(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2022-1748(P2022-1748A)
(43)【公開日】2022年1月6日
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
F02B 77/00 20060101AFI20211210BHJP
F02B 77/08 20060101ALI20211210BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20211210BHJP
【FI】
F02B77/00 A
F02B77/08 C
F02M37/00 301J
F02M37/00 301R
F02M37/00 301S
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-106851(P2020-106851)
(22)【出願日】2020年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】東 知世洋
(57)【要約】
【課題】 タンク本体に沈殿した水のみを確実に排出させることができるとともに、貯留する燃料の有効容量を増大させることができる燃料タンクを提供する。
【解決手段】 燃料タンク11は、燃料を貯留するタンク本体11aの下部に脚部12,13を備える。脚部12は、タンク本体11aの底板に形成した第1連通孔11hを介してタンク本体11aと連通する燃料貯留部11jを内部に備え、脚部12に燃料貯留部11jに連通するドレン排出口12bを設ける。第1連通孔11hを介してタンク本体11aと燃料貯留部11jとに亘って、燃料と、燃料貯留部11j及びタンク本体11aに沈殿する水との境界面を浮動するフロート17cにより境界面の位置を検知する液面検知器17を配設する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を貯留するタンク本体の下部に、該タンク本体を支持する脚部を備えた燃料タンクにおいて、前記脚部は、前記タンク本体の底板に形成した連通孔を介して前記タンク本体と連通する燃料貯留部を内部に備え、前記脚部に前記燃料貯留部に連通するドレン排出口を設けるとともに、前記連通孔を介して前記タンク本体と前記燃料貯留部とに亘って、前記燃料と、前記燃料貯留部及び前記タンク本体に沈殿する水との境界面の位置を検知する液面検知器を配置したことを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
前記液面検知器は、前記連通孔を介して前記タンク本体と前記燃料貯留部とに亘って垂下される支持軸と、該支持軸に上下方向に移動可能に遊嵌し、前記境界面に追随して該境界面を浮動するフロートと、該フロートの前記支持軸の軸方向の位置に基づいて前記境界面の位置を検出する水位検知ユニットとを備えていることを特徴とする請求項1記載の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに関し、詳しくは、エンジン作業機に搭載される燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーシング内に発電機等の作業機と該作業機を駆動するエンジンとを備えたエンジン作業機では、ケーシングの下部に燃料タンクを配置したものがある。このエンジン作業機を、例えば寒冷地で用いる場合等では、運転を停止した夜間に燃料タンク内の空間部が結露し、発生した水滴が燃料の底に沈殿することがあった。このため、燃料供給管の下端部を燃料タンクの底部より上方に離間して配置し、燃料と共に、沈殿した水を吸い上げないようにしている(例えば、特許文献1参照。)。また、燃料タンクのタンク本体に、該タンク本体を支持する脚部を備えたものがあった(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−263062号公報
【特許文献2】特開2004−251219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような燃料タンクでは、タンク本体の底部側にドレン排出口を設け、ドレン排出口を介して沈殿した水を外部に排出しているが、沈殿した水の量を外部から把握できないことから、水抜き作業を行う好適なタイミングを図れず、水と共に燃料も排出してしまうことがあった。また、特許文献1のものでは、燃料供給管の下端部を燃料タンクの底板より上方に離間して配置することにより、燃料供給管を介して、燃料と共に水が吸い上げられることは防止できるものの、タンク本体に貯留される燃料の有効容量が少なくなっていた。
【0005】
そこで本発明は、タンク本体に沈殿した水のみを確実に排出させることができるとともに、貯留する燃料の有効容量を増大させることができる燃料タンクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の燃料タンクは、燃料を貯留するタンク本体の下部に、該タンク本体を支持する脚部を備えた燃料タンクにおいて、前記脚部は、前記タンク本体の底板に形成した連通孔を介して前記タンク本体と連通する燃料貯留部を内部に備え、前記脚部に前記燃料貯留部に連通するドレン排出口を設けるとともに、前記連通孔を介して前記タンク本体と前記燃料貯留部とに亘って、前記燃料と、前記燃料貯留部及び前記タンク本体に沈殿する水との境界面の位置を検知する液面検知器を配置したことを特徴としている。
【0007】
また、前記液面検知器は、前記連通孔を介して前記タンク本体と前記燃料貯留部とに亘って垂下される支持軸と、該支持軸に上下方向に移動可能に遊嵌し、前記境界面に追随して該境界面を浮動するフロートと、該フロートの前記支持軸の軸方向の位置に基づいて前記境界面の位置を検出する水位検知ユニットとを備えていると好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の燃料タンクによれば、タンク本体と燃料貯留部とに亘って、燃料とタンク本体に沈殿する水との境界面の位置を検知する液面検知器を配設することにより、水の沈殿具合を把握することができ、ドレン排出口を介して、好適なタイミングで水のみをタンク本体から確実に排出させることができる。また、タンク本体の下部に設けた脚部を利用して、タンク本体と連通する燃料貯留部を設けたことにより、燃料供給管の下端部を従来よりもタンク本体の底板に近接して配置することが可能となり、燃料と共に水が吸い上げられることを防止しながら、貯留する燃料の有効容量を増大させることができる。
【0009】
また、液面検知器を、支持軸と、該支持軸に上下方向に移動可能に遊嵌し、燃料とタンク本体に沈殿する水との境界面に追随して境界面を浮動するフロートと、該フロートの支持軸の軸方向の位置に基づいて前記境界面の位置を検出する水位検知ユニットを備えたフロート式の液面検知器で構成したことにより、簡単な構造で前記境界面の位置を検出でき、コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一形態例を示す燃料タンクの斜視図である。
【
図2】同じく燃料タンクの底面側からの斜視図である。
【
図4】燃料タンクを収容したエンジン作業機の説明図である。
【
図5】液面検知器の制御部のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図5は、本発明の燃料タンクの一形態例を示す図である。
図4は、本発明の燃料タンク11を収容したエンジン作業機を示すもので、エンジン作業機21は、床台22の上部に配設されたケーシング21aの内部に、作業機の一つである発電機(図示せず)と、該発電機を駆動するエンジン23と、燃料タンク11,ラジエータ24,マフラ25等の機器とを収容している。
【0012】
エンジン23とマフラ25との間には、ラジエータ24を装着した仕切壁21bが設けられ、この仕切壁21bによってケーシング21a内が、発電機やエンジン23を収容したエンジン室21cと、マフラ25を含む排気管25aと燃料タンク11とを収容した排風室21dとに区画されている。
【0013】
排風室21dは、天井壁21eに、発電機やエンジン23を冷却した後の空気や排ガスを外部に放出するための排風口21fが設けられている。排風口21fの下方には、仕切壁21bに対向する側壁21gから仕切壁21bに向けて、排風口21fから浸入する雨水を排水口21hに導くガイド板21iが取り付けられ、ガイド板21iの下方に燃料タンク11が配置されている。
【0014】
燃料タンク11は、
図1乃至
図3に示されるように、燃料を貯留するタンク本体11aの下部に、タンク本体11aを支持する脚部12,13が設けられている。タンク本体11aは、鋼板を四角筒状に曲げ加工を施して、天井板11bと、底板11cと、対向する側板11d,11dとを一体に形成し、両端に形成された開口部に鏡板11e,11eを溶接することにより直方体状に形成されている。
【0015】
鏡板11e,11eは、上端中央部に、上方に向けて矩形状に突出する一対の吊り耳11f,11fが、互いに対向する位置に形成され、天井板11bには、長手方向の両端部が吊り耳11f,11fにそれぞれ溶接される突条部11gが形成されている。また、天井板11bの突条部11gの近傍には、下端が燃料タンク11内に開口し、天井板11bから斜め上方に向けて突出する筒状の給油管14が設けられ、この給油管14を介して燃料タンク11に燃料が供給される。
【0016】
さらに、タンク本体11aには、エンジン23に燃料を供給する燃料供給管15と、エンジン23から戻る燃料を燃料タンク内に導入する燃料戻り管16とが、天井板11bを貫通してそれぞれ設けられ、燃料供給管15と燃料戻り管16の下端部15a,16aは、燃料タンク11の底板11cより上方に離間して配置されている。
【0017】
脚部12,13は、断面コ字状に形成されたチャンネル部材の両端を閉塞板12a,13aでそれぞれ閉塞し、開口側を鏡板11e,11eの近傍の底板11cに溶接し、鏡板11e,11eと平行にそれぞれ設けられる。また、底板11cの一方の脚部12に対応する位置には、第1連通孔11h(本発明の連通孔)と、第2連通孔11iとがそれぞれ形成されている。一方の脚部12の内部には、これら第1連通孔11hと第2連通孔11iを介してタンク本体11aと連通する燃料貯留部11jが形成されるとともに、一方の閉塞板12aの下部には、燃料貯留部11jに連通するドレン排出口12bが設けられる。
【0018】
また、第1連通孔11hを介して、タンク本体11aと燃料貯留部11jとに亘って、液面検知器17が設けられる。さらに、第2連通孔11iの上方には、前記燃料戻り管16が配置される。
【0019】
液面検知器17は、周知のフロート式の液面検知器で、天井板11bに取り付けられた水位検知ユニット17aと、第1連通孔11hを介してタンク本体11aと燃料貯留部11jとに亘って垂下される支持軸17bと、該支持軸17bに上下方向に移動可能に遊嵌され、燃料と、燃料貯留部11及びタンク本体11aに沈殿する水との境界面に追随して境界面を浮動するフロート17cと、支持軸17bと水位検知ユニット17aとを連結させる連結部17dとを備えている。
【0020】
フロート17cは、磁性を有する周知のマグネットフロートで形成され、例えば、樹脂材を円筒状に形成し、磁石を内部に埋め込んだり、外部に貼り付けたりすることにより形成され、燃料よりも比重が重く、且つ、水よりも比重が軽く形成される。
【0021】
支持軸17bは内部に、フロート17cが形成する磁界に反応して電気信号を出力するリードスイッチを備えている。水位検知ユニット17aは、リードスイッチからの電気信号に基づいてフロート17cの位置から、燃料貯留部11j内の水位(境界面)を検出し、フロート17c、つまり水位(境界面)が、
図3に示すように底板11cよりも下方に設定されたH1の範囲に到達した際に警報を発するように設定されている。また、警報の出力はエンジン作業機21に内蔵される制御部26によって制御されている。
【0022】
この制御部26は、定期メンテナンス時に、水位を確認するために電源を投入すると作動し、
図5に示されるように、S1にて、フロート17cが上昇してリードスイッチが作動しているか否かを判定する。リードスイッチが作動状態であると判定されると、S2にて、電源を入力して予め設定された時間を経過したか否かを判定する。予め設定された時間が経過した場合、水位監視機能が有効になり、S3にて、エンジン作業機21が運転中か停止中かを判定し、エンジン作業機21が停止中と判定されれば、S4にて警報を出力し、S3にて、エンジン作業機21が運転中と判定されれば、警報が出力されることはない。
【0023】
本形態例は、上述のように、燃料とタンク本体11aに沈殿する水との境界面の位置を検出する液面検知器17を配設することにより、水の沈殿具合を把握することができ、フロート17cがH1の範囲に到達した際に水位検知ユニット17aにより警報が発せられることにより、警報に基づいてドレン排出口12bを開き、沈殿した水のみを好適なタイミングで外部に排出させることができる。
【0024】
また、タンク本体11aの下部に設けた一方の脚部12を利用して、タンク本体11aと連通する燃料貯留部11jを設けたことにより、燃料供給管15の下端部15aを底板11cから上方に離間させる距離H2を従来よりも短くすることができ、燃料供給管15を介して燃料と共に水が吸い上げられることを防止しながら、貯留する燃料の有効容量を増大させることができる。さらに、タンク本体11aに沈殿する水を燃料貯留部11jに集めることができることから、燃料タンク11の底部に錆が発生することを抑制し、タンク本体11aの耐久性の向上を図ることができる。
【0025】
また、液面検知器17を、支持軸17bと、該支持軸17bに上下方向に移動可能に遊嵌し、燃料とタンク本体11aに沈殿する水との境界面に追随して該境界面を浮動するフロート17cと、該フロート17cの支持軸17bの軸方向の位置に基づいて前記境界面の位置を検出する水位検知ユニット17aを備えたフロート式の液面検知器で構成したことにより、簡単な構造で前記境界面の位置を検出でき、コストの削減を図ることができる。
【0026】
さらに、底板11cに第2連通孔11iを設け、該第2連通孔11iの上方に燃料戻り管16を配置したことにより、メンテナンス時に燃料戻り管16に洗浄水を導入することにより、
図3の矢印Aに示されるように洗浄水が燃料貯留部11jに導入され、燃料貯留部11jを良好に洗浄することができる。
【0027】
また、警報の出力を制御する制御部26を備えていることにより、エンジン作業機21の起動時に、フロート17cの誤作動によって警報が発せられることを防止でき、水検知システムの安定性を保つことができる。
【0028】
なお、本発明は、上述の形態例に限るものではなく、液面検知器の構造は任意であり、超音波式の液面検知器や、静電容量式の液面検知器でも差し支えない。また、タンク本体の底板に第2連通孔を設けていなくてもよく、燃料戻り管は、タンク本体のどの位置に設けられていてもよい。さらに、燃料タンクは、鋼板を四角筒状に曲げ加工し、天井板と、底板と、対向する側板とを一体に形成し、両端に形成された開口部に、鏡板をそれぞれ溶接して形成するものに限らず、直方体状に形成されるものであれば、どのように形成されるものでもよい。また、燃料タンクが収容されるエンジン作業機は、発電機の他、コンプレッサやポンプ等を駆動する各種のエンジン作業機が挙げられる。
【符号の説明】
【0029】
11…燃料タンク、11a…タンク本体、11b…天井板、11c…底板、11d…側板、11e…鏡板、11f…吊り耳、11g…突条部、11h…第1連通孔、11i…第2連通孔、11j…燃料貯留部、12…脚部、12a…閉塞板、12b…ドレン排出口、13…脚部、13a…閉塞板、14…供給管、15…燃料供給管、16…燃料戻り管、17…液面検知器、17a…水位検知ユニット、17b…支持軸、17c…フロート、17d…連結部材、21…エンジン作業機、21a…ケーシング、21b…仕切壁、21c…エンジン室、21d…排風室、21e…天井壁、21f…排風口、21g…側壁、21h…排水口、21i…ガイド板、22…床台、23…エンジン、24…ラジエータ、25…マフラ、25a…排気管、26…制御部