(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-97634(P2021-97634A)
(43)【公開日】2021年7月1日
(54)【発明の名称】孵化途中卵観測用の投光装置
(51)【国際特許分類】
A01K 43/00 20060101AFI20210604BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20210604BHJP
G01N 33/08 20060101ALI20210604BHJP
【FI】
A01K43/00
G01N21/01 D
G01N21/01 B
G01N33/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-231245(P2019-231245)
(22)【出願日】2019年12月23日
(71)【出願人】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】南部 邦男
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059AA10
2G059BB12
2G059CC16
2G059CC20
2G059EE01
2G059EE02
2G059GG01
2G059GG02
2G059JJ17
2G059JJ25
2G059KK01
(57)【要約】
【課題】照射部を可及的に卵に接近させ、かつ、照射部を破損したり、卵殻を破損したりすることのない装置を提供する。
【解決手段】孵化途中卵観測用の投光装置1は、アーム部5と、基部6と、照射部7とを備える。アーム部5は、孵化途中卵Eの長軸を上下方向にして当該孵化途中卵Eが収容されたトレイTに向けて伸びる。基部6は、アーム部5の基端側が支持される。照射部7は、アーム部5の先端側に設けられ、孵化途中卵Eの側方から光を照射する。アーム部5は、さらに、照射部7の基部6に対する位置が変更可能なものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孵化途中卵の長軸を上下方向にして当該孵化途中卵が収容されたトレイに向けて伸びるアーム部と、
前記アーム部の基端側が支持される基部と、
前記アーム部の先端側に設けられ、孵化途中卵の側方から光を照射する照射部とを備え、
前記アーム部は、前記照射部の前記基部に対する位置が変更可能なものである、孵化途中卵観測用の投光装置。
【請求項2】
前記照射部は、孵化途中卵と接触する前の初期位置と孵化途中卵と接触する最終測定位置との間で位置変更がなされ、前記初期位置は、前記最終測定位置よりも前記長軸寄りに設定されている、請求項1記載の孵化途中卵観測用の投光装置。
【請求項3】
前記照射部と孵化途中卵との間を遮光する遮光キャップを備える、請求項1または2記載の孵化途中卵観測用の投光装置。
【請求項4】
前記照射部は、孵卵機内で揺れ動かされるトレイ上の孵化途中卵に光を照射するもので、前記照射部と孵化途中卵との位置関係が一定に保たれる、請求項1、2または3記載の孵化途中卵観測用の投光装置。
【請求項5】
前記アーム部は、前記照射部から照射される光の照射方向に沿った方向に変形する、請求項1、2、3または4記載の孵化途中卵観測用の投光装置。
【請求項6】
前記アーム部は、可撓性を有するいわゆるプリント基板である、請求項1、2、3、4または5記載の孵化途中卵観測用の投光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孵化途中卵観測用の投光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
孵化途中卵は、所定の温度、湿度等の環境下で孵卵され、孵卵の途中では、種卵の内部における胚の活動状況、すなわち生死等を観測し、判定するような検査がなされる。
【0003】
従来の孵化途中卵検査装置は、例えば、
図5および
図6に示すように、上方位置と下方位置との間を移動可能なほぼ水平のフレーム402と、該フレーム402によってほぼ垂直な方向に支持され、上方位置と下方位置との間を該フレーム402と共に移動可能な複数の検出装置ツール412を備える。各検出装置ツール412は、フレーム402が下方位置にあるとき卵1に隣接して位置し、選択された一つ以上の部分のスペクトルの光線を卵1に照射するように構成されている光源420を備える。光源420は、自由末端422aを有する細長い軸422を備える。反対の末端422bは検出装置ツール412に固定されている。光線照射要素(LED)424は自由末端422aに位置付けられている。各検出装置ツール412は、フレーム402が下方位置にあるとき、卵1と接触している関係で卵1に重なるように構成されているカップ430を備える。光検出装置432は、カップ430内に配置されており、卵1を通過する光線の強度に対応する出力信号を発生する。プロセッサは各光検出装置432に連絡しており、各光検出装置432からの出力信号を処理して光線強度の周期的および/または非周期的な変化を識別する。
【0004】
この従来のものは、胚の脈拍および動きの検出はフラット(卵収容器)20内の卵1の上方部で実施され、それによってフラット20に存在するごみ、破片および水などの異物によって生じる可能性のある複雑な問題を解消しようとするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−532046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1記載のものにおいて、カップ430とLED424との相対位置関係は固定的である。また複数のカップ430のサイズは同じである。
【0007】
一方、フラット20内の卵1のサイズは同じでない。したがって、カップ430の接触高さは卵1のサイズによって区々となる。すなわち、大きなサイズの卵1よりも小さなサイズの卵1の方が、卵1に対するカップ接触位置は下方になる。
【0008】
光源420は、カップ430を備えた検出装置ツール412に固定されているため、小さなサイズの卵1に対してカップ430が下方に下がり過ぎて、光源420がフラット20に接触して、光源420が破損するおそれがあった。
【0009】
そのため、前記従来のものにおいては、LED424は、光検出装置432の視野外である、卵Eの赤道よりもかなり上方に位置するよう、カップ430の下端縁近傍に配置されていた。
【0010】
またLED424を卵1の表面に接近して配置すると、卵1のサイズによっては、接触して卵殻に傷をつける恐れがあったので、従来のものは、卵1の表面からかなり離れて配置されていた。
【0011】
したがって、従来のものは、LED424から光検出装置432までの光路が長くなり、S/N比が悪かった。
【0012】
本発明は、前記課題を解決するものであり、照射部を可及的に孵化途中卵に接近させ、かつ、照射部を破損したり、卵殻を破損したりすることのない装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の孵化途中卵の観測装置は、アーム部と、基部と、照射部とを備える。アーム部は、孵化途中卵の鋭端と鈍端を上下方向にして当該孵化途中卵が収容されたトレイに向けて伸びる。基部は、アーム部の基端側が支持される。照射部は、アーム部の先端側に設けられ、孵化途中卵の側方から光を照射する。さらに、アーム部は、照射部の基部に対する位置が変更可能なものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、照射部を破損したり、卵殻を破損したりすることなく、照射部を孵化途中卵に接近して配置することができる。
【0015】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる観測ユニットを孵化途中卵に装着する様子を示す図である。
【
図2】同実施形態の観測ユニットを孵化途中卵と離した様子を示す図である。
【
図3】本発明の変形例にかかる観測ユニットを孵化途中卵に装着する様子を示す図である。
【
図4】同変形例の観測ユニットを孵化途中卵と離した様子を示す図である。
【
図5】従来技術の生存卵を識別する装置の正面図である(特許文献1の
図6Bより引用)。
【
図6】
図5の検出装置ツールの拡大図である(特許文献1の
図6Cより引用)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の観測ユニット10は、投光装置1と、受光装置2と、遮光キャップ3、4とを備える。観測ユニット10は、トレイTの上方に配置され、トレイTに収容された孵化途中卵Eの内部における胚の活動状況等を観測するものである。観測ユニット10は、孵化途中卵Eへの装着状態と取り外し状態とをとり得る。本実施形態では、観測ユニット10は、孵卵機(図示しない)内のトレイT上の孵化途中卵Eに装着される。孵卵機では、内部が孵卵に適した雰囲気に保たれるとともに、トレイTが揺り動かされる。なお、観測ユニット10が孵化途中卵Eにいったん装着されると、照射部7と孵化途中卵Eとの位置関係が一定に保たれる。トレイTは、孵化途中卵Eを収容する卵座T1を複数有し、鈍端E1と鋭端E2を上下方向にして孵化途中卵Eが収容される。
【0019】
投光装置1は、アーム部5と、基部6と、照射部7とを備える。
【0020】
アーム部5は、トレイTに向けて伸びる。アーム部5は、可撓性のある材質で構成される。アーム部5は、卵座T1に収容された孵化途中卵Eの隣接空間に位置する。なお、隣接空間のうちの最も広い空間にアーム部5が配置されることが好ましい。アーム部5は、照射部7の基部6に対する位置が変更可能なものである。アーム部5は、
図2の実線で示すように、外力を受けないときはまっすぐな状態を保ち、
図2の二点鎖線で示すように、外力に応じて変形する。外力は、例えば、アーム部5の先端側が孵化途中卵Eに接触すると、照射部7の照射方向と逆向きに加わる力である。アーム部5は、照射部7から照射される光の照射方向に沿った方向に変形する。アーム部5は、例えば、可撓性を有する樹脂基板に電気配線が設けられたいわゆるプリント基板である。
【0021】
基部6は、アーム部5の基端側が支持される。基部6は、トレイTに対して複数箇所で接続される。基部6は、複数の孵化途中卵Eに対応する複数のアーム部5を支持してもよいし、一のアーム部5のみを支持してもよい。基部6を上下方向に移動させることによって、アーム部5のトレイTへの挿入とトレイTからの離脱とを切り替える。基部6には、遮光キャップ4と、受光装置2も支持される。
【0022】
照射部7は、アーム部5の先端側に設けられる。照射部7は、アーム部5の電気配線を介して電力が供給される。照射部7は、孵化途中卵Eの側方から光を照射する。言い換えれば、照射部7は、一の孵化途中卵Eの鈍端E1及び鋭端E2以外の側面から光を照射する。照射部7は、孵化途中卵Eと接触する前の初期位置と孵化途中卵Eと接触する最終測定位置との間で位置変更がなされる。初期位置は、最終測定位置よりも、孵化途中卵Eの鈍端E1と鋭端E2を結ぶ中心線寄りに設定されている。すなわち、初期位置は、孵化途中卵Eの長軸寄りに設定されている。照射部7は、例えばLEDであるが、レーザ発光素子等であってもよいし、光ガイドを使用して光源を別場所に配置してもよい。
【0023】
受光装置2は、照射部7が照射した光のうち孵化途中卵Eの内部を経て卵の表面から外部に放出される光を受光する。内部を経た光は、照射部7からの光が孵化途中卵Eの内部の胚などで、透過、反射拡散した光である。受光装置2によって受光された光は電気信号に変換され、無線または有線で識別装置8に送られる。識別装置8では、受光装置2で受光した光の電気信号の解析により生存卵を識別する。
【0024】
遮光キャップ3は、照射部7と孵化途中卵Eとの間を遮光する。遮光キャップ4は、受光装置2と孵化途中卵Eとの間を遮光する。遮光キャップ3、4は、孵化途中卵Eに接触して弾性変形可能なものである。遮光キャップ3、4は、軟質材で構成されている。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の孵化途中卵観測用の投光装置1は、アーム部5と、基部6と、照射部7とを備える。アーム部5は、孵化途中卵Eの長軸を上下方向にして当該孵化途中卵Eが収容されたトレイTに向けて伸びる。基部6は、アーム部5の基端側が支持される。照射部7は、アーム部5の先端側に設けられ、孵化途中卵Eの赤道付近から鈍端E1と鋭端E2を結ぶ中心線に向かって光を照射する。アーム部5は、可撓性のある材質で構成され、照射部7の基部6に対する位置が変更可能なものである。
【0026】
このようなものであるため、隣接する孵化途中卵Eの間の狭い隙間に沿ってアーム部5を挿入することができる。特に、各卵座T1における孵化途中卵Eの大きさ等のばらつきに対しても、孵化途中卵Eを破損させることなく照射部7を配置することができる。
【0027】
照射部7は、孵化途中卵Eと接触する前の初期位置と孵化途中卵Eと接触する最終測定位置との間で位置変更がなされ、初期位置は、最終測定位置よりも長軸寄りに設定されている。そのため、照射部7の遮光キャップ3と孵化途中卵Eの卵殻とが一定の圧をもって接触する。
【0028】
照射部7と孵化途中卵Eとの間を遮光する遮光キャップ3を備えるので、外乱光の影響を受けにくくなり、S/N比が良くなる。
【0029】
照射部7は、孵卵機内で揺れ動かされるトレイT上の孵化途中卵Eに光を照射する。特に、アーム部5が設けられた基部6が、孵化途中卵Eが収容されるトレイTに対して複数箇所で接続されるので、照射部7と孵化途中卵Eとの位置関係が一定に保たれる。そのため、孵卵機からの出し入れが孵化途中卵Eの生存率に影響が出やすい時期に孵化途中卵Eを移動させることなく観測が可能となる。複数日にわたる観測も容易になる。孵卵機内の一部の孵化途中卵Eのみを観測してもよいし、全数を観測してもよい。なお、投光装置1、受光装置2、遮光キャップ3、4は、孵卵機内の温度に耐える部材で構成されている。
【0030】
アーム部5は、照射部7から照射される光の照射方向に沿った方向に変形するので、孵化途中卵Eの大きさによらず、照射部7から卵殻表面までの距離をほぼ一定にすることができる。
【0031】
アーム部5は、可撓性を有する樹脂基板に電気配線が設けられたいわゆるプリント基板であるので、孵化途中卵Eの間に形成された狭い隙間にも収まる大きさに形成できる。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
【0033】
図3および
図4は、変形例にかかる孵化途中卵Eの観測ユニット10である。この変形例では、上述した実施形態と同一(またはこれに準ずる)の部分は同じ符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さない。
図3および
図4のアーム部5は、照射部7から照射される光の照射方向に沿った方向とそれ以外の方向にもフレキシブルに変形する。アーム部5は、内部に通される電気配線を保護するための可撓性を有する保護部材からなる。保護部材は、例えば、巻きばねである。
【0034】
アーム部5は、基部6に対して上下方向に移動可能なものであってもよい。複数の孵化途中卵Eに対してそれぞれ光を照射する各照射部7は、基部6に対して個別に高さ位置を設定可能なものであってもよい。また、アーム部5は、基端側が固定されていないアーム部5であれば、可撓性のない材質で構成されてもよい。
【0035】
孵化途中卵Eの観測は、孵卵機内で行ってもよいし、トレイTに載せられた孵化途中卵Eを孵卵機から取り出した後、コンベヤに載せて数秒間測定を行ってもよい。
【0036】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、孵化途中卵の生死等を観測するために利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…孵化途中卵観測用の投光装置
3、4…遮光キャップ
5…アーム部
7…照射部
T…トレイ
E…孵化途中卵
E1…鈍端
E2…鋭端