【解決手段】回転角度検出センサは、導体層を有する基板を備える。導体層は、周方向に等間隔に配置された複数の第1抵抗線パターンR1と、第1抵抗線パターンと同心円状に、かつ、周方向において第1抵抗線パターンが配置されない領域に、等間隔に配置された複数の第2抵抗線パターンR2と、を含む。第1抵抗線パターンは、半径方向および周方向のいずれか一方向に延びる第1抵抗線r1が、直列に接続されたパターンである。第2抵抗線パターンは、半径方向および周方向のいずれか一方向に延びる第2抵抗線r2が、直列に接続されたパターンである。これらの第1抵抗線パターンおよび第2抵抗線パターンの抵抗値の変化に基づいて、円形体に入力される回転運動の回転角度を検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、動力伝達装置の中心軸と平行な方向を「軸方向」、動力伝達装置の中心軸に直交する方向を「半径方向」、動力伝達装置の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。
【0010】
<1.動力伝達装置の構成>
図1は、第1実施形態に係る動力伝達装置1の縦断面図である。
図2は、
図1のA−A位置から見た動力伝達装置1の横断面図である。この動力伝達装置1は、モータから得られる第1回転数の回転運動を、第1回転数よりも低い第2回転数に減速させつつ後段へ伝達する装置である。動力伝達装置1は、例えば、ロボットの関節に、モータとともに組み込まれて使用される。ただし、本発明の動力伝達装置は、アシストスーツ、無人搬送台車などの他の装置に用いられるものであってもよい。
【0011】
図1および
図2に示すように、本実施形態の動力伝達装置1は、インタナルギア10、フレックスギア20、波動発生器30、およびトルク検出センサ40を備えている。
【0012】
インタナルギア10は、内周面に複数の内歯11を有する円環状のギアである。インタナルギア10は、動力伝達装置1が搭載される装置の枠体に、例えばねじ止めで固定される。インタナルギア10は、中心軸9と同軸に配置される。また、インタナルギア10は、フレックスギア20の後述する筒状部21の半径方向外側に位置する。インタナルギア10の剛性は、フレックスギア20の筒状部21の剛性よりも、はるかに高い。このため、インタナルギア10は、実質的に剛体とみなすことができる。インタナルギア10は、円筒状の内周面を有する。複数の内歯11は、当該内周面において、周方向に一定のピッチで配列されている。各内歯11は、半径方向内側へ向けて突出する。
【0013】
フレックスギア20は、可撓性を有する円環状のギアである。フレックスギア20は、中心軸9を中心として回転可能に支持される。フレックスギア20は、本発明における「円形体」の一例である。
【0014】
本実施形態のフレックスギア20は、筒状部21と平板部22とを有する。筒状部21は、中心軸9の周囲において、軸方向に筒状に延びる。筒状部21の軸方向の先端は、波動発生器30の半径方向外側、かつ、インタナルギア10の半径方向内側に位置する。筒状部21は、可撓性を有するため、半径方向に変形可能である。特に、インタナルギア10の半径方向内側に位置する筒状部21の先端部は、自由端であるため、他の部分よりも大きく半径方向に変位可能である。
【0015】
フレックスギア20は、複数の外歯23を有する。複数の外歯23は、筒状部21の軸方向の先端部付近の外周面において、周方向に一定のピッチで配列されている。各外歯23は、半径方向外側へ向けて突出する。上述したインタナルギア10が有する内歯11の数と、フレックスギア20が有する外歯23の数とは、僅かに相違する。
【0016】
平板部22は、ダイヤフラム部221と肉厚部222とを有する。ダイヤフラム部221は、筒状部21の軸方向の基端部から、半径方向外側へ向けて平板状に広がり、かつ、中心軸9を中心として円環状に広がる。ダイヤフラム部221は、軸方向に僅かに撓み変形可能である。肉厚部222は、ダイヤフラム部221の半径方向外側に位置する、円環状の部分である。肉厚部222の軸方向の厚みは、ダイヤフラム部221の軸方向の厚みよりも厚い。肉厚部222は、動力伝達装置1が搭載される装置の、駆動対象となる部品に、例えばねじ止めで固定される。
【0017】
波動発生器30は、フレックスギア20の筒状部21に、周期的な撓み変形を発生させる機構である。波動発生器30は、カム31と可撓性軸受32とを有する。カム31は、中心軸9を中心として回転可能に支持される。カム31は、軸方向に視たときに楕円形の外周面を有する。可撓性軸受32は、カム31の外周面と、フレックスギア20の筒状部21の内周面との間に介在する。したがって、カム31と筒状部21とは、異なる回転数で回転できる。
【0018】
可撓性軸受32の内輪は、カム31の外周面に接触する。可撓性軸受32の外輪は、フレックスギア20の内周面に接触する。このため、フレックスギア20の筒状部21は、カム31の外周面に沿った楕円形状に変形する。その結果、当該楕円の長軸の両端に相当する2箇所において、フレックスギア20の外歯23と、インタナルギア10の内歯11とが噛み合う。周方向の他の位置においては、外歯23と内歯11とが噛み合わない。
【0019】
カム31は、直接または他の動力伝達機構を介して、モータに接続される。モータを駆動させると、カム31は、中心軸9を中心として第1回転数で回転する。これにより、フレックスギア20の上述した楕円の長軸も、第1回転数で回転する。そうすると、外歯23と内歯11との噛み合い位置も、周方向に第1回転数で変化する。また、上述の通り、インタナルギア10の内歯11の数と、フレックスギア20の外歯23の数とは、僅かに相違する。この歯数の差によって、カム31の1回転ごとに、外歯23と内歯11との噛み合い位置が、周方向に僅かに変化する。その結果、インタナルギア10に対してフレックスギア20が、中心軸9を中心として、第1回転数よりも低い第2回転数で回転する。したがって、フレックスギア20から、減速された第2回転数の回転運動を取り出すことができる。
【0020】
<2.トルク検出センサについて>
<2−1.トルク検出センサの構成>
トルク検出センサ40は、フレックスギア20にかかる周方向のトルクを検出するセンサである。
図1に示すように、本実施形態では、円板状のダイヤフラム部221の円形の表面に、トルク検出センサ40が固定されている。
【0021】
図3は、トルク検出センサ40の表裏面のうち、ダイヤフラム部221に対向する裏面を示した図である。
図4は、トルク検出センサ40の表裏面のうち、ダイヤフラム部221に対向しない表面を示した図である。
図5は、ダイヤフラム部221およびトルク検出センサ40の部分断面図である。
【0022】
図3〜
図5に示すように、トルク検出センサ40は、回路基板41を有する。本実施形態の回路基板41は、柔軟に変形可能なフレキシブルプリント基板(FPC)である。回路基板41は、中心軸9を中心とする円環状の本体部411と、本体部411から半径方向外側へ向けて突出したフラップ部412とを有する。
【0023】
図5に示すように、トルク検出センサ40の回路基板41は、絶縁層42と、導体層43とを有する。絶縁層42は、絶縁体である樹脂からなる。導体層43は、導体である金属からなる。導体層43の材料には、例えば、銅または銅を含む合金が用いられる。本実施形態の回路基板41は、絶縁層42の表面と裏面との両方に、導体層43を有する。
【0024】
また、
図5に示すように、トルク検出センサ40は、両面接着テープ44により、フレックスギア20のダイヤフラム部221に固定される。具体的には、ダイヤフラム部221の表面と、回路基板41の裏面とが、両面接着テープ44を介して固定される。両面接着テープ44は、接着力を有する材料がテープ状に成形されて、形状を維持できる程度に硬化されたものである。このような両面接着テープ44を用いれば、流動性を有する接着剤を用いる場合よりも、ダイヤフラム部221に対するトルク検出センサ40の固定作業が容易となる。また、作業者による固定作業のばらつきを低減できる。
【0025】
なお、ダイヤフラム部221の変形をトルク検出センサ40へ精度よく伝達するために、両面接着テープ44は、ベースフィルムを有さず、接着材料のみで構成されていることが好ましい。
【0026】
回路基板41には、回転角度検出用抵抗線パターンP1と、トルク検出用抵抗線パターンP2と、信号処理回路P3とが、実装されている。回転角度検出用抵抗線パターンP1は、本体部411の表裏面のうち、ダイヤフラム部221に対向する裏面に配置されている。すなわち、裏面側の導体層43が、回転角度検出用抵抗線パターンP1を含む。トルク検出用抵抗線パターンP2は、本体部411の表裏面のうち、ダイヤフラム部221に対向しない表面に配置されている。すなわち、表面側の導体層43が、トルク検出用抵抗線パターンP2を含む。信号処理回路P3は、フラップ部412に配置されている。
【0027】
<2−2.回転角度検出機能について>
回転角度検出用抵抗線パターンP1は、フレックスギア20に入力される回転運動の回転角度を検出するためのパターンである。
図3に示すように、回転角度検出用抵抗線パターンP1は、4つの第1抵抗線パターンR1と、4つの第2抵抗線パターンR2とを含む。
【0028】
4つの第1抵抗線パターンR1は、中心軸9の周囲において、周方向に等間隔に配列されている。第1抵抗線パターンR1は、それぞれ、1本の導体がジグザグに曲折しながら周方向に延びる、全体として円弧状のパターンである。本実施形態では、中心軸9の周囲の約45°の角度範囲に、1つの第1抵抗線パターンR1が広がっている。また、第1抵抗線パターンR1は、複数の第1抵抗線r1を含む。複数の第1抵抗線r1は、周方向に微小な間隔をあけて配列される。各第1抵抗線r1は、フレックスギア20の半径方向に沿って、直線状に延びる。周方向に隣り合う第1抵抗線r1の端部同士は、半径方向の内側または外側で交互に接続される。これにより、複数の第1抵抗線r1が、全体として直列に接続される。
【0029】
4つの第2抵抗線パターンR2は、中心軸9の周囲において、周方向に等間隔に配列されている。第2抵抗線パターンR2は、それぞれ、1本の導体がジグザグに曲折しながら周方向に延びる、全体として円弧状のパターンである。本実施形態では、中心軸9の周囲の約45°の角度範囲に、1つの第2抵抗線パターンR2が広がっている。また、第2抵抗線パターンR2は、複数の第2抵抗線r2を含む。複数の第2抵抗線r2は、周方向に微小な間隔をあけて配列される。各第2抵抗線r2は、フレックスギア20の半径方向に沿って、直線状に延びる。周方向に隣り合う第2抵抗線r2の端部同士は、半径方向の内側または外側で交互に接続される。これにより、複数の第2抵抗線r2が、全体として直列に接続される。
【0030】
4つの第2抵抗線パターンR2は、第1抵抗線パターンR1と同心円状に、かつ、周方向において第1抵抗線パターンR1が配置されない領域に、配置される。本実施形態では、第1抵抗線パターンR1と、第2抵抗線パターンR2とが、周方向に交互に配列される。そして、4つの第1抵抗線パターンR1と、4つの第2抵抗線パターンR2とが、全体として、中心軸9を中心とする円環状に広がっている。
【0031】
図6は、4つの第1抵抗線パターンR1を含む第1ホイートストンブリッジ回路C1の回路図である。
図6の例では、4つの第1抵抗線パターンR1を、Ra,Rb,Rc,Rdとして区別して示している。第1抵抗線パターンRa,Rb,Rc,Rdは、
図3においてRaを1つ目として反時計回りにこの順に配列されている。
【0032】
図6に示すように、4つの第1抵抗線パターンRa,Rb,Rc,Rdは、第1ホイートストンブリッジ回路C1に組み込まれている。第1抵抗線パターンRaと第1抵抗線パターンRbとは、この順に直列に接続される。第1抵抗線パターンRdと第1抵抗線パターンRcとは、この順に直列に接続される。そして、電源電圧の+極と−極との間において、2つの第1抵抗線パターンRa,Rbの列と、2つの第1抵抗線パターンRd,Rcの列とが、並列に接続される。また、第1抵抗線パターンRaおよび第1抵抗線パターンRbの中点M11と、第1抵抗線パターンRdおよび第1抵抗線パターンRcの中点M12とが、第1電圧計V1に接続される。
【0033】
図7は、4つの第2抵抗線パターンR2を含む第2ホイートストンブリッジ回路C2の回路図である。
図7の例では、4つの第2抵抗線パターンR2を、Re,Rf,Rg,Rhとして区別して示している。第2抵抗線パターンReは、
図3において、第1抵抗線パターンRaと第1抵抗線パターンRdとの間に位置する。また、第2抵抗線パターンRe,Rf,Rg,Rhは、
図3においてReを1つ目として時計回りにこの順に配列されている。
【0034】
図7に示すように、4つの第2抵抗線パターンRe、Rf、Rg、Rhは、第2ホイートストンブリッジ回路C2に組み込まれている。第2抵抗線パターンReと第2抵抗線パターンRfとは、この順に直列に接続される。第2抵抗線パターンRhと第2抵抗線パターンRgとは、この順に直列に接続される。そして、電源電圧の+極と−極との間において、2つの第2抵抗線パターンRe,Rfの列と、2つの第2抵抗線パターンRh,Rgの列とが、並列に接続される。また、第2抵抗線パターンReおよび第2抵抗線パターンRfの中点M21と、第2抵抗線パターンRhおよび第2抵抗線パターンRgの中点M22とが、第2電圧計V2に接続される。
【0035】
動力伝達装置1の駆動時には、ダイヤフラム部221に、径方向に伸長する部分(以下「伸長部」と称する)と、径方向に収縮する部分(以下「収縮部」と称する)とが、発生する。具体的には、2つの伸長部と2つの収縮部とが、周方向に交互に発生する。すなわち、伸長部と収縮部とは、周方向に90°間隔で交互に発生する。そして、これらの伸長部および収縮部の発生する箇所が、上述した第1回転数で回転する。
【0036】
トルク検出センサ40の裏面に設けられた第1抵抗線パターンRa,Rb,Rc,Rdおよび第2抵抗線パターンRe、Rf、Rg、Rhの各抵抗値は、ダイヤフラム部221の径方向の歪みに応じて変化する。例えば、上述した伸長部が、ある抵抗線パターンと重なるときには、その抵抗線パターンの抵抗値が増加する。また、上述した収縮部が、ある抵抗線パターンと重なるときには、その抵抗線パターンの抵抗値が低下する。
【0037】
図3の例では、収縮部が第1抵抗線パターンRa,Rcと重なるときには、伸長部が第1抵抗線パターンRb,Rdと重なる。また、伸長部が第1抵抗線パターンRa,Rcと重なるときには、収縮部が第1抵抗線パターンRb,Rdと重なる。したがって、第1ホイートストンブリッジ回路C1では、第1抵抗線パターンRa,Rcと、第1抵抗線パターンRb,Rdとが、逆向きの抵抗値変化を示す。
【0038】
また、
図3の例では、収縮部が第2抵抗線パターンRe,Rgと重なるときには、伸長部が第2抵抗線パターンRf,Rhと重なる。また、伸長部が第2抵抗線パターンRe,Rgと重なるときには、収縮部が第2抵抗線パターンRf,Rhと重なる。したがって、第2ホイートストンブリッジ回路C2では、第2抵抗線パターンRe,Rgと、第2抵抗線パターンRf,Rhとが、逆向きの抵抗値変化を示す。
【0039】
図8は、第1ホイートストンブリッジ回路C1の第1電圧計V1の計測値v1と、第2ホイートストンブリッジ回路C2の第2電圧計V2の計測値v2とを、示したグラフである。
図8のように、第1電圧計V1および第2電圧計V2からは、それぞれ、周期的に変化する正弦波状の計測値v1,v2が出力される。この計測値の周期Tは、上述した第1回転数の周期の1/2倍に相当する。また、第1電圧計V1の計測値の位相に対して、第2電圧計V2の計測値の位相が、第1回転数の1/8周期分(計測値v1,v2の1/4周期分)進んでいるか、それとも第1回転数の1/8周期分(計測値v1,v2の1/4周期分)遅れているかにより、入力される回転運動の向きを判断できる。
【0040】
したがって、これらの2つのホイートストンブリッジ回路C1,C2の出力値に基づいて、フレックスギア20に入力される回転運動の回転角度を検出することができる。具体的には、例えば、第1電圧計V1および第2電圧計V2の各計測値v1,v2の組み合わせと、回転角度とを対応づけた関数テーブルを予め用意し、その関数テーブルに計測値v1,v2を入力することにより、回転角度を出力すればよい。このように、本実施形態のトルク検出センサ40は、フレックスギア20に入力される回転運動の回転角度を検出する回転角度検出センサの機能を備えている。
【0041】
<2−3.トルク検出機能について>
トルク検出用抵抗線パターンP2は、フレックスギア20にかかるトルクを検出するためのパターンである。
図4に示すように、トルク検出用抵抗線パターンP2は、第3抵抗線パターンR3と、第4抵抗線パターンR4とを含む。
【0042】
第3抵抗線パターンR3は、1本の導体がジグザグに曲折しながら周方向に延びる、全体として円弧状または円環状のパターンである。本実施形態では、中心軸9の周囲の約360°の範囲に、第3抵抗線パターンR3が設けられている。また、第3抵抗線パターンR3は、複数の第3抵抗線r3を含む。複数の第3抵抗線r3は、互いに略平行な姿勢で、周方向に配列される。各第3抵抗線r3は、フレックスギア20の半径方向に対して、周方向一方側に傾斜している。半径方向に対する第3抵抗線r3の傾斜角度は、例えば45°とされる。周方向に隣り合う第3抵抗線r3の端部同士は、半径方向の内側または外側で交互に接続される。これにより、複数の第3抵抗線r3が、全体として直列に接続される。
【0043】
第4抵抗線パターンR4は、1本の導体がジグザグに曲折しながら周方向に延びる、全体として円弧状または円環状のパターンである。第4抵抗線パターンR4は、第3抵抗線パターンR3よりも、半径方向内側に位置する。本実施形態では、中心軸9の周囲の約360°の範囲に、第4抵抗線パターンR4が設けられている。また、第4抵抗線パターンR4は、複数の第4抵抗線r4を含む。複数の第4抵抗線r4は、互いに略平行な姿勢で、周方向に配列される。各第4抵抗線r4は、フレックスギア20の半径方向に対して、周方向他方側に傾斜している。半径方向に対する第4抵抗線r4の傾斜角度は、例えば45°とされる。周方向に隣り合う第4抵抗線r4の端部同士は、半径方向の内側または外側で交互に接続される。これにより、複数の第4抵抗線r4が、全体として直列に接続される。
【0044】
図9は、第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4を含む第3ホイートストンブリッジ回路Ctの回路図である。
図9に示すように、本実施形態の第3ホイートストンブリッジ回路Ctは、第3抵抗線パターンR3、第4抵抗線パターンR4、および2つの固定抵抗Rsを含む。第3抵抗線パターンR3と第4抵抗線パターンR4とは、直列に接続される。2つ固定抵抗Rsは、直列に接続される。そして、電源電圧の+極と−極との間において、2つ抵抗線パターンR3,R4の列と、2つの固定抵抗Rsの列とが、並列に接続される。また、第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4の中点M1と、2つの固定抵抗Rsの中点M2とが、第3電圧計Vtに接続される。
【0045】
第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4の各抵抗値は、フレックスギア20にかかるトルクに応じて変化する。例えば、フレックスギア20に、中心軸9を中心として、周方向の一方側へ向かうトルクがかかると、第3抵抗線パターンR3の抵抗値が低下し、第4抵抗線パターンR4の抵抗値が増加する。一方、フレックスギア20に、中心軸9を中心として、周方向の他方側へ向かうトルクがかかると、第3抵抗線パターンR3の抵抗値が増加し、第4抵抗線パターンR4の抵抗値が低下する。このように、第3抵抗線パターンR3と第4抵抗線パターンR4とは、トルクに対して互いに逆向きの抵抗値変化を示す。
【0046】
そして、第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4の各抵抗値が変化すると、第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4の中点M1と、2つの固定抵抗Rsの中点M2との間の電位差が変化するので、第3電圧計Vtの計測値vtが変化する。したがって、この第3電圧計Vtの計測値vtに基づいて、フレックスギア20にかかるトルクの向きおよび大きさを検出することができる。
【0047】
<2−4.リップル補正について>
ただし、動力伝達装置1の駆動時には、フレックスギア20に、周期的な撓み変形が生じる。したがって、第3電圧計Vtの計測値は、本来計測したいトルクを反映した成分と、フレックスギア20の周期的な撓み変形に起因する誤差成分(リップル)が含まれる。当該誤差成分は、フレックスギア20に入力される回転運動の回転角度に応じて変化する。
【0048】
そこで、信号処理回路P3は、第3電圧計Vtの計測値から、上記の誤差成分をキャンセルするための補正処理を行う。
図10は、信号処理回路P3の当該補正処理を、概念的に示した図である。
図10のように、信号処理回路P3には、第1電圧計V1、第2電圧計V2、および第3電圧計Vtの各計測値v1,v2,vtが入力される。信号処理回路P3は、まず、第1電圧計V1および第2電圧計V2の計測値v1,v2に基づいて、フレックスギア20に入力される回転運動の回転角度を検出する。そして、検出された回転角度に応じて、上述した誤差成分を推定する。その後、第3電圧計Vtの計測値vtを、推定された誤差成分を用いて補正する。その結果、フレックスギア20にかかるトルクを、より精度よく出力することができる。
【0049】
なお、信号処理回路P3は、上述した回転角度を演算することなく、第1電圧計V1および第2電圧計V2の各計測値v1,v2に所定の係数をかけて、第3電圧計Vtの計測値vtに合成してもよい。このようにすれば、回転角度の演算にかかる処理負担が削減されるため、信号処理回路P3の演算速度を向上させることができる。
【0050】
<2−5.温度補正について>
また、上述の通り、導体層43の材料に、銅または銅を含む合金を用いると、トルク検出センサ40の材料費を抑えることができる。ただし、他の高価な材料と比べて、銅の抵抗値は、環境温度により変化しやすい。そこで、本実施形態では、温度の影響を補正するために、トルク検出センサ40に温度検出用抵抗線パターンP4を設けている。
図4に示すように、温度検出用抵抗線パターンP4は、トルク検出用抵抗線パターンP2と同じ回路基板41の表面に配置されている。すなわち、表面側の導体層43が、温度検出用抵抗線パターンP4を含む。
【0051】
温度検出用抵抗線パターンP4は、フレックスギア20の周方向に沿って、円弧状または円環状に延びるパターンである。このため、周方向のトルクによる温度検出用抵抗線パターンP4の抵抗値の変化は、極めて小さい。したがって、温度検出用抵抗線パターンP4の抵抗値は、温度による変化が支配的となる。したがって、温度検出用抵抗線パターンP4の抵抗値を測定すれば、フレックスギア20の温度または環境温度を反映した信号を取得できる。
【0052】
信号処理回路P3は、第3電圧計Vtの計測値を、上記の回転角度だけではなく、温度検出用抵抗線パターンP4の抵抗値も考慮して、補正する。具体的には、第3電圧計Vtの計測値vtを、温度による変化をキャンセルする方向に増加または減少させる。このようにすれば、安価な銅または銅合金を使用しつつ、温度変化の影響を抑制して、フレックスギア20にかかるトルクを、より精度よく検出できる。
【0053】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態には限定されない。
【0054】
上記の実施形態では、第1抵抗線パターンR1に含まれる複数の第1抵抗線r1と、第2抵抗線パターンR2に含まれる複数の第2抵抗線r2とが、それぞれ、半径方向に延びていた。これは、ダイヤフラム部221の半径方向の周期的な変形を検出するためである。しかしながら、動力伝達装置1の駆動時には、ダイヤフラム部221は、半径方向だけではなく、周方向にも周期的に変形する。このため、
図11のように、第1抵抗線r1および第2抵抗線r2の向きは、周方向であってもよい。すなわち、第1抵抗線パターンR1に含まれる複数の第1抵抗線r1と、第2抵抗線パターンR2に含まれる複数の第2抵抗線r2とは、それぞれ、半径方向および周方向のいずれか一方向に延びていればよい。
【0055】
ただし、第1抵抗線r1および第2抵抗線r2の向きは、検出対象となる円形体に応じて、半径方向および周方向のうち、歪みが大きい向きとすることが望ましい。すなわち、検出対象となる円形体の半径方向の歪みが、周方向の歪みよりも大きい場合には、
図3のように、第1抵抗線r1および第2抵抗線r2の向きを、半径方向とすることが望ましい。逆に、検出対象となる円形体の半径方向の歪みが、周方向の歪みよりも小さい場合には、
図11のように、第1抵抗線r1および第2抵抗線r2の向きを、周方向とすることが望ましい。これにより、より大きい検出信号を得ることができる。したがって、より精度よく回転角度を検出できる。
【0056】
具体的には、上記の実施形態のように、フレックスギア20のダイヤフラム部221にトルク検出センサ40を取り付ける場合には、第1抵抗線r1および第2抵抗線r2の向きは、半径方向とすることが望ましい。また、フレックスギア20の円筒部や、インタナルギア10に、トルク検出センサ40を取り付ける場合には、第1抵抗線r1および第2抵抗線r2の向きは、周方向とすることが好ましい。
【0057】
また、上記の実施形態の回転角度検出用抵抗線パターンP1は、4つの第1抵抗線パターンR1と、4つの第2抵抗線パターンR2とを、含んでいた。しかしながら、回転角度検出用抵抗線パターンP1に含まれる第1抵抗線パターンR1および第2抵抗線パターンR2の数は、それぞれ4つ以外でもよい。
【0058】
また、回路基板41の導体層43は、回転角度検出用抵抗線パターンP1、トルク検出用抵抗線パターンP2、および温度検出用抵抗線パターンP4以外の抵抗線パターンを含んでいてもよい。例えば、導体層43に、フレックスギア20の軸方向の歪みを検出するための抵抗線パターンが、含まれていてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、信号処理回路P3が、回路基板41に実装されていた。しかしながら、信号処理回路P3は、回路基板41の外部に設けられていてもよい。
【0060】
また、上記の実施形態では、各抵抗線パターンの材料に、銅または銅を含む合金が使用されていた。しかしながら、抵抗線パターンの材料に、SUS、アルミニウム等の他の金属を用いてもよい。また、抵抗線パターンの材料に、セラミックスや樹脂などの非金属材を用いてもよい。また、抵抗線パターンの材料に、導電性インクを用いてもよい。導電性インクを用いる場合には、回路基板41の表面に、導電性インクで各抵抗線パターンをプリントすればよい。
【0061】
また、上記の実施形態のフレックスギア20では、ダイヤフラム部221が、筒状部21の基端部から半径方向外側へ向けて広がっていた。しかしながら、ダイヤフラム部221は、筒状部21の基端部から半径方向内側へ向けて広がるものであってもよい。
【0062】
また、上記の実施形態では、トルク検出の対象物が、フレックスギア20であった。しかしながら、上記実施形態と同等の構造を有するトルク検出センサ40を、フレックスギア20以外の円形体にかかるトルクを検出するために、用いてもよい。ただし、円形体は、入力される回転運動に応じて周期的に撓み変形するものであることが望ましい。
【0063】
例えば、太陽輪と、太陽輪の周囲において自転しながら公転する複数の遊星輪と、を有する遊星減速機において、複数の遊星輪が内接するリングに、本発明に係る回転角度検出センサまたはトルク検出センサを、取り付けてもよい。この場合、リングの円形の表面に、回路基板を固定すればよい。すなわち、本発明における円形体は、遊星減速機のリングであってもよい。
【0064】
その他、回転角度検出センサ、トルク検出センサ、および動力伝達装置の細部の構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更してもよい。また、上記の各実施形態および各変形例に登場した要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。