもよい。かかる構成は、吊り下げ部材22が吊り下げられているレール21の形状を調整することによって実現できる。例えば、一対の防熱扉10,10同士が接近する位置近傍では、レール21を下傾しながら壁面WAに接近する形状にしておけば、一対の防熱扉10,10は上記移動を実現することができる。
【0027】
また、移動機構20は、一対の防熱扉10,10を倉庫Wの壁面WAに沿って移動させることができるのであれば、上記の構造に限定されない。公知の種々の機構を移動機構20として採用することができる。
【0028】
<防熱扉10>
つぎに、一対の防熱扉10,10の構造について説明する。一対の防熱扉10,10は左右対称に配置されているが、一対の防熱扉10,10は実質的に同じ構造を有している。したがって、以下では、
図3において右側に位置する防熱扉10を代表として説明する。
【0029】
図1に示すように、防熱扉10は、扉本体11と、扉本体11の端面11aに設けられたパッキン部材12と、パッキン部材12と保管物品等との接触を検出するセンサ部15と、を備えている。
【0030】
<扉本体11>
まず、扉本体11は、一般的な防熱扉の扉本体と実質的に同等の構造および機能を有するものである。扉本体11は、例えば、内部に断熱材が設けられ扉本体の表面と裏面との間の熱の移動を抑制し得る構造を有している。つまり、一対の防熱扉10,10によって倉庫Wの搬入搬出口Whを閉じたときに、一対の防熱扉10,10の扉本体11を通過して熱が内部に伝わることを防止できる構造を有している。
【0031】
<パッキン部材12>
図1に示すように、扉本体11の一方の端面11aには、パッキン部材12が設けられている。このパッキン部材12は、扉本体11の端面11aの長手方向(つまり扉本体11の上下方向)に沿って延びるように設けられている。このパッキン部材12は、扉本体11の他方の扉のパッキン部材12やその他の部材(戸当たりなど)と接触すると、その部材と扉本体11の端面11aとの間を気密にシールするために設けられている。しかも、このパッキン部材12は、ある程度の外力が加わると変形し、外力が除去されると元の形状に復帰するように形成されている。より詳しくいえば、パッキン部材12は、防熱扉10の移動方向に沿って扉本体11の端面11aに向かう外力(以下単に移動方向の力という)が加わるとその高さが小さくなるように設けられている。
【0032】
図1に示すように、パッキン部材12は、扉本体11の端面11aと隙間を空けて対向するように配置される接触壁13と、この接触壁13の側端縁と扉本体11の端部との間を連結する一対の側壁14,14とを備えている。つまり、パッキン部材12は、接触壁13の内面と扉本体11の端面11aとの間に空間を形成するように設けられている。
【0033】
<接触壁13>
接触壁13は、その外面(扉本体11の端面11aと対面しない面)がシール面となるように形成されている。つまり、一対の防熱扉10,10のパッキン部材12の外面同士が接触すると、一対の防熱扉10,10の端面11a間を気密にシールすることができるように、接触壁13の外面は形成されている。例えば、接触壁13のシール面を、平坦面や、比較的曲率半径の大きい曲面(
図4(B)参照)に形成すれば、接触壁13の外面にシール機能を発揮させやすくなる。また、接触壁13自体や接触壁13のシール面の表面を気密性と柔軟性とを有する素材(例えば、ゴムや樹脂等)によって形成すれば、接触壁13にシール機能を発揮させやすくなる。
【0034】
<側壁14>
一対の側壁14,14は、パッキン部材12に移動方向の力が加わっていない状態において、接触壁13を扉本体11の端面11aから離間した状態で保持できるように設けられている。しかも、一対の側壁14,14は、移動方向の力が加わると、接触壁13を扉本体11の端面11aに向かって移動させることができるように形成されている(
図2参照)。例えば、一対の側壁14,14を収縮性と復元性を有する素材で形成すれば、一対の側壁14,14に上述した機能を付与することができる。かかる素材としては、例えば、柔軟性と弾性を有するゴムや樹脂等、収縮性と復元性とを有するスポンジ状の材料等を挙げることができる。
【0035】
とくに、一対の側壁14,14を柔軟性と弾性を有するゴムや樹脂等で板状に形成した場合には、一対の側壁14,14に屈曲部14vを設けておくことが望ましい(
図4(A)参照)。かかる屈曲部14vを設けておけば、パッキン部材12に移動方向の力が加わったときに、接触壁13を本体11の端面11aに向かって移動させやすくなる。例えば、一対の側壁14,14に内側に頂点を有する屈曲部14vを一か所設けておけば、パッキン部材12が変形する際に、接触壁13が本体11の端面11aに向かって移動するように変形しやすくなる(
図4(A)、(B)参照)。
【0036】
また、一対の側壁14,14の素材自体が収縮性や復元性等を有していなくても、一対の側壁14,14を収縮性と復元性を発揮する構造とすれば、一対の側壁14,14に上述した機能を付与することができる。収縮性と復元性を発揮する構造として、接触壁13と連結された端部と扉本体11と連結された端部との間に、折れ曲がることができつつ伸長する方向に力を発生させることができる屈曲部を設けた構造を挙げることができる。かかる屈曲部としては、例えば、バネヒンジ等を有する構造を挙げることができる。また、屈曲部だけを弾性を有する素材で形成しても同様の機能を発揮させることができる。
【0037】
さらに、一対の側壁14,14を蛇腹状に形成し、一対の側壁14,14とは別に、接触壁13を扉本体11の端面11aから離間した状態で保持する復元部材を設けてもよい。つまり、一対の側壁14,14として、接触壁13を扉本体11の端面11aに対して接近離間できるように変形はするが復元性はを有しない構造とし、一対の側壁14,14とは別に復元部材を設けてもよい。例えば、接触壁13の内面と扉本体11の端面11aとの間に復元部材としてバネなどを設ける。すると、パッキン部材12に移動方向の力が加わっていない状態において、接触壁13を扉本体11の端面11aから離間した状態で保持でき、しかも、移動方向の力が加わると、接触壁13を扉本体11の端面11aに向かって移動させることができる。
【0038】
<センサ部15>
センサ部15は、導電性樹脂によって形成された第一電極16と、金属製の第二電極17と、を有している。
【0039】
<第二電極17>
図1に示すように、第二電極17は、扉本体11の端面11aの長手方向に沿って延びる金属製の板材で形成された部材である。この第二電極17は、扉本体11の端面11aに設けられている。この第二電極17における接触壁13側の面が、第一電極16と接触する接触面17aになる。
【0040】
<第一電極16>
図1(B)に示すように、第一電極16は、扉本体11の端面11aの長手方向に沿って延びる部材であり、軸状部16aと、この軸状部16aに連結された接触部16bと、を備えている(
図1(A))。接触部16bは、後述する第二電極17と接触する部分であり、軸状部16aの一部を囲むように設けられている。具体的には、接触部16bは弧状の断面を有しており、その内面が連結壁16cによって軸状部16aと連結されている。
【0041】
この第一電極16は、パッキン部材12の接触壁13の内面に取り付けられている。例えば、パッキン部材12の接触壁13の内面に断面C字状の取付部13aが設けられており、この取付部13aに軸状部16aが着脱可能に係合した状態で連結されている。このように連結すると、取付部13aを囲むように接触部16bが配置される。
【0042】
そして、第一電極16は、接触壁13の幅方向において、パッキン部材12に移動方向の力が加わり接触壁13が扉本体11の端面11aに移動した際に、接触部16bが第二電極17の接触面17aに接触しやすくなる位置に取り付けられている。具体的には、接触壁13の内面において、その幅方向(
図1(A)では上下方向)のほぼ中央部に位置するように第一電極16は接触壁13に取り付けられている。言い換えれば、第一電極16は、第二電極17の接触面17aの幅方向におけるほぼ中間に位置するように配設されている。このように第一電極16を配置すれば、パッキン部材12の接触壁13が扉本体11の端面11aに向かって移動した際に、接触部16bが第二電極17の接触面17aに接触しやすくなる。
【0043】
<移動機構20の制御部25との関係>
第一電極16および第二電極17は、移動機構20の制御部25に電気的に接続されている。制御部25は、第一電極16と第二電極17とが接触したか否か、つまり、パッキン部材12に保管物品等が接触したか否か、を判断する機能を有している。例えば、パッキン部材12に移動方向の力が加わっていない状態では、第一電極16と第二電極17との間を絶縁した状態に維持しておき、制御部25が、第一電極16と第二電極17との間に流れる電流を検出するようにしておく。すると、第一電極16と第二電極17とが接触すると両者間に電流が流れるので、パッキン部材12に保管物品等が接触したことを検出することができる。
【0044】
そして、制御部25は、パッキン部材12に保管物品等が接触したことを検出すると、一対の防熱扉10,10に退避動作を実施させる機能を有している。退避動作とは、一対の防熱扉10,10の移動を停止したり、一対の防熱扉10,10を離間する方向に移動させたりする動作である。
【0045】
パッキン部材12およびセンサ部15をかかる構成としておけば、パッキン部材12に保管物品等が接触したことを検出することができる。つまり、一対の防熱扉10,10が互いに接近する方向に移動している状態において、一対の防熱扉10,10の移動経路に保管物品等が存在していれば、パッキン部材12には移動方向の力が加わることになる(
図2(A))。この状態から、一対の防熱扉10,10が移動を継続したり保管物品等が防熱扉10の移動方向に移動したりすれば、パッキン部材12の接触壁13は扉本体11の端面11aに接近するように移動する(
図2(B))。さらに一対の防熱扉10,10等の移動が継続すると、第一電極16と第二電極17とが接触するので(
図2(C))、制御部25は、パッキン部材12に保管物品等が接触したと判断し、一対の防熱扉10,10に退避動作を実施させる。一対の防熱扉10,10が退避動作を実施すれば、一対の防熱扉10,10の移動で保管物体等が損傷したりすることを防止できる。つまり、一対の防熱扉10,10に保管物体等が挟まれたり一対の防熱扉10,10から保管物体等に力が加わって保管物体等が損傷したりすることを防止できる。
【0046】
なお、パッキン部材12やセンサ部15が上述した構造の場合、一対の防熱扉10,10の端面11a同士が接触した状態でも、保管物品等がパッキン部材12に接触したと誤判断して、上記退避動作を実施する可能性がある。しかし、一対の防熱扉10,10の移動量を移動機構20の駆動モータ24の作動量等によって制御部25が検出するようにしておく。そして、一対の防熱扉10,10がその端面11a同士が接触する位置まで移動している場合には上記退避動作をしないようにしておく。すると、一対の防熱扉10,10の端面11a同士が接触した状態では、上記退避動作を実施することを防止できる。
【0047】
また、一対の防熱扉10,10が互いに離間する方向に移動している場合や一対の防熱扉10,10が停止している場合も、一対の防熱扉10,10の端面11a同士が接触した状態と同様に、上記退避動作をしないようにしておいてもよい。
【0048】
<パッキン部材12について>
パッキン部材12は、その接触壁13および一対の側壁14,14をゴムや樹脂等の柔軟性と弾性を有する素材によって形成する場合には、一般的な防熱扉の端面に設けられるパッキンに使用されるゴムや樹脂
等よりも変形性が高く、保管物品等が軽く接触した場合でも変形する高い柔軟性を有する素材(高柔軟性素材)によって形成されていることが望ましい。つまり、一般的な防熱扉の端面に設けられるパッキンに比べて、同じ力が加わった場合でも、変形しやすい素材でパッキン部材12を形成することが望ましい。その場合、非常に弱い力でもパッキン部材12が変形するので、保管物品等がパッキン部材12に接触した際の接触を検出する精度を高めることができる。このような高柔軟性素材としては、例えばシリコンゴムを挙げることができる。
【0049】
また、パッキン部材12は、その接触壁13や一対の側壁14,14の厚さを薄くしても変形しやすくなる。例えば、接触壁13や一対の側壁14,14の厚さを0.5〜1.5mm程度に形成すれば、パッキン部材12は変形しやすくなる。とくに、上述した高柔軟性素材を使用すれば、変形性を高めることができる。
【0050】
パッキン部材12の一対の側壁14,14は、扉本体11の端面11aに直接連結されていてもよいし、センサ部15の第二電極17を保持する保持部材18を設けて、この保持部材18に連結するようにしてもよい(
図4(B))。かかる保持部材18を設ければ、パッキン部材12とセンサ部15を一体として扉本体11の端面11aに取り付け取り外しができる。つまり、パッキンユニットPUとして取り扱うことができるので、パッキン部材12やセンサ部15の設置や交換などの作業を簡素化できる。かかるパッキンユニットPUを扉本体11の端面11aに取り付けた場合には、保持部材18のパッキン部材12の接触壁13側の面が、上述した扉本体11の端面11に相当するものとなる。
【0051】
<センサ部15について>
センサ部15の第一電極16の接触部16bの形状は上述したような形状に限られない。接触壁13が扉本体11の端面11aに接近した際に、第二電極17に接触させることができる形状に形成されていればよい。例えば、接触部16bは平板状に形成されていてもよい。
【0052】
第一電極16を接触壁13に取り付ける方法もとくに限定されない。上述したような取付部13aを設けずに、接着剤やテープ等で接触壁13の内面に軸状部16aを固定してもよい。
【0053】
第一電極16の断面形状もとくに限定されず、接触部16bを設けなくてもよい。この場合でも、軸状部16aを取付部13aに係合した状態で、軸状部16aの一部が取付部13aから扉本体11の端面11a側に突出するようになっていればよい。すると、接触壁13が扉本体11の端面11aに接近した際に、軸状部16aの突出している部分を第二電極17に接触させることができる。
【0054】
第一電極16は、必ずしもその全体を導電性樹脂によって形成していなくてもよい。軸状部16aの内部に導電性のワイヤーを設けて、その他の部分を導電性樹脂によって形成してもよい。また、接触壁13が扉本体11の端面11aに接近した際に、第一電極16において第二電極17に接触させる部分を金属製のワイヤーやプレート等の導電性材料によって形成し、その他の部分を非導電性樹脂や導電性樹脂で形成してもよい。
【0055】
第二電極17は、接触壁13が扉本体11の端面11aに接近した際に、第一電極16と接触できる接触面を有するものであれば、必ずしも上述したような板材で形成しなくてもよい。例えば、複数本のワイヤーや導電性テープなどを第二電極17として使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の防熱扉は、冷蔵倉庫や冷凍倉庫などの搬入搬出口を外部と開閉可能に遮断する扉として適している。
【符号の説明】
【0057】
10 防熱扉
11 扉本体
11a 端面
12 パッキン部材
13 接触壁
13a 側端縁
14 側壁
15 センサ部
16 第一電極
16a 軸状部
16b 接触部
17 第二電極
17a 接触面
20 移動機構
25 制御部
PU パッキンユニット
W 倉庫
Wh 搬入搬出口
【手続補正書】
【提出日】2020年6月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内を室外から防熱する防熱扉であって、
扉本体と、
該扉本体の端面に該扉本体の端面の長手方向に沿って設けられたパッキン部材と、
該パッキン部材と物体との接触を検出するセンサ部と、を備えており、
前記パッキン部材が、
前記扉本体の端面と対向する内面と前記扉本体の端面との間に空間を形成するように設けられており、
前記センサ部が、
前記パッキン部材の内面に設けられた第一電極と、前記扉本体の端面に設けられた第二電極と、を備えており、
前記パッキン部材は、
前記扉本体の端面に向かう力が加わると、前記センサ部の第一電極と前記第二電極とが接触するように変形するものであり、
前記センサ部は、
前記第一電極は、
前記扉本体の端面の長手方向に沿って延びる軸状部と、該軸状部に連結された接触部と、を備えており、
前記第二電極は、
前記扉本体の端面の長手方向に沿って延びる、前記第一電極が接触する接触面を有しており、
前記第一電極は、
前記パッキン部材に力が加わっていない状態では、前記第二電極の接触面の幅方向の中間に位置するように配設されている
ことを特徴とする防熱扉。
【請求項2】
前記パッキン部材は、
内面に前記センサ部の第一電極が取り付けられる接触壁と、
該接触壁における前記扉本体の端面の長手方向に沿って延びる一対の側端縁と前記扉本体との間を連結する一対の側壁と、を備えており、
該一対の側壁は、
前記接触壁に対して前記扉本体の端面に向かう方向に沿った力が加わると、前記接触壁が前記扉本体の端面に接近するように前記接触壁の一対の側端と前記扉本体の端面との間で変形し、前記力が除去されると元の形状に復元する機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の防熱扉。
【請求項3】
前記一対の側壁は、
前記接触壁の一対の側端縁と前記扉本体の端面との間に屈曲部を有している
ことを特徴とする請求項2記載の防熱扉。
【請求項4】
前記センサ部の第一電極が、導電性樹脂によって形成されている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の防熱扉。
【請求項5】
扉の端面に設置されるユニットであって、
扉の端面に取り付けられる保持部材と、
該保持部材との間に空間を形成するように設けられたパッキン部材と、
該パッキン部材と物体との接触を検出するセンサ部と、を備えており、
前記センサ部が、
前記パッキン部材の内面に設けられた第一電極と、前記保持部材に設けられた第二電極と、を備えており、
前記パッキン部材は、
前記保持部材に向かう力が加わると、前記センサ部の第一電極と前記第二電極とが接触するように変形するものであり、
前記センサ部は、
前記第一電極は、
軸状部と、該軸状部に連結された接触部と、を備えており、
前記第二電極は、
前記第一電極が接触する接触面を有しており、
前記第一電極は、
前記パッキン部材に力が加わっていない状態では、前記第二電極の接触面の幅方向の中間に位置するように配設されている
ことを特徴とするパッキンユニット。
【請求項6】
前記パッキン部材は、
内面に前記センサ部の第一電極が取り付けられる接触壁と、
該接触壁の一対の側端縁と前記保持部材との間を連結する一対の側壁と、を備えており、
該一対の側壁は、
前記接触壁に対して前記保持部材に向かう方向に沿った力が加わると、前記接触壁が前記保持部材に接近するように前記接触壁の一対の側端と前記保持部材との間で変形し、前記力が除去されると元の形状に復元する機能を有している
ことを特徴とする請求項5記載のパッキンユニット。
【請求項7】
前記一対の側壁は、
前記接触壁の一対の側端縁と前記保持部材との間に屈曲部を有している
ことを特徴とする請求項6記載のパッキンユニット。
【請求項8】
前記センサ部の第一電極が、導電性樹脂によって形成されている
ことを特徴とする請求項5、6または7記載のパッキンユニット。