上記課題を解決するべく、本発明の画像表示装置は、一方の面にマイクロプリズム構造11が形成された光学体10を備え、該光学体10のマイクロプリズム構造11が、前記画像表示装置の画像表示面側Oに形成されており、前記マイクロプリズム構造11は、形成面13から前記画像表示面側Oに突出した頂点12Cを有する三角波状のプリズム12が複数形成されており、且つ、該三角波状のプリズム12は、前記形成面13から延在する2つの斜面12A、12Bの角度α、βがそれぞれ異なる非対称三角波型プリズムであることを特徴とする。
前記三角波状のプリズムを構成する斜面は、前記形成面からの傾斜角が10°以上である第1の斜面と、前記形成面からの傾斜角が前記第1の斜面よりも60°以上大きい第2の斜面と、からなることを特徴とする、請求項1に記載の画像表示装置。
前記マイクロプリズム構造における、前記三角波状のプリズムがいずれも画像表示装置の横方向に延在し、且つ、前記第1の斜面が下に位置するように、前記光学体が配設されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像表示装置。
前記マイクロプリズム構造における、前記三角波状のプリズムの配設ピッチが、5〜50μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の、画像表示面に防眩性フィルムや反射防止フィルムを設ける技術では、画像表示装置が強い外光さらされる環境に置かれた際、十分な画像のコントラストを得ることができなかった。
また、特許文献1のようなモスアイ構造を備えた反射防止フィルムを用いた場合も、強い外光さらされる環境に置かれた際、十分な画像のコントラストを得ることができず、さらに、微細凹凸構造は繊細な構造であるため、外部からの圧力に対する耐久性についても改善を図る必要があった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、耐久性が高く、外光照射によるコントラスト低下を抑制できる、画像表示装置及び光学体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、表面にマイクロプリズム構造が形成された光学体を設けるとともに、該マイクロプリズム構造の形状及び配設方向について適正化を図ることによって、外光照射に起因した反射光を、観察者から見て上方向や下方向へ確実に逸らすことができるため、良好な画像のコントラストが得られること、さらに、マイクロリズム構造は、上述した微細なモスアイ構造に比べて強度が高いため、光学体の耐久性についても向上できることを見出した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)一方の面にマイクロプリズム構造が形成された光学体を備える、画像表示装置であって、
前記光学体のマイクロプリズム構造が、前記画像表示装置の画像表示面側に形成されており、
前記マイクロプリズム構造は、形成面から前記画像表示面側に突出した頂点を有する三角波状のプリズムが複数形成されており、且つ、該三角波状のプリズムは、前記形成面から延在する2つの斜面の傾斜角がそれぞれ異なる非対称三角波型プリズムであることを特徴とする、画像表示装置。
上記構成によって、光学体の耐久性を高め、外光照射によるコントラスト低下を抑制できる。
(2)前記三角波状のプリズムを構成する斜面は、前記形成面からの傾斜角が10°以上である第1の斜面と、前記形成面からの傾斜角が前記第1の斜面よりも60°以上大きい第2の斜面と、からなることを特徴とする、上記(1)に記載の画像表示装置。
(3)前記マイクロプリズム構造における、前記三角波状のプリズムがいずれも画像表示装置の横方向に延在し、且つ、前記第1の斜面が下に位置するように、前記光学体が配設されていることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の画像表示装置。
(4)前記マイクロプリズム構造における、前記三角波状のプリズムの配設ピッチが、5〜50μmであることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の画像表示装置。
(5)前記マイクロプリズム構造における、前記三角波状のプリズムがいずれも連続的に延在していることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の画像表示装置。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかのいずれか1項に記載の画像表示装置に設けられた光学体を製造する方法であって、
三角波状の溝が形成された金型を用意する工程と、
前記金型の溝の表面に剥離コーティングを施す工程と、
前記金型に施された剥離コーティング上に、硬化性樹脂を塗布する工程と、
前記硬化性樹脂上に、基材フィルムを配置した後、前記硬化性樹脂を硬化させる工程と、
前記金型から、前記基材フィルムと前記硬化性樹脂との積層体を剥離させる工程と、を具え、
前記金型の三角波状の溝は、水平面からの傾斜角が10°以上である第1の溝斜面と、水平面からの傾斜角が前記第1の斜面よりも60°以上大きい第2の溝斜面と、からなることを特徴とする、光学体の製造方法。
上記構成によって、耐久性が高く、外光照射によるコントラスト低下を抑制できる、画像表示装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐久性が高く、外光照射によるコントラスト低下を抑制できる、画像表示装置及び光学体の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例について、必要に応じて図面を用いながら具体的に説明する。
図1は、本発明の画像表示装置中の光学体の一実施形態を、示した斜視図であり、
図2(a)は、本発明の画像表示装置中の光学体の一実施形態を拡大し、断面を模式的に示した図であり、(b)は、本発明の画像表示装置中の光学体の一実施形態を拡大し、正面から見た状態を示した図である。
なお、各図面の中で開示した各部材については、説明の便宜のため、実際とは異なる縮尺及び形状で模式的に表しているものもある。
【0012】
<画像表示装置>
まず、本発明の画像表示装置の一実施形態について説明する。
本発明の画像表示装置は、
図1に示すように、一方の面にマイクロプリズム構造11が形成された光学体10を備える。
そして、本発明の画像表示装置では、
図1及び
図2(a)に示すように、前記光学体10のマイクロプリズム構造11が、前記画像表示装置の画像表示面側Oに形成されており、
前記マイクロプリズム構造11は、形成面13から前記画像表示面側Oに突出した頂点12Cを有する三角波状のプリズム12が複数形成されており、且つ、該三角波状のプリズム12は、前記形成面13から延在する2つの斜面12A、12Bの角度α、βがそれぞれ異なる非対称三角波型プリズムであることを特徴とする。
【0013】
本発明の画像表示装置における光学体10について、マイクロプリズム構造11を画像表示面側O(画像を見る観察者側)に形成するとともに、マイクロプリズム構造11を構成する三角波状のプリズム12(以下、単に「プリズム」ということもある。)を、上述した非対称三角波型プリズムとすることによって、
図1に示すように、照射された外光から生じた反射光の大部分を観察者とは正対しない方向(
図1では下方向)へ逸らすことができる結果、画像表示素子からの画像のコントラストの低下を有効に抑えることができる。
また、前記光学体10のマイクロプリズム構造11は、
図2(b)に示すように、三角波状のプリズム12が横方向Tに延在する形状を有しており、モスアイ構造のような微細凹凸構造に比べて、強度が高く、屋外や外圧のかかる状況においても高い耐久性を実現できる。
【0014】
ここで、前記光学体10の形成面13上に形成されたマイクロプリズム構造11は、形成面13から前記画像表示面側Oに突出した頂点12Cを有する複数のプリズム12からなる。
前記マイクロプリズム構造11を画像表示面側O(画像を見る観察者側)に形成することで、
図1に示すように、照射された外光から生じた反射光の大部分を観察者とは正対しない方向(
図1では下方向)へ逸らすことができる。
一方、前記マイクロプリズム構造11を、画像表示素子側Iに形成した場合には、画像表示面側O(画像を見る観察者側)が平面となるため、外光の多くが観察者側へ反射し、画像のコントラスト低下や、画質の悪化を招くことになる。
【0015】
前記マイクロプリズム構造11は、
図2(a)に示すように、三角波状のプリズム12が複数形成されており、該三角波状のプリズム12は、前記形成面13から延在する2つの斜面(第1の斜面12A、第2の斜面12B)の傾斜角α、βがそれぞれ異なる、非対称三角波型プリズムである。
前記三角波状のプリズム12を構成する第1の斜面12A及び第2の斜面12Bの角度が異なることによって、照射された外光の反射光の大部分を観察者とは正対しない方向(
図1では下方向)へ逸らすことができるとともに、画像表示素子からの光については、前記マイクロプリズム構造11を透過し、その大部分を観察者まで到達させることができる。
【0016】
一方、
図3に示すように、形成面13から延在する第1の斜面120A及び第2の斜面120Bの傾斜角α、βが同じ場合(対称三角波型プリズム)は、照射された外光の反射光を観察者とは正対しない方向(上方向又は下方向)へ逸らすことができる。しかしながら、画像表示素子からの光が透過する際、前記対象三角波型プリズムの中で全反射し、所望の透過性が得られず、非対称三角波型プリズム12からなる本発明のマイクロプリズム構造11に比べて、画像のコントラスト劣ることになる。
【0017】
上述したように、画質の低下を抑えつつ、より優れた画像のコントラストを得ることができる観点から、前記三角波状のプリズム12を構成する斜面は、前記形成面13からの傾斜角αが10°以上である第1の斜面12Aと、前記形成面13からの傾斜角βが前記第1の斜面12Aの傾斜角αよりも60°以上大きい第2の斜面12Bと、からなることが好ましく、前記第2の斜面12Bの傾斜角βと前記第1の斜面12Aの傾斜角αとの差が70°以上であることがより好ましい。
【0018】
また、画質の低下を抑えつつ、より優れた画像のコントラストを得ることができる観点から、前記三角波状のプリズム12の第1の斜面12Aの傾斜角αは、10°以上であることが好ましく、15°以上であることが好ましく、20°以上であることがより好ましい。
さらに、前記三角波状のプリズム12の第2の斜面12Bの傾斜角βは、70°以上であることが好ましく、80°以上であることが好ましく、85°以上であることがより好ましい。
このようなプリズム12として、例えば、前記三角波状のプリズム12の傾斜角αを20°、傾斜角βを90°とすることもできるし、前記三角波状のプリズム12の傾斜角αを30°、傾斜角βを100°とすることもできるし、前記三角波状のプリズム12の傾斜角αを35°、傾斜角βを105°することもできる。
【0019】
なお、前記プリズム12が有する第1の斜面12A及び第2の斜面12Bの傾斜角α、βは、いずれのプリズム12も同じ傾斜角であっても良いし、プリズム12ごとに前記傾斜角α、βを変えることもできる。ただし、製造の容易性や、不要な反射を防ぎ、より良好な画像のコントラストを得る観点からは、前記マイクロプリズム構造11中の全てのプリズム12が同じ傾斜角α、βを有することが好ましい。
【0020】
また、前記マイクロプリズム構造11中の各プリズム12の延在方向については、特に限定はされないが、
図2(a)及び(b)に示すように、前記三角波状のプリズム12が、いずれも画像表示装置の横方向Tに延在し、且つ、前記第1の斜面12Aが下に位置するように、前記光学体10が配設されていることが好ましい。
前記三角波状のプリズム12の第1の斜面12Aが観察者から見て下に位置するように、前記光学体10を設けることによって、
図1に示すように、入射した外光が下方へと反射するため、反射光が観察者の視界に入りにくくなり、より優れた画像のコントラストを得ることができる。
【0021】
さらに、
図2(a)及び(b)に示すように、前記マイクロプリズム構造11における、前記三角波状のプリズム12は、いずれも連続的に延在していることが好ましい。前記三角波状のプリズム12の切れ目がなくなるため、画像に線が入る等の問題をより確実に防ぐことができ、さらに、前記三角波状のプリズム12のバルクが大きくなるため、光沢体10の耐久性についてもより向上できる。
【0022】
なお、前記マイクロプリズム構造11中に形成された三角波状のプリズム12の数は、特に限定はされず、要求される光学体のサイズに応じて、適宜調整することができる。
【0023】
また、
図2(a)及び(b)に示すように、前記マイクロプリズム構造11における、前記三角波状のプリズム12の配設ピッチAは、5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。前記三角波状のプリズム12の配設ピッチAを5μm以上とすることで、より優れた製造性(プリズム12の製造のしやすさ)を得ることができ、前記三角波状のプリズム12の配設ピッチAを50μm以下とすることで、反射光の干渉を防ぐことができ、より優れた画像のコントラストを得ることができる。
【0024】
なお、前記マイクロプリズム構造11は、
図2(a)に示すように、前記マイクロプリズム構造11の三角波状のプリズム12が形成されていないマイクロプリズム構造11の支持部分(以下、マイクロプリズム構造11の「ベース部14」という。)を設けることもできる。前記マイクロプリズム構造11にベース部14を設けることで、製造時の容易性を確保できるとともに、三角波状のプリズム12の強度を高めることができ、光学体10の耐久性についても向上できる。
【0025】
また、前記マイクロプリズム構造のベース部14の厚さは、特に限定はされないが、0.1μm以上であることが好ましく、1μmであることがより好ましい。前記マイクロプリズム構造ののベース部14の厚さが1μm以上であることで、より高い耐久性が確保できるためである。
【0026】
ここで、前記マイクロプリズム構造11を構成する材料については、特に限定はされない。例えば、マイクロプリズム構造11の成形性の観点からは、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(光硬化性樹脂組成物、電子線硬化性樹脂組成物)、熱硬化性樹脂組成物等の、硬化反応により硬化する樹脂組成物であって、例えば重合性化合物と重合開始剤とを含有する樹脂組成物を用いることができる。
【0027】
重合性化合物としては、例えば、(i)1モルの多価アルコールに対して、2モル以上の比率の(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応させて得られるエステル化物、(ii)多価アルコールと、多価カルボン酸又はその無水物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物、等を使用できる。
上記(i)としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、アクリロイモノフォリン、ウレタンアクリレート、等が挙げられる。
上記(ii)としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等から選ばれる多価カルボン酸又はその無水物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応させて得られるエステル化物等が挙げられる。
これら重合性化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
さらに、前記樹脂組成物が光硬化性の場合には、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド;などが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0029】
電子線硬化性の場合には、電子線重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジンなどが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0030】
熱硬化性の場合には、熱重合開始剤としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。
【0031】
これらの光重合開始剤、電子線重合開始剤、熱重合開始剤は単独で使用してもよく、これらを所望に組み合わせて用いてもよい。
また、重合開始剤の量は、重合性化合物100質量部に対し0.01〜10質量部が好ましい。このような範囲であると、硬化が充分に進行するとともに、硬化物の分子量が適切となって充分な強度が得られ、また、重合開始剤の残留物等のために硬化物が着色するなどの問題も生じない。
【0032】
さらに、前記樹脂組成物には、必要に応じて、非反応性のポリマーや活性エネルギー線ゾルゲル反応性成分を含むことができ、増粘剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、溶剤、無機フィラー等の各種添加剤を含むこともできる。
【0033】
なお、前記光学体10は、前記マイクロプリズム構造体11と接着した基材15を、さらに形成することができる。
【0034】
前記基材15については、ある程度の強度を有し、透明なものであればよく、その他の構成は特に限定はされず、従来使用される材料から構成することができる。
例えば、前記基材15の材料として、ガラス、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
なお、本明細書において「透明」とは、可視光帯域(おおよそ360nm〜830nm)に属する波長の光の透過率が高いことを意味し、例えば、当該光の透過率が70%以上であることを意味する。
なお、本発明の一実施形態では、PET基材の125μm厚の基材を想定して検討を行った。
【0035】
さらに、前記基材15の形状についても、板状(フィルム状)であること以外は特に限定されず、前記基材15の厚さについても、特に限定はなく、前記光学体10に要求される条件に応じて適宜選択することができる。
【0036】
なお、本発明の画像表示装置は、
図1に示すように、前記光学体10を備えるが、その他の構成については特に限定はされず、画像表示装置の種類によって適宜選択することができる。
また、本発明の画像表示装置によって表示する「画像」は、静止画及び動画のいずれも含むものである。
【0037】
例えば、本発明の画像表示装置が、液晶ディスプレイ装置の場合には、前記光学体10の画像表示素子側Iに、光源や、液晶パネル、駆動回路等を有する画像表示素子が設けられる。また、本発明の画像表示装置が、有機ELディスプレイ装置の場合には、前記光学体10の画像表示素子側Iに、電源、電極、発光素子等を有する画像表示素子が設けられる。
【0038】
また、本発明の画像表示装置では、前記光学体10の画像表示面側Oにも、保護膜やカバー等の部材をさらに備えることもできる。
【0039】
本発明の画像表示装置については、例えば、液晶ディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置の他にも、カーナビや速度メーター等の車載の表示装置、屋外で使用されるディスプレイ装置、ゲーム機、スマートフォン、時計等が挙げられる。
【0040】
<光学体を製造する方法>
上述した本発明の画像表示装置に設けられた光学体を製造する方法については、特に限定はされないが、例えば、
図4に示すように、
三角波状の溝23が形成された金型20を用意する工程(
図4(a))と、
前記金型20の溝23の表面に剥離コーティング21を施す工程(
図4(b))と、
前記金型20に施された剥離コーティング21上に、硬化性樹脂22を塗布する工程(
図4(c))と、
前記硬化性樹脂22上に、基材フィルム15を配置した後、前記硬化性樹脂22を硬化させる工程(
図4(d))と、
前記金型20から、前記基材フィルム15と硬化した樹脂からなるマイクロプリズム構造11との積層体10’を剥離させる工程(
図4(e))と、を具える製造方法を用いることができる。
【0041】
そして、前記金型20の三角波状の溝23は、水平面からの傾斜角α’が10°以上である第1の溝斜面26Aと、水平面からの傾斜角β’が前記第1の斜面26Aよりも60°以上大きい第2の溝斜面と26B、からなることを特徴とする。
これによって、上述した、形成面13から前記画像表示面側Oに突出した頂点12Cを有する三角波状のプリズム12が複数形成されており、且つ、該三角波状のプリズム12は、前記形成面13から延在する2つの斜面12A、12Bの角度α、βがそれぞれ異なる非対称三角波型プリズムを有するマイクロプリズム構造11を確実に得ることができる。
【0042】
前記金型20を用意する工程については、
図4(a)に示すように、金型材料をバイト24等によって切削することで、前記溝23を形成し、金型20を作成することもできるが、必ずしも金型を作成する必要はなく、既に金型20がある場合には、それを用いればよい。さらに、前記金型材料の切削は、バイト24以外の方法で加工し、作成することもできる。
【0043】
また、前記金型20の三角波状の溝23は、水平面からの傾斜角α’が10°以上である第1の溝斜面26Aと、水平面からの傾斜角β’が前記第1の斜面26Aよりも60°以上大きい第2の溝斜面と26B、から構成されており、上述した三角波状のプリズム12の斜面12A、12Bの角度α、βの要求に応じて、適宜溝の傾斜角を変えることができる。
【0044】
前記剥離コーティング21を施す工程については、
図4(b)に示すように、溝23の表面全体に剥離コーティング21を施す工程である。この工程によって、後述する積層体10’の金型20からの剥離が容易になるという利点がある。
なお、前記剥離コーティング21の種類については、特に限定はされず、従来用いられている剥離コーティングを適宜使用することができる。例えば、フッ素コート処理等が挙げられる。
【0045】
前記硬化性樹脂22を塗布する工程については、
図4(c)に示すように、金型20の溝23に、マイクロプリズム構造11の材料となる硬化性樹脂22を塗布するための工程である。
前記硬化性樹脂の種類については、上述したマイクロプリズム構造11の材料の説明の中で記載した内容と同様である。
【0046】
前記硬化性樹脂22を硬化させる工程については、
図4(d)に示すように、前記硬化性樹脂22上に、基材フィルム15を配置し、その後、前記硬化性樹脂22を硬化させることで、基材フィルム15と前記硬化性樹脂22の硬化物(後のマイクロプリズム構造11)との積層体を形成できる。
なお、前記硬化性樹脂22上に、基材フィルム15を配置する際には、
図4(d)に示すように、前記硬化性樹脂22が溝23の全てに充填されている状態まで押圧した後、硬化させる。硬化の条件については、紫外線、熱、湿気等、樹脂の種類に応じて適宜設定することができる。
【0047】
前記金型20から積層体10’を剥離させる工程については、
図4(e)に示すように、前記基材フィルム15と硬化した樹脂からなるマイクロプリズム構造11との積層体10’を剥離する工程である。剥離した積層体10’は、そのまま又は加工を施した後、上述した光学体10となる。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
<実施例1〜3、比較例1〜5>
以下に記載するように、種々の条件の光学体を作成し、光学特性を評価した。
(比較例1)
厚さ1mmのガラスを、比較例1のサンプルとした。
【0050】
(比較例2)
厚さ1mmのガラスの上に、表面に凹凸を有するAGフィルム(恵和株式会社製)を設けたものを、比較例2のサンプルとした。
【0051】
(比較例3)
ガラス基板上に、多層ARフィルム(SiO
2/Nb
2O
5/SiO
2/Nb
2O
5/PETのフィルム、厚さ100μm)を、粘着フィルム(パナック株式会社製「PDS1」)によって貼りつけたものを、比較例3のサンプルとした。
【0052】
(比較例4)
ガラス基板上に、UV硬化型アクリル樹脂からなる微細凹凸構造(モスアイ構造)が形成されたフィルム(凹凸の平均ピッチ200nm、凸の平均高さ200nm)を、接着層(パナック株式会社製「PDS1」)を介して貼りつけたものを、比較例4のサンプルとした。
【0053】
(比較例5)
図3に示すように、UV硬化型アクリル樹脂からなる、三角波状のプリズム120を有し、プリズム120を構成する斜面がいずれも45°であり、平均配設ピッチが約20μmである対称三角波型のマイクロプリズム構造110を、ガラス基板上に形成したものを、比較例5のサンプルとして用いた。
【0054】
(実施例1)
図2(a)に示すように、UV硬化型アクリル樹脂からなる、三角波状のプリズム12を有し、プリズム12の第1の斜面12Aの傾斜角αが20°、第2の斜面12Bの傾斜角βが90°であり、平均配設ピッチが100μmである非対称三角波型のマイクロプリズム構造11を、ガラス基板上に形成したものを、実施例1のサンプルとして用いた。
【0055】
(実施例2)
図2(a)に示すように、UV硬化型アクリル樹脂からなる、三角波状のプリズム12を有し、プリズム12の第1の斜面12Aの傾斜角αが25°、第2の斜面12Bの傾斜角βが90°であり、平均配設ピッチが50μmであるマイクロプリズム構造11を、ガラス基板上に形成したものを、実施例2のサンプルとして用いた。
【0056】
(実施例3)
図2(a)に示すように、UV硬化型アクリル樹脂からなる、三角波状のプリズム12を有し、プリズム12の第1の斜面12Aの傾斜角αが30°、第2の斜面12Bの傾斜角βが80°であり、平均配設ピッチが50μmであるマイクロプリズム構造11を、ガラス基板上に形成したものを、実施例3のサンプルとして用いた。
【0057】
<評価>
各実施例及び各比較例で得られた積層体の各サンプルについて、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0058】
(1)コントラスト評価
LEDバックライト拡散光源(iphone 3 LCD用バックライトパネル)の前面に各サンプルの光学体を設置した。なお、比較例4及び5、実施例1〜3のサンプルについては、微細凹凸構造又はプリズム構造が、表示面側(観察者側)に向くように光学体を設置した。加えて、実施例1〜3のサンプルについては、微細凹凸構造における三角波状のプリズムがいずれも横方向に延在し且つ前記第1の斜面が下に位置するように光学体を設定した。
まず、LEDバックライト拡散光源をオフにした状態で、白色LEDによる外光を、光量MAXの状態で照射し、反射光の特性(外光反射の輝度、外光反射の色:x、外光反射の色:y)を、輝度計(株式会社トプコン製)を用いて測定した。
その後、LEDバックライト拡散光源をオンにし、パネル色をホワイトにした状態で、パネルからの光の輝度を、輝度計(Topcon製)を用いた。
そして、得られた外光反射の輝度及びLEDバックライト拡散光源からの光の輝度から、コントラスト比(LEDバックライト拡散光源からの光の輝度/外光反射の輝度)を算出した。
各サンプルについての、光学特性の測定結果及び算出結果については、表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の結果から、実施例1〜3の光学体のサンプルを用いた場合、各比較例のサンプルを用いた場合に比べて、コントラストが大幅に向上できていることがわかった。
比較例1のサンプルを用いた場合、外光の反射が大きく、コントラスト比が低くなっていることがわかる。また、比較例2のサンプルを用いた場合、AG構造の効果によって、比較例1よりは良好であるものの、外光の反射を十分に抑えることができていないことがわかる。さらに、比較例3及び4のサンプルを用いた場合には、反射防止処理による効果が多少みられるものの、強い外光が照射された場合には、外光反射の輝度が高くなっており、高いコントラストが得られていないことがわかる。
なお、比較例5のサンプルを用いた場合には、三角波状のプリズムの頂角が90°であるため、実施例1〜3のサンプルと同様に外光の反射を逸らすことができるものの、OLEDパネルからの光がプリズム内で全反射してしまうため、輝度が悪化していることが考えられる。加えて、外光の反射についても、最反射してしまい、十分なコントラストが得られていないことがわかる。
また、表1の結果から、実施例1〜3の光学体のサンプルを用いた場合、反射色度についても、ニュートラルに保たれており、画像表示性能についても良好に保たれていることがわかった。
【0061】
(2)分光反射測定
実施例1〜3、比較例2〜5の各サンプルの光学体に対して、
図5に示すような条件で、高強度LEDランプの光を照射し、外光の波長(nm)に応じた正反射率(%)を測定した。
なお、比較例4及び5、実施例1〜3のサンプルについては、微細凹凸構造又はプリズム構造が、表示面側(輝度測定カメラ側)に向くように光学体を設置した。加えて、実施例1〜3のサンプルについては、
図5に示すように、微細凹凸構造における三角波状のプリズムがいずれも横方向に延在し且つ前記第1の斜面が下に位置するように光学体を設定した。測定結果を、
図6に示す。
【0062】
図6の結果から、実施例1〜3の光学体のサンプルを用いた場合、外光による反射光を逸らすことができるため、正反射をほぼ0近くまで低減できていることがわかる。
一方、各比較例の光学体のサンプルを用いた場合には、実施例1〜3に比べると、正反射率が高くなっていることがわかる。
また、図示はしていないが、実施例1〜3、比較例2〜5の各サンプルの光学体に指紋を付着させたところ、比較例2のサンプルの光学体は、AG構造による散乱効果が減少し、また、比較例3及び4のサンプルの光学体は、光の干渉条件が変わり、反射率が高くなる結果となった。一方、実施例1〜3の光学体のサンプルの場合、指紋付着後も大きく反射率が高くなることはなかった。