【解決手段】固定型内における底面に対して固定され、かつ、可撓性を有しない仕切板25a,25bが複数設けられ、可動型を閉じた状態において、固定型内における仕切板25a,25bの上部は連通し、異なる構成体の原料となる液状の発泡性原料W1,W2,W3の一部を、仕切板25a,25b間、または仕切板25a,25bと固定型の内面間において、異なる部分に注入し、仕切板25a,25bの軸方向と直交する方向において、構成体が積層された部分において、夫々の構成体の厚みが異なるように形成し、発泡成形したクッション体を、前記固定型及び前記仕切板から取り外す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の椅子のクッション体を製造する方法として、第1クッション部材を、下型と第1の上型を用いて成形した後に、第1クッション部材の上部に、第1の上型とは異なる第2の上型を用いて、第2クッション部材を成形して製造する製造方法が考えられる。
【0005】
しかし、この製造方法では、2種類の上型を必要とするとともに、2回の成形工程が必要となり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
また、複雑な三次元形状を有する第1クッション部材と、第2クッション部材を、それぞれ、成形又は切削により成形し、成形した第1クッション部材と第2クッション部材を接着剤により張り合わせる製造方法が考えられるが、この製造方法も工程が多く、製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、硬さが異なる複数種類のクッション部材で構成するとともに、所定方向において、複数種類のクッション部材の厚みが異なるクッション体を、1回の成形工程で形成することができるクッション体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、硬さが異なる複数種類の構成体を少なくとも一部が相互に積層するように構成したクッション体の製造方法であって、
前記クッション体を成形するための成形型は、固定型と該固定型の上部に設けた開口部を開閉する可動型で構成され、
前記固定型内における底面に対して固定され、かつ、クッション体の製造過程において変形しない仕切板が設けられ、前記可動型を閉じた状態において、前記固定型内における仕切板の上部は連通し、
異なる構成体の原料となる液状の発泡性原料の一部を、前記仕切板間、または前記仕切板と前記固定型の内面間において、異なる部分に注入し、
前記仕切板の軸方向と直交する方向において、構成体が積層された部分において、夫々の構成体の厚みが異なるように形成し、
発泡成形したクッション体を、前記固定型及び前記仕切板から取り外すことを特徴とするクッション体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、固定型内における底面に対して固定され、かつ、可撓性を有しない仕切板が複数設けられ、可動型を閉じた状態において、固定型内における仕切板の上部は連通し、異なる構成体の原料となる液状の発泡性原料の一部を、前記仕切板間、または仕切板と固定型の内面間において、異なる部分に注入し、仕切板の軸方向と直交する方向において、構成体が積層された部分において、夫々の構成体の厚みが異なるように形成するものであり、1回の成形工程により、硬さが異なる複数種類の構成体を少なくとも一部が相互に積層するように構成したクッション体を得ることができる。
【0010】
これにより、従来の製造方法よりも製造コストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の製造方法により成形したクッション体1の上面図、
図2は、そのG−G線断面図を示し、以下において、着座者の膝側が位置する側を前側Aとし、着座者の臀部側が位置する側を後側Bとし、着座者が着席する着座側を上側Cとし、その反対側を下側Dとし、また、前A側から見た左右方向の右側をE、左側をFとして説明する。
【0014】
クッション体1は、座椅子や自動車などの車両用の椅子などの椅子の座部に用いることができるものである。
【0015】
クッション体1は、
図1,
図2に示すように、本実施例では、直方体形状に形成したが、その全体形状は任意に形成する。
【0016】
クッション体1は、第1構成体2を有し、第1構成体2は、その上面2aが、前側Aから後側Bに向かう程、上側Cに位置する第1曲面4と、第1曲面4の後部に、第1曲面4と連続するように設けられ、かつ、前側Aから後側Bに向かう程下側Dに位置する第2曲面5を有する。
【0017】
第2曲面5の後側Bには、前側Aから後側Bに向かう程、上側Cに位置する立ち上がり部7が形成されている。なお、立ち上がり部7は形成しなくてもよい。
【0018】
少なくとも、第1構成体2における、その立ち上がり部7以外の上部には、第1構成体2より硬い素材で形成された第2構成体3が設けられ、第1構成体2と第2構成体3が積層して形成されている。
【0019】
第2構成体3は、少なくとも、第1構成体2の前側と上側に位置するように形成され、かつ、第1構成体2の立ち上がり部7及び下部以外は、第2構成体3で覆われるように形成されている。本実施例では、
図2に示すように、第1構成体2の外周部全体を、第2構成体3により覆うように形成した。
【0020】
第1構成体2は、少なくとも着座者の臀部が位置する部分に形成されている。
【0021】
第2構成体3の前端部で、かつ、上端部である前上の角部には、左右方向全体に亘って、第1構成体2より柔らかい素材で形成された第3構成体8が配設されている。
【0022】
第1構成体2と第2構成体3と第3構成体8は、発泡成形体で構成されている。この発泡成形体は、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリウレタン系フォーム、イソシアネート系フォーム、ポリアミド系フォーム等の2つ以上の液状混合材料により室温又は加温下で発泡した後に硬化する発泡性原液を、発泡させて成形したものである。
【0023】
第1構成体2は、第2構成体3より柔らかく、第3構成体8は、第1構成体2より柔らかく形成されていれば、その硬さは任意に設定することができ、本実施例では、夫々の構成体2,3,8のJIS K6400−2のA法による硬度を、第1構成体2は146N、第2構成体3は200N、第3構成体8は72Nの硬さとなるように夫々形成した。
【0024】
第2構成体3の上面には、
図2に示すように、少なくとも、着座者の臀部が当たる位置の後方の2カ所、すなわち、第2曲面5の後部の上方の2カ所に、上方が開口する切り欠き11a,11bを左右方向全体に亘って形成することが好ましい。この切り欠き11a,11bは、第2構成体3の上面に対して直交しても、前側や後側に傾斜するように形成してもよい。また、切り欠き11a,11bの縦断面形状は、その軸方向全体に亘って略同じ幅に形成してもよいし、上方に向かう程広い幅となるように形成してもよく、その形状は任意に設定することができる。
【0025】
下方に位置する第1構成体2を、上方に位置する第2構成体3より柔らかく形成したことにより、着座者が着席すると、上方に位置する第2構成体3より、下方に位置する第1構成体2が多く変形して、沈み込み、第1構成体2の上面が、着座者の膝裏から臀部の形状に沿って変形する。
【0026】
着座者に近い第2構成体3の変形量が、下方に位置する第1構成体2より少ないことから、上方に位置する第2構成体3の変形に伴う反発力(圧力)を小さくすることができ、着席面全体の体圧分散を向上させることができる。
【0027】
また、上方に位置する第2構成体3を、下方に位置する第1構成体2より硬く形成したことにより、第2構成体3における大腿部から臀部にかけての角度が一定に保たれ、前滑り感を抑制できる。
【0028】
また、上方に位置する第2構成体3を、下方に位置する第1構成体2より硬く形成するとともに、第2曲面5の後端部の上方に切り欠き11a,11bを形成したことにより、後方の切り欠き11aの前部に位置する第2構成体3が前側に倒れ、臀部後方を保持し、着座者の骨盤の傾きが抑えられ、直立姿勢に近い脊椎S字カーブを維持するとともに猫背を抑制できる。すなわち、骨盤が回転しないように支えられ、骨盤から背骨が理想的ラインに保たれる。
【0029】
また、着座者の膝裏が位置する部分には、最も柔らかい第3構成体8を配設したことにより、着座者の膝裏への圧迫を低減し、下腿のうっ血を抑制できる。
【0030】
上記の構造により、クッション体1は、上記従来技術のクッション構造よりも、体圧分散が良好で座り心地の良いクッション構造とすることができる。
【0031】
次に、クッション体1の製造に用いる成形型21について説明する。
【0032】
成形型21は、
図3,4に示すように、上側に開口部22aを有するとともに、内部に空間22bを有する固定型22と、開口部22aを開閉する可動型23を備えている。可動型23を閉じた状態における固定型22の内面22cと、可動型23の内面23aで構成される成形空間24の内周形状は、任意に形成することができ、本実施例では、直方体形状に形成した。
【0033】
固定型22の底面には、仕切板25a,25bが2枚、立設した状態で固設されている。本実施例では、仕切板25a,25bにより固定型22の下部は、3つの上方が開口する空間が区画されている。可動型23を閉じた状態で、仕切板25の上端は、可動型23とは当接せず、仕切板25の上部において、隣り合う空間の上部同士が連通している。仕切板25a,25bは、後述するクッション体の製造過程における各発泡性原液の発泡により変形しない材質で構成され、好ましくは、可撓性を有しない金属で構成されている。
【0034】
仕切板25a,25bは、その下端部が、固定型22に対して固定されていれば、その形状は任意に設定できるとともに、固定型22の底面22dに対して、直交しても、いずれかの方向に傾斜するように形成してもよい。
【0035】
なお、本実施例では、仕切板25a,25bを、
図3に示すように、直方体形状の板材を、所定方向(X−X方向)全体に亘って設けたが、仕切板25a,25bを、湾曲して形成してもよいし、その長手方向の中央部を、両端部よりも低く、又は、高くなるように形成してもよい。また、仕切板25a,25bを、所定方向(X−X方向)全体に亘って形成せず、その両端部に隙間を形成し、隣り合う区画同士を連通するようにしてもよい。
【0036】
また、本実施例では、所定方向(X−X方向)と直交する方向(Y−Y方向)の一端部側に、仕切板25a,25bを設けたが、仕切板25a,25bを設ける位置は任意に設定する。
【0037】
次に、クッション体1の製造方法について説明する。
【0038】
各構成体2,3,8の原料となる各発泡性原液としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリウレタン系フォーム、イソシアネート系フォーム、ポリアミド系フォーム等の2つ以上の液状混合材料により室温又は加温下で発泡した後に硬化するものを用いることができ、本実施例では、ポリイソシアネートとポリオールを混合させたものを用いた。
【0039】
先ず、
図3に示すように、可動型23を開き、固定型22の開口部22aを開口させる。
【0040】
次に、
図5,
図6(a)に示すように、注入ノズル26より第2構成体3の原料である第2発泡性原液W2を、軸方向(X−X方向)と直交する方向(Y−Y方向)における他端部側に位置する第2仕切板25bの近傍で、かつ、その他端側に、仕切り板25bの軸方向(X−X方向)の一端から他端側方向に、軸方向全体に亘って、所定の注入速度で、所定量注入する。この第2発泡性原液は、
図6(b)に示すように、第2仕切り板25bの上側方向、および、軸方向(X−X方向)と直交する方向(Y−Y方向)の他端部側方向への発泡による体積膨張が行われる。
【0041】
次に、
図6(b)に示すように、注入ノズル26より第2発泡性原液W2を、仕切板25a,25bの間に、仕切り板25bの軸方向(X−X方向)の他端から一端側方向に、軸方向全体に亘って、所定の注入速度で、所定量注入する。この第2発泡性原液は、
図6(c)に示すように、仕切板25a,25bにより所定方向(X−X方向)への膨張が阻害され、上側方向へ膨張する。
【0042】
次に、
図6(c)に示すように、注入ノズル26より第2発泡性原液W2を、第1仕切板25aと固定型22の側面との間に、第1仕切り板25aの軸方向(X−X方向)の一端から他端側方向に、軸方向全体に亘って、所定の注入速度で、所定量注入する。
【0043】
次に、
図6(d)に示すように、注入ノズル26より第1構成体2の原料である第1発泡性原液W1を、第1仕切板25aと固定型22の側面との間に、第1仕切り板25aの軸方向(X−X方向)の他端から一端側方向に、軸方向全体に亘って、所定の注入速度で、所定量注入する。第1発泡性原液W1は、既に注入された第2発泡性原液W2の固定型22における下側に位置するとともに、第2発泡性原液W2は、第1発泡性原液W1の側部と上部を覆うような位置関係となる。
【0044】
第1仕切板25aと固定型22の側面との間の第2発泡性原液W2と第1発泡性原液W1は、
図6(e)に示すように、仕切板25a,25bにより所定方向(X−X方向)への膨張が阻害され、上側方向へ膨張する。
【0045】
次に、
図6(e)に示すように、注入ノズル26より第3構成体8の原料である第3発泡性原液W3を、固定型22の所定方向(X−X方向)と直交する方向(Y−Y方向)の他端部側に、固定型の側面に沿って、所定方向(X−X方向)の他端から一端側方向に、その全体に亘って、所定の注入速度で、所定量注入する。第1発泡性原液は、既に注入された第2発泡性原液の下側に位置するようになる。
【0046】
次に、可動型23を閉じ、固定型22の開口部22aを閉塞し、成形空間24内を密閉する。
【0047】
第2発泡性原液と第1発泡性原液は、
図6(f)、(g)に示すように、仕切板25a,25bの上端を乗り越えると、所定方向(X−X方向)と直交する方向(Y−Y方向)にも膨張するとともに、下側方向にも膨張し始める。
【0048】
そして、
図6(h)に示すように、各発泡性原液が、成形空間22b内全体に膨張し、硬化した後に、可動型23を開き、固定型22と仕切板25a,25bより成形品を取り外し、その上下を反転させるとクッション体1となる。また、仕切板25a,25bを取り外した部分が切り欠き11a,11bとなる。
【0049】
このように、前記仕切板25a,25bの軸方向(X−X方向)と直交する方向(Y−Y方向)において、構成体2、3が積層された部分において、夫々の構成体2、3の厚みが異なるように、一回の発泡成形工程で製造することができる。
【0050】
また、複雑な三次元形状を有する第1構成体2と第2構成体3を積層してなるクッション体1を、一回の成形工程により得ることができ、上記従来技術の製造方法と比較して、製造コストを低く抑えることができる。
【0051】
また、
図3に示すように、仕切板25a,25bの軸方向(X−X方向)の軸方向全体において、同じ高さとなるように形成すると、
図1に示す第1構成体2から分かるように、仕切板の軸方向(X−X方向)と直交する方向(Y−Y方向)の外側端面は、その軸方向の中央部は、仕切板と略平行に形成されるが、その両端部は、固定型22との摩擦により、中央部に比べて仕切板方向に位置するように形成される。
【0052】
なお、仕切板25a,25bの軸方向(X−X方向)の高さを、その軸方向の両端部を中央部より低くなるように形成すると、両端部が中央部より仕切板の軸方向(X−X方向)と直交する方向(Y−Y方向)への発泡膨張が早く進み、両端部と中央部の位置を略同じにすることもできる。
【0053】
このように、仕切板25a,25bの軸方向(X−X方向)の高さを調節することで、構成体2、3の形状を調節することができる。
【0054】
なお、上記実施例においては、1回目〜3回目までに注入した発泡性原液は、同じ第2発泡性原液であるが、全て異なる発泡性原液を注入し、
図7に示すように、クッション体32を、5種類の構成体27〜31で構成するようにしてもよい。
【0055】
[実施例2]
上記実施例1においては、仕切板25a,25bを2枚設けたが、仕切板の枚数は、任意に設定することができ、好ましくは複数枚設ける。
【0056】
図8〜
図10に示すように、仕切板25a,25b,35の数、角度、位置や、発泡性原液を注入する位置を変更することで、成形する構成体の形状を変化させ、任意の形状とすることができる。
【0057】
例えば、
図8に示すように、下側に位置する構成体は、発泡性原液の仕切板と直交する方向(Y−Y方向)において、中間部の厚みが薄くなるが、
図9に示すように、発泡性原液が乗り越える仕切板35の数を増やすことで、その厚みの減少を抑えることができる。
【0058】
また、
図10に示すように、構成体の境界部を、略垂直に形成することもできる。
【0059】
それ以外の構造は、前記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
【0060】
本実施例2においても前記実施例1と同様の効果を奏する。