【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、上記の課題は、熱可塑性成形組成物であって、
(A)少なくとも1種のポリアミド(A1)、少なくとも1種のポリフェニレンエーテル(A2)および任意選択で相溶化剤(A3)、ならびに任意選択でオレフィン系および/またはビニル芳香族ポリマー(A4)の混合物;
(B)10〜60重量%の、ガラス組成が少なくとも10.0重量%の酸化ホウ素と、合計で最大15重量%の酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムとを含むガラスフィラー;
(C)1〜8重量%の成分(A)、(B)、および(C)以外のLDS添加剤;
(D)0〜5重量%の添加剤;
からなり、
前記混合物(A)が、いずれの場合も成分(M)と(A4)との合計に基づいて、成分(M)と(A4)との合計が前記混合物(A)の100重量%であるとして、80〜100重量%の、成分(A1)、(A2)および(A3)の混合物(M)と、0〜20重量%の成分(A4)とからなり;
前記混合物(M)が、いずれの場合も成分(A1)から(A3)の合計に基づいて、成分(A1)から(A3)の合計が前記混合物(M)の100重量%であるとして、36〜92重量%の成分(A2)、8〜60重量%の成分(A1)、および0〜4重量%の成分(A3)からなり、
成分(A)から(D)の合計が前記成形組成物の100重量%である;
熱可塑性成形組成物によって解決されることが見出された。
【0017】
成形組成物中の混合物(A)の含有量は、含有量(B)から(D)の合計と、成形組成物全体である100重量%との差として得られる。
【0018】
好ましくは、成分(A)は、成形組成物の総重量(成分AからDの合計)に基づいて、34〜82.9重量%、特に好ましくは39〜78.8重量%の割合で該成形組成物中に存在する。
【0019】
成分(B)の割合は、いずれの場合も(A)から(D)の合計に基づいて、好ましくは15〜55重量%の範囲、特に好ましくは18〜52重量%の範囲である。
【0020】
成分(C)の割合は、いずれの場合も(A)から(D)の合計に基づいて、好ましくは2〜6重量%の範囲、特に好ましくは3〜5重量%の範囲である。
【0021】
成分(D)の割合は、いずれの場合も(A)から(D)の合計に基づいて、好ましくは0.1〜5重量%の範囲、特に好ましくは0.2〜4重量%の範囲である。
【0022】
実施された調査が示すように、ポリマーマトリックスがポリアミドのみからなる、ガラス繊維で強化された成形コンパウンドは、強化繊維としていわゆる「低DKガラス繊維」を用いた場合であっても、高すぎる比誘電率および高すぎる誘電損率を有する。対照的に、ポリフェニレンエーテルのマトリックスを有する成形コンパウンドは、高すぎる反り/歪み、特に高すぎる収縮値を示し、加工性が非常に乏しい。ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの1:1ブレンドによってポリマー部分が形成され、E−ガラスからなるガラス繊維で強化された成形組成物はまた、特に、高い比誘電率を有するLDS添加剤の存在下で過剰な誘電率および誘電損失を示す。
【0023】
本発明の目的のために、「ポリアミド」(略語PA)という用語は、ホモポリアミドおよびコポリアミドを包含する総称として理解される。ポリアミドおよびそれらのモノマーについて選択されたスペリングおよび略語は、ISO規格16396−1(2015(D))に規定されているものに対応する。その中で使用される略語は、モノマーのIUPAC名の同義語として以下で使用される。特に、モノマーに関しては以下の略語が生じる:テレフタル酸についてはTまたはTPS、イソフタル酸についてはIまたはIPS、ビス(4−アミノ−3−メチル−シクロヘキシル)メタン(別名、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、CAS番号6864−37−5)についてはMACM、ビス(4−アミノ−シクロヘキシル)メタン(別名、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、CAS番号1761−71−3)についてはPACM、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルシクロヘキシル)メタン(別名3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、CAS番号65962−45−0)についてはTMDC。1,6−ヘキサンジアミン(ヘキサメチレンジアミンとも呼ばれる)には略語HMDAが使用される。
【0024】
半結晶性ポリアミドと比較して、非晶質ポリアミドは、融解熱を示さないか、または非常に低い、ほとんど検出できない融解熱を示す。ISO 11357(2013)に従った動的示差走査熱量測定(DSC)で20K/分の加熱速度において、非晶質ポリアミドは、好ましくは5J/g未満、特に好ましくは3J/g以下、最も好ましくは0〜1J/gの融解熱を示す。非晶質ポリアミドは、非晶質であるために融点を有さない。
【0025】
微結晶性ポリアミドは、ガラス転移温度に加えて融点を有する。しかしながら、それらは、それらから作製された厚さ2mmのシートが依然として透明であるような小さい寸法を結晶子が有する形態であり、すなわち、ASTM D 1003−13(2013)に従って測定して、その光透過率は少なくとも90%であり、そのヘイズは最大3%である。ISO 11357(2013)に従った動的示差走査熱量測定(DSC)において、微結晶性ポリアミドは、20K/分の加熱速度において、好ましくは、5〜25J/g、特に好ましくは5〜22J/g、および最も好ましくは5〜20J/gの融解熱を示す。
【0026】
ガラス転移温度に加えて、半結晶性ポリアミドは明確な融点を有し、ISO11357(2013)に従った動的示差走査熱量測定(DSC)で20K/分の加熱速度において、好ましくは25J/g超、特に好ましくは30J/g超、最も好ましくは30〜80J/gの融解熱を示す。
【0027】
比誘電率および誘電損率。
誘電率(ε)は、電場に置かれたときの分子の挙動の指標である。これは、以下の関係を介して比誘電率(ε
r)と真空の誘電率(ε
0)とに関係する。
ε=ε
r・ε
0。比誘電率(ε
r)は、物質依存量を表し、誘電率(ε)と真空の誘電率(ε
0)との商である。物質の種類に加えて、比誘電率(ε
r)もまた、電場の周波数および温度に依存する。
【0028】
誘電損率は、コンデンサなどの電気部品、またはプラスチック成形コンパウンドなどの物質中の電磁波の伝播における損失の大きさを示す。ここでの損失とは、例えば、電気的または電磁的に変換され、熱として放散されるエネルギーを意味する。これらの損失により、電磁波は減衰する。損率のより正確な表現のために、経時的な正弦波電圧曲線を有する電圧源に接続されたコンデンサが考えられる。このようなコンデンサの両端には、電圧と電流との間の位相シフトφが生じる。損失のない理想的なコンデンサは、φ=90°の位相シフトを有する。実際の損失のあるコンデンサでは、位相シフトは損失角δだけ90°より小さく、誘電損率(DLF)はtanδに等しい。したがって、誘電損率は、絶縁材料が交流場で吸収して熱損失に変換するエネルギー量の尺度である。高い誘電正接を有する材料は、高周波用途での絶縁またはハウジング材料としては適していない。比誘電率および誘電損率は、好ましくはIEC61189−2−721(2015)に従って決定される。
【0029】
成分(A)
本発明による熱可塑性成形組成物は、ポリマー成分として、少なくとも1種のポリアミド(A1)、少なくとも1種のポリフェニレンエーテル(A2)および任意選択で相溶化剤(A3)、ならびに任意選択でオレフィン系および/またはビニル芳香族ポリマー(A4)からなる混合物(A)を含む。
【0030】
この場合、混合物(A)は、いずれの場合も成分(M)と(A4)との合計に基づいて、成分(M)と(A4)との合計が混合物(A)の100重量%であるとして、80〜100重量%の、成分(A1)から(A3)の混合物(M)と、0〜20重量%の成分(A4)とからなる。
【0031】
混合物(M)は、いずれの場合も成分(A1)から(A3)の合計に基づいて、36〜92重量%の成分(A2)、8〜60重量%の成分(A1)、0〜4重量%の成分(A3)からなる。
【0032】
好ましくは、成分(A1)は、(A1)から(A3)の合計に基づいて、10〜48重量%、特に好ましくは10〜45重量%の割合で混合物(M)中に存在する。
【0033】
好ましくは、成分(A2)は、(A1)から(A3)の合計に基づいて、48〜89.9重量%、特に好ましくは52〜89.8重量%の割合で混合物(M)中に存在する。
【0034】
好ましくは、成分(A3)は、(A1)から(A3)の合計に基づいて、0.1〜4重量%、特に好ましくは0.2〜3重量%の割合で混合物(M)中に存在する。
【0035】
好ましくは、成分(A4)は、成分(M)と(A4)との合計に基づいて、0〜20重量%の割合で混合物(A)中に存在し、特に好ましくは、混合物(A)は成分(A4)を含まない。すなわち、混合物(A)は、特に好ましくは成分(A1)から(A3)のみからなる。
【0036】
成分(A1)
本発明の一実施形態によれば、成分(A1)として脂肪族ポリアミドが好ましい。特に、PA46、PA6、PA66、PA6/66、PA10、PA11、PA12、PA516、PA610、PA612、PA614、PA616、PA618、PA1010、PA1012、PA1014、PA1016、PA1018、PA1212およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪族ポリアミドが好ましい。N/C比(N=窒素/C=炭素)が8以上の脂肪族ポリアミドは、これらのポリアミドが吸湿性が低く、したがって高湿度環境下での誘電特性の変化が少ないため、特に好ましい。特に、脂肪族ポリアミドPA 610、PA 612、PA 1010、PA12およびPA 616が好ましい。
【0037】
本発明のさらなる実施形態によれば、非晶質または微結晶性ポリアミドが成分(A1)として好ましい。特に、非晶質または微結晶性ポリアミドは、好ましくはPA 6I/6T、PA MACM9、PA MACM10、PA MACM12、PA MACM13、PA MACM14、PA MACM16、PA MACM17、PA MACM18、PA PACM10、PA PACM12、PA PACM13、PA PACM14、PA PACM16、PA PACM17、PA PACM18、PA TMDC10、PA TMDC12、PA TMDC13、PA TMDC14、PA TMDC16、PA TMDC17、PA TMDC18、PA MACM10/10、PA MACMI/12、PA MACMT/12、PA 6I/MACMI/MACMT、PA MACMI/MACMT/12、PA MACMI/MACMT/MACM12、PA MACMI/MACMT/MACM12/12、PA 6I/6T/MACMI/MACMT/12、PA 6I/6T/MACMI、PA MACMI/MACM36、PA MACMT/MACM36、PA MACMI/MACM12、PA MACMT/MACM12、PA MACM6/11 PA MACM10/10、PA MACM12/PACM12、PA MACM14/PACM14、PA MACM18/PACM18、およびそれらの混合物からなる群から選択され、PA 6I/6T、PA MACM12、PA MACM14、PA TMDC12、PA TMDC14、PA MACMI/12、PA 6I/6T/MACMI/MACMT、PA MACMI/MACMT/12、PA MACMI/ MACMT/MACM12、PA 6I/6T/MACMI/MACMT/12、PA MACM10/10、PA MACM12/PACM12、PA MACM14/PACM14、PA MACM18/PACM18、およびそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましいのは、PA 6I/6T、PA MACM12、PA MACMI/12、PA MACMI/MACMT/12、PA MACMI/MACMT/MACM12、PA MACM12/PACM12、およびそれらのブレンドである。
【0038】
さらに好ましい実施形態によれば、半結晶性部分芳香族ポリアミドが成分(A1)として好ましい。半結晶性、部分芳香族ポリアミドは、好ましくは90〜150℃の範囲、好ましくは110〜140℃の範囲、特に115〜135℃の範囲のガラス転移温度を有する。半結晶性、部分芳香族ポリアミドの融点は、255〜330℃の範囲、好ましくは270〜325℃の範囲、特に280〜320℃の範囲である。好ましくは、成分(A1)の半結晶性、部分芳香族ポリアミドは、ISO11357(2013)に従ったDSCによって決定される、25〜80J/gの範囲、好ましくは30〜70J/gの範囲の融解エンタルピーを有する。
【0039】
好ましい部分芳香族部分結晶性ポリアミドは、
(a)ジカルボン酸:いずれの場合もジカルボン酸の総量に対して、30〜100mol%、特に50〜100mol%のテレフタル酸および0〜70mol%、特に0〜50mol%の6〜16個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸、および/または0〜70mol%、特に0〜50mol%の8〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂環式ジカルボン酸、および/または0〜50mol%のイソフタル酸、
(b)ジアミン:ジアミンの総量に基づいて、80〜100mol%の4〜18個の炭素原子、好ましくは6〜12個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族ジアミン、および0〜20mol%の、好ましくは6〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂環式ジアミン、例えばPACM、MACM、IPDA、および/または0〜20mol%の少なくとも1種の芳香脂肪族ジアミン、例えばMXDAおよびPXDA、ならびに任意選択で
(c)アミノカルボン酸および/またはラクタム:それぞれ6〜12個の炭素原子を有するもの
から作製される。
【0040】
好ましい実施形態によれば、成分(A1)の半結晶性、部分芳香族ポリアミドは、少なくとも55mol%、特に少なくとも65mol%のテレフタル酸、および少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%、特に少なくとも95mol%の、4〜18個の炭素原子、好ましくは6〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、ならびに任意選択で、さらなる脂肪族、脂環式および芳香族ジカルボン酸、およびさらなるラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づいて形成される。
【0041】
さらに好ましい実施形態によれば、テレフタル酸に加えて使用することができる成分(A1)の部分芳香族ポリアミドの前記例えば脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸およびダイマー脂肪酸(36個のC原子)からなる群から選択される。アジピン酸、セバシン酸およびドデカン二酸が特に好ましい。したがって、テレフタル酸に加えて好ましく使用されるジカルボン酸は、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸およびドデカン二酸、またはそのようなジカルボン酸の混合物である。特に、ジカルボン酸としてテレフタル酸のみに基づくポリアミド(A1)が好ましい。
【0042】
さらに好ましい実施形態によれば、成分(A1)の部分芳香族ポリアミドの前記脂肪族ジアミンは、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、またはそのようなジアミンの混合物からなる群から選択され、1,6−ヘキサンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、またはそのようなジアミンの混合物が好ましく、1,6−ヘキサンジアミンおよび1,10−デカンジアミンが特に好ましい。脂肪族ジアミンに加えて、脂環式および/または芳香脂肪族ジアミンは、ジアミンの総量に基づいて0〜20mol%の濃度で置換されていてもよい。
【0043】
さらに好ましくは、ポリアミド(A1)は、以下の成分から形成される:
(a):ジカルボン酸:いずれの場合も存在するジカルボン酸の総量に基づいて、50〜100mol%のテレフタル酸、0〜50mol%の、好ましくは6〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、および/または好ましくは8〜20個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸、および/またはイソフタル酸;
(b):ジアミン:存在するジアミンの総含有量に基づいて、80〜100モル%の、4〜18個の炭素原子、好ましくは6〜12個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族ジアミン;0〜20モル%の、好ましくは6〜20個の炭素原子を有する脂環式ジアミン、例えばPACM、MACM、IPDA、および/または芳香脂肪族ジアミン、例えばMXDAおよびPXDA(高融点ポリアミドにおいて、ジカルボン酸のパーセントモル含有量は100%であり、ジアミンのパーセントモル含有量は100%である)、ならびに任意選択で:
(c):アミノカルボン酸および/またはラクタム、好ましくは6〜12個の炭素原子を有するラクタムおよび/または好ましくは6〜12個の炭素原子を有するアミノカルボン酸。
【0044】
成分(a)および(b)は、好ましくはほぼ等モルの割合で使用されるが、(c)の濃度は、いずれの場合も(a)から(c)の合計に基づいて、好ましくは最大30重量%、好ましくは最大20重量%、特に最大15重量%である。
【0045】
適切な脂環式ジカルボン酸は、シス−および/またはトランス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ならびに/あるいはシス−および/またはトランス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸(CHDA)である。一般的に使用される上述の脂肪族ジアミンは、ジアミンの総量に基づいて、20mol%以下、好ましくは15mol%以下、特に10mol%以下の少量の他のジアミンで置き換えることができる。脂環式ジアミンとしては、例えば、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス−(アミノメチル)−シクロヘキサン(BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)、ノルボルナンジメチルアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、2,2−(4,4’−ジアミノジシクロヘキシル)プロパン(PACP)、および3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(MACM)を用いることができる。芳香脂肪族ジアミンとしては、m−キシリレンジアミン(MXDA)、およびp−キシリレンジアミン(PXDA)が挙げられる。
【0046】
上述したジカルボン酸およびジアミンの他に、ポリアミド形成成分(成分(c))として、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸を用いることもできる。適切な化合物は、例えば、カプロラクタム(CL)、α,ω−アミノカプロン酸、α,ω−アミノノナン酸、α,ω−アミノウンデカン酸(AUA)、ラウロラクタム(LL)およびα,ω−アミノドデカン酸(ADA)である。成分(A1_a)および(A1_b)と共に使用されるアミノカルボン酸および/またはラクタムの濃度は、成分(A1a)から(A1c)の合計に基づいて、最大20重量%であり、好ましくは最大15重量%であり、特に好ましくは最大12重量%である。4、6、7、8、11または12個のC原子を有するラクタムまたはα,ω−アミノ酸が特に好ましい。ラクタムにはそれぞれ、ピロリジン−2−オン(4個のC原子)、ε−カプロラクタム(6個のC原子)、エナントラクタム(oenanthlactam)(7個のC原子)、カプリルラクタム(8個のC原子)、ラウリンラクタム(12個のC原子)があり、α,ω−アミノ酸にはそれぞれ、1,4−アミノブタン酸、1,6−アミノヘキサン酸、1,7−アミノヘプタン酸、1,8−アミノオクタン酸、1,11−アミノウンデカン酸、および1,12−アミノドデカン酸がある。特に好ましい実施形態では、成分(A1)は、カプロラクタムもしくはアミノカプロン酸を含まないか、または任意のアミノカルボン酸もしくはラクタムを含まない。
【0047】
分子量、相対粘度もしくは流動性、またはMVRを制御するために、モノカルボン酸またはモノアミンの形態の調節剤をバッチおよび/または予備凝縮物(後凝縮の前)に追加することができる。調節剤として適切な脂肪族、脂環式または芳香族モノカルボン酸またはモノアミンは、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、安息香酸、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン酸、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオ)酢酸、3,3−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン酸、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロピルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2−フェニルエチルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−アミン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−アミン、4−アミノ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールなどである。調節剤は、個別にまたは組み合わせて使用することができる。アミノ基または酸基と反応することができる他の単官能化合物、例えば、無水物、イソシアネート、酸ハロゲン化物またはエステルも調節剤として使用することができる。使用される調節剤の通常量は、10〜200mmol/kgポリマーの間である。
【0048】
半結晶性部分芳香族ポリアミド(A1)の具体的な代表例は、PA 4T/4I、PA 4T/6I、PA 5T/5I、PA 6T/6、PA 6T/6I、PA 6T/6I/6、PA 6T/66、6T/610、6T/612、PA 6T/10T、PA 6T/10I、PA 9T、PA 10T、PA 12T、PA 10T/10I、PA10T/106、PA10T/610、PA10T/612、PA10T/66、PA10T/6、PA10T/1010、PA10T/1012、PA10T/12、PA10T/11、PA 6T/9T、PA 6T/12T、PA 6T/10T/6I、PA 6T/6I/6、PA 6T/6I/12およびそれらの混合物であり、特に好ましくは成分(A1)の部分芳香族ポリアミドは、PA 6T/6I、PA 6T/10T、PA 6T/10T/6I、ならびにそれらの混合物の群から選択される。6T単位、特に少なくとも10重量%の6T単位を含有するポリアミド(A1)が好ましい。
【0049】
したがって、本発明によれば、以下の部分芳香族コポリアミドがポリアミド(A1)として特に好ましい:
・55〜75mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位と25〜45mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位とを含む半結晶性ポリアミド6T/6I;
・62〜73mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位と25〜38mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位とを含む半結晶性ポリアミド6T/6I;
・少なくとも50mol%のテレフタル酸および最大50mol%のイソフタル酸、特に100mol%のテレフタル酸と、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルオクタンジアミン、およびデカンジアミンからなる群から選択される少なくとも2種のジアミンの混合物とから調製される半結晶性ポリアミド;
・70〜100mol%のテレフタル酸および0〜30mol%のイソフタル酸と、ヘキサメチレンジアミンおよびデカンジアミンの混合物とから調製される半結晶性ポリアミド;
・少なくとも50mol%のテレフタル酸および50mol%以下のドデカン二酸と、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルオクタンジアミンおよびデカンジアミンからなる群から選択される少なくとも2種のジアミンの混合物とから調製される半結晶性ポリアミド;
・10〜60mol%、好ましくは10〜40mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)単位および40〜90mol%、好ましくは60〜90mol%のデカメチレンテレフタルアミド(10T)単位を有する半結晶性ポリアミド6T/10T;50〜90mol%、好ましくは50〜70mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)単位および5〜45mol%、好ましくは10〜30mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド(6I)単位および5〜45mol%、好ましくは20〜40mol%のデカメチレンテレフタルアミド(10T)単位を有する半結晶性ポリアミド6T/10T/6I。
ポリアミド(A1)は、ISO 307(2007)に従って、100mlのm−クレゾール中0.5gのポリマーの溶液を20℃の温度において測定して、好ましくは1.3〜2.7の範囲、特に好ましくは1.4〜2.3の範囲、さらに特に好ましくは1.5〜2.0の範囲の溶液粘度η
relを有する。
【0050】
成分(A2)
本発明に従って使用されるポリフェニレンエーテルは、それ自体公知である。それらは、酸化的カップリング(米国特許第3661848号、同第3378505号、同第3306874号、同第3306875号および同第3639656号明細書を参照されたい。)によってアルキル基でオルト位において二置換されたフェノールから従来の方法によって調製される。第二級アミン、第三級アミン、ハロゲンまたはそれらの組み合わせなどの他の物質と組み合わせた銅、マンガンまたはコバルトなどの重金属に基づく触媒が、調製に一般的に使用される。
【0051】
適切なポリフェニレンエーテルには、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、または2,3,6−トリメチルフェノールを含有するものなどのコポリマー、およびそれらのブレンドが含まれる。任意選択で、2,3,6トリメチルフェノール単位と組み合わせたポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましい。ポリフェニレンエーテルは、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、ブロックコポリマーまたはアイオノマーの形態で使用することができる。
【0052】
適切なポリフェニレンエーテルは、一般に、25℃のクロロホルム中で測定して、好ましくは0.1〜から0.6dl/gの範囲の固有粘度を有する。これは、3,000〜40,000g/molの分子量Mn(数平均)、5,000〜80,000g/molの重量平均分子量Mwに相当する。高粘度のポリフェニレンエーテルと低粘度のポリフェニレンエーテルとを組み合わせて用いることができる。2つの異なる粘性のポリフェニレンエーテルの比は、粘度および所望の物理的特性に依存する。
【0053】
成分(A1)と成分(A2)との間の相溶性を改善するために、好ましい実施形態では、使用されるポリフェニレンエーテルは、それらが好ましくは共有結合したカルボニル、カルボキシル、カルボン酸、酸無水物、酸アミド、酸イミド、カルボン酸エステル、カルボキシレート、アミノ、ヒドロキシル、エポキシ、オキサゾリン、ウレタン、尿素、ラクタムまたはハロベンジルの基を含むように修飾される。好ましくは、未修飾ポリフェニレンエーテル(A2)は、この目的のために、例えば欧州特許出願公開第0 654 505 A1号明細書に記載されているように、任意選択でラジカルスターター(A3)、例えば過酸化物、特にジベンゾイルペルオキシドと組み合わせて、α、β−不飽和ジカルボニル化合物、重合性二重結合を有するアミド基またはラクタム基含有モノマー(A3)で修飾される。
【0054】
成分(A3)
成分(A1)と(A2)との相溶性を改善するために、相溶化剤は、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、またはその両方と相互作用する官能性化合物の形態で使用することができる。相互作用は、化学的(例えばグラフト化によって)および/または物理的(例えば、分散相の表面特性に影響を与えることによって、)であり得る。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、相溶化剤には、好ましくは有機過酸化物またはアゾ化合物であるラジカル開始剤がさらに含まれる。すなわち、本実施形態では、相溶化剤は、フリーラジカル開始剤の存在下でグラフト重合される。
【0056】
特に好ましい実施形態では、相溶化剤はフリーラジカル開始剤なしで使用される。
【0057】
相溶化剤は、少なくとも1つのカルボン酸、カルボン酸無水物、エポキシ、エステル、アミドまたはイミドの基を、好ましくはオレフィン二重結合と組み合わせて含む官能性化合物であり得る。例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、メチルマレイン酸、無水メチルマレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ブテニルコハク酸、ブテニルコハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物N−フェニルマレイミド、クエン酸、リンゴ酸および2−ヒドロキシノナデカン−1,2,3−トリカルボン酸、メタノールまたはエタノールなどのC1〜C12−アルコールとの上述の酸のモノまたはジエステル、12個までの炭素原子を有するアルキルまたはアリール基で窒素上で置換されていてもよい上述の酸のモノまたはジアミド、ならびにカルシウムおよびカリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩が挙げられる。マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸およびクエン酸が特に好ましい。相溶化剤は、単独で、または任意選択のラジカル開始剤と組み合わせて、ブレンド調製中に直接添加することも、またはポリフェニレンエーテルおよび/またはポリアミドは、別の工程で相溶化剤によって官能化されてもよい。
【0058】
適切なラジカル開始剤は、例えば、1,1−ジ−tert−ブチル−ペルオキシ−3,3,5トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチル−ペルオキシ−イソプロピル−カーボネート、tert−ブチル−ペルオキシ−3,3,5トリメチルヘキソエート、tert−ブチル−ペルアセテート、tert−ブチル−ペルベンゾエート、4,4−ジ−tert−ブチル−ペルオキシ−吉草酸n−ブチルエステル、2,2−ジ−tert−ブチル−ペルオキシ−ブタン、ジクミルペルオキシド、tert−ブチル−クミルペルオキシド、1,3−ビス(tert−ブチル−ペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシドおよびアゾイソブチロニトリルである。ラジカル開始剤としては、有機過酸化物が好ましく、ジクミルペルオキシドが特に好ましい。
【0059】
したがって、成分(A3)は、相溶化剤、または相溶化剤とラジカル開始剤との混合物を含む。相溶化剤およびラジカル開始剤は、(A1)から(A3)の合計に基づいて、総量で0〜4重量%、好ましくは0.1〜4重量%、特に好ましくは0.2〜3重量%の範囲で存在する。ラジカル開始剤は、(A1)から(A3)の合計に基づいて、好ましくは0〜1重量%の範囲、特に好ましくは0.05〜0.8重量%の範囲で存在する。
【0060】
好ましい実施形態では、相溶化剤は、フリーラジカル開始剤を添加せずにグラフト重合される、すなわち成分(A3)は、好ましくはフリーラジカル開始剤を含まない。
【0061】
成分(A4)
本発明によるブレンド(A)は、ポリアミド(A1)、ポリフェニレンエーテル(A2)、および任意選択の相溶化剤(A3)に加えて、0〜20重量%のビニル芳香族ポリマーおよび/またはオレフィン系ポリマー(A4)を含有し得る。
【0062】
オレフィン系ポリマーは、ホモポリオレフィンまたはコポリオレフィン、特に好ましくは、エチレン、プロピレンおよびブチレンに基づくポリマーまたはそれらのコポリマー、ならびに他のα−オレフィン系モノマー、特に1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンおよび1−デセンとのコポリマーである。
【0063】
ビニル芳香族ポリマーは、好ましくはポリスチレン、またはスチレンと少なくとも1つのオレフィン二重結合を有する他のモノマー、例えばα−オレフィンエチレン、プロピレンおよびブチレンまたはアクリル酸またはアクリル酸エステルまたはブタジエンとのコポリマーである。スチレンブロックコポリマー中に存在するような、ビニル芳香族モノマーから形成された少なくとも1つのブロック(ブロック−A)およびオレフィン系モノマーから形成された少なくとも1つのブロック(ブロック−B)を有するブロックコポリマーが特に好ましい。
【0064】
成分(A4)として使用されるオレフィン系および/またはビニル芳香族ポリマーは、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブタジエンおよび/またはイソプレンとスチレンまたはスチレン誘導体および他のコモノマーとのコポリマー、水素化コポリマーおよび/または酸無水物、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルとのグラフト化または共重合によって形成されたコポリマーであり得るかまたはそれを含有し得る。ポリマー(A4)はまた、ブタジエン、イソプレンまたはアルキルアクリレートからなる架橋エラストマーコアを含み、ポリスチレン、非極性または極性のオレフィンホモポリマーおよびコポリマー、例えば、エチレン−プロピレン−、エチレン−プロピレン−ジエンおよびエチレン−オクテンまたはエチレン−ビニルアセートゴム、または酸無水物、(メタ)アクリル酸およびそのエステルとのグラフト化または共重合によって形成された非極性または極性のオレフィンホモポリマーおよびコポリマーのグラフトシェルを有するグラフトゴムであってもよい。ポリマー(A4)はまた、カルボン酸官能化コポリマー、例えばポリ(エテン−コ−(メタ)アクリル酸)またはポリ(エテン−コ−1−オレフィン−コ−(メタ)アクリル酸)(1−オレフィンは、アルケンまたは4個を超える原子を有する不飽和(メタ)アクリル酸エステルである)であってもよく、酸基が金属イオンで部分的に中和されているコポリマーを含む。
【0065】
成分(A4)は、ポリスチレン、ポリブタジエン−ポリスチレングラフトコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SSBS)、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー(EPDM)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン(PB)、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブテンコポリマー、エチレン−メチルヘキサジエンコポリマー、プロピレン−メチルヘキサジエンコポリマー、エチレン−オクテンコポリマー、エチレン−プロピレン−ブテンコポリマー、エチレン−プロピレン−ヘキセンコポリマー、エチレン−プロピレン−メチルヘキサジエンコポリマー、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)(EVA)、エチレン−エチルアクリレートコポリマー(EEA)、エチレン−ヘキセンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、およびこれらのポリマー材料のブレンドからなる群から有利に選択される。特に好ましくは、これらのポリマー(A4)は、アクリル酸、メタクリル酸または無水マレイン酸でグラフト化され、グラフト化の程度は、グラフト化ポリマー(A4)に基づいて0.1〜4.0重量%である。
【0066】
混合物(A)は、成分(A4)として少なくとも1種のビニル芳香族ポリマーおよび任意選択で少なくとも1種のポリオレフィンを含むことがさらに好ましい。混合物(A)が、いずれの場合も(A)の総量に基づいて、少なくとも5重量%、特に少なくとも10重量%のビニル芳香族ポリマーを含有する場合が特に好ましい。
【0067】
好ましくは、オレフィン系および/またはビニル芳香族ポリマー(A4)は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SSBS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン(PB)、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブテンコポリマー、エチレン−メチルヘキサジエンコポリマー、プロピレン−メチルヘキサジエンコポリマー、エチレン−オクテンコポリマー、エチレン−プロピレン−ブテンコポリマー、エチレン−プロピレン−ヘキセンコポリマー、エチレン−プロピレン−メチルヘキサジエンコポリマー、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)(EVA)、エチレン−エチルアクリレートコポリマー(EEA)、エチレン−ヘキセンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、およびこれらのポリマー材料のブレンドからなる群から選択される。
【0068】
さらに、成形組成物のオレフィン系および/またはビニル芳香族ポリマー(A4)がカルボン酸またはカルボン酸無水物の基でグラフト化されている場合が好ましく、グラフト化はアクリル酸、メタクリル酸または無水マレイン酸よる行われることが特に好ましく、および/またはグラフト化の程度は、いずれの場合もグラフト化ポリマー(A4)に基づいて、好ましくは0.1〜4.0重量%、特に好ましくは0.4〜2.5重量%、さらに特に好ましくは0.5〜2.0重量%である。
【0069】
成分(B)は、ポリアミド成形コンパウンド中に10〜60重量%で存在するガラスに基づくフィラーである。フィラーは、個々にまたは混合物として、繊維状および粒子形態であり得る。したがって、成分(B)は、繊維状フィラー(強化剤)もしくは粒子状フィラー、または強化剤と粒子状フィラーとの混合物を含有し得る。本発明の目的のために、ガラス系フィラーまたはガラスフィラーという用語は同義的に使用される。
【0070】
本発明によれば、ガラスの組成物に基づき、ガラス組成が少なくとも10重量%の酸化ホウ素と、合計で最大15重量%の酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムとを含むガラスに基づくガラスフィラー(B)が使用される。
【0071】
本発明の好ましい実施形態によれば、ガラスフィラーは、ガラスの組成物に基づき、ガラス組成が合計で2〜14重量%、より好ましくは4〜12重量%の酸化マグネシウムおよび酸化カルシウム含有量を含むガラスに基づく。
【0072】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、ガラスフィラーは、ガラスの組成物に基づき、ガラス組成が12〜24重量%、特に好ましくは15〜22重量%の酸化ホウ素を含むガラスに基づく。
【0073】
ガラスフィラーは、好ましくは繊維、粉砕繊維、粒子、フレーク、球、中空球およびそれらの混合物からなる群から選択され、特に好ましくは繊維、粒子、フレークおよびそれらの混合物からなる。より特に好ましくは、ガラスフィラーはガラス繊維である。最も特に好ましくは、成分(B)が、非円形断面を有し、2〜6、より好ましくは3〜5の範囲の長断面軸と短断面軸との軸比を有するガラス繊維である。
【0074】
ガラスフィラーは、表面処理されていてもよい。これは、適切なサイジングまたは接着促進剤系を用いて行うことができる。例えば、脂肪酸、ワックス、シラン、チタネート、ポリアミド、ウレタン、ポリウレタン、ポリヒドロキシエーテル、エポキシド、ニッケルまたはそれらの組み合わせもしくは混合物に基づく系をこの目的のために使用することができる。好ましくは、ガラスフィラーは、アミノシラン、エポキシシラン、ポリアミドまたはそれらの混合物で表面処理される。
【0075】
繊維が成分(B)のガラスフィラーとして選択される場合、ガラス繊維は、好ましくは、チョップド繊維、連続繊維、およびそれらの混合物からなる群から選択され、該繊維は円形断面を有しても、または非円形断面を有していてもよい。非円形または非円形ガラス繊維は、フラットガラス繊維とも呼ばれ、楕円形、長円形、角形、長方形またはほぼ長方形の断面積を有することができる。
【0076】
チョップドガラス繊維は、好ましくは1〜25mm、好ましくは1.5〜20mm、より好ましくは2〜12mm、最も好ましくは2〜8mmの繊維長を有する。
【0077】
チョップドガラス繊維は、好ましくは5〜20μm、好ましくは5〜15μm、特に好ましくは6〜12μmの直径を有する。
【0078】
ガラス繊維が連続繊維(ロービング)として使用される場合、それらは、好ましくは最大20μm、好ましくは最大18μm、特に好ましくは5〜17μmの直径を有する。
【0079】
フラットガラス繊維の場合、アスペクト比、すなわち長断面軸と短断面軸との比は、2〜8、好ましくは2〜6、特に好ましくは3〜5である。フラットガラス繊維の断面軸は3〜40μmの長さである。好ましくは、短断面軸の長さは3〜20μm、より好ましくは4〜10μmであり、長断面軸の長さは6〜40μm、より好ましくは12〜30μmである。
【0080】
円形(丸形)および非円形(フラット)断面を有する繊維のブレンドを使用して、本発明のポリアミド成形コンパウンドを強化することもできる。
【0081】
ガラスビーズまたはガラス粒子がガラスフィラー(B)として選択される場合、それらの平均体積直径(D50)は、ASTM B 822−10(2010)に従ってレーザー回折によって測定して、好ましくは0.3〜100μm、特に好ましくは5〜80μm、さらに特に好ましくは17〜70μmである。
【0082】
さらに、ガラスフィラーは、該ガラスフィラーのガラスから作製されたガラス板(80×80×3mm)を使用して、QWED、Poland製のスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)を用い、周波数2.45GHzおよび温度23℃において、IEC 61189−2−721(2015)に従って決定して、好ましくは最大7、特に好ましくは最大5の比誘電率、および好ましくは最大0.0040、特に好ましくは最大0.0030の誘電損率を有する。
【0083】
本発明の好ましい実施形態によれば、成分(B)は、ポリアミド成形組成物中に、好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは18〜52重量%の量で存在し、これらの量は成分(A)から(D)の合計に対して述べている。
【0084】
本発明の好ましい実施形態によれば、成分(B)は、ガラス繊維、粉砕ガラス繊維、ガラス粒子、ガラスフレーク、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、または前述の組み合わせからなる群から選択されるガラスフィラーのみからなり、ガラスフィラーは、いずれの場合もガラスの組成物に基づいて、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの含有量が合計で2〜14重量%の範囲であり、酸化ホウ素(B
2O
3)の含有量が12〜24重量%の範囲であるガラスからなる。特に好ましくは、ガラスフィラーは、全体がガラス繊維から形成される。
【0085】
特に好ましい実施形態では、成分(B)は、ガラスフィラー、特に好ましくはガラス繊維として選択され、そのガラスは、以下の組成:52.0〜57.0重量%の二酸化ケイ素、13.0〜17.0重量%の酸化アルミニウム、15.0〜22.0重量%の酸化ホウ素、2.0〜6.0重量%の酸化マグネシウム、2.0〜6.0重量%の酸化カルシウム、1.0〜4.0重量%の二酸化チタン、0〜1.5重量%のフッ素、0〜0.6重量%のアルカリ酸化物を含む。
【0086】
好ましくは、成分(C)の割合は、いずれの場合も成形コンパウンド(成分(A)から(D)の合計)に基づいて、2〜6重量%の範囲、好ましくは3〜5重量%の範囲である。
【0087】
成分(C)は、好ましくは、UV、VISまたはIR放射の吸収係数がゼロではないLDS添加剤であり、これは、電磁放射、好ましくはレーザー放射としての作用下で金属核を形成し、前記金属核は、化学金属化プロセスにおいて、成形表面上の照射点に導体トラックを製造するための金属層の堆積を促進および/または可能化および/または改善する。LDS添加剤は、好ましくは、少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.1、特に少なくとも0.2の吸収係数を有する可視および赤外放射範囲で吸収能力を有し、および/または放射エネルギーをLDS添加剤に伝達する吸収剤を備える。
【0088】
成分(C)は、好ましくは、50〜10000ナノメートル、好ましくは200〜5000ナノメートル、特に好ましくは300〜4000ナノメートルの範囲のメジアン粒径(D50)、および/または最大10、特に最大5のアスペクト比を有するLDS添加剤である。粒径の尺度として与えられるD50値は、メジアン粒径の尺度であり、サンプルの50体積パーセントがD50値(メジアン)よりも細かく、サンプルの他の50%はD50値(メジアン)よりも粗い。
【0089】
好ましくは、成分(C)は、金属酸化物の群から選択されるLDS(レーザーダイレクトストラクチャリング)添加剤、特に一般化学式AB
2O
4を有するいわゆるスピネルであり、式中、Aは2価の金属カチオンであり、Bは3価の金属カチオンである。金属カチオンAは、好ましくは、マグネシウム、銅、コバルト、亜鉛、スズ、鉄、マンガンおよびニッケルならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され、金属カチオンBは、好ましくは、マンガン、ニッケル、銅、コバルト、スズ、チタン、鉄、アルミニウムおよびクロムならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0090】
特に、LDS添加剤は、好ましくは、銅鉄スピネル、銅含有酸化アルミニウムマグネシウム、銅−クロム−マンガン混合酸化物、任意選択でそれぞれ酸素空孔を有するか、または銅の塩および酸化物、例えば特に酸化銅(I)、酸化銅(II)を含む銅−マンガン−鉄混合酸化物、または、塩基性リン酸銅、硫酸銅、ならびに金属錯体化合物、特に銅、スズ、ニッケル、コバルト、銀およびパラジウムのキレート錯体またはそのような系の混合物であり、および/または特に以下の群から選択される:銅−クロム−マンガン混合酸化物、銅−マンガン−鉄混合酸化物、クロム酸銅、タングステン酸銅、酸化鉄亜鉛、酸化クロムコバルト、酸化アルミニウムコバルト、酸化アルミニウムマグネシウム、ならびにそれらの混合物および/または表面処理形態および/または酸素欠損形態である。可能なシステムは、例えば、国際公開第2000/35259号パンフレットまたはKunststoffe 92(2002)11,pp 2−7に記載されているものである。
【0091】
また、成分(C)として好ましいのは、金属酸化物、混合金属酸化物、金属水酸化物酸化物、スズに基づく金属硫化物酸化物の群から選択されるLDS(レーザーダイレクトストラクチャリング)添加剤である。酸化スズおよびドープ酸化スズが特に好ましく、ドーピングにはアンチモン、ビスマス、モリブデン、アルミニウム、チタン、ケイ素、鉄、銅、銀、パラジウムおよびコバルトを用いることができる。特に、アンチモン、チタン、銅をドープした酸化スズが好ましい。さらに、酸化スズと少なくとも1種のさらなる金属酸化物、特に酸化アンチモンとの混合物がLDS添加剤として好ましい。さらなる金属酸化物として、特に二酸化チタン、酸化アンチモン(III)、酸化亜鉛、酸化スズおよび/または二酸化ジルコニウムなどの無色の高屈折金属酸化物、ならびに酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化コバルトおよび特に酸化鉄(Fe
2O
3、Fe
3O
4)などの有色金属酸化物の両方が使用される。特に、酸化スズと酸化アンチモン(III)との混合物が好ましい。
【0092】
好ましくは、ドープされた酸化スズまたは金属酸化物混合物または酸化スズは、板状基材、特に合成または天然マイカ、タルク、カオリン、ガラス小板または二酸化ケイ素小板などの層状ケイ酸塩上に層として形成される。マイカまたはマイカフレークは、金属酸化物用の基材として特に好ましい。また、板状酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、LCP(液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer))、ホログラフィック顔料、被覆黒鉛小板などの板状金属酸化物も基材として考えられる。
【0093】
マイカに基づくLDS添加剤が特に好ましく、マイカ表面は金属ドープ酸化スズで被覆されている。特に、アンチモンドープ酸化スズが好ましい。本発明による市販のLDS添加剤の例は、Merck製のLazerflair LS 820、LS 825、LS 830およびMinatec 230 A−IR、Keeling&Walker製のStanostat CP40W、Stanostat CP15GまたはStanostat CP5C、Budenheim製のFabulase 322S、330、350および352である。
【0094】
特に好ましいLDS添加剤は、亜クロム酸銅、タングステン酸銅、水酸化銅リン酸塩およびアンチモンドープ酸化スズであり、後者は好ましくはマイカと組み合わせて使用される。タングステン酸銅が極めて特に好ましい。
【0095】
本発明による熱可塑性成形組成物は、成分(A)、(B)および(C)とは異なる成分(D)として、0〜5重量%の少なくとも1種の添加剤を含有する。
【0096】
好ましい実施形態によれば、本発明による成形組成物は、成分(A)から(D)の合計に基づいて、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%の成分(D)としての少なくとも1種の添加剤を含有する。
【0097】
好ましい実施形態によれば、成分(D)の添加剤は、安定剤、酸化防止剤、オゾン防止剤、加工安定剤、加工助剤、粘度調整剤、光安定剤、UV安定剤、UV吸収剤、無機熱安定剤、特にハロゲン化銅およびハロゲン化アルカリに基づく無機熱安定剤、有機熱安定剤、蛍光増白剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、流動助剤、潤滑剤、スリップ剤、離型剤、着色剤、特に染料、無機顔料、有機顔料、マーキング剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0098】
特に好ましい実施形態によれば、本発明による成形組成物は、成分(D)として少なくとも1種の加工助剤を含有し、後者は、いずれの場合も成分(A)から(D)の総重量に基づいて、好ましくは0〜2重量%、特に好ましくは0.1〜2.0重量%、特に好ましくは0.1〜1.5重量%、最も好ましくは0.2〜1.0重量%の割合で存在する。好ましい金属塩は、Al、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩、10〜44個の炭素原子、好ましくは14〜44個の炭素原子を含む脂肪酸のエステルまたはアミドであり、金属イオンNa、Mg、CaおよびAlが好ましく、CaまたはMgが特に好ましい。特に好ましい金属塩は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびモンタン酸カルシウムならびにステアリン酸アルミニウムである。脂肪酸は、一価または二価であり得る。例としては、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸および特に好ましいステアリン酸、カプリン酸およびモンタン酸(30〜40個の炭素原子を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0099】
さらに好ましい実施形態によれば、本発明による成形組成物は、成分(D)として少なくとも1種の熱安定剤を含有し、これは、いずれの場合も成分(A)から(D)の総重量に基づいて、好ましくは0〜3重量%、特に好ましくは0.1〜2.0重量%の割合で存在する。
【0100】
好ましい実施形態によれば、熱安定剤は、以下からなる群から選択される:
・一価または二価の銅の化合物、例えば、一価もしくは二価の銅と、無機酸もしくは有機酸、または一価もしくは二価のフェノールとの塩、一価もしくは二価の銅の酸化物、または銅の塩と、アンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアニドまたはホスフィンとの錯体化合物、好ましくはハロゲン化水素酸、シアン化水素酸のCu(I)もしくはCu(II)塩、または脂肪族カルボン酸の銅塩。一価の銅化合物はCuCl、CuBr、CuI、CuCNおよびCu
2O、ならびに二価の銅化合物はCuCl
2、CuSO
4、CuO、酢酸銅(II)またはステアリン酸銅(II)が特に好ましい。有利には、銅化合物は、さらなる金属ハロゲン化物、特にアルカリハロゲン化物、例えばNal、KI、NaBr、KBrと組み合わせて使用され、ハロゲン化金属とハロゲン化銅とのモル比は0.5〜20、好ましくは1〜10、特に好ましくは3〜7である
・第二級芳香族アミンに基づく安定剤、0.1〜2、好ましくは0.2〜0.5重量%の量で存在することが好ましい
・立体障害フェノールに基づく安定剤、0.1〜1.5、好ましくは0.2〜0.6重量%の量で存在することが好ましい、および
・ホスファイト(phosphite)およびホスホナイト(phosphonite)、ならびに
・上記安定剤の混合物。
【0101】
本発明に従って使用することができる第二級芳香族アミンに基づく安定剤の例は、フェニレンジアミンとアセトンとの付加物(Naugard A)、フェニレンジアミンとリノールとの付加物、Naugard 445、N,N’−ジナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−シクロヘキシル−p−フェニレンジアミンまたはそれらの混合物である。
【0102】
適切な立体障害フェノールは、原則として、フェノール環上に少なくとも1つの立体的にかさ高い基を有するフェノール構造を有するすべての化合物である。本発明に従って使用することができる立体障害フェノールに基づく安定剤の好ましい例は、N,N’−ヘキサメチレン−ビス−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオンアミド、ビス−(3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)−ブタン酸)グリコールエステル、2,1’−チオエチルビス−(3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、4−4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオネート、またはこれらの安定剤の2種以上の混合物である。
【0103】
好ましいホスファイトおよびホスホナイトは、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(distearylphentaerythritol diphosphite)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリス−(tert−ブチルフェニル))ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、6−イソオクチルオキシ−2,4,8,10テトラ−tert−ブチル−12H−ジベンゾ−[d,g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、6−フルオロ−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−12−メチル−ジベンゾ−[d,g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスファイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイトである。特に、トリス[2−tert−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル)−フェニル−5−メチル]フェニルホスファイトおよびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos 168)が好ましい。
【0104】
熱安定剤の好ましい実施形態は、有機熱安定剤、特にIrgafos168とIrganox1010またはHOSTANOX O 3P(ビス[3,3−ビス−(4’ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−フェニル)ブタン酸グリコールエステル)と、SANDOSTAB P−EPQ(テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホナイト)との組み合わせである。特に、CuIおよびKIのみに基づく熱安定化が好ましい。
【0105】
酸化遅延剤および熱安定剤の例としては、成分(A)から(D)の重量に基づいて最大1重量%の濃度の、ホスファイトおよび他のアミン(例えば、トリアセトンジアミン)、ヒドロキノン、これらの基のさまざまな置換された代表物、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0106】
さまざまな置換レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアジンおよびベンゾフェノンがUV安定剤として挙げられ、これらは一般に成形組成物の重量に基づいて最大2重量%の量で使用される。
【0107】
二酸化チタン、群青、酸化鉄およびカーボンブラックおよび/またはグラファイトなどの無機顔料、さらにフタロシアニン、キナクリドン、ペリレンなどの有機顔料、ならびにニグロシンおよびアントラキノンなどの染料を着色剤として添加することができる。しかしながら、本発明による成形組成物がカーボンブラックもグラファイトも含有しない場合が好ましく、すなわち、本発明による成形組成物は、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトを含まない。
【0108】
特に好ましい実施形態では、本発明による熱可塑性成形組成物は、
(A)34〜82.9重量%の、少なくとも1種のポリアミド(A1)、少なくとも1種のポリフェニレンエーテル(A2)および相溶化剤(A3)の混合物;
(B)15〜55重量%の、ガラス組成が、12〜24重量%の酸化ホウ素と、合計で2〜14重量%の酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムとを含むガラス繊維;
(C)2〜6重量%の、クロム酸銅、タングステン酸銅、酸化銅、水酸化銅リン酸塩、水酸化スズリン酸塩、水酸化スズ、リン酸銅、塩基性リン酸銅およびリン酸スズ、またはそれらの混合物からなる群から選択される、好ましくはタングステン酸銅として選択されるLDS添加剤;
(D)0.1〜5重量%の、(A)、(B)および(C)以外の添加剤;
を含み、
前記混合物(A)が、いずれの場合も成分(A1)から(A3)の合計に基づいて、成分(A1)から(A3)の合計が前記混合物(A)の100重量%であるとして、52〜89.8重量%の成分(A2)、10〜45重量%の成分(A1)、0.2〜3重量%の成分(A3)からなり、成分(A)から(D)の合計が前記成形組成物の100重量%である。
【0109】
本発明による成形コンパウンドは、良好な機械的特性を有し、照射後に容易に金属化することができ、3.0未満の低比誘電率および0.008未満の低誘電損率を特徴とする。
【0110】
本発明による成形組成物の製造の好ましい変形形態は、第1の工程において、成分(A1)から(A4)を含む混合物が提供されることである。この目的のために、成分(A2)、(A3)および任意選択で(A4)を最初に押出機の供給部に計量供給し、220〜340℃の範囲の温度で混合することができる。次いで、混合物をサイドフィーダーに供給する。次に、サイドフィーダーによって、成分(A1)を、供給部の下流の押出機のハウジングにおいて、成分(A2)、(A3)、および任意選択で(A4)から形成された溶融混合物に導入することができる。代替的には、成分(A1)から(A4)を押出機のフィーダーに計量供給し、220〜340℃の温度で押出機内で混合することもできる。両方の変形形態において、成分(C)および/または(D)をさらに含めることができ、これらの成分は、好ましくは供給部に計量供給される。第2の押出工程では、次いで、混合物(A)および成分(C)および(D)、または(A)、(C)および(D)の混合物を押出機の供給部に計量供給し、220〜340℃の温度で溶融させることができ、一方、成分(B)は、供給部の下流の押出機のハウジングにサイドフィーダーを介して供給され、存在する溶融物と混合される。
【0111】
成形コンパウンドを製造する別の好ましい方法は、成分(A1)から(A4)、(C)および(D)を押出機の供給部に計量供給し、220℃〜340℃の温度で第1押出機セクションにおいてそれらを溶融および混合した後、成分(B)をサイドフィーダーを介して溶融物に導入し、第2押出機セクションにおいて他の成分と混合することである。次いで、成形コンパウンドを放出し、冷却後に造粒する。水中ペレット化は、フィラー含有量が高い場合に好ましい。
【0112】
さらに、本発明は、上記の本発明による熱可塑性成形組成物を含有するか、または好ましくはこの成形組成物からなる成形品を含む。
【0113】
この成形体は、周波数0.3〜300GHzを有する電磁波で通信する装置の構成要素、ハウジングまたはハウジング部品であることが好ましい。
【0114】
特に、成形物は、送受信装置、携帯電話、タブレット、ラップトップ、ナビゲーション装置、監視カメラ、フォトカメラ、センサ、ダイビングコンピュータ、オーディオシステム、リモコン、スピーカ、ヘッドホン、ラジオセット、テレビセット、家庭用電化製品、台所用電化製品、ドアまたはゲートオープナ、車両の中央ロックのための操作装置、キーレスゴー車両キー、温度測定または温度表示装置、測定装置および制御装置の構成要素、ハウジングまたはハウジング部品からなる群から選択される。
【0115】
測定方法:
以下の測定方法を本出願の範囲内で使用した:
相対粘度
相対粘度は、ISO 307(2007)に従って20℃で測定した。この目的のために、0.5gのポリマー顆粒を100mlのm−クレゾール中に秤量した。相対粘度(RV)は、該規格のセクション11に従ってRV=t/t0により計算した。
ガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)
【0116】
ガラス転移温度および融点の決定は、ISO 11357−2および−3(2013)に従って顆粒に対して行った。示差走査熱量測定(DSC)を、3回の加熱のそれぞれについて20K/分の加熱速度で行った。最初の加熱後、サンプルを20K/分の速度で冷却し、その後の加熱(2回目の加熱)中に融点を決定した。次いで、サンプルをドライアイス中で急冷し、3回目の加熱中にガラス転移温度(Tg)を決定した。ピーク極大の温度を融点とした。ガラス転移温度(Tg)をガラス転移領域の中点とし、「ハーフハイト(half height)」法により決定した。
【0117】
引張弾性率
引張弾性率は、ISO 527(2012)に従って、ISO/CD 3167(2003)の規格に従って作製したISO引張棒(タイプA1、大きさ170×20/10×4)について、引張速度1mm/分で23℃において決定した。
【0118】
破断時応力および破断時伸び
破断時引張応力および破断時伸びの決定は、ISO 527(2012)に従って、ISO/CD 3167(2003)の規格に従って作製したISO引張棒、タイプA1(大きさ170×20/10×4mm)について、引張速度5mm/分で23℃において実施した。
【0119】
比誘電率および誘電損率(DLF)
比誘電率εrおよび誘電損率(DLF)の測定は、QWED、Poland製のスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)(www.qwed.euで入手可能な測定に関する情報を含むパンフレット)を使用して、フィルムゲートを有する80×80×3mmプレートについて、IEC 61189−2−721(2015)に従って実施した。測定周波数は2.45GHz、測定温度は23℃である。
【0120】
成形収縮
成形収縮の決定用プレート(タイプD2、60×60×2mm、フィルムゲート)を、ISO 294−3(2002)および補正1(2006)に従って作製した。射出収縮を、成形コンパウンド溶融物の流れの方向に対して縦方向および横方向のキャビティサイズに関して、標準的な気候(23℃、相対湿度50%)で14日間シートを貯蔵した後、ISO 294−4(2001)に従って決定した。5枚のプレートでの測定値の算術平均を示す。成形コンパウンドの流れ方向に沿った射出収縮と、流れ方向を横切る射出収縮との比は、反りまたは歪みとも呼ばれる。
【0121】
レーザーストラクチャリングおよび金属化性:
金属化挙動を評価するために、射出成形部品(プレート60×60×2mm)を、Nd:YAGレーザーを使用してストラクチャリングし、続いて無電解銅めっき浴内で金属化した。レーザーストラクチャリング中に、10×10mmの隣接する18個の領域を、成形部品表面において照射した。レーザーストラクチャリングを、FOBA DP50レーザーを使用して、波長1064nmおよび約50μmの照射幅で4m/秒の速度で行った。パルス周波数およびパルス幅の両方を調整した。レーザーのパルス周波数および電流強度の両方を変化させた。5、6、7および8kHzの特定のパルス周波数について、レーザーのダイオード電流を、それぞれ24.0、24.5、25.0および25.5アンペアに設定した。レーザーストラクチャリングに続いて、成形物を洗浄プロセスに供して、レーザープロセスの残留物を除去した。成形物を、界面活性剤および脱イオン水を用いた超音波浴に連続的に供した。次いで、清浄化した成形物を還元銅めっき浴(MacDermid MID−Copper 100 B1)中で20〜30分間金属化した。
【0122】
金属化の評価:
o:14個未満の領域において、銅が少なくとも3μmの平均厚さで堆積した;
+:14または15個の領域において、銅が少なくとも3μmの平均厚さで堆積した;
++:16の領域すべてにおいて、銅が少なくとも3μmの平均厚さで堆積した;
十分に金属化されるとは、本発明の目的のためには、少なくとも14個の領域において、銅が少なくとも3μmの平均厚さで堆積されることを意味する。
【0123】
着色性:
F:成形コンパウンドは、黄色、オレンジ色、赤色または青色など、黒色以外の他の色に着色することができる。
S:成形コンパウンドは黒色であり、他の色に着色することができない。
【0124】
ガラスフィラーのガラス組成
ガラスフィラー、特にガラス繊維のガラス組成は、以下の決定方法を使用して決定した:DIN 51086−2:2004に従った誘導結合プラズマ発光分光法(ICP OES)、ISO 21078−1:2008に従った酸化ホウ素の含有量の滴定決定、ISO 12677:2003に従った蛍光X線溶融分解法、DIN 51084:2008に従った熱加水分解後のフッ素決定。
【0125】
ポリアミド成形コンパウンドの調製
本発明による実施例B1からB9および比較例VB4については、さまざまな化合物(A)を最初に調製した。この目的のために、表2および3に従って、ポリフェニレンエーテル(A2)および相溶化剤(A3)のそれぞれの量を、Werner&Pfleiderer製の二軸押出機、タイプZSK 25の供給ゾーンに計量供給し、ポリアミド成分(A1)を、排出前にサイドフィーダー6バレルゾーンを介して溶融物に導入した。第1ゾーンの温度は70℃に設定し、残りのハウジングの温度は、ポリアミド−1の実施例では260〜290℃、ポリアミド−2の実施例では290〜320℃に設定した。300rpmの速度および10kg/時の量を使用し、大気脱気を適用した。ストランドを水浴中で冷却し、切断し、得られた顆粒を真空(30mbar)中で100℃において24時間乾燥させた。次いで、ブレンド(A)、ポリアミドまたはポリフェニレンエーテルの乾燥顆粒を添加剤(C)および(D)と混合して、表2および3に示す割合でドライブレンドを形成した。この混合物をタンブルミキサーによって約20分間均質化した。成形コンパウンドを、表2および3に示す比率で、Werner&PfleidererタイプZSK 25製の二軸押出機で製造した。ドライブレンドを、計量フィーダーを介してフィーダーに計量供給した。ガラス繊維(B)を、計量フィーダーを介してサイドフィーダーに計量供給し、サイドフィーダーは、ガラス繊維(B)をダイの上流の6つのハウジングユニットの溶融物に供給した。第1のハウジングの温度を80℃に設定し、残りのハウジングの温度を、実施例B1からB3、B7、B8、VB1およびVB2については260〜280℃に設定し、実施例B4からB6、B9、VB3およびVB4については280〜310℃に設定した。速度250rpmおよび処理量15kg/時を使用し、大気脱気を適用した。ストランドを水浴中で冷却し、切断し、得られた顆粒を真空(30mbar)中で110℃において24時間乾燥させ、含水量を0.1重量%未満にした。
【0126】
試験片の作製
試験片を、Arburg製の射出成形機、モデルAllrounder 420C 1000−250で作製した。実施例B1からB3、B7、B8、VB1およびVB2には260℃〜280℃の上昇シリンダー温度および80℃の成形温度を使用し、実施例B4からB6、B9、VB3およびVB4には290℃〜320℃のシリンダー温度および120℃の成形温度を使用した。特に明記しない限り、試験片は乾燥状態で使用した。この目的のために、試験片を、射出成形後、乾燥環境、すなわちシリカゲル上で室温において少なくとも48時間保存した。
【0127】
表1:実施例および比較例で使用した材料
【0128】
表2:結果
【0129】
表3:結果