(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に本実施形態に係る内燃機関の制御装置を例示する。制御装置10は、スロットルバルブ12と、EGRバルブ14と、吸気バルブ16と、吸気圧センサ18と、制御部20と、スロットルポジションセンサ24と、EGRバルブポジションセンサ25とを含んで構成される。なお、本実施形態に係る制御装置10は例えば内燃機関22を駆動源とする車両に搭載される。
【0014】
スロットルバルブ12は内燃機関22に供給する吸気(新気)の流量を調整可能な弁体を含んで構成され、例えばバタフライバルブから構成される。スロットルバルブ12はモータ21等の駆動手段によって駆動され、この駆動に応じてスロットルバルブ12の開度が変化する。この開度変化に応じてスロットルバルブ12を通過する吸気量が調整される。
【0015】
また、スロットルバルブ12は内燃機関22の燃焼室26に吸気を送り込む吸気管28内に設けることができる。本実施形態においては、吸気管28の空気取り入れ口29近傍に設けられたエアクリーナ30とその下流に設けられたサージタンク32との間にスロットルバルブ12が設けられている。
【0016】
また、スロットルポジションセンサ24はスロットルバルブ12の開度を制御部20に送信する。スロットルポジションセンサ24は例えばモータ21の回転数を測定して当該回転数からスロットルバルブ12の開度を算出して制御部20に開度を送信する。
【0017】
EGRバルブ14は内燃機関22から排出された排気の一部を吸気側に還流する還流排気量を調整可能な弁体を含んで構成され、例えばニードルバルブから構成される。EGRバルブ14はモータ36等の駆動手段によって駆動され、この駆動に応じてEGRバルブ14の開度が変化する。この開度変化に応じてEGRバルブ14を通過する還流排気量が調整される。
【0018】
また、EGRバルブ14は排気還流管40内に設けることができる。例えば本実施形態では、排気還流管40を流れる還流排気を冷却するEGRクーラー42より下流側(吸気管側)にEGRバルブ14が設けられている。
【0019】
排気還流管40は排気の一部を吸気側に還流させる還流経路として機能する。例えば本実施形態においては排気還流管40は排気管38と吸気管28とを結んでいる。また本実施形態では排気還流管40は排気管38の部分のうち、排気中の大気汚染物質を除去する触媒器44よりも上流に接続されるとともに吸気管28のサージタンク32よりも下流に接続されている。
【0020】
また、EGRバルブポジションセンサ25はEGRバルブ14の開度を制御部20に送信する。EGRバルブポジションセンサ25は例えばモータ36の回転数を測定して当該回転数からEGRバルブ14の開度を算出して制御部20に開度を送信する。
【0021】
吸気圧センサ18は、サージタンク32内の吸気圧を計測して制御部20に送信可能なセンサを含んで構成されている。吸気圧センサ18は例えば半導体式圧力センサから構成することができる。また、本実施形態にでは吸気圧センサ18は絶対真空を0[kPa]とした絶対圧を電気信号に変換して制御部20に圧力信号を送信可能となっている。
【0022】
吸気バルブ16は、スロットルバルブ12を介して送られた新気及びEGRバルブ14を介して送られた還流排気が混合された吸気を吸気管28から内燃機関22の燃焼室26へ導入する。吸気バルブ16は例えばニードルバルブから構成される。また本実施形態においては吸気バルブ16はその閉止状態において内燃機関22の吸気ポート27を塞ぐようにして設けられている。また、吸気バルブ16はリフト量(開度)調整の可能なリフト量可変のバルブシステムによって駆動されていてもよいし、リフト量が固定されたバルブシステムによって駆動されていてもよい。
【0023】
制御部20は情報を演算するための演算処理部や情報を記憶するための記憶部を備えている。演算処理部は吸気圧センサ18やスロットルバルブポジションセンサ24、EGRバルブポジションセンサ25等の計測機器から送られる情報を受け入れて演算処理し得るともに、スロットルバルブ12用のモータ21やEGRバルブ14用のモータ36等の周辺機器に対して開度指令を送信し得る機器から構成される。例えば制御部20はマイクロコンピュータを含んで構成される。このマイクロコンピュータは例えば車両に搭載される電子制御ユニット(ECU)から構成することが可能である。
【0024】
また、記憶部には新気量に対応するスロットルバルブ12の開度、還流排気量に対応するEGRバルブ14の開度等が関数またはマップ(テーブル、表)として記憶されている。さらに記憶部には内燃機関に対する駆動モード(エコモード、パワーモード等)に対応する空燃比及び目標EGR率や、後述するEGRバルブ14の開度制御に際して用いられる各種の数式等が記憶されている。記憶部はこれらの情報を記憶可能な機器であればよく、例えばROMやRAM、EPROM、ハードディスク装置等の1つまたは複数の組み合わせから構成することができる。
【0025】
制御部20によるEGRバルブ14の開度制御について説明する。制御部20は吸気バルブ16を通過する(内燃機関22に流入する)還流排気量に基づいてEGRバルブ14の開度を決定する。具体的には、吸気バルブ通過時の還流排気量からEGRバルブ14の開度に至るまでの関係を表す数式を作成し、この数式に基づいてEGRバルブ14の開度を決定する。
【0026】
また、制御部20はEGRバルブ14の開度制御に際してモデル予測制御を行うことによりその開度を求める。モデル予測制御では時刻を制御ステップ単位に離散化した離散時間系において、操作量(入力変数、EGRバルブ制御においては開度や流量変化等)及び制御量(出力変数、EGRバルブ制御においては流量等)を用いて制御対象となる系の動的特性(ダイナミクス)や制約条件に関するモデル式を作成し、このモデル式に基づいて制御量が目標値に収束するまでの予測値を算出する。さらにこの予測値に応じて現在値の操作量(直近の操作量)を決定する。
【0027】
モデル予測制御の基本的な手順を以下に示す。また、モデル予測制御の模式図を
図2に示す。
手順1:制御量の現在値を求める。
手順2:制御量の目標値である設定値を取得する。
手順3:予測区間[t+1,t+N]における目標軌道(参照軌道)を求める。目標軌道とは予測区間において制御量が設定値に到達する理想的な軌道である。目標軌道は制御の速応性とロバスト性(安定性)との両面を考慮して設定され、例えばむだ時間と一次遅れを利用したモデル式から目標軌道を求める。
手順4:予測区間[t+1,t+N]において制御量の予測値が参照軌道にできるだけ近づくように、操作量の最適値u(t)・・・u(t+N−1)を求める。
手順5:現在時の操作量をu(t)とする。
手順6:次の制御ステップt+1に移動して手順1に戻る
【0028】
手順4において、制御量の予測値を参照軌道にできるだけ近づけるための手法として例えば評価関数を用いる。例えば下記(数式1)のような評価関数Jを用いる。
【0030】
ここで、A、B、C、Dはそれぞれ係数を表している。また、z
0(t)、x
0(t)は制御量の初期値、Z
refは目標値(目標軌道の値)、Z、Xは制御量、Uは操作量を表している。また、Q、Rは加重行列(重み付け係数の行列)を表している。モデル予測制御においては評価関数Jを最小化する操作量Uが操作量の最適値となる。この場合において、評価関数Jの第1項は予測値と目標値とを近づける効果をもち、第2項は操作量の急激な変化を抑制する効果をもつ。
【0031】
評価関数Jを最小化する操作量Uを求める手法の一つとして、例えば評価関数Jの操作量Uに関する勾配∇
Uを求める方法がある。この方法を実行するに当たり、評価関数Jを下記(数式2)のようにUについてまとめた形に変形する。
【0033】
ただし、H、F、Yは係数、P(t)はUに依存しない変数である。(数式2)について操作量Uに関する勾配∇
Uを求める。具体的には下記(数式3)のようになる。
【0035】
(数式3)において∇
U=0となる操作量Uが評価関数Jに最小値を与える。つまりこのときの操作量Uが最適値となる。
【0036】
なお、操作量Uや制御量Xについて制約が与えられている場合があり、例えば操作量Uの取り得る値の範囲が定められている場合がある。この場合において、操作量Uの取り得る値の範囲(許容範囲)に∇
U=0となるUがない場合(最小点が許容領域内にない場合)が生じうる。このような場合においては二次計画法におけるラグランジュ乗数理論等を利用することによって許容領域内における最小値を求めることが可能となる。
【0037】
次に、EGRバルブ14の操作量を求めるためのモデル式を具体的に説明する。上述したようにEGRバルブ14は還流排気量を調整する手段であり、最終的な目的は内燃機関22に流入する、つまり吸気バルブ16を通過時の還流排気量を制御することにある。このことから、本実施形態ではEGRバルブ14の開度と吸気バルブ通過時の還流排気量との関係を定める式を作成する。
【0038】
ここで、EGRバルブ14の開度とEGRバルブ通過時の還流排気量とは後述する変換式により変換可能であることから、本実施形態ではEGRバルブ14の開度を主なパラメータとする代わりにEGRバルブ通過時の還流排気量を主なパラメータとして用いる。
【0039】
以上から、本実施形態においては、EGRバルブ14のダイナミクス(動的特性)のモデル式はEGRバルブ14を通過する還流排気量と吸気バルブ16を通過する還流排気量とを主なパラメータとして使用する。
【0040】
制御部20の記憶部には、EGRバルブ14における動的特性式と吸気バルブ16における(内燃機関流入時における)動的特性式の2つの動的特性式が記憶されている。前者の動的特性式を(数式4)に示し、後者の動的特性式を(数式5)に示す。
【0043】
ここで、(数式4)について、tは現在時、kは制御ステップ数(k=0,…N−1)、hは制御ステップ周期(例えば8ms)を表す。なお、本実施形態における制御ステップは制御部20がEGRバルブ14を駆動させるモータ36に開度指令を送るタイミングを指すものとする。また、M
egrはEGRバルブ14を通過する還流排気量を表す。(数式4)においてはこのパラメータが制御量となる。δM
egrはEGRバルブ14を通過する還流排気量の1ステップにおける流量変化を表す。(数式4)においてはこのパラメータが操作量となる。
【0044】
また、(数式5)について、M
egrcylは吸気バルブ16通過時の還流排気量を表す。また、d(t)はむだ時間、eは自然対数、T(t)は時定数を表す。
【0045】
(数式5)について説明する。EGRバルブ14を通過した還流排気が吸気バルブ16を通過するまでの様子を
図3に示す。ここでは、現在時t0においてEGRバルブ14を通過した流量M
egr(t0)の還流排気が吸気バルブ16に到達する(内燃機関22に流入する)までの様子が示されている。EGRバルブ14を通過した還流排気は排気還流管40及び吸気管28を経由して吸気バルブ16を通過する。このとき、吸気バルブ16を通過する還流排気量は時間的な遅れを伴って徐々に流量M
egr(t)に近づく。この流量変化をむだ時間+一次遅れ系によって近似する。
【0046】
むだ時間d(t)は変化の起こらない時間であり、入力の影響が出力に反映されるまでの遅れを表している。また一次遅れ系は還流排気量が流量M
egr(t0)に至るまでの増加率を定めるモデル式であり、具体的には自然対数eを用いて増加率は1−e
−t/T(t0)となる。なお、本実施形態においてはむだ時間d(t)及び時定数T(t)を現在時tに応じて変化するパラメータとして表している。例えば内燃機関22の回転数が増加して吸気バルブ16の開閉サイクルが速くなった場合、内燃機関22に引き込まれる吸気量が増加する。これに伴ってむだ時間d(t)及び時定数T(t)は短縮される。本実施形態においては予め内燃機関22の回転数等とむだ時間及び時定数との対応関係を関数またはマップ(表、テーブル)の形式で記憶部に格納するとともに、制御ステップごとに現在時tに対応するむだ時間及び時定数を呼び出している。
【0047】
このように、むだ時間+一次遅れ系によってモデル化された(数式5)において、右辺第1項は前回の制御ステップからの還流排気量の残りを表しており、第2項はEGRバルブ14から吸気バルブ16に到達した還流排気量を表している。
【0048】
また、EGRバルブ14通過時の還流排気量M
egr及び内燃機関流入時の還流排気量M
egrcylに関して下記(数式6)〜(数式8)の制約条件式を与える。
【0052】
ここで、(数式6)について、M
egrmin、M
egrmaxはそれぞれEGRバルブ14通過時の還流排気量の最小値及び最大値を表している。さらにM
egrmin、M
egrmaxはそれぞれ下記(数式9)、(数式10)から求めることができる。
【0055】
ここで、c
min、d
minはそれぞれEGRバルブ14の開度が最小のときの係数を表し、c
max、d
maxはそれぞれEGRバルブ14の開度が最大のときの係数を表している。また、P
mは吸気部の圧力を表している。これらの値は予め実測等により求めることができる。
【0056】
また、(数式7)について、β
upperはEGR率の上限値を表している。例えば内燃機関の失火に至るおそれの高いEGR率が設定される。また、M
cは吸気バルブ16を通過する全吸気量(新気+還流排気量)を表している。
【0057】
また、(数式8)について、δM
egrmin、δM
egrmaxはそれぞれEGRバルブ14通過時の還流排気量に対する1制御ステップ当たりの流量変化の最小値及び最大値を表している。さらにδM
egrmin、δM
egrmaxはそれぞれ下記(数式11)、(数式12)から求めることができる。
【0060】
ここで、δc
min、δd
minはそれぞれEGRバルブ14の最大閉じ速度に対応した係数の変化分を表し、δc
max、δd
maxはそれぞれ最大開き速度に対応した係数の変化分を表している。これらの値は予め実測等により求めることができる。
【0061】
さらに、動的特性式である(数式4)、(数式5)に関する評価関数Jを下記(数式13)に示す。
【0063】
ここで、q、rは重み付け係数を表し、M
egrcyl,refは吸気バルブ16を通過する還流排気量の目標値を表している。
【0064】
制御部20は、制約条件式(数式6〜8)による制約のもと、動的特性式(数式4、5)に関する評価関数(数式13)の値(評価値)を最小にするような操作量δM
egrの最適値を求める。操作量の最適値は上述した(数式2)のように評価関数を操作量についてまとめた形に変形することで求めることができる。以下、(数式13)を変形する手順について説明する。
【0065】
(数式13)をベクトル表示に直すと下記(数式14)のようになる。
【0067】
(数式14)のベクトルZ、Z
ref、Q、U、Rはそれぞれ下記(数式15)〜(数式19)のように示される。
【0073】
また、動的特性式である(数式4)、(数式5)をベクトル表示すると下記(数式20)、(数式21)のように表される。
【0076】
(数式20)においてx
0(t)は初期値を表し、x
0(t)=M
egr(t−h)である。また、(数式21)においてz
0(t)は初期値を表し、z
0(t)=M
egrcyl(t+d(t))である。また、(数式20)のベクトルX、A、B、及び(数式21)のベクトルC(t)、D(t)は下記(数式22)〜(数式25)のように表される。
【0081】
また、制約条件式である(数式6)〜(数式8)はそれぞれ下記(数式26)〜(数式28)のようにベクトル表示される。
【0085】
(数式26)におけるX
min及びX
maxは下記(数式29)のように表される。
【0087】
また、(数式27)におけるU
min及びU
maxは下記(数式30)のように表される。
【0089】
また、(数式28)におけるZ
upperは下記(数式31)のように表される。
【0091】
次に、ベクトル表示に直した評価関数(数式14)をUについてまとめる。動的特性式である(数式20)、(数式21)より、(数式14)は下記(数式32)のように変形できる。
【0093】
ここで、ベクトルH(t)、P(t)、F(t)、Y(t)はそれぞれ下記(数式33)のように表される。
【0095】
さらに、制約条件式(数式26〜28)を(数式20)、(数式21)を用いてUについてまとめると下記(数式34)のように表される。
【0097】
ここで、ベクトルG(t)、W(t)、E(t)は下記(数式35)のように表される。
【0099】
結局、EGRバルブ14に関するモデル式は下記(数式36)のようにまとめられる。制御部20は(数式36)による演算を制御ステップごとに実行し、最適解Uを求める。
【0101】
最適解Uから現在時tにおける操作量δM
egr(t)が求められる。制御部20は、当該操作量を変換式である下記(数式37)を用いてEGRバルブ14の開度A
egr(t)に変換する。
【0103】
このように本実施形態においては制約条件を陽に考慮していることから、従来よりもエンジンが失火に陥る可能性を高精度に回避することができる。したがって、従来よりもEGR率の上限値β
upperに近い値を用いることが可能となり、高EGR率での制御が可能となる。
【0104】
ここで、P
mは吸気部圧力を表し、吸気圧センサ18等により求めることができる。Φ(P
m)は吸気部圧力P
mをパラメータとする関数を表している。この関数は予め実測等により取得できる。また、(数式37)を用いる代わりに(数式37)を線形近似した下記(数式38)を用いてもよい。
【0106】
(数式38)において、a
1、b
1、γは任意の定数であり、実測等により求めることができる。また、P
eは排気部圧力を示し、排気側に圧力センサ等を設けることにより求めることができる。
【0107】
なお、(数式36)において現在時(t)に依存する係数としてH(t)、F(t),Y(t)、G(t)、W(t)、E(t)がある。つまり、制御部20は可変係数H(t)、F(t),Y(t)、G(t)、W(t)、E(t)を持つ最適化問題を解くこととなる。可変係数は制御ステップごとに値を更新する必要があり、その分の演算負荷が制御部20に課せられることになる。そこで、演算負荷の軽減を図るために可変係数を現在時(t)に依存しない定係数に変換するモデル予測制御を行ってもよい。
【0108】
以下の実施形態においては、吸気バルブ16を通過する還流排気量M
egrcylを制御量としてその変化量δM
egrcylを操作量とする動的特性式及び制約条件式及び評価関数に基づいたモデル予測制御を行う。EGRバルブ14から吸気バルブ16に至るまでの還流排気量の流れを考慮しないモデルのため、上述したむだ時間d(t)及び時定数T(t)をモデル式から省略する(陰に含める)ことができる。その結果、現在時(t)に依存する係数がなくなり、評価関数を定係数のみにすることが可能となる。
【0109】
内燃機関22に流入する還流排気量の動的特性式を下記(数式39)に示す。
【0111】
また、上記動的特性式に関する評価関数Jを下記(数式40)に示す。
【0113】
さらに、制御量M
egrcyl及び操作量δM
egrcylの制約条件式を下記数式41に示す。
【0115】
ここで、上記(数式41)の第1式及び第2式は、EGRバルブ14に対する制約条件を吸気バルブ16に対する制約条件に変換することによって得られる。つまり、EGRバルブ14通過時の還流排気量に対する最小値δM
egrmin及び最大値δM
egrmaxを表す(数式11)とEGRバルブ14通過時の還流排気の変化量に対する最小値δM
egrmin及び最大値δM
egrmaxを表す(数式12)を下記(数式42)を用いて変換する。
【0117】
さらに、評価関数(数式40)をベクトル表示したときの数式を下記数式43に示す。
【0119】
さらに、動的特性式(数式39)及び制約条件式(数式41)をベクトル表示したものをそれぞれ下記(数式44)、(数式45)に示す。
【0122】
ここで、(数式43)〜(数式45)においてはモデル式の変更に伴い、ベクトルX、Uの定義を上記(数式18)、(数式22)、(数式29)、(数式30)とは異なるものにしている。具体的にはベクトルXは下記(数式46)のように定義され、ベクトルUは下記(数式47)のように定義される。
【0125】
次に、評価関数J(数式43)を操作量Uについてまとめる。(数式44)を用いて(数式43)は下記(数式48)のように変形できる。
【0127】
(数式48)において、ベクトルH、F、Y、P(t)を下記(数式49)に示す。
【0129】
さらに、制約条件式(数式45)をUについてまとめる。具体的には、(数式45)を(数式44)を用いて下記(数式50)のように変形する。
【0131】
(数式50)において、ベクトルG、W、Eを下記(数式51)に示す。
【0133】
結局、EGRバルブ14に関するモデル式は下記(数式52)のようにまとめられる。
【0135】
(数式52)に示されているように、係数H、F、Y、G、W、Eはすべて定係数として表されている。したがって、制御ステップごとに係数を更新する必要がなくなり、演算負荷が軽減される。制御部20は(数式52)による演算を制御ステップごとに実行し、
(数式52)の値(評価値)を最小とする操作量の最適解を求める。さらに最適解から現在時tの操作量を取得する。(数式52)の最適解は吸気バルブ通過時の還流排気量の変化量δM
egrcylであるため、制御部20はこれをEGRバルブ14を通過する還流排気流の変化量δM
egrに変換する。具体的にはM
egrcylとδM
egrの関係を表す(数式4)、(数式5)を用いてδM
egrcyl(t)をδM
egr(t)に変換する。さらに制御部20は(数式37)または(数式38)を用いてδM
egr(t)をEGRバルブ14の開度A
egr(t)に変換する。