【解決手段】アンダーフィル材は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、アクリルポリマーと、無機フィラーとを含有し、硬化後の25℃における貯蔵弾性率が2.4〜3.6GPaであり、硬化後の170℃における貯蔵弾性率が70〜800MPaであり、硬化後の25〜250℃の貯蔵弾性率の積分値が1.5×10
当該アンダーフィル材中のエポキシ樹脂の含有量の合計に対する、常温で液状のエポキシ樹脂の含有量の合計が55質量%以上である、請求項2〜6のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<アンダーフィル材>
本実施の形態に係るアンダーフィル材は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、アクリルポリマーと、無機フィラーとを含有する。また、アンダーフィル材は、硬化後の25℃における貯蔵弾性率が2.4〜3.6GPaであり、硬化後の170℃における貯蔵弾性率が70〜800MPaであり、硬化後の25〜250℃の貯蔵弾性率の積分値が1.5×10
11〜3.2×10
11であり、100℃における溶融粘度が10000Pa・s以下である。
【0012】
アンダーフィル材は、硬化後の25〜250℃の貯蔵弾性率の積分値が1.5×10
11〜3.2×10
11である。半導体チップをCOW方式で積層実装後、半導体ウエハに反りを生じさせる要因として、アンダーフィル材の弾性率、硬化収縮、線膨張などが考えられ、高弾性のアンダーフィル材が、高い硬化収縮率で硬化し、高温で硬化後に冷却させると高い線膨張率でさらにアンダーフィル材が収縮し、半導体ウエハに反りが生じると考えられる。本技術では、半導体チップを積層実装した後の半導体ウエハの反りを抑制することに着目して、アンダーフィル材を高温(250℃程度)で硬化させた状態から、硬化したアンダーフィル材の温度が室温(25℃程度)に戻る過程の弾性率の推移、すなわち、アンダーフィル材の硬化後の25〜250℃の貯蔵弾性率の積分値が1.5×10
11〜3.2×10
11であることを規定した。アンダーフィル材は、硬化後の25〜250℃の貯蔵弾性率の積分値が1.5×10
11以上であることにより、半導体チップを積層実装する際の接続信頼性を良好にできる。また、アンダーフィル材は、硬化後の25〜250℃の貯蔵弾性率の積分値が3.2×10
11以下であることにより、積層実装後の半導体ウエハの反りを抑制できる。特に、半導体ウエハの反りをより効果的に抑制するために、アンダーフィル材は、硬化後の25〜250℃の貯蔵弾性率の積分値が1.5×10
11〜3.0×10
11であることが好ましい。
【0013】
アンダーフィル材は、硬化後の25℃における貯蔵弾性率が2.4〜3.6GPaである。アンダーフィル材は、硬化後の25℃における貯蔵弾性率が2.4GPa以上であることにより、半導体チップを積層実装する際の接続信頼性を良好にできる。また、アンダーフィル材は、硬化後の25℃における貯蔵弾性率が3.6GPa以下であることにより、積層実装後の半導体ウエハの反りを抑制できる。特に、半導体ウエハの反りをより効果的に抑制するために、アンダーフィル材は、硬化後の25℃における貯蔵弾性率が2.4〜3.0GPaであることが好ましい。
【0014】
アンダーフィル材は、硬化後の170℃における貯蔵弾性率が70〜800MPaである。アンダーフィル材は、硬化後の170℃における貯蔵弾性率が70MPa以上であることにより、半導体チップを積層実装する際の接続信頼性を良好にすることができる。また、アンダーフィル材の硬化後の170℃における貯蔵弾性率が800MPa以下であることにより、半導体チップを積層実装後の半導体ウエハの反りを抑制できる。
【0015】
アンダーフィル材は、100℃における溶融粘度が10000Pa・s以下である。アンダーフィル材の100℃における溶融粘度は、半導体チップを積層実装する際の実装荷重に影響する。アンダーフィル材の100℃における溶融粘度が10000Pa・s以下であることにより、半導体チップを積層実装する際の実装荷重の増大を抑制できる。特に、半導体チップを積層実装する際の実装荷重の増大をより効果的に抑制するために、アンダーフィル材の100℃における溶融粘度は9000Pa・s以下が好ましく、8500Pa・s以下がより好ましい。また、アンダーフィル材の100℃における溶融粘度の下限値は特に限定されないが、例えば7000Pa・s以上とすることができ、8000Pa・s以上であってもよい。
【0016】
半導体チップをCOW方式で積層実装する際、ウエハサポートシステムが用いられることがある。ウエハサポートシステムは、半導体ウエハの裏面バンプ(半田付き電極)を保護するための手法である。ウエハサポートシステムを用いる場合、サポート基板に仮貼材を介して固定された半導体ウエハに半導体チップを実装する。例えば、サポート基板の一方の面に仮貼材としての接着剤を塗布して接着層を形成し、この接着層に半導体ウエハの裏面バンプを接着させる場合、半導体ウエハの裏面バンプを保護する接着層は、実装後に剥離するため比較的柔らかい組成が用いられる。この場合、半導体チップの積層実装が高荷重で行われると、高温による接着剤層の軟化とともに、接着層で保護していた半導体ウエハの裏面バンプの半田が流れ出してしまうおそれがある。そこで、アンダーフィル材の最低溶融粘度時の温度を140℃以上とすることにより、半導体チップを積層実装する際の実装荷重の増大を抑制して、半導体ウエハの裏面バンプの半田の流れ出しを防止することができる。アンダーフィル材の最低溶融粘度時の温度の上限は、特に限定されず、例えば170℃以下とすることができる。
【0017】
次に、上述したアンダーフィル材の物性を奏するためのアンダーフィル材の組成の具体例について説明する。アンダーフィル材は、上述のように、エポキシ樹脂と、硬化剤と、アクリルポリマーと、無機フィラーとを含有する。
【0018】
[エポキシ樹脂]
アンダーフィル材は、エポキシ樹脂として、少なくとも常温で液状のエポキシ樹脂を含む。常温で液状のエポキシ樹脂を用いることにより、半導体チップを積層実装する際の実装荷重の増大を抑制することができる。また、常温で液状のエポキシ樹脂は、上述した硬化後のアンダーフィル材の貯蔵弾性率に調整する目的から、硬化後に低弾性のものが好ましい。常温で液状のエポキシ樹脂は、例えば、エポキシ当量が300〜500g/eqであることが好ましい。また、常温で液状のエポキシ樹脂は、柔軟性骨格、例えば、エチレンオキシド(EO)変性骨格、プロピレンオキシド(PO)変性骨格などを有することが好ましい。常温で液状のエポキシ樹脂としては、ポリエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などを用いることができる。常温で液状のエポキシ樹脂の具体例としては、AER−9000(旭化成イーマテリアルズ社製、エポキシ当量380g/eq)、EXA−4850−1000(DIC社製、エポキシ当量350g/eq)、EXA−4850−150(DIC社製、エポキシ当量450g/eq)、EXA−4816(DIC社製、エポキシ当量403g/eq)、EP−4010S(ADEKA社製、エポキシ当量350g/eq)、EP−4010L(ADEKA社製、エポキシ当量350g/eq)、EP−4003S(ADEKA社製、エポキシ当量470g/eq)などが挙げられる。常温で液体のエポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、「常温」とは、JIS K 0050:2005(化学分析方法通則)に規定される15〜25℃の範囲をいう。
【0019】
また、アンダーフィル材は、エポキシ樹脂として、常温で固体のエポキシ樹脂をさらに含んでもよい。常温で固体のエポキシ樹脂としては、高接着性、耐熱性の点から、エポキシ基を3つ以上有する多官能エポキシ樹脂を用いることが好ましい。3官能エポキシ樹脂としてはトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)プロパン型エポキシ樹脂などが挙げられる。4官能エポキシ化合物としては、テトラキス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)プロパン型エポキシ樹脂などが挙げられる。常温で固体のエポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
アンダーフィル材中、常温で液状のエポキシ樹脂の含有量の合計は、22〜27質量%が好ましい。また、アンダーフィル材中、常温で固体のエポキシ樹脂の含有量の合計は、10〜15質量%が好ましい。また、アンダーフィル材中、エポキシ樹脂の含有量の合計に対する、常温で液状のエポキシ樹脂の含有量の合計は、55質量%以上が好ましく、61質量%以上がより好ましい。また、アンダーフィル材中、エポキシ樹脂の含有量の合計は、30〜50質量%が好ましく、32〜39質量%がより好ましく、34〜39質量%がさらに好ましい。
【0021】
[硬化剤]
硬化剤は、エポキシ樹脂用の硬化剤であり、フェノール類、イミダゾール類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジド類、ポリメルカプタン類、ルイス酸−アミン錯体類などを用いることができる。これらの中でも、高い架橋密度が得られるフェノール化合物が好ましい。フェノール化合物としては、フェノールノボラック化合物、クレゾールノボラック化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール化合物、ジシクロペンタジエンフェノール付加型化合物、フェノールアラルキル化合物などが挙げられる。フェノール化合物の中でも、耐熱性の観点からフェノールノボラック化合物が好ましい。硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アンダーフィル材中の硬化剤の含有量は、1〜15質量%が好ましく、11〜14質量%がより好ましい。
【0022】
[アクリルポリマー]
アンダーフィル材は、膜形成樹脂であるアクリルポリマーとして、ガラス転移温度(Tg)が常温以下であるアクリルポリマーを含有する。Tgが常温以下であるアクリルポリマーは、上述したアンダーフィル材の物性(特に弾性率)とするために、Tgが12℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましい。Tgが常温以下であるアクリルポリマーのTgの下限値は特に限定されないが、例えば−40℃以上とすることができる。Tgが常温以下であるアクリルポリマーは、官能基として、カルボキシル基及びエポキシ基の少なくとも1種を有することが好ましい。Tgが常温以下であるアクリルポリマーの製品としては、SG−280(Tg;−29℃)、SG−P3(Tg;12℃)、SG−70(Tg;−13℃)、SG−708−6(Tg;4℃)、WS−023 EK30(Tg;−10℃)、SG−80H(Tg;11℃)、SG−600TEA(Tg;−37℃)(以上、ナガセムテックス社製)などが挙げられる。
【0023】
Tgが常温以下であるアクリルポリマーの重量平均分子量は、フィルム形成性の観点から、例えば5.0×10
3以上が好ましく、1.0×10
4以上がより好ましい。また、Tgが常温以下であるアクリルポリマーの重量平均分子量の上限値は、例えば1.0×10
6以下が好ましい。Tgが常温以下であるアクリルポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アンダーフィル材中、Tgが常温以下であるアクリルポリマーの含有量は、10〜40質量%が好ましく、13〜25質量%がより好ましく、15〜18質量%がさらに好ましい。また、アンダーフィル材は、Tgが常温以下であるアクリルポリマー以外の膜形成樹脂、例えば、Tgが常温より高いアクリルポリマーを実質的に含有しないことが好ましい。
【0024】
[無機フィラー]
アンダーフィル材は、無機フィラーを含有する。無機フィラーは、例えば、圧着時における樹脂層の流動性を調整する目的で用いられる。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができ、シリカが好ましい。無機フィラーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アンダーフィル材中の無機フィラーの含有量の合計は、26〜42質量%が好ましく、29〜41質量%がより好ましい。
【0025】
[硬化促進剤]
アンダーフィル材は、上述した成分以外に、硬化促進剤をさらに含有することが好ましい。硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾ−ル類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩(DBU塩)、2−(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン類、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物などが挙げられる。硬化促進剤の具体例としては、2PHZ−PW、C11Z−CN、2MAOK−PW(以上、四国化成社製)などが挙げられる。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アンダーフィル材が硬化促進剤を含有する場合、アンダーフィル材中の硬化促進剤の含有量は、0.5〜1.5質量%が好ましい。
【0026】
アンダーフィル材の特に好ましい組成の具体例は、次の通りである。アンダーフィル材は、常温で液状のエポキシ樹脂と、硬化剤と、Tgが常温以下であるアクリルポリマーと、無機フィラーとを含有し、アンダーフィル材中の常温で液状のエポキシ樹脂の含有量の合計が22〜27質量%であり、Tgが常温以下であるアクリルポリマーの含有量が15〜18質量%であり、無機フィラーの含有量が29〜41質量%である。
【0027】
アンダーフィル材の形状としては、フィルム状、ペースト状などが挙げられる。以下で詳述するように、半田付き電極が形成された半導体チップ側や、半田付き電極と対向する対向電極が形成された基板側に予め貼り合わせる場合には、アンダーフィル材をフィルム状とすることが好ましい。
【0028】
以上のようなアンダーフィル材によれば、半導体チップをCOW方式で積層実装後の半導体ウエハの反りを抑制するとともに、高い接続信頼性を得ることができる。また、ボイド排除性も良好にすることができる。
【0029】
<半導体装置の製造方法>
次に上述したアンダーフィル材を用いた半導体装置の製造方法の例について説明する。本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、アンダーフィル材を、半田付き電極が形成された半導体チップ側、又は半田付き電極と対向する対向電極が形成された基板(半導体ウエハ)側に予め貼り合わせる工程と、半導体チップ側の電極と基板側の対向電極とを半田接合させる工程とを有する。
【0030】
以下、
図1及び
図2を用いて、半導体チップを半導体ウエハ上に4段積層実装させる方法の一例を説明する。
図1は、搭載前の複数の半導体チップと半導体ウエハの一例を示す断面図であり、
図2は、複数の半導体チップを半導体ウエハに積層した状態の一例を示す断面図である。
【0031】
図1に示すように、半導体ウエハ1上に、中間層の半導体チップ2〜4と、最上層の半導体チップ5とを、アンダーフィルフィルム6〜9を介して積層配置させる。
【0032】
半導体ウエハ1は、サポート基板10上に仮貼材11を介して固定されている。半導体ウエハ1の材質は、シリコンであってもよいし、化合物系半導体(例えば窒化ガリウム等)であってもよい。半導体ウエハ1には、後に個片化される単位毎に電子回路が形成されている。
【0033】
半導体ウエハ1は、例えば一方の面に形成された半田付き電極1aと、他方の面に形成された電極1bとを有する。半田付き電極1aは、例えばCuピラー頂上に半田をメッキしたものである。半田付き電極1aの半田1cは、いわゆる鉛フリー半田であり、例えば、Sn/Ag/Cu半田(融点:220℃〜240℃)、Sn/Ag半田(融点:220℃)などを用いることができる。電極1bは、半導体チップ2の半田付き電極2cと接続されるものであり、例えばCuピラーなどを用いることができる。
【0034】
サポート基板10は、例えば半導体ウエハ1と同じ面形状を有し、半導体ウエハ1を固定するものである。サポート基板10の材質には、例えば、ガラス、シリコンなどが用いられる。サポート基板10の厚みは、通常500〜1000μm程度とすることができる。
【0035】
仮貼材11は、半導体ウエハ1をサポート基板10に固定するためのものであり、例えば接着材からなる接着層である。上述のように、仮貼材11は、実装後に剥離するため、比較的柔らかい組成とすることが好ましい。仮貼材11としては、例えばアクリル系の光硬化性接着剤(一例として、UV-Curable Adhesive LC-3200(3M社製))を用いることができる。
【0036】
半導体チップ2〜4は、例えば、シリコン貫通電極と、一方の面に形成された半田付き電極2a〜4aと、他方の面に形成された電極2b〜4bとを有する。シリコン貫通電極は、半導体チップの内部を垂直に貫通する電極であり、上下のチップ同士の接続を行う。半田付き電極2a〜4a、電極2b〜4b及び半田2c〜4cは、上述した半田付き電極1a、電極1b及び半田1cと同様に構成することができる。
【0037】
半導体チップ5は、一方の面に形成された半田付き電極5aを有する。半田付き電極5aは、半導体チップ2〜4と同様に、例えばCuピラー頂上に半田をメッキしたものである。
【0038】
半導体チップ2〜5の半田付き電極2a〜5aが形成された一方の面には、それぞれ熱硬化性接着剤であるアンダーフィルフィルム6〜9が予め貼り合わされている。これにより、半導体チップ2〜5を積層配置する工程数を削減することができる。
【0039】
半導体チップ2〜5は、アンダーフィルフィルム6〜9に流動性は生じるが、本硬化が生じない程度の所定の温度、圧力、時間の条件で積層配置される。
【0040】
次に、
図2に示すように、アンダーフィルフィルム6〜9と半導体チップ2〜5とが複数積層配置された半導体チップ群を、例えば100℃〜400℃の温度の熱圧着ツールで押圧し、アンダーフィルフィルム6〜9を硬化させる。例えば、第1の温度から第2の温度まで所定の昇温速度で昇温させるボンディング条件で、半田付き電極の半田を溶融させて金属結合を形成させてアンダーフィルフィルム6〜9の硬化率が90%程度となるように硬化させるとともに、120℃〜200℃の温度条件でキュアし、アンダーフィルフィルム6〜9を完全に硬化させる。
【0041】
第1の温度は、アンダーフィルフィルム6〜9の最低溶融粘度時の温度と略同一とすることが好ましい。これにより、アンダーフィルフィルム6〜9の硬化挙動をボンディング条件に合致させることができ、ボイドの発生を効果的に抑制することができる。昇温速度は、例えば、50℃/sec以上150℃/sec以下とすることができる。第2の温度は、半田の種類にもよるが、200℃以上280℃以下であることが好ましく、より好ましくは220℃以上270℃以下である。これにより、半田付き電極2a〜5aと電極1b〜5bとを半田により結合させるとともに、アンダーフィルフィルム6〜9を完全硬化させ、半導体ウエハ1と、半導体チップ2〜5とを電気的、機械的に接続させることができる。
【0042】
以上のように、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、上述したアンダーフィル材からなるアンダーフィルフィルムを用いているため、半導体チップを半導体ウエハに実装した後、例えば、アンダーフィルフィルムの硬化率が90%程度となるように硬化させた後、及びアンダーフィルフィルムを完全に硬化させた後の半導体ウエハの反りを抑制することができる。また、高い接続信頼性を得ることができる。
【0043】
上述した具体例では、アンダーフィルフィルム6〜9を介して、半導体ウエハ1上に半導体チップ2〜5を複数積層配置させ、一括圧着させるようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、半導体チップを1段ずつ圧着実装してもよい。また、上述した具体例では、アンダーフィルフィルム6〜9を、半田付き電極2a〜5aが形成された半導体チップ2〜5側に予め貼り合わせるようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、半導体ウエハ基板1の電極1b側、半導体チップ2〜4の電極2b〜4b側に予め貼り合わせてもよい。また、上述した具体例では、半導体チップを半導体ウエハ上に4段積層実装させる方法について説明したが、これに限定されず、半導体チップを半導体ウエハ上に5段以上積層実装させてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本技術の実施例について説明する。なお、本技術は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
[アンダーフィルフィルム]
下記材料を用いてアンダーフィルフィルムを作製した。
[膜成分]
アクリルゴム:SG−280(ナガセムテックス社製)、Tg;−29℃、Mw;90×10
4
アクリルゴム:SG−P3(ナガセムテックス社製)、Tg;12℃、Mw;85×10
4
フェノキシ樹脂:YP−50(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、Tg;84℃
[エポキシ樹脂]
AER−9000:PO変性のポリエーテル型エポキシ樹脂(旭化成社製)、25℃で液体、25℃における粘度;1Pa・s、エポキシ当量;380g/eq
JER−1031S:多官能エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製)、25℃で固体、エポキシ当量;200g/eq
[硬化剤]
ノボラック型フェノール:TD−2131(DIC社製)、軟化点;78〜82℃
[硬化促進剤]
イミダゾール:2PHZ−PW(四国化成社製)、融点;230℃
イミダゾール:C11Z−CN(四国化成社製)、融点;47〜52℃
[無機フィラー]
ヒュームドシリカ:R202(アエロジル社製)
シリカ:SC1050(アドマテックス社製)、溶剤分散品
【0046】
<アンダーフィルフィルムの作製>
表1に示す配合比(質量部)となるように各成分を秤量し、常温のボールミルで混合・分散し、均一に溶解混合された樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、シート厚が20μmとなるようギャップ調整されたコンマコータ(登録商標)で塗布し、溶剤残分が2wt%以下になるように乾燥させ、アンダーフィルフィルムを作製した。
【0047】
<3次元実装体の作製>
アンダーフィルフィルムを用いて、ウエハ上に積層配置された最下層の半導体チップ、中間層(2個、6個又は14個)の半導体チップ及び最上層の半導体チップを含む半導体チップ群を熱圧着ツールにて押圧し、シリコン貫通電極(TSV:through silicon via)にて接続させ、3次元実装体(半導体チップ群が4段、8段又は16段)を作製した。半導体ウエハ、最下層の半導体チップ、中間層の半導体チップ及び最上層の半導体チップは、次のものを使用した。
[半導体ウエハ]
大きさ:12インチ、厚み:200μm
上側バンプ仕様:Cuピラー(7μm)、Ni/Auメッキ、φ20μm、バンプ数20000pin
下側バンプ仕様:Cuピラー(7μm)+Sn/Ag半田(5μm)、φ20μm、バンプ数20000pin
[最下層の半導体チップ]
大きさ:8×8mm□、厚み:200μm
バンプ仕様:Cuピラー(7μm)+Sn/Ag半田(5μm)、φ20μm、バンプ数20000pin
アンダーフィル厚み:20μm
[中間層の半導体チップ]
大きさ:6×6mm□、厚み:200μm
上側バンプ仕様:Cuピラー(7μm)、φ20μm、バンプ数20000pin
下側バンプ仕様:Cuピラー(7μm)+Sn/Ag半田(5μm)、φ20μm、バンプ数20000pin
アンダーフィル厚み:20μm
[最上層の半導体チップ]
大きさ:6×6mm□、厚み:200μm
バンプ仕様:Cuピラー(7μm)+Sn/Ag半田(5μm)、φ20μm、バンプ数20000pin
アンダーフィル厚み:20μm
【0048】
サポート基板としてのミラーウエハの一方の面に仮貼材としての接着剤を塗布して接着層(厚み:約100μm)を形成し、この接着層に、半導体ウエハの下側バンプ(半田付き電極)面を接着させた。
【0049】
最上層の半導体チップ、中間層の半導体チップ及び最下層の半導体チップのウエハ側の面にアンダーフィルフィルムを貼り合わせた。次に、フリップチップボンダーを用いて、80℃のステージに保持されたウエハ上に、アンダーフィルフィルムが貼り合わされた最下層の半導体チップを1段と、アンダーフィルフィルムが貼り合わされた中間層の半導体チップ(2段、6段又は14段)と、アンダーフィルフィルムが貼り合わされた最上層の半導体チップを1段、順次積層配置した。
【0050】
そして、実装装置(FCB3、Panasonic(株))を用いて、表1に示す実装荷重で250℃−10秒間押圧した。さらに、170℃−2時間の条件でキュアし、3次元実装体を作製した。
【0051】
<半田接続性>
半導体チップ間の半田接続(デイジーチェーン接続)状態をプローブテスタで確認した。半導体チップの導通経路の接続が確認できたときの実装荷重(N/20000pin)を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
<WSS接着層内半田流れ>
半導体チップの実装時に、ミラーウエハで保護していた半導体ウエハの裏面バンプ(半田付き電極)の流れ出しの有無について、赤外線顕微鏡(装置名:MX63、オリンパス社製)を用いて、半導体ウエハ側から平面観察を行い、赤外線顕微鏡写真を得た。得られた赤外線顕微鏡平面写真において、例えば
図3に示すように、半導体ウエハの裏面バンプの半田流れAが存在した場合を半田流れあり(×)と判断した。また、例えば
図4に示すように、半導体ウエハの裏面バンプの半田流れが存在しなかった場合を半田流れなし(〇)と判断した。結果を表1に示す。
【0053】
<ウエハ反り>
3次元実装体を作製する際に、250℃−10秒間押圧した後、170℃−2時間の条件でキュアする前の状態の半導体ウエハの反り量を以下の基準で評価した。半導体ウエハの反り量が2mm未満であることが好ましい。結果を表1に示す。なお、表1中の「4段」、「8段」、「16段」とは、半導体ウエハ上に積層した半導体チップの数を表す。
◎:1mm未満
〇:1mm以上2mm未満
×:2mm以上
【0054】
<吸湿リフロー>
3次元実装体を温度85℃、湿度85%、168時間の条件で吸湿させ、最大260℃のリフロー炉で加熱した。その後、さらに、温度130℃、湿度85%、水蒸気圧0.23MPa、300時間の条件の信頼性試験を行った。そして、信頼性試験後の3次元実装体のチップ間のデラミネーション(剥離)を、超音波映像装置(SAT:Scanning Acoustic Tomograph)(装置名:FS300、日立ハイテクノロジーズ社製)で観察した。例えば
図5に示すように、観察で得られた超音波画像に白点が存在した場合を半導体チップ間のデラミネーションあり(×)と判断した。また、例えば
図6に示すように、観察で得られた超音波画像に白点が存在しなかった場合を半導体チップ間のデラミネーションなし(〇)と判断した。結果を表1に示す
【0055】
<アンダーフィルフィルムの物性>
[貯蔵弾性率]
アンダーフィルフィルムの貯蔵弾性率は、3次元実装体を作製する際に、250℃−10秒間押圧した後、170℃−2時間の条件でキュアする前の状態の硬化後のアンダーフィルフィルムについて、動的粘弾性測定(DMA:Dynamic Mechanical. Analysis)(装置名:TA社製RSA3)を用いて、10℃/min、1Hzの条件で測定した。結果を表1に示す。
【0056】
[貯蔵弾性率の積分値]
アンダーフィルフィルムの25℃〜250℃の貯蔵弾性率の積分値(Int(G’)は、3次元実装体を作製する際に、250℃−10秒間押圧した後、170℃−2時間の条件でキュアする前の状態の硬化後のアンダーフィルフィルムについて、動的粘弾性測定(装置名:TA社製RSA3)を用いて、10℃/min、1Hzの条件で測定した。結果を表1に示す。例えば、実施例1の積分値の測定結果は、1.5×10E+11(1.5×10
11)である。他の実施例及び比較例も同様に、表1中の数値に「10E+11」をかけた値が測定結果である。
【0057】
[溶融粘度]
アンダーフィルフィルムの100℃における溶融粘度(Pa・s)及び最低溶融粘度時の温度(℃)は、各アンダーフィルフィルムについて、レオメータ(TA社製ARES)を用いて、10℃/min、1Hzの条件で測定した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例の結果から、エポキシ樹脂と、硬化剤と、アクリルポリマーと、無機フィラーとを含有し、硬化後の25℃における貯蔵弾性率が2.4〜3.6GPaであり、硬化後の170℃における貯蔵弾性率が70〜800MPaであり、硬化後の25〜250℃の貯蔵弾性率の積分値が1.5×10
11〜3.2×10
11であり、100℃における溶融粘度が10000Pa・s以下であるアンダーフィル材(アンダーフィルフィルム)を用いることにより、半導体ウエハの反りを抑制するともに、高い接続信頼性が得られることが分かった。
【0060】
一方、比較例1では、アンダーフィルフィルムの硬化後の25℃における貯蔵弾性率が3.6GPaを超えるとともに、アンダーフィルフィルムの100℃における溶融粘度が10000Pa・sを超えたため、半導体チップを16段積層したときのウエハの反りが悪化した。
【0061】
比較例2では、アンダーフィルフィルムの硬化後の170℃における貯蔵弾性率が800MPaを超えたため、半導体チップを8段又は16段積層したときの半導体ウエハの反りが悪化した。
【0062】
比較例3では、アンダーフィルフィルムの硬化後の100℃における溶融粘度が10000Pa・sを超えるとともに、アンダーフィルフィルムの硬化後の25〜250℃の貯蔵弾性率の積分値が3.2×10
11を超えたため、半導体チップを4段、8段又は16段積層したときのウエハの反りが悪化した。また、比較例3では、アンダーフィルフィルムの硬化後の100℃における溶融粘度が増大しすぎたため、実装荷重が増大し、ミラーウエハにより保護していた半導体ウエハのバンプ面の半田流れが生じた。
【0063】
比較例4では、アンダーフィルフィルムの硬化後の25℃における貯蔵弾性率が2.4GPa未満であり、アンダーフィルフィルムの硬化後の170℃における貯蔵弾性率が70MPa未満であり、アンダーフィルフィルムの硬化後の25〜250℃の貯蔵弾性率の積分値が1.5×10
11未満であったため、アンダーフィルフィルムの硬化物が広温度域で低弾性化し、接続信頼性が悪化した。