(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2022-1384(P2022-1384A)
(43)【公開日】2022年1月6日
(54)【発明の名称】無機粘結剤コーテッドサンド
(51)【国際特許分類】
B22C 1/18 20060101AFI20211210BHJP
B22C 9/10 20060101ALI20211210BHJP
B22C 1/00 20060101ALI20211210BHJP
【FI】
B22C1/18 B
B22C1/18 Z
B22C9/10 J
B22C1/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
【公開請求】
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2021-169914(P2021-169914)
(22)【出願日】2021年9月15日
(71)【出願人】
【識別番号】520432129
【氏名又は名称】大阪硅曹株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 義明
【テーマコード(参考)】
4E092
4E093
【Fターム(参考)】
4E092AA01
4E092AA02
4E092AA03
4E092AA04
4E092AA18
4E092BA01
4E092BA04
4E092BA09
4E092BA10
4E093QA02
4E093QA10
(57)【要約】
【課題】 珪酸ソーダおよびメタ珪酸ソーダを用いた鋳物砂において、常温で流動性を有し、造型時においては外部からの高温蒸気を必要とせず造型用型の加熱により十分な強度を持つ中子が造型でき、且つ鋳造後の崩壊性や鋳物砂の再生処理が容易にできる乾態の鋳物砂を提供する。
【解決手段】 珪砂の表面に珪酸ソーダおよびメタ珪酸ソーダのうち少なくとも1種と、含水した焼成カオリンとをコーティングし、常温で流動性を有する鋳物砂であって、熱硬化により中子を造型することができる乾態の鋳物砂。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪砂の表面に珪酸ソーダおよびメタ珪酸ソーダのうち少なくとも1種と、含水した焼成カオリンとをコーティングし、常温で流動性を有する鋳物砂であって、熱硬化により中子を造型することができる乾態の鋳物砂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機中子用の鋳物砂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、無機中子の造型には、粘結剤として珪酸ソーダを表面にコーティングした鋳物砂を使用した様々な手法が知られている。
例えば、メタ珪酸ソーダをコーティングした鋳物砂を使用し、精密鋳造を行う鋳型の造型方法が開示されている。(例えば、特開昭63−295037号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−295037号
【0004】
珪酸ソーダやメタ珪酸ソーダを粘結剤と使用した無機中子は注湯時に鋳型からのガス発生量がシェルモールドやコールドボックスなどの有機中子に比べ少ないため、ガス欠陥が少なくまた異臭もしないため作業環境も良く近年注目を浴びている。しかし、珪酸ソーダやメタ珪酸ソーダを鋳物砂に使用した中子は、欠点も多い。特に次の欠点の対策が求められている。
(1)珪酸ソーダを用いた鋳物砂は通常湿態で使用されており流動性が悪いため、中子の造型用型への充填の難易度が高い。
(2)珪酸ソーダおよびメタ珪酸ソーダを用いた鋳物砂で造型された中子は、通常崩壊性が悪く、そのため鋳物砂の再生処理の難易度が高い。
【0005】
即ち本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、珪酸ソーダおよびメタ珪酸ソーダを用いた鋳物砂において、常温で流動性を有し、造型時においては外部からの高温蒸気を必要とせず造型用型の加熱により十分な強度を持つ中子が造型でき、且つ鋳造後の崩壊性や鋳物砂の再生処理が容易にできる乾態の鋳物砂を提供することを目的とする。
【0006】
上述の目的は、珪砂の表面に珪酸ソーダおよびメタ珪酸ソーダのうち少なくとも1種と、含水した焼成カオリンとをコーティングし、常温で流動性を有する鋳物砂であって、熱硬化により中子を造型することができる乾態の鋳物砂によって達成される。
【0007】
粘結剤の珪酸ソーダおよびメタ珪酸ソーダの配合量は、珪砂に対して1.0%〜9.0%が好ましく、特に5.0%〜7.0%が好ましい。
【0008】
含水した焼成カオリンの配合量は、珪砂に対して1.0%〜15.0%が好ましく、特に5.0%〜10.0%が好ましい。含水は珪砂の表面上で含水させることも可能であり、また水の代わりに珪酸ソーダ水溶液の含水も可能である。
【0009】
熱硬化の温度は、150℃以上300℃以下が好ましい。特に200℃以上300℃以下がより好ましい。
【0010】
本発明によれば、珪酸ソーダおよびメタ珪酸ソーダを用いた鋳物砂において、常温で流動性を有し、造型時においては外部からの高温蒸気を必要とせず造型用型の加熱により十分な強度を持つ中子が造型でき、且つ鋳造後の崩壊性や鋳物砂の再生処理が容易にできる乾態の鋳物砂を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0012】
(実施形態)
本実施形態は、珪砂の表面に珪酸ソーダおよびメタ珪酸ソーダのうち少なくとも1種と、含水した焼成カオリンとをコーティングし、常温で流動性を有する鋳物砂であって、熱硬化により中子を造型することができる乾態の鋳物砂を用いて中子を造型する。
【0013】
珪砂としては、フラタリー砂やアルバニー砂、フリマントル砂など各種珪砂が使用できる。
【0014】
無機粘結剤としては、珪酸ソーダおよびメタ珪酸ソーダを使用することができ、特に結晶水を多く含むメタ珪酸ソーダ9水塩が好ましい。
【0015】
添加剤の焼成カオリンへの含水は、珪砂への添加前に含水もしくは、珪砂に添加後に含水を行ってもよい。特に焼成カオリンの添加を配合の最後に行い、珪砂上の水分を完全に含水することで、無機粘結剤コーテッドサンドの常温流動性を向上することができる。また、水の代わりに珪酸ソーダ水溶液の含水も可能である。
【0016】
含水量は、焼成カオリンの吸油量により調整でき、また含水した水分は中子造型時の加熱の際に、焼成カオリンより水蒸気として発生し、珪砂表面にコーティングした珪酸ソーダおよびメタ珪酸ソーダと接触することで、中子の強度を増強させることができる。
【0017】
添加剤としては、焼成カオリン以外にも含水する粉末物質であれば、中子造型時の加熱の際に、水蒸気が発生し、中子強度の増強に寄与できる。
【実施例】
【0018】
本実施例では、珪砂はフラタリー砂を使用した。無機粘結剤としてメタ珪酸ソーダを使用し、添加剤として焼成カオリンを使用した。上記珪砂、無機粘結剤、添加剤および水を混合し、無機粘結剤コーテッドサンドを作成し、120mm×10mm×10mmの金型に充填後、金型を250℃にて5分間加熱して造型した試験片について、抗折強度を測定した。また試験片を700℃および1000℃にてそれぞれ1時間焼成し、常温に戻したのち、試験片の崩壊性の確認を行った。なお、フラタリー砂はあらかじめ355μmの網目の篩にかけ、355μm以上の砂を取り除いたものを使用した。
【実施例1】
【0019】
フラタリー砂28gにメタ珪酸ソーダを2.3g、焼成カオリンを1.2gおよび水0.5gを混合攪拌し無機粘結剤コーテッドサンドを作成し、120mm×10mm×10mmの金型に充填し、金型を250℃にて5分間加熱し造型した試験片の抗折強度を測定した。また試験片を700℃および1000℃にてそれぞれ1時間焼成し、常温に戻したのち試験片の崩壊性の確認を行った。
【0020】
(比較例1)フラタリー砂28gにメタ珪酸ソーダを2.3gおよび水0.5gを混合攪拌し無機粘結剤コーテッドサンドを作成し、実施例1と同様な測定を行った。
【0021】
(比較例2)フラタリー砂28gにメタ珪酸ソーダを2.3g、粉末シリカを1.2gおよび水0.5gを混合攪拌し無機粘結剤コーテッドサンドを作成し、実施例1と同様な測定を行った。
【0022】
(評価方法)
1.抗折強度
実施例1、比較例1および比較例2にて作成した試験片を用いて抗折強度の測定を行った。試験方法は、3点曲げ試験法を用いて測定を行った。抗折強度が30kgf/cm
2以上を合格とした。
【0023】
2.崩壊性
実施例1、比較例1および比較例2にて作成した試験片を振動にて崩壊後355μmの網目の篩にかけ通過率の測定を行い、崩壊したフラタリー砂の通過率が95%以上の場合を合格とした。
【0024】
(評価)
抗折強度および崩壊性について実施例1、比較例1および比較例2の結果を表1に示す。合格を○、不合格を×で記載した。
【表1】
【0025】
(総合評価)
実施例1は、抗折強度が30kgf/cm
2以上あり、かつ崩壊性も700℃および1000℃において良好な結果を示した。
比較例1は、乾態の無機粘結剤コーテッドサンドが得られず、金型へ十分な充填ができなかった。
比較例2は、抗折強度については、30kgf/cm
2以上と良好な結果が得られたが、崩壊性については良好な結果が得られなかった。