【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書記載の通り、2019年9月28日以降、一般社団法人日本サロネーゼ協会主催の講座を開講したことにより公開。
【課題】汎用の加熱装置を使用して焼成する場合でも、伝統的な美味しさや食感を保ちつつ、割れや欠けを抑えることができているメレンゲ、及びこのようなメレンゲの製造方法を提供する。
【解決手段】装飾付きメレンゲ40のメレンゲ生地1は、卵白10と、砂糖20として、乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)を含む。第1の砂糖21は、オーブン等でグラニュー糖粉末を、150℃以上の高温下で加熱することにより、グラニュー糖粉末に含有している水分を、ほぼ完全に取り除いた上で、新たに大気中の水蒸気を吸収しないよう、高温状態のままで、略脱水した状態を維持したグラニュー糖粉末である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、製造過程で、ある程度、割れや欠けを防いだメレンゲを製造することはできるものの、特許文献1のメレンゲでは、伝統的な製法である砂糖を材料に使用したメレンゲの美味しさと比べ、嗜好の点で、相違が生じてしまう虞がある。
【0006】
また、割れや欠けのないメレンゲクッキーに焼き上げるための条件として、生地の乾燥焼きを、本来、オーブンによる加熱を70〜80℃程度に抑えた低温下で、時間をかけてゆっくり行うことが、好ましいとされている。しかしながら、専用仕様のオーブンを除き、家庭用オーブン等のように、一般的に広く使用されている市販のオーブンの多くで、加熱時に設定できる最低温度は、100℃近傍となっている。しかも近年、市販のオーブンは、設定可能な最低温度を100℃近傍としながらも、加熱の高温化を図ることにより、石窯に似せた加熱を実現できるものになってきている傾向にある。そのため、市販のオーブンを使用して、割れや欠けを抑えたメレンゲクッキーを製造しようとしても、生地の乾燥焼き時に、オーブンで加熱する温度が高過ぎてしまうため、割れや欠けを抑えたメレンゲクッキーを、簡単に作ることができなかった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、汎用の加熱装置を使用して焼成する場合でも、伝統的な美味しさや食感を保ちつつ、割れや欠けを抑えることができているメレンゲ、及びこのようなメレンゲの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るメレンゲは、以下の構成を有する。
(1)卵白と砂糖とを含むメレンゲにおいて、前記砂糖は、第1の砂糖として、乾燥グラニュー糖粉末であること、を特徴とする。
【0009】
なお、本発明に係るメレンゲの「乾燥グラニュー糖粉末」とは、グラニュー糖粉末を、例えば、オーブンで150℃以上の高温下で加熱すること等により、グラニュー糖粉末に含有している水分を、ほぼ完全に取り除いた上で、新たに大気中の水蒸気を吸収しないよう、吸湿せずに略脱水状態のまま保持されているグラニュー糖粉末のことを、乾燥グラニュー糖粉末と定義している。
【0010】
(2)(1)に記載するメレンゲにおいて、前記卵白100質量部に対し、前記乾燥グラニュー糖粉末の配合量は、150〜200質量部の範囲内であること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載するメレンゲにおいて、前記砂糖は、前記第1の砂糖とは別に、第2の砂糖として、コーンスターチと粉砂糖との混合物であるコーンスターチ入り粉砂糖を、含んでいること、を特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るメレンゲの製造方法は、以下の構成を有する。
(4)グラニュー糖粉末を加熱することにより、熱せられた状態の乾燥グラニュー糖粉末を生成する第1工程と、クリームタータ(cream of terter)、塩、またはレモン汁のうち、少なくとも1種以上の添加材と、卵白と、前記乾燥グラニュー糖粉末とを、混合して撹拌することにより、メレンゲ生地を生成する第2工程と、を有すること、を特徴とする。
(5)(4)に記載するメレンゲの製造方法において、前記第2工程では、前記卵白、及び前記添加材に対し、前記乾燥グラニュー糖粉末は、前記第1工程で熱せられた状態で混合すること、を特徴とする。
(6)(4)または(5)に記載するメレンゲにおいて、前記第2工程では、コーンスターチと粉砂糖との混合物であるコーンスターチ入り粉砂糖を加えること、を特徴とする。
(7)(4)乃至(6)のいずれか1つに記載するメレンゲにおいて、前記第1工程では、前記グラニュー糖粉末を150℃以上で加熱すること、を特徴とする。
(8)(4)乃至(7)のいずれか1つに記載するメレンゲにおいて、前記第2工程では、冷蔵されていた状態の前記卵白を用いること、を特徴とする。
(9)(4)乃至(8)のいずれか1つに記載するメレンゲにおいて、前記メレンゲ生地は、粘度100±10(Pa・s)であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記構成を有する本発明のメレンゲの作用・効果について説明する。
(1)卵白と砂糖とを含むメレンゲにおいて、砂糖は、第1の砂糖として、乾燥グラニュー糖粉末であること、を特徴とする。この特徴により、本発明のメレンゲが、例えば、100℃近傍の加熱でメレンゲ生地を焼成したものであっても、本発明のメレンゲでは、割れや欠けの発生が抑えられている。また、本発明のメレンゲは、第1の砂糖を含有したものであり、伝統的な製法に基づいた砂糖を、そのまま材料に使用していることから、本来の美味しさや食感を受け継いだ菓子となっている。
【0013】
従って、本発明に係るメレンゲによれば、汎用の加熱装置を使用して焼成する場合でも、伝統的な美味しさや食感を保ちつつ、割れや欠けを抑えることができている、という優れた効果を奏する。
【0014】
(2)に記載するメレンゲにおいて、卵白100質量部に対し、乾燥グラニュー糖粉末の配合量は、150〜200質量部の範囲内であること、を特徴とする。この特徴により、本発明に係るメレンゲが、幾何学的な形状の装飾等を伴うものであっても、本発明に係るメレンゲでの装飾等は、精巧に造形することができている。
【0015】
(3)に記載するメレンゲにおいて、砂糖は、第1の砂糖とは別に、第2の砂糖として、コーンスターチと粉砂糖との混合物であるコーンスターチ入り粉砂糖を、含んでいること、を特徴とする。この特徴により、本発明に係るメレンゲの表層部は、凹凸を抑えて、きめの細かい綺麗な状態で仕上がっていると共に、経時的に吸湿にし難くなっている。
【0016】
また、上記構成を有する本発明のメレンゲの製造方法の作用・効果について説明する。
(4)グラニュー糖粉末を加熱することにより、熱せられた状態の乾燥グラニュー糖粉末を生成する第1工程と、クリームタータ(cream of terter)、塩、またはレモン汁のうち、少なくとも1種以上の添加材と、卵白と、乾燥グラニュー糖粉末とを、混合して撹拌することにより、メレンゲ生地を生成する第2工程と、を有すること、を特徴とする。この特徴により、例えば、100℃近傍の加熱でメレンゲ生地を焼成しても、割れや欠けを抑えたメレンゲを得ることができる。しかも、このメレンゲは、第1の砂糖を含有したものであり、伝統的な製法に基づいた砂糖を、そのまま材料に使用していることから、本来の美味しさや食感を受け継いだ菓子となっている。
【0017】
従って、本発明に係るメレンゲの製造方法によれば、汎用の加熱装置を使用して焼成する場合でも、伝統的な美味しさや食感を保ちつつ、割れや欠けを抑えることができている、という優れた効果を奏する。
【0018】
(5)に記載するメレンゲの製造方法において、第2工程では、卵白、及び添加材に対し、乾燥グラニュー糖粉末は、第1工程で熱せられた状態で混合すること、を特徴とする。この特徴により、乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖)は、第1工程後、第2工程を行うまでの間に、大気中の水蒸気を新たに吸収し難く、卵白、及び添加材に対し、溶け易くなっている。そのため、生成されたメレンゲの生地は、キメの細やかな性状となり、成形された形状に対しも、崩れ難く安定性を有した性状となる。
【0019】
(6)に記載するメレンゲにおいて、第2工程では、コーンスターチと粉砂糖との混合物であるコーンスターチ入り粉砂糖を加えること、を特徴とする。この特徴により、コーンスターチ入り粉砂糖を加えたメレンゲの生地を焼成すると、焼き上がったメレンゲの表層部は、凹凸を抑えて、きめの細かい綺麗な状態で仕上がると共に、経時的に吸湿にし難くなる。また、生成されるメレンゲの生地の粘度が、第1の砂糖単種のみの場合と比べ、第2の砂糖に含む砂糖分の配合で、より高くなる。そのため、小さな装飾や、薄くて細やかな装飾、面が幾何学的に複雑化した立体的な形状で配置された装飾等を造形して加飾する場合でも、第1の砂糖単種のみの場合と比べ、所望とする形状の装飾が、造形し易くなる。
【0020】
(7)に記載するメレンゲにおいて、第1工程では、グラニュー糖粉末を150℃以上で加熱すること、を特徴とする。この特徴により、グラニュー糖粉末に含有した水分を、より確実に取り除くことができ、乾燥度の高い乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖)を得ることができる。
【0021】
(8)に記載するメレンゲにおいて、第2工程では、冷蔵されていた状態の卵白を用いること、を特徴とする。この特徴により、常温下で保管されていた卵白を用いた場合と比べ、冷えている卵白を用いて撹拌し、生成したクリーム状のメレンゲの生地では、きめ細かな泡まで容易に泡立つようになり、泡立ちがより促進される。これにより、メレンゲの生地に泡となって包含していた空気が、可及的に外部に放たれるため、メレンゲの生地の焼成による割れや欠けが、メレンゲに生じ難くなる。
【0022】
(9)に記載するメレンゲにおいて、メレンゲ生地は、粘度100±10(Pa・s)であること、を特徴とする。この特徴により、メレンゲが、幾何学的な形状の装飾等を伴うものであっても、メレンゲの生地は、滑らかな絞り出しで自在に装飾を成形できる粘度になっていると共に、装飾の造形にも適す粘度を有した物性となっている。そのため、絞り出されたメレンゲの生地は、装飾を造形している間に、型崩れすることなく、乾燥焼き後でも、意図とした所望の形状に沿って絞り出されたままの状態を維持している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るメレンゲと、その製造方法について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明のメレンゲは、本実施形態では、メレンゲ生地により、クッキーを造形して装飾した装飾付きのメレンゲクッキー(以下、「装飾付きメレンゲ」と称する。)である場合について、説明する。装飾付きメレンゲは、例えば、カフェ等の飲食店で提供される場合のほか、商品を展示したショールームの来客者向けに、飲み物と一緒に提供される場合や、日常生活の中で、集まった人へのもてなしの場等で提供される菓子である。なお、本発明のメレンゲの対象は、本実施形態のように、造形による装飾を施した装飾付きメレンゲ以外にも、本発明に係るメレンゲの製造方法により、生成したメレンゲ生地を焼成したメレンゲであれば、装飾の有無に拘わらず、何でも良い。
【0025】
近年、装飾付きメレンゲは、日常生活を通じて、若い女性や子供をはじめ、老若男女を問わず、幅広い層の人から広く好まれており、観光客等の来訪者の間でも、装飾付きメレンゲの人気は、高くなっている傾向にある。その一因として、装飾付きメレンゲは、サクッとした食感と甘くてほろっと崩れる口当たりを呈することから、菓子として美味しく食べることができる。それに加え、飲食時では、装飾付きメレンゲは、造形された装飾により、それを見る人に、安らぎと癒しを与えながら、豊かな気持ちにさせて、より楽しい一時を演出する材料にもなり得るからである。特に、焼成による割れや欠けがなく、装飾が精巧に造形されていると、この装飾付きメレンゲの付加価値は、より大きくなる。
【0026】
次に、本実施形態の装飾付きメレンゲについて、例示する実施例1〜3を挙げて簡単に説明する。
【0027】
<実施例1>
図8は、実施例1に係る装飾付きメレンゲとして、クマ風のメレンゲクッキーを示す図である。
図8に示すように、実施例1に係る装飾付きメレンゲ40A(装飾付きメレンゲ40)は、後述するメレンゲ生地により、装飾全体で表面の凹凸を抑えて、より平面的に造形して焼き上げたクマ風のメレンゲクッキーである。装飾付きメレンゲ40Aでは、本体部41A(本体部41)は、厚さ数〜十数mm程で、クマの身体に似せて、茶色に着色して造形されたフレンチメレンゲで、装飾部42A(装飾部42)によって加飾されている。装飾部42Aでは、複数の装飾43Aが、クマの鼻や耳、目のほか、手に抱えるウサギ等の細部を表現して造形されたスイスメレンゲで、一つひとつの装飾43Aは、一例としたブルー、ピンク、ホワイト等、本体部41Aと異なる色で着色したメレンゲ生地で造形されている。
【0028】
<実施例2>
図9は、実施例2に係る装飾付きメレンゲとして、フラワーポット調のメレンゲクッキーを示す図である。
図9に示すように、実施例2に係る装飾付きメレンゲ40B(装飾付きメレンゲ40)は、円盤状のクッキーに、メレンゲ生地で造形した装飾を、より立体的に施して焼き上げたフラワーポット調のメレンゲクッキーである。装飾付きメレンゲ40Bでは、本体部41B(本体部41)は、厚さ数〜十数mm程で円盤状に焼かれたクッキー(フレンチメレンゲ)であり、装飾部42B(装飾部42)が、本体部41Bを土台にして加飾されている。装飾部42Bでは、装飾43Bは、幾重にも花弁を拡げる花の風合いを、リアルに表現して造形したスイスメレンゲであり、一つひとつの装飾43Bは、一例としたローズ等、本体部41Aと区別した色で着色したメレンゲ生地で造形されている。
【0029】
<実施例3>
図10は、実施例3に係る装飾付きメレンゲとして、ゾウ風のメレンゲクッキーを示す図である。
図10に示すように、実施例3に係る装飾付きメレンゲ40C(装飾付きメレンゲ40)は、その全体を、メレンゲ生地で、より立体的に造形して焼き上げたゾウ風のメレンゲクッキーである。装飾付きメレンゲ40Cでは、本体部41C(本体部41)は、座った姿勢のゾウに似せて、薄い青色に着色したメレンゲ生地で造形されたフレンチメレンゲであり、装飾部42C(装飾部42)によって加飾されている。装飾部42Cでは、複数種の装飾43Cが、ゾウの目や爪等の細部を表現して造形したスイスメレンゲであり、一つひとつの装飾43Cは、一例としたピンク色、ホワイト色、黒色等、本体部41Cと異なる色で着色したメレンゲ生地で造形されている。
【0030】
次に、本実施形態の装飾付きメレンゲ40の生地について、説明する。
図1は、実施形態に係るメレンゲ生地の組成を模式的に示す説明図である。実施例1〜3をはじめ、本実施形態の装飾付きメレンゲ40では、
図1にように、メレンゲ生地1は、卵白10と、第1の砂糖21(砂糖20)とを、少なくとも含む。卵白10が100質量部に対し、第1の砂糖21である乾燥グラニュー糖粉末の配合量は、150〜200質量部の範囲内である。
【0031】
卵白10は、保管していた冷蔵庫の冷蔵室から取り出した直後の状態や、産卵した直後で冷やした状態等、生のまま冷えされて新鮮な状態を保ったものである。特に、卵白10が新鮮な状態であると、卵白10を用いて撹拌して生成したクリーム状のメレンゲ生地1(
図4参照)では、撹拌によって生じる泡が、安定して破裂し易い態様で泡立つようになるため、泡の破裂より、泡に内包している空気が、外部に放散し易くなる。また、常温下で保管されていた卵白を用いた場合と比べ、冷えている卵白10を用いて撹拌し、生成したクリーム状のメレンゲ生地1(
図4参照)では、大きな泡のほか、きめ細かな泡についても、泡立ちが促進的される。そのため、泡の破裂を伴う撹拌により、メレンゲ生地1に泡となって包含していた空気は、泡の破裂により、可及的に外部に放たれ、メレンゲ生地1の焼成による割れや欠けが、装飾付きメレンゲ40に生じ難くなる。
【0032】
第1の砂糖21は、卵白10等に対し、溶け易い微粒子状の乾燥グラニュー糖粉末である。乾燥グラニュー糖粉末は、本実施形態では、グラニュー糖粉末を、オーブンで150℃以上の高温下で加熱することにより、グラニュー糖粉末に含有している水分を、ほぼ完全に取り除いた上で、新たに大気中の水蒸気を吸収しないよう、高温状態のままで、吸湿せずに略脱水状態のまま保持したものである。
【0033】
また、スイスメレンゲを作る場合、メレンゲ生地1には、主成分である卵白10と第1の砂糖21以外にも、第2の砂糖22(砂糖20)や添加材30が、装飾付きメレンゲ40の種類に応じて加えられることもある。第2の砂糖22は、コーンスターチと粉砂糖との混合物であるコーンスターチ入り粉砂糖である。コーンスターチ入り粉砂糖は、吸湿し難くサラサラで、主成分とも混ざり易い。そのため、第2の砂糖22がメレンゲ生地1に含有していると、焼き上がった装飾付きメレンゲ40では、その表層部は、凹凸を抑えて、きめの細かい綺麗な状態で仕上がると共に、吸湿にし難くなる。
【0034】
特に、コーンスターチが、第2の砂糖22に含有されていることで、第2の砂糖22は、サラサラとした性状を、経時的に維持できている。そのため、主成分である卵白10と第1の砂糖21に対し、粉砂糖単体や、オリゴ糖入りの粉砂糖を混合した場合に比べ、コーンスターチ入り粉砂糖(第2の砂糖22)を主成分に加えて、メレンゲ生地1を焼成した装飾付きメレンゲ40では、割れや欠けが、生じ難くなる。
【0035】
添加材30は、クリームタータ(cream of terter)(酒石酸水素カリウム、別名:ケレモル)、コーンスターチ、塩、レモン汁、エッセンス、食用色素等であり、メレンゲ生地1の物性、またはメレンゲ生地1を焼成した装飾付きメレンゲ40の物性を調整するために適宜配合される。卵白10に対し、クリームタータを少量配合することで、卵白10に生じる泡は、安定した状態になる。また、卵白10の臭みを消すために、メレンゲ生地1に、レモン汁が少量配合されていると、クリームタータの作用と同様、卵白10に生じる泡は、安定した状態になる。コーンスターチは、メレンゲ生地1を硬めに調整することができる。
【0036】
塩は、装飾付きメレンゲ40の味を引き締めるために少量配合される。また、塩は、タンパク質を凝固する作用を有しており、卵白10に触れると、卵白10による泡立ちが促進される。エッセンスは、例えば、ストロベリーエッセンス、オレンジエッセンス等であり、装飾付きメレンゲ40に、エッセンスの味と香りを加える。食用色素は、必要に応じて、メレンゲ生地1を着色するために少量配合される。
【0037】
次に、本実施形態に係るメレンゲの製造方法について、説明する。本実施形態に係るメレンゲの製造方法は、装飾付きメレンゲ40のメレンゲ生地1を生成する方法であり、第1工程、及び第2工程を有する。第1工程は、グラニュー糖粉末を、150℃以上で加熱することにより、熱せられた状態の乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)を生成する。
【0038】
第2工程は、クリームタータ(cream of terter)、塩、またはレモン汁のうち、少なくとも1種以上の添加材30と、冷蔵されていた状態の卵白10と、乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)とを、混合して撹拌することにより、メレンゲ生地1を生成する。具合的には、第2工程では、添加材30と卵白10を混合し、撹拌して一次混合物を生成した後、一次混合物と、第1工程で熱せられた状態にある乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)とを、混合して撹拌することにより、メレンゲ生地1を生成する。生成するメレンゲ生地1の粘度は、100±10(Pa・s)である。また、第2工程では、コーンスターチと粉砂糖との混合物であるコーンスターチ入り粉砂糖(第2の砂糖22)を加えて撹拌することにより、メレンゲ生地1を生成する場合もある。
【0039】
具体的に説明する。実施例1〜3に挙げた装飾付きメレンゲ40(装飾付きメレンゲ40A、40B、40C)のうち、例えば、本体部41のように、特に、複雑な形状でなく、細やか造形等を要しない部分は、フレンチメレンゲの生地(メレンゲ生地1)によって、焼き上げられる。他方、例えば、装飾部42のように、幾何学的に細かく繊細な装飾や、立体的に精巧な装飾等の造形を施す部分は、スイスメレンゲの生地(メレンゲ生地1)によって、焼き上げられる。
【0040】
<フレンチメレンゲの生地の製造方法>
はじめに、フレンチメレンゲの生地の製造方法について、説明する。
図2は、実施形態に係るメレンゲの製造方法により、フレンチメレンゲの生地を生成するまでの過程を示すフローチャート図である。
図4は、クリーム状に生成されたメレンゲ生地の表面状態を示す説明図である。
【0041】
まず、フレンチメレンゲの生地を生成する場合では、実施形態に係るメレンゲの製造方法の第1工程を実施するにあたり、
図2に示すように、グラニュー糖粉末の加熱を行う(S1)。具体的には、計量した所定量のグラニュー糖粉末を、クッキングシート上に、厚みを薄くして平たく広げた状態で載せ、この状態のグラニュー糖粉末を、前もって予熱を行ったオーブンで加熱して、熱せられた状態の乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)を生成する。加熱の一例として、グラニュー糖粉末24gを加熱する場合、電気オーブンでは、加熱温度は180℃、加熱時間は約8min.であり、ガスオーブンでは、加熱温度は170℃、加熱時間は約7min.である。
【0042】
次に、実施形態に係るメレンゲの製造方法の第2工程を実施する手順として、冷やされた卵白10と、添加材30であるクリームタータ、レモン汁、及び塩を、それぞれ必要な配合量を計量した上で、一つのボウル内に入れて混合し、ミキサーで撹拌する(S2)。しばらくの間、卵白10と添加材30との撹拌を続けることで、泡立ったクリーム状の一次混合物が生成される(S3)。
【0043】
この一次混合物を、さらに撹拌し続けると、一次混合物の表面に、尖端をなす角状の突起(参照する
図4の突起5)がピンと立った状態になる程、一次混合物は泡立つ。一次混合物が、このような状態の下、泡が滅失した段階で、乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)を、オーブン炉内から取り出す。そして、炉内で高温に熱せられたままの状態にある乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)を、ボウル内の一次混合物と混合させて、第1の砂糖21と一次混合物とを撹拌する(S4)。このとき、第1の砂糖21を小分けにして一次混合物と混ぜ合わせ、双方の撹拌状態を確かめながら、第1の砂糖21全部が一次混合物と混合するまで、一次混合物に対する第1の砂糖21の混合とその撹拌を、複数回に亘って、繰り返し行う。
【0044】
次に、第1の砂糖21と一次混合物を混ぜ合わせた二次混合物を撹拌し続けると、二次混合物の粘度が、概ね100±10(Pa・s)になったところで、
図4に示すように、尖端をなす角状の突起5が、二次混合物の表面にピンと立った状態で形成される。このような状態になったクリーム状の二次混合物は、ちょうど洋菓子に用いるホイップクリームのような、滑らかな粘度を有しており、装飾付きメレンゲ40を焼成する生地に適す性状のメレンゲ生地1になっている。かくして、メレンゲ生地1は生成される(S5)。
【0045】
生成されたメレンゲ生地1を、所望の色に着色する場合には、メレンゲ生地1に食用色素(添加材30)を加えて撹拌し、メレンゲ生地1を、添加材30によって呈する色に着色する。
【0046】
<スイスメレンゲの生地の製造方法>
次に、スイスメレンゲの生地の製造方法について、説明する。
図3は、実施形態に係るメレンゲの製造方法により、スイスメレンゲの生地を生成するまでの過程を示すフローチャート図である。
【0047】
スイスメレンゲの生地を生成する場合では、実施形態に係るメレンゲの製造方法の第1工程を実施するにあたり、
図3に示すように、グラニュー糖粉末の加熱を行う(S11)。グラニュー糖粉末の加熱では、前述したフレンチメレンゲの生地の製造方法と同じ要領で、熱せられた状態の乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)を生成する。
【0048】
次に、実施形態に係るメレンゲの製造方法の第2工程を実施する手順として、冷やされた卵白10と、添加材30であるクリームタータ、レモン汁、及び塩を、それぞれ必要な配合量を計量した上で、一つのボウル内に入れて、卵白10と添加材30との一次混合物を得る(S12)。
【0049】
次に、乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)をオーブン炉内から取り出し、炉内で高温に熱せられたままの状態にある乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)を、ボウル内の一次混合物に加え、ゴムベラで第1の砂糖21と一次混合物とを混ぜ合せる(S13)。このとき、S13では、第1の砂糖21を小分けにして一次混合物の中に入れ、双方の混合状態を確かめながら、第1の砂糖21全部が一次混合物との混合を完了するまで、一次混合物に対する第1の砂糖21の添加とその混合を、複数回に亘って、繰り返し行う。
【0050】
次に、一次混合物に第1の砂糖21が混ぜ合さったボウル内の二次混合物を、加熱装置を用いて湯煎にかけ、液体状の二次混合物を、ゴムベラで混ぜながら加熱する(S14)。次に、この二次混合物の温度が55℃に到達した時点で、二次混合物の入ったボウルを、加熱装置から外して、二次混合物の湯煎かけを解除する(S15)。次に、湯煎かけの解除後、すぐにボウル内の二次混合物を、ミキサーで撹拌する(S16)。しばらくの間、二次混合物の撹拌を続けて泡が滅失し、二次混合物の粘度が、概ね100±10(Pa・s)になったところで、二次混合物の表面に、尖端をなす角状の突起(参照する
図4の突起5)がピンと立った状態になる程に、クリーム状の二次混合物が生成される(S17)。
【0051】
次に、細かいメッシュで開口した網を通じて、コーンスターチ入り粉砂糖(第2の砂糖22)を、ふるいにかけながらクリーム状の二次混合物に加え、第2の砂糖22が二次混合物に馴染んで混ぜ合わさるまで、第2の砂糖22とクリーム状の二次混合物とを撹拌する(S18)。二次混合物に第2の砂糖22を混ぜ合さった三次混合物は、ちょうど洋菓子に用いるホイップクリームのような、滑らかな粘度を有したクリーム状になっており、装飾付きメレンゲ40を焼成する生地に適す性状のメレンゲ生地1になっている。かくして、メレンゲ生地1は生成される(S19)。
【0052】
生成されたこのメレンゲ生地1に、所望の色に着色する場合には、メレンゲ生地1に食用色素(添加材30)を加えて撹拌し、メレンゲ生地1を、添加材30によって呈する色に着色する。
【0053】
次に、装飾43を造形する要領について、簡単に説明する。
図5は、クリーム状のメレンゲ生地を充填した様子を示す説明図であり、(a)は絞り袋に充填した場合を、(b)はコルネに充填した場合を、それぞれ示す図である。
図6は、絞り袋からクリーム状のメレンゲ生地を絞り出し、土台のクッキー上に装飾を造形する様子を示す説明図である。
図7は、絞り袋からクリーム状のメレンゲ生地を絞り出して、フラワーネイル上に装飾を造形した様子を示す説明図である。
【0054】
図5に示すように、フレンチメレンゲ向けのメレンゲ生地1は、洋菓子作りに用いる口金61付きの絞り袋60に充填され、スイスメレンゲ向けのメレンゲ生地1は、コルネ65に充填される。
図6に示すように、絞り袋60の口金61から絞り出されたメレンゲ生地1を、所望の形状に成形しながら、装飾付きメレンゲ40の本体部(
図6では、装飾付きメレンゲ40Bの本体部41B)が、造形される。また、コルネ65から絞り出されたメレンゲ生地1を、所望の形状に成形しながら、装飾43が、装飾付きメレンゲ40の本体部上に造形される。
【0055】
例えば、クマの鼻や耳、目のほか、手に抱えるウサギ、ゾウの目や爪等のような細部の装飾43A,43B,43C(43)を造形する場合等では、メレンゲ生地1は、コルネ65から直接、装飾付きメレンゲ40の本体部上に絞り出されて、所望の形状に成形される。また、例えば、小さな花びらや、細やかな葉等のような細部の装飾43B(43)等を、より小さく精巧に造形する場合等では、メレンゲ生地1は、コルネ65からフラワーネイル80の皿81上に絞り出されて、装飾43が造形される。造形された装飾43は、フラワーネイル80から装飾付きメレンゲ40の本体部に移されて加飾される。
【0056】
なお、装飾43が、装飾43Bのように、幾重にも花弁を拡げる花を、絞ったメレンゲ生地1でリアルに成形して造形する場合、第2の砂糖22(コーンスターチ入り粉砂糖)を含んだメレンゲ生地1は用いず、第1の砂糖21(乾燥グラニュー糖粉末)とコーンスターチ(添加材30)とが、少なくともメレンゲ生地1に含んでいることが好ましい。その理由として、第1の砂糖21以外に、第2の砂糖22(コーンスターチ入り粉砂糖)に含む砂糖分が、メレンゲ生地1に含まれていると、成形時に、メレンゲ生地1が垂れ落ちてしまうことがあり、メレンゲ生地1による花の成形が困難になる。そのため、第2の砂糖22(コーンスターチ入り粉砂糖)に代えて、コーンスターチ(添加材30)を配合することにより、メレンゲ生地1の硬さが適度に調整できて、メレンゲ生地1による花の成形が、容易になるからである。
【0057】
造形されたメレンゲ生地1は、フレンチメレンゲ向けのメレンゲ生地1や、スイスメレンゲ向けのメレンゲ生地1とも、乾燥焼きを経て、装飾付きメレンゲ40として焼き上がる。乾燥焼きは、温度70〜80℃に設定可能なフードドライヤーや、一般的に広く使用された家庭用オーブン等のように、最低温度100℃程に設定可能な市販のオーブンで、メレンゲ生地1を、好ましくは70〜約100℃の範囲内の温度で加熱して行われる。かくして、装飾付きメレンゲ40が、その割れや欠けを抑えて製造される。
【0058】
次に、本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40、及びその製造方法の作用・効果について説明する。
【0059】
本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40では、砂糖20は、第1の砂糖21として、乾燥グラニュー糖粉末であること、を特徴とする。この特徴により、割れや欠けを抑えた装飾付きメレンゲ40を得ることができる。すなわち、メレンゲ生地を焼成してメレンゲを作るにあたり、砂糖に水分が含まれていると、メレンゲ生地を加熱している最中、砂糖に含む水分が、加熱によって、膨張を伴いながら水蒸気となり、気化する。この膨張が、メレンゲに生じる割れや欠けの一因となる。これに対し、メレンゲ生地1を焼成した装飾付きメレンゲ40では、乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)は、水分をほとんど含んでいない。そのため、装飾付きメレンゲ40が、たとえ100℃近傍の加熱でメレンゲ生地1を焼成されたものであっても、メレンゲ生地1を加熱している間、第1の砂糖21による水分に起因した装飾付きメレンゲ40の割れや欠けの発生を抑制することができている。また、装飾付きメレンゲ40は、第1の砂糖21を含有したものであり、伝統的な製法に基づいた砂糖を、そのまま材料に使用していることから、本来の美味しさや食感を受け継いだ菓子となっている。
【0060】
従って、本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40によれば、汎用の加熱装置を使用して焼成する場合でも、伝統的な美味しさや食感を保ちつつ、割れや欠けを抑えることができている、という優れた効果を奏する。
【0061】
また、本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40によれば、卵白10が100質量部に対し、乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)の配合量は、150〜200質量部の範囲内であること、を特徴とする。この特徴により、実施例2に挙げたフラワーポット調の装飾付きメレンゲ40Bの装飾43Bのように、幾何学的な形状の装飾43B等を加飾した装飾付きメレンゲ40であっても、装飾付きメレンゲ40の装飾43は、精巧に造形することができている。
【0062】
すなわち、第1の砂糖21は、卵白10を凝固させる作用を有する。しかしながら、第1の砂糖21の配合量が、150質量部を下回ると、第1の砂糖21によって、卵白10の凝固が不充分で、装飾43等の造形時に、その複雑な形状を維持できる程の粘度に、メレンゲ生地1はしっかりと固まらない。その反対に、第1の砂糖21の配合量が、200質量部を上回ると、メレンゲ生地1の粘度は、装飾43等を所望とする形状に成形できない程、高くなり過ぎてしまい、装飾43等を成形することさえできない。よって、装飾43Bを付した装飾付きメレンゲ40を作ることはできない。
【0063】
また、本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40によれば、砂糖20は、第1の砂糖21とは別に、第2の砂糖22として、コーンスターチと混合した粉砂糖を、含んでいること、を特徴とする。この特徴により、装飾付きメレンゲ40の表層部は、凹凸を抑えて、きめの細かい綺麗な状態で仕上がっていると共に、経時的に吸湿にし難くなっている。
【0064】
また、第2の砂糖22(コーンスターチ入り粉砂糖)に含む砂糖分が配合されていることで、生成されるメレンゲ生地1の粘度が、第1の砂糖21単種のみの場合と比べ、より高くなる。そのため、小さな装飾43や、薄くて細やかな装飾43、面が幾何学的に複雑化した立体的な形状で配置された装飾43等(装飾部42)を造形して加飾した装飾付きメレンゲ40を作る場合、このような装飾付きメレンゲ40は、造形し易い。
【0065】
また、本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40の製造方法では、グラニュー糖粉末を加熱することにより、熱せられた状態の乾燥グラニュー糖粉末を生成する第1工程と、クリームタータ、塩、またはレモン汁のうち、少なくとも1種以上の添加材30と、卵白10と、乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)とを、混合して撹拌することにより、メレンゲ生地1を生成する第2工程と、を有すること、を特徴とする。この特徴により、例えば、100℃近傍の加熱でメレンゲ生地1を焼成しても、割れや欠けを抑えた装飾付きメレンゲ40を得ることができる。
【0066】
すなわち、メレンゲ生地を焼成してメレンゲを作るにあたり、砂糖に水分が含まれていると、メレンゲ生地を加熱している最中、砂糖に含む水分が、加熱によって、膨張を伴いながら水蒸気となり、気化する。この膨張が、メレンゲに生じる割れや欠けの一因となる。これに対し、装飾付きメレンゲ40の製造方法により、生成されたメレンゲ生地1を焼成すると、乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)は、水分をほとんど含んでいないため、メレンゲ生地1を加熱している間、第1の砂糖21による水分に起因した装飾付きメレンゲ40の割れや欠けの発生を抑制することができている。また、装飾付きメレンゲ40は、第1の砂糖21を含有したものであり、伝統的な製法に基づいた砂糖を、そのまま材料に使用していることから、本来の美味しさや食感を受け継ぐ菓子となっている。
【0067】
従って、本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40の製造方法によれば、汎用の加熱装置を使用して焼成する場合でも、伝統的な美味しさや食感を保ちつつ、割れや欠けを抑えることができている、という優れた効果を奏する。
【0068】
また、本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40の製造方法によれば、第2工程では、卵白10、及び添加材30に対し、乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)は、第1工程で熱せられた状態で混合すること、を特徴とする。この特徴により、乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)は、第1工程後、第2工程を行うまでの間に、大気中の水蒸気を新たに吸収し難く、卵白10、及び添加材30に対し、溶け易くなっている。そのため、生成されたメレンゲ生地1は、キメの細やかな性状となり、成形された形状に対しも、崩れ難く安定性を有した性状となる。
【0069】
また、本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40の製造方法によれば、第2工程では、コーンスターチと粉砂糖との混合物であるコーンスターチ入り粉砂糖(第2の砂糖22)を加えること、を特徴とする。この特徴により、コーンスターチ入り粉砂糖(第2の砂糖22)を含有したメレンゲ生地1を焼成すると、焼き上がった装飾付きメレンゲ40の表層部は、凹凸を抑えて、きめの細かい綺麗な状態で仕上がると共に、経時的に吸湿にし難くなる。また、生成されるメレンゲ生地1の粘度が、第1の砂糖21単種のみの場合と比べ、第2の砂糖22(コーンスターチ入り粉砂糖)に含む砂糖分の配合で、より高くなる。そのため、小さな装飾43や、薄くて細やかな装飾43、面が幾何学的に複雑化した立体的な形状で配置された装飾43等(装飾部42)を造形して加飾する場合でも、第1の砂糖単種のみの場合と比べて、所望とする形状の装飾43が、造形し易くなる。
【0070】
また、本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40の製造方法によれば、第1工程では、グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)を150℃以上で加熱すること、を特徴とする。この特徴により、グラニュー糖粉末に含有した水分を、より確実に取り除くことができ、乾燥度の高い乾燥グラニュー糖粉末(第1の砂糖21)を得ることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40の製造方法によれば、第2工程では、冷蔵されていた状態の卵白10を用いること、を特徴とする。この特徴により、常温下で保管されていた卵白を用いた場合と比べ、冷えている卵白10を用いて撹拌し、生成したクリーム状のメレンゲ生地1(
図4参照)では、きめ細かな泡まで容易に泡立つようになり、泡立ちがより促進される。これにより、メレンゲ生地1に泡となって包含していた空気が、可及的に外部に放たれるため、メレンゲ生地1の焼成による割れや欠けが、装飾付きメレンゲ40に生じ難くなる。
【0072】
また、本実施形態に係る装飾付きメレンゲ40の製造方法によれば、メレンゲ生地1は、粘度100±10(Pa・s)であること、を特徴とする。この特徴により、メレンゲ生地1は、滑らかな絞り出しで自在に装飾43を成形できる粘度になっていると共に、装飾43の造形にも適す粘度を有した物性となっている。そのため、絞り出されたメレンゲ生地1は、装飾43を造形している間に、型崩れすることなく、乾燥焼き後でも、意図とした所望の形状に沿って絞り出されたままの状態を維持している。
【0073】
その一例として、実施例2の装飾付きメレンゲ40Bの場合、造形された装飾43(装飾部42)では、花びらのしなり具合や、花びらの柔和な曲線美、花びらの艶、花びらと葉との調和等、花びらの美しさが、自然調のままの風合いで表現できている。従って、実施例2に例示した花びらやその周囲の葉のように、装飾43が、たとえ細やかで複雑な形状をなす緻密なものであっても、まるで実物であるかのように、精巧に造形することができる。ひいては、装飾付きメレンゲ40は、菓子として美味しく食べることができるほか、人に共感を与える程に、立体的な臨場感と、質感に満ちた装飾部42を備えているため、鑑賞の対象にもなり、装飾付きメレンゲ40の付加価値は高い。
【0074】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0075】
(1)例えば、実施形態では、実施例1〜3の装飾付きメレンゲ40A、40B、40Cを例示して、装飾付きメレンゲ40を説明したが、メレンゲ生地を使って造形する装飾は、実施形態に限定されるものではなく、幾何学的な立体形状のほか、例えば、図柄や模様、文字等でも良く、メレンゲ生地を自在に絞り出して造形されるものであれば、何でも良い。
(2)また、実施形態では、メレンゲ生地1を、絞り袋60の口金61から絞り出されて、所望の形状に成形した。また、コルネ65に充填したメレンゲ生地1を直接絞り出して装飾43を造形した。しかしながら、本発明のメレンゲの製造方法の第2工程で生成されたメレンゲ生地は、型を用いた成形によって、造形されても良い。
【0076】
(3)また、実施形態では、スイスメレンゲ向けの生地として、第1の砂糖21(乾燥グラニュー糖粉末)と共に、第2の砂糖22(コーンスターチ入り粉砂糖)を配合したメレンゲ生地1を挙げたが、メレンゲ生地が、本発明のメレンゲの製造方法の第2工程で生成されているものであれば、スイスメレンゲ向けの生地は、コーンスターチ入り粉砂糖(第2の砂糖)を配合していないメレンゲ生地であっても良い。
(4)また、実施形態では、添加材30として、クリームタータ、コーンスターチ、塩、レモン汁、エッセンス、食用色素等を挙げたが、メレンゲ生地に配合する添加材は、適宜変更可能であり、実施形態に限定されるものではなく、添加材30のうち、いずれかに該当する材料の場合の他、これら以外の材料であっても良い。