【解決手段】現金自動取引装置は、入金された現金を金種別に収納する複数の第1収納庫のうち、いずれかの第1収納庫が満杯になったことを検知する検知手段と、満杯になった第1収納庫に収納されている現金の一部を、余剰の現金を保管するための第2収納庫に搬送する自動収納を実行する自動収納手段と、利用者の指示により自動収納を開始又は中断する制御手段と、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
取引実行後に硬貨又は紙幣あふれ等によりATMが自動収納を開始した場合、続けて取引を実行しようとした利用者や次の利用者が、ATMの故障と誤認する場合がある。また、ATMの自動収納がメンテナンス作業であると利用者が認識した場合でも、入金を伴う取引以外の取引を希望する利用者にとっては、不要な待ち時間が発生することが考えられる。さらに、ATMは、利用者が存在しない場合であっても、ATMの近くを通る利用者以外の人を検知し、自動収納が開始されない場合が生じる可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、現金自動取引装置の自動収納による待ち時間を解消し、顧客満足度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、現金自動取引装置は、利用者の存在有無を判定し、満杯になった第1収納庫に収納されている現金の一部を第2収納庫に搬送する自動収
納を行うと共に、利用者の指示により開始又は中断することができるようにした。
【0009】
詳細には、本発明は、現金自動取引装置であって、入金された現金を金種別に収納する複数の第1収納庫のうち、いずれかの第1収納庫が満杯になったことを検知する検知手段と、満杯になった第1収納庫に収納されている現金の一部を、余剰の現金を保管するための第2収納庫に搬送する自動収納を実行する自動収納手段と、利用者の指示により自動収納を開始又は中断する制御手段と、を備える。
【0010】
上記の現金自動取引装置であれば、硬貨又は紙幣あふれが発生し、現金自動取引装置が入金を伴う取引を停止している場合に、利用者は、自動収納を開始することができる。現金自動取引装置は、自動収納が終了すると取引を再開する。また、利用者は、入金を伴う取引以外の取引を実行しようとしていた場合には、実行中の自動収納を中断することで、待ち時間なく取引を実行することができる。加えて、自動収納を中断した時点で、第1収納庫に収納されている現金が、対応する金種の入金取引が受付可能な枚数以下となっている場合には、現金自動取引装置は、入金を伴う取引の受付けを再開する。このように、利用者の指示によって自動収納を中断したり、中断後の第1収納庫の現金の量に応じて入金を伴う取引の受付けを再開したりすることで、待ち時間が解消され、顧客満足度は向上する。
【0011】
また、本発明は、入金された現金を金種別に収納する複数の第1収納庫のうち、いずれかの第1収納庫が満杯になったことを検知する検知手段と、取引を実行するための操作が可能な領域に、所定時間利用者が存在しない場合、又は操作が可能な領域に利用者が存在するも所定時間操作がされなかった場合に、満杯になった第1収納庫に収納されている現金の一部を、余剰の現金を保管するための第2収納庫に搬送する自動収納を実行する自動収納手段と、を備える現金自動取引装置であってもよい。
【0012】
上記の現金自動取引装置であれば、硬貨又は紙幣あふれが発生して、利用者が自動収納を開始しなかった場合であっても、利用者が不在になった後、又は利用者が存在するも所定時間操作がされなかった場合に、自動収納を実行することができる。また、例えば、現金自動取引装置の周辺を通行する通行人を検知した場合であっても、所定時間、現金自動取引装置の操作がされなければ、利用者が不在であると認識することにより、自動収納を実行することができる。現金自動取引装置は、他の利用者が取引を実行するまでの間に自動収納を終わらせることで、自動収納による待ち時間を解消し、顧客満足度を向上させることができる。
【0013】
また、自動収納手段は、自動収納の実行状況を利用者に通知するものであってもよい。上記の自動収納手段であれば、利用者は、自動収納の実行状況を確認することができるため、現金自動取引装置が故障したとの誤認を回避することができる。利用者は、実行状況に基づいて自動収納を中断するか否かの判断をすることができる。
【0014】
また、検知手段が、複数の第1収納庫のうち、いずれかの第1収納庫が満杯になったことを検知した場合、入金を伴う取引以外の取引に対して稼働を継続するものであってもよい。上記の現金自動取引装置であれば、利用者が実行しようとする取引が入金を伴わない場合、待ち時間なく取引を実行することができる。入金を伴う取引以外の取引に対して稼働を継続する状態は、縮退モードとも呼ばれる。
【0015】
また、本発明は、方法の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、コンピュータが、入金された現金を金種別に収納する複数の第1収納庫のうち、いずれかの第1収納庫が満杯になったことを検知する検知ステップと、満杯になった第1収納庫に収納されている現金の一部を、余剰の現金を保管するための第2収納庫に搬送する自動収納を実行す
る自動収納ステップと、利用者の指示により自動収納を開始又は中断する制御ステップと、を実行する、情報処理方法であってもよい。
【0016】
また、本発明は、コンピュータプログラムの側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、コンピュータに、入金された現金を金種別に収納する複数の第1収納庫のうち、いずれかの第1収納庫が満杯になったことを検知する検知ステップと、満杯になった第1収納庫に収納されている現金の一部を、余剰の現金を保管するための第2収納庫に搬送する自動収納を実行する自動収納ステップと、利用者の指示により自動収納を開始又は中断する制御ステップと、を実行させる、情報処理プログラムであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、現金自動取引装置の自動収納による待ち時間を解消し、顧客満足度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、単なる例示であり、本開示の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0020】
<ハードウェア構成>
図1は、現金自動取引装置のハードウェア構成を例示する図である。現金自動取引装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、補助記憶装置14、通信インタフェース(通信IF)15、入力部16、出力部17、現金格納部18、人感センサ19、及びタイマ20を備えるコンピュータである。なお、現金自動取引装置1は、CPU11等の汎用プロセッサの代わりに、専用プロセッサや専用回路等により実現されてもよい。
【0021】
CPU11は、中央演算処理装置であり、RAM12等に展開された各種プログラムの命令及びデータを処理することで、RAM12、補助記憶装置14等を制御する。RAM12は、主記憶装置であり、CPU11によって制御され、各種命令やデータが書き込まれ、読み出される。ROM13は、読出し専用であり、主記憶装置としてBIOS(Basic Input/Output System)やファームウェアを記憶する。補助記憶装置14は、不揮発性の記憶装置であり、RAM12にロードされる各種プログラム等、永続性が求められる情報が書き込まれ、読み出される。補助記憶装置14は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等である。補助記憶装置14は、自動収納を実行するために使用される自動収納情報、
自動収納の実行を制御する情報プログラム等を記憶する。
【0022】
通信IF15は、ゲートウェイ等を介して世界規模の公衆パケット通信網であるインターネット、その他の通信網に接続するためのインタフェースである。通信IF15は、例えばLocal Area Network(LAN)カードである。現金自動取引装置1は、通信IF15を介して、金融機関に設置され勘定系の処理を行うコンピュータシステム等に接続される。入力部16は、例えば、タッチパッド、マウス、タッチパネル等のポインティングデバイス、キーボード、操作ボタン等であり、操作入力を受付ける。出力部17は、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、LCD)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等の表示装置である。
【0023】
現金格納部18は、現金自動取引装置1内の現金を格納し、利用者による取引の操作、又は作業員による現金管理の操作に応じて、現金の入出金をする。人感センサ19は、現金自動取引装置1の操作が可能な範囲に、利用者が存在するか否かを感知する。人感センサ19は、現金自動取引装置1の操作が可能な範囲で利用者が不在となった時、又は利用者の存在が感知された時からの経過時間等を計測するタイマ機能を備えるものであってもよい。タイマ20は、利用者による操作終了時からの経過時間を計測する。タイマ20は、さらに、人感センサ19からの通知により、利用者の不存在を確認した時からの経過時間等を計測するものであってもよい。タイマ20によって計測される時間は、現金自動取引装置1が自動収納を実行するか否かの判定に利用される。
【0024】
図2は、現金格納部の構成を模式的に例示する図である。現金格納部18は、入出金部181、スタッカ182、カセット183、リジェクトボックス184及び鑑別計数部185を備える。スタッカ182は、「第1収納庫」の一例であり、カセット183は、「第2収納庫」の一例である。なお、
図2に示す現金格納部18の構成は一例であり、
図2の例に限られず、実施の形態に応じて適宜構成要素の配置変更、省略、置換又は追加が可能である。
【0025】
入出金部181は、利用者が現金を投入したり、受取ったりするための入出金口である。スタッカ182は、利用者との間でやり取りされる現金の収納庫である。スタッカ182は、収納する金種ごとに複数設けられる。また、スタッカ182は、内部が複数の格納スペースに分かれ、それぞれの格納スペースに金種ごとに現金が収納されるようにしてもよい。スタッカ182は、内部に積み上げて収納される硬貨又は紙幣の高さを検知する物理センサを備えるものであってもよい。現金自動取引装置1は、スタッカ182内の硬貨又は紙幣が所定の高さを超えることにより、硬貨又は紙幣あふれの発生を検知することができる。現金自動取引装置1は、スタッカ182内の硬貨又は紙幣の高さに基づいて、スタッカ182内の硬貨又は紙幣の枚数を推定することができる。
【0026】
カセット183は、スタッカ182に現金を補充したり、スタッカ182から現金を回収するために使用される収納庫である。即ち、スタッカ182への現金の補充及びスタッカ182からの現金の回収は、カセット183を経由して作業員により実施される。カセット183は、現金格納部18から着脱可能に配置される。作業員は、現金格納部18に着脱されるカセット183を介して、スタッカ182への現金の補充及びスタッカ182からの現金の回収を実施することができる。また、カセット183は、スタッカ182の数、又はスタッカ182内の区分された格納スペースごとに複数設けられても良く、金種ごとに複数設けられるようにしてもよい。
【0027】
リジェクトボックス184は、利用者に交付しない金種(5千円券又は2千円券)、及び利用者への交付に適さない紙幣(汚損紙幣等)等のリジェクト紙幣を回収する保管庫で
ある。リジェクトボックス184に回収された紙幣は、スタッカ182には還流されず、作業員によって回収されるまでの間、リジェクトボックス184内に保管される。
【0028】
鑑別計数部185は、入出金部181、スタッカ182、カセット183、リジェクトボックス184の間を相互に搬送される現金について、金種を判別したり、リジェクト紙幣が含まれないかを鑑別したり、枚数を計数したりする機構を備える。また、鑑別計数部185は、搬送される現金の枚数を計数し、スタッカ182ごと又はスタッカ182の格納スペースごとに収納される枚数、及びカセット183ごとの枚数等を、補助記憶装置14に記憶したり更新したりする機構を備えてもよい。
【0029】
<機能構成>
図3は、現金自動取引装置の機能構成を例示する図である。現金自動取引装置1は、補助記憶装置14に記憶されているプログラムが、RAM12に読み出され、CPU11によって実行されることで、自動収納情報データベースD11、検知部F11、自動収納部F12及び制御部F13を備えるコンピュータとして機能する。
【0030】
なお、本実施形態において、現金自動取引装置1の備える各機能は、汎用プロセッサであるCPU11によって実行されるが、これらの機能の一部又は全部は、1又は複数の専用プロセッサ、ハードウェアの演算回路等によって実行されてもよい。ここで、ハードウェアの演算回路とは、例えば、論理ゲートを組み合わせた加算回路、乗算回路、フリップフロップ等をいう。また、これらの機能の一部又は全部は、別途のコンピュータにおいて実行されてもよい。
【0031】
自動収納情報データベースD11は、ATMが自動収納を実行するか否かを判定するための基準値等の自動収納情報を格納するデータベースである。自動収納情報は、例えば、ATMが所定のタイミングから自動収納の実行を開始するまでの時間の基準値、及びスタッカ182に収納される金種ごとの適正枚数等の情報を含む。
【0032】
自動収納情報データベースD11は、CPU11によって実行されるデータベース管理システム(Database Management System、DBMS)のプログラムが、補助記憶装置14に記憶されるデータを管理することで構築される。自動収納情報データベースD11は、例えば、リレーショナルデータベースである。自動収納情報データベースD11は、自動収納判定テーブル及び適正枚数テーブルを有する。なお、自動収納判定テーブル及び適正枚数テーブルに格納される自動収納情報は、
図4及び
図6に示す例に限られず、適宜追加、変更、削除が可能である。
【0033】
図4は、現金自動取引装置の自動収納判定テーブルの一例を示す図である。自動収納情報データベースD11の自動収納判定テーブルは、現金自動取引装置1が自動収納を実行するか否かを判定するために使用される情報を管理する。自動収納判定テーブルは、
図4の例では、不在判定基準値及び操作終了判定基準値のフィールドを有する。各フィールドの値は、予め設定される値であり、例えば、データベース管理システムのプログラムにより登録、変更等が可能である。
【0034】
不在判定基準値は、利用者が現金自動取引装置1の操作可能な範囲内に不在となった時から自動収納の実行を開始するまでの時間の基準値である。
図4の例では、現金自動取引装置1は、現金自動取引装置1の操作可能な範囲内に利用者が不在であることを人感センサ19が検知してから、不在判定基準値として自動収納判定テーブルに格納されている30秒を経過すると、自動収納の実行を開始する。
【0035】
操作終了判定基準値は、利用者の操作終了時から自動収納の実行を開始するまでの時間
の基準値である。
図4の例では、現金自動取引装置1は、利用者の操作が終了してから、操作終了判定基準値として自動収納判定テーブルに格納されている600秒を経過すると、自動収納の実行を開始する。
【0036】
図5は、硬貨又は紙幣あふれ発生後の現金自動取引装置の動作を例示する図である。
図5は、
図4に示すように、自動収納判定テーブルに格納される不在判定基準値及び操作終了判定基準値がそれぞれ30秒及び600秒である場合の現金自動取引装置1の動作を例示する。現金自動取引装置1は、硬貨又は紙幣あふれを検知すると、入金を伴う取引の受付けを停止し、縮退モードで稼働を継続する。そして、現金自動取引装置1の操作可能な範囲内に利用者が不在であることを人感センサ19が検知してから30秒が経過するか、又は利用者の操作が終了してからのタイマ20による計測時間が600秒を経過すると、現金自動取引装置1は、自動収納の実行を開始する。
【0037】
図6は、現金自動取引装置の適正枚数テーブルの一例を示す図である。自動収納情報データベースD11の適正枚数テーブルは、スタッカ182に収納される金種ごとの枚数に関する情報を管理する。
図6において、適正枚数テーブルに格納されるレコード1件は、1つの金種について、スタッカ182に収納される枚数に関する情報を格納する。
【0038】
適正枚数テーブルのレコードは、
図6の例では、あふれ検知枚数、適正枚数及び取引受付可能枚数のフィールドを有する。各フィールドの値は、予め設定される値であり、例えば、データベース管理システムのプログラムにより登録、変更等が可能である。
【0039】
あふれ検知枚数は、スタッカ182が満杯になったことが検知される枚数である。あふれ検知枚数は、スタッカ182に収納可能な枚数以下の値が予め設定される。適正枚数は、各スタッカ182に収納される硬貨又は紙幣の適正枚数である。硬貨又は紙幣あふれが発生した場合、自動収納の実行により、各スタッカ182に収納される枚数が対応する金種の適正枚数となるように、スタッカ182及びカセット183間で現金が搬送される。即ち、スタッカ182で適正枚数を超える余剰の現金は、カセット183に退避され、スタッカ182で適正枚数に不足する現金はカセット183から補充される。なお、利用者不在の場合又は利用者から所定時間操作がされなかった場合には、自動収納によって適正枚数になるまでカセット183に退避され、利用者が自動収納を開始した場合には、取引受付可能枚数になるまでカセット183に退避されるようにしてもよい。
【0040】
取引受付可能枚数は、自動収納が中断された場合であっても、現金自動取引装置1での入金を伴う取引の受付けが可能となる枚数である。即ち、自動収納が中断された場合に、各スタッカ182に残っている枚数が、対応する金種の取引受付可能枚数以下となっていれば、現金自動取引装置1は、入金を伴う取引の受付けを再開する。
【0041】
例えば、
図6の例では、万券の収納枚数があふれ検知枚数である500枚以上となった場合に、紙幣あふれが検知される。紙幣あふれの検知により自動収納が実行されると、万券の適正枚数である300枚を超える余剰の200枚が、カセット183に搬送される。スタッカ182における万券の収納枚数は、適正枚数の300枚となる。また、自動収納が中断された場合、中断後の万券の収納枚数が取引受付可能枚数である400枚を上回っていれば、現金自動取引装置1は、入金を伴う取引の受付けを再開せず、縮退モードでの稼働を継続する。一方、自動収納中断後の万券の収納枚数が取引受付可能枚数である400枚を下回っていれば、現金自動取引装置1は、入金を伴う取引の受付けを再開し、通常通りに取引を受付ける。
【0042】
図3に示す現金自動取引装置1のデータベース以外の機能について説明する。検知部F11は、スタッカ182のいずれかが満杯になったことを検知する。検知部F11は、例
えば、スタッカ182内に積み上げられた硬貨又は紙幣が所定の高さを超えた場合に、スタッカ182が満杯になったことを検知することができる。検知部F11は、スタッカ182が備える物理センサにより、スタッカ182内に積み上げられた硬貨又は紙幣の高さを検知することができる。また、検知部F11は、スタッカ182内に積み上げられた硬貨又は紙幣の高さから、スタッカ182内に収納されている枚数を推定し、推定された枚数が所定の枚数を超えた場合に、スタッカ182が満杯になったことを検知するようにしてもよい。所定の枚数は、例えば、適正枚数テーブルのあふれ検知枚数フィールドに記憶される枚数である。検知部F11は、「検知手段」の一例である。
【0043】
自動収納部F12は、硬貨又は紙幣あふれが発生した場合に、満杯となったスタッカ182に収納されている現金の一部をカセット183に搬送、自動収納を実行する。スタッカ182に残される現金は、出金取引を受付けた場合に利用者に出金するために使用される。自動収納部F12は、例えば、各金種のスタッカ182内に残される枚数が、適正枚数テーブルに示された枚数となるまで、余剰の現金をカセット183に搬送すればよい。自動収納部F12は、「自動収納手段」の一例である。
【0044】
制御部F13は、自動収納の開始又は中断を制御する。現金自動取引装置1において硬貨又は紙幣あふれが発生した場合、制御部F13は、所定時間利用者が存在しないか、又は所定時間利用者からの操作を受付けない場合に自動収納を開始する。また、制御部F13は、利用者からの指示により自動収納を開始してもよい。制御部F13は、利用者から自動収納の実行開始の指示を受けた場合、自動収納部F12に自動収納を実行させる。また、制御部F13は、自動収納の実行中に、利用者から自動収納の実行中断の指示を受けた場合、自動収納部F12に自動収納の実行を中断させる。自動収納部F12は、自動収納の実行中、自動収納の進行状況等を含む実行状況を、現金自動取引装置1の出力部17又は利用者の携帯端末等に表示させて利用者に通知するようにしてもよい。自動収納部F12は、ATMを検索するためのウェブページ又はアプリ等において、検索されたATMの自動収納の実行状況を提示させるようにしてもよい。
【0045】
制御部F13は、現金自動取引装置の操作が可能な領域に利用者が存在しなくなってから所定時間、例えば30秒が経過した後、自動収納を開始するようにしてもよい。また、制御部F13は、利用者の操作による取引又は処理が完了した時から、他の操作を受付けることなく所定時間、例えば600秒が経過した後、自動収納を開始するようにしてもよい。制御部F13は、スタッカ182が満杯でない場合であっても、所定時間利用者が存在しないか、又は、所定時間操作を受付けない場合に、自動収納を実行してスタッカ182内の現金が適正枚数となるようにしてもよい。制御部F13は、「制御手段」の一例である。
【0046】
<処理の流れ>
図7は、硬貨又は紙幣あふれ発生後の現金自動取引装置の処理の流れを例示するフローチャートである。
図7に示す処理の流れは、例えば、現金自動取引装置1での取引実行中に、硬貨又は紙幣あふれが発生したことを契機に開始される。
【0047】
まず、ステップS10では、検知部F11は、硬貨又は紙幣あふれが発生したことを検知する。検知部F11は、いずれかのスタッカ182において、スタッカ182内の収納枚数が、
図6の適正枚数テーブルにおける対応金種のあふれ検知枚数に達した場合に、硬貨又は紙幣あふれが発生したことを検知する。検知部F11は、硬貨又は紙幣あふれが発生したことを、制御部F13に通知する。
【0048】
ステップS11では、制御部F13は、連続して取引が実行されるか否かを判定する。制御部F13は、例えば、利用者から、連続取引又は終了の操作を受付けることにより、
連続して取引が実行されるか否かを判定することができる。連続して取引が実行される場合(S11:YES)、処理はステップS17に進む。連続して取引が実行されない場合(S11:NO)、処理はステップS12に進む。
【0049】
ステップS12では制御部F13は、現金自動取引装置1による取引を終了する。
【0050】
ステップS13では、制御部F13は、現金自動取引装置1を縮退モードで稼働を継続させ、入金を伴う取引を停止する。また、制御部F13は、タイマ20を始動させる。利用者が縮退モードで取引を実行した場合には、当該取引が完了した時にタイマ20を始動させてもよい。制御部F13は、タイマ20の始動後、利用者がさらに他の操作をした場合には、操作終了後にタイマ20を再始動させればよい。
【0051】
ステップS14では、制御部F13は、現金自動取引装置1の操作可能な範囲内に利用者が存在するか否かを判定する。現金自動取引装置1の操作可能な範囲内に利用者が存在する場合(S14:YES)、処理はステップS17に進む。現金自動取引装置1の操作可能な範囲内に利用者が存在しない場合(S14:NO)、処理はステップS15に進む。
【0052】
ステップS15では、制御部F13は、人感センサ19が備えるタイマを始動させる。制御部F13は、例えば、現金自動取引装置1の操作可能な範囲内に利用者が存在しないことを感知したときに、人感センサ19が備えるタイマを始動させればよい。
【0053】
ステップS16では、制御部F13は、現金自動取引装置1の操作可能な範囲内に利用者が不在の状態で、所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は、例えば、自動収納判定テーブルの不在判定基準値フィールドに格納された時間である。ステップS15において始動させた人感センサ19のタイマによる計測時間が、所定時間を経過した場合(S16:YES)、処理はステップS19に進む。ステップS15において始動させた人感センサ19のタイマによる計測時間が、所定時間を経過していない場合(S16:NO)、処理はステップS18に進む。
【0054】
ステップS17では、制御部F13は、出力部17に
図8に例示する自動収納指示画面を表示し、自動収納を実行するか否かについて利用者の指示を受付ける。
【0055】
図8は、自動収納指示画面を例示する図である。自動収納指示画面SC1は、硬貨又は紙幣あふれが発生した場合に表示される。自動収納指示画面SC1は、スタッカ182のいずれかが満杯となり入金を伴う取引の取扱いが停止中である旨を表示する。また、自動収納指示画面SC1は、「はい」ボタンSC11及び「いいえ」ボタンSC12を表示し、自動収納を実行するか否かについて利用者の指示を受付ける。現金自動取引装置1は、「はい」ボタンSC11が押下されると、自動収納の実行指示を受付ける。現金自動取引装置1は、「いいえ」ボタンSC12が押下されると、縮退モードでの稼働を継続する。
【0056】
図7のステップS17において、制御部F13は、利用者による自動収納の開始指示の有無を判定する。利用者による自動収納の開始指示があった場合、即ち、自動収納指示画面SC1において、「はい」ボタンSC11が押下された場合(S17:YES)、処理はステップS19に進む。利用者による自動収納の開始指示がない場合、即ち、自動収納指示画面SC1において、「いいえ」ボタンSC12が押下された場合(S17:NO)、処理はステップS18に進む。
【0057】
ステップS18では、制御部F13は、利用者による操作終了後、タイマ20による計測時間が所定時間を経過したか否かを判定する。所定時間は、例えば、自動収納判定テー
ブルの操作終了判定基準値フィールドに格納された時間である。ステップS13において始動させたタイマ20による計測時間が、所定時間を経過した場合(S18:YES)、処理はステップS19に進む。ステップS13において始動させたタイマ20による計測時間が、所定時間を経過していない場合(S18:NO)、処理はステップS14に戻る。
【0058】
ステップS19では、自動収納部F12は、自動収納を実行する。自動収納部F12は、満杯になったスタッカ182、即ち、収納枚数があふれ検知枚数以上となったスタッカ182において、適正枚数を超える現金をカセット183に搬送する。自動収納部F12は、満杯でないスタッカ182についても、収納枚数が適正枚数となるように、カセット183に現金を搬送したり、カセット183から現金の補充を受けたりするようにしてもよい。自動収納実行中、自動収納部F12は、出力部17に自動収納進行状況表示画面を表示し、利用者に自動収納の進行状況を通知する。
【0059】
図9は、自動収納進行状況表示画面を例示する図である。自動収納進行状況表示画面SC2は、ステップS18において自動収納が開始されると表示される。自動収納進行状況表示画面SC2には、自動収納の進行状況の表示欄SC21、通知欄SC22、及び「中断」ボタンSC23が示される。
【0060】
自動収納の進行状況の表示欄SC21は、自動収納の進行状況を表示するための欄である。自動収納の進行状況は、例えば、自動収納によってスタッカ182とカセット183との間で搬送される現金の総枚数に対し、搬送済みの現金の枚数の割合で示すことができる。具体的には、満杯となったスタッカ182の収納枚数を適正枚数とするために、200枚の現金がカセット183に搬送される場合、既に130枚の現金がカセット183に搬送済みであれば、進行状況は、(130÷200)×100=65%と算出することができる。自動収納の進行状況は、数値で示したり、プログレスバーによって示したりすることができる。
【0061】
通知欄SC22は、各スタッカ182の収納枚数が、適正枚数テーブルの取引受付可能枚数に格納される枚数以下となった場合に、入金を伴う取引の取扱いが可能となったことを、利用者に通知するための欄である。通知欄SC22は、自動収納の実行開始時は空欄とし、各スタッカ182の収納枚数が取引受付可能枚数以下となった場合に、入金を伴う取引の取扱いが可能となった旨を表示する。
【0062】
「中断」ボタンSC23は、実行中の自動収納を中断するためのボタンである。「中断」ボタンSC23が押下されることで、制御部F13は、自動収納を中断する。
【0063】
図7のステップS20では、制御部F13は、利用者による自動収納の中断指示の有無を判定する。利用者による自動収納の中断指示があった場合、即ち、自動収納進行状況表示画面SC2において、「中断」ボタンSC23が押下された場合(S20:YES)、処理はステップS12に戻る。自動収納が中断され、ステップS12に戻ると、現金自動取引装置1は、縮退モードで稼働される。ただし、自動収納が中断されたときに、各スタッカ182の収納枚数が取引受付可能枚数以下であった場合には、制御部F13は、現金自動取引装置1の縮退モードを解除する。そして、現金自動取引装置1は、入金を伴う取引を再開し、通常通りに取引を受付ける。
【0064】
利用者による自動収納の中断指示がない場合、即ち、自動収納進行状況表示画面SC2において、「中断」ボタンSC23が押下されることなく自動収納が終了した場合(S20:NO)、処理はステップS21に進む。
【0065】
ステップS21では、制御部F13は、現金自動取引装置1の縮退モードを解除し、通常稼働に復帰させる。現金自動取引装置1は、入金を伴う取引を再開し、通常通りに取引を受付ける。
図7に示される処理は終了する。
【0066】
<作用効果>
以上説明した本実施形態では、現金自動取引装置1は、硬貨又は紙幣あふれが発生した場合、利用者は、自動収納を開始するか否かを選択することができる。また、自動収納を開始した場合であっても、利用者は、自動収納の実行を中断することができる。利用者が自動収納の開始又は中断を指示することができるため、不要な待ち時間を回避し、顧客満足度を向上させることができる。
【0067】
また、利用者の指示により自動収納が実行されなかった場合であっても、現金自動取引装置1は、利用者が不在になった後、又は現金自動取引装置が所定時間操作されなかった後、自動収納を実行する。現金自動取引装置1は、他の利用者が取引を実行するまでの間に自動収納を終わらせることで、自動収納による待ち時間を解消し、顧客満足度を向上させることができる。
【0068】
さらに、利用者は、自動収納の実行状況を確認することができるため、現金自動取引装置が故障したと誤認することを回避することができる。また、利用者は、実行状況に基づいて自動収納を中断するか否かの判断をすることができる。自動収納が中断された場合でも、現金自動取引装置1は縮退モードで稼働するため、利用者は、入金を伴う取引以外の取引を実行することができる。