を測定するための固形物のHSP値測定方法を対象とする。固形物としてのサンプルを、HSP値を取得した複数種類の溶媒に対しそれぞれ接触させた後、耐衝撃試験によって、各サンプルに対しそれぞれ外力を加えた際の各サンプル毎の変形度合を測定する。耐衝撃試験における各サンプル毎の変形度合を基準に、各種溶媒に対するサンプルの相溶性をそれぞれ評価し、その評価結果に基づいて、固形物のHSP値を算出する。
耐衝撃試験において、破断または変形が生じたサンプルに対応する溶媒は相溶性ありと評価し、変形が生じないサンプルに対応する溶媒は相溶性なしと評価するようにした請求項1に記載の固形物のHSP値測定方法。
耐衝撃試験においては、各サンプルに対し所定高さから錘を落下させて衝突させることによって外力を加えるようにした請求項1または2に記載の固形物のHSP値測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のHansen溶解球法を用いたHSP値測定方法において、実質的に溶解しない不溶性の固形物、つまり溶媒に溶解しない固形物、あるいはほとんど溶解しない固形物のHSP値を測定しようとすると、各種溶媒に対する相溶性の有無を判断できないため、HSP値を測定することは困難であるという課題が発生する。
【0006】
一方、エンジニアリングプラスチックのような不溶性の固形物であっても、所定の有機溶媒に所定時間浸漬した際に、相溶性に起因して溶媒が変色するものがある。従ってそのような不溶性の固形物においては、溶媒の色の変化によって相溶性の有無を判断できるため、HSP値を測定することは可能となる。
【0007】
しかしながら従来において、炭素繊維やエンジニアリングプラスチックの一部には、種々の有機溶媒に浸漬した際に、溶解しないだけでなく溶媒の変色も来さないものが存在し、そのような不溶性の固形物においてはHSP値を測定することは困難であるという課題があった。
【0008】
この発明は、溶媒に対し実質的に溶解せず、さらに溶媒に変色を来さないような固形物であってもHSP値を測定することができる固形物のHSP値測定方法を提供することが目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0010】
[1]固形物のHansen溶解度パラメータ(HSP値)δ
d、δ
p、δ
hを測定するための固形物のHSP値測定方法であって、
固形物としてのサンプルを、HSP値を取得した複数種類の溶媒に対しそれぞれ接触させた後、
耐衝撃試験によって、各サンプルに対しそれぞれ外力を加えた際の各サンプル毎の変形度合を測定し、
耐衝撃試験における各サンプル毎の変形度合を基準に、各種溶媒に対するサンプルの相溶性をそれぞれ評価し、その評価結果に基づいて、固形物のHSP値を算出するようにしたことを特徴とする固形物のHSP値測定方法。
【0011】
[2]耐衝撃試験において、破断または変形が生じたサンプルに対応する溶媒は相溶性ありと評価し、変形が生じないサンプルに対応する溶媒は相溶性なしと評価するようにした前項1に記載の固形物のHSP値測定方法。
【0012】
[3]耐衝撃試験においては、各サンプルに対し所定高さから錘を落下させて衝突させることによって外力を加えるようにした前項1または2に記載の固形物のHSP値測定方法。
【0013】
[4]固形物のHansen溶解度パラメータ(HSP値)δ
d、δ
p、δ
hを測定するための固形物のHSP値測定方法であって、
固形物としてのサンプルを、HSP値を取得した複数種類の溶媒に対しそれぞれ接触させた後、
各サンプルに対しそれぞれ破断荷重を測定し、
各サンプル毎の破断荷重の大きさを基準に、各種溶媒に対するサンプルの相溶性をそれぞれ評価し、その評価結果に基づいて、固形物のHSP値を算出するようにしたことを特徴とする固形物のHSP値測定方法。
【0014】
[5]破断荷重は、サンプルを圧縮した際に切断を引き起こす荷重である前項4に記載の固形物のHSP値測定方法。
【発明の効果】
【0015】
発明[1]〜[3]の固形物のHSP値測定方法によれば、各種溶媒に接触させた固形物サンプルに対する耐衝撃試験による変形度合を基準に、各種溶媒に対するサンプルの相溶性を評価し、その評価結果に基づいて、固形物のHSP値を算出するようにしているため、溶媒に対し実質的に溶解せず、さらに溶媒の変色を来さないような不溶性の固形物であっても、HSP値を確実に測定することができる。
【0016】
発明[4][5]の固形物のHSP値測定方法によれば、各種溶媒に接触させた固形物サンプルに対する破断荷重を基準に、各種溶媒に対するサンプルの相溶性を評価し、その評価結果に基づいて、固形物のHSP値を算出するようにしているため、溶媒に対し実質的に溶解せず、さらに溶媒の変色を来さないような不溶性の固形物であっても、HSP値を確実に測定することができる
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態における固形物のHansen溶解度パラメータ(HSP値)δ
d、δ
p、δ
hの測定方法は、Hansen溶解球法(Hansen solubility sphere法)を利用した測定方法であり、溶媒(溶剤)に対して実質的に溶解しない不溶性の固形物、例えばエンジニアリングプラスチックや炭素繊維等であってもHSP値を確実に測定することが可能である。
【0019】
なお、HSP値における「δ
d」は分散力項であり、ほぼ全ての物質がもつファンデルワールス相互作用から生じる非極性相互作用のパラメータである。「δ
p」は双極子間力項であり、双極子間相互作用が基となるパラメータである。「δ
h」は水素結合力項であり、水素結合による相互作用に基づくパラメータである。
【0020】
本第1実施形態のHSP値測定方法においては、HSP値を取得した複数種類の有機溶媒を準備する。なお溶媒のHSP値を取得する方法は特に限定されるものではなく、例えば文献等に記載されたHSP値を用いても良いし、実験や研究によってHSP値を測定しても良いし、周知の物性値等からHSP値を算出するようにしても良い。
【0021】
一方、使用する複数種類の溶媒の数に合わせて、HSP値の測定対象となる固形物のサンプルを複数準備する。
【0022】
次に各サンプルを各種の溶媒にそれぞれ所定期間、例えば数日間浸漬して、サンプルに各種溶媒を浸透させる。
【0023】
続いて所定期間各種溶媒に浸漬した各サンプルに対し耐衝撃試験を行い、衝撃性を評価する。具体的には、所定の重さの錘を所定の高さからサンプルに向け、落下させてサンプルに衝突させることによって外力(衝撃力)を加えて、その外力によってサンプルの変形度合、例えば変形の有無や破断の有無を確認する。そして破断したサンプルや変形量が多いサンプルに対応する溶媒は、相溶性が良好で親和性が良い(親和性あり)と評価し、変形が生じないサンプルや変形が少ないサンプルに対応する溶媒は、相溶性が不良で親和性が悪い(親和性なし)と評価する。なお本発明において、耐衝撃試験でサンプルが破断する場合とは、サンプルがその変形量が多くて破断する場合に相当する。
【0024】
次に各種溶媒とサンプルとの間の親和性の有無に基づいて、後に詳述するようにHansen溶解球法を用いて測定対象としての固形物であるサンプルのHSP値を測定する。
【0025】
以上のように本第1実施形態における固形物のHSP値測定方法によれば、各種溶媒に接触させた固形物サンプルに対する耐衝撃試験による変形度合を基準に、各種溶媒に対するサンプルの相溶性を評価し、その評価結果に基づいて、固形物のHSP値を算出するようにしているため、溶媒に対し実質的に溶解せず、さらに溶媒の変色を来さないような不溶性の固形物であっても、HSP値を確実に測定することができる。
【0026】
なお本発明においては、サンプルを溶媒に接触させるという場合、サンプルを溶媒に浸漬するだけに限られず、溶媒をサンプルに塗布するような場合も含まれる。
【0027】
以下に、第1実施形態のHSP値測定方法を用いた実施例1について詳細に説明する。
【0030】
HSP値の測定対象物として、PBT樹脂Aを準備した。この不溶性の固形物からなるペレット状のサンプルを5個スクリュー管に投入した。こうしてサンプル入りのスクリュー管を多数本準備した。
【0031】
サンプル入りの各スクリュー管に、表1に示すHSP値が既知の各種有機溶媒(Solvent)を10 mLずつそれぞれ注入して、各溶媒内にサンプルをそれぞれ浸漬した。
【0032】
次に溶媒およびサンプルが収容された各スクリュー管を、恒温槽内にて25℃で5日間保持して溶媒をサンプルに浸透させた。
【0033】
浸透後、各サンプルをスクリュー管から取り出し、各サンプル毎に耐衝撃試験を行った。耐衝撃試験は、高さ10 cmの位置から227 gの錘をサンプルに向けて落下させ、落下後のサンプルを目視によって観察し、親和性(相溶性)を評価した。評価基準としては、割れていたサンプルに対応する溶媒は、サンプルに対し相溶性が良好と判断し、表1の「Score」の欄に親和性がある良溶媒(Good solvent)であることを示す「1」と記載し、変形せず割れなかったサンプルに対応する溶媒は、サンプルに対し相溶性が不良と判断し、「Score」の欄に親和性がない貧溶媒(Poor solvent)であることを示す「0」と記載した。
【0034】
表1から判断できるように、No.2の溶媒「DMF」と、No.16の溶媒「NMP」が良溶媒として判断され、それ以外の溶媒は貧溶媒と判断された。
【0035】
なお上記の耐衝撃試験とは別に、着色の有無を基準にして相溶性の評価も行った。すなわち各種溶媒とサンプルとが混合された各スクリュー管を、上記と同様に25℃で5日間浸透させた後各種溶媒が着色しているか否かを目視により観察した。そして、着色(変色)していた溶媒を相溶性が良好な良溶媒と判断し、着色(変色)しなかった溶媒を相溶性が不良な貧溶媒と判断した。その判断結果は、上記表1に示す耐衝撃試験による良溶媒と貧溶媒との判断結果と一致していた。
【0036】
ここで変色の有無による相溶性の評価は、既述した通り、従来より用いられていた評価方法であり、相溶性の判断方法として十分な信頼性を備えている。このように十分な信頼性がある従来の相溶性評価方法による評価結果と、本発明に関連した耐衝撃試験による相溶性の評価結果とが同じ結果が得られるため、両者に相関関係があり、本発明の耐衝撃試験による相溶性評価方法も十分な信頼性があると判断することができる。
【0037】
次に表1に示す相溶性の評価結果に基づいて、Hansen溶解球法を用いてサンプルのHSP値を算出する。すなわち
図1に示すように各種溶媒のHSP値を3次元空間の位置座標と見なして、3次元グラフ上にプロットする。
【0038】
続いて相溶性のある良溶媒(
図1の「●」)の座標を含み、かつ相溶性のない貧溶媒(
図1の「■」)の座標を含まない最小の球(Hansen溶解球)Sを作成する。
【0039】
そしてHansen溶解球の中心の位置座標を、サンプル(測定対象の固形物)のHSP値に設定する。その結果を表2に示す。表2の「δ
t」はHSP値δ
d、δ
p、δ
hから算出したHildebrand溶解度パラメータである。
【0041】
以上の実施例1においては、サンプルの耐衝撃試験の結果を基に、各種溶媒に対する相溶性を評価してHSP値を測定しているため、不溶性の固形物であっても精度良く確実にHSP値を測定することができる。
【0042】
なお上記実施例1では、耐衝撃試験において、割れたサンプルに対応する溶媒を相溶性ありと判断し、変形しなかったサンプルに対応する溶媒を相溶性なしと判断するようにしているが、それだけに限られず、本発明において、耐衝撃試験におけるサンプルの変形度合を基準に、相溶性の有無を判断すれば良い。例えば、耐衝撃試験において、破断した場合または破断しないまでも変形した場合には、相溶性ありと判断し、変形しない場合には、相溶性なしと判断するようにしてもよい。さらに耐衝撃試験において、破断した場合または変形量が所定値よりも多い場合には、相溶性ありと判断し、変形量が所定値よりも少ない場合には、相溶性なしと判断するようにしてもよい。
【0043】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態における固形物のHansen溶解度パラメータ(HSP値)δ
d、δ
p、δ
hの測定方法は、各種有機溶媒に浸漬した各サンプルに対し、それぞれ破断荷重を測定し、各サンプル毎の破断荷重の大きさを基準に、各種溶媒に対するサンプルの相溶性をそれぞれ評価し、その評価結果に基づいて、Hansen溶解球法を用いてサンプルのHSP値を測定する。
【0044】
この第2実施形態における固形物のHSP値測定方法によれば、各種溶媒に接触させた固形物サンプルに対する破断荷重を基準に、各種溶媒に対するサンプルの相溶性を評価し、その評価結果に基づいて、固形物のHSP値を算出するようにしているため、溶媒に対し実質的に溶解せず、さらに溶媒の変色を来さないような不溶性の固形物であっても、HSP値を確実に測定することができる。
【0045】
以下に、第2実施形態のHSP値測定方法を用いた実施例2について詳細に説明する。
【0048】
HSP値の測定対象物(固形物)として、PC樹脂Bを準備した。この不溶性固形物からなるペレット状のサンプルを、表3に示すHSP値が既知の各種有機溶媒にそれぞれ1時間浸漬して、サンプルに各種溶媒を浸透させた。
【0049】
浸透後、各サンプル毎に耐荷重試験(荷重試験)を行った。この耐荷重試験においては、荷重ストローク実験装置として、株式会社イマダ製の特性評価試験機「FSAシリーズ」に所定のアタッチメントを装着した計測ユニットを用いて、各サンプルが破断(切断)されるまでの圧縮荷重(破断荷重)の大きさを測定し、相溶性の有無を判断した。具体的には、破断荷重が10 N未満の場合には、そのサンプルに対応する溶媒は、サンプルに対し相溶性が良好と判断し、表3における荷重試験の「Score」の欄に親和性がある良溶媒であることを示す「1」と記載し、破断荷重が10 N以上の場合、または500 N以上の荷重でも破断しなかった場合には、そのサンプルに対応する溶媒は、サンプルに対し相溶性が不良と判断し、荷重試験の「Score」の欄に親和性がない貧溶媒であることを示す「0」と記載した。
【0050】
一方、上記の耐荷重試験とは別に、溶解性試験(溶解試験)を行って相溶性の評価を行った。すなわち、上記と同様の測定対象物からなるペレット状のサンプルを、表3に示すHSP値が既知の同種の各溶媒にそれぞれ24時間浸漬した。その後、目視で観察して、溶媒の変色の有無によって、各溶媒毎のサンプルに対する溶解性(相溶性)の有無を判断し、相溶性(溶解性)がある溶媒については、表3における溶解試験の「Score」の欄に良溶媒であることを示す「1」と記載し、相溶性がない溶媒については、溶解試験の「Score」の欄に貧溶媒であることを示す「0」と記載した。
【0051】
ここで、耐荷重試験による相溶性の評価結果と、溶解性試験による相溶性の評価結果とを比較すると、No.3の溶媒「DMF」に対する評価結果のみが異なり、それ以外の全ての溶媒に対する評価結果は一致していた。このように相溶性の判断方法として、十分な信頼性がある従来の溶解性試験による評価結果と、本発明に関連した耐荷重試験による相溶性の評価結果とがほぼ一致しており、両者には相関関係があり、本発明の耐荷重試験による相溶性評価方法も十分な信頼性があると判断することができる。
【0052】
次に表3に示す溶解性試験による相溶性の評価結果に基づいて、Hansen溶解球法を用いてHSP値を算出した。すなわち
図2Aに示すように各種溶媒のHSP値を3次元グラフ上にプロットしてHansen溶解球Sを作成した。
【0053】
さらにそのHansen溶解球の中心の位置座標をサンプルのHSP値に設定した。その結果を表4に示す。
【0055】
また表3に示す耐荷重試験による相溶性の評価結果に基づいて、上記と同様にHansen溶解球法を用いてHSP値を算出した。すなわち
図2Bに示すように各種溶媒のHSP値を3次元グラフ上にプロットしてHansen溶解球Sを作成し、その球の中心の位置座標をサンプルのHSP値に設定した。その結果を表4に併せて示す。
【0056】
さらに以下の関係式を用いて、溶解性試験によるサンプルのHSP値δ
d1、δ
p1、δ
h1に対し、耐荷重試験によるサンプルのHSP値δ
d2、δ
p2、δ
h2の3次元空間上の距離R
aを算出した。その結果を表4に併せて示す。
【0057】
R
a=[4(δ
d1-δ
d2)
2+(δ
p1-δ
p2)
2+(δ
h1-δ
h2)
2]
1/2
表4に示すように、溶解性試験によるHSP値に対する、耐荷重試験によるHSP値の距離R
aが短い値(小さい値)となり、耐荷重試験によるHSP値の算出は、妥当であり、信頼性が十分に高いと判断できた。
【0058】
以上の実施例2においては、サンプルの耐荷重試験の結果を基に、各種溶媒に対する相溶性を評価してHSP値を測定しているため、不溶性の固形物であっても精度良く確実にHSP値を測定することができる。
【0061】
HSP値の測定対象物(固形物)として、PMMA樹脂Cを準備した。この不溶性固形物からなるペレット状のサンプルを、表5に示すHSP値が既知の各種溶媒にそれぞれ1時間浸漬して、サンプルに各種溶媒を浸透させた。
【0062】
浸透後、上記実施例2と同様に各サンプル毎に耐荷重試験を行った。そして破断荷重が100 N未満の場合には、そのサンプルに対応する溶媒は、サンプルに対し相溶性が良好と判断し、荷重試験の「Score」の欄に良溶媒であることを示す「1」と記載し、破断荷重が100 N以上の場合、または500 N以上の荷重でも破断しなかった場合には、そのサンプルに対応する溶媒は、サンプルに対し相溶性が不良と判断し、荷重試験の「Score」の欄に貧溶媒であることを示す「0」と記載した。
【0063】
一方、耐荷重試験とは別に、上記実施例2と同様に溶解性試験を行って相溶性の評価を行った。そして相溶性(溶解性)がある溶媒については、表5における溶解試験の「Score」の欄に良溶媒であることを示す「1」と記載し、相溶性がない溶媒については、溶解試験の「Score」の欄に貧溶媒であることを示す「0」と記載した。
【0064】
ここで、耐荷重試験による相溶性の評価結果と、溶解性試験による相溶性の評価結果とを比較すると、No.2の溶媒「NMP」に対する評価結果のみが異なり、それ以外の全ての溶媒に対する評価結果は一致していた。従って信頼性がある溶解性試験による評価結果と、本発明に関連した耐荷重試験による相溶性の評価結果とがほぼ一致しており、両者には相関関係があり、本発明の耐荷重試験による相溶性評価方法も十分な信頼性があると判断することができる。
【0065】
次に表5に示す溶解性試験による相溶性の評価結果に基づいて、Hansen溶解球法を用いてHSP値を算出した。すなわち
図3Aに示すように各種溶媒のHSP値を3次元グラフ上にプロットしてHansen溶解球Sを作成した。
【0066】
さらにそのHansen溶解球の中心の位置座標をサンプルのHSP値に設定した。その結果を表に示す。
【0068】
また表5に示す耐荷重試験による相溶性の評価結果に基づいて、上記と同様にHansen溶解球法を用いてHSP値を算出した。すなわち
図3Bに示すように各種溶媒のHSP値を3次元グラフ上にプロットしてHansen溶解球Sを作成し、その球の中心の位置座標をサンプルのHSP値に設定した。その結果を表6に併せて示す。
【0069】
さらに実施例2と同様に、溶解性試験によるサンプルのHSP値δ
d1、δ
p1、δ
h1に対し、耐荷重試験によるサンプルのHSP値δ
d2、δ
p2、δ
h2の3次元空間上の距離R
aを上記関係式から算出した。その結果を表6に併せて示す。
【0070】
表6に示すように、溶解性試験によるHSP値に対する、耐荷重試験によるHSP値の距離R
aが短い値(小さい値)となり、耐荷重試験によるHSP値の算出は、妥当であり、信頼性が十分に高いと判断できた。
【0071】
この実施例3においても実施例2と同様に、サンプルの耐荷重試験の結果を基に、各種溶媒に対する相溶性を評価してHSP値を測定しているため、不溶性の固形物であっても精度良く確実にHSP値を測定することができる。
【0072】
なお実施例2,3においては、圧縮による破断荷重を基準に相溶性を評価する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、引張により破断荷重を基準に相溶性を評価するようにしても良い。
【0073】
また実施例2,3においては、相溶性の有無を判断する際の破断荷重の基準値(閾値)を、10 N、100 Nにそれぞれ設定しているが、この閾値は、特に限定されるものではなく、測定対象となる物質や、使用される溶媒の種類や、試験条件、過去の実験データ等を基に適宜設定すれば良い。