【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)組込み総合技術展&IoT総合技術展 ET&IoT Technology 2019での公開,令和1年11月20日〜22日
測定対象物2に接触させることによって測定対象物2の熱を検知する熱検知体10と、熱検知体10が検知した熱を測定対象物2の温度に対応した電気信号に変換する温度センサ素子20と、温度センサ素子20が実装された基板30と、一端部を基板30に接続され、温度センサ素子20が生成した電気信号を他端部から出力する出力ケーブル40と、熱検知体10、温度センサ素子20及び基板30の外側を覆うカバー50とを備えた温度センサモジュール1において、カバー50を、熱検知体10、温度センサ素子20及び基板30に対して密着状態で一体化された硬化性材料からなるものとした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のIC温度センサは、IC回路を用いるものであったため、基板がカバーで覆われたものであっても、堅牢性や防水性や耐腐食性に問題があるものが多かった。このため、従来のIC温度センサは、過酷な環境では使用しにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、堅牢性、防水性及び耐腐食性に優れ、過酷な環境での使用にも適した温度センサモジュールを提供するものである。また、この温度センサモジュールの製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
測定対象物に接触させることによって測定対象物の熱を検知する熱検知体と、
熱検知体が検知した熱を測定対象物の温度に対応した電気信号に変換する温度センサ素子と、
温度センサ素子が実装された基板と、
一端部を基板に接続され、温度センサ素子が生成した電気信号を他端部から出力する出力ケーブルと、
熱検知体、温度センサ素子及び基板の外側を覆うカバーと
を備えた温度センサモジュールであって、
カバーが、熱検知体、温度センサ素子及び基板に対して密着状態で一体化された硬化性材料からなる
ことを特徴とする温度センサモジュール
を提供することによって解決される。
【0008】
ここで、「硬化性材料」とは、流動状態(軟化状態)から硬化状態へと変化する材料のことをいう。硬化性材料としては、加熱すると軟化して冷却すると硬化するもの(熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等)や、逆に加熱すると硬化するもの(熱硬化性樹脂や熱硬化性エラストマー等)や、空気中の水分と反応して硬化するもの(縮合反応型のシリコーン樹脂等)や、水分が蒸発することで硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルション等)や、化学反応により硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルションや紫外線硬化樹脂等)等が例示される。
【0009】
本発明の温度センサモジュールのように、カバーを、熱検知体、温度センサ素子及び基板に対して密着状態で一体化された硬化性材料からなるものとすることによって、熱検知体や、温度センサ素子や、基板がカバーの内部でぐらつかないように固定するだけでなく、温度センサモジュールの剛性を高めることもできる。このため、温度センサモジュールの堅牢性を高めることができる。また、温度センサ素子等の部品をしっかりと封止した状態とすることもできる。したがって、温度センサモジュールの防水性や耐腐食性を高めることもできる。
【0010】
本発明の温度センサモジュールは、その製造方法を特に限定されるものではないが、
出力ケーブルの一端部を基板に接続した状態で、熱検知体、温度センサ素子及び基板を金型内に配置する部品配置工程と、
熱検知体、温度センサ素子及び基板が配置された金型内に、流動状態の硬化性材料を注入して硬化させる硬化性材料成形工程と
を経ることによって、
硬化後の前記硬化性材料が、熱検知体、温度センサ素子及び基板に対して密着状態で一体化されたカバーとなるようにすることが好ましい。
【0011】
これにより、本発明の温度センサモジュールを容易且つ低コストで製造することが可能になる。加えて、出力ケーブルと基板との接続部分を、硬化した硬化性材料で保護及び補強された状態とすることができる。したがって、温度センサモジュールの堅牢性や、防水性や、耐腐食性をさらに高めるだけでなく、出力ケーブルと基板との接触不良が生じにくくすることも可能になる。
【0012】
本発明の温度センサモジュールを上記のように製造する場合には、
部品配置工程において、熱検知体を、基板に対してはんだ付けされた状態で金型内に配置し、
硬化性材料成形工程において、前記硬化性材料を、前記はんだによる部品間の接合に損傷を与えない温度で金型内に注入する
ことが好ましい。これにより、熱検知体と基板とを熱的に良好に接触させながら、基板に対して熱検知体を強固に固定することが可能になる。加えて、はんだによる部品間の接合が損傷を受けないようにすることも可能になる。
【0013】
また、硬化性材料成形工程においては、前記硬化性材料を100MPa以下の圧力で金型内に流し込むことが好ましい。というのも、前記硬化性材料を、既存の射出成形機で金型内に注入すると、前記硬化性材料から受ける圧力(射出圧)によって、温度センサ素子等が破損したり、出力ケーブルが断線したり金型から飛び抜けたりする等、金型内の部品が損傷するおそれがあるところ、前記硬化性材料を低圧で金型に流し込んで成形することで、金型内の部品が高い圧力を受けないようにすることが可能になるからである。
【0014】
既に述べたように、前記硬化性材料としては、各種の材料を用いることができるが、これらの硬化性材料の多く(例えば熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等)は、高温の状態で金型内に注入される。このように、高温状態の硬化性材料を金型内に注入すると、硬化性材料の熱によって金型内の部品(温度センサ素子や基板等)が損傷するおそれがある。このため、硬化性材料成形工程は、温度センサ素子の表面、及び/又は、基板と出力ケーブルとを接続した部分の表面に、断熱シールを施した状態で行うことが好ましい。これにより、金型内の部品が熱による損傷を受けにくくすることが可能になるからである。
【0015】
さらにまた、硬化性材料成形工程においては、熱検知体が配置された側とは逆側から、前記硬化性材料を金型内に注入することが好ましい。というのも、熱検知体が配置された側から硬化性材料を注入すると、その硬化性樹脂からの圧力によって、基板が、熱検知体が配置されていない側に押されて金型の中心側に移動し、基板に固定された熱検知体も、金型の中心側に移動して、熱検知体の先端部(熱検知体における、カバーの外面から露出した状態に設けられる端部)が、カバーの内側に入り込んでしまうおそれがあるところ、熱検知体が配置された側とは逆側からから硬化性樹脂を注入することで、その不具合が生じないようにすることが可能になるからである。
【0016】
硬化性材料成形工程を行う際の金型の内面と基板の表面との隙間は、特に限定されないが、この隙間を狭くしすぎると、金型内に注入した硬化性材料がその隙間に入り込みにくくなり、金型内の全体に硬化性材料が行きわたらなくなるおそれがある。このため、硬化性材料成形工程を行う際の金型の内面と基板の表面との隙間(当該隙間が一様でない場合には、その最小値。以下同じ。)は、0.5mm以上とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、堅牢性、防水性及び耐腐食性に優れ、過酷な環境での使用にも適した温度センサモジュールを提供することが可能になる。また、この温度センサモジュールの製造方法を提供することも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.温度センサモジュールの概要
本発明の温度センサモジュールについて、図面を用いてより具体的に説明する。ただし、以下で述べる構成は、飽くまで好適な実施態様について説明したものである。本発明の温度センサモジュールの技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明の趣旨を損なわない限り、本発明の温度センサモジュールには、適宜変更を施すことができる。
【0020】
図1は、本発明の温度センサモジュール1で測定対象物2の温度を測定している様子を示した図である。この
図1では、温度センサモジュール1等を左右方向に垂直な平面(後掲する
図2のY
1−Y
1平面に相当する平面)で切断した断面図の状態で示している。
図2は、本発明の温度センサモジュール1を上方から見た状態を示した平面図である。この
図2では、温度センサモジュール1の内部を透視した状態で示しており、温度センサモジュール1のカバー50は、二点鎖線で表わしている。加えて、
図2では、基板30上に施される各パターンのうち、熱伝導を目的としたパターン(後述する熱伝導パターン34)のみを表わしており、電気信号の遣り取りを目的としたパターン(後述する信号出力用導電パターン)の図示を省略している。
図3は、本発明の温度センサモジュール1を前後方向に垂直な平面(
図2のX
1−X
1平面に相当する平面)で切断した状態を示した断面図である。
【0021】
図1〜3や、他の図面(後掲する
図4及び
図5)には、x軸、y軸及びz軸からなる座標系を示している。各図に示した座標系の向きは、異なる図面であっても共通としている。以下においては、x軸方向を「左右」方向と呼び、x軸方向正側を「左」側と呼び、x軸方向負側を「右」側と呼ぶことがある。また、y軸方向を「前後」方向と呼び、y軸方向正側を「後」側と呼び、y軸方向負側を「前」側と呼ぶことがある。さらに、z軸方向を「上下」方向と呼び、z軸方向正側を「上」側と呼び、z軸方向負側を「下」側と呼ぶことがある。しかし、これら方向を表わす語は、説明の便宜のために用いたものであり、本発明の温度センサモジュール1を使用する向き等を限定するものではない。
【0022】
本発明の温度センサモジュール1は、
図1に示すように、測定対象物2に接触させることによって、測定対象物2の温度を測定するものとなっている。本発明の温度センサモジュール1は、熱検知体10と、温度センサ素子20と、基板30と、出力ケーブル40と、カバー50とを備えている。この温度センサモジュール1は、その測定ヘッド部(カバー50で覆われた部分)を測定対象物2に宛がい、熱検知体10の基端面(
図1の下端面)を測定対象物2に接触させることによって、測定対象物2の温度を測定するものとなっている。
【0023】
熱検知体10が測定対象物2に接触すると、測定対象物2の熱が熱検知体10を通じて温度センサ素子20の感熱部21に伝わる。温度センサ素子20は、感熱部21で感知した熱を測定対象物2の温度に対応した電気信号に変換し、出力ケーブル40へと出力する。この出力ケーブル40には、通常、図示省略の外部機器3(温度測定ユニット等)が接続される。測定対象物2の温度は、外部機器3に設けられた温度出力部(液晶表示部や7セグ表示部等。図示省略。)を確認することによって把握することができる。測定対象物2の温度は、外部機器3等に設けた通信手段(無線通信装置等。図示省略。)によって、遠隔地にあるコンピュータ等に送信することもできる。外部機器3やそこから先の構成は、温度測定のアプリケーション等に応じて適宜決定される。
【0024】
従来の温度センサモジュールでは、本発明の温度センサモジュール1におけるカバー50に相当する部分(以下、従来の温度センサモジュールにおいても「カバー」と称する。)が、略一定の厚さを有する板状部分によって形成されており、カバーの内面と、カバーの内側に収容される内部部品(温度センサ素子や基板等)との間に、空間(隙間)が存在するようになっていた。換言すると、従来の温度センサモジュールにおけるカバーは、中空な構造を有していた。
【0025】
このため、従来の温度センサモジュールでは、カバーに衝撃が加わると、カバーの内側の部品(内部部品)が互いにぐらつきやすく、内部部品が破損等するおそれがあった。また、従来の温度センサモジュールでは、カバーが薄く、カバー自体の強度が低いため、カバーが割れるおそれもあった。さらに、カバーの外面に水や薬品が掛かったときには、その水や薬品がカバーの内側に進入し、内部部品の故障や腐食を招くおそれもあった。このように、従来の温度センサモジュールは、堅牢性や防水性や耐腐食性に難があり、過酷な環境では使用しにくいものとなっていた。
【0026】
これに対し、本発明の温度センサモジュール1では、
図1及び
図3に示すように、カバー50が、内部部品(熱検知体10や、温度センサ素子20や、基板30等)に対して密着状態で一体化された硬化性材料51によって形成されている。カバー50の内面と内部部品10,20,30の外面との間には、空間(隙間)が存在していない。すなわち、従来の温度センサモジュールでは存在していたカバー内の空間(隙間)が、カバー50を形成する硬化性材料51によって埋まった状態となっている。
【0027】
このため、本発明の温度センサモジュール1では、内部部品10,20,30が、互いにしっかりと位置決めされて、互いにぐらつかないように固定されている。加えて、カバー50が厚く、カバー50自体の剛性が高くなっている。したがって、カバー50が容易に割れないようになっている。よって、内部部品10,20,30を破損等から保護することができるようになっている。また、カバー50の外面に掛かった水や薬品等が、カバー50の内側における内部部品10,20,30のある場所まで到達しにくくなっている。以上の理由により、本発明の温度センサモジュール1は、堅牢性や防水性や耐腐食性に優れ、過酷な環境で使用することも可能なものとなっている。
【0028】
2.本発明の温度センサモジュールの製造方法
続いて、本発明の温度センサモジュール1の製造方法について説明する。本発明の温度センサモジュール1の製造方法は、特に限定されない。しかし、本発明の温度センサモジュール1を構成する各部材のうち、カバー50は、上述したように、内部部品10,20,30に対して密着状態で一体化された硬化性材料51からなるものとなっており、従来の温度センサモジュールにはない構造を有している。このため、本発明の温度センサモジュール1におけるカバー50の作り方について説明しておく。
【0029】
本発明の温度センサモジュール1において、カバー50は、例えば、
[1] 内部部品10,20,30を互いに固定する。
[2] 上記[1]で互いに固定された内部部品10,20,30の外側からペースト状の硬化性材料51を押し当てて、内部部品10,20,30の隙間をその硬化性材料51で埋める。
[3] 硬化性材料51の外面形状を整えてからその硬化性材料51を硬化させる、又は、硬化性材料51を硬化させてからその硬化性材料51の外面形状を調整する。
ことによって得ることができる。
【0030】
しかし、上記[1]〜[3]による方法は、量産化には向いていないし、上記[2]の際に硬化性材料51が押し当たった内部部品10,20,30が破損等するおそれもある。このため、本実施態様の製造方法では、以下で述べるように、部品配置工程と硬化性材料成形工程とを経ることによって、カバー50を形成している。
図4及び
図5は、温度センサモジュール1におけるカバー50を形成している様子を示した図であって、温度センサモジュール1及び金型4を左右方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図4は、後述する部品配置工程を終えたときの状態を、
図5は、後述する硬化性材料成形工程を終えたときの状態をそれぞれ示している。
【0031】
部品配置工程は、
図4に示すように、熱検知体10、温度センサ素子20及び基板30等の内部部品を金型4内(キャビティ)に配置する工程である。
【0032】
これらの内部部品10,20,30は、部品配置工程を行うよりも前に、予め互いに固定した状態とされる。すなわち、熱検知体10は、基板30に対して固定され、温度センサ素子20は、基板30に対して実装された状態とされている。本実施態様の製造方法では、
図3に示すように、基板30に設けた熱検知体取付孔31に対して熱検知体10の基端部(上端部)を挿通状態で取り付け、熱検知体10の基端面(上端面)と基板30との境界部分にはんだ61を施すことによって、熱検知体10を基板30に固定している。また、温度センサ素子20は、基板30の上面に施したはんだ62を介して基板30に固定している。これにより、熱検知体10及び温度センサ素子20を基板30に対して熱的に良好に接触させながら強固に固定することができる。
【0033】
加えて、本実施態様の製造方法では、部品配置工程を行うよりも前に、出力ケーブル40の一端部も、基板30に接続している。具体的には、出力ケーブル40の一端側は、
図2に示すように、通常、複数本の信号線41に分岐されているが、これら複数本の信号線41を、基板30の複数個所に設けられたケーブル接続部32にそれぞれ接続している。本実施態様の製造方法において、信号線41は、はんだ付けによってケーブル接続部32に接続している。これにより、出力ケーブル40を基板30に対して熱的に良好に接触させながら強固に固定することができる。
【0034】
内部部品10,20,30を配置する金型4は、通常、複数の金型に分離可能な構造を有している。
図4に示す例では、金型4を、下型4aと上型4bとに分離可能な構造としている。内部部品10,20,30を配置する空間(キャビティ)は、下型4aに形成されている。この下型4aには、出力ケーブル40を通すための出力ケーブル挿通孔4cが設けられている。一方、上型4bは、下型4aに蓋をするためのものとなっている。部品配置工程は、下型4aから上型4bを分離した状態で行う。
【0035】
部品配置工程を行う際には、内部部品10,20,30を金型4内で位置決めしておくことが好ましい。というのも、金型4内には、後述する硬化性材料成形工程において、硬化性材料51(
図5)が注入されるところ、金型4に対して内部部品10,20,30を位置決めしておかないと、金型4内に注入された硬化性材料51が、内部部品10,20,30を押して動かしてしまい、熱検知体10や基板30が正規の位置からずれた状態で硬化性材料51が硬化してしまうからである。
【0036】
この点、本実施態様の製造方法では、
図2に示すように、基板30の四隅部に位置決め孔33を設けており、金型4に固定した位置決め用軸体(図示省略)を位置決め孔33に通すことで、内部部品10,20,30の位置決めを行っている。ただし、後述する硬化性材料成形工程を終えて、型抜きを行う際(金型4内から温度センサモジュール1の測定ヘッド部を取り外す際)に、上記の位置決め用軸体が金型4側に残るようにすると、カバー50における、上記の位置決め用軸体が存在していた箇所には、孔(以下、「残存孔」と呼ぶことがある。)が形成されてしまう。
【0037】
上記の残存孔は、温度センサモジュール1の測定ヘッド部の型抜きを行った後に、カバー50を形成するのに用いたものと同じ硬化性材料51や、他の硬化性材料を充填することによって、埋めることができる。また、型抜きの際に、上記の位置決め用軸体が、カバー50側についていくようにし、その位置決め用軸体をカバー50の内部に埋め殺すようにすると、残存孔が形成されないようにすることができる。
【0038】
ところで、部品配置工程において、
図4に示す金型4の内面(キャビティ側の面)と基板30の表面との隙間を狭くしすぎると、後述する硬化性材料成形工程で金型4内に硬化性材料51を注入する際に、当該隙間に硬化性材料51が入り込みにくくなるおそれがある。このため、金型4の内面と基板30の表面との隙間(当該隙間が一様でない場合には、その最小値。以下同じ。)は、0.5mm以上とすることが好ましい。金型4の内面と基板30の表面との隙間は、1mm以上とすることがより好ましく、1.5mm以上とすることがさらに好ましく、2mm以上とすることが特に好ましい。
【0039】
ただし、金型4の内面と基板30の表面との隙間を広くしすぎると、必然的に、温度センサモジュール1の寸法(カバー50の外形寸法)が大きくなり、温度センサモジュール1を取り扱いにくくなるおそれがある。また、温度センサモジュール1の製造コストが増大するおそれもある。さらに、カバー50の外面と温度センサ素子20とを熱的に接触させる熱検知体10も長く形成する必要が生じ、熱検知体10の熱容量が大きくなって、温度センサモジュール1の応答性能が悪くなるおそれもある。このため、金型4の内面と基板30の表面との隙間は、20mm以下とすることが好ましい。金型4の内面と基板30の表面との隙間は、15mm以下とすることがより好ましく、10mm以下とすることがさらに好ましい。本実施態様の製造方法において、金型4の内面と基板30の表面との隙間は、約2mmに設定している。
【0040】
部品配置工程を終えると、続いて、硬化性材料成形工程を行う。硬化性材料成形工程は、
図5に示すように、金型4内(キャビティ)に、流動状態の硬化性材料51を注入し、その硬化性材料51を金型4内で硬化させる工程である。この硬化性材料成形工程は、金型4を締めた状態(下型4aに対して上型4bを閉じた状態)で行う。
【0041】
本実施態様の製造方法において、金型4内への硬化性材料51の注入は、金型4に設けた硬化性材料注入孔4dを通じて行うようにしている。このときの硬化性材料51は、完全溶融状態(液相のみとなった状態。硬化性材料51に繊維等を添加する際には、その添加物を除いた部分が液相となっていればよい。)としている。金型4内に注入された硬化性材料51は、金型4内に行き渡り、金型4の内面と内部部品10,20,30の外面との間(隙間)を埋める。本実施態様の製造方法においては、出力ケーブル40と基板30との接続部分(ケーブル接続部32)も、金型4内に配したため、当該接続部分の周囲も、硬化性材料51で覆われるようになっている。
【0042】
硬化性材料51は、既存の射出成形機におけるスクリュー等で加圧(通常、100MPa以上の射出圧となる。)しながら金型4内に注入してもよいが、この場合には、金型4内の内部部品10,20,30が硬化性材料51から受ける圧力が高くなり過ぎ、金型4内で内部部品10,20,30が動いたり、損傷したりするおそれがある。このため、本実施態様の製造方法では、硬化性材料51を、100MPa以下の圧力で、硬化性材料注入孔4dから金型4内に流し込むようにしている。換言すると、硬化性材料注入孔4dから金型4内に向かって、硬化性材料51を略重力のみで落下させるようにしている。したがって、硬化性材料注入孔4dは、下型4aではなく、上型4bに下向きに設けている。これにより、金型4内の内部部品10,20,30が硬化性材料51から過剰な圧力を受けないようにすることが可能となっている。
【0043】
金型4内に注入するときの硬化性材料51の圧力は、50MPa以下とすることが好ましく、10MPa以下とすることがより好ましく、5MPa以下とすることがさらに好ましい。本実施態様の製造方法では、金型4内に注入するときの硬化性材料51の圧力を3MPa程度としている。既に述べたように、本実施態様の製造方法では、硬化性材料51を完全溶融状態で金型4内に注入するようにしたため、このような低圧で注入しても、硬化性材料51を金型4内に行き渡らせることが可能となっている。硬化性材料51を金型4内に注入した後は、通常、硬化性材料41が硬化性材料注入孔4dへ逆流しないように、保圧されるが、このときの保圧の圧力も、低めに抑えることができる。本実施態様の製造方法では、金型4内で硬化性材料51が収縮等した分に相当する量の硬化性材料51だけが金型4内に注入されるようにしている。
【0044】
熱検知体10が下側となる状態で金型4内に内部部品10,20,30を配置した本実施態様の製造方法においては、上記のように、上型4bに設けた硬化性材料注入孔4dから硬化性材料51を下向きに注入することによって、上記の効果(内部部品10,20,30が硬化性材料51から過剰な圧力を受けないようにするという効果)だけでなく、以下の効果も期待することができる。
【0045】
すなわち、仮に、下型4a側から上向きに硬化性材料51を注入すると、その硬化性材料51からの圧力によって、金型4内の内部部品10,20,30が上側に持ち上げられてしまい、熱検知体10の先端面(下端面)が金型4の内底面から浮き上がるおそれがある。この場合には、熱検知体10の下端面と金型4の内底面との間に硬化性材料51が入り込んだ状態で硬化し、熱検知体10の下端面がカバー50の外部に露出しなくなるおそれもある。これに対し、上述したように、上型4b側から下向きに硬化性材料51を注入すると、注入された硬化性材料51によって内部部品10,20,30が下側に押し付けられるようになるため、熱検知体10の先端面(下端面)が金型4の内底面から浮き上がらないようにし、上記の不具合の発生を防止することができる。
【0046】
ところで、本実施態様の製造方法では、後述するように、硬化性材料51として、熱可塑性樹脂であるポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いるところ、熱可塑性樹脂からなる硬化性材料51を、金型4内に注入可能な流動状態とするためには、硬化性材料51を融点以上となるまで加熱する必要がある。このため、硬化性材料51は、加熱された状態で金型4内に注入される。しかし、本実施態様の製造方法では、上述したように、基板30に対する、熱検知体10や、温度センサ素子20や、出力ケーブル40の固定に、はんだを用いた。このため、硬化性材料51の温度が高いと、そのはんだ(以下においては「固定用はんだ」と呼ぶことがある。)が溶けるおそれがある。
【0047】
この点、本実施態様の製造方法では、硬化性材料51を、上記の固定用はんだを溶かさない温度で金型4内に注入するようにしている。しかし、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の融点は、232〜267℃であるのに対して、一般的なはんだの融点は、200℃前後である。このため、上記の固定用はんだとして、一般的なはんだを用いたのでは、硬化性材料51を注入すると、はんだが溶けるおそれがある。したがって、固定用はんだとしては、融点の高い「高融点はんだ」を使用してもよい。高融点はんだの中には、融点が250℃以上のものや、300℃以上のものもある。ただし、硬化性材料51は、金型4内に注入すると、金型4等に熱を奪われて温度が低下する。このため、金型4内に注入する直前の硬化性材料51の温度を、固定用はんだの融点よりもある程度は高くしても、固定用はんだは溶けない。
【0048】
また、以下の構成を採用すれば、上記の固定用はんだをさらに溶けにくくすることができる。すなわち、熱検知体10の基端部の表面や、温度センサ素子20の表面や、基板30と出力ケーブル40との接続部分(ケーブル説z区部32)の表面に、断熱シールを施す方法である。この断熱シールに使用するシーリング材(断熱用シーリング材)は、断熱性及び電気絶縁性を有するものであれば、特に限定されないが、シリコーン系シーリング材等を好適に用いることができる。断熱用シーリング材に、断熱性だけでなく、電気絶縁性も要求する理由は、断熱用シーリング材が電気絶縁性を有していないと、基板30上の回路(後述する信号出力用導電パターン)が断熱用シーリング材によって短絡するおそれがあるからである。断熱用シーリング材を施工すると、それが施工された箇所を補強できる(例えば、出力ケーブル40の引き抜きに対する強度を高めることができる等)という副次的な効果も奏される。
【0049】
金型4内への硬化性材料51の注入を終えると、金型4内で硬化性材料51を硬化させる。硬化性材料51を硬化させる方法は、使用する硬化性材料51の種類等によって異なる。硬化性材料51としては、[1]冷却すると硬化するもの(熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等)や、[2]加熱すると硬化するもの(熱硬化性樹脂や熱硬化性エラストマー等)や、[3]空気中の水分と反応して硬化するもの(縮合反応型のシリコーン樹脂等)や、[4]水分が蒸発することで硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルション等)や、[5]化学反応により硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルションや紫外線硬化樹脂等)等を用いることができる。
【0050】
この点、硬化性材料51として上記[1]のものを用いた場合には、硬化性材料51を自然冷却することや、又は冷却手段等を用いて硬化性材料51を積極的に冷却することで、硬化性材料51を硬化させることができる。また、硬化性材料51として上記[2]のものを用いた場合には、硬化性材料51の温度を高めることで、硬化性材料51を硬化させることができる。さらに、硬化性材料51として上記[3]のものを用いた場合には、硬化性材料51を空気にしばらく接触させることで、硬化性材料51を硬化させることができる。さらにまた、硬化性材料51として上記[4]のものを用いた場合には、硬化性材料51内の水分が自然と蒸発するまで放置する、又は、硬化性材料51を乾燥する等して硬化性材料51内の水分を積極的に蒸発させることで、硬化性材料51を硬化させることができる。そして、硬化性材料51として上記[5]のものを用いた場合には、化学反応が開始される状態となってから当該化学反応が終わるまで硬化性材料51をその状態に保つことで、硬化性材料51を硬化させることができる。
【0051】
ただし、硬化性材料51として、熱伝導率の高いものを使用とすると、カバー50が熱を伝えやすくなり、熱検知体10以外の経路で温度センサ素子20に熱が伝わるようになる。このため、温度センサモジュール1による温度の測定精度が低下するおそれがある。したがって、硬化性材料51としては、熱伝導率の低い(断熱性の高い)材料を選択することが好ましい。断熱性の高い材料としては、樹脂やエラストマー(ゴムを含む。)等が挙げられる。
【0052】
ここで、硬化性材料51の成形性や、取り扱いやすさや、熱に対する変形のしにくさ等を考慮すると、硬化性材料51として熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリエチレン(PE)や、ポリプロピレン(PP)や、ポリ塩化ビニル(PVC)や、ポリスチレン(PS)等が例示される。ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリカーボネート(PC)等のエンジニアリングプラスチックや、芳香族ポリアミド(PPA)やポリフェニレンスルファイド(PPS)等のスーパーエンジニアリングプラスチックを採用することもできる。本実施態様の製造方法においては、これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を硬化性材料51として用いている。ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、耐熱性に優れるだけでなく、耐水性や耐薬品性にも優れるという利点を有している。
【0053】
硬化性材料51が硬化すると、硬化性材料成形工程が完了する。硬化性材料成形工程を終えた後は、金型4を開いて(下型4aから上型4bを分離して)、金型4内の温度センサモジュール1を取り出す。これにより、内部部品10,20,30に対して密着状態で一体化されたカバー50(硬化後の硬化性材料51)を有する温度センサモジュール1を得ることができる。このカバー50は、[1]内部部品10,20,30のぐらつきを防止する、[2]温度センサモジュール1の剛性を高める、[3]内部部品10,20,30を封止する、という機能を発揮する。
【0054】
3.熱検知体
図3に示した熱検知体10は、それを接触させた測定対象物2の熱を温度センサ素子20に伝えるものとなっている。熱検知体10の先端面(下端面)は、カバー50から外部に露出された状態とされる。一方、熱検知体10の基端(上端)側は、温度センサ素子20の感熱部21に対して熱的に接続された状態とされる。本実施態様の温度センサモジュール1においては、熱検知体10の基端側を基板30に接続している。このため、熱検知体10の基端側は、この基板30を介して、温度センサ素子20の感熱部21に対して熱的に接続された状態となっている。
【0055】
熱検知体10は、1つの温度センサモジュール1につき、1箇所のみに設けてもよいが、複数個所に設けることが好ましい。これにより、測定対象物2の熱を温度センサ素子20に伝える経路を増やして、温度センサモジュール1の測定精度を高めることが可能になる。また、温度センサモジュール1の冗長性を高めることもできる。すなわち、万が一、一の熱検知体10に汚れ等が付着して、当該一の熱検知体10が機能を発揮できなくなった場合であっても、他の熱検知体10でその機能を補うことが可能になる。本実施態様の温度センサモジュール1においては、2個の熱検知体10を、左右方向(x軸方向)に所定間隔を隔てた状態に設けている。それぞれの熱検知体10は、温度センサ素子20から見て対称に配置している。
【0056】
熱検知体10の素材は、熱伝導性に優れたものが選択される。熱伝導性に優れた素材としては、金属が一般的である。熱検知体10として採用し得る金属としては、錫(20℃における熱伝導率が約65W・m
−1・K
−1)や、鉄(同熱伝導率が約73W・m
−1・K
−1)や、クロム(同熱伝導率が約90W・m
−1・K
−1)や、タングステン(同熱伝導率が約198W・m
−1・K
−1)や、アルミニウム(同熱伝導率が約204W・m
−1・K
−1)や、金(同熱伝導率が約295W・m
−1・K
−1)や、銅(同熱伝導率が約380W・m
−1・K
−1)や、銀(同熱伝導率が約418W・m
−1・K
−1)や、これらの合金等が例示される。熱検知体10の表面(特にカバー50から外部に露出する熱検知体10の基端面)には、ニッケルメッキ等、耐腐食用表面処理を施すこともできる。
【0057】
熱検知体10の寸法は、温度センサモジュール1の用途によっても異なり、特に限定されない。しかし、熱検知体10の断面積(伝熱方向(
図1における上下方向)に垂直な断面の面積。以下同じ。)が小さいと、測定対象物2から温度センサ素子20に熱が伝わりにくくなり、測定対象物2の温度の測定精度が低下するおそれがある。このため、熱検知体10は、ある程度断面積を広く確保できる形態とされる。温度センサモジュール1を小型のもの(手で取り扱うことができる程度の寸法のもの)とする場合でも、熱検知体10の断面積は、1mm
2以上確保することが好ましい。熱検知体10の断面積は、5mm
2以上とすることがより好ましく、10mm
2以上とすることがさらに好ましい。
【0058】
ただし、熱検知体10の断面積を大きくしすぎると、熱検知体10の熱容量が大きくなり、温度センサモジュール1の応答性能が悪くなるおそれがある。また、温度センサモジュール1の寸法を大きくする必要も生じる。さらに、熱検知体10の単価が高くなって、温度センサモジュール1が高価になるおそれもある。このため、温度センサモジュール1を小型のもの(手で取り扱うことができる程度の寸法のもの)とする場合には、熱検知体10の断面積は、100mm
2以下に抑えることが好ましい。温度センサモジュール1の断面積は、70mm
2以下とすることがより好ましく、50mm
2以下とすることがさらに好ましい。
【0059】
熱検知体10の長さ(伝熱方向(
図1における上下方向)に平行な方向の長さ。以下同じ。)も、特に限定されない。しかし、被検知体4を短くしすぎると、
図5に示すように、金型4内に内部部品10,20,30を配置した際に、金型4の内底面と基板30の下面との隙間が狭くなってしまう。このため、カバー50(
図5)の外面から温度センサ素子20の感熱部21までの距離が短くなり、温度センサ素子20がカバー50の外部温度の影響(ノイズ)を受けやすくなるおそれがある。また、上記の硬化性材料成形工程において金型4内に硬化性材料51を注入する際に、金型4の内底面と基板30の下面との隙間に硬化性材料51が入り込みにくくなるおそれもある。このため、温度センサモジュール1を小型のもの(手で取り扱うことができる程度の寸法のもの)とする場合でも、熱検知体10の長さは、1mm以上とすることが好ましい。熱検知体10の長さは、1.5mm以上とすることがより好ましく、2mm以上とすることがさらに好ましい。
【0060】
ただし、熱検知体10を長くしすぎると、熱検知体10の熱容量が大きくなり、温度センサモジュール1の応答性能が悪くなるおそれがある。また、温度センサモジュール1の寸法を大きくする必要も生じる。このため、温度センサモジュール1を小型のもの(手で取り扱うことができる程度の寸法のもの)とする場合には、熱検知体10の長さは、20mm以下とすることが好ましい。熱検知体10の長さは、15mm以下とすることがより好ましく、10mm以下とすることがさらに好ましい。本実施態様の温度センサモジュール1において、熱検知体10は、長さが2mmで半径も2mmの円柱部材となっている。
【0061】
4.温度センサ素子
温度センサ素子20は、測定対象物2(
図1)から熱検知体10を介して伝わってきた熱を感知するための感熱部21を裏面(下面)側に備えており、その感熱部21が感知した熱を、測定対象物2の温度に対応した電気信号に変換するものとなっている。温度センサ素子20は、基板30に実装可能な基板取付型のものが使用される。
【0062】
温度センサ素子20は、測定対象物2の温度に対応した電気信号を、アナログ信号(4−20mAや、0−12V等)として出力するものであってもよいが、デジタル信号として出力するものであることが好ましい。これにより、温度センサ素子20からの出力される上記の電気信号が、ノイズによる影響を受けないようにすることができる。本実施態様の温度センサモジュール1においても、温度センサ素子20は、上記の電気信号をデジタル信号として出力するものとなっている。
【0063】
温度センサ素子20の消費電力は、特に限定されない。しかし、温度センサ素子20の消費電力が大きすぎると、温度センサ素子20からの発熱が多くなり、その熱が測定対象物2の温度の測定精度に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、温度センサ素子20は、消費電力が0.1W以下のものを使用することが好ましい。温度センサ素子20の消費電力は、0.05W以下であることがより好ましく、0.01W以下であることがさらに好ましい。
【0064】
5.基板
基板30は、
図2に示すように、温度センサ素子20を実装するためのものとなっている。本実施態様の温度センサモジュール1においては、熱検知体10を取り付けるための熱検知体取付孔31と、出力ケーブル40を接続するためのケーブル接続部32も、基板30に設けている。この基板30における熱検知体取付孔31が設けられた箇所と、温度センサ素子20が実装される箇所は、熱伝導パターン34(
図2において網掛けハッチングで示した部分)によって互いに連結されている。このため、熱検知体10を介して測定対象物2(
図1)から伝わってきた熱を、熱伝導パターン34を通じて温度センサ素子20の感熱部21に伝えることができるようになっている。熱伝導パターン34は、通常、熱伝導率の高い金属膜によって形成される。本実施態様の温度センサモジュール1では、熱伝導パターン34を銅によって形成している。
【0065】
本実施態様の温度センサモジュール1において、基板30における熱検知体取付孔31が設けられた箇所と温度センサ素子20が実装される箇所とを連結する熱伝導パターン34は、
図3に示すように、基板30のウラ面(温度センサ素子20が実装される面とは逆側の面)にも設けている。加えて、基板30における、温度センサ素子20と重なる箇所には、熱伝導孔35を貫通して設けている。この熱伝導孔35及び熱検知体取付孔31は、その内周面にも熱伝導パターン34が施されている。このため、測定対象物2(
図1)の熱は、熱検知体10及び熱伝導パターン34を通じて、基板30のオモテ面(温度センサ素子20が実装される面)側からだけでなくウラ面側からも、温度センサ素子20に伝わるようになっている。これにより、測定対象物2から温度センサ素子20に熱が伝わりやすくして、温度センサモジュール1の応答性能や測定精度をさらに高めることが可能となっている。
【0066】
また、基板30における、温度センサ素子20が実装される箇所と、ケーブル接続部32(
図2)も、図示省略の導電パターンによって互いに連結されている。このため、温度センサ素子20が生成した電気信号(測定対象物2の温度に対応した電気信号)は、その導電パターンを通じて、ケーブル接続部32に接続された出力ケーブル40に出力することができるようになっている。基板30における、温度センサ素子20が実装される箇所と、ケーブル接続部32とを連結する導電パターン(以下において「信号出力用導電パターン」と呼ぶことがある。)は、通常、電気伝導度の高い金属膜によって形成される。本実施態様の温度センサモジュール1では、信号出力用導電パターンを銅によって形成している。
【0067】
上記の信号出力用導電パターンは、その幅を狭く形成することが好ましい。というのも、信号出力用導電パターンの幅を広くすると、測定対象物2から熱検知体10を通じて温度センサ素子20に伝わってきた熱が、信号出力用導電パターンを通じて出力ケーブル40に逃げやすくなり、温度センサモジュール1の測定精度に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。この点、本実施態様の温度センサモジュール1では、上記のように、信号出力用導電パターンを流れる電気信号(測定対象物2の温度に対応した電気信号)をデジタル信号としたため、信号出力用導電パターンの幅を狭くして、その電気信号が多少劣化したとしても、伝えられる情報には影響が出ない。信号出力用導電パターンの幅は、0.5mm以下とすることが好ましく、0.3mm以下とすることがより好ましく、0.2mm以下とすることがさらに好ましい。信号出力用導電パターンの幅は、その下限を特に限定されるものではないが、通常、0.05mm以上とされる。
【0068】
基板30の素材は、電子基板等で一般的に用いられるものであれば、特に限定されないが、熱伝導率が低く、熱拡散が生じにくじものを選択することが好ましい。これにより、温度センサ素子20の感熱部21に伝わるべき熱が他に逃げたり、感熱部21に伝わってはならない熱が感熱部21に伝わったりしないようにして、温度センサモジュール1の測定精度を高めることが可能になる。本実施態様の温度センサモジュール1においては、ガラス繊維製の布にエポキシ樹脂を含侵させたガラスエポキシ基板を、基板30として用いている。