特開2022-474(P2022-474A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2022-474(P2022-474A)
(43)【公開日】2022年1月4日
(54)【発明の名称】腸内細菌叢を調節するための治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20211203BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 31/43 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 31/545 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 31/7016 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 31/715 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 31/716 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 31/717 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 31/718 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 31/732 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 31/775 20060101ALI20211203BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20211203BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20211203BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20211203BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20211203BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20211203BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20211203BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20211203BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20211203BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20211203BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20211203BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20211203BHJP
【FI】
   A61K31/575
   A61K31/4164
   A61K31/43
   A61K31/545
   A61K31/7016
   A61K31/702
   A61K31/7048
   A61K31/715
   A61K31/716
   A61K31/717
   A61K31/718
   A61K31/732
   A61K31/775
   A61K35/744
   A61K35/747
   A61K45/00
   A61P1/04
   A61P1/12
   A61P29/00
   A61P31/04
   A61P31/12
   A61P33/00
   A61P35/02
   A61P37/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2021-164963(P2021-164963)
(22)【出願日】2021年10月6日
(62)【分割の表示】特願2018-537801(P2018-537801)の分割
【原出願日】2017年1月19日
(31)【優先権主張番号】243707
(32)【優先日】2016年1月20日
(33)【優先権主張国】IL
(71)【出願人】
【識別番号】516158046
【氏名又は名称】ガルメッド リサーチ アンド ディベロップメント リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハルパン,マヤ
(72)【発明者】
【氏名】バハラフ,アレン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA60
4C084MA63
4C084NA12
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB081
4C084ZB111
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4C084ZB331
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZB371
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086CC01
4C086CC09
4C086DA11
4C086EA01
4C086EA12
4C086EA20
4C086EA25
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA60
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA12
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB27
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087BC57
4C087BC58
4C087CA08
4C087MA02
4C087MA52
4C087MA56
4C087MA60
4C087MA63
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB27
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZB37
4C087ZC75
(57)【要約】
【課題】腸内細菌叢の調節、消化管のホメオスタシスの修復または胃腸障害の軽減のための医薬の提供。
【解決手段】脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)の治療有効量を含む組成物。特に、ディスバイオシス、または腸内フローラのバランスの変更に関連する消化管の病態、の治療または予防に使用するための医薬であって、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(アラムコール)またはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を含む医薬。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その必要がある対象において、ディスバイオシス、または腸内フローラのバランスの変更に関連する消化管の病態、の治療または予防に使用するための医薬であって、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(アラムコール)またはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を含む医薬組成物を含み、
前記医薬は、GI管における有益な細菌叢の増殖を促進させるために、および/またはGI管における有害な細菌叢の増殖を阻害するために、使用され、
前記有益な細菌叢は、ビフィドバクテリウム属である、
医薬。
【請求項2】
ディスバイオシスを治療または予防するための、請求項1に記載の医薬であって、
前記ディスバイオシスが、消化(GI)管のディスバイオシスであり、前記ディスバイオシスが、消化の疾患または障害に関連しており、
前記消化の疾患または障害が、慢性炎症性疾患、自己免疫性疾患、感染症、腸切除、および慢性的な下痢に関連する状態のうちの1つまたは複数に関連しており、
前記消化の疾患が、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、短腸症候群(SBS)、セリアック病、小腸内細菌異常増殖(SIBO)、胃腸炎、リーキーガット症候群、および胃リンパ腫からなる群から選択され、
前記疾患または障害が、細菌、ウイルス、または寄生虫による感染症または過剰増殖に関連しており、前記細菌が薬物耐性である、
医薬。
【請求項3】
ヒト対象を治療するための、請求項1〜2のいずれか1項に記載の医薬であって、
前記ヒト対象が、ディスバイオシスを呈しているか、またはディスバイオシスを発症するリスクがあり、
前記ヒト対象が、抗菌剤、非経口栄養、または免疫抑制剤のうちの少なくとも1つを伴う治療レジメン下にある、
医薬。
【請求項4】
前記組成物が、唯一の活性成分として、または少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、もしくはプレバイオティクス剤と組み合わせて、アラムコールを含み、
前記抗生剤が、ニトロイミダゾール系、マクロライド系、およびβラクタム系からなる群から選択され、前記プロバイオティクス剤が、ラクトバチルス・カゼイ(lactobacillus casei)、ラクトバチルス・プランタルム(lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・アシドフィルス(lactobacillus acidophilus)、およびラクトバチルス・ラムノサス(lactobacillus rhamnosus)のうちの少なくとも1つを含み、ならびに/または前記プレバイオティクス剤が、ラクツロース、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、β−グルカン、ペクチン、ガム、レジスタントスターチ、デキストリン、サイリウム、イヌリン、フラクトオリゴ糖、およびポリデキストロースからなる群から選択され、
前記プロバイオティクスが便微生物移植(FMT)であるか、または前記組成物が、便微生物移植(FMT)と組み合わせて、もしくは高繊維質食、低フルクトース食、成分栄養剤、完全液体経腸食、完全非経口食、および末梢静脈食からなる群から選択される食事と組み合わせて使用するための組成物である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
空腸、十二指腸、回腸、もしくは結腸への送達を可能にする放出制御製剤としての経口投与のために、注入による空腸、十二指腸、回腸、もしくは結腸への局所送達のために、または直腸投与のために、製剤化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項6】
ディスバイオシス、またはそれに関連する消化管の病態、の治療または予防のためのキットであって、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬と、その使用のための説明書と、を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内細菌叢の調節、具体的には消化管のホメオスタシスの修復および胃腸障害の軽減に有用な薬物を目的とする。
【背景技術】
【0002】
ヒトの消化(GI)管は、体内で最大の微生物リザーバーであり、約1014個の微生物、主に細菌を保有している。これら微生物は、集合的に細菌叢と呼ばれており、これら集合体のゲノムは、いわゆるマイクロバイオームを構成している。正常な細菌叢は、概して、500〜1000種の異なる種からなり、主に結腸に生息しており、フィルミクテス(Firmicutes)門の種およびバクテロイデス(Bacteroidetes)門の種が、このうちの90%超を表している。GIの細菌集団は、それらの定性的な組成および存在比が、近位部から遠位部および内腔から外腔で異なっており、かつ、対象の年齢、食習慣、地理的な起源、出生場所、抗生剤療法、および環境上の刺激に対する曝露の影響を受ける(Vajro et al., 2013, J Pediatr Gastroenterol Nutr, May;56(5):461−8)。
【0003】
腸内細菌叢は、消化、代謝、栄養素の抽出、ビタミンの合成、病原体のコロニー形成の予防、および免疫の調節を含む、多くの生理機能に関与している。腸内細菌叢の組成および生物多様性の変更または変化が、様々な代謝状態、ならびに多くの胃腸障害および他の病態生理学的状態で観察されている。たとえば、細菌叢の乱れおよび変更は、肥満、炎症性腸疾患(IBD)、セリアック病、過敏性腸症候群(IBS)、結腸癌、糖尿病、肝障害、嚢胞性線維症、およびアレルギーの症例と関連または相関している。よって、特定の細菌叢プロファイルが、様々な病態生理学的な状態に関するマーカーとして評価されている。現在、当該病態の発症と細菌叢の組成および多様性の変化との間の相互作用は、未だ完全には解明されていない。よって、特定の微生物の変更が対象の病態の発症に起因するかどうか、およびこの病因に寄与するかどうか(およびどの程度寄与するか)を決定する試みで、この相互作用を調査することを目的とする研究は、魅力的な研究分野として出現しつつある(Vajro et al., 2013, ibid; Erejuwa et al., 2014, Int J Mol Sci, Mar 7;15(3):4158−88)。
【0004】
腸内細菌叢を調節する様々な試みが報告されている。このような手法として、たとえばプロバイオティクス(生きている微生物の投与)、プレバイオティクス(特定の常在性の腸内微生物の増殖および/または活性を選択的に高める、耐消化性の栄養補助食品)、抗菌剤(たとえば抗生剤)、ならびにより間接的な手法、たとえば外科手術および減量戦略が挙げられる。特定の病態の発症と、腸内細菌叢の組成および多様性の乱れを関連づけるエビデンスを考慮すると、腸内細菌叢を調節することを目的とする手法は、見込みのある治療として示唆されている。しかしながら、一部の研究では好ましい結果が報告されているが、他の研究では、治療上の有益性を報告できていないか、あるいは状態またはその症状の憎悪または悪化を述べている(Erejuwa et al., 2014, ibid)。よって、疾患の発症における腸内細菌叢の役割、特に治療手法としての微生物の調節の可能性を調べる研究は、未だ初期段階にあり、より厳格な、in vitro、動物、および臨床での研究を必要としている。
【0005】
脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)とも呼ばれている、脂肪酸胆汁塩の抱合体は、胆汁酸またはコレステロールの代謝に関連する状態を改善するために使用され得る合成分子のファミリーである。FABACは、血中コレステロール濃度を低下させ、肝臓の脂肪レベルを低下させ、および胆石を溶解すると考えられている(Gilat et al., Hepatology 2003; 38: 436−442;およびGilat et al., Hepatology 2002; 35: 597−600)。FABACとして、とりわけ、アラムコールしても知られている、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸が挙げられる。
【0006】
米国特許第6,384,024号、同6,395,722号、同6,589,946号は、特定のFABAC、ならびに胆汁中のコレステロール結石の溶解および動脈硬化症の治療におけるこれらの使用を開示している。脂肪肝の治療、血中コレステロール値の低下、ならびに高血糖症、糖尿病、インスリン抵抗性、および肥満の治療に使用するための、これらおよび追加的なFABACが、米国特許第7,501,403号、同8,975,246号、および同8,110,564号に開示された。FABACのさらなる治療上の使用は、Safadiら(Clin Gastroenterol Hepatol. 2014 Dec;12(12):2085−91)および国際特許公開公報第2015/019358号および同2015/019359号に開示されている。特定のFABACのアミン塩が、国際特許公開公報第2015/083164号に開示されている。
【0007】
国際特許公開公報第2014/121298号および同2014/121302号は、胞子形成細菌の精製集団の使用、および非病原性、発芽コンピテント(germination−competent)細菌胞子を含む治療用組成物に言及している。これらの刊行物は、in vitroでの目的のため、すなわちin vitroで細菌胞子集団を発芽させるために、Oxgall(脂肪酸、胆汁酸、無機塩、硫酸塩、胆汁色素、コレステロール、ムチン、レシチン、グルクロン酸(glycuronic acid)、ポルフィリン、および尿素から構成されている、脱水したウシ胆汁)を含む様々な培養培地の補助剤の使用を示唆している。
【0008】
米国特許出願公開第2016/0213702号は、微量栄養素、ポリフェノール、プレバイオティクス、プロバイオティクス、または他の薬剤を任意に含む、グリカン治療、医薬組成物、およびその医療用食品の調製物、ならびにそれらの作製方法に関する。同様に、たとえばヒトの消化管の細菌叢の調節のため、およびディスバイオシス(dysbioses)を治療するための、グリカン治療を用いる方法を提供する。米国特許出願公開第2016/0213702号は、さらに、上記グリカン治療が、NAFLDおよびNASHなどの代謝障害の治療に使用され得ることを開示している。アラムコールは、単に、NAFLD/NASHに関する従来の公知の治療であることから言及されている。グリカン治療は、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノース、フルクトース、キシロース、フコース、またはラムノースのグリカン単位を含み、その平均的な分岐度および重合度を含む特定のパラメータによりさらに定義されている、分岐型のグリカンを含むと開示されている。
【0009】
国際特許公開公報第2015/124637号は、液体に便を懸濁することと、450nm未満の最大孔径を有するフィルターで懸濁液を濾過するのと類似の方法でまたは濾過することにより、懸濁液に含まれている細菌叢を枯渇させることと、によって作製された、動物の、人工の、合成の、培養および/または発酵させた便由来の、薬物として使用するための調製物に関する。
【0010】
特に腸内細菌叢を改善または修復することを目的とする有効な治療に関する医療上のニーズは、未だに満たされていない。さらに、消化管障害、またはそれらの病因の一部としての腸内フローラの不均衡を含む他の状態を軽減するため、さらなる改善された治療が未だに必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、腸内細菌叢の調節を目的とする。具体的には、本発明は、消化管(GI)の微生物集団の改変、ならびに腸内フローラの不均衡に関連するGI障害および他の状態の軽減に使用するための医薬組成物に関する。より具体的には、本発明は、脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)の治療有効量を含む組成物の使用に関する。特定の好適な実施形態では、FABACは、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(アラムコール)またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0012】
本発明の第1の態様では、その必要がある対象におけるディスバイオシスの治療または予防に使用するための医薬組成物であって、式I:
W−X−G (I)
(式中、Gが、胆汁酸またはその胆汁酸塩ラジカルを表し;Wが、6〜22個の炭素原子を有する1つまたは2つの脂肪酸ラジカルを表し;Xが、ヘテロ原子、直接C―C結合、およびC=C結合からなる群から選択される結合部分(bonding member)を表す)のFABACの治療有効量を含む、医薬組成物を提供する。
【0013】
一部の実施形態では、結合部分は、NH、P、S、O、および直接C―C結合またはC=C結合からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。一部の実施形態では、結合部分はNHである。
【0014】
本明細書中使用されている用語「ディスバイオシス」は、微生物集団の正常な多様性および/または機能が妨害されている、対象における腸および他の身体領域の細菌叢の状態を表す。この不健康な状態は、多様性の減少、特定の遺伝的状態および/もしくは環境状態が対象に存在する場合に限り疾患を引き起こすことができる1つもしくは複数の病原体もしくは病原性共生生物、共生生物の過剰増殖、または、宿主対象にもはや本質的な機能を提供せず、よってもはや健康を促進しない生態学的微生物ネットワークへのシフトによるものであり得る。非限定的な例では、本質的な機能として、腸の粘膜関門の増強、侵入病原体の直接的または間接的な減少および排除、特定の物質の吸収の増強、およびGI炎症の抑制を、挙げることができる。
【0015】
一実施形態では、ディスバイオシスは、GI管のディスバイオシスである。様々な実施形態では、本組成物は、GIの細菌叢集団を改善(望ましい組成および分布に向けて調節またはシフト)するために、使用され得る。別の実施形態では、本組成物は、GI管における有益な細菌叢の増殖の促進に使用するためのものである。別の実施形態では、本組成物は、GI管における有害な細菌叢の増殖の阻害に使用するためのものである。別の実施形態では、本組成物は、GI管における細菌叢の生物多様性の改変(たとえば増強)に使用するためのものである。
【0016】
一部の実施形態では、上記1つまたは2つの脂肪酸ラジカルのそれぞれは、アラキジン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、パルミチン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、およびオレイン酸からなる群から選択される脂肪酸のラジカルである。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。一部の実施形態では、上記1つまたは2つの脂肪酸ラジカルは、アラキジン酸のラジカルである。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0017】
一部の実施形態では、Wは2つの脂肪酸ラジカルを表し、それぞれが、独立して、6〜22個の炭素原子を含む;上記脂肪酸ラジカルは、それぞれ、独立して、ヘテロ原子、直接C―C結合、およびC=C結合からなる群から選択される結合部分Xに結合している。一部の実施形態では、Wは、単一の脂肪酸ラジカルを表す。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0018】
一部の実施形態では、胆汁酸は、コール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。一部の実施形態では、胆汁酸はコール酸である。
【0019】
別の実施形態では、結合部分は、NH、P、S、O、および直接C―C結合またはC=C結合からなる群から選択され;上記1つまたは2つの脂肪酸ラジカルのそれぞれは、アラキジン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、パルミチン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、およびオレイン酸からなる群から選択される脂肪酸のラジカルであり;ならびに胆汁酸は、コール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0020】
特定の実施形態では、上記FABACは、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(アラムコール)またはその薬学的に許容可能な塩である。別の実施形態では、アラムコールは、アラムコール遊離酸の形態である。別の実施形態では、アラムコールは、アミンベースの塩の形態である。特定の実施形態では、塩は、メグルミン、リジン、またはトロメタミンのアラムコール塩である。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0021】
別の実施形態では、本発明の組成物は、前記抱合体を活性成分として含み、さらに、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、または担体のうちの少なくとも1つを含む。別の実施形態では、前記組成物は、経口投与のために製剤化されている。特定の他の実施形態では、前記組成物は、GI管の特定の領域(たとえば空腸、十二指腸、回腸、および/または結腸)への活性成分の送達(の増強または標的化)を可能にする、放出制御製剤として製剤化されている。別の実施形態では、前記組成物は、たとえば注入による、空腸、十二指腸、回腸、または結腸への局所送達のためのものである。別の実施形態では、前記組成物は、直腸投与のために製剤化されている。各可能性は、本発明の別の実施形態を表すものである。
【0022】
別の実施形態では、本発明の組成物は、唯一の活性成分としてFABAC(たとえばアラムコール)を含む。さらなる他の実施形態では、本組成物は、追加的な活性成分を含んでもよい。様々な実施形態では、前記組成物は、少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、またはプレバイオティクス剤をさらに含む(またはこれらと組み合わせて使用するためのものである)。たとえば、本組成物は、さらに、抗生剤(限定するものではないが、ニトロイミダゾール系、マクロライド系、またはβラクタム系を含む)、プロバイオティクス剤(限定するものではないが、ラクトバチルス・カゼイ(lactobacillus casei)、ラクトバチルス・プランタルム(lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・アシドフィルス(lactobacillus acidophilus)、およびラクトバチルス・ラムノサス(lactobacillus rhamnosus)などのラクトバチルス属の種を含む)、および/またはプレバイオティクス剤(限定するものではないが、ラクツロース、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、β−グルカン、ペクチン、ガム、レジスタントスターチ、デキストリン、サイリウム、イヌリン、フラクトオリゴ糖、およびポリデキストロースなどの食物繊維または薬剤を含む)を含んでもよく、またはこれらと組み合わせて投与されてもよい。別の実施形態では、前記組成物は、便微生物移植(FMT)を含み、または便微生物移植(FMT)と組み合わせて使用されている。別の実施形態では、前記組成物は、限定するものではないが、高繊維質食、低フルクトース食、成分栄養剤、完全液体経腸食、完全非経口食、または末梢静脈食を含む規定食と組み合わせて使用されている。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0023】
様々な実施形態では、ディスバイオシスは、消化管の疾患または障害と関連し得る。たとえば、前記ディスバイオシスは、慢性炎症疾患、自己免疫疾患、感染症、腸切除、および/または慢性的な下痢に関連する状態に関連し得る。例示的な実施形態では、疾患または障害は、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD、クローン病および大腸炎を含む)、短腸症候群(SBS)、セリアック病、小腸内細菌異常増殖(SIBO)、胃腸炎、リーキーガット症候群、ならびに胃リンパ腫からなる群から選択されてもよい。別の実施形態では、疾患または障害は、細菌、ウイルス、または寄生虫による感染症または過剰増殖に関連している。特定の実施形態では、疾患または障害は、薬物耐性細菌による感染症に関連している。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0024】
別の実施形態では、対象はヒトである。本発明の実施形態では、本発明の組成物は、ディスバイオシス(たとえば本明細書中に開示されているその1つまたは複数の症状)を呈する対象を治療するために使用され得る。さらなる他の実施形態では、本発明の組成物は、正常なGIフローラを保護および維持するために、予防的に使用され得る。よって、別の実施形態では、本組成物は、ディスバイオシス(たとえば、限定するものではないが、免疫力が低下した対象、および集中治療環境にある患者、またはGI管の外科的処置後の患者を含む、正常なGIフローラを妨害し得る抗生剤または他の要因への曝露によるディスバイオシス)を発症するリスクのある対象において、ディスバイオシスの予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、前記対象は、抗菌剤、非経口栄養、または免疫抑制剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤による治療レジメン下にある。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0025】
別の態様では、その必要がある対象において、腸内フローラのバランスの変更に関連する消化管の病態の予防および/または治療に使用するための医薬組成物であって、本明細書中定義されている式IのFABACの治療有効量を含む、医薬組成物を提供する。
【0026】
特定の実施形態では、前記FABACは、アラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩である。別の実施形態では、アラムコールは、アラムコール遊離酸の形態である。別の実施形態では、アラムコールは、アミンベースの塩の形態である。特定の実施形態では、この塩は、メグルミン、リジン、トロメタミンのアラムコール塩である。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0027】
様々な実施形態では、前記ディスバイオシスは、慢性炎症疾患、自己免疫疾患、感染症、腸切除、および/または慢性的な下痢に関連する状態に関連している。特定の実施形態では、病態は、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、短腸症候群(SBS)、セリアック病、小腸内細菌異常増殖(SIBO)、胃腸炎、リーキーガット症候群、および胃リンパ腫からなる群から選択される。別の実施形態では、疾患または障害は、たとえば薬物耐性細菌による、細菌、ウイルス、または寄生虫による感染症または過剰増殖に関連している。他の実施形態では、本組成物は、本明細書中記載されているように製剤化されている、または、本明細書中記載されているように、追加的な薬剤と組み合わせて使用されている。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0028】
特定の実施形態では、前記FABACは、アラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩である。別の実施形態では、アラムコールは、アラムコール遊離酸の形態である。別の実施形態では、アラムコールは、アミンベースの塩の形態である。特定の実施形態では、この塩は、メグルミン、リジン、およびトロメタミンのアラムコール塩からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別の実施形態を表すものである。
【0029】
別の態様では、その必要がある対象におけるディスバイオシスを治療または予防するための方法であって、本明細書中定義されている式IのFABACの治療有効量を含む医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0030】
一実施形態では、結合部分は、NH、P、S、O、および直接C―C結合またはC=C結合からなる群から選択され;前記1つまたは2つの脂肪酸ラジカルのそれぞれは、アラキジン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、パルミチン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、およびオレイン酸からなる群から選択される脂肪酸のラジカルであり;ならびに胆汁酸は、コール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。別の実施形態では、FABACは、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(アラムコール)またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0031】
別の実施形態では、ディスバイオシスは、GI管のディスバイオシスである。一部の実施形態では、本方法は、GI管における有益な細菌叢の増殖の促進、GI管における有害な細菌叢の増殖の阻害、および/またはGI管における細菌叢の生物多様性の改変のために、使用されている。別の実施形態では、ディスバイオシスは、消化管の疾患または障害に関連している。別の実施形態では、前記ディスバイオシスは、慢性炎症疾患、自己免疫疾患、感染症、腸切除、および/または慢性的な下痢に関連している状態に関連している。別の実施形態では、疾患または障害は、IBS、IBD、SBS、セリアック病、SIBO、胃腸炎、リーキーガット症候群、および胃リンパ腫からなる群から選択される。別の実施形態では、疾患または障害は、細菌、ウイルス、寄生虫による感染症または過剰増殖に関連している。別の実施形態では、疾患または障害は、薬物耐性細菌による感染症に関連している。
【0032】
別の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、前記対象は、ディスバイオシスを呈する、またはディスバイオシスを発症するリスクがある。別の実施形態では、前記対象は、抗菌剤、非経口栄養、または免疫抑制剤のうちの少なくとも1つによる治療レジメン下にある。
【0033】
別の実施形態では、前記組成物は、唯一の活性成分としてFABACを含む。別の実施形態では、少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、またはプレバイオティクス剤と組み合わせたFABACを含む。別の実施形態では、前記組成物は、FMTと組み合わせたFABACを含む。別の実施形態では、前記組成物は、経口投与のために製剤化されている。一部の実施形態では、前記組成物は、前記FABACの、空腸、十二指腸、回腸、もしくは結腸への送達を可能にする放出制御製剤として製剤化されているか、または注入による、空腸、十二指腸、回腸、もしくは結腸への局所送達により投与されている。別の実施形態では、前記組成物は、直腸投与のために製剤化されている。別の実施形態では、本方法は、高繊維質食、低フルクトース食、成分栄養剤、完全液体経腸食、完全非経口食、および末梢静脈食からなる群から選択される食事と組み合わせて、前記FABACを投与することを含む。
【0034】
別の態様では、その必要がある対象における腸内フローラのバランスの変更に関連する消化管の病態を予防および/または治療するための方法であって、本明細書中定義されている式IのFABACの治療有効量を含む医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法を提供する。別の実施形態では、前記FABACは、アラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0035】
別の実施形態では、前記ディスバイオシスは、慢性炎症疾患、自己免疫疾患、感染症、腸切除、および/または慢性的な下痢に関連する状態に関連している。別の実施形態では、疾患または障害は、IBS、IBD、SBS、セリアック病、SIBO、胃腸炎、リーキーガット症候群、および胃リンパ腫からなる群から選択される。別の実施形態では、疾患または障害は、細菌、ウイルス、または寄生虫による感染症または過剰増殖に関連している。特定の実施形態では、疾患または障害は、薬物耐性細菌による感染症に関連している。
【0036】
別の実施形態では、前記組成物は、唯一の活性成分としてFABACを含む。別の実施形態では、前記組成物は、少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、またはプレバイオティクス剤と組み合わせたFABACを含む。特定の実施形態では、前記組成物は、FMTと組み合わせたFABACを含む。
【0037】
様々な実施形態では、前記組成物は、経口投与または直腸投与のために製剤化されている。他の特定の実施形態では、前記組成物は、前記FABACの、空腸、十二指腸、回腸、もしくは結腸への送達を可能にする放出制御製剤として製剤化されているか、または注入による、空腸、十二指腸、回腸、もしくは結腸への局所送達により投与されている。別の実施形態では、本方法は、高繊維質食、低フルクトース食、成分栄養剤、完全液体経腸食、完全非経口食、および末梢静脈食からなる群から選択される食事と組み合わせて、前記FABACを投与することを含む。
【0038】
別の態様では、少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、またはプレバイオティクス剤と組み合わせた、本明細書中に定義されている式IのFABAC、たとえばアラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、抗生剤は、限定するものではないが、ニトロイミダゾール系(たとえばメトロニダゾール)、マクロライド系(たとえばエリスロマイシン、アジスロマイシン)、およびβラクタム系(たとえばアンピシリンまたはその誘導体)を含み得る。一部の実施形態では、プロバイオティクス剤は、たとえば、ラクトバチルス・カゼイ(lactobacillus casei)、ラクトバチルス・プランタルム(lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・アシドフィルス(lactobacillus acidophilus)、およびラクトバチルス・ラムノサス(lactobacillus rhamnosus)のうちの少なくとも1つを含む。別の実施形態では、プロバイオティクス剤は、便微生物移植(FMT)であってもよい。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0039】
様々な他の例示的な実施形態では、前記組成物は、前記FABACの空腸、十二指腸、回腸、または結腸への送達(の増強または標的化)を可能にする放出制御製剤として、製剤化されている。他の実施形態では、前記組成物は、経口投与または直腸投与のために製剤化されている。さらなる実施形態では、前記組成物は、注入による、空腸、十二指腸、回腸、または結腸への局所送達のために製剤化されている。
【0040】
別の実施形態では、前記組成物は、その必要のある対象における、ディスバイオシスまたは、限定するものではないが、IBS、IBD、SBS、セリアック病、SIBO、胃腸炎、リーキーガット症候群、および胃リンパ腫、もしくは細菌、ウイルス、もしくは寄生虫による感染症もしくは過剰増殖に関連している病態を含む、それに関連する消化管の病態を予防および/または治療するための薬物の調製のために、使用されている。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0041】
別の態様では、ディスバイオシスまたはそれに関連する胃腸の病態の治療または予防のための、少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、またはプレバイオティクス剤を組み合わせた、アラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩とその使用のための説明書とを含むキットを提供する。特定の実施形態では、抗生剤は、ニトロイミダゾール系、マクロライド系、およびβラクタム系からなる群から選択してもよく;プレバイオティクス剤は、ラクツロース、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、β−グルカン、ペクチン、ガム、レジスタントスターチ、デキストリン、サイリウム、イヌリン、フラクトオリゴ糖、およびポリデキストロースからなる群から選択されてもよく;ならびにプロバイオティクス剤は、少なくとも1つのラクトバチルス属種またはFMTを含んでもよい。別の実施形態では、本キットは、前記少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、またはプレバイオティクス剤をさらに含む。他の特定の実施形態では、病態は、たとえばIBS、IBD、SBS、セリアック病、SIBO、胃腸炎、リーキーガット症候群、および胃リンパ腫、または細菌、ウイルス、もしくは寄生虫による感染症もしくは過剰増殖に関連している病態であり得る。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0042】
本発明の他の対象、特徴、および利点は、以下の説明および図面から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、腸内細菌叢の調節を目的とする。具体的には、本発明は、消化管のホメオスタシスを修復するため、GI管の様々なレベルの消化管の細菌叢プロファイルを改変するため、ならびに腸内フローラの不均衡に関連する消化管の障害および他の状態の軽減のための、組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(アラムコール)またはその薬学的に許容可能な塩などの脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)の治療有効量を含む組成物の使用に関する。
【0044】
一態様では、その必要がある対象におけるディスバイオシスの治療または予防に使用するための医薬組成物であって、式I:
W−X−G (I)
(式中、Gが、胆汁酸またはその胆汁酸塩ラジカルを表し;Wが、6〜22個の炭素原子を有する1つまたは2つの脂肪酸ラジカルを表し;Xが、ヘテロ原子、直接C―C結合、およびC=C結合からなる群から選択される結合部分を表す)
のFABACの治療有効量を含む、医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、前記FABACは、アラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0045】
別の態様では、その必要がある対象におけるディスバイオシスを治療または予防するための方法であって、本明細書中定義されている式IのFABAC、たとえばアラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を含む医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0046】
別の態様では、その必要がある対象における腸内フローラのバランスの変更に関連する消化管の病態の予防および/または治療に使用するための医薬組成物であって、本明細書中定義されている式IのFABAC、たとえばアラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を含む、医薬組成物を提供する。
【0047】
別の態様では、その必要がある対象における腸内フローラのバランスの変更に関連する消化管の病態を予防および/または治療するための方法であって、本明細書中定義されている式IのFABAC、たとえばアラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を含む医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0048】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、またはプレバイオティクス剤と組み合わせた、本明細書中定義されている式IのFABAC、たとえばアラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を含む医薬組成物に関する。
【0049】
別の態様では、本発明は、ディスバイオシスまたはそれに関連する消化管の病態の治療または予防のための、少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、またはプレバイオティクス剤と組み合わせた、本明細書中定義されている式IのFABAC(アラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩など)と、その使用のための説明書とを含むキットに関する。
【0050】
別の実施形態では、その必要がある対象におけるマイクロバイオームのプロファイルの改変に使用するための医薬組成物であって、本明細書中定義されている式IのFABAC、たとえばアラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を含む、医薬組成物を提供する。
【0051】
脂肪酸胆汁酸抱合体
本明細書中使用されている用語「FABAC(単数または複数)」、「BAFAC」、「FABAC」、および「本発明のFABAC」は、互換可能に使用されており、式W−X−G(式I)(式中、Gが、胆汁酸またはその胆汁酸塩ラジカルを表し、Wが、6〜22個の炭素原子を有する1つまたは2つの脂肪酸ラジカルを表し、Xが、胆汁酸と脂肪酸ラジカルとの間の結合部分を表す)の抱合体を表す。一部の実施形態では、結合部分Xとして、限定するものではないが、NH、P、S、O、または直接C―C結合もしくはC=C結合が挙げられる。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。FABACは、当該分野で知られており、たとえば、米国特許第6,384,024号、同6,395,722号、および同6,589,946号に記載されている。これら文献は参照として本明細書中に援用されている。一部の実施形態では、1つまたは2つの脂肪酸ラジカルは、8〜22個の炭素原子、可能であれば14〜22個の炭素原子、好ましくは18〜22個の炭素原子を含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。典型的には、および好ましくは、結合は、腸の酵素および/または細菌の酵素によって実質的に脱抱合されない頑丈な結合である。よって、エステル結合は、容易に脱抱合されるため、これら実施形態では適切ではない。この結合は、特にはNHを意味するが、他の適切な結合部分、たとえばS、P、O−エーテルなども意味し得る。この結合は、アルファまたはベータの構成とすることができ、胆汁酸分子の様々な位置で結合できるが、3、6、7、12、および24位が好ましい。一部の実施形態では、本発明のFABACは、ディスバイオシスおよび/または関連する状態を治療、寛解、予防、またはこれらのリスクを低下させるために使用されるFABACを表す。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0052】
FABACの非限定的な一般的な構造を、以下に記載する。非限定的な例では、胆汁酸は、いくつかの鎖長のうちのいずれかの1〜2個の脂肪酸と抱合している(たとえば3位でアミド結合を使用する)。例示的な実施形態では、本発明のFABACは、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(アラキジルアミドコラン酸;アラキジン酸とコール酸のアミド抱合体;「アラムコール」もしくは「C20 FABAC」としても知られている)、または3β−ステアリルアミド−7α,12α,ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(ステアリルアミドコラン酸;ステアリン酸とコール酸のアミド抱合体;ステアムコール(Steamchol)もしくは「C18 FABAC」としても知られている)である。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0053】
一部の実施形態では、本発明のFABACは、式I:
W−X−G (I)
(式中、Gが、胆汁酸またはその胆汁酸塩ラジカルを表し;Wが、6〜22個の炭素原子を有する1つまたは2つの飽和または不飽和の脂肪酸ラジカルを表し、Xが、結合部分または直接C―C結合またはC=C結合を表す)
を有する。一部の実施形態では、Xは、ヘテロ原子、直接C―C結合およびC=C結合からなる群から選択される結合部分を表す。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。一部の実施形態では、結合部分Xは、NH、P、S、O、および直接C―C結合またはC=C結合からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。一部の実施形態では、Gは胆汁酸ラジカルを表す。
【0054】
一部の実施形態では、式II:
(W−X−)G (II)
(式中、Gが、胆汁酸またはその胆汁酸塩ラジカルを表し;Wが、6〜22個の炭素原子を有する脂肪酸ラジカルを表し、Xが、ヘテロ原子、または直接C―C結合もしくはC=C結合を含む結合部分を表し;nが、整数の1または2である)
を有するFABACの使用が考慮されている。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。一部の実施形態では、ヘテロ原子は、NH、P、S、およびOからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。一般的に、用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外のいずれかの元素の原子を含み、この好ましい例として、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられる。
【0055】
一実施形態では、nは1である。別の実施形態では、nは2であり、それぞれの出現毎に、Wは、独立して、6〜22個の炭素原子を有する脂肪酸ラジカルであり、Xは、独立して、ヘテロ原子または直接C―C結合もしくはC=C結合を含む結合部分である。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0056】
別の実施形態では、FABACの結合部分は、NH、P、S、O、または直接C―C結合、またはC=C結合からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。一部の実施形態では、用語「直接結合」は、C―C結合(単結合)を表す。別の実施形態では、用語「直接結合」は、C=C結合(二重結合)を表す。別の実施形態では、1超の直接結合が、本発明のFABACに利用されている。別の実施形態では、胆汁酸と脂肪酸ラジカルとの間の結合は、β立体配置である。別の実施形態では、胆汁酸と脂肪酸ラジカルとの間の結合は、α立体配置である。別の実施形態では、結合部分は、エステル結合以外である。
【0057】
一部の実施形態では、FABACの胆汁酸または胆汁酸ラジカルは、コール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。胆汁酸またはそのラジカルのそれぞれのタイプは、本発明の個別の実施形態を表すものである。本明細書中使用されている用語「ラジカル」は、1つまたは複数の不対電子を含む化学部分を意味する。一部の実施形態では、FABACの胆汁酸または胆汁酸ラジカルはコール酸である。
【0058】
一部の実施形態では、本発明のFABACは、単一の脂肪酸ラジカルを含む。脂肪酸ラジカルと胆汁酸の抱合は、胆汁酸の様々な位置で行われ得る。特定の実施形態では、脂肪酸ラジカルと胆汁酸の抱合は、3、6、7、12、および24からなる群から選択される胆汁酸の核の位置で行われている。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表すものである。一実施形態では、前記抱合は、胆汁酸の核の3位で行われている。
【0059】
他の実施形態では、本発明のFABACは、2つの脂肪酸ラジカルを含む。一部の実施形態では、胆汁酸の核に対する各脂肪酸ラジカルの抱合は、3、7、12、および24からなる群から選択される胆汁酸の核の2つの位置で行われる。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表すものである。特定の実施形態では、2つの脂肪酸ラジカルの抱合は、胆汁酸の核の3および7位で行われる。
【0060】
一部の実施形態では、脂肪酸は、短鎖脂肪酸である。一部の実施形態では、短鎖脂肪酸の鎖長は、6〜8個の炭素である。一部の実施形態では、脂肪酸は、中鎖脂肪酸である。一部の実施形態では、中鎖脂肪酸の鎖長は、8〜14個の炭素である。一部の実施形態では、脂肪酸の鎖長は、14〜22個の炭素である。一部の実施形態では、脂肪酸の鎖長は、16〜22個の炭素である。特定の実施形態では、当該分野で知られている他の脂肪酸の長さを利用してもよい。脂肪酸または脂肪酸ラジカルのそれぞれのタイプは、本発明の個別の実施形態を表すものである。一部の実施形態では、開示された方法に係る医薬組成物は、2つ以上のタイプのFABACを含む。
【0061】
一部の実施形態では、脂肪酸は飽和である。一部の実施形態では、脂肪酸は不飽和である。一部の実施形態では、脂肪酸はモノ不飽和である。一部の実施形態では、脂肪酸はポリ不飽和である。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0062】
一部の実施形態では、本発明のFABACの1つまたは2つの脂肪酸または脂肪酸ラジカルは、独立して、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、およびパルミチン酸からなる群から選択されている。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。本発明に係るFABACの例示的な実施形態を、以下の式IIIに提示する。一部の実施形態では、式IIIにおいて、n=20またはn=18である。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【化1】
【0063】
一部の実施形態では、本発明のFABACの1つまたは2つの脂肪酸または脂肪酸ラジカルは、不飽和の脂肪酸または脂肪酸ラジカルである。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。一部の実施形態では、FABACの1つまたは2つの不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸ラジカルは、独立して、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、およびエライジン酸からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0064】
本明細書中使用されるように、「CFA」としても知られている用語「抱合脂肪酸」は、二重結合のうちの少なくとも1対が、1つのみの単結合によって分離されているポリ不飽和脂肪酸を表す。
【0065】
別の実施形態では、結合部分は、NH、P、S、O、および直接C―C結合、またはC=C結合からなる群から選択され;前記1つまたは2つの脂肪酸ラジカルのそれぞれは、アラキジン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、パルミチン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、およびオレイン酸からなる群から選択される脂肪酸のラジカルであり;ならびに胆汁酸は、コール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0066】
一部の実施形態では、本発明の方法および組成物のFABACは、3β−ベヘニルアミド(behenylamido)−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸、3β−ステアリルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ5β−コラン−24−酸、および3β−パルミチルアミド(palmitylamido)−7α,12α−ジヒドロキシ5β−コラン−24−酸からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。例示的な実施形態では、本発明のFABACは、3β−アラキジルアミド−7α,12α,ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(アラキジルアミドコラン酸;アラキジン酸とコール酸のアミド抱合体;「アラムコール」または「C20 FABAC」としても知られている)である。別の実施形態では、アラムコールは、アラムコール遊離酸の形態である。別の実施形態では、アラムコールは、アミンベースの塩の形態である。特定の実施形態では、この塩は、メグルミン、リジン、またはトロメタミンのアラムコール塩である。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0067】
本明細書中記載のFABACは、それらの薬学的に許容可能な塩および/または誘導体を含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。本明細書中使用されている用語「胆汁酸の誘導体」は、薬学的に許容可能な塩基または酸、ならびにそれらのジアステレオマーおよびエナンチオマーの形態を伴う胆汁酸塩を含む。
【0068】
医薬組成物およびキット
対象に本発明の組成物を投与するため、何等かの適切な経路が使用され得る。
【0069】
一部の実施形態では、適切な投与経路は、全身経路であり得る。一部の実施形態では、投与は、全身的に投与することである。一部の実施形態では、本組成物は、全身投与のために製剤化されている。
【0070】
さらに他の好適な実施形態では、局所投与する場合(たとえばGI粘膜へ局所的に、またはGI管の特定の部分もしくは領域への局所投与による)であっても、さらには、有効成分に対する全身的な曝露が低減しているまたは最適以下である場合であっても、本発明のFABACが有効であり得ることが、本明細書中に開示されている。よって、一部の実施形態では、投与は、局所投与することである。一部の実施形態では、本組成物は、局所投与のために製剤化されている。他の実施形態では、本組成物は、局所投与、たとえば、浣腸、または大腸内視鏡、または経口胃チューブ、経鼻胃チューブ、経鼻十二指腸チューブもしくは経鼻空腸チューブ、または経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)チューブおよび人工肛門などの他のいずれかのGIへの流入部(GI port of entry)による注入による局所投与のために、製剤化されている。
【0071】
他の実施形態では、治療有効量は、たとえば局所投与する場合に、対象の細菌叢に有益な作用を提供するために有効な量を表す。
【0072】
別の実施形態では、全身投与は、経腸経路を介している。別の実施形態では、経腸経路を介した投与は、経口投与である。一部の実施形態では、本組成物は、経口投与のために製剤化されている。
【0073】
一部の実施形態では、経口投与は、硬ゼラチンカプセル剤もしくは軟ゼラチンカプセル剤、丸剤、カプセル剤、コーティング錠を含む錠剤、糖衣錠、エリキシル剤、懸濁剤、液剤、ゲル剤、スラリーまたはシロップ剤の形態、およびそれらの放出制御形態である。
【0074】
経口投与に適切な担体は、当該分野でよく知られている。経口で使用するための組成物は、固体の賦形剤を使用して、任意に、得られた混合物を粉砕し、錠剤または糖衣錠のコアを得るために望ましい適切な補助剤を添加した後に顆粒の混合物を処理して、作製することができる。適切な賦形剤の非限定的な例として、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖、コーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボメチルセルロースナトリウム(sodium carbomethylcellulose、)などのセルロース調製物、ならびに/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容可能なポリマーなどの充填剤が挙げられる。
【0075】
必要に応じて、架橋したポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、たとえばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を添加してもよい。たとえばディスペンサーで使用するためのゼラチンのカプセル剤およびカートリッジは、本化合物と、ラクトースまたはスターチなどの適切な粉末基材との粉末混合物を含むように製剤化されてもよい。
【0076】
経口投与用の固体の剤形として、限定するものではないが、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。このような固体の剤形では、活性化合物は、スクロース、ラクトース、またはスターチなどの少なくとも1つの不活性な薬学的に許容可能な担体と、混合されている。また、このような剤形は、その通常の実践として、不活性な希釈剤以外の追加的な物質、たとえば潤滑剤を含むことができる。また、カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含み得る。
【0077】
さらにおよび好ましくは、剤形は、腸溶コーティングなどの放出制御コーティングで調製することができる。本明細書中使用されている用語「腸溶コーティング」は、消化器系の中での組成物の吸収の位置を制御するコーティングを表す。腸溶コーティングに使用される材料の非限定的な例として、脂肪酸、ワックス、植物繊維、またはプラスチックがある。他の実施形態では、この剤形は、消化器系の中での組成物の吸収の位置を制御する、放出制御マトリックスと共に調製されてもよい。様々な実施形態では、本組成物は、たとえば前記FABACの空腸、十二指腸、回腸、または結腸への送達の増強または標的化を可能にする放出制御製剤として、製剤化されている。言い換えると、前記製剤は、従来の即時放出型の製剤からの吸収と比較して、対象のGI領域における前記活性成分の吸収の有意な増加(たとえば少なくとも20%、40%、60%、または80%の増加)をもたらすように制御された方法で、活性成分を放出し得る。他の実施形態では、前記組成物は、注入による、空腸、十二指腸、回腸、または結腸への局所送達のために製剤化されている。別の実施形態では、前記組成物は、経口投与または直腸投与のために製剤化されている。よって、特定の実施形態では、本発明は、限定するものではないが、米国特許第6,565,883号により開示されるものを含む、本明細書中定義されている式(I)の化合物またはその塩の持続放出製剤または放出制御製剤の使用を目的とする。たとえば、本組成物は、2つのフィルムでコーティングされたコアを含んでもよく、このうち第1の内側のフィルムは、水または体液に半透過性であり、前記コアに直接適用されており、セルロースアセテートを含み、第2の外側のフィルムは、水または体液に透過性であり、エチルセルロースを含むフィルムである。
【0078】
特定の吸収部位で投与される薬物の製剤化に関して、達成される薬物のレベルはそれぞれ、(1)製剤から薬物の放出、(2)吸収、および(3)排泄、に関する速度定数の結果である。即時放出剤形では、薬物放出に関する速度定数は、吸収速度定数よりもはるかに大きい。放出制御製剤では、反対の意味が真であり、よって、剤形からの薬物の放出速度が、標的領域への薬物の送達における律速段階である。本明細書中使用されている用語「放出制御」は、限定するものではないが、持続放出、遅延放出、およびパルス放出の製剤を含む、いずれかの非即時放出製剤を含むことが意図されている。
【0079】
放出制御製剤は、たとえば、薬物を含む放出制御ビーズを含み得る。一般的なタイプの放出制御ビーズは、薬物を含む内側の層と、内側の層からの薬物の放出を制御する外側の膜の層とでコーティングされている、糖の球などの不活性なコアを含む。このような放出制御ビーズの例は、米国特許第5,783,215号に記載されており、ここで各ビーズは、(i)可溶性または不溶性の不活性な材料のコア単位、(ii)親水性ポリマーに分散された活性成分を含む、コア単位上の第1の層、(iii)任意の、第1の層をカバーする親水性ポリマーの第2の層、および(iv)活性成分の放出制御に有効な最も外側の膜の層を含む。上記および同様の放出制御ビーズでは、不活性なコアと活性成分を含む層との間に、少量(たとえば1〜3%)の、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはポリビニルピロリドン(PVP)などの水溶性ポリマーの形態の「シールコート(sealcoat)」を適用することは、珍しいことではない。この目的は、一般に、薬物−コアの化学的な相互作用が起こり得る場合にコアの表面から薬物を隔離すること、および/または表面積がロット間でより一定となるように不活性なコアの表面をなめらかにするためであり、それによって薬物の層および放出制御膜の層を適用した場合のコーティングの質が改善される。
【0080】
コアは、典型的には、水溶性または膨潤性の材料であり、コアとして従来より使用されている材料のいずれか、またはビーズもしくはペレットに作製される他のいずれかの薬学的に許容可能な水溶性もしくは水膨潤性の材料であり得る。特に、ビーズは、スクロース/スターチの球(Sugar Spheres NF)、スクロース結晶、または典型的に結晶セルロースおよびラクトースなどの賦形剤から構成されている、押出し乾燥した球である。
【0081】
第1の層またはシールコート層における実質的に水に不溶性の材料は、一般に、「GI不溶性」または「GI部分的不溶性」のフィルム形成ポリマー(ラテックス、または溶媒に溶解する)である。例として、エチルセルロース、セルロースアセテート、酢酸セルロースブチレート、エチルアクリラート/メチルメタクリレートコポリマー(Eudragit NE−30−D)およびアンモニオメタクリレートコポリマータイプAおよびB(Eudragit RL30DおよびRS30D)などのポリメタクリレート、ならびにシリコーンエラストマーが、挙げられ得る。通常、可塑剤が、ポリマーと共に使用されている。例示的な可塑剤として、セバシン酸ジブチル、プロピレングリコール、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、ヒマシ油、アセチル化モノグリセリド、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸ブチル(acetyl butylcitrate)、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、トリアセチン、分画ヤシ油(中鎖トリグリセリド)が挙げられる。
【0082】
有効成分を含む第2の層は、結合剤としてポリマーを伴う、または伴わずに、有効成分(薬物)から構成され得る。使用する場合、結合剤は、通常親水性ではあるが、水溶性または水不溶性であり得る。活性薬を含む第2の層に使用される例示的なポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)などの親水性ポリマー、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ゼラチン、ポリビニルアルコール、スターチ、およびそれらの誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、アクリル酸ポリマー、ポリメタクリレート、または他のいずれかの薬学的に許容可能なポリマーである。
【0083】
特定の実施形態では、本組成物は、結腸送達のために製剤化されている放出制御製剤である。たとえば、結腸送達システムは、本発明の発明者らの幾人かに対する米国特許第5,525,634号および同5,866,619号に開示されている。
【0084】
経口投与用の液体の剤形は、さらに、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、ならびに甘味剤、香料および芳香剤などの補助剤を含み得る。
【0085】
また、本発明の医薬組成物は、たとえばココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤の基剤を使用して、坐剤または停留浣腸などの直腸用の組成物に製剤化してもよい。一部の実施形態では、本開示は、本明細書中に定義されている式Iの脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)の治療有効量を含む医薬組成物に関する。一部の実施形態では、本開示は、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の治療有効量を含む医薬組成物に関する。他の実施形態では、医薬組成物は、唯一の活性成分として本発明のFABAC(または他の実施形態では、本発明のFABACの組み合わせ)を含む。特定の実施形態では、本組成物は唯一の活性成分としてアラムコールを含む。たとえば限定するものではないが、ヒトの対象への経口投与に関する有効量は、10〜800mg、30〜700mg、50〜600mg、10〜400mg、または300〜600mgの1日用量であり得る。
【0086】
本発明の医薬組成物およびキットは、任意に、限定するものではないが、抗菌剤(たとえば抗生剤)、プロバイオティクス剤、およびプレバイオティクス剤を含む追加的な活性成分をさらに含み得る。別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、またはプレバイオティクス剤と組み合わせた、式IのFABAC(たとえばアラムコールまたはその薬学的に許容可能な塩)の治療有効量を含む、医薬組成物およびキットに関する。別の実施形態では、前記組成物は、複数の抗生剤、プロバイオティクス剤、および/またはプレバイオティクス剤を含む。
【0087】
本明細書中使用されている用語「抗菌剤」は、微生物の増殖を阻害または微生物を死滅させる化合物または要素を表す。抗菌剤として、限定するものではないが、天然でまたは合成的に作製された抗生剤などの化合物が挙げられる。本明細書中使用されている用語「抗生剤」は、細菌の増殖を阻害または細菌を死滅させる抗菌剤を表す。用語「抗細菌剤」は、多くの場合、用語抗生剤の同意語として使用されている。用語「抗菌剤」は、たとえば抗細菌剤、抗真菌剤、および抗寄生虫剤を含む、1つまたは複数の感染疾患の原因物質に対して有効性を提供する、幅広い範囲の化合物を表す。
【0088】
抗菌剤は、既知の合成方法により生産されてもよく、または天然の供給源から単離されてもよく、様々な抗菌薬が市販されている。例示的な抗生剤として、限定するものではないが、ニトロイミダゾール系、マクロライド系、およびβラクタム系が挙げられる。核酸の合成を阻害でき、および/または微生物のDNAを破壊することができる様々なニトロイミダゾール系の薬物が、嫌気性菌感染症および寄生虫の感染症に対して開発されており、2,4−および5−ニトロイミダゾール(ニトロ官能基の位置に従って分類されている)を含む。様々な5−ニトロの薬物として、たとえばメトロニダゾール(フラジール)、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、6−Amino PA824、オルニダゾール、メガゾール(megazol)、およびアザニダゾールが挙げられる。2−ニトロイミダゾール(nitromidazole)に基づく薬物として、たとえばベンズニダゾールが挙げられる。マクロライドは、1つまたは複数のデオキシ糖、通常はクラジノースおよびデソサミンが結合し得る大きい環状ラクトン環を有する天然物のクラスである。タンパク質合成の阻害活性を有する様々なマクロライド(たとえばアジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、フィダキソマイシン、およびテリスロマイシン)が抗生剤として開発されている。アンホテリシンBおよびニスタチンなどのポリエン系抗真菌薬は、抗真菌性活性を提示する。βラクタム系抗生剤(またはベータラクタム系)は、その分子構造にβラクタム環を含む抗生剤のすべてからなる、幅広い範囲の抗生剤のクラスである。これは、ペニシリン誘導体(ペナム系抗生物質(penams)、セファロスポリン(セフェム系抗生物質(cephems))、モノバクタム、およびカルバペネムを含む。これらの活性は、細菌細胞壁のペプチドグリカン層の合成を阻害することを含む。
【0089】
本明細書中使用されている用語「プロバイオティクス」は、健康に有益な生きた微生物の薬剤を表す。通常、この用語は、消化管の中を通過して生存し、腸の微生物のバランスを改善することにより有益な影響を与える、摂取可能な生きた微生物培養物、たとえば細菌培養物を含む組成物を表す。例示的なプロバイオティクス剤として、限定するものではないが、ラクトバチルス・カゼイ(lactobacillus casei)、ラクトバチルス・プランタルム(lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・アシドフィルス(lactobacillus acidophilus)、およびラクトバチルス・ラムノサス(lactobacillus rhamnosus)などのラクトバチルス属種、ならびにビフィドバクテリウム属種などの他の乳酸産生細菌が挙げられる。プロバイオティクス剤は、経口投与、たとえば錠剤、丸剤、カプセル剤、ロゼンジ、顆粒剤、散剤、懸濁剤、サチェット、トローチ、お菓子、バー、シロップおよび対応する投与剤形の形態での経口投与のために製剤化されてもよく、単位服用量の形態であってもよい。プロバイオティクス組成物は、典型的に10〜1013のコロニー形成単位(cfu)、好ましくは少なくとも10cfu、10cfu、10cfu、または10cfu/組成物の乾燥重量(g)を含み得る。また、プロバイオティクス剤は、浣腸、結腸内視鏡、経鼻胃チューブ(asogastric)または経鼻十二指腸チューブなどの他の経腸経路を介して送達され得る。たとえば、プロバイオティクス剤は、便微生物移植(FMT)、すなわち、すなわちレシピエントのGI管に直接導入される、細菌(および概して、天然の抗細菌剤をさらに含む)糞便の物質の調製物であり得る。FMTは、典型的に、試験した健常なドナーから便の試料を集め、生理食塩水または他の溶液と試料を混合し、得られた溶液を漉し、得られたFMTを、たとえば浣腸、経口胃チューブにより、または凍結乾燥材料を含むカプセルの形態で口により、患者に投与することにより、もたらされる。
【0090】
本明細書中使用されている用語「プレバイオティクス」は、プレバイオティクスを摂取するヒトおよび/または他の動物に有益な影響を与える耐消化性の食品成分を表す。好ましい実施形態では、プレバイオティクスは、限られた数の細菌タイプの増殖および/または活性を腸管で選択的に刺激することにより、ヒトおよび/または他の動物の健康を改善する。プレバイオティクスの例として、レジスタントスターチ、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ポリデキストロース、ラクツロース、イヌリン、または可溶性繊維(たとえばシリアムハスクまたはアカシア線維)がある。他の例示的なプレバイオティクス剤として、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、β−グルカン、ペクチン、ガム、およびデキストリンがある。
【0091】
本発明の別の実施形態では、前記組成物またはキットは、腸肝循環およびコレステロール代謝の改変を目的としている、ウルソデオキシコール酸または他の物質を含み得る。さらなる別の実施形態では、前記組成物またはキットは、ウルソデオキシコール酸を含まない(または前記FABACを、ウルソデオキシコール酸と共に投与しない)。別の実施形態では、前記組成物またはキットは、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノース、フルクトース、キシロース、フコース、またはラムノースのグリカン単位を含む分岐したグリカンを含まない、(または前記FABACを、分岐したグリカンと共に投与しない)。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0092】
治療上の使用
特定の実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、その必要がある対象のディスバイオシスを治療または予防するために使用されている。他の実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、GI管における有益な細菌叢の増殖を促進させるために使用されている。他の実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、GI管における有害な細菌叢の増殖を阻害するために使用されている。他の実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、GI管における細菌叢の生物多様性を改変(たとえば増強)するために使用されている。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。他の実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、その必要がある対象のディスバイオシスの症状の出現を治療または予防するために使用されている。一部の実施形態では、ディスバイオシスの症状は、限定するものではないが、腹部膨満、定期的/高頻度の下痢エピソード、高頻度の便、最近発症した下痢/慢性的な下痢、または1〜3ケ月間にわたる下痢、糖の低い耐性/不耐性、鼓腸、腐った卵のようなげっぷ(rotten egg burps)、食事に関連する腹部膨満感、および絶えず続く疲労を含み得る。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0093】
本明細書中使用されている用語「消化管」および「GI」は、ヒトおよび他の動物の消化管における胃および腸を表す。しかしながら、本明細書中の文脈で使用されるように、用語「消化管」(「GI管」)は、口腔から直腸までの全消化管をも表す。この用語は、口から肛門まで伸びる管を包有し、ここでの筋肉の動きならびにホルモンおよび酵素の放出が食品を消化する。消化管は、口から始まり、食道、胃、小腸、大腸、直腸、および最終的に肛門へと進む。本明細書中使用されている用語「消化管」および「GI管」は、肝臓、胆嚢、および膵臓などの消化の副器官を含まないと意図される。
【0094】
本明細書中使用されるように、消化管の疾患および障害は、消化管の病態をさらに集合的に表しており、主にGI管に影響を与える疾患および障害を表す。本発明の組成物、方法、およびキットにより治療、予防、または軽減されるGIの病態は、ディスバイオシスまたは腸内フローラのバランスの変更に関連している(これらの原因および/または病態の一部として)。このようなディスバイオシスまたは変更は、様々な実施形態において、慢性炎症性反応、自己免疫反応、感染症(たとえば細菌、ウイルス、または寄生虫による感染症)、腸切除、および/または慢性的な下痢からもたらされる、またはこれらと関連し得る。
【0095】
他の実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、その必要がある対象における腸内フローラのバランスの変更に関連する胃腸の病態を予防および/または治療するために使用されている。他の実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、慢性炎症性疾患、自己免疫性疾患、感染症、腸切除、および/または慢性的な下痢に関連する状態に関連している、胃腸の病態を治療および/または予防するために使用されている。他の実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、短腸症候群(SBS)、セリアック病、小腸内細菌異常増殖(SIBO)、胃腸炎、リーキーガット症候群、および胃腸のリンパ腫、または細菌、ウイルス、もしくは寄生虫による感染症もしくは過剰増殖に関連している病態を治療および/または予防するために使用されている。他の実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、ディスバイオシスまたはそれに関連する消化管の病態の治療または予防のために、少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、またはプレバイオティクス剤と組み合わせて使用されている。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0096】
慢性的な炎症性のGI疾患として、限定するものではないが、IBSおよびIBDが挙げられる。自己免疫性のGI疾患として、限定するものではないが、セリアック病が挙げられる。感染症に関連するGIの病態として、限定するものではないが、細菌、ウイルス、または寄生虫による感染症または過剰増殖に関連している病態が挙げられる。一実施形態では、感染症または過剰増殖は、限定されるものではないがエルシニア(Yersinia)属、ビブリオ(Vibrio)属、トレポネーマ(Treponema)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、シゲラ(Shigella)属、サルモネラ(Salmonella)属、リケッチア(Rickettsia)属、オリエンティア(Orientia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ナイセリア(Neisseria)属種、マイコプラズマ(Mycoplasma)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、リステリア(Listeria)属、レプトスピラ(Leptospira)属、レジオネラ(Legionella)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、ヘリコバクター(Helicobacter)属、ヘモフィルス(Haemophilus)属、フランシセラ(Francisella)属、エシェリキア(Escherichia)属、エールリヒア(Ehrlichia)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、コクシエラ(Coxiella)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、クロストリジウム(Clostridium)属、クラミジア(Chlamydia)属、クラミドフィラ(Chlamydophila)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、ブルセラ(Brucella)属、ボレリア(Borrelia)属、ボルデテラ(Bordetella)属、またはバチルス(Bacillus)属の種を含む、病原性細菌の感染症または過剰増殖である。別の実施形態では、前記感染症は、限定するものではないが、多剤耐性細菌、カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)、基質特異性拡張型βラクタム耐性腸球菌(ESBL)、およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を含む、抗生剤耐性細菌などの薬物耐性細菌の感染症である。
【0097】
慢性的な下痢は、4週間超にわたる便の堅さの減少と定義されており、様々な病態(限定するものではないが、IBDおよびIBSを含む)、感染症、または消化の問題によって引き起こされ得る。
【0098】
クローン病は、小腸および大腸の潰瘍を特徴とするが、口から肛門までのいずれの消化器系にも影響を与える可能性がある。様々な用語が、クローン病を描写するために使用されており、罹患している胃腸管の部分を反映する傾向がある。たとえば、大腸(結腸)の関与のみの場合は、クローン病性の大腸炎または肉芽腫性大腸炎と呼ばれており、小腸の関与のみの場合は、クローン病性の小腸炎と呼ばれている。小腸の末端部、すなわち回腸の疾患は、クローン病性の回腸炎と呼ばれている。小腸および大腸の両方が関与している場合は、この症状は、クローン病性の小腸結腸炎または回結腸炎と呼ばれている。潰瘍性大腸炎は、結腸のみを含むクローン病に関連する症状であり、これら疾患は、しばしば、集合的に炎症性腸疾患(IBD)と呼ばれている。
【0099】
過敏性腸症候群(IBS)は、クオリティ・オブ・ライフに及ぼす顕著な作用を有し、医療費の大部分を占める、一般的な障害である。この障害は、下腹部痛、腹部膨満感、下痢、便秘、または便秘と下痢の繰り返しを特徴とする。腸運動性の変更、内臓の痛覚過敏、食物アレルギー、細菌の過剰増殖、心身的な要因、腸筋層間の神経系に関連するストレスのすべてが、IBSの病因の一部を担っていると提唱されている。また、ストレスに加えて、消化管の炎症もまた、過敏性腸症候群に関連している場合がある。
【0100】
短腸症候群(SBS)は、機能的な小腸の欠損により引き起こされる吸収不良障害である。SBSは、機能する腸が2m未満の患者で起こり、これにより、腸不全(栄養素、水、および電解質が十分に吸収されないような、腸機能の減少)をもたらす。主な症状は下痢であり、これにより脱水、栄養障害、および体重減少が起こり得る。他の症状として、腹部膨満感、胸やけ、疲労感、ラクトース過敏症、および悪臭便が挙げられ得る。
【0101】
セリアック病は、グルテンに対する不耐症により引き起こされる、遺伝的に罹患しやすい人々により提示される自己免疫性疾患であり、粘膜炎症および絨毛萎縮をもたらし、吸収不良を引き起こす。通常、症状として、下痢および腹部不快感が挙げられる。診断は、
厳密なグルテンフリー食で解決する特定の繊毛萎縮の病変がない特徴を示す小腸の生検によって行われる。
【0102】
小腸細菌増殖症候群とも呼ばれている小腸内細菌異常増殖(SIBO)は、小腸における過剰な細菌増殖の障害である(細菌数>10/ml)。SIBOは、腸の解剖所見(たとえば外科手術または部分的な閉塞による)もしくはGIの運動性の変更、または胃酸の分泌の不足に起因する可能性がある。この状態は、ビタミン欠乏症、脂肪の吸収不良、および低栄養状態をもたらし得る。最もよくある症状として、腹部不快感、下痢、腹部膨満感、および過度の鼓腸がある。
【0103】
胃腸炎は、胃、ならびに小腸および大腸の内層の炎症である。胃腸炎は薬物および化学的な毒素(たとえば金属または植物性の物質)の摂取後に起こり得るが、大部分の症例は感染性である。症状として、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、および腹部不快感が挙げられる。治療は症候性であり、特定の寄生虫および細菌の感染症は、特異的な抗菌剤療法を必要とする。
【0104】
腸の透過性の増大(細胞内のタイトジャンクションの異常に過剰な開口)により、微生物、微生物の産物、および外来性抗原が粘膜および血流を通過することとなり、その後、おそらくは免疫性および/または炎症性の応答が展開する。このような反応は、集合的に「リーキーガット症候群」と呼ばれ、慢性的な炎症をもたらす場合があり、セリアック病、クローン病、およびIBSなどのさらなるGI病態の発症に関連し得る。消化管のリンパ腫として、限定するものではないが、原発性のGI管リンパ腫(典型的に非ホジキンタイプ)、たとえば胃における粘膜関連リンパ組織(MALT)のリンパ腫、回腸、空腸、および結腸の末端におけるマントル細胞リンパ腫、ならびに空腸における腸症関連T細胞リンパ腫、および十二指腸における濾胞性リンパ腫が挙げられる。
【0105】
他の実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、少なくとも1つの抗生剤、プロバイオティクス剤、またはプレバイオティクス剤を含む、またはこれらと組み合わせて使用されている。例示的な抗生剤として、限定するものではないが、ニトロイミダゾール系、マクロライド系、およびβラクタム系の抗生剤が挙げられる。例示的なプレバイオティクス剤として、限定するものではないが、ラクツロース、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、β−グルカン、ペクチン、ガム、レジスタントスターチ、デキストリン、サイリウム、イヌリン、フラクトオリゴ糖、およびポリデキストロースが挙げられる。例示的なプロバイオティクス剤として、限定するものではないが、様々なラクトバチルス属種または便微生物移植(FMT)が挙げられる。他の実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、限定するものではないが、ディスバイオシスの発症に関連することが報告されている経腸もしくは非経口(parentearal)の液体処方物、またはディスバイオシスの管理のために処方されている食事を含む、特化した食事と組み合わせて使用されている。例示的な実施形態では、本発明の組成物、方法、キット、および薬物は、高繊維質食、低フルクトース食、成分栄養剤、完全液体経腸食、完全非経口食、および末梢静脈食と組み合わせて使用されている。液体の経腸食は、指定のチューブ(たとえば経鼻胃チューブ)を介して、栄養学的に完全な液体処方物を胃または小腸に直接導入することを表す。非経口食(非経口栄養)は、静脈への液体の栄養素の送達を表す。このような食事が、栄養素の排他的供給源として使用される場合、これは、それぞれ、完全液体経腸食または完全非経口食と呼ばれる。成分栄養剤は、容易に同化される形態(たとえば窒素は、全タンパク質または部分的なタンパク質よりも遊離アミノ酸の形態で提供される)で、液体の栄養素を含む。これは、通常、アミノ酸、脂肪、糖、ビタミン、および無機質から構成されている。成分栄養剤は、経口投与してもよく、または胃への栄養供給チューブもしくは静脈栄養法の使用により投与されてもよい。高繊維質食は、概して、高繊維質に特化した経腸処方物(たとえばNutrison multifibre、可溶性線維および非可溶性線維を1:1の比率で1.5mg/100ml含む)を表すが、同様に、一部の実施形態では、たとえば30g以上の線維を毎日摂取することを含む処方される経口性の食事を表してもよい。低フルクトース食は、たとえば、低発酵性のオリゴ糖、二糖、単糖、およびポリオール(FODMAP)の食事、またはフルクトースを追加していない経腸栄養処方物であり得る。
【0106】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、たとえばFMTと組み合わせて、GI管の特定の部位に局所投与されている。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0107】
本発明の組成物、方法、医薬パック、および薬物により治療されるべき対象は、本明細書中で、その必要がある対象とも呼ばれており、哺乳動物、好ましくはヒトの対象である。特定の実施形態では、対象は、ディスバイオシスを罹患しているとすでに診断されている。他の特定の実施形態では、対象は、ディスバイオシスを発症するリスクがある。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0108】
ディスバイオシスを診断するための様々な方法が、当該分野で知られており、限定するものではないが、呼気試験法、小腸培養技術、および培養とは無関係の技術、たとえば次世代のハイスループットシーケンシングが挙げられる。たとえば、総合消化便分析(CDSA、消化、吸収、細菌の均衡、酵母、および寄生虫の解析を含む消化管機能の非侵襲性の評価)、またはGA‐map Dysbiosis Test(Genetic Analysis AS、ノルウェー、オスロ、細菌の16S rRNA遺伝子の可変領域を標的化するプローブを使用したDNAプロファイリングに基づく)を使用してもよい。
【0109】
様々な実施形態では、ディスバイオシスを発症するリスクのある対象は、抗菌剤、非経口栄養、または免疫抑制剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を伴う治療レジメン下にあり、ここで各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。免疫抑制剤は、限定するものではないが、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤、抗体、およびイムノフィリンに作用する薬物を含む、免疫系の活性を阻害または予防する薬物である。
【0110】
本明細書中詳述されている、FABACの治療に関して示唆されている既知の適応は、米国特許6,384,024号、同6,395,722号、同6,589,946号、同7,501,403号、同8,110,564号、および同8,975,246号に開示されるものを含む。対照的に、本明細書は、驚くべきことに、FABACが、ディスバイオシスの管理において治療上および/または予防上の利点を提供し得ることを開示している。FABACまたは特にアラムコールを含む治療レジメンが、ディスバイオシスまたはそれに関連する症状を罹患している患者において特に有益であることが、本明細書中で初めて開示されている。よって、本発明の方法は、好ましくは、本発明のFABACの投与の前に、ディスバイオシス(または関連する症状)を罹患していると対象を同定するステップを含む。特定の実施形態では、対象は、追加的な症状(糖尿病、非アルコール性の脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(seatohepatitis)、または上述のFABACの治療に関する他の既知の兆候)を同時に罹患していない。特定の実施形態では、前記対象は肝疾患を罹患していない。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表すものである。
【0111】
以下の実施例は、本発明の一部の実施形態をより完全に例示するために提示されている。しかしながら、これらは本発明の広い範囲を限定すると解釈すべきではない。
【0112】
実施例
実施例1:アラムコールによる炎症性腸疾患の局所治療
大腸炎を、1mgのジニトロベンゼンスルホン酸(DNBS)(20mg/ml、30%(v/v)エタノール中)の結腸内投与により、軽エーテル吸入麻酔下で、体重250gの雄性のラットに誘導する。溶液を、柔軟性がある、穿孔したフォーリーカテーテルを介して20秒にわたりゆっくりと注入し、その後カテーテルをすぐに取り外した。さらに40秒間、ラットを逆向きに配置する。対照群を、同じ手法を使用してアラムコールの代わりに生理食塩水で処置する。
【0113】
治療群
群1に、大腸炎誘導の1時間前、およびその後の12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、および60時間後に、直腸内にアラムコール(30mg/kg、50mg/kg、または80mg/kg)を投与する。
群2に、アラムコールの代わりに生理食塩水を投与する。
群3に、DNBSの代わりに生理食塩水を投与する。
群4に、大腸炎誘導から1時間後、およびその後の12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、および60時間後に、ステロイド薬ブデソニド(含水アルコール溶液1ml中)200μg(合計1.2mgのブデソニド)を、直腸投与する。
群5に、ブデソニドの代わりに1mlの生理食塩水を投与する。
群6に、DNBSの代わりに生理食塩水を投与する。
【0114】
ラットに、腹腔内注射により投与したケタミン(100mg/kg体重)により麻酔をかけ、長軸方向の開腹手術を介して結腸を露出する。結腸の末端10cmを除去し、切開し、氷冷生理食塩水ですすぐ。麻酔をかけたラットの安楽死を、胸壁の穿刺により行う。
【0115】
この新鮮な組織を、(1)浮腫、(2)充血、ならびに(3)粘膜の潰瘍の数および領域の存在に関してスコア付けする。存在する場合、すべての潰瘍の領域全体を採取する。次に、これらをドライブロットし、重量を計測し、直ちに液体窒素で凍結した。解析日に、結腸の標本を4℃に温め、10容量0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.4)でホモジナイズし(ポリトロン、ドイツのKinematica GmbH)、炎症マーカーの生化学的な解析のため、−74℃で保存する。
【0116】
さらなる実験で、アラムコール(30mg/kg、50mg/kg、もしくは80mg/kg)、またはビヒクルを、強制経口投与により投与し、大腸炎を誘導し、上述のように評価する。
【0117】
クローン病の回腸炎のモデルにおけるさらなる実験で、DNBSおよびアラムコール(30mg/kg、50mg/kg、もしくは80mg/kg)、またはビヒクルを、経鼻胃チューブおよび経鼻空腸チューブを介した投与により、小腸の特定の構成成分に標的化する。次に、標的化した腸のセグメントを回収し、上述のように評価する。
【0118】
前記の特定の実施形態の説明は、本発明の一般的な性質を完全に明らかにしており、よって、現在の知識を使用することにより、実験を過度に行うことなくおよび一般的な概念から逸脱することなく、他の人々が当該特定の実施形態を様々な用途に容易に改変かつ/または適合でき、このような適合および改変は、開示される実施形態の均等物の意味および範囲の中に含まれているべきであり、含まれるように意図されている。本明細書中使用される表現または用語は、説明するためのものであり、限定するためのものではないことが、理解されるべきである。様々な開示される機能を実行するための手段、材料、およびステップは、本発明から逸脱することなく様々な代替的形態を取り得る。