特許第5647592号(P5647592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5647592
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】溝付け装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 17/04 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
   B21D17/04
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-247379(P2011-247379)
(22)【出願日】2011年11月11日
(65)【公開番号】特開2013-103237(P2013-103237A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2013年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】507351850
【氏名又は名称】育良精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 清
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲治
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−314119(JP,A)
【文献】 特開2006−224164(JP,A)
【文献】 特開2004−243484(JP,A)
【文献】 実公昭45−034065(JP,Y1)
【文献】 米国特許第06196039(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0088264(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の端部に周方向の溝を形成する溝付け装置であって、
ケーシングと、
ケーシングに収容され、管の軸線方向と平行な軸線を有する回転出力部を有する駆動伝達機構と、
前記駆動伝達機構を駆動する回転駆動部と、
管の内面に沿って管に対して転がり可能に前記回転出力部に取付けられ、全周溝を有する駆動ローラと、
管の外面を転がり可能に管を挟んで前記駆動ローラに向かって押付けられ、全周溝に対向する全周凸部を有する溝付けローラと、
前記ケーシングに取付けられ、前記溝付けローラを前記駆動ローラに向かって押付ける押付け機構と、
管に固定され、管の軸線方向に対して垂直な平面内に位置する軌道面を有する軌道リングと、
前記軌道面に沿って管の全周にわたって管に対して相対移動可能に前記ケーシングに取付けられた移動体と、を有し、前記移動体により、管に対する前記溝付けローラの向き及び位置がずれることを制限し、
前記移動体は、移動体ユニットに設けられ、前記移動体ユニットと前記ケーシングは、互いに取外し可能に取付けられ、前記移動体ユニットは、溝及び先端面取り部を含む取付けピンを有し、前記ケーシングは、前記取付けピンを受入れる孔と、前記孔に受入れられた取付けピンの溝に向かって付勢されるレバー部材を有し、前記取付けピンを前記孔に挿入するとき、前記先端面取り部が前記レバー部材をその付勢に抗して移動させて前記取付けピンを前記孔の中を進入させ、前記レバー部材が前記溝に係合した後、前記レバー部材は、前記取付けピンの抜け出しを妨げることを特徴とする、溝付け装置。
【請求項2】
前記移動体は、管の周方向において少なくとも2箇所に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の溝付け装置。
【請求項3】
前記軌道面は、管の端面と同じ向きに向けられた第1の軌道面と、管の端面と反対向きに向けられ且つ管の端面から前記第1の軌道面よりも離れた第2の軌道面を有し、
前記移動体は、前記第1の軌道面に沿って管に対して相対移動可能な第1の移動体と、前記第2の軌道面に沿って管に対して相対移動可能な第2の移動体を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の溝付け装置。
【請求項4】
前記移動体は、前記軌道面に沿って転がり可能な移動ローラを有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の溝付け装置。
【請求項5】
更に、前記軌道リングに対する前記移動体の管の半径方向外方への移動を制限するように取付けられたローラを有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の溝付け装置。
【請求項6】
前記回転駆動部は、ハウジングを有する電気モータを有し、前記ハウジングは、前記ケーシングに対して回転可能に前記ケーシングに取付けられ、前記ハウジングにハンドルが設けられることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の溝付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝付け装置に関し、更に詳細には、管の端部に溝を形成する溝付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物に設置された管を交換又は変更するとき、既存の管の一部を切断して取外し、建造物に残った既存の管に新しい管を接続することが行われる。この場合、両方の管の端部の外周に溝を形成し、それらの溝に係合するジョイントを取付けることによって、既存の管と新しい管を接続する作業がしばしば行われている。かかる作業のために、建造物に残された既存の管の端部に溝を形成する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
管に溝を形成するための従来の装置では、溝の幅よりも少し小さい幅を有する全周凸部を有する溝付けローラと、全周凸部に対向する全周溝を有する駆動ローラとの間に管を挟み、溝付けローラを管の外面に押付けて管に凹みを形成し、溝付けローラを管の外面の上で転がり移動させ、凹みを連続的に管の一周にわたって形成することによって、管の軸線方向に対して垂直な溝を形成する。溝の深さを深くしたいときには、溝付けローラの押付け量を少しずつ大きくしていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−053435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溝付けローラを管の外面の上で転がり移動させるとき、溝付けローラの向きが管の軸線に対して垂直な方向からずれてしまったり、溝付けローラの位置が管の軸線方向に移動してしまったりすると、溝付けローラが管の外面の上を一周したときに元の位置に戻らず、溝が螺旋状になってしまうことがある。そのような溝ができてしまうと、2つの管を上記ジョイントで接続することが困難になる。特許文献1に記載された装置では、管の端面を溝付け装置に常に当接させるようにして、溝付けローラの向き及び位置がずれないように構成されている。しかしながら、実際には、溝の端面が溝付け装置から離れてしまい、溝付けローラの向き及び位置がずれてしまうことがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、溝付けローラの向き及び位置がずれることを防止して、管の軸線方向に対して垂直な溝を管に形成する溝付け装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による溝付け装置は、管の端部に周方向の溝を形成する溝付け装置であって、ケーシングと、ケーシングに収容され、管の軸線方向と平行な軸線を有する回転出力部を有する駆動伝達機構と、駆動伝達機構を駆動する回転駆動部と、管の内面に沿って管に対して転がり可能に回転出力部に取付けられ、全周溝を有する駆動ローラと、管の外面を転がり可能に管を挟んで駆動ローラに向かって押付けられ、全周溝に対向する全周凸部を有する溝付けローラと、ケーシングに取付けられ、溝付けローラを駆動ローラに向かって押付ける押付け機構と、管に固定され、管の軸線方向に対して垂直な平面内に位置する軌道面を有する軌道リングと、軌道面に沿って管の全周にわたって管に対して相対移動可能にケーシングに取付けられた移動体と、を有し、移動体により、管に対する溝付けローラの向き及び位置がずれることを制限することを特徴としている。
【0008】
このように構成された溝付け装置では、駆動ローラが回転することにより、駆動ローラ及び溝付けローラが管に対して管の周方向に相対移動し、管を挟んで駆動ローラに向かって押付けられた溝付けローラが管に溝を形成する。その際、管の軸線方向に対して垂直な平面内に位置する軌道面を有する軌道リングが管に固定され、移動体が上記軌道面に沿って管の全周にわたって管に対して相対移動するようにケーシングに取付けられているので、移動体が軌道リングの軌道面に沿って管を一周する間、ケーシングの向き及び位置が管に対してずれることが制限される。その結果、ケーシングに取付けられている溝付けローラの向き及び位置が管に対してずれることが制限され、管の軸線方向に対して垂直な溝を管に正確に形成することができる。
【0009】
本発明による溝付け装置の実施形態において、好ましくは、移動体は、管の周方向において少なくとも2箇所に設けられる。
【0010】
このように構成された溝付け装置によれば、移動体が管の周方向において少なくとも2箇所に、すなわち、異なる箇所に設けられるので、溝付けローラの向き及び位置が管に対してずれることを制限する効果を高めることができ、管の軸線方向に対して垂直な溝を管により確実に形成することができる。
【0011】
本発明による溝付け装置の実施形態において、好ましくは、軌道面は、管の端面と同じ向きに向けられた第1の軌道面と、管の端面と反対向きに向けられ且つ管の端面から第1の軌道面よりも離れている第2の軌道面を有し、移動体は、第1の軌道面に沿って管に対して相対移動可能な第1の移動体と、第2の軌道面に沿って管に対して相対移動可能な第2の移動体を有する。
【0012】
このように構成された溝付け装置によれば、第1の軌道面に沿って移動する第1の移動体によって、駆動ローラ及び溝付けローラが管の上を管の端面から離れる方向(軌道リングに近づく方向)に移動することによるそれらの向き及び位置のずれを制限し、第2の軌道面に沿って移動する第2の移動体によって、駆動ローラ及び溝付けローラが管の上を管の端面に近づく方向(軌道リングから遠ざかる方向)に移動することによるそれらの向き及び位置のずれを制限する。
【0013】
本発明による溝付け装置の実施形態において、好ましくは、移動体は、軌道面に沿って転がり可能な移動ローラを有する。
【0014】
このように構成された溝付け装置によれば、駆動ローラ及び溝付けローラの向き及び位置が管に対してずれることを制限すると共に、溝を形成するときの軌道部材と移動体との間の抵抗の増加を抑制することができる。
【0015】
本発明による溝付け装置の実施形態において、好ましくは、更に、軌道リングに対する移動体の管の周方向の移動を制限するように取付けられたローラを有する。
【0016】
このように構成された溝付け装置によれば、駆動ローラ及び溝付けローラの向き及び位置が管に対してずれることを制限すると共に、移動体の周方向の移動を制限することによって、軌道部材と移動体との間の干渉を防止し、溝を形成するときの軌道部材と移動体との間の抵抗の増加を抑制することができる。
【0017】
本発明による溝付け装置の実施形態において、好ましくは、移動体は、移動体ユニットに設けられ、移動体ユニットとケーシングは、互いに取外し可能に取付けられ、移動体ユニットは、溝及び先端面取り部を含む取付けピンを有し、ケーシングは、取付けピンを受入れる孔と、孔に受入れられた取付けピンの溝に向かって付勢されるレバー部材を有し、取付けピンを孔に挿入するとき、先端面取り部がレバー部材をその付勢に抗して移動させて取付けピンを孔の中を進入させ、レバー部材が溝に係合した後、レバー部材は、取付けピンの抜け出しを妨げる。
【0018】
このように構成された溝付け装置によれば、移動体ユニットと組立てられた軌道リングを、駆動ローラ及び溝付けローラの向き及び位置が管に対してずれることを制限するように管に固定した後、ケーシングを移動体ユニットに簡単に取付けることができる。
【0019】
本発明による溝付け装置の実施形態において、好ましくは、回転駆動部は、モータハウジングを有する電気モータを有し、モータハウジングは、ケーシングに対して回転可能にケーシングに取付けられ、モータハウジングにモータハンドルが設けられる。
【0020】
このように構成された溝付け装置では、駆動ローラ及び溝付けローラの向き及び位置が管に対してずれることを制限すると共に、固定された管に溝を形成するときに、ケーシングが管に沿って一周する間、電気モータ及びモータハンドルは並進円運動を行い、電気モータ及びモータハンドルが一周する場合よりも作業スペースを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したとおり、本発明による溝付け装置によれば、溝付けローラの向き及び位置がずれることを防止して、管の軸線方向に対して垂直な溝を管に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による溝付け装置の概略的な正面図である。
図2】本発明による溝付け装置のケーシングを示す左側面図である。
図3】本発明による溝付け装置の押し込み機構を示す正面断面図である。
図4】本発明による溝付け装置の概略的な左側面図である。
図5】本発明による溝付け装置の部分的な正面図である。
図6】本発明による溝付け装置の部分的な正面図である。
図7】ケーシングと移動体ユニットを分離した図6と同様の正面図である。
図8】本発明による溝付け装置の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照して、本発明による溝付け装置の実施形態を説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明による溝付け装置1は、管Pの端部P1に周方向の溝P2を形成するための装置である。溝付け装置1は、ケーシング2と、ケーシング2に収容された駆動伝達機構4と、駆動伝達機構4を駆動する回転駆動部である電気モータ6を有している。
【0025】
図2に示すように、ケーシング2は、溝付け装置1の持運びのための取っ手2aを有している。ケーシング2には、後述する移動体ユニット30を取付けるための移動体ユニット受け部42を有している。
【0026】
図1に示すように、駆動伝達機構4は、歯車列(図示せず)によって構成され、管Pの軸線方向P3と平行な軸線を有する回転入力軸4aと、管Pの軸線方向P3と平行な軸線を有する回転出力軸4bを有している。
【0027】
電気モータ6は、モータハウジング6aを有し、上記回転入力軸4aは、電気モータ6の出力軸である。モータハウジング6aは、ケーシング2に対して回転可能にベアリング6bを介してケーシング2に取付けられている。また、モータハウジング6aには、細長いモータハンドル6cが取付けられ、電気モータ6を作動させるために電源(図示せず)に接続される電気コード6dが、モータハンドル6cから延びている。モータハンドル6cは、電気モータ6を作動させたり停止させたりするためのスイッチ6eを有している。
【0028】
溝付け装置は、更に、管Pの内面P4に沿って管Pに対して転がり可能に回転出力軸4bに取付けられた駆動ローラ8と、管Pの外面P5を転がり可能に管Pを挟んで駆動ローラ8に向かって押付けられる溝付けローラ10と、ケーシング2に取付けられ、溝付けローラ10を駆動ローラ8に向かって押付ける押付け機構12(図2参照)を有している。
【0029】
図5に示すように、駆動ローラ8は、管Pの内面P4に当接する2つの外面8aと、外面8aの間に配置された全周溝8bを有している。外面8aは、管Pとの間の摩擦力を増大させるために、刻み目等が設けられていることが好ましい。溝付けローラ10は、全周溝8bに対向する全周凸部10aを有している。全周凸部10aの幅は、全周溝8bの幅よりも小さく定められ、全周凸部10aが管Pを挟んで全周溝8bに進入することにより、管Pに溝P2(図1参照)を形成することが可能である。
【0030】
図2及び図3に示すように、押付け機構12は、溝付けローラ10を軸線方向P3と平行な軸線10bを中心に回転可能に支持する揺動部材14を有し、揺動部材14は、その基端部14aのところで、軸線方向P3と平行な軸線14bを中心に揺動可能にケーシング2に取付けられている。押付け機構12は、更に、揺動部材14の先端部14cに取付けられ且つ揺動部材14を揺動させるねじ部材16を有している。ねじ部材16は、中心軸線16aを有し、中心軸線16aは、軸線方向P3に対して垂直な方向に配置されている。ねじ部材16の一方の端部16bは、中心軸線16aを中心に回転可能に且つ軸線方向P3と平行な軸線16cを中心に揺動可能に揺動部材14の先端部14cに取付けられている。ねじ部材16の他方の端部16dは、軸線方向P3と平行な軸線18aを中心に枢動可能にケーシング2に取付けられた枢動ナット18(図3参照)にねじ込まれている。ねじ部材16の一方の端部16bには、ねじ部材16をラチェット式に回転させる押付け用ハンドル20が取付けられている。
【0031】
図1図4及び図5に示すように、溝付け装置1は、更に、管Pに固定され且つ軌道面26a、26bを有する軌道リング22と、軌道面26a、26bに沿って移動可能にケーシング2に取外し可能に取付けられた移動体ユニット30を有している。
【0032】
図4に示すように、軌道リング22は、管Pの全周にわたって配置された環状の部材である。軌道リング22は、2つの半部22a、22bに分割可能であり、2つの半部22a、22bは、ねじ22cによって連結されている。軌道リング22の内面24の径は、溝P2を形成すべき管Pの外径よりも僅かに大きく、内面に管Pに係合する小突起を有していることが好ましい。かくして、ねじ22cを締付けることによって、軌道リング22を管Pに固定可能である。また、軌道リング22は、溝P2を形成すべき管Pの外径の大きさに応じて交換可能である。
【0033】
図5に示すように、軌道リング22の断面は、凸形であり、管Pの外面P5に押付けられる半径方向内側の上記内面24と、幅が狭い方の半径方向内側の側面25と、幅が広い方の半径方向外側の側面26a、26bと、半径方向外側の外面27を有している。半径方向外側の側面26a、26bは、上記軌道面であり、管Pの軸線方向P3に対して垂直な平面内に位置している。軌道面26a、26bは、管Pの端面P6と同じ向きに向けられた第1の軌道面26aと、管Pの端面P6と反対向きに向けられ且つ管Pの端面P6から第1の軌道面26aよりも離れた第2の軌道面26bを有している。
【0034】
移動体ユニット30は、第1の軌道面26aに沿って管Pに対して相対移動可能な第1の移動体である第1の移動ローラ32aと、第2の軌道面26bに沿って管Pに対して相対移動可能な第2の移動体である第2の移動ローラ32bと、第1の移動ローラ32a及び第2の移動ローラ32bを支持する移動体フレーム34と、移動体フレーム34をケーシング2に取付ける移動体ユニット取付け部36と、移動体ユニット取付け部36から延びる取付けピン37を有している。
【0035】
第1の移動ローラ32aは、第1の軌道面26aの上を転がる円筒形転がり面38aと、その両側の肩部39aを有し、移動体フレーム34に回転可能に支持されている。第2の移動ローラ32aは、第2の軌道面26bの上を転がる円筒形転がり面38bと、その両側の肩部39bを有し、移動体フレーム34に回転可能に支持されている。かくして、第1の移動ローラ32a及び第2の移動ローラ32bは、管Pの全周にわたって管Pに対して相対移動可能である。また、第1の移動ローラ32a及び第2の移動ローラ32bは、管Pの周方向P7において、2箇所に設けられている(図4参照)。
【0036】
また、図5に示すように、軌道リング22に対する第1の移動ローラ32a及び第2の移動ローラ32bの管Pの半径方向外方への移動を制限するローラ40が、移動体フレーム34に取付けられている。
【0037】
図4に示すように、移動体フレーム34は、管Pの外面P5に沿って周方向P7の一部分にわたって位置している。移動体フレーム34は、折曲げ板状であり、軌道リング22よりも半径方向外側に位置している。移動体フレーム34は、2つの移動体ユニット取付け部36を介してケーシング2に設けられた移動体ユニット受け部42に、取付けピン37(図1図6図7参照)によって取外し可能に取付けられている。
【0038】
移動体ユニット取付け部36は、孔36aを有する管状の形態を有している。図6及び図7に示すように、取付けピン37は、大径部37aと、孔36a及び孔42aに挿入される小径部37bを有し、小径部37bが孔36aに移動自在に挿入されている。小径部37bは、先端付近の溝37cと、先端の面取り部37dと、溝37cの先端と反対側の縁に設けられた面取り部37eを有している。取付けピン37は、孔36aのところに設けられた、ピン付勢式のプランジャ36bが溝37cに係合することによって、移動体ユニット取付け部36から抜け落ちないように構成されていることが好ましい(図7参照)。また、取付けピン37は、それを孔36aに押込んだときに面取り部37d、37eがプランジャ36bのピンを押して引込ませ、小径部37bの進入が妨げられないように構成されていることが好ましい。
【0039】
また、図2及び図7に示すように、移動体ユニット受け部42は、孔36aの径と同じ径であり且つ孔36aと整列される孔42aを有している。従って、取付けピン37の小径部37bが孔42aに挿入可能である。また、移動体ユニット受け部42は、孔42aに向かってバネ42bによって付勢された枢動レバー42cを有している。枢動レバー42cの先端は、取付けピン37が孔42aから抜け出ることを防止するように、溝37cに係合可能である(図6参照)。取付けピン37は、それを孔42aに押込んだとき、面取り部37dが枢動レバー42cの先端部42eを押して、小径部37bの進入が妨げられないように構成されている(図7参照)。また、移動体ユニット受け部42は、取付けピン37を固定するねじ42d(図2参照)を有している。取付けピン37の小径部37bの長さ、溝37cの位置及び寸法は、移動体ユニット30とケーシング2を組立てたときに遊びが最小になるように定められるのがよい。
【0040】
説明した溝付け装置を用いて、建造物等に固定された管に溝を形成する方法を説明する。
【0041】
溝P2を形成すべき管Pに適した内径を有する軌道リング22を選択し、2つの半部22a、22bに分割する。2つの半部22a、22bを移動体ユニット30の移動ローラ32a、32bの間に挿入してリング状に配置し、2つの半部22a、22bをねじ22cによって連結する。それにより、移動体ユニット30と軌道リング22とが組立てられる(図4参照)。
【0042】
次いで、軌道リング22を管Pの端面P6から所定の距離のところに固定する。具体的には、図7に示すように、所定の長さのガイド部材44の一方の端部を管Pの端面P6に当てて管Pの端面Pに沿って一周させたときに、常に、ガイド部材44の他方の端部と軌道リング22の半径方向内側の側面25が当接しているように、軌道リング22を管Pに位置決めし、その後、ねじ22cを締付けることによって、軌道リング22を管Pに固定する。
【0043】
次いで、管Pを駆動ローラ8と溝付けローラ10の間に挟むようにケーシング2を管Pの上に配置した後、取付けピン37(孔36a)と、ケーシング2の移動体ユニット受け部42の孔42aを整列させる。移動体ユニット受け部42の孔42aに取付けピン37を挿入することによって、ケーシング2を移動体ユニット30に取付ける。詳細には、取付けピン37が移動体ユニット受け部42の孔42aに挿入されると、取付けピン37の先端の面取り部37dが、枢動レバー42cの先端部42eを、バネ42bの付勢に抗して移動させ、取付けピン37を孔42aの中に進入させる。その後、バネ42bによって付勢された枢動レバー42cの先端が取付けピン37の溝37cの中に入りそれに係合する。取付けピン37を引き抜こうとすると、枢動レバー42cの先端部42eが溝37cに引掛かることによって、取付けピン37の抜け出しを防止し、それにより、ケーシング2が、移動体ユニット30から分離することが防止される(図6参照)。取付けピン37を、ねじ42dによって締付けることが好ましい。かくして、溝付け装置1が組立てられ、管Pに固定される。
【0044】
押付け用ハンドル20を使用して、ねじ部材16を枢動ナット18にねじ込むことによって、揺動部材14を、軸線14bを中心に揺動させ、溝付けローラ10を駆動ローラ8に向かって管Pに押付ける。それにより、管Pの外面に凹みが形成される。モータハンドル6cのスイッチ6eで電気モータ6を作動させると、駆動伝達機構4を介して駆動ローラ8が回転する。管Pが固定されているため、駆動ローラ8が管Pの内面P4の上を転がりながら移動する。また、溝付けローラ10も、駆動ローラ8と一緒に管Pの外面P5の上を転がりながら移動する。それにより、管Pの外面P5の凹みが連続的に周方向P7に形成される。駆動ローラ8と溝付けローラ10が管Pを一周したら、電気モータ6を停止させる。その結果、管Pの軸線方向P3に垂直な溝P2が形成される。
【0045】
溝P2を形成する間、駆動ローラ8及び溝付けローラ10がケーシング2に取付けられているので、ケーシング2も管Pの周囲に沿って一周し、すなわち、自転する。一方、電気モータ6のモータハウジング6aは、ケーシング2に回転可能に取付けられているので、電気モータ6及びモータハンドル6cは、並進回転運動を行い、すなわち、自転しない(図7参照)。移動ローラ32a、32bは、管Pの軸線方向P3に対して垂直な平面内に位置する軌道面26a、26bに沿って移動するので、移動ローラ32a、32bが軌道面26a、26bに沿って管Pを一周する間、ケーシング2の向き及び位置が管Pに対してずれることが制限される。その結果、ケーシング2に取付けられている駆動ローラ8及び溝付けローラ10の向き及び位置が管Pに対してずれることが制限される。具体的には、駆動ローラ8及び溝付けローラ10が軸線方向P3に移動したり、駆動ローラ8及び溝付けローラ10の向きが軸線方向P3と垂直な方向から逸れたりすることが制限される。かくして、管Pの軸線方向P3に対して垂直な溝P2を管Pに正確に形成することができる。
【0046】
溝P2の深さが、目標深さよりも小さい場合には、ねじ部材16を枢動ナット18に更にねじ込んで、上記動作を繰返せばよい。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0048】
上記実施形態では、移動ローラ32a、32bが管Pの周方向P7において2箇所に設けられているが、駆動ローラ8及び溝付けローラ10の向き及び位置のずれを制限することができれば、移動ローラ32a、32bは、管Pの周方向P7において1箇所だけ(例えば、駆動ローラ8と溝付けローラ10の近傍の箇所)に設けられてもよいし、3箇所以上に設けられてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、軌道部材22の断面が凸形で、その両側に2つの移動ローラ32a、32bが配置されていたが、駆動ローラ8及び溝付けローラ10の向き及び位置のずれを制限することができれば、軌道部材22の断面形状は任意であり、また、軌道面は1つであってもよい。例えば、軌道部材の断面が凹形であり、その凹部に2つの軌道面が設けられ、2つの軌道面に当接可能な1つの移動ローラが凹部の内側に配置されてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、軌道面26a、26bに沿って管Pに対して相対移動可能な移動体は、移動ローラ32a、32bによって構成されていたが、溝P2を形成するときの軌道部材22と移動体との間の抵抗の増加が許容されれば、移動体は、軌道面26a、26bに沿って摺動する移動体であってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、ローラ40が設けられていたけれども、移動ローラ32a、32bの周方向P7の移動を制限する必要がなければ、ローラ40を設けなくてもよい。例えば、軌道部材22と移動ローラ32a、32bとの間の干渉を防止する必要がない場合、軌道部材22と移動ローラ32a、32bとが多少干渉しても溝P2を形成するときの軌道部材22と移動ローラ32a、32bとの間の抵抗の増加が許容される場合、ローラ40を設けなくてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、管Pが固定された例を説明したが、ケーシング2を固定し、駆動ローラ8及び溝付けローラ10によって、管Pを回転させながら溝P2を形成してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、駆動伝達機構4を駆動する回転駆動部が電気モータ6であったが、手動ハンドルで駆動伝達機構4を駆動してもよい。電気モータ6を採用した場合、ケーシング2が管Pに沿って一周する間、電気モータ6及びモータハンドル6cは並進円運動を行い、電気モータ6及びモータハンドル6cが一周する場合よりも作業スペースを小さくすることができる。一方、作業スペースを小さくする必要がなければ、電気モータ6の代わりに手動ハンドルを用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 溝付け装置
2 ケーシング
4 駆動伝達機構
4b 回転出力軸
6 電気モータ(回転駆動部)
6a モータハウジング
6c モータハンドル
8 駆動ローラ
8a 全周溝
10 溝付けローラ
10a 全周凸部
12 押付け装置
22 軌道リング
26a 第1の軌道面
26b 第2の軌道面
30 移動体ユニット
32a 第1の移動ローラ(移動体)
32b 第2の移動ローラ(移動体)
37 取付けピン
37c 溝
37d 面取り部
40 ローラ
42a孔
42c 枢動レバー(レバー部材)
42e 先端部
P 管
P1 端部
P2 溝
P3 軸線方向
P4 内面
P5 外面
P6 端面
P7 周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8