特開2021-99346(P2021-99346A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社協成の特許一覧 ▶ 独立行政法人物質・材料研究機構の特許一覧

特開2021-99346銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置
<>
  • 特開2021099346-銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置 図000004
  • 特開2021099346-銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置 図000005
  • 特開2021099346-銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置 図000006
  • 特開2021099346-銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置 図000007
  • 特開2021099346-銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置 図000008
  • 特開2021099346-銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-99346(P2021-99346A)
(43)【公開日】2021年7月1日
(54)【発明の名称】銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/06 20060101AFI20210604BHJP
   G01R 1/067 20060101ALI20210604BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20210604BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20210604BHJP
   C23F 1/18 20060101ALI20210604BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20210604BHJP
   H01R 43/16 20060101ALI20210604BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20210604BHJP
【FI】
   G01R1/06 A
   G01R1/067 C
   C22F1/08 B
   C22F1/08 C
   C22F1/08 Q
   C22F1/08 S
   C22C9/00
   C23F1/18
   H01R13/03 A
   H01R43/16
   C22F1/00 611
   C22F1/00 623
   C22F1/00 625
   C22F1/00 630A
   C22F1/00 661A
   C22F1/00 682
   C22F1/00 685Z
   C22F1/00 686A
   C22F1/00 691B
   C22F1/00 613
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-15535(P2021-15535)
(22)【出願日】2021年2月3日
(62)【分割の表示】特願2018-554604(P2018-554604)の分割
【原出願日】2018年7月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-135081(P2017-135081)
(32)【優先日】2017年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516125118
【氏名又は名称】株式会社協成
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(74)【代理人】
【識別番号】100115451
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 武史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】坂井 義和
(72)【発明者】
【氏名】菊池 章弘
【テーマコード(参考)】
2G011
4K057
5E063
【Fターム(参考)】
2G011AA10
2G011AB01
2G011AC31
2G011AE03
4K057WA11
4K057WB04
4K057WE02
4K057WE08
4K057WN01
5E063GA09
5E063XA04
5E063XA08
(57)【要約】
【課題】コンタクトピンを構成する材料およびその加工手法に着目して、従来のものとは異なる材料及び加工手法によって導電性部材を製造する。
【解決手段】導電性部材を、銅及び銀を含む銅銀合金に対して、少なくとも銅合金用エッチング液を用いてエッチング処理を行うことによって得るが、選択的に、銅合金用エッチング液に対して銀用エッチング液が添加されていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅及び銀を含む銅銀合金に対して、少なくとも銅合金用エッチング液を用いてエッチング処理を行うことによって得られる導電性部材。
【請求項2】
前記銅合金用エッチング液に対して銀用エッチング液が添加されている、請求項1記載の導電性部材。
【請求項3】
請求項1記載の導電性部材を用いたコンタクトピン。
【請求項4】
請求項1記載の導電性部材を用いた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置に関し、特に、半導体ウエハ、PKGなどの検査に用いられる、銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子デバイスのためのコンタクトが開示されており、このコンタクトは、所定の形状を有し、テストされるべき物体、すなわち集積回路のリードと接触するコンタクト部、2つの支持突出部、及び本体を含む上側コンタクトピンと、上側コンタクトピンに直交するように上側コンタクトピンに結合される下側コンタクトピンと、上側コンタクトピンと下側コンタクトピンとの間に所定のエリアにわたって嵌め込まれるばねとを有する。上側コンタクトピンと下側コンタクトピンは、棒状の銅合金材料を機械加工し、金めっきすることによって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−516398号公報の要約書及び(0006)段落
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているコンタクト(テスター)は、表面に金めっきが施されているが、金の導電率は、一般に、合金に比して劣るので、金めっきされた上側コンタクトピン及び下側コンタクトピンを用いた場合、導電率、強度の点では、必ずしも最適材料であるとはいえない。最先端の半導体デバイスは、ピッチがますます微細化していて、かつ、大電流を流す傾向にあることから、金めっきされたコンタクトピンでは、この後の半導体ウエハの検査を行うことが困難となりつつある。
【0005】
本発明は、コンタクトピンを構成する材料およびその加工手法に着目して、特許文献1に開示されたものとは異なる材料及び加工手法によってコンタクトピンを製造することを課題とする。
【0006】
また、本発明は、コンタクトピンのみならず、当該素材を用いた導電性部材、テスターユニット、及び、検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の導電性部材は、銅及び銀を含む銅銀合金に対して、少なくとも銅合金用エッチング液を用いてエッチング処理を行うことによって得られる。
【0008】
前記銅合金用エッチング液に対して銀用エッチング液が添加されていてもよい。
【0009】
また、本発明のコンタクトピンは、上記導電性部材を用いて製造されている。
【0010】
さらに、上記導電性部材を用いて各種装置を製造することもできる。ここでいう装置とは、例えば、インターポーザーのようなコネクタ、プローブ、ICソケットを含むテスター、ボイスコイルモータなどに用いられる産業用のスプリング、手ブレ補正用のオプティカルイメージスタビライザのサスペンションワイヤなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態のコンタクトピン1000の模式図である。
図2図1に示すコンタクトピン1000の製造方法の説明図である。
図3】本発明の実施形態のコンタクトピン1000の製造装置の模式的な構成図である。
図4】銅に対する銀の添加量が6wt%として製造した銅銀合金板を用いて製造したコンタクトピン1000の評価結果を示す図である。
図5】銅に対する銀の添加量が10wt%として製造した銅銀合金板を用いて製造したコンタクトピン1000の評価結果を示す図である。
図6図3の製造装置の変形例の説明図である。
【符号の説明】
【0012】
10 パイプ
15 マスクパターン
20 露光装置
30 回転装置
50,60 液槽
100 銅銀合金体
1000 コンタクトピン
【発明の実施の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態のコンタクトピン1000の模式図である。図1に示すコンタクトピン1000は、半導体ウエハに直接接触させて、半導体ウエハに所望の電流が流れるか否かを検査する検査装置などに用いられる。
【0015】
コンタクトピン1000は、略S字のスネーク形状に形成されているばね部130と、コンタクトピン1000本体の強度をもたせるための基部114、124と、基部114、124に隣接する上側コンタクト112及び下側コンタクト122とを備える。コンタクトピン1000は、銅銀合金を材料としており、ここでは、平面的な形状のものを示しているが、円柱状のように立体的な形状のものとすることもできる。
【0016】
コンタクトピン100の各部のサイズは、これらに限定されるものではないが、以下のとおりとすることができる。
ばね部130:全体幅約1mm、線径:約0.2mm、全体長さ約8mm、
基部114::幅約1mm、長さ約3mm、
基部124::幅約1mm、長さ約4mm、
上側コンタクト112、下側コンタクト122:幅約0.5mm、長さ、約2mm。
【0017】
ここで、銅合金は、一般的には、強度と導電率とがトレードオフの関係にあり、高強度であれば低導電率であり、逆に高導電率であれば低強度であることが知られている。そこで、本実施形態では、銅銀合金板の製造工程を工夫して、高強度かつ高導電率の銅銀合金板を製造している。
【0018】
また、エッチングにおいては、銅銀合金を構成する銀部分と銅部分とのエッチングレートは異なる。ここで、本実施形態に係る銅銀合金は、大半が銅から構成され、銅に対する銀の添加量によって、その強度と導電率とが左右される。このため、最終的にコンタクトピン1000に必要な強度と導電率とを達成可能な条件で、銅銀合金板のエッチングを行っている。以下、(1)銅銀合金板の製造工程と(2)銅銀合金板のエッチング工程との具体的手法について説明する。
【0019】
(1)銅銀合金板の製造工程について
まず、銅銀合金板を構成する銅及び銀をそれぞれ用意する。銅としては、例えば、市販品である電気銅或いは無酸素銅を10mm×30mm×50mmの短冊状にしたものを用意する。銀としては、概形の一次直径が2mm〜3mm程度の粒状の銀を用意する。なお、無酸素銅は、例えば、10mm−30mm×10mm−30mm×2mm−5mmのような平板を用いてもよい。
【0020】
銅に対する銀の添加量は0.2wt%−15wt%の範囲、好ましくは、0.3wt%−10wt%の範囲、より好ましくは0.5wt%−6wt%の範囲としている。これは、銅銀合金板の製造コストの低廉化を考慮すると、銀の添加量は相対的に少ない方が好ましいといえるが、0.5wt%銀未満という少なさでは、コンタクトピン1000に要求される強度が得ることができないことによる。
【0021】
つぎに、上記条件で銀を添加した銅を、タンマン炉を含む高周波又は低周波の真空溶解炉などの溶解炉に入れて、溶解炉をオンして例えば1200℃程度まで昇温させ、銅と銀とを十分に溶解させることによって銅銀合金を鋳造する。
【0022】
その後、鋳造してインゴットとした銅銀合金に対して溶体化熱処理を施す。この際、大気中において銅銀合金を鋳造していた場合には、そのインゴットの表面は酸化しているため、その酸化部分を研削する。一方、銅銀合金は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性雰囲気において鋳造することもでき、この場合には、そのインゴットの表面研削処理は不要となる。銅銀合金に対して溶体化熱処理を施した後には冷間圧延を行い、例えば、350℃〜550℃で析出熱処理を行う。
【0023】
表1は、本発明の実施形態の銅銀合金板の強度、導電率の測定結果を示す表である。
【0024】
【表1】
【0025】
表1には、銅に対する銀の添加量を、それぞれ、2wt%、3wt%、6wt%、8wt%と変更し、かつ、いずれの場合においても、銅銀合金板の板厚を、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mmと変更している。
【0026】
表1に示すように、銅に対する銀の添加量が増加するにつれて、引張強度は増加し、導電率は減少する傾向にあることがわかる。また、銅銀合金板の板厚も引張強度及び導電率に影響を及ぼしており、板厚が減少するにつれて、引張強度は増加し、導電率は減少する傾向にあることがわかる。
【0027】
したがって、銅銀合金を用いた導電性部材の用途に応じて、適宜、銅に対する銀の添加量及び銅銀合金板の板厚を決定すればよいということが言える。
【0028】
(2)銅銀合金板のエッチング工程について
図2は、図1に示すコンタクトピン1000の製造方法の説明図である。図2には、コンタクトピン1000の前駆体である銅銀合金体100と、コンタクトピン1000の形状に対応するマスクパターン15(ここでは、模式的に網掛けで図示している)が壁部に形成された透光性を有するパイプ10とを示している。なお、図2に示す銅銀合金体100は、既述の手法によって製造した大判の銅銀合金体100を、コンタクトピン1000のサイズに対応させて切り出したものである。
【0029】
銅銀合金体100の表面には、パイプ10に挿入される前に、既知のように、ヨウ化銀、臭化銀、アクリルなどの感光性物質が吹付、含浸等によって塗布される。この際、必要に応じて、感光性物質の塗布に先立って、銅銀合金体100にカップリング剤を塗布して、感光性物質の密着性を高めてもよい。また、感光性物質が塗布された銅銀合金体100を100℃〜400℃程度の温度で所定時間加熱するというプリベーク処理を施すことによって、感光性物質を固化させるとよい。
【0030】
パイプ10は、石英ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス、珪酸系ガラス、アクリル樹脂などからなる。パイプ10の内径は、マスクパターン15が内壁に形成される場合には、感光性物質が表面で固化している銅銀合金体100のサイズとほぼ同じとするとよい。
【0031】
これは、後述する露光処理を行っている際に、パイプ10と銅銀合金体100との位置ずれすることを防止して、正確なパターン転写を行うためである。したがって、パイプ10の内径は、パイプ10に対して銅銀合金体100を圧入等によって挿入できる程度とすればよい。なお、パイプ10の形状は、円筒状とする必要はなく、断面が楕円状のものとしてもよいし、角状のものとしてもよい。
【0032】
マスクパターン15は、露光装置20(図3)によって照射される紫外光を選択的に銅銀合金体100に到達させるものであり、最終製品であるコンタクトピン1000の形状に対応するパターンとされる。マスクパターン15の形成方法は、特に限定されるものではなく、電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ、真空蒸着など既知のメッキ法のいずれを採用してもよい。メッキによって形成する金属膜は、0.5μm〜5.0μm程度の厚みとすればよく、その材料としてはニッケル、クロム、銅、アルミニウムなどを用いることができる。なお、マスクパターン15は、ポジ型、ネガ型のいずれであってもよい。
【0033】
また、マスクパターン15の形成は、パイプ100の内壁に対して行ってもよいし、外壁に対して行ってもよい。パイプ100が小径で、かつ、2cm〜3cmのように短い場合には、パイプ100の内壁にマスクパターン15を形成することが可能である。必要に応じて露光装置20からの照射光を平行光に変更するレンズを設けることによって、露光時の解像度を高くしてもよい。
【0034】
図3は、本発明の実施形態のコンタクトピン1000の製造装置の模式的な構成図である。図3には、銅銀合金体100が挿入されたパイプ10をその軸心を中心に回転させる回転装置30と、パイプ10の円筒面に向けて紫外光などを照射する露光装置20と、露光装置20によって露光された銅銀合金体100を現像する現像液が入れられた液槽50と、銅銀合金体100が含浸されるエッチング液が入れられた液槽60とを示している。
【0035】
なお、図3に示す各部は、説明の理解容易を目的として描かれており、実際には、図示している寸法比とならない場合がある点に留意されたい。
【0036】
回転装置30は、図示しない内蔵モータに接続されている回転軸部32と、回転軸部32の先端に位置するパイプ受け部34とを備える。パイプ受け部34は、回転軸部32に対して着脱可能な構成としており、パイプ10のサイズに応じて選択可能としている。回転軸部32は、例えば、下記条件の露光装置20の場合には、1分間に1〜2回転の速度で回転するように設定されている。したがって、回転軸部32の回転速度は、露光条件に応じて決定すればよい。なお、回転装置30は、図3に示すようにパイプ10の一端のみに接続するのではなく、その両端に接続するようにしてもよい。
【0037】
露光装置20は、360nm〜440nm(例えば、390nm)程度の波長で、出力が150W程度の紫外光を照射するものである。具体的には、これに限定されるものではないが、露光装置20は、キセノンランプ、高圧水銀灯などを用いることができる。露光装置20は、ここでは1台のみ設けている例を示しているが、複数台設けることによって露光時間の短縮化を図ることも可能である。なお、露光装置20とパイプ10との距離は、上記の紫外光の照射条件のものであれば、20cm〜50cm程度の間隔とすればよい。
【0038】
液槽50は、露光装置20を用いて露光処理がなされた銅銀合金体100から余計な感光性材料を除去するための現像液が入れられている。現像液は、感光性材料に応じて選択すればよいが、有機アルカリであるTMAH(tetra-methyl-ammonium-hydroxide)の2.38wt%水溶液を用いることができる。
【0039】
液槽60は、露光装置20によって露光された銅銀合金体100に対して、現像処理を施してから所望のリンス処理をした後にエッチングするためのエッチング液が入れられている。エッチング液は、比重が1.2〜1.8程度の塩化第二鉄、過硫酸アンモニアと塩化第2水銀との混合液など銅合金のエッチングに適したエッチング液を選定しているが、さらに、選択的に、同程度の比重の硝酸第二鉄液などの銀のエッチングに適したエッチング液を少量(例えば、5%程度)添加することもできる。
【0040】
こうすると、溶解時に銀の塊などが仮に発生していたとしても、エッチング処理後の銅銀合金体100の表面に、その銀の塊が残存することが防止できる。もっとも、硝酸第二鉄液などの添加量が多いと、エッチング処理後の銅銀合金体100の表面における銀の割合が少なくなり、コンタクトピン1000の表面強度が低下してしまうため、好ましくない。
【0041】
つぎに、コンタクトピン1000の製造方法について説明する。まず、銅銀合金体100に形成しようとしているパターンに対応するマスクパターン15が、たとえば内壁に形成されているパイプ10を用意する。パイプ10は、既述のように、石英ガラスなどからなる。
【0042】
また、銅銀合金体100の外表面にも感光性材料を塗布等する。その後、銅銀合金体100を100℃〜400℃程度の温度でプリベーク処理する。こうして感光性材料が固化された銅銀合金体100を、パイプ10内に挿入する。
【0043】
つづいて、パイプ10を回転装置30のパイプ受け部34に取り付け、回転装置30の内蔵モータを駆動する。これにより、パイプ10をその軸心を中心として回転させる。つぎに、露光装置20をオンすることで、銅銀合金体100が挿入されているパイプ10を回転させながら露光する。
【0044】
その後、パイプ10から銅銀合金体100を取り出して、現像液が入れられている液槽50に、数十秒(例えば20秒)ほど含浸させる。こうして、銅銀合金体100から余計な感光性材料を除去する。それから、既知のように、銅銀合金体100に対してリンス処理を行ってから、銅銀合金体100をエッチング液が入れられている液槽60に含浸させる。含浸時間は、銅銀合金体100の材料、厚さなどに応じて決定すればよいが、一般的には2分〜15分、例えば10分以下とすればよい。以上の工程により、所望の形状のコンタクトピン1000を製造することができる。
【0045】
なお、コンタクトピン1000の表面に対して、グラフェンなどのカーボン、ナノ銀などを、電解メッキ、真空蒸着、静電スプレー等によって、2μm〜3μm程度の厚さの塗膜処理を施せば、更に導電性を高めることができ、コンタクトピン1000の許容電流を向上させることができる。
【0046】
図4は、銅に対する銀の添加量が6wt%として製造した銅銀合金板を用いて製造したコンタクトピン1000の評価結果を示す図である。評価対象のコンタクトピン1000は、図1を用いて説明したサイズのものであり、全長が約20mm、厚さが約0.2mmである。なお、図4に示す評価試験は、コンタクトピン1000の変位量を0.8[mm]とする回数を1万回実行した場合の平均値である。また、1万回実行しても、コンタクトピン1000には、機能及び性能の低下は見受けられなかった。
【0047】
図4(a)には、コンタクトピン1000の移動量と荷重との関係を示している。なお、図4(a)では、横軸にコンタクトピン1000の変位量[mm]を示し、縦軸にコンタクトピン1000の荷重[gf]を示している。図4(b)には、コンタクトピン1000の移動量と接触抵抗との関係を示している。なお、図4(b)では、横軸にコンタクトピン1000の変位量[mm]を示し、縦軸にコンタクトピン1000の導電率に係る接触抵抗値[mΩ]を示している。
【0048】
また、図4(a)及び図4(b)に示す実線はコンタクトピン1000の変位量が0[mm]から0.8[mm]まで移行する場合の荷重及び接触抵抗値、破線はコンタクトピン1000の変位量が0.8[mm]から0[mm]まで移行する場合の荷重及び接触抵抗値を示している。
【0049】
図4(a)によれば、コンタクトピン1000の変位量が0[mm]から0.8[mm]まで移行する場合も、0.8[mm]から0[mm]まで移行する場合も、荷重が10[gf]以下である。
【0050】
図4(b)によれば、コンタクトピン1000の変位量が0[mm]から0.8[mm]まで移行する場合には変位量が約0.25[mm]以上となると、接触抵抗値が100[mΩ]以下となり、0.8[mm]から0[mm]まで移行する場合には変位量が約0.1[mm]までは、接触抵抗値が100[mΩ]以下となることがわかる。
【0051】
図5は、銅に対する銀の添加量が10wt%として製造した銅銀合金板を用いて製造したコンタクトピン1000の評価結果を示す図である。評価対象のコンタクトピン1000は、図1を用いて説明したサイズのものであり、全長が約20mm、厚さが約0.2mmである。なお、図5に示す評価試験は、コンタクトピン1000の変位量を0.8[mm]とする回数を1万回実行した場合の平均値である。また、1万回実行しても、コンタクトピン1000には、機能及び性能の低下は見受けられなかった。
【0052】
図5(a)には、コンタクトピン1000の移動量と荷重との関係を示している。なお、図5(a)では、横軸にコンタクトピン1000の変位量[mm]を示し、縦軸にコンタクトピン1000の荷重[gf]を示している。図5(b)には、コンタクトピン1000の移動量と接触抵抗との関係を示している。なお、図5(b)では、横軸にコンタクトピン1000の変位量[mm]を示し、縦軸にコンタクトピン1000の導電率に係る接触抵抗値[mΩ]を示している。
【0053】
図5(a)によれば、コンタクトピン1000の変位量が0[mm]から0.8[mm]まで移行する場合も、0.8[mm]から0[mm]まで移行する場合も、荷重が10[gf]以下であることがわかる。
【0054】
図5(b)によれば、コンタクトピン1000の変位量が0[mm]から0.8[mm]まで移行する場合には変位量が約0.35[mm]以上となると、接触抵抗値が100[mΩ]以下となり、0.8[mm]から0[mm]まで移行する場合には変位量が約0.1[mm]までは、接触抵抗値が100[mΩ]以下となることがわかる。
【0055】
なお、近年、半導体ウエハ検査装置においては、コンタクトピンの変位量が0.1[mm]〜0.3[mm]程度であり、この場合に、荷重が約4[gf]以下であり、接触抵抗値が200[mΩ]以下であること、という要請があるが、コンタクトピン1000は、図4及び図5のいずれの評価結果からもわかるように、この要請を満たしている。
【0056】
また、近年、ICパッケージ用のテストソケット装置においては、コンタクトピンの変位量が0.5[mm]程度であり、この場合に、荷重が約25[gf]以下であり、接触抵抗値が200[mΩ]以下であること、という要請があるが、コンタクトピン1000は、図4及び図5のいずれの評価結果からもわかるように、この要請を満たしている。
【0057】
さらに、近年、プローブピン、チェッカーピンといった電子回路及びこれが搭載された基板においては、コンタクトピンの変位量が1.0[mm]程度であり、この場合に、荷重が約10[gf]〜20[gf]以下であり、接触抵抗値が200[mΩ]以下であること、という要請があるが、コンタクトピン1000は、図4及び図5のいずれの評価結果からもわかるように、この要請を満たしている。
【0058】
さらにまた、近年、電池の検査装置においては、コンタクトピンの変位量が0.7[mm]程度であり、この場合に、荷重が約14[gf]以下であり、接触抵抗値が100[mΩ]以下であること、という要請があるが、コンタクトピン1000は、図4及び図5のいずれの評価結果からもわかるように、この要請を満たしている。
【0059】
図6は、図3の製造装置の変形例の説明図である。図6には、パイプ10と露光装置20a〜20hとを示している。なお、図6は、図3のパイプ10の軸心方向から見た図となる。図3では1台の露光装置20のみによって露光をする例を示しているが、ここではパイプ10の円筒面を例えば8台の露光装置20a〜20hによって囲む状態を示している。
【0060】
このように、パイプ10を複数の露光装置20a〜20hによって露光すると、回転装置30を設けてパイプ10を回転させなくても、パイプ10の円筒面を漏れなく露光することが可能となる。このため、図6に示す例の場合には、回転装置30の設置が必要なくなるという利点がある。
【0061】
以上のように、本実施形態は、導電性部材の例示として、半導体テスターを構成するコンタクトピン1000の製造装置及び製造方法について例示したが、コンタクトピン1000以外の導電性材料としても用いることができる。具体的には、インターポーザーのようなコネクタ、プローブ、ICソケットを含むテスター、ボイスコイルモータなどに用いられる産業用のスプリング、手ブレ補正用のオプティカルイメージスタビライザのサスペンションワイヤなどが例示される。
【0062】
さらに、本実施形態では、銅銀合金板を製造する場合を例に説明したが、板材のみならず、例えば、用途に応じた直径の丸線材を製造してもよい。そうすると、既述のように、導電性材料を用いて最終的に得られる製品が円柱状である場合、或いは、上記例示のスプリング等には、銅銀合金板から切り出す手間が省けるので製造工程が簡素化できる。すなわち、本実施形態の導電性部材は、最終製品の形状に応じた形状の銅銀合金体を製造することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6