特許第5647625号(P5647625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本触媒の特許一覧

特許5647625ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法
<>
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000015
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000016
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000017
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000018
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000019
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000020
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000021
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000022
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000023
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000024
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000025
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000026
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000027
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000028
  • 特許5647625-ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法 図000029
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5647625
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/00 20060101AFI20141211BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20141211BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20141211BHJP
   C08F 6/00 20060101ALI20141211BHJP
   C08F 2/10 20060101ALI20141211BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   C08F2/00 Z
   C08F20/06
   C08J3/12 ACEY
   C08F2/00 B
   C08F6/00
   C08F2/10
   C08F2/44 Z
【請求項の数】18
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2011-547617(P2011-547617)
(86)(22)【出願日】2010年12月23日
(86)【国際出願番号】JP2010073254
(87)【国際公開番号】WO2011078298
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2012年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2009-292318(P2009-292318)
(32)【優先日】2009年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-88993(P2010-88993)
(32)【優先日】2010年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-149907(P2010-149907)
(32)【優先日】2010年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-179515(P2010-179515)
(32)【優先日】2010年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中津留 玲子
(72)【発明者】
【氏名】阪本 繁
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
(72)【発明者】
【氏名】鷹合 俊博
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−115313(JP,A)
【文献】 特開平10−114801(JP,A)
【文献】 特開平10−168129(JP,A)
【文献】 特表2000−506911(JP,A)
【文献】 特開2007−284675(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/048145(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/092714(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00 − 20/70
C08J 3/12
C08F 2/00 − 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡を含有したアクリル酸系単量体水溶液を重合する工程と、当該重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥する工程とを含むポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、
界面活性剤及び/又は分散剤存在下で単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させることによって、該アクリル酸系単量体水溶液中に気泡を発生させ含有させる気泡発生含有工程を含み、
上記重合に際して、内部架橋剤を用い、かつ、上記重合工程における重合開始温度を30℃以上とし、
含水ゲル状架橋重合体を乾燥する上記工程後に、ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末を表面架橋する工程を更に含み、
得られたポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の生理食塩水流れ誘導性が20[×10−7・cm・sec・g−1]以上であり、吸水速度(FSR)が0.25[g/g/sec]以上であることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
上記気泡発生含有工程における、溶存気体の溶解度低下は、界面活性剤及び/又は分散剤を含有するアクリル酸系単量体水溶液を昇温することによって行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記気泡発生含有工程を上記重合工程前に行う、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
重合工程前に、界面活性剤及び/又は分散剤をアクリル酸系単量体水溶液へ添加する、請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤である、請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記分散剤が水溶性高分子である、請求項1〜5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
重合時の最高到達温度が100℃以上である、請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記単量体水溶液を重合する工程において、単量体水溶液におけるアクリル酸系単量体の濃度が40重量%以上である、請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
単量体水溶液における重合禁止剤メトキシフェノールの含有量が10〜200ppmである、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
重合工程が連続ニーダー重合で行われ、重合中にゲル粉砕が行われ、更に必要により重合後にゲル粉砕が行われる、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
重合工程が連続ベルト重合で行われ、重合後にゲル粉砕が行われる、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
含水ゲル状架橋重合体を乾燥する上記工程後に、分級する工程を更に含み、
分級工程後の微粉を、乾燥工程以前の工程において再利用する、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
得られる吸水性樹脂の表面張力が60[mN/m]以上を示す範囲で、アクリル酸系単量体水溶液が界面活性剤及び/又は分散剤を含有する、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
含水ゲル状架橋重合体を乾燥する上記工程後に、得られたポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末を表面架橋する工程と、該表面架橋する工程と同時又は別途、ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の表面を更に界面活性剤で被覆する工程とを更に含む、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
気泡発生含有工程前における単量体水溶液の体積に対して、気泡発生含有工程後における単量体水溶液の体積が1.01〜1.1倍となっている、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
気泡の体積平均粒子径が50μm以下である、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
アクリル酸系単量体水溶液に水溶性有機物を混合させる工程、アクリル酸系単量体水溶液の昇温工程、或いは気泡発生含有工程の前又は後に気体を導入する工程を更に含む、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
重合中又は重合後に、ゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]でのゲル粉砕及び/又は水可溶分の重量平均分子量を10,000〜500,000[Da]増加させるゲル粉砕が行われる、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法に関する。更に詳しくは、紙オムツや生理用ナプキン等の衛生用品等に用いられる吸水性樹脂粉末に関するものであり、優れた吸水性能(特に吸水速度の速い)ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent Polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツ、生理用ナプキン等の吸収物品、更には、農園芸用保水剤、工業用止水材等として、主に使い捨て用途に多用されている。このような吸水性樹脂としては、原料として多くの単量体や親水性高分子が提案されているが、特に、アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリアクリル酸系吸水性樹脂が、その吸水性能の高さから工業的に最も多く用いられている(非特許文献1)。
【0003】
かかる吸水性樹脂は、重合工程、乾燥工程、必要により未乾燥物の除去工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程等を経て製造される(特許文献1〜5)。
【0004】
又、主用途である紙オムツの高性能化に伴い、吸水性樹脂も多くの機能を求められている。具体的には、単なる吸水倍率の高さに限らず、ゲル強度、水可溶分、吸水速度、加圧下吸水倍率、通液性、粒度分布、耐尿性、抗菌性、耐衝撃性(耐ダメージ性)、粉体流動性、消臭性、耐着色性(白色度)、低粉塵等、多くの物性が吸水性樹脂に要求されている。そのため、多くの表面架橋技術、添加剤、製造工程の変更等、数多くの提案が、上記又は下記の特許文献にもなされている。
【0005】
上述した物性の中でも、通液性は、近年、紙オムツ中での吸水性樹脂の使用量が増加(例えば、50重量%以上)するに従い、より重要な因子と見られるようになっている。そして、SFC(Saline Flow Conductivity/特許文献6)やGBP(Gel Bed Permeabilty/特許文献7〜9)等の荷重下通液性や無荷重下通液性の改善方法や改良技術が多く提案されている。
【0006】
又、通液性に加えて、吸水速度も吸水性樹脂の重要な基本物性であり、かかる吸水速度を向上させる方法として、比表面積を向上させて吸水速度を向上させる技術が知られている。具体的には、粒子径を細かく制御する技術(特許文献10)、表面積の大きな微粒子を造粒する技術(特許文献11〜13)、含水ゲルを凍結乾燥して多孔質とする技術(特許文献14)、粒子を造粒と同時に表面架橋する技術(特許文献15〜17)、発泡重合する技術(特許文献18〜35)、重合後に発泡及び架橋する技術(特許文献36)等が提案されている。
【0007】
即ち、上記発泡重合において、単量体に使用する発泡剤として、具体的には、炭酸塩を使用する技術(特許文献18〜25)、有機溶媒を使用する技術(特許文献26、27)、不活性ガスを使用する技術(特許文献28〜30)、アゾ化合物を使用する技術(特許文献31、32)、不溶性無機粉末や水不溶性粒子を使用する技術(特許文献33、34)等が知られ、又、不活性ガスのミクロ気泡を含む濃度45〜60重量%のアクリル酸ナトリウム塩微細沈殿が分散したスラリーをかき混ぜることなく重合する方法(特許文献35)も提案されている。更に、重合後に発泡及び架橋する技術(特許文献36)等が提案されている。
【0008】
これら特許文献10〜36等の技術では、吸水性樹脂の表面積の増加等によって吸水速度はある程度向上するものの、いまだ十分な効果を示さず、特殊な装置や高価な原料(多量の界面活性剤や発泡剤)が必要であった。更に、近年求められる吸水性樹脂の通液性(特許文献6〜9)や耐衝撃性(特許文献37)、嵩比重(特許文献38、39)等、他の物性が低下する等の問題を有していた。
【0009】
即ち、一般に、吸水速度と比表面積とは正の相関関係にあり、通液性と比表面積とは負の相関関係にあるため、表面積に大きく依存する吸水速度の向上と通液性の向上との両立は非常に困難であった。
【0010】
更に、特許文献28、29のような多量の界面活性剤による気泡の分散は、界面活性剤によるコストアップを伴うのみならず、吸水性樹脂の表面張力を低下させて、紙オムツでの戻り量を増加させるという問題を有していた。
【0011】
又、吸水性樹脂は紙オムツや生理用ナプキン等の吸収物品に使用され、白色のパルプと複合化されることが多いため、清潔感からも白色であることが求められており、吸水性樹脂の白色度について多くの着色改良技術が提案されている(特許文献40〜42)。しかしながら、これらも着色防止剤のコストや安全性、工程の複雑さ、更には効果の面でも十分とは言えないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第1957188号明細書
【特許文献2】米国特許第7265190号明細書
【特許文献3】日本国公開特許公報「特開2005−162834号公報」
【特許文献4】米国特許第6710141号明細書
【特許文献5】米国特許第7091253号明細書
【特許文献6】米国特許第5562646号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0256469号明細書
【特許文献8】米国特許第7169843号明細書
【特許文献9】米国特許第7173086号明細書
【特許文献10】国際公開第92/18171号パンフレット
【特許文献11】米国特許第5624967号明細書
【特許文献12】国際公開第2005/012406号パンフレット
【特許文献13】米国特許第5002986号明細書
【特許文献14】米国特許第6939914号明細書
【特許文献15】米国特許第5124188号明細書
【特許文献16】欧州特許第0595803号明細書
【特許文献17】欧州特許第0450922号明細書
【特許文献18】国際公開第91/15368号パンフレット
【特許文献19】米国特許第5154713号明細書
【特許文献20】米国特許第5314420号明細書
【特許文献21】米国特許第5399591号明細書
【特許文献22】米国特許第5451613号明細書
【特許文献23】米国特許第5462972号明細書
【特許文献24】国際公開第95/02002号パンフレット
【特許文献25】国際公開第2005/063313号パンフレット
【特許文献26】国際公開第94/022502号パンフレット
【特許文献27】米国特許第4703067号明細書
【特許文献28】国際公開第97/017397号パンフレット
【特許文献29】国際公開第00/052087号パンフレット
【特許文献30】米国特許第6107358号明細書
【特許文献31】米国特許第5856370号明細書
【特許文献32】米国特許第5985944号明細書
【特許文献33】国際公開第2009/062902号パンフレット
【特許文献34】米国特許公開2007/0225422明細書
【特許文献35】日本国公開特許公報「特開平1−318021号公報」
【特許文献36】欧州特許第1521601号明細書
【特許文献37】米国特許第6414214号明細書
【特許文献38】米国特許第6562879号明細書
【特許文献39】米国特許第7582705号明細書
【特許文献40】米国特許第6359049号明細書
【特許文献41】国際公開第2006/008905号パンフレット
【特許文献42】国際公開第2004/052949号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Modern Superabsorbent Polymer Technology(1998)(特に、p.39〜44、p.197〜199等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、吸水性樹脂の他の物性(通液性、嵩比重、表面張力、加圧下吸水倍率、耐衝撃性等)を維持又は殆ど損なうことなく、更に高価な原料や装置を用いずとも、吸水速度(例えば、FSR)が向上した白色の吸水性樹脂粉末を提供することである。特に、高い通液性(例えば、SFC)と吸水速度(例えば、FSR)とを両立した、白色の吸水性樹脂粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明者は、重合時の単量体への気泡の分散方法に着目し、特定の方法を使用することで上記課題を解決し、嵩比重や表面張力の低下もなく、更に好ましくは白色度や通液性、耐衝撃性(別称;耐ダメージ性)にも優れた吸水性樹脂粉末が得られることを見いだし、本発明を完成させた。又、吸水速度向上のために、表面積の増加、発泡重合や多孔質化する技術は上記特許文献で提案されているが、本発明は従来着目されなかった独立気泡(別称;内部気泡)に初めて注目し、吸水性樹脂の内部気泡率(Closed−Cell Rate)を特定範囲に制御することで、上記課題が解決できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0016】
即ち、上記課題を解決するために、本発明の吸水性樹脂の製造方法(第1の方法)は、気泡を含有したアクリル酸系単量体水溶液を重合する工程と、当該重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥する工程とを含むポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、界面活性剤及び/又は分散剤存在下で単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させることによって、該アクリル酸系単量体水溶液中に気泡を発生させ含有させる気泡発生含有工程を含むことを特徴としている。
【0017】
又、上記課題を解決するために、本発明の吸水性樹脂の製造方法(第2の方法)は、気泡を含有したアクリル酸系単量体水溶液を重合する工程と、当該重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥する工程とを含むポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、界面活性剤及び/又は分散剤存在下でアクリル酸系単量体水溶液を昇温させる工程を含むことを特徴としている。
【0018】
更に、上記課題を解決するために、本発明の吸水性樹脂の製造方法(第3の方法)は、気泡を含有したアクリル酸系単量体水溶液を重合する工程と、当該重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥する工程とを含むポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、界面活性剤及び/又は分散剤存在下でアクリル酸系単量体水溶液に水溶性有機物を混合させる工程を含むことを特徴としている。
【0019】
又、上記課題(特に通液性と吸水速度の両立、耐ダメージ性)を解決するために、本発明の吸水性樹脂(第1の吸水性樹脂)は、粒度850〜150μmの割合が95重量%以上であるポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末であって、下記式で規定される内部気泡率が2.8〜6.6%であることを特徴とする。
(内部気泡率[%])={(真密度[g/cm])−(見かけ密度[g/cm])}/(真密度[g/cm])×100
更に、上記課題(特に耐ダメージ性)を解決するために、本発明の吸水性樹脂(第2の吸水性樹脂)は、界面活性剤及び/又は分散剤を内部に含むポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末であって、表面張力が60[mN/m]以上で、かつ、粉末表面が界面活性剤で被覆されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る吸水性樹脂粉末の製造方法によると、界面活性剤を多量に用いることなく、生産性よく、効率的に吸水速度の高い吸水性樹脂粉末を製造することができる。又、例えば、本発明の製造方法(製造方法の一例)で得られる本発明の吸水性樹脂粉末は、吸水速度と通液性が両立した、しかも耐衝撃性に優れた、新規な吸水性樹脂粉末である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の第1の方法及び第2の方法が適用される、アクリル酸系単量体水溶液の加熱による連続昇温方法に用いられる装置の一例を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の第1の方法及び第2の方法が適用される、アクリル酸系単量体水溶液の中和による昇温及び気泡発生方法の概略を示したフロー図である。
図3図3は、実施例2及び比較例2で得られた吸水性樹脂粉末の電子顕微鏡写真(倍率50倍)である。尚、後述の実施例及び比較例では、重合後及び乾燥後に粉砕工程を経るため、吸水性樹脂粉末は写真に示すように、不定形破砕状である。
図4図4は、実施例2における界面活性剤の存在下での、アクリル酸系単量体水溶液の中和による昇温及び気泡発生方法の概略を示したフロー図である。
図5図5は、比較例3におけるアクリル酸系単量体水溶液の中和による昇温方法の概略を示したフロー図である。
図6図6は、本発明の第1の方法及び第2の方法に適用できる本発明の好ましい実施態様として、アクリル酸系単量体水溶液の昇温による気泡発生方法において、更に不活性ガス(例えば窒素)による単量体水溶液の重合前の脱酸素を行う実施態様の概略を示すフロー図である。
図7図7は、本発明の第1の方法及び第2の方法に適用できる本発明の好ましい実施態様として、アクリル酸系単量体水溶液の昇温による気泡発生方法において、更に不活性ガス(例えば窒素)による単量体水溶液の重合前の脱酸素を行う実施態様の概略を示すフロー図である。
図8図8は、本発明の第1の方法及び第2の方法に適用できる本発明の好ましい実施態様として、アクリル酸系単量体水溶液の昇温による気泡発生方法において、更に不活性ガス(例えば窒素)による単量体水溶液の重合前の脱酸素を行う実施態様の概略を示すフロー図である。
図9図9は、本発明の第1の方法及び第2の方法に適用できる本発明の好ましい実施態様として、アクリル酸系単量体水溶液の昇温による気泡発生方法において、更に不活性ガス(例えば窒素)による単量体水溶液の重合前の脱酸素を行う実施態様の概略を示すフロー図である。
図10図10は、本発明の第1の方法及び第3の方法に適用できる、アクリル酸系単量体水溶液への水溶性有機化合物の混合による気体の溶解度低下及び気泡発生の概略を示すフロー図である。
図11図11は、本発明の第1の方法及び第3の方法に適用できる、アクリル酸系単量体水溶液への水溶性有機化合物の混合による気体の溶解度低下及び気泡発生の概略を示すフロー図である。
図12図12は、吸水性樹脂粉末における、独立気泡(Closed−Cell)と連続気泡(Open−Cell)を模式的に示す断面図である。本発明の吸水性樹脂(後述)は特定範囲に制御された内部気泡率(別称;独立気泡)を有する特徴を有する。
図13図13は、本発明の真密度測定のための、(例えば、粒度850〜150μmの割合が95重量%以上の)吸水性樹脂粉末を45μm未満へ微粉砕する操作を模式的に示す断面図である。吸水性樹脂粉末を微粉砕することで実質的に独立気泡が破壊又は連続気泡化したのち、ヘリウムガスによる乾式密度測定を行うことで、吸水性樹脂粉末の真密度[g/cm]を測定できる。
図14図14は、本発明の第1の方法及び第2の方法に適用できる本発明の好ましい実施形態として、ベルト重合機を用いて含水ゲル状架橋重合体をスクリュー押出機に投入して粉砕ゲルを得る工程の概略を示す断面図である。
図15図15は、本発明の第1の方法及び第2の方法に適用できる本発明の好ましい実施形態として、アクリル酸系単量体水溶液の昇温による気泡発生方法において、必要により気体の導入(特にマイクロバブルの導入)を含み、更に不活性ガス(例えば窒素)による単量体水溶液の重合前の脱酸素を経て重合した後、得られた含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕を行う実施態様の概略を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0023】
具体的には、本発明は下記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0024】
〔1〕用語の定義
(1−1)「吸水性樹脂粉末」
本発明における「吸水性樹脂粉末」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味する。尚、「水膨潤性」とは、ERT441.2−02で規定するCRC(無加圧下吸水倍率)が5[g/g]以上であることをいい、又、「水不溶性」とは、ERT470.2−02で規定するExt(水可溶分)が0〜50重量%であることをいう。
【0025】
上記吸水性樹脂粉末は、その用途に応じて適宜設計可能であり、特に限定されるものではなく、又、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記性能を維持する範囲内において、添加剤等を含んでもよく、少量の添加剤を含有する吸水性樹脂組成物も本発明では吸水性樹脂粉末と総称する。又、表面架橋の有無は問わない。尚、吸水性樹脂の形状としてシート状、繊維状、フィルム状、ゲル状等が挙げられるが、好ましくは粉末状、特に好ましくは後述の粒度や含水率を有する粉末状の吸水性樹脂がよい。
【0026】
(1−2)「ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末」
本発明における「ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末」とは、任意にグラフト成分を含み、繰り返し単位として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、アクリル酸(塩)と称する)を主成分とする重合体を意味する。
【0027】
具体的には、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)のうち、アクリル酸(塩)を50〜100モル%含む重合体をいい、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%を含む吸水性樹脂粉末をいう。又、本発明では、ポリアクリル酸塩型(中和型)の重合体もポリアクリル酸と総称する。
【0028】
(1−3)「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Assoiations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)である吸水性樹脂の測定方法(EDANA Recommended Test Metods)の略称である。なお、本発明においては、特に断りのない限り、ERT原本(公知文献:2002年改定)に準拠して、吸水性樹脂粉末の物性を測定する。
【0029】
(a)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、無加圧下吸水倍率(以下、「吸水倍率」と称することもある)を意味する。具体的には、不織布中の吸水性樹脂0.200gの0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する30分間の自由膨潤後、更に遠心分離機で水切りした後の吸水倍率(単位;[g/g])である。
【0030】
(b)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.900gの0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する1時間、2.06kPaでの荷重下膨潤後の吸水倍率(単位;[g/g])である。尚、ERT442.2−02では、Absorption Under Pressureと表記されているが、実質的に同一内容である。又、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更して測定することもある。
【0031】
(c)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200gに対して、吸水性樹脂粉末1gを16時間攪拌した後、溶解したポリマー量をpH滴定で測定した値(単位;重量%)である。
【0032】
(d)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」とは、Particle Size Disributionの略称であり、篩分級により測定される粒度分布を意味する。尚、重量平均粒子径(D50)及び粒子径分布幅は米国特許2006−204755号に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定する。
【0033】
(1−4)「通液性」
荷重下又は無荷重下における膨潤した吸水性樹脂粉末の粒子間を流れる液の流れを「通液性」という。この「通液性」の代表的な測定方法として、SFC(Saline Flow Conductivity/生理食塩水流れ誘導性)や、GBP(Gel Bed Permeability/ゲル床透過性)がある。
【0034】
「SFC(生理食塩水流れ誘導性)」は、荷重2.07kPaにおける吸水性樹脂粉末に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいう。米国特許第5669894号明細書に記載されたSFC試験方法に準じて測定される。又、「GBP」は、荷重下又は自由膨張における吸水性樹脂粉末に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいう。国際公開第2005/016393号パンフレットに記載されたGBP試験方法に準じて測定される。
【0035】
(1−5)その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上Y以下」であることを意味する。又、重量の単位である「t(トン)」は、「Metric ton(メトリック トン)」であることを意味し、更に、特に注釈のない限り、「ppm」は「重量ppm」を意味する。又、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」、「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。更に、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0036】
〔2〕ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の製造方法
本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法は、吸水速度の向上のために発泡重合する方法において、上記特許文献に対して気泡の含有方法に特徴を有する。かかる手法によって、重合前の単量体水溶液に気泡が均一に分散するため、得られる吸水性樹脂粉末の吸水速度が向上するだけでなく、更に白色度も向上する。更に吸水性樹脂粉末の他の物性(通液性、嵩比重、表面張力、加圧下吸水倍率、耐衝撃性(耐ダメージ性)等)を維持又は殆ど損なうことなく、更に高価な原料や装置を用いる必要もない。
【0037】
即ち、本発明の製造方法(第1の方法)は、気泡を含有するアクリル酸系単量体水溶液の重合工程と、必要により重合時又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル細粒化工程と、含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程とを含むポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の製造方法において、界面活性剤及び/又は分散剤の存在下、該アクリル酸系単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させて気泡を発生含有させる気泡発生含有工程を含むことを特徴とする。
【0038】
ここで、上記界面活性剤の添加は、気泡発生含有工程を行う前に行えばよいため、重合工程後に行ってもよいが、重合工程前に行うことが好ましい。
【0039】
つまり、本発明の製造方法は、好ましくは、重合工程前の調整中又は調整後のアクリル酸系単量体水溶液が界面活性剤及び/又は分散剤を含有し、該アクリル酸系単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させて気泡を発生含有させる気泡発生含有工程を含む、製造方法である。かかる溶存気体の溶解度を低下させる方法としては、例えば、アクリル酸系単量体水溶液の昇温によって行う方法、及び/又は、アクリル酸系単量体水溶液に対して水溶性有機物の混合によって行う方法が挙げられる。
【0040】
又、上記気泡発生含有工程は、重合工程が完了するまでに行えばよいため、重合工程開始後に行ってもよいが、重合工程前に行うことが好ましい。
【0041】
言い換えれば、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法は、好ましくは、気泡を含有するアクリル酸系単量体水溶液の重合工程と、必要により重合時又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル細粒化工程と、含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程とを含むポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、重合工程前の調整中又は調整後のアクリル酸系単量体水溶液が界面活性剤及び/又は分散剤を含有し、重合工程前に、該アクリル酸系単量体水溶液を昇温する工程を含む、製造方法(第2の製造方法)、及び/又は、重合工程前の調整中又は調整後のアクリル酸系単量体水溶液が界面活性剤及び/又は分散剤を含有し、重合工程前に、該アクリル酸系単量体水溶液に水溶性有機物を混合する工程を含む、製造方法(第3の製造方法)である。
【0042】
第1又は3の方法において、好ましくは、水溶性有機物がアクリル酸、特に未中和アクリル酸であり、その水分量は20重量%以下が好ましく、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。水分量が少ないアクリル酸をアクリル酸系単量体水溶液に混合することで、気体の貧溶媒としてのアクリル酸の作用によって、水溶液中の気体の溶解度が低下して、気泡を発生含有させることができる。界面活性剤及び/又は分散剤を含有するアクリル酸系単量体水溶液と水溶性有機物との混合比は適宜決定されるが、重量比で1:9〜9:1が好ましく、2:8〜8:2がより好ましく、3:7〜7:3が特に好ましい。
【0043】
第1〜3の方法において、溶存気体の溶解度を低下させて気泡を発生含有させる工程、アクリル酸系単量体水溶液を昇温する工程、水溶性有機物の混合工程は、それぞれ加圧下、減圧下でもよいが、運転や工程や装置の簡便さから、実質的に雰囲気は常圧で行われる。ここで、「実質的に常圧」とは、大気圧に対して±10%の状態をいい、好ましくは±5%、より好ましくは±2%、更に好ましくは±1%、特に好ましくは0%(大気圧と同一)の状態をいう。上記方法では、圧力変化を伴うような意図的な加圧又は減圧は行わないことが好ましいが、単量体水溶液の配管内からの開放や昇温に伴う自然に起りうる雰囲気の圧力変化は上記範囲であり、実質的に0%である。
【0044】
第1〜3の方法において、これら手法で気泡を含有されるが、好ましくは、溶存気体の溶解度を低下させる工程の前又は後に、アクリル酸系単量体水溶液への不活性気体の混合工程を含む。
【0045】
第1〜3の方法において、発生した気泡の安定性から、溶存気体の溶解度を低下させる工程(気泡発生含有工程)の終了時点から、重合工程での重合の開始時までの時間が0を超えて300秒以内であることが好ましく、より好ましくは120秒以内、更に好ましくは60秒以内、特に好ましくは30秒以内である。上記時間が300秒を超えると、発生した気泡が重合前に合一又は消失してしまい、吸水速度向上の効果が小さくなる傾向にあるので好ましくない。
【0046】
(重合工程前の調整中又は調整後のアクリル酸系単量体水溶液)
本発明で「アクリル酸系単量体水溶液」とは、後述のアクリル酸及び/又はその塩を主成分とする単量体の水溶液であって、必要により架橋剤やその他後述のグラフト成分、微量成分(キレート剤、界面活性剤、分散剤)等、吸水性樹脂の構成成分を調合したものを指し、このままの状態で重合開始剤を添加して重合に供せるものを指す。
【0047】
アクリル酸は未中和でもよく、塩型(完全中和型又は部分中和型)でもよい。また、単量体水溶液は飽和濃度を超えていてもよく、いわゆる、アクリル酸(塩)の過飽和水溶液やスラリー水溶液(水分散液)も本発明でいうアクリル酸系単量体水溶液の範疇であるが、得られる吸水性樹脂粉末の物性面から好ましくは飽和濃度以下のアクリル酸系単量体水溶液が用いられる。
【0048】
又、単量体の重合溶媒は水であり、アクリル酸系単量体は水溶液とされるが、ここで水溶液とは、溶媒の100重量%が水である場合には限定されず、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜5重量%の他の水溶性有機溶媒(例えば、アルコール)を併用しても本発明では水溶液と呼ぶ。
【0049】
尚、本発明ではアクリル酸水溶液に対して、気体の溶解度を低下(第一の方法)、好ましくは昇温(第2の方法)又は水溶性有機物の混合(第3の方法)がなされる。ここで、100重量%アクリル酸に対して塩基性水溶液(例えば苛性ソーダ水溶液)を混合する場合も、混合開始時点でアクリル酸水溶液(アクリル酸+NaOH水溶液)が生成するため、100重量%アクリル酸(水無しアクリル酸、又は少量の水を含むアクリル酸、例えば、含水率2重量%以下のアクリル酸)に対して中和を行う場合も本発明の第1〜3の方法に包含されるものである。
【0050】
本発明で重合工程前の調整後のアクリル酸系単量体水溶液とは、重合装置に投入される前のアクリル酸系単量体水溶液又は重合装置に投入されて重合が開始する前のアクリル酸系単量体水溶液を指す。
【0051】
本発明で調整中(別称;調整途中)のアクリル酸系単量体水溶液とは、上記のアクリル酸及び/又はその塩を主成分とする単量体の水溶液において、すべての成分が混合される前のアクリル酸又はその塩の水溶液を指し、代表的にはアクリル酸水溶液、部分中和又は完全中和のアクリル酸塩等の水溶液である。これら調整中のアクリル酸系単量体水溶液に対して、更に中和したり、溶媒である水を混合したり、上記微量成分を混合したりして、最終的なアクリル酸系単量体水溶液とされる。
【0052】
(昇温)
本発明の第1又は第2の方法において、溶存気体の溶解度を低下させて気泡を発生含有させる工程、つまり、アクリル酸系単量体水溶液を昇温する工程では、アクリル酸系単量体水溶液の昇温によって気体の溶解度が低下する。昇温幅は、気泡の発生量から好ましくは、+5℃以上、より好ましくは+10〜+100℃、更に好ましくは+20〜+90℃、特に好ましくは+30〜+80℃である。
【0053】
上記昇温幅が大きすぎると重合前の気泡の安定性に劣り、昇温幅が小さすぎると重合前の気泡の発生量が少ないため、何れも吸水速度の向上効果が小さい場合がある。吸水速度やその他物性面からも、昇温前の単量体水溶液の温度は好ましくは0〜60℃であり、更に好ましくは20〜50℃である。又、上記昇温(幅)を経た後の、昇温後の単量体水溶液の温度は好ましくは40〜100℃であり、更に好ましくは後述の範囲である。
【0054】
工程の簡便さ及び効果の面から、昇温は、界面活性剤を含有するアクリル酸又はその水溶液の中和熱を利用して行われることが好ましい。図2及び図4に代表的な中和熱による昇温及び気泡発生を示す概略フロー図を示す。
【0055】
アクリル酸の中和熱は13.9[kcal/モル](25℃)であり、水の比熱は1[cal/℃/g](25℃)、アクリル酸の比熱は0.66[cal/℃/g](25℃)であり、好ましくは、かかるアクリル酸の中和熱によってアクリル酸水溶液が昇温される。昇温幅は中和熱及び比熱からも予想できる。
【0056】
又、アクリル酸の中和熱13.9[kcal/モル](25℃)により昇温する場合、昇温の幅を制御するために、中和反応時に適宜加熱してもよく冷却してもよく、又、中和反応時に反応系を断熱にしてもよい。
【0057】
本発明の第1の方法及び第2の方法では、かかる昇温によって気体の溶解度が低下して、アクリル酸水溶液中に気泡が発生する。かかる機構(特に本発明を制限しない)で発生する気泡は、上記特許文献18〜35等に記載の従来の発泡方法に比べて、非常に細かく、更に界面活性剤及び/又は分散剤によって、更に安定化することで本発明の課題を解決すると推測される。
【0058】
又、中和熱を利用した昇温方法以外の昇温方法として、アクリル酸系単量体水溶液の加熱によって昇温を行う方法が挙げられ、加熱はジャケット等を通じてアクリル酸系単量体水溶液を加熱すればよい。
【0059】
図1に、本発明の第1の方法及び第2の方法を適用できる、アクリル酸系単量体水溶液の加熱による連続昇温方法の装置図(概略図)を示す。図1に示す装置は、アクリル酸系単量体水溶液の昇温による気泡発生方法の一手法において用いることができる装置である。
【0060】
又、図6図9は、本発明の実施態様に含まれる昇温による気体の溶解度低下及び気泡発生の実施態様の概略を示すフロー図である。これらの昇温方法は併用してもよく、その他方法でもよい。
【0061】
上記本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法は、吸水速度(例えばFSR)を向上させ、通液性(例えばSFC)を維持した吸水性樹脂粉末を提供する。よって、好ましくは後述のFSR及びSFCに優れた吸水性樹脂粉末の製造方法に提供され、他の物性の低下もない。好ましい物性は、後述の範囲であるが、特に吸水性樹脂粉末が生理食塩水流れ誘導性(SFC)が20[×10−7・cm・sec・g−1]以上で、吸水速度(FSR)が0.25[g/g/sec]以上である。更に好ましいFSR及びSFCの範囲は、後述の「(3−3)SFC(生理食塩水流れ誘導性)」及び「(3−5)FSR(吸水速度)」に記載した範囲である。
【0062】
(2−1)アクリル酸系単量体水溶液調製工程(溶解・分散工程)
アクリル酸系単量体水溶液調整工程は、気体を分散させたアクリル酸系単量体水溶液を得る工程である。以下、具体的に説明する。
【0063】
(2−1−1)単量体の組成
本発明で用いられるアクリル酸系単量体としては、アクリル酸が使用され、重合により吸水性樹脂粉末となり得るものであれば特に限定されないが、以下に示すようなものが挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等のアニオン性不飽和単量体及びその塩;メルカプト基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体等が挙げられる。
【0064】
ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末として、アクリル酸及び/又はその塩の使用量は、全モノマー成分(後述する内部架橋剤は除く)に対して50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である(上限は100モル%である)。尚、本発明でポリアクリル酸とは、ポリアクリル酸塩(特に一価塩)を含む概念である。
【0065】
単量体又はその重合体の中和率については、特に制限はないが、必要に応じて、重合後に重合ゲルが中和されてもよい。衛生用品等、人体に触れる可能性のある用途では、重合後の中和は必要とされない。この中和率は40〜90モル%が好ましく、50〜80モル%がより好ましく、60〜74モル%が更に好ましい。本発明の課題解決の観点からも、中和率が低いと吸水速度(例えば、FSR)が低下する傾向にあり、又、中和率が高いと表面架橋剤の反応性が低下して結果的に通液性(例えば、SFC)や加圧下吸水倍率(例えば、AAP)が低下する傾向にあるため、上記範囲内の中和率が好ましい。即ち、アクリル酸等の酸基単量体又はその重合体は、無加圧下吸水倍率(CRC)や吸水速度(FSR)の点から一部又は全部が塩型でもよく、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン類等の一価塩、特にアルカリ金属塩、更にナトリウム塩及び/又はカリウム塩が好ましく、中でもコスト面や物性面からナトリウム塩がより好ましい。
【0066】
上記重合に際して、必要に応じて内部架橋剤が用いられる。このような内部架橋剤としては、従来公知の内部架橋剤を用いることができる。具体的には、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの中から、反応性を考慮して、1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0067】
上記内部架橋剤の使用量は、所望する吸水性樹脂の物性により適宜決定することができるが、通常、上記アクリル酸系単量体の総量に対して0.001〜5モル%が好ましく、0.005〜2モル%がより好ましく、0.01〜1モル%が更に好ましい。内部架橋剤の使用量が0.001モル%未満では、得られる吸水性樹脂粉末の水可溶分の割合が多くなるため、加圧下における吸水量を充分に確保できないおそれがある。一方、内部架橋剤の使用量が5モル%を超えると、架橋密度が高くなり、得られる吸水性樹脂粉末の吸水量が不充分となるおそれがある。尚、内部架橋剤は、反応系に一括添加されても、分割添加されてもよい。
【0068】
(2−1−2)気泡の分散(気泡発生含有工程)
アクリル酸系単量体水溶液への気泡の分散方法は、界面活性剤及び/又は分散剤の存在下で、水溶液中に含まれる溶存ガスを発生させて、それらを効果的に微細な気泡(マイクロバブル又はナノバブル)として分散させる方法である。ここで、水溶液中にガスを溶存させるために、予め水溶液中にガス(例えば、不活性ガス)を導入してもよいし、しなくてもよい。
【0069】
アクリル酸系単量体水溶液への気泡の分散方法として具体的には、以下の方法(a)又は(b)の少なくとも1つの方法を用いる。
【0070】
(方法(a);アクリル酸系単量体水溶液の昇温による方法)
アクリル酸系単量体水溶液への気泡の分散方法として、単量体及び/又はその塩、必要に応じて内部架橋剤及び水を混合して調製されたアクリル酸系単量体水溶液を昇温する方法、又は、アクリル酸系単量体水溶液の調整段階で昇温して水溶液中の気体の溶解度を低下させる方法が挙げられる。
【0071】
調整後のアクリル酸系単量体水溶液の昇温を行う際は、該水溶液を配管又は容器からなる熱交換器を通す方法や、電子照射する方法等が挙げられる。昇温された単量体水溶液の温度は気体の溶解度が下がる高温であることが好ましく、具体的には、40℃〜該水溶液の沸点が好ましく、より好ましくは50〜100℃、更に好ましくは60〜98℃、最も好ましくは70〜95℃である。又、昇温にかかる時間は好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下、更に好ましくは10秒以下として、できるだけ多くの気泡を発生させるために単量体水溶液を急速に温めることが好ましい。
【0072】
アクリル酸系単量体水溶液の調整段階で昇温を行う際は、単量体の中和度を上げる(中和)工程における中和熱(13.9[kcal/モル](25℃))を一段中和又は多段階(2段中和)で利用する方法等が挙げられる。尚、中和は連続的に行ってもよく、バッチで行ってもよい。又、所定の中和率まで1段で行ってよく、多段階(例えば2段階)で行ってもよい。2段階中和は塩基を2段階に渡って投入するものであり、図4及び実施例2等に示されている。尚、昇温時に発生する気体量を更に多くするため、昇温前の単量体水溶液に予め気体を溶存又は分散させておいてもよい。
【0073】
(方法(b);アクリル酸系単量体水溶液の調整において、単量体水溶液に対して水溶性有機物を混合する方法)
アクリル酸系単量体水溶液への気泡の分散方法として、単量体及び/又はその塩、必要に応じて内部架橋剤及び水を混合して調製する際に、気体が溶存していない、又はほとんど溶存していない水溶性有機物、あるいは混合対象であるアクリル酸系単量体水溶液や、水に比べて気体が溶解していない水溶性有機物の混合を行い、気体の溶解度を低下させる方法が挙げられる。上記水溶性有機物としては、酸素の溶解度が好ましくは0.02[ml/ml]以下、より好ましくは0.01[ml/ml]以下、特に好ましくは0.005[ml/ml]以下の有機化合物が使用される。例えば、気体を含む(溶存する)アクリル酸系単量体水溶液に気体を含まない単量体(例えばアクリル酸)を混合することで、混合後の水溶液に溶存できない気体が発生し、その気体を微細な気泡として水溶液中に分散せしめることができる。
【0074】
方法(a)又は(b)によってアクリル酸系単量体水溶液へ導入される気泡の数平均直径(体積平均粒子径)は、50μm以下であることが好ましく、50nm(より好ましくは10μm)〜500μmがより好ましく、100nm(より好ましくは10μm)〜100μmが更に好ましい。
【0075】
気泡の平均直径が50nm未満の場合、表面積が大きくならないため、吸水速度の劣ったものになるおそれがある。また、平均直径が500μmを超える場合、得られる吸水性樹脂粉末の強度が脆いものとなるおそれがある。
【0076】
気体の水への溶解度は気体の種類や温度で決定され、例えば、25℃の水に対しては、炭酸ガス(1.05[ml/ml])、酸素(0.0285[ml/ml])、窒素(0.0147[ml/ml])となり、これら気体の溶解度は昇温や水溶性有機物(好ましくはアクリル酸)の混合によって低下され、溶解度の低下によって発生した気泡を界面活性剤や分散剤によってアクリル酸水溶液に分散させればよい。気泡の量は気体の種類や溶解度の低下方法(昇温幅や水溶性有機物の混合比)によって適宜決定されるが、発生した気泡によって単量体水溶液の体積が好ましくは1.01〜1.1倍、より好ましくは1.02〜1.08倍となるように、アクリル酸系単量体水溶液へ気泡を分散させることが好ましい。
【0077】
(2−1−3)気体
本発明に係る製造方法では、アクリル酸系単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させて気泡を分散させるが、別途、外部から気体を導入して気泡を分散させてもよい。即ち、溶解度を低下させて分散させる気泡や、更に必要により外部から導入する気体で分散させる気泡によって、アクリル酸系単量体水溶液に気泡を分散させればよい。その際、アクリル酸系単量体水溶液へ分散させる気泡を構成する気体としては、酸素、空気、窒素、炭酸ガス、オゾンやそれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスが使用される。更に好ましくは、重合性やコスト面から空気、窒素が特に好ましい。気体を導入する際又は導入後の圧力は常圧、加圧、減圧で適宜決定される。又、気体を外部から導入する場合の好ましい導入方法は、特願2009−292318号(出願日;2009年12月24日)及びその優先権出願PCT/JP2010/001004号に記載された方法であり、下記「(2−1−4)気体の導入方法」で示す。
【0078】
(2−1−4)必要により併用される気体の導入方法
本発明に係る製造方法では、アクリル酸系単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させて気泡を分散させるが、別途、外部からの気体導入を併用してもよい。この場合、外部から導入する気体とアクリル酸系単量体水溶液とを混合すればよく、アクリル酸系単量体水溶液へ気体を導入させる方法としては、スタティックミキサー方式、キャビテーション方式、ベンチュリー方式等の公知の方法を適宜利用することができ、それらの方法を併用してもよい。更に、気体の導入量を多くできるマイクロバブル(又はナノバブル)の導入が好適である。即ち、後述の実施例5、6のように、マイクロバブル又はナノバブルの導入を併用することが好ましい。
【0079】
尚、このようなガスの溶存及び/又は分散は、上述した気泡発生含有工程の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。好ましくは、予め外部からの気体導入後、特に好ましくは外部からマイクロバブルやナノバブルを導入した後に、本発明の溶解度を低下させる工程を経ることで、より安定的に気泡を導入することができる。
【0080】
本発明で使用又は併用できるマイクロバブルの導入方法としては、(a)単量体水溶液及び気体の加圧による方法、(b)単量体水溶液及び気体の旋回流の形成による方法、(c)細孔を通した気体の単量体水溶液への混合による方法から選ばれる少なくとも1種の方法が挙げられる。以下、各方法について説明する。
【0081】
(a)単量体水溶液及び気体の加圧
マイクロバブルの導入方法として、好ましくは、単量体水溶液及び気体の加圧による加圧溶解方法が用いられる。具体的には、液中に気体を好ましくは100〜1000kPa(絶対圧)、より好ましくは200〜400kPa、特に好ましくは250〜350kPa程度に絶対圧として加圧して溶解させ、減圧弁を通して液中にフラッシュ操作すると、減圧され過飽和となった気体が液中からマイクロバブルとなり放出される。気体の液中への溶解度はヘンリーの法則(p=HC)に従い、温度と圧力で決定される。かかる加圧によって、一旦溶解させた気泡を経て、分散させた気泡が得られる。
【0082】
又、上記加圧前又は加圧時の単量体水溶液及び気体の混合物に、必要により、更にせん断力を加えて、気泡の溶解や分散を制御することも好ましい。せん断力を加えるには高速回転のポンプ等が使用される。気体はせん断力で微分散され、更に加圧されることが好ましく、単量体水溶液及び気体にせん断力を加えた後、0.1〜1MPaに加圧し、更に後述の如く加圧開放される。
【0083】
(過飽和)
上記加圧溶解方法の一例として、アクリル酸系単量体水溶液を得る工程において、単量体水溶液に、気体を過飽和で含有させる方法が挙げられる。従って、上記して得られる、気体を溶解及び/又は分散させたアクリル酸系単量体水溶液における該気体成分の濃度は、該気体の所定温度における飽和溶解度に対して1.01〜10倍が好ましく、1.05〜5倍がより好ましく、1.06〜3倍が更に好ましい。
【0084】
(b)単量体水溶液及び気体の旋回流の形成
別のマイクロバブルの導入方法として、好ましくは、単量体水溶液及び気体の旋回流の形成が挙げられる。該方法は、気液二相流体を旋回させて出口(混合機の吐出口)で気泡を分散させる方法であり、ガス流量と液流量との比は1/7〜1/15が好ましく、旋回速度は毎秒10〜10000回転が好ましく、100〜1000回転が更に好ましい。
【0085】
旋回式微細気泡発生装置は、例えば、国際公開第00/69550号、日本国公開特許公報「特開2003−205228号公報」、同「特開2000−447号公報」、同「特開2006−116365号公報」等に例示されるが、特に限定されない。
【0086】
(c)細孔を通した気体の単量体水溶液への混合
マイクロバブルの導入方法として、各種多孔質物質、膜、フィルター等の細孔から気泡を生成させる方法であり、多孔質ガラス(NaO−CaO−Al−B−SiO系ガラス)等が使用され、好ましくは、0より高く0.03重量%以下等後述の範囲の界面活性剤が使用される。上記方法は、例えば、木下理化工業株式会社製木下式ガラスボールフィルター(フィルター粒子No.4)を用いて行うことができる。
【0087】
(マイクロバブル発生装置)
マイクロバブルを導入するために、モノマー水溶液と不活性ガスとを加圧や旋回流を発生させる機能を有するマイクロバブル発生装置を用いてもよい。この操作により、発生したマイクロバブルを、重合開始時までモノマー水溶液内に懸濁、保持させておくことができる。
【0088】
本発明に係る方法で用いることができるマイクロバブル発生装置は、特に限定はされず、市販されているものを使用することができる。市販品の一例を以下に例示する。
【0089】
OHRラインミキサー(株式会社OHR流体工学研究所)
M型マイクロバブル発生装置(株式会社ナノプラネット研究所)
業務用マイクロバブル発生装置SMB−450型(石丸商行有限会社)
マイクロバブル発生装置Mbelife(関西オートメ機器株式会社)
球体内蔵型気泡発生装置MBG型(西田鉄工株式会社)
ポンパレーター(株式会社帝国電機製作所)
マイクロバブルの発生器には入水口と出水口があり、この入水口に、ある一定以上の圧力で液体(水や単量体)を流入させた場合、内部では水の中に混ざっている気体が密度差により中心部に集められ、気体軸が形成される。これによってマイクロバブル発生器の内部には外周と中心部の間で圧力勾配が生じる。この時、気体軸の中心部はほぼ真空状態となり、一方では加圧され噴出しようとする水と、真空状態(超負圧の状態)の気体軸へと流入しようとする水とが衝突し、また旋回しながら気体軸がこの間を通り抜ける時に気体はせん断され微細化してマイクロバブルとなるのである。
【0090】
本発明において、マイクロバブル発生装置により発生したマイクロバブルの数平均直径は、50nm(より好ましくは10μm)〜500μmが好ましく、100nm(より好ましくは10μm)〜100μmがより好ましい。気泡の平均直径が50nm未満の場合、表面積が大きくならないため、吸水速度の劣ったものになるおそれがある。また、平均直径が500μmを超える場合、得られる吸水性樹脂粉末の強度が脆いものとなるおそれがある。
【0091】
又、マイクロバブル発生装置の処理量は、所望する吸水性樹脂粉末の物性等によって、適宜設定することができるが、モノマー水溶液の流速を大きくすることが望ましい。該モノマー水溶液の流速としては、好ましくは500[kg/hr]であり、1000[kg/hr]がより好ましく、2000[kg/hr]が更に好ましい。尚、かかる時間あたり生産量はマイクロバブル発生装置の使用に限らず、工業的な巨大スケールの生産として、本発明の製造方法が一般に好適に適用できる。上限は適宜決定されるが、好ましくは上記範囲(例えば、300ton/hr以下)である。よって本発明の製造方法は好ましくは連続製造、特に前記生産量の連続製造に適用できる。
【0092】
(その他必要により併用される方法)
本発明に係る製造方法では、上述した方法(a)〜(c)やマイクロバブル発生装置に加えて、下記(1)〜(8)の方法を使用ないし併用することができる。
【0093】
(1)スタティックミキサー方式
可動部分がなく、流体が、管内部に固定されたエレメントを通過する際に混合されるスタティックミキサーや、円管内部に螺旋流誘導部と管内部に取り付けられたキノコ状の突起により旋回状に流れる気液2相流を破砕してマイクロバブルが発生されるOHRミキサーが挙げられる。
【0094】
(2)キャビテーション方式
ガス分散器内に意図的にキャビテーションが発生するように流路を変形させてマイクロバブルを発生させる方法が挙げられる。
【0095】
(3)遠心ポンプと旋回流式マイクロバブル発生器の組み合わせ
ポンプによる渦流攪拌作用とポンプでの昇圧により、液中に気体を加圧溶解させ、溶解しきれない気体を旋回流式マイクロバブル発生器でマイクロ化させる方法が挙げられる。
【0096】
(4)ベンチュリー方式
ストロー部(絞り)に気液を同時に流すと液流速の急激な変化により生成した衝撃波により大気泡が発破させ、マイクロバブルが発生する方法が挙げられる。
【0097】
(5)回転式
攪拌翼を高速回転され、ガスを自給させマイクロバブルを発生させる方法が挙げられる。
【0098】
(6)超音波式
超音波周波数、圧力振幅等を適宜設定してマイクロバブルを発生させる方法が挙げられる。
【0099】
(7)相変化式
気体(窒素ガス)と水蒸気との混合ガスを液中に細いノズルから吹き込むと、水蒸気が凝集し、凝集しない気体(窒素ガス)の気泡が残る。
【0100】
(8)電解分解法
水の電気分解でマイクロオーダーの気泡を発生させる方法が挙げられる。
【0101】
これらの中でも、効果の面から好ましくは、更にアクリル酸系単量体水溶液を得る工程で単量体水溶液及び気体からなる気液がせん断処理されてなり、せん断方法としては、(3)遠心ポンプと旋回流式マイクロバブル発生器の組み合わせ、又は、OHRミキサーに代表されるせん断と旋回流を併せ持ったスタティックミキサーが使用される。
【0102】
マイクロバブル発生には、上記(a)〜(c)や上記(1)〜(8)の1種以上の手法が適用でき、好ましくは(a)又は(b)、更に好ましくは(a)が適用され、必要によりマイクロバブル発生装置によるせん断力を適用してもよい。
【0103】
(加圧開放時間)
気泡含有方法として上記(a)の加圧溶解方法やマイクロバブル発生装置では、気体と単量体水溶液とは大気圧を超えて加圧(好ましくは、上記(a)に記載の範囲、絶対圧として0.1〜1MPa)された後、大気圧(或いは減圧、特に−10mmHg以内の微減圧)に開放されることで、気泡の量や大きさが制御される。かかる圧力、温度や開放時間、特に開放時間を制御することで、気泡を制御することが好ましい。かかる制御で目的とする高吸水速度で通液性や耐衝撃性の高い吸水性樹脂を得ることができる。
【0104】
かかる好適な気泡含有方法としては、上記アクリル酸やその塩、溶媒、架橋剤、重合開始剤を混合して単量体水溶液を調整する際に、上記(a)〜(c)や各種マイクロバブル発生装置中で加圧状態、即ち、配管内や装置内で大気圧を超える圧力とし、当該単量体水溶液を重合機へ供給し、重合開始する際に大気圧とすればよい。
【0105】
即ち、各種マイクロバブル発生機構において、圧力開放により分散された気泡の膨張、合一が起こり、その程度により最終的に重合ゲルに残留する気泡の量、大きさが変化する。よって、加圧した単量体水溶液を大気圧へ開放してから重合開始するまでの時間をT1(秒)とすると、供給反応液が圧力開放された時からゲル化し、気泡が固定されるまでの時間を規定することが重要であり、温度や開始剤等を適宜制御することで、下記のように制御することが好ましい。即ち、0<T1<Tが好ましく、0<T1<1/2Tがより好ましい。
【0106】
ここで、T1は、大気圧開放から重合開始までの時間である。又、Tは、大気圧開放した時点から、気体を単量体水溶液に溶解又は分散させる前の値にカオリン濁度が戻るまでの時間とする。
【0107】
T1は、単量体水溶液の白濁(重合物の生成由来)又は重合熱での温度上昇(1℃以上)で規定され、又、Tは、後記する100mlのメスシリンダーを用いて、開始剤を含まない単量体水溶液に気泡を分散させ、大気圧下に常温で静置し、気泡由来の白濁が消失するまでの時間(T)で規定できる。尚、ここで、白濁は通常、可視光の波長以上の大きな泡由来であり、ナノバブルの含有は白濁に実質的に影響しないことは下記濁度(カオリン濁度)でも述べる。
【0108】
T1の下限は適宜決定されるが、好ましくは後述の脱泡時間(好ましくは5秒以上、更に好ましくは10〜3600秒)であり、上限は界面活性剤の量を含めた単量体組成や気泡の含有方法で決定される。
【0109】
以上、必要により併用される外部から気体を導入する方法(工程)について説明したが、以下、本発明の溶解度を低下させることによる気泡発生工程について更に説明する。
【0110】
(2−1−5)溶存気体
本発明においては、アクリル酸系単量体水溶液に対して、必要により外部から気体を導入することができるが、本発明は、気体の溶解度を低下させる工程によって溶存気体が気泡となることが重要である。
【0111】
本発明において、アクリル酸系単量体水溶液の昇温や水溶性有機物の混合によって気体の溶解度が低下して、該単量体水溶液中に気泡が分散又は溶解される。このため、気体の溶解度を低下させる操作を行う前における気体の溶存気体は多いほうが好ましい。気体の溶解度を低下させる操作を行う前における、単量体水溶液中の溶存気体は1ppmよりも多いことが好ましく、より好ましくは2〜50,000ppm、更に好ましくは3〜30,000ppm、最も好ましくは3〜10,000ppmである。これら気体の量は、気体の種類、温度、アクリル酸系単量体水溶液の組成等で適宜決定される。
【0112】
(2−1−6)界面活性剤・分散剤
本発明において、界面活性剤及び/又は分散剤を用いることで気泡を安定的に懸濁させることができる。又、界面活性剤及び/又は分散剤の種類や量を適宜調整することにより、所望の物性を有する吸水性樹脂粉末を得ることができる。ここで、好ましくは、界面活性剤は非高分子界面活性剤であり、分散剤は高分子分散剤である。
【0113】
界面活性剤及び/又は分散剤の使用量は、種類に応じて適宜決定されるが、好ましくは得られる吸水性樹脂粉末の表面張力が60[mN/m]以上、更には後述の「(3−7)表面張力」で示す範囲となるような量であることが好ましい。
【0114】
得られる吸水性樹脂粉末の表面張力が60[mN/m]未満では紙オムツでの使用時に戻り量が増加する傾向にあり、好ましくない。表面張力を低下させないためには、吸水性樹脂粉末やその単量体と反応性又は重合性の界面活性剤、例えば、不飽和重合性基(特にα、β−不飽和2重結合)や反応性基(ヒドロキシル基やアミノ基)を有する界面活性剤の使用も好適であり、又、水への溶解度の高い親水性界面活性剤の使用(例えば、HLBが1〜18、特に好ましくは8〜15)も好適である。
【0115】
(界面活性剤)
本発明において用いられる界面活性剤としては、その種類は特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、有機金属界面活性剤等が挙げられ、具体的には、前記特許文献28(国際公開第97/017397号)又は特許文献30(米国特許第6107358号)に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0116】
これら界面活性剤の使用量は、使用する界面活性剤の種類や目的とする物性(特に吸水速度や表面張力)にもよるが、代表的には、使用されるモノマーに対して、0を超え2重量%以下、好ましくは0.03重量%以下、より好ましくは0を超え0.015重量%以下、更に好ましくは0を超え0.01重量%以下、最も好ましくは0を超え0.008重量%以下である。上記界面活性剤の使用量は吸水性樹脂粉末にも適用でき、更に必要により後述の「(2−7)表面被覆工程」に記載の界面活性剤の被覆を行った後に得られる最終製品としての吸水性樹脂粉末にも適用することができる。
【0117】
上記界面活性剤が多すぎる場合、発泡の制御が困難である場合もあり、また、得られる吸水性樹脂粉末の表面張力を過度に低下させ、その結果として戻り量が増加してしまうため、紙オムツでの実使用の際に好ましくない。逆に、極少量の界面活性剤は、得られる吸水性樹脂粉末の搬送性や耐ダメージ性を向上させ、その結果として表面架橋後や粉体輸送後の吸水性樹脂粉末の物性を向上させるため、好ましくは0ppmより多い量の界面活性剤、より好ましくは0.1ppm以上、更に好ましくは1ppm以上で使用される。
【0118】
本発明において、使用できる界面活性剤としては、特許文献28及び特許文献30に例示の界面活性剤を含め特に限定されないが、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が各種使用でき、それらは吸水性樹脂粉末の単量体との重合性若しくは反応性基を持っていてもよい。
【0119】
非イオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリアルキレングリコール脂肪酸エステル;ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド等のグリセリン脂肪酸エステルに代表される非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0120】
又、陰イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸塩;アルキルリン酸カリウム等のリン酸エステル塩に代表される陰イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0121】
又、陽イオン性界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩に代表される陽イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0122】
更に、シリコーン系界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性のシリコーン系界面活性剤、更には、ポリオキシアルキレン変性シリコーン系界面活性剤が挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンのブロック或いはランダム共重合体変性ジメシルポリシロキサン、末端に炭素数1〜12のアルキル基を有するポリオキシエチレンで変性されたジメチルポリシロキサン、末端に炭素数1〜12のアルキル基を有するポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンのブロック或いはランダム共重合体で変性されたジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンの末端及び/又は分子内部にアミノ基、エポキシ基等を有したジメチルポリシロキサン誘導体の上記ポリオキシアルキレン変性物等が挙げられる。好ましくは、ポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンのブロック或いはランダム共重合体変性ジメシルポリシロキサンであり、更に好ましくは、工業的に安価に入手し得ると言う点でポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサンである。
【0123】
これら界面活性剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、又、後述の分散剤(特に、高分子分散剤)と併用してもよい。これら界面活性剤の中でも、効果の面から、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤或いはシリコーン系界面活性剤、更には、非イオン性界面活性剤或いはシリコーン系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0124】
(分散剤)
本発明に係る製造方法では、重合工程前の調整中又は調整後のアクリル酸系単量体水溶液が分散剤を含むことが好ましく、分散剤は、吸水性を示す親水性高分子分散剤であることが好ましく、更に好ましくは水溶性高分子分散剤であり、その重量平均分子量は、分散剤の種類で適宜決定されるが、好ましくは500〜1,000万、更に好ましくは5,000〜500万、特に好ましくは1万〜300万程度である。
【0125】
具体的な分散剤については、その種類は特に限定されないが、例えば、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(ナトリウム)、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子が挙げられ、これらの中では本発明の効果の面から、澱粉、セルロース、及びPVAから選ばれる水溶性高分子分散剤が好ましい。
【0126】
分散剤の使用量は、単量体100重量部に対して好ましくは0重量部を超え50重量部以下、より好ましくは0.01〜20重量部であり、更に好ましくは0.05〜10重量部であり、最も好ましくは0.1〜5重量部である。
【0127】
かかる分散剤量は、水溶性高分子にかわって用いられる、親水性高分子分散剤としての吸水性樹脂粉末にも同様に適用される。分散剤が多すぎる場合、発泡の制御が困難である場合もあり、又、得られる吸水性樹脂粉末の吸収能力等を低下させて紙オムツでの実使用の際に好ましくない。
【0128】
(2−1−7)重合禁止剤
本発明に係る方法では、重合時に好ましくは重合禁止剤を含む。重合禁止剤としては、国際公開第2008/096713号に例示のN−オキシキシル化合物、マンガン化合物、置換フェノール化合物が挙げられ、好ましくは置換フェノール類、特にメトキシフェノール類が挙げられる。
【0129】
好ましく使用できるメトキシフェノール類としては、具体的には、o,m,p−メトキシフェノールや、更にそれらにメチル基、t−ブチル基、水酸基等の1個又は2個以上の置換基を有するメトキシフェノール類が例示されるが、本発明において、特に好ましくはp−メトキシフェノールである。メトキシフェノール類の含有量は、10〜200ppmであればよいが、好ましくは5〜160ppm、より好ましくは10〜160ppm、更に好ましくは10〜100ppm、特に好ましくは10〜80ppm、最も好ましくは10〜70ppmである。
【0130】
p−メトキシフェノールの含有量が200ppmを越える場合、得られた吸水性樹脂粉末の着色(黄ばみ/黄変)の問題が発生する。又、p−メトキシフェノールの含有量が10ppm未満の場合、特に5ppm未満の場合、即ち、蒸留等の精製によって重合禁止剤であるp−メトキシフェノールを除去した場合、意図的に重合を開始させる前に重合が起きる危険があるのみならず、得られた吸水性樹脂粉末の耐候性(後述)も低下するので好ましくない。即ち、本発明の課題(特に着色防止、耐ダメージ性としての耐候性)をより解決するため、単量体水溶液中に好ましくは10〜200ppm、更に好ましくは上記範囲内のp−メトキシフェノールを含むことが好ましい。
【0131】
(2−1−8)従来の発泡重合
本発明の第1〜第3の方法では、かかる気体の溶解度の低下、具体的には、昇温、水溶性有機物の混合によって気体の溶解度が低下して、アクリル酸系単量体水溶液中に気泡が発生する。しかしながら、上記特許文献18〜35等に記載の従来の発泡方法と比べて、本発明では、高価な原料(発泡剤や多量の界面活性剤)や特殊な装置もあえて必要としない。又、後述の「〔3〕ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の物性」でも記載しているが、本発明で得られる吸水性樹脂粉末は、非特許文献1のTable5.6で開示されている市販の吸水性樹脂(詳細な製造方法は開示されておらず不明)のように、過度の嵩比重や見かけ密度の低下がない。
【0132】
更に、本発明では、かかる機構(特に本発明を制限しない)で発生する気泡は非常に細かく、更に界面活性剤及び/又は分散剤によって、更に安定化することで、高吸水速度で更に通液性にも優れた白色の吸水性樹脂粉末を提供することができる。これに対して、特許文献1、3に記載の単量体水溶液の単なる不活性ガスによる脱気(脱酸素)では、重合時の気泡が安定化せず、本発明の課題が解決されない。
【0133】
尚、本発明において、気体の溶解度を低下させるとは、同一気体の溶解度を低下させる操作を指し、溶存酸素を除去する脱気操作(酸素を不活性ガスに置換)とは異なる概念である。本発明では、界面活性剤及び/又は分散剤の存在下、水溶液の加熱や、水溶液への貧溶媒(好ましくはアクリル酸)の混合によって、溶存気体の溶解度を低下させて気泡を発生させて分散含有させるという全く新しい発泡方法である。
【0134】
もちろん、本発明では重合の促進のために、図5〜9に示すように、重合時に脱気(溶存酸素と不活性ガスとの置換)を行ってもよく、その場合、溶存酸素は好ましくは1ppm以下、更に好ましくは0.5ppm以下とされる。又、上記「(2−1−3)気体」に示した、気体の導入工程を別途設けてもよい。
【0135】
又、特許文献35(日本国公開特許公報「特開平1−318021号」)のように単量体のスラリー(アクリル酸塩の水分散液)での重合は物性(吸水倍率、水可溶分、残存モノマー等)が低下することがある。よって、好ましくは、上記モノマーが酸基含有単量体の場合、その中和率は、モノマー水溶液中に中和塩が析出しない程度である。即ち、アクリル酸系単量体の水分散液でなく、本発明で好ましくは、アクリル酸系単量体水溶液が重合される。中和塩の析出は、中和塩の水に対する溶解度がモノマー濃度、中和率、温度、圧力及び中和塩基等、必要により使用される分散剤(界面活性剤、他の単量体、水溶性高分子)等により異なるため、適宜決定され、それらの条件に依存する。
【0136】
(2−2)脱泡工程
本発明では好ましくは脱泡工程を更に含む。脱泡工程を含むことで、単量体から大きな気泡が順次除去され、過度の発泡や嵩比重の低下を抑制する。脱泡時間としては5秒以上が好ましく、10秒〜60分がより好ましく、30秒〜30分が更に好ましく、60秒〜20分が特に好ましい。目的とする細かい泡を単量体水溶液に残すように調整される。
【0137】
脱泡工程後の単量体水溶液における気泡の大きさは、体積平均径で好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは20μm以下、特に好ましくは5μm以下である。又、気泡分散工程前における単量体水溶液に対する、脱泡工程後の単量体水溶液の膨張倍率は、好ましくは1.1倍以下、より好ましくは1.05以下、更に好ましくは1.02以下、特に好ましくは1.01以下であり、通常、下限は1を超える。
【0138】
本発明で用いられる脱泡工程は公知の技術を採用すればよく、米国特許第6667372号明細書に記載の方法や、株式会社テクノシステム出版「泡のエンジニアリング初版」759〜774頁に記載の方法等がある。
【0139】
脱泡工程は、循環式タンクへ循環気流を含む単量体水溶液を循環させることによって行なうことが好ましく、脱泡工程において、循環式タンクの上部空間が酸素を1容積%以上含むことが好ましい。又、気流を含む単量体水溶液を循環させる工程、循環ラインから少なくとも一部の単量体水溶液を中和工程又は中和工程を経て重合工程に供給し、重合させる。その他、単量体水溶液を、重合開始まで、配管中や重合装置中で一定時間待機させることで、気泡を集積させて脱泡をしてもよい。
【0140】
具体的には、上部が開放された重合装置で、気泡を含有した単量体水溶液を投入後、大きな泡を中心に脱泡後、得られた細かい気泡を優先的に含有する単量体水溶液に対して、所定時間後に重合開始剤の添加や紫外線の照射を行ってもよい。過度に大きな泡を含む単量体水溶液を用いる場合、得られた吸水性樹脂粉末は鱗片状となったり、嵩比重が過度に低下(例えば0.5[g/cm]以下)したりするうえに、通液性や耐衝撃性も低下する。
【0141】
これら何れの脱泡方法を用いてもよいが、大きな泡を中心に脱泡後、細かい気泡を優先的に含有する単量体水溶液を得ることが目的であり、完全なる脱泡は本発明の意図するところではない。このようにして、脱泡工程を経て得られた吸水性樹脂粉末は細かく均一な孔を有する多孔質重合体となる。
【0142】
上記脱泡工程を経て生成したマイクロバブル(細かい気泡)は、濃縮したイオン類が気泡界面に作用し、静電気の反発力を生じ、気体の散逸を防止することで行われる。自己加圧効果や断熱圧縮効果により、マイクロバブルを圧壊させて、ナノバブルを生成させてもよい。
【0143】
マイクロバブルの上昇速度及び内部圧力はストークスの式及びラプラスの式(Pb=Pf+2σ/r)によってそれぞれ計算される。その具体例として、気泡径が100μmの場合、上昇速度が5400[μm/s]であり、内部圧力1.04×10Paである。又、気泡径が10μmの場合には、上昇速度が54[μm/s]であり、内部圧力が1.31×10Pa、さらに、気泡径1μmの場合では、上昇速度が0.54[μm/s]で内部圧力が3.95×10Paである。
【0144】
気泡発生含有工程前における単量体水溶液の体積に対する、重合工程における単量体水溶液の体積の膨張倍率が、好ましくは1.1倍以下、より好ましくは1.05倍以下、更に好ましくは1.02倍以下、特に好ましくは1.01倍以下、最も好ましくは1.00倍(好ましくは1を超える)である。従来、多量の気泡を分散させて重合する方法は知られていたが、本発明では上記手法を用いることで、過度に気泡を分散させることなく重合するので、嵩比重の低下も殆どない。
【0145】
即ち、重合工程で単量体水溶液中に体積平均径100μm以下のマイクロバブル又はナノバブルを含有する。含有するマイクロバブル又はナノバブルの体積平均径は、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、更に好ましくは20μm以下であり、特に好ましくは5μm以下である。
【0146】
気泡の大きさの測定方法としては、(a)レーザー回折散乱法(別称;静的光散乱法)、(b)動的光散乱法、(c)電気的検知帯法(通称;コールタカンター法)、(d)パーティクルカウンター法(光り散乱方式、光遮断方式)、(e)カメラ撮影による可視化法、(f)レーザー光とCCDカメラによる干渉画像法等が挙げられる。
【0147】
個数の測定には、(c)電気的検知帯法や(d)パーティクルカウンター法で可能であり、ナノオーダーの測定には(b)動的光散乱法、(a)レーザー回折散乱法(別称;静的光散乱法)から選ばれる。これら測定方法は適宜使用されるが、好ましくは、光散乱法、特に動的光散乱法が用いられる。
【0148】
(2−3)重合工程
重合は、常圧、減圧、又は加圧下で行われ、好ましくは常圧(ないしその近傍、通常±10mmHg)で行われる。又、重合を促進し物性を向上させるため、図7図11に示した概略フロー図に基づいて、重合時に必要により溶存酸素の脱気工程(例えば、不活性ガスでの置換工程)を設けてもよい。
【0149】
(重合開始剤)
本発明において使用される重合開始剤は、重合形態によって適宜選択され、特に限定されないが、例えば、光分解型重合開始剤、熱分解型重合開始剤、レドックス系重合開始剤等を例示することができる。
【0150】
上記光分解型重合開始剤として、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等を例示することができる。また、上記熱分解型重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩(過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム)、過酸化物(過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド)、アゾ化合物(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド等)等が挙げられる。更に、上記レドックス系重合開始剤としては、例えば、上記過硫酸塩や過酸化物にL−アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウム等の還元性化合物を併用し、両者を組み合わせた系を例示することができる。又、上記光分解型開始剤と熱分解型重合開始剤とを併用することも、好ましい態様として挙げることができる。これらの重合開始剤の中でも、熱分解によってNを発生するアゾ系の重合開始剤を使用して発泡を促進してもよい。
【0151】
これらの重合開始剤の使用量は、上記単量体に対して、0.0001〜1モル%が好ましく、0.0005〜0.5モル%がより好ましい。重合開始剤の使用量が1モル%を超える場合、吸水性樹脂の色調に悪影響を及ぼすおそれがあるため、好ましくない。また、重合開始剤の使用量が0.0001モル%未満の場合、残存モノマー量を増加させるおそれがあるため、好ましくない。
【0152】
(添加剤等)
上記重合に際しては、更に必要に応じて、重合前又は重合途中の反応系に、次亜燐酸(塩)等の連鎖移動剤、キレート剤等を添加してもよい。
【0153】
(重合方法)
本発明においては、上記単量体水溶液を重合するに際して、得られる吸水性樹脂の通液性や吸水速度といった吸水性樹脂の物性や重合制御の容易性等の観点から、通常、水溶液重合が採用され、好ましくはニーダー重合又はベルト重合、より好ましくは連続水溶液重合、更に好ましくは高濃度連続水溶液重合、特に好ましくは高濃度高温開始連続水溶液重合が採用される。
【0154】
上記重合法は、吸水性樹脂の1ライン当りの生産量が多い巨大スケールでの製造装置、即ち、連続重合及び連続製造(乾燥工程〜表面架橋工程)において好ましく採用される。尚、上記生産量としては、0.5[t/hr]が好ましく、1[t/hr]がより好ましく、5[t/hr]が更に好ましく、10[t/hr]が特に好ましい。
【0155】
上記水溶液重合の好ましい形態として、連続ベルト重合(米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等に開示)、連続ニーダー重合、バッチニーダー重合(米国特許第6987151号、同第6710141号等に開示)等が挙げられる。これらの水溶液重合では、高生産性で吸水性樹脂を生産することができる。
【0156】
上記水溶液重合においては、重合開始温度は0℃以上であり、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上(上限は沸点)とする高温開始連続水溶液重合、単量体濃度を好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは45重量%以上(上限は飽和濃度)とする高濃度連続水溶液重合、又は、これらを組み合わせた高濃度・高温開始連続水溶液重合が、好ましい一例として例示できる。このような高濃度や高温での重合であっても、本発明では単量体の安定性に優れ、又、白色度の高い吸水性樹脂が得られるため、かかる条件でより顕著に効果を発揮する。このような高温開始重合は、米国特許第6906159号及び同第7091253号等に例示されるが、本発明の方法では、重合前の単量体の安定性にも優れるので、工業的なスケールでの生産が容易である。
【0157】
又、上記重合に際して、重合開始時間(重合開始剤の添加後から重合が開始するまでの時間)は単量体水溶液中の気泡の減少を抑制する観点から、0を超えて300秒以内が好ましく、1〜240秒がより好ましい。上記重合開始時間が300秒を超えると吸水性樹脂粉末中への気泡の導入量が少なくなり本発明の効果が発揮できなくなるおそれがある。
【0158】
(特に好適な発泡重合条件)
重合方法としては、噴霧重合、液滴重合、水溶液重合又は逆相懸濁重合等広く適用することができるが、課題の解決に特に好適な重合方法としては、水溶液重合、中でも連続ベルト重合又は連続ニーダー重合が挙げられる。
【0159】
又、水溶液重合では下記温度及び濃度で行うことが好ましい。発泡を促進させるため、重合は高温開始が好ましく、具体的には、重合工程での重合開始温度が40℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上、最も好ましくは80℃以上である。また、発泡を促進させるため、重合時の最高到達温度は高いことが好ましく、具体的には、重合工程での重合時の最高到達温度が好ましくは100℃以上、より好ましくは100〜130℃、更に好ましくは105〜120℃である。
【0160】
重合時における単量体水溶液の濃度についても、特に制限はないが、20重量%〜飽和濃度の範囲が好ましく、25〜80重量%の範囲がより好ましく、30〜70重量%の範囲が更に好ましい。重合時における単量体濃度が20重量%未満の場合、生産性が低くなり好ましくない。尚、前述のように特許文献35(特開平1−318021号)のように単量体のスラリー(アクリル酸塩の水分散液)での重合は物性が低下することがあるため、好ましくは飽和濃度以下で重合が行われる。
【0161】
又、発泡を促進させるため、重合工程でアクリル酸系単量体水溶液の濃度は高いほど好ましく、具体的には、40重量%以上が好ましく、45重量%以上がより好ましく、50重量%以上が更に好ましい(上限は通常90重量%以下であり、好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。)。かかる固形分は重合後の含水ゲル状架橋重合体にも適用される。尚、重合時における単量体濃度が40重量%以上、更には45重量%以上という条件においては、微細な気泡の安定性が高まるため、特に、本発明の優位性がある。
【0162】
(2−4)ゲル細粒化工程
本発明では、好ましくは重合時又は重合後にゲルが細粒化(別称;ゲル粉砕)される。上記の発泡ゲルをゲル細粒化、特に混練によってゲル細粒化することで、吸水速度と通液性の両立が図れ、更に耐衝撃性も向上する。即ち、本発明の課題解決のため、ゲル粉砕が不要な逆相懸濁重合を採用するよりも、水溶液重合、特にベルト重合やニーダー重合を行い、重合中(特にニーダー重合)又は重合後(特にベルト重合、更には必要によりニーダー重合)にゲル粉砕を行うことが好ましい。
【0163】
本発明で使用することができるゲル粉砕装置としては、特に限定されず、バッチ型又は連続型の双腕型ニーダー等、複数の回転撹拌翼を備えたゲル粉砕機、1軸押出機、2軸押出機、ミートチョッパー等を挙げることができる。中でも、先端に多孔板を有するスクリュー型押出機が好ましく、例えば、日本国公開特許公報「特開2000−63527号公報」に開示されたスクリュー型押出機が挙げられる。
【0164】
細粒化後のゲル粒子径としては、重量平均粒子径(篩分級で規定)で0.5〜3mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.6〜2mmの範囲、更に好ましくは0.8〜1.5mmの範囲である。又、5mm以上の粗粒ゲルの含有量は、10重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。
【0165】
ゲル粉砕前の含水ゲルの温度(ゲル温度)は、粒度制御や物性の観点から、60〜120℃が好ましく、65〜110℃がより好ましい。上記ゲル温度が60℃未満の場合、含水ゲルの特性上、硬度が増すため、粉砕時に粒子形状や粒度分布の制御が困難になるおそれがある。又、上記ゲル温度が120℃を超える場合、逆に含水ゲルの軟度が増し、粒子形状や粒度分布の制御が困難になるおそれがある。
【0166】
かかるゲル温度の制御方法は、重合温度や重合後の加熱或いは冷却等で適宜制御することができる。即ち、本発明では好ましくは、重合工程が連続ニーダー重合で行われ、重合時に含水ゲル状架橋重合体が細粒化される。又、本発明では好ましくは、重合工程が連続ベルト重合で行われ、重合後に含水ゲル状架橋重合体が細粒化される。
【0167】
好ましくは、日本特許出願「特願2010−088993号」(出願日;2010年4月7日)に記載のゲル粉砕、特にゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]でのゲル粉砕、及び/又は、同出願に記載されている含水ゲル状架橋重合体の水可溶分の重量平均分子量を10,000〜500,000[Da]増加させるゲル粉砕が好ましく適用される。本発明において、含水ゲルをゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(GGE)は、上限値としては、60[J/g]以下が好ましく、50[J/g]以下がより好ましく、40[J/g]以下が更に好ましい。又、下限値としては、18[J/g]以上が好ましく、20[J/g]以上がより好ましく、25[J/g]以上が更に好ましい。日本特許出願「特願2010−088993号」及びその優先権出願(外国出願を含む)に記載のゲル粉砕方法や水可溶分の重量平均分子量の増加方法は参照として本願に組み込まれる。
【0168】
ここで、特願2010−088993号における「ゲル粉砕エネルギー」とは、含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕する際、ゲル粉砕装置が必要とする単位重量当たりのエネルギーをいう。以下、「GGE」と表記する。尚、「GGE」は、Gel Grinding Energyの略称である。GGEは、ゲル粉砕装置が三相交流電力で駆動する場合、以下の数1によって算出される。
【0169】
【数1】
【0170】
尚、電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、1秒間にゲル粉砕装置に投入される含水ゲル状架橋重合体の重量は[g/s]である。又、「力率」及び「モーター効率」は、装置の稼動条件によって変化する装置固有の値であり、0〜1までの値をとる。これらの値は、装置メーカー等への問い合わせ等で知ることができる。
【0171】
ゲル粉砕装置が単相交流電力で駆動する場合のGGEは、上記数1中の「√3」を「1」に変更して算出することができる。ゲル粉砕エネルギーの調整法は、特願2010−088993号の段落[0079]〜[0089]等に記載され、先端に多孔板を有するスクリュー押出機、ゲル粉砕前の含水ゲル状架橋重合体の温度が60〜120℃、ゲル粉砕前の含水ゲル状架橋重合体の無加圧下吸水倍率(CRC)が10〜32[g/g]、ゲル粉砕前の含水ゲル状架橋重合体の温度が60〜120℃等、特願2010−088993号に開示の方法が好ましく適用される。
【0172】
また、同出願の段落[0092]〜[0096]等に記載されているように、ゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]での制御を達成手段のひとつとして、ゲル粉砕後における含水ゲル状架橋重合体の水可溶分の増加量は、5重量%以下が好ましく、4重量%以下がより好ましく、3重量%以下が更に好ましい。
【0173】
(2−5)加熱乾燥工程
上記で得られた含水ゲル状架橋重合体は、重合時又は重合後に細分化される。重合時の細分化にはニーダーや逆相懸濁重合が用いられ、重合後の細粒化にはミートチョパー等が使用される。
【0174】
含水ゲルを細粒化しない場合、本発明の目的の吸水性樹脂粉末が得られないことがあるため、含水ゲルは重合時又は重合後に細分化される。細分化後の含水ゲルは下記に乾燥工程を経て、好ましくは表面架橋工程に供される。特許文献19、22のようなシート状吸水性樹脂フォームでは本願の課題を解決しないため、本発明では、乾燥前又は乾燥後の粉砕で粉末状の吸水性樹脂を得る。
【0175】
上記含水ゲル状架橋重合体は、乾燥され、乾燥重合体とされる。その乾燥減量(粉末又は粒子1gを180℃で3時間加熱)から求められる樹脂固形分は、粉末として好ましくは80重量%以上、より好ましくは85〜99重量%、更に好ましくは90〜98重量%、特に好ましくは92〜97重量%の範囲内に調整され、乾燥重合体が得られる。乾燥温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは100〜300℃、より好ましくは150〜250℃とすればよい。乾燥工程で得られた凝集物はそのまま粉砕工程に供給されてもよい。本発明では、重合工程で気泡(特に独立気泡)が含有した含水ゲルが得られ、かかる気泡を含有する含水ゲルは、高温乾燥時に発泡がより促進するため好ましい。乾燥時間や乾燥装置は適宜決定されるが、例えば、好ましくは1分〜5時間であり、より好ましくは5分〜1時間である。通気バンド乾燥、攪拌乾燥、共沸脱水による乾燥の1種又は2種以上を使用することができる。
【0176】
(粒度)
表面架橋前の吸水性樹脂粉末の重量平均粒子径(D50)は、本発明の課題解決のため、吸水速度や通液性、加圧下吸水倍率の面からも、粉末として好ましくは200〜600μm、より好ましくは200〜550μm、更に好ましくは250〜500μm、特に好ましくは350〜450μmに調整される。又、通液性等の面からJIS標準篩で150μm未満の粒子が少ないほどよく、通常0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、特に好ましくは0〜1重量%に調整される。かかる粒度制御は、重合時又はゲル粉砕や乾燥後の粉砕、分級時に行えるが、特に乾燥後の分級時に行うことが好ましい。
【0177】
吸水性樹脂粉末の形状としては、球状やその凝集物でも、重合ゲル又は乾燥重合体に対して粉砕工程を経て得られた不定形破砕状(例えば、図3図12図13)でもよいが、吸水速度の面から好ましくは不定形破砕状又はその造粒物である。
【0178】
さらに、吸水速度などの面からJIS標準篩で850μm以上(さらには710μm以上)の粒子が少ないほどよく、通常0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、特に好ましくは0〜1重量%に調整される。また、本発明の課題をより解決するため、吸水速度や通液性、加圧下吸水倍率の面からも、本発明では、好ましくは850μm(通過物)〜150μmの割合、より好ましくは710μm(通過物)〜150μmの割合が95重量%以上、更に好ましくは98重量%以上、特に好ましくは99重量%以上(上限100重量%)の粉末が表面架橋される。
【0179】
これらの測定方法については、標準篩を用いて、例えば、国際公開第2004/69915号パンフレットやEDANA−ERT420.2−02に記載されている。本発明の課題をより解決するため、上記表面架橋前の粒度は、好ましくは表面架橋後、さらに好ましくは最終製品である吸水性樹脂粒子(や、後述する本発明の吸水性樹脂粉末)にも適用される。
【0180】
(2−6)表面架橋工程
吸水速度(や通液性)をより向上させるため、乾燥後に、ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末を表面架橋する工程を更に含むことが好ましい。表面架橋は後述の表面架橋剤で行ってよく、吸水性樹脂表面で単量体を重合させてもよく、過硫酸塩やUV開始剤等のラジカル重合開始剤を加えて加熱又は紫外線照射することによって行ってもよい。
【0181】
本発明での表面架橋工程は好ましくは表面架橋剤で行われ、更に、共有結合性表面架橋剤、特に本発明では共有結合性表面架橋剤が併用される。
【0182】
(架橋剤)
本発明では乾燥後の表面架橋工程を更に含むことが好ましい。本発明の製造方法では、高い加圧下吸水倍率(AAP)及び通液性(SFC)の吸水性樹脂粉末の製造方法や巨大スケール(特に1[t/hr])での連続生産に適用され、特に高温表面架橋での吸水性樹脂粉末に好適に適用される。
【0183】
(共有結合性表面架橋剤)
本発明で用いることができる表面架橋剤としては、種々の有機又は無機架橋剤を例示できるが、有機表面架橋剤が好ましく使用できる。
【0184】
物性面で好ましくは、表面架橋剤として、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物又はそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、(モノ、ジ、又はポリ)オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物が挙げられ、特に高温での反応が必要な、多価アルコール化合物、アルキレンカーボネート化合物、オキサゾリジノン化合物からなる脱水反応性架橋剤が使用できる。
【0185】
脱水反応性架橋剤を使用しない場合、より具体的には、米国特許第6228930号、同第6071976号、同第6254990号等に例示されている化合物を挙げることができる。例えば、モノ,ジ,トリ,テトラ又はプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドール等のエポキシ化合物;エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート化合物;オキセタン化合物;2−イミダゾリジノン等の環状尿素化合物等が挙げられる。
【0186】
(イオン結合性表面架橋剤又は水不溶性微粒子)
また、上記有機表面架橋剤(共有結合性)以外にイオン結合性表面架橋剤としてポリアミンポリマーや多価金属塩を使用して通液性等を向上させてもよい。かかるイオン結合性表面架橋剤は膨潤ゲル粒子の静電的にスペーサーとして通液性の向上に寄与して好ましい。本発明で特に通液性、特にSFCを20[×10−7・cm・sec・g−1]以上、さらには後述の範囲にする場合、有機表面架橋剤(共有結合性表面架橋)とイオン結合性表面架橋剤又は後述の水不溶性微粒子が併用されて通液性が向上されることが好ましい。
【0187】
使用される多価金属塩(無機表面架橋剤)は、2価以上、好ましくは3価又は4価値の多価金属の塩(有機塩又は無機塩)又は水酸化物、即ち、多価金属カチオンが例示できる。使用できる多価金属としてはアルミニウム、ジルコニウム等が挙げられ、好ましい多価金属塩としては、乳酸アルミニムや硫酸アルミニウム等、アルミニウムカチオンが使用される。
【0188】
使用されるポリアミンポリマーとしては、ポリエリレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等が例示され、その重量平均分子量は1000〜500万、1万〜100万で適宜決定される。
【0189】
使用される水不溶性微粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、クレイ、カオリン等の無機微粉末、乳酸アルミニウム、乳酸カルシウム、金属石鹸(長鎖脂肪酸の多価金属塩)等の有機微紛末が例示され、その体積平均粒子径は10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0190】
即ち、かかる吸水性樹脂粉末は上記表面架橋において、更に上記(2−6)に例示の多価金属カチオン、ポリアミンポリマー、水不溶性微粒子から選ばれる通液性向上剤を更に含むことが好ましい。これら通液性向上剤を含むことによって、吸水速度と通液性がより高い水準で両立する。更に、吸水性樹脂粉末の吸湿時のAnti−Caking性にも優れるため、吸湿しやすい発泡吸水性樹脂に好ましく適用できる。
【0191】
(溶媒)
有機表面架橋剤(共有結合性表面架橋剤)の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部の範囲、より好ましくは0.01〜5重量部の範囲で適宜決定される。又、多価金属カチオン、ポリアミンポリマー、水不溶性微粒子から選ばれる通液性向上剤の使用量は0〜5重量部が好ましく、0.001〜3重量部がより好ましく、0.01〜2重量部が更に好ましく、0.05〜1重量部が特に好ましい。
【0192】
表面架橋剤に併せて、好ましくは水が使用され得る。使用される水の量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲である。
【0193】
無機表面架橋と有機表面架橋剤とを併用する場合も、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部で各々併用される。又、この際、親水性有機溶媒を使用してもよく、その量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0重量部を超え10重量部以下、より好ましくは0重量部を超え5重量部以下の範囲である。
【0194】
又、吸水性樹脂粉末への架橋剤溶液の混合に際し、本発明の効果を妨げない範囲、例えば、0重量部を超え10重量部以下、好ましくは0重量部を超え5重量部以下、より好ましくは0重量部を超え1重量部以下で、水不溶性微粒子粉体や界面活性剤を共存させてもよい。用いられる界面活性剤やその使用量は米国特許第7473739号等に例示されている。
【0195】
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂粉末は、加熱処理され、必要によりその後、冷却処理される。加熱温度は、好ましくは70〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃、更に好ましくは150〜250℃であり、加熱時間は、好ましくは1分〜2時間の範囲である。
【0196】
かかる表面架橋、特に上記粒度制御後の表面架橋によって、後述の加圧下吸水倍率(AAP)を後述の範囲、好ましくは20[g/g]以上、更に好ましくは23〜30[g/g]にまで向上すればよい。特に下記範囲にSFCを向上(例えば、20[×10−7・cm・sec・g−1]以上、更に好ましくは後述の範囲)にする場合、上記範囲でCRCを好ましくは15〜45[g/g]、より好ましくは20〜40[g/g]、更に好ましくは25〜35[g/g]、特に好ましくは28〜33[g/g]の範囲で表面架橋すればよく、更に好ましくは多価金属カチオン、ポリアミンポリマー、水不溶性微粒子から選ばれる通液性向上剤を更に含むことによって、より通液性を向上できる。
【0197】
(2−7)表面被覆工程
本工程は、高吸水速度及び高通液性の吸水性樹脂粉末を得るために、界面活性剤で吸水性樹脂粉末の表面を被覆する工程である。
【0198】
本発明の吸水性樹脂粉末は、発泡体であるため、粉体としての耐衝撃性に弱い傾向を示し、特に表面架橋時又は表面架橋後の破壊によって物性が低下することもある。かかる傾向は製造時のスケール(時間当たりの生産量)が大きいほど顕著であり、例えば、1ラインあたりの生産量が0.5[t/hr]以上が好ましく、以下、順に1[t/hr]以上、5[t/hr]以上、10[t/hr]以上となるほどより顕著になる。
【0199】
即ち、かかる課題を解決してより吸水速度が速く、高い通液性の吸水性樹脂を得るために、特に上記巨大スケールでの連続生産時には、好ましくは乾燥後に更に吸水性樹脂粉末を表面架橋する工程、及び、表面架橋と同時又は別途、表面を更に界面活性剤で被覆する工程を含む。
【0200】
上記界面活性剤の種類や使用量は適宜決定されるが、使用量については、2重量%以下が好ましく、以下順に0.03重量%以下、0.015重量%以下、0.01重量%以下、0.008重量%以下が好ましく、下限は0.1ppm以上が好ましく、1ppm以上がより好ましい。好ましくは上記表面張力(好ましくは60[mN/m]以上、更に好ましくは後述の「(3−7)表面張力」で示す範囲)を維持する使用量及び種類で使用される。吸水速度や耐衝撃性から、界面活性剤と同時に水も含有されることが好ましく。水は吸水性樹脂に好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは1〜8重量%、特に好ましくは2〜7重量%で使用又は含有される。
【0201】
(2−8)微粉リサイクル工程
本発明の課題をより解決するために、乾燥工程後に好ましくは、分級工程を含み、分級工程後の微粉が乾燥工程以前の工程においてリサイクル(再利用)される。即ち、重合工程後、好ましくは加熱乾燥工程後の吸水性樹脂は必要により粉砕、分級工程を経て、上記粒度に調整される。又、分級で除去される粗大粒子(例えば1mm以上)は必要により粉砕してもよく、又、分級で除去される微粒子(例えば150μm未満、更には106μm未満)は廃棄してもよく、他の用途に使用してもよく、微粉リサイクルしてもよい。微粉が除去されることでより通液性(例えばSFC)が向上することが見いだされた。更に除去後の微粉がリサクイルされることでより吸水速度(例えばFSR)が向上することが見いだされた。
【0202】
即ち、本発明の製造方法においては、好ましくは微粉リサイクル工程を含んでもよい。微粉リサイクル工程とは、乾燥工程及び必要により粉砕、分級工程で発生する微粉(特に粒子径150μm以下の粉体を70重量%以上含む微粉)を分離した後、そのままの状態で、或いは水和又は造粒して、粉砕工程以前にリサイクル、好ましくは、重合工程、発泡重合体の細分化工程、又は加熱乾燥工程にリサイクルする工程をいい、微粉をリサイクルすることで、ベースポリマーの粒度を制御することができるとともに、微粉の添加によって、より吸水速度を向上することができる。微粉としては表面架橋前の微粉でもよく、表面架橋後の微粉でもよく、微粉リサイクル量は乾燥重合体の1〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
【0203】
本発明で好ましく用いられる微粉リサイル方法は、重合時の単量体水溶液や重合途中の含水ゲルに吸水性樹脂微粉やその水和物や造粒物、又、必要により無機微粒子を混合する方法である。又、リサイルされる微粉をもって、重合時の単量体を増粘させて発泡を促進してもよい。
【0204】
重合途中のゲルへの微粉リサイクル方法は、国際公開第2007/074167号、同第2009/109563号、同第2009/153196号、同第2010/006937号に例示され、重合前の単量体水溶液への微粉リサイクル方法は、国際公開第92/001008号、同第92/020723号に例示され、乾燥機への微粉リサイクル方法は米国特許第6228930号等に例示されるが、これら微粉リサイクル方法が好適に適用される。
【0205】
(2−9)着色防止剤又は耐尿性向上剤の添加工程
一般的には、表面積の大きな吸水性樹脂は着色や劣化しやすい傾向もあるため、本発明では着色防止や劣化防止のために、キレート剤(特に有機リン系キレート剤、アミノアルボン酸系キレート剤)、α−ヒドロキシカルボン酸(特に乳酸又はその塩)、無機又は有機還元剤(特に硫黄系無機還元剤)から選ばれる着色防止剤又は耐尿性(耐候性)向上剤を更に含むことが好ましい。これらの使用量は吸水性樹脂100重量部に対して0〜3重量部が好ましく、0.001〜1重量部がより好ましく、0.05〜0.5重量部が特に好ましい。これらは単量体や含水ゲル、乾燥重合体や粉末等に添加され、添加工程は重合工程以降に適宜決定されるが、これらの中で還元剤は重合で消費されるため、重合後、更には乾燥後に特に表面架橋後に添加するこが好ましい。
【0206】
使用できるキレート剤は、米国特許第6599989号、同第6469080号、欧州特許第2163302号等に例示のキレート剤、特に非高分子キレート剤、更には有機リン系キレート剤、アミノアルボン酸系キレート剤が使用できる。α−ヒドロキシカルボン酸は米国特許出願公開第2009/0312183号等に例示の林檎酸、琥珀酸、乳酸やその塩(特に一価塩)が例示できる。使用できる無機又は有機還元剤(特に硫黄系無機還元剤)は米国特許出願公開第2010/0062252号等に例示の硫黄系還元剤、特に亜硫酸塩又は亜硫酸水素塩等が例示される。
【0207】
(2−10)その他の工程
上記以外に、必要により、第2の分級工程、蒸発モノマーのリサイクル工程、造粒工程、微粉除去工程等を設けてもよい。更には、経時色安定性効果やゲル劣化防止等のために、添加剤を単量体あるいはその重合物に使用してもよい。
【0208】
更に、目的に応じて、吸水性樹脂粉末に、酸化剤、酸化防止剤、水、多価金属化合物、シリカや金属石鹸等の水不溶性無機又は有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等を、吸水性樹脂粉末中に0重量%を超え3重量%以下、好ましくは0重量%を超え1重量%以下添加してもよい。吸水性樹脂粉末中の好ましい界面活性剤量は上記範囲である。
【0209】
〔3〕ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の物性
(新規な第1の吸水性樹脂粉末(図12,13参照))
本発明の上記製造方法で得られた吸水性樹脂粉末は、その内部に所定量の空隙を有する。本発明は特定範囲の気泡含有率(吸水性樹脂粒子内部での気泡含有率、別称;空隙率)を有する新規な吸水性樹脂粉末を提供する。
【0210】
即ち、上記課題を解決するために、本発明はポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末であって、下記式で規定される内部気泡率(別称;独立気泡率)が2.8〜6.6%であることを特徴とする、吸水性樹脂粉末を提供する。
(内部気泡率[%])={(真密度[g/cm])−(見かけ密度[g/cm])}/(真密度[g/cm])×100
ここで十分に乾燥(含水率1重量%未満が好ましく、0.5重量%未満がより好ましく、0.1重量%未満が特に好ましい)した吸水性樹脂粉末についての真密度[g/cm]は、化学組成(高分子の繰り返し単位やその他、架橋剤等の微量原料や、任意に使用されるグラフト成分)によって一義的に決定される。従って、ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末においては、その中和率、その塩の種類(例えば、中和率75モル%のポリアクリル酸ナトリウム)や微量原料由来による若干の差を有するが、ほぼ一定値を示す。
【0211】
上記、化学組成(主に繰り返し単位)で決まる真密度に対して、吸水性樹脂粉末の「見かけ密度」とは、粒子内部の空隙(別称;気泡、特に独立気泡)を考慮した密度である。具体的には、発泡重合により得られた吸水性樹脂や、造粒工程を経た吸水性樹脂は、図12に示すように、その内部に外部とつながっていない空間(閉細孔;空隙:独立気泡)が存在する。このため、吸水性樹脂の密度を乾式密度測定により測定した場合、閉細孔には導入気体が到達できないため、測定された密度は閉細孔(独立気泡)を含んだ体積から求められた見かけ密度となる。
【0212】
本明細書において、見かけ密度や真密度の測定値の有効数字は、測定装置等で適宜決定され、例えば、小数点以下3桁又は4桁である。具体的には、後述の実施例15では見かけ密度として1.588[g/cm]を開示している。尚、吸水性樹脂の見かけ密度について、非特許文献1のp.197〜199には、40〜60mesh−Cut後の吸水性樹脂の見かけ密度を、メタノールで体積を求める湿式測定が開示されているが、本発明の見かけ密度は、全粒度について上述した乾式測定で規定することを特徴とし、かかる見かけ密度で規定される内部空隙率が吸水性樹脂に重要であることを見出した。
【0213】
ここで、吸水性樹脂の密度は所定のガスを用いる乾式密度測定で正確に行うことができる。尚、固体の乾式密度測定の測定原理は、固体の体積を特定ガスで求める方法である、定容積膨張法において周知である。具体的には、試料室の体積VCELLと膨張室の体積VEXPが既知であるとき、圧力(ゲージ圧)P1g及びP2gを測定すれば、試料の体積VSAMPが求められ、別に試料の質量を測定しておき、その質量を体積で割れば密度を求めることができる(参考;島津製作所ホームページ;http://www.shimadzu.co.jp/powder/lecture/middle/m04.html)。
【0214】
真密度は化学組成(主に高分子の繰り返し単位)で一義的に決まるため、既知の値をそのまま使用してもよく、吸水性樹脂の微量原料によって、若干の変化があるため既知の値が不明な場合は後述する方法で求めてもよい。
【0215】
本発明で真密度は、後述の方法(図13を参照)で、粉末中の独立気泡を微粉砕によって破壊又は連続気泡化したのち、実質的に独立気泡をなくした吸水性樹脂の乾式密度を測定することで求められる。ここで、連続気泡とは外部と通じた気泡であり、粉末の乾式密度を測定する際には粉末の体積としてカウントされないため、独立気泡と連続気泡は粉末の乾式密度測定によって容易に判別できる。
【0216】
本発明の吸水性樹脂の内部気泡率(実施例の測定法で規定)は、2.8〜6.6%であり、好ましくは3.0〜6.5%、更に好ましくは3.5〜6.5%、特に好ましくは3.8〜6.5%、最も好ましくは4.0〜6.5%である。内部気泡率が2.8%未満の場合、吸水速度(FSR)向上効果は小さく、逆に内部気泡率が6.6%を超える場合、耐ダメージ性が低下し、それに伴って通液性(SFC)が低下するため、好ましくない。かかる内部含有率は上記本発明の製造方法において、重合時の気泡含有量や乾燥温度(高温でより膨張)等で適宜制御できる。
【0217】
従来、吸水速度の向上のために、吸水性樹脂の発泡重合は上記特許文献18〜35等において知られている。しかしながら、特許文献31(米国特許第61007358号)や相当する本願比較例8等に代表される従来の発泡重合では、内部気泡率の制御が困難であった。その結果、6.6%を越えて過度に内部気泡を含有したり、特許文献28、29のように発泡のために多量の界面活性剤(例えば0.1〜10重量%)を使用するため、得られた吸水性樹脂粉末の表面張力が低下(特に60[mN/m]未満、更には55[mN/m]未満)したり、過度の発泡によって微粉が発生(特に10重量%以上)したりする問題を有した。
【0218】
又、非特許文献1のp.197〜199及びTable5.6には、市販の(ポリアクリル酸系)吸水性樹脂(5種類)について、その40〜60mesh−Cut(上下限425〜250μmの粉末に相当)品のBET表面積、吸水速度、吸水倍率、嵩比重及び見かけ密度を開示している。
【0219】
かかる非特許文献1には、メタノール湿式法による見かけ密度の具体的数値として、商品名Arasorb720(荒川化学)及びSanwet 1M−1000(三洋化成)は1.500[g/cm]、Aridall 1078(アメリカン・コロイド)は1.250[g/cm]、Aquakeep(住友精化)及びDrytech510(ダウ・ケミカル)は1.667[g/cm]である事実を開示する。即ち、非特許文献1には見かけ密度が1.250〜1.667[g/cm]である5種類の市販の吸水性樹脂を開示する。
【0220】
非特許文献1には、40〜60mesh−Cut品での見かけ密度(メタノール湿式法)について、本願全体粒度での乾式密度とも相違し、又、個別の真密度やその化学組成の記載もないが、Aquakeep(逆相懸濁重合・球状粒子)の真密度1.667[g/cm]がほぼ真密度であり、且つ、Table5.6に掲載された5種類の市販の吸水性樹脂が全て同じ化学組成であると仮定すると、市販の吸水性樹脂(Table5.6)の内部気泡率は、0%或いは0%に近いタイプ(Aquakeep、Drytech510)と、約10〜25%のタイプ(Arasorb720、Sanwet 1M−1000、Aridall 1078)に上記仮定のもとで大別される。一方、本発明は、内部気泡率(2.8〜6.6%)及び粒度を特定の狭い範囲(粒度850〜150μmの割合が95重量%以上)に制御することを特徴とする。
【0221】
又、上記特許文献31(米国特許第5856370号)は、アゾ化合物を使用することで乾燥状態での密度が1.0[g/cm]を超えて、膨潤状態での密度(比重瓶で測定)が1.0[g/cm]の多孔質吸水性樹脂を開示するが、本発明の特定の内部気泡率や粒度を開示しない。
【0222】
本発明で規定される内部気泡率が6.6%を越える場合、後述の比較例12,14のように通液性(SFC)や耐衝撃性が低下することが見いだされ、本発明では、従来の発泡重合でなんら注目していなかった内部気泡率を制御することを特徴とする。
【0223】
かかる本発明の吸水性樹脂粉末(第1の吸水性樹脂)は、発泡重合で得られるにもかかわらず、耐衝撃性が高いため微粉が少なく、粒度850〜150μmの割合が95重量%以上、更には上記(2−5)の範囲の上下限(850/710μm〜150μm)や重量平均粒子径(D50)を示す。従来、吸水速度を向上させるのに、特許文献10のように粒度を細かくする技術は知られているが、かかる手法は微粉の増加を伴うのに対して、本発明ではかかる問題もない。本発明の吸水性樹脂粉末の更に好適な粒度は上記(2−5)に記載の通りである。
【0224】
かかる本発明の吸水性樹脂粉末(第1の吸水性樹脂)は発泡重合で得られるにもかかわらず、特許文献28,29のように発泡のために多量の界面活性剤(例えば0.1〜10重量%)を必要としないため、表面張力の低下もなく、表面張力60mN/m以上、さらには後述(3−7)の範囲の表面張力を示す。表面張力は界面活性剤の種類や使用量で調整できるが、好ましくは前記(2−1−6)の範囲で使用される。
【0225】
即ち、上記本発明の製造方法(気体の溶解度を低下)を製法の一例とする本発明の吸水性樹脂粉末は、粒度850〜150μmの割合が95重量%以上、好ましくは98重量%以上、特に好ましくは99重量%以上であるポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末であって、表面張力60[mN/m]以上で且つ下記式で規定される内部気泡率が2.8〜6.6%であることを特徴とする、吸水性樹脂粉末である。
(内部気泡率[%])={(真密度[g/cm])−(見かけ密度[g/cm])}/(真密度[g/cm])×100
かかる本発明の吸水性樹脂粉末は、例えば、上記表面架橋、特に上記CRCの範囲までの表面架橋を含む製造方法によって得られ、好ましくは、荷重50[g/cm]での加圧下吸収倍率(AAP)が15[g/g]以上である吸水性樹脂粉末である。AAPの好ましい範囲は下記であり、AAPが低い場合、紙オムツで吸水性樹脂濃度が高い場合、十分な吸水性能を発揮しないこともある。
【0226】
かかる本発明の吸水性樹脂粉末は、例えば、上記表面架橋、特に上記CRCの範囲までの表面架橋を含む製造方法によって得られ、好ましくは、生理食塩水流れ誘導性(SFC)が20[×10−7・cm・sec・g−1]以上である。
【0227】
かかる吸水性樹脂粉末は、上記表面架橋において、更に上記(2−6)に例示の多価金属カチオン、ポリアミンポリマー及び水不溶性微粒子から選ばれる通液性向上剤を更に含むことが好ましい。これらの通液性向上剤を含むことによって、吸水速度と通液性とがより高い水準で両立する。又、吸湿時のAnti−Caking性も向上する。
【0228】
かかる本発明の吸水性樹脂粉末は、好ましくは上記(2−6)又は(2−1−6)に例示の手法によって界面活性剤を更に含む。界面活性剤を含むことによって、より耐衝撃性に優れた吸水性樹脂粉末を得ることができる。好適な使用量は前述の範囲であり、好ましくは水溶液で添加される。
【0229】
かかる本発明の吸水性樹脂粉末は、重合時又は表面架橋の前後に界面活性剤を使用することによって、好ましくは界面活性剤を上記範囲又は上記表面張力の範囲で更に含む。
【0230】
かかる本発明の吸水性樹脂粉末は、上記(2−1−7)に示すように、好ましくはp−メトキシフェノール(MEHQ)を5〜60ppm、より好ましくは5〜40ppm、さらに好ましくは5〜30ppmさらに含むことによって、耐候性に更に優れた吸水性樹脂粉末とすることができる。p−メトキシフェノールが過剰であると着色することもあり、少ないと耐候性が低下することもある。尚、非特許文献1の「2.5.3 Inhibition」(重合禁止剤)(p.39〜44)において、Table2.5で市販の吸水性樹脂(8種類)中のp−メトキシフェノールが16〜151ppmである事実を開示するが、かかる非特許文献1は本願の効果(特定範囲に制御することでの着色防止及び耐光性の向上)を開示しない。
【0231】
尚、p−メトキシフェノールは、吸水性樹脂の製造工程(特に重合工程や乾燥工程)において、その一部が消費される。そのため、上記重合工程及び乾燥工程での調整や、例えば、PCT/JP2010/067086号に記載された方法に準じて最終製品の吸水性樹脂で、p−メトキシフェノール量を調整することができる。具体的には、上記中和工程が、鉄分含有量が0〜7ppmである塩基性物質でなされ、上記重合工程が、アクリル酸(塩)を90〜100モル%含む、単量体濃度30〜55重量%の単量体水溶液を、ラジカル重合開始剤0.001〜1モル%を用いて、重合時の最高到達温度130℃以下であり、重合時間が0.5分〜3時間である条件下で、水溶液重合又は逆相懸濁重合を行う工程であり、上記乾燥工程が、上記重合工程(ゲル細粒化工程を含む)で得られた粒子状含水ゲル状架橋重合体を、乾燥温度100〜250℃、乾燥時間10〜120分で、含水率20重量%以下まで乾燥する工程であり、上記表面架橋工程が、上記乾燥後の吸水性樹脂粉末100重量部に対して、表面架橋剤0.001〜10重量部を混合し、温度70〜300℃で1分〜2時間加熱処理を行う工程であり、以上の工程を経て、得られる吸水性樹脂粉末のp−メトキシフェノール含有量を5〜60ppmとすることができる。
【0232】
かかる本発明の吸水性樹脂粉末は、上記(2−9)に示すように、好ましくはキレート剤、α−ヒドロキシカルボン酸、無機又は有機還元剤から選ばれる添加剤を更に含む。かかる添加剤によって、表面積が大きいため、着色又は耐久性が問題となる吸水性樹脂粉末であっても、本発明では着色又は耐久性が更に向上する。
【0233】
又、かかる吸水性樹脂(第1の吸水性樹脂粉末)は、後述する第2の吸水性樹脂と同様に、界面活性剤及び/又は分散剤を内部に含むポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末であり、更に、好ましくは、表面張力が60[mN/m]以上で、且つ、粉末表面が界面活性剤で被覆されてなることが好ましい。同様に、生理食塩水流れ誘導性(SFC)が20[×10−7・cm・sec・g−1]以上で、吸水速度(FSR)が0.25[g/g/sec]以上であることが好ましい。
【0234】
又、かかる吸水性樹脂(第1の吸水性樹脂粉末)は、後述する第2の吸水性樹脂と同様に、15重量%以下の所定量の含水率(実施例で規定)を有することが好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、1〜8重量%の含水率を有することが更に好ましい。上記含水率が低い場合、吸水速度(例えば、FSR)や耐衝撃性が低下し、逆に含水率が高い場合、無加圧下吸水倍率(CRC)や加圧下吸水倍率(AAP)が低下する傾向にある。尚、含水率は、重合後の加熱温度や時間の調整、又は、水の添加で制御することができる。
【0235】
(新規な第2の吸水性樹脂粉末)
上記の吸水性樹脂粉末の製造方法において、重合時に界面活性剤及び/又は分散剤を使用した上に、好ましくは、吸水性樹脂粉末の表面が界面活性剤で更に被覆される工程を含み、かかる製造方法で得られた吸水性樹脂粉末は、界面活性剤及び/又は分散剤を内部に実質均一に含むポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末であって、表面張力が60[mN/m]以上で、かつ粉末表面が更に界面活性剤で更に被覆されてなる、吸水性樹脂粉末を提供する。
【0236】
尚、表面と内部の界面活性剤は、例えば、粒子表面の研磨又は表面のみの溶媒抽出によって、粒子の厚み方向への界面活性剤の密度差の有無を定量することで判別することができる。
【0237】
即ち、本発明は、新規な吸水性樹脂(第2の吸水性樹脂粉末)として、界面活性剤及び/又は分散剤を内部に含むポリアクリル酸系吸水性樹脂であって、表面張力が60[mN/m]以上で、かつ、粉末表面が更に界面活性剤で被覆されてなる、吸水性樹脂粉末を提供する。
【0238】
かかる新規な吸水性樹脂は、表面張力を高く維持しているため、紙オムツ使用時の戻り量(Re−Wet)も少ないうえに、ごく少量の界面活性剤によって、米国特許7282262号に開示の挿入距離を高く制御できる。
【0239】
かかる吸水性樹脂粉末(第2の吸水性樹脂粉末)は、挿入距離(PID)が13[mm]以上を示すことが好ましい。
【0240】
挿入距離(PID)は粒子内部(重合時)又は粒子表面(乾燥後特に表面架橋)への界面活性剤の使用、特に内部及び表面での界面活性剤の使用によって制御できる(後述の実施例及び表6も参照)。
【0241】
吸水性樹脂粉末表面が更に界面活性剤で被覆されることで、耐ダメージ性も向上し、製造時又は製造後の物性低下もない。かかる吸水性樹脂は通液性と吸水速度とを両立しており、好ましくは、生理食塩水流れ誘導性(SFC)が20[×10−7・cm・sec・g−1]以上で、吸水速度(FSR)が0.25[g/g/sec]以上である、吸水性樹脂粉末である。
【0242】
(更なる物性)
又、本発明の製造方法で得られる吸水性樹脂粉末又は上記本発明の第1又は第2の吸水性樹脂粉末は、好ましくは下記物性を満たしてなる。衛生材料、特に紙オムツを目的とする場合、上記重合や表面架橋をもって、下記(3−1)〜(3−7)の少なくとも1つ、更にはAAPを含め2つ以上、特に3つ以上に制御されることが好ましい。下記を満たさない場合、後述の高濃度紙オムツでは十分な性能を発揮しないことがある。
【0243】
本発明の製造方法は下記の吸水性樹脂粉末の製造方法に好ましく適用できるが、より好ましくは、通液性(SFC)や吸水速度(FSR)の制御及び向上に適用できる。尚、下記及び実施例の物性は、断りのない限りEDNA法で規定される。
【0244】
本発明に係るポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末は、下記式で規定される吸水速度指数が90以上で、且つ、嵩比重が0.58〜0.8[g/cm]が好ましく、0.6〜0.8[g/cm]がより好ましい。
【0245】
かかる本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法は、下記式で規定される吸水速度指数が90以上で、且つ、嵩比重が0.58〜0.8[g/cm]、更には0.6〜0.8[g/cm]のポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末を表面架橋することを特徴とする。好ましい表面架橋方法や吸水速度指数の制御方法は上述した方法によって行うことができ、好ましくは表面架橋されてなり、又、好ましくは上記範囲の吸水速度指数を有する。
【0246】
(吸水速度指数)=(FSR[g/g/sec])×(嵩比重[g/cm])×(重量平均粒子径[μm])。
【0247】
但し、FSRは生理食塩水への20倍膨潤での吸水速度を示す。
【0248】
吸水速度指数は90、95、100、105、110、115、120の順に高いほど好ましく、上限は150、更には140で十分である。かかる新規な吸水性樹脂粉末は通液性や耐衝性に優れ、紙オムツ等の吸収性物品に好ましく使用できる。吸水速度指数が低い場合や逆に高すぎる場合も実使用に適さない傾向にある。
【0249】
かかる吸水性樹脂粉末は発泡構造(別称;多孔質構造)であり、多孔質構造は電子顕微鏡写真で粒子表面を確認することで判別できる。粒子表面の平均孔径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは0.1〜90μm、更に好ましくは1〜50μmである。尚、個々の吸水性樹脂粉末の主成分は多孔質粒子である。
【0250】
(3−1)AAP(加圧下吸水倍率)
紙オムツでのモレを防止するため、上記重合後の表面架橋を達成手段の一例として、1.9kPaの加圧下、更には4.8kPaの加圧下での0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液に対する吸水倍率(AAP)が好ましくは20[g/g]以上、より好ましくは22[g/g]以上、更に好ましくは24[g/g]以上に制御される。AAPの上限は高いほど好ましいが、他の物性とのバランスから通常40[g/g]、更には35[g/g]、特に荷重4.8kPの場合は30[g/g]程度が好ましい。
【0251】
(3−2)CRC(無加圧下吸水倍率)
無加圧下吸水倍率(CRC)は、好ましくは10[g/g]以上であり、より好ましくは20[g/g]以上、更に好ましくは25[g/g]以上、特に好ましくは30[g/g]以上に制御される。CRCは高いほど好ましく上限値は特に限定されないが、他の物性(特に通液性)のバランスから、好ましくは50[g/g]以下、より好ましくは45[g/g]以下、更に好ましくは40[g/g]以下である。CRCは架橋剤量等で制御できる。尚、上記非特許文献1のTable5.6には、市販の吸水性樹脂の吸水倍率(測定方法の詳細な記載はない)について開示されている。具体的には、Aquakeepが65.4[g/g]、Sanwet 1M−1000が58.3[g/g]である事実を開示するが、本発明の課題(通液性と吸水速度の両立)をより解決するため、本発明では上記範囲内に無加圧下吸水倍率(CRC)を制御することが好ましい。
【0252】
(3−3)SFC(生理食塩水流れ誘導性)
紙オムツでのモレを防止するため、上記重合及びその粒度制御した表面架橋を達成手段の一例として、加圧下での液の通液特性である0.69重量%生理食塩水流れ誘導性(SFC)は1[×10−7・cm・sec・g−1]以上であり、以下順に20[×10−7・cm・sec・g−1]以上、50[×10−7・cm・sec・g−1]以上、70[×10−7・cm・sec・g−1]以上、100[×10−7・cm・sec・g−1]以上、120[×10−7・cm・sec・g−1]以上が好ましく、特に140[×10−7・cm・sec・g−1]以上に制御される。SFCは周知の測定法であり、例えば、米国特許第5562646号に記載方法で規定できる。本発明の独立気泡率を制御した吸水性樹脂は、SFC及びFSRを高く両立することができる。SFCの上限については適宜決定されるが、他の物性とのバランスから好ましくは1000[×10−7・cm・sec・g−1]程度である。
【0253】
本発明では通液性の向上、中でもSFC向上、特に上記範囲のSFCへ、特にSFCが20[×10−7・cm・sec・g−1]以上となる、より顕著に効果を発揮するため、かかる高通液性の吸水性樹脂粉末の製法に好ましく適用できる。
【0254】
更に、本発明の吸水性樹脂(特に、独立気泡率を制御した第1の吸水性樹脂又は内部及び表面に界面活性剤を含む第2の吸水性樹脂粉末)はSFCが50[×10−7・cm・sec・g−1]以上、更には100[×10−7・cm・sec・g−1]以上の高い通液性を有する吸水性樹脂であっても、実施例で後述するように、SFC低下幅が、好ましくは15[×10−7・cm・sec・g−1]以下、より好ましくは10[×10−7・cm・sec・g−1]以下、特に好ましくは5[×10−7・cm・sec・g−1]以下とすることができ、耐ダメージ性に優れる。
【0255】
(3−4)Ext(水可溶分)
水可溶分は、好ましくは35重量%以下、より好ましくは25重量%以下であり、更に好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
【0256】
(3−5)FSR(吸水速度)
上記重合(発泡重合)を達成手段の一例として、本発明の吸水性樹脂は、20gの生理食塩水に対する吸水性樹脂粉末1gでの吸水速度(FSR)は、通常0.05[g/g/sec]以上、好ましくは0.1[g/g/sec]以上、より好ましくは0.15[g/g/sec]以上、更に好ましくは0.20[g/g/sec]以上、特に好ましくは0.25[g/g/sec]以上である。上限としては、好ましくは0.50[g/g/sec]以下、より好ましくは1.0[g/g/sec]以下である。FSRの測定法は国際公開第2009/016055号パンフレットで規定される。本発明の独立気泡率を制御した吸水性樹脂は、SFC及びFRSを高く両立することができる。
【0257】
(3−6)嵩比重
吸水性樹脂粉末の嵩比重は、通常、0.58〜0.8(0.58〜0.80と同義である)[g/cm]であり、好ましくは0.6〜0.8(0.60〜0.80と同義である)[g/cm]であり、より好ましくは0.63〜0.77[g/cm]、更に好ましくは0.66〜0.74[g/cm]である。本発明では発泡構造(別称;多孔質構造)であるが、高い嵩比重を有する。
【0258】
尚、上記非特許文献1のTable5.6には、市販の吸水性樹脂の嵩比重(測定方法の詳細な記載はない)について開示されている。具体的には、Aquakeepが0.4430[g/cm]、Sanwet 1M−1000が0.5624[g/cm]、Drytech510が0.8989[g/cm]である事実を開示するが、本発明では上記範囲内に制御することが好ましい。嵩比重は、本発明の製造方法で制御することができる。
【0259】
(3−7)表面張力
表面張力(実施例の測定法で規定)は、好ましくは60[mN/m]以上、より好ましくは65[mN/m]以上、更に好ましくは67[mN/m]以上、特に好ましくは70[mN/m]以上、最も好ましくは72[mN/m]以上であり、実質的な表面張力の低下もない。上限は通常75[mN/m]で十分である。
【0260】
〔4〕ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の用途
本発明の吸水性樹脂粉末の用途は特に限定されないが、好ましくは、紙オムツ、生理ナプキン、失禁パット等の吸収性物品に使用され得る。本発明の吸水性樹脂粉末は通液性と吸水速度とを両立し、更に耐衝撃性や加圧下吸収倍率にも優れるため、吸水性樹脂の含有率が高い吸収物品に好ましく使用できる。この吸収性物品中の、任意に他の吸収性材料(パルプ繊維等)を含む吸収体における吸水性樹脂粉末の含有量(コア濃度)は、30〜100重量%、好ましくは40〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%、更に好ましくは60〜100重量%、特に好ましくは70〜100重量%、最も好ましくは75〜95重量%で本発明の効果が発揮される。
【0261】
〔5〕実施例
以下、実施例に従って発明を説明するが、本発明は実施例に限定され解釈させるものではない。又、本発明の特許請求の範囲や実施例に記載の諸物性は、以下の測定法(5−1)〜(5−15)に従って求めた。尚、特に断りのない限り、各実施例での各工程は実質常圧(大気圧の±5%、更に好ましくは1%以内)で行なわれ、同一工程では意図的な加圧又は減圧による圧力変化は加えずに実施した。
【0262】
(5−1)重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)
米国特許出願公開第2006/204755号に準じて、標準篩で分級して重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)を求めた。
【0263】
(5−2)CRC(無加圧下吸水倍率)
ERT441.2−0.2に従い、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水とも称する)に対する無加圧下で30分の吸水倍率(CRC)を求めた。
【0264】
(5−3)固形分
吸水性樹脂粉末において、180℃で揮発しない成分が占める割合を表す。含水率との関係は、{固形分=100−含水率}となる。
【0265】
固形分の測定方法は、以下のように行った。
【0266】
底面の直径が約5cmのアルミカップ(重量W3[g])に、約1gの吸水性樹脂粉末を量り取り(重量W4[g])、180℃の無風乾燥機中において3時間静置し、乾燥させた。乾燥後のアルミカップと吸水性樹脂粉末との合計重量(W5[g])を測定し、数2より固形分を求めた。
【0267】
【数2】
【0268】
(5−4)FSR(吸水速度)
吸水性樹脂粉末1.00gを25mlガラス製ビーカー(直径32〜34mm、高さ50mm)に入れた。この際、ビーカーに入れた吸水性樹脂粉末の上面が水平となるようにした(必要により、慎重にビーカーをたたく等の処置を行うことで吸水性樹脂粉末表面を水平にしてもよい。)。
【0269】
次に、23℃±0.2℃に調温した0.90重量%塩化ナトリウム水溶液20gを50mlのガラス製ビーカーに量り取り、上記塩化ナトリウム水溶液とガラス製ビーカーとの合計重さ(重量W6[g])を測定した。量り取った塩化ナトリウムを、吸水性樹脂粉末の入った25mlビーカーに丁寧に素早く注いだ。注ぎ込んだ塩化ナトリウム水溶液が吸水性樹脂粉末と接触したと同時に時間測定を開始した。そして、塩化ナトリウム水溶液を注ぎ込んだビーカー中の塩化ナトリウム水溶液上面を約20゜の角度で目視した際、始め塩化ナトリウム水溶液表面であった上面が、吸水性樹脂粉末が塩化ナトリウム水溶液を吸収することにより、塩化ナトリウム水溶液を吸収した吸水性樹脂粉末表面に置き換わる時点で、時間測定を終了した(時間t[秒])。
【0270】
次に、塩化ナトリウム水溶液を注ぎ込んだ後の50mlガラス製ビーカーの重さ(重量W7[g])を測定した。注ぎ込んだ塩化ナトリウム水溶液の重さ(重量W8[g])を数3から求め、数4によりFSRを求めた。
【0271】
【数3】
【0272】
【数4】
【0273】
(5−5)嵩比重
嵩比重測定器(蔵持科学機器製作所製)を用い、JIS K 3362に準じて測定した。粒度による偏りを無くすため十分に混合された吸水性樹脂粉末100.0gを、ダンパーを閉めた漏斗に入れた後、速やかにダンパーを開け、吸水性樹脂粉末を内容量100mlの受器(重量W9[g])に落とした。受器から盛り上がった吸水性樹脂粉末は、ガラス棒ですり落とした後、吸水性樹脂粉末の入った受器の重さ(重量W10[g])を0.1gまで正確に量り、数5にしたがって嵩比重を算出した。
【0274】
【数5】
【0275】
尚、測定を行った環境の温度は24.2℃であり、相対湿度は43%RHであった。
【0276】
(5−6)表面張力
十分に洗浄された100mlのビーカーに20℃に調整された生理食塩水50mlを入れ、まず、生理食塩水の表面張力を表面張力計(KRUSS社製のK11自動表面張力計)を用いて測定した。この測定において表面張力の値が71〜75[mN/m]の範囲でなくてはならない。
【0277】
次に、20℃に調整した表面張力測定後の生理食塩水を含んだビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、及び吸水性樹脂粉末0.5gを投入し、500rpmの条件で4分間攪拌した。4分後、攪拌を止め、含水した吸水性樹脂粉末が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定した。尚、本発明では白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分脱イオン水にて洗浄し、且つ、ガスバーナーで加熱洗浄して使用した。
【0278】
(5−7)通液性(SFC)
SFCは周知の測定法であり、米国特許第5562646号に記載の手法にて測定を行った。
【0279】
(5−8)白色度(初期着色)
初期着色(吸水性樹脂の製造直後の着色)として、白色度とは粉体の白さを示す指標であり、X、Y、Z値又はL、a、b値を用いて算出される。中でも白さ度合いを比較するために有用な吸水性樹脂粉末のWB値を、分光色差計を用いて測定した。尚、初期着色に対して、長期間保存中での着色(進行)や衛生材料中での着色(進行)を経時着色という。
【0280】
分光色差計:日本電色工業株式会社製のSpevtrophotometer SE6000
粉体仕込みセル:φ35mm、高さ15mm
(5−9)耐ダメージ性試験
特許文献38(米国特許6562879号)及びその対応特許である日本国公開特許公報「特開2000−302876号」(12頁[0001]、[0002])に記載の(機械的ダメージ試験)方法にて振動時間を10分間として、吸水性樹脂粉末にダメージを与えた。
【0281】
(5−10)見かけ密度(図12参照)
吸水性樹脂粉末の水分を更に除き、(粉末内部の独立気泡も考慮した)粉末の見かけ密度を乾式密度測定(所定重量の吸水性樹脂粉末体積での乾式測定)で行った。
【0282】
即ち、吸水性樹脂粉末6.0gを、底面の直径が約5cmのアルミカップに量り取り、180℃の無風乾燥機中において3時間以上静置し、含水率1%以下にまで十分に乾燥させた。乾燥後の吸水性樹脂5.00gを株式会社島津製作所製・乾式自動密度計;Micromeritics Auto Pycnometer1320でヘリウムガスを用いて、見かけ密度(重量g/体積cm)を測定した。同一測定値が連続2回以上測定されるまで測定を繰り返した。
【0283】
(5−11)真密度(図12図13参照)
JIS標準篩で45μm通過物に微粉砕することで内部の独立気泡を破壊又は連続気泡化した吸水性樹脂粉末について、その乾式密度を測定することで、本発明での真密度を求めた。
【0284】
吸水性樹脂の内部に含有されている気泡径(独立気泡)は通常1〜300μmである。しかしながら、粉砕の際には気泡に近い部分が優先的に粉砕され、45μm以下に粉砕された吸水性樹脂粉末にはほぼ独立気泡は含まれていないため、45μm以下に微粉砕された吸水性樹脂粉末の乾式密度を測定することで、吸水性樹脂粉末の真密度とした。
【0285】
JIS標準篩45μm未満に粉砕された吸水性樹脂粉末を用いて真密度を測定した。即ち、ボールミルポット(株式会社テラオカ製 磁製ボールミルポット型番No.90 内寸:直径80mm高さ75mm、外寸:直径90mm高さ110mm)中に、吸水性樹脂粉末15.0gに対して400gの円柱状磁製ボール(径13mm、長さ13mm)を入れ、ボールミルを用いて60Hzで2時間微粉砕した。その結果、吸水性樹脂粉末の70重量%以上がJIS標準篩45μm通過物である吸水性樹脂粉末を得た。
【0286】
JIS標準篩45μmで更に分級して得られた45μm未満の吸水性樹脂粉末6.0gについて、上記(5−10)の見かけ密度と同様に180℃で3時間乾燥させた後、乾式密度を測定し、これを本発明でいう真密度とした。
【0287】
(5−12)内部気泡率(別称;独立気泡率)
上記「(5−10)見かけ密度」に記載した方法で測定した見かけ密度(密度ρ1[g/cm]、及び上記「(5−11)真密度」に記載した方法で測定した真密度(密度ρ2[g/cm])を用いて、吸水性樹脂粉末の内部気泡率を下記数6に従って算出した。
【0288】
【数6】
【0289】
(5−13)最大挿入荷重(PIL)及び挿入距離(PID)
米国特許第7282262号に開示された最大挿入荷重(PIL)及び挿入距離(PID)の測定方法に基づいて、上記2項目を測定した。
【0290】
(5−14)メトキシフェノール量
ERT470.2−02の可溶分測定に準じて、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに、吸水性樹脂1.000gを添加し、1時間攪拌(攪拌時間は16時間から1時間に変更)した後の濾液について、分析することで求められる。
【0291】
具体的には、ERT470.2−02での分析操作(ただし攪拌は1時間)で得られた濾液を、高速液体クロマトグラフィーで分析することで、p−メトキシフェノール(対吸水性樹脂)を求めることができる。
【0292】
(5−15)耐候性促進試験(劣化率)
PCT/JP2010/067086号に記載された方法に準して規定される。
【0293】
具体的には、吸水性樹脂粉末3.0gを内径7.0cm、高さ14.0cmの石英製セパラブルフラスコに入れ、脱イオン水57.0を加え、20倍膨潤ゲル粒子(60g)を得た。その後、軸の中央から翼端までの距離が3.0cm、幅1.0cmの平羽根を4枚有する攪拌翼で、上記20倍膨潤ゲルを、上記セパラブルフラスコ内で攪拌しながらメタルハライドランプ(ウシオ電機製;UVL−1500M2−N1)を取り付けた紫外線照射装置(同社製;UV−152/1MNSC3−AA06)を用いて、照射強度60[mW/cm]の紫外線を、1分間、室温で照射し、耐候性促進試験を受けた含水ゲル状吸水剤を得た。
【0294】
次いで、容量250mlの蓋付きプラスチック容器に、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液184.3gと上記操作で得られた含水ゲル状吸水剤2.00gとを入れ、マグネスチックスターラーで16時間攪拌し、含水ゲル状吸水剤の可溶分を抽出した。該抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社製、品名;JIS P 3801、No.2、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過し、得られた濾液5.0gと0.90重量%塩化ナトリウム水溶液45.0gの混合溶液を得、測定溶液とした。
【0295】
次いで、上記測定溶液について、0.1NのNaOH水溶液でpH10となるまで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7となるまで滴定を行った。このときの滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。
【0296】
又、同様の滴定操作を、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液184.3gのみに対して行い、空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を求めた。以上の操作で得られた値に基づいて、可溶分が算出される。
【0297】
劣化率は、上記含水ゲル状吸水剤(劣化後)と吸水性樹脂粉末(劣化前)の可溶分の差から算出することができる。尚、下記の実施例では個別の可溶分(重量%)について、特に記載していないが、すべて15重量%以下の範囲(10重量%ないしそれ以下)であった。
【0298】
[実施例1]
容量3リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸(p−メトキシフェノール:70mg/L含有品)181.1g、37重量%アクリル酸ナトリウム水溶液1727.0g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)4.38g、界面活性剤として13.7重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液59.7gを投入し、溶解(混合)させて単量体水溶液(1)を作製し、液温を24℃に調整した。
【0299】
次に、上記単量体水溶液(1)を、100℃のオイルバスに浸漬したステンレス製のコイル式熱交換器(自立コイル式交換機、型番JC−S1;アズワン株式会社、研究総合機器カタログ)に、定量ポンプを用いて0.5[L/min]で通過させ、液温を98.5℃まで昇温させた。このとき、界面活性剤を含んだ単量体水溶液(1)は、非常に細かい気泡の導入によって白濁していた。なお、この白濁現象は、単量体水溶液(1)の昇温による気体の溶解度低下に起因している。
【0300】
続いて、容量1リットルのポリプロピレン製容器に上記単量体水溶液(1)986gを量り取り、攪拌しながら冷却した。液温が95℃となった時点で、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.0gを加えた後、すぐにステンレス製バット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)を貼り付け)に大気開放系で注いだ。なお、該バット型容器は、ホットプレート(株式会社井内盛栄堂社製;NEO HOTPLATE HI−1000)を用いて、表面温度が80℃となるまで加熱した。
【0301】
上記単量体水溶液(1)がバット型容器に注がれて40秒後に重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら上下左右に膨張発泡して進行し、その後、バット型容器よりも若干大きなサイズにまで収縮した。この膨張、収縮は約1分以内に終了した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行い、重合時のピーク温度は110℃であった。
【0302】
上記重合反応で得られた含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)をミートチョッパー(飯塚工業株式会社製、MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX、ダイ孔径:6.4mm、孔数:38、ダイ厚み8mm)を用いて解砕し、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得た。このとき、含水ゲルの投入量は350[g/min]、含水ゲル投入と並行して90℃に調温した脱イオン水を80[g/min]で添加しながら解砕を行った。
【0303】
上記解砕操作で得られた細分化された含水ゲル状架橋重合体を目開き850μmのステンレス製金網上に広げ、180℃で30分間熱風乾燥を行った。続いて、該乾燥操作で得られた乾燥物をロールミル(有限会社井ノ口技研社製、WML型ロール粉砕機)を用いて粉砕した後、目開き850μm及び目開き45μmのJIS標準篩を用いて分級した。
【0304】
上記一連の操作により、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)420μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.36の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(1)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(1)の諸物性を表1に示す。
【0305】
[実施例2]
容量2リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸351.6g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.17g、キレート剤として0.1重量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液94.6g、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液144.9g、界面活性剤として1.0重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液6.45g、脱イオン水(イオン交換水)236.0gを投入し、溶解(混合)させて単量体水溶液(2’)を作製した。該水溶液(2’)の温度は、作製直後の1段階目の中和熱によって65℃まで上昇した。この温度上昇に伴う気体の溶解度低下によって、界面活性剤を含んだ該水溶液(2’)は、非常に細かい気泡が導入されて白濁していた。
【0306】
次に、上記単量体水溶液(2’)を攪拌しながら冷却し、液温が53℃となった時点で、30℃に調温した48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液148.9gを加え、混合することで単量体水溶液(2)を作製した。この際、該単量体水溶液(2)の温度は、作製直後の第2段階目の中和熱によって83.5℃まで上昇した。この温度上昇に伴う気体の溶解度低下によって、界面活性剤を含んだ単量体水溶液(2)は、非常に細かい気泡が導入されて白濁していた。
【0307】
次に、上記単量体水溶液(2)の温度が83℃に低下した時点で、3.8重量%過硫酸ナトリウム水溶液15.3gを攪拌しながら加えた後、すぐにステンレス製バット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)を貼り付け)に大気開放系で注いだ。なお、該バット型容器は、ホットプレート(株式会社井内盛栄堂社製;NEO HOTPLATE HI−1000)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。また、過硫酸ナトリウム水溶液を加える前の単量体水溶液(2)の溶存酸素量は、6.53[ml/L]であった。
【0308】
上記単量体水溶液(2)がバット型容器に注がれて15秒後に重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら上下左右に膨張発泡して進行し、その後、バット型容器よりも若干大きなサイズにまで収縮した。この膨張、収縮は約1分以内に終了した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行い、重合時のピーク温度は108℃であった。
【0309】
以降、得られた含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)を実施例1と同様の解砕、乾燥、粉砕、分級の各操作を行った。
【0310】
上記の操作により、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)460μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.40の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(2)の諸物性を表1に示す。また吸水性樹脂粉末(2)の白色度を表2に示す。
【0311】
参考例2
容量1リットルのポリプロピレン製容器に、37重量%アクリル酸ナトリウム水溶液379.07g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.995g、脱イオン水(イオン交換水)176.31g、界面活性剤としてポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.04gを投入し、溶解(混合)させて単量体水溶液(3)を作製した。該単量体水溶液(3)を25℃に調温しながら、窒素ガスを用いて5分間脱気処理を行った。
【0312】
続いて、上記単量体水溶液(3)にアクリル酸39.75g、10重量%過硫酸ナトリウム水溶液2.45g、0.1重量%L−アスコルビン酸水溶液1.02g及び0.1重量%過酸化水素水0.41gを、この順番で攪拌しながら添加した。
【0313】
なお、単量体水溶液(3)に、水溶性有機物であるアクリル酸(気体の貧溶媒)を添加したところ、気体の溶解度低下によって、界面活性剤を含んだ該単量体水溶液(3)は、非常に細かい気泡が導入されて白濁していた。また、過酸化水素水を添加してから約4分経過後に重合反応が開始した。該重合反応の開始温度は25.2℃であり、ピーク温度は90℃であった。
【0314】
上記重合反応の開始から1時間経過後に、含水ゲル状架橋重合体をポリプロピレン製容器から取り出した。以降、実施例1と同様にして、得られた含水ゲル状架橋重合体について解砕、乾燥、粉砕、分級の各操作を行った。
【0315】
上記の操作により、固形分96重量%、重量平均粒子径(D50)442μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.39の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(3)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(3)の諸物性を表1に示す。
【0316】
[実施例4]
37重量%アクリル酸ナトリウム水溶液595.4[g/min]、48重量%水酸化ナトリウム水溶液198.6[g/min]、100重量%アクリル酸300.1[g/min]、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.71[g/min]、脱イオン水(イオン交換水)204.7[g/min]、31重量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液0.42[g/min]、界面活性剤として10重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液0.29[g/min]をラインミキシングにて混合し、単量体水溶液(4)を作製した。連続して上記単量体水溶液(4)を、95℃のオイルバスに浸漬したステンレス製のコイル式熱交換器(自立コイル式交換機、型番JC−S1;アズワン株式会社、研究総合機器カタログ)(図1参照)に通過させた。
【0317】
上記熱交換器を通過した後の単量体水溶液(4)に、3重量%過硫酸ナトリウム水溶液を26.0[g/min]でラインミキシングし、2軸の攪拌翼を有する重合装置であるコンティニュアースニーダー((株)ダルトン製、CKDJS−40)に連続的に供給した。該重合装置に供給される単量体水溶液(4)の温度は92℃であり、溶存酸素量は4.26[ml/L]であった。
【0318】
なお、このとき、気体の溶解度低下によって、界面活性剤を含んだ該単量体水溶液(4)は、非常に細かい気泡が導入されて白濁していた。また、該重合装置のジャケット温度は95℃に設定し、窒素ガスを20[L/min]で重合装置に吹き込んだ(図6参照)。
【0319】
上記単量体水溶液(4)は、重合装置に供給された後、直ぐに重合反応が開始した。重合反応と含水ゲル状架橋重合体の剪断とが同時に行われ、破砕された含水ゲル状架橋重合体が連続的に重合装置から排出された。以降、実施例1と同様にして、得られた含水ゲル状架橋重合体について解砕、乾燥、粉砕、分級の各操作を行った。
【0320】
上記の操作により、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)448μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.41の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(4)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(4)の諸物性を表1に示す。
【0321】
[実施例5]気泡導入(例えば、マイクロバブルの導入)との併用
容量2リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸421.9g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.60g、0.1重量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液113.5g、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液173.8g、界面活性剤として10.0重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液0.44g、脱イオン水(イオン交換水)290.4gを投入し、溶解(混合)させて単量体水溶液(5’)を作製した。
【0322】
該水溶液(5’)の温度は、作製直後の1段目の中和熱によって64℃まで上昇した。この水溶液(5’)を55℃に調温しながら、マイクロバブル発生装置(株式会社オーラテック社製、型式:OM4−GP−040)を用いて、0.30〜0.35MPaの絶対圧力下で窒素ガスを導入気体として1分間マイクロバブルを該水溶液(5’A)中に導入した。なお、界面活性剤を含んだ該水溶液(5’)は、マイクロバブル発生装置によって、非常に細かい気泡が導入されて白濁していた。
【0323】
次に、容量1リットルのポリプロピレン製容器に上記単量体水溶液(5’)835g量り取り、攪拌しながら冷却した。液温が53℃となった時点で、30℃に調温した48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液148.9gを加え、混合することで単量体水溶液(5)を作製した。この際、該単量体水溶液(5)の温度は、作成直後の第2段階目の中和熱によって83.1℃まで上昇した。この温度上昇に伴う気体の溶解度低下によって、界面活性剤が含んだ単量体水溶液(5)は、非常に細かい気泡が導入されて白濁していた。
【0324】
次に、上記単量体水溶液(5)の温度が83℃に低下した時点で、3.8重量%の過硫酸ナトリウム水溶液15.3gを攪拌しながら加えた後、すぐにステンレス製バット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)を貼り付け)に大気開放系で注いだ。なお、該バット型容器は、ホットプレート(株式会社井内盛栄堂社製;NEO HOTPLATE HI−1000)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。
【0325】
上記単量体水溶液(5)がバット型容器に注がれて10秒後に重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら上下左右に膨張発泡して進行し、その後、バット型容器よりも若干大きなサイズにまで収縮した。この膨張、収縮は約1分以内に終了した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行い、重合時のピーク温度は111℃であった。
【0326】
以降、得られた含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)に対して、実施例1と同様の解砕、乾燥、粉砕、分級の各操作を行った。上記の操作により、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)451μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.36の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(5)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(5)の諸物性を表1に示す。
【0327】
[実施例6]気泡導入(例えば、マイクロバブルの導入)との併用
界面活性剤として10.0重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液の添加を、マイクロバブルの導入直後に変更したこと以外は実施例5と同様の操作を行った。
【0328】
上記の操作により、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)448μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.45の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(6)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(6)の諸物性を表1に示す。
【0329】
[実施例7]
界面活性剤として実施例2の1.0重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液に代えて、1.0重量%ソルビタンモノラウレート(花王株式会社製)水溶液を用いたこと以外は実施例2と同様の操作を行い、単量体水溶液(7)を作製した。該単量体水溶液(7)の温度は、作成直後の中和熱によって63℃まで上昇した。
【0330】
以降、実施例2と同様の操作を行い、固形分96重量%、重量平均粒子径(D50)439μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.44の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(7)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(7)の諸物性を表1に示す。
【0331】
[実施例8]
界面活性剤として実施例2の1.0重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液に代えて、1.0重量%ポリエーテル変性シリコーン(側鎖変性末端OH型)(東レ・ダウコーニング株式会社製)水溶液を用いたこと以外は実施例2と同様の操作を行い、単量体水溶液(8)を作製した。該単量体水溶液(8)の温度は、作製直後の中和熱によって63℃まで上昇した。
【0332】
以降、実施例2と同様の操作を行い、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)427μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.39の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(8)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(8)の諸物性を表1に示す。
【0333】
[実施例9]
界面活性剤として実施例2の1.0重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液6.45gに代えて、3.0重量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)水溶液14.3gを用いたこと以外は実施例2と同様の操作を行い、単量体水溶液(9)を作製した。該単量体水溶液(9)の温度は、作成直後の中和熱によって64℃まで上昇した。
【0334】
以降、実施例2と同様の操作を行い、固形分96重量%、重量平均粒子径(D50)463μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.39の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(9)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(9)の諸物性を表1に示す。
【0335】
[比較例1]
界面活性剤として実施例1の13.7重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液59.7gを、同重量の脱イオン水(イオン交換水)59.7gに代えたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)432μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.44の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(1)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(1)の諸物性を表1に示す。
【0336】
なお、比較例1で作製した比較単量体水溶液(1)は、熱交換器(図1)によって、実施例1とほぼ同じ98.5℃まで昇温されていたが、界面活性剤を含まないため、発生した気泡が安定せず、結果、細かい気泡が導入されず、ほぼ無色透明であった。
【0337】
[比較例2]
界面活性剤として実施例2の1.0重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液6.45gを、同重量の脱イオン水(イオン交換水)6.45gに代えたこと以外は実施例2と同様の操作を行い、固形分96重量%、重量平均粒子径(D50)455μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(2)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(2)の諸物性を表1に示す。また比較吸水性樹脂粉末(2)の白色度を表2に示す。
【0338】
なお、比較例2で作製した比較単量体水溶液(2)は、界面活性剤を含まないため、発生した気泡が安定せず、細かい気泡の導入(白濁)は見られず、比較例2の昇温後の単量体水溶液はほぼ無色透明であった。
【0339】
[比較例3]
界面活性剤として実施例2の1.0重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液を単量体水溶液(2’)には混合せず、該単量体水溶液(2’)と48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液とを混合した後(83℃)の、単量体水溶液(2)に添加したこと以外は実施例2と同様の操作を行い、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)444μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.43の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(2)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(3)の諸物性を表1に示す。
【0340】
なお、界面活性剤を含まない比較例3の単量体水溶液中では、発生した気泡が不安定である。このため、実施例2では観察された単量体水溶液中への細かい気泡(白濁)は、比較例3では界面活性剤を昇温後に添加しても見られず、比較例3の昇温後の単量体水溶液はほぼ無色透明であった。
【0341】
[比較例4]
界面活性剤として参考例2のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.04gを用いなかったこと以外は参考例2と同様の操作を行い、固形分96重量%、重量平均粒子径(D50)458μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.40の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(4)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(4)の諸物性を表1に示す。
【0342】
なお、界面活性剤を含まない比較例4の単量体水溶液中は発生した気泡が不安定であるため、参考例2においてアクリル酸を添加した時点で確認された、溶液中への細かい気泡の導入は見られず、比較例4の昇温後の単量体水溶液はほぼ無色透明であった。
【0343】
[比較例5]
界面活性剤として実施例4の10重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液を用いなかったこと以外は実施例4と同様の操作を行い、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)450μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(5)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(5)の諸物性を表1に示す。
【0344】
なお、界面活性剤を含まない比較例5の単量体水溶液中は発生した気泡が不安定であるため、実施例4では観察された単量体水溶液中への細かい気泡の導入は見られず、比較例4の昇温後の単量体水溶液はほぼ無色透明であった。
【0345】
[比較例6]
上記特許文献18〜25に準じて炭酸塩を用いて発泡重合を行った。すなわち、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸421.7g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.754g、0.1重量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液113.43g、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液140.4g、脱イオン水(イオン交換水)292.3gを投入し、溶解(混合)させて比較単量体水溶液(6’)を作製した。
【0346】
次に、40℃に調温した48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液211.9gを素早く該比較単量体水溶液(6’)に加え、混合することで比較単量体水溶液(6)を作製した。この際、該比較単量体水溶液(6)の温度は85℃であった。
【0347】
次に、上記比較単量体水溶液(6)の温度が82℃に低下した時点で、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)5.2gを添加し、次いで4重量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.55gを攪拌しながら加えた後、すぐにステンレス製バット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)を貼り付け)に大気開放系で注いだ。なお、上記炭酸水素ナトリウムを添加した時点で炭酸ガスと思われる気泡の発生が見られたがその気泡径は非常に大きく、上記バット型容器に注いだ際には発泡も収まり、ほぼ無色透明の溶液となっていた。また、該バット型容器は、ホットプレート(株式会社井内盛栄堂社製;NEO HOTPLATE HI−1000)を用いて、表面温度が80℃となるまで加熱した。
【0348】
上記比較単量体水溶液(6)がバット型容器に注がれて間もなく重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら上下左右に膨張発泡して進行し、その後、バット型容器よりも若干大きなサイズにまで収縮した。この膨張、収縮は約1分以内に終了した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行った。
【0349】
上記重合反応で得られた含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)をミートチョッパー(飯塚工業株式会社製、MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX、ダイ孔径:6.4mm、孔数:38、ダイ厚み8mm)を用いて解砕し、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得た。このとき、含水ゲルの投入量は350[g/min]、含水ゲル投入と並行して90℃に調温した脱イオン水を80[g/min]で添加しながら解砕を行った。
【0350】
上記解砕操作で得られた細分化された含水ゲル状架橋重合体を目開き850μmのステンレス製金網上に広げ、180℃で30分間熱風乾燥を行った。続いて、該乾燥操作で得られた乾燥物をロールミル(有限会社井ノ口技研社製、WML型ロール粉砕機)を用いて粉砕した後、目開き850μm及び目開き45μmのJIS標準篩を用いて分級した。
【0351】
上記一連の操作により、固形分96重量%、重量平均粒子径(D50)436μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(6)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(6)の諸物性を表1に示す。
【0352】
[参考例1]
比較例2で得られた吸水性樹脂粉末(2)を目開き150μm及び目開き45μmのJIS標準篩を用いて分級し、150μmを通過し45μmを通過しない粒子92重量%と45μmを通過した粒子8重量%からなる参考吸水性樹脂粉末(1)を得た。
【0353】
[比較例7]
上記特許文献34(米国特許公開2007/0225422号)に準じて、吸水性樹脂粉末の存在下で重合を行った。すなわち、比較例6において、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)5.2gを添加せずに、4重量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.55gを添加した直後に参考例1で得られた参考吸水性樹脂粉末(1)25.8gを添加したこと以外は比較例7と同様の操作を行い、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)446μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.36の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(7)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(7)の諸物性を表1に示す。
【0354】
[比較例8]
上記特許文献30(米国特許6107358号)に準じて、気泡分散による発泡重合を行った。すなわち、上記発泡重合により得られた含水ゲル状架橋重合体をミートチョッパー(飯塚工業株式会社製、MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX、ダイ孔径:6.4mm、孔数:38、ダイ厚み8mm)により解砕し、乾燥、粉砕、分級を行い、固形分95重量%、重量平均粒子径(D50)450μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.39の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(8)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(8)の諸物性を表1に示す。なお、単量体水溶液に気泡は分散されていたがその気泡径は非常に大きいものであった。
【0355】
[比較例9]
比較例2で得られた比較吸水性樹脂粉末(2)を目開き600μmのJIS標準篩を用いて分級し、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)336μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.39の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粉末(9)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(9)の諸物性を表1に示す。
【0356】
[実施例10]
実施例4において、単量体水溶液(4)が重合装置に供給されて直ぐに重合が開始される付近に、参考吸水性樹脂粉末(1)を57[g/min]で連続的に供給(微粉リサイクル)したこと以外は、実施例4と同様の操作を行い、固形分96重量%、重量平均粒子径(D50)437μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.43の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(10)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(10)の諸物性を表1に示す。
【0357】
【表1】
【0358】
【表2】
【0359】
(まとめ)
表1より、本発明の製造方法は他の物性を損なうことなく、高価な副原料(多量の界面活性剤や発泡剤)や特殊な設備はあえて必要とせず、吸水速度(FSR)の向上した吸水性樹脂粉末を提供することがわかる。
【0360】
実施例1〜4と比較例1〜5との対比において、溶解度低下、昇温、水性有機物(アクリル酸)の混合時に界面活性剤の存在が吸水速度(FSR)を大きく向上させることが分かる。
【0361】
比較例6〜8に示す従来の発泡重合は吸水速度(FSR)の向上が不十分(比較例6、7でFSRが0.2台)であったり、嵩比重が大きく低下(比較例8)したりする。比較例9のように平均粒子径を小さくする手法は吸水速度(FSR)の向上効果が不十分となるだけでなく、細粒子化によって通液性(例えばSFC)が大きく低下したり、微粉量(例えば150μm通過物)が大きく増加したりする。
【0362】
又、実施例4(FSR;0.36)と実施例10(FSR;0.40)との対比により、微粉リサイクルによって吸水速度(FSR)が向上することが分かる。実施例5、6に示す気泡導入(マイクロバブルの事前導入)との併用によっても、優れた結果を与えることが判る。
【0363】
さらに、表2より、実施例2と比較例2とでは(着色防止剤や劣化防止剤として作用する)キレート剤を同じ量で使用していても、本発明の吸水性樹脂粉末(2)はより白色(WB、X、Y、Zが大きい)であることが分かる。本発明の吸水性樹脂粉末は吸水速度(FSR)が高いだけでなく、同じ着色防止剤(キレート剤)量でも効果的に白色度を向上させることができる。
【0364】
[実施例11]
実施例2で得られた吸水性樹脂粉末(2)100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.48重量部、プロピレングリコール0.75重量部、脱イオン水4.0重量部からなる表面架橋剤溶液を、該吸水性樹脂粉末(2)に均一にスプレーし、混合した。表面架橋剤溶液を混合した吸水性樹脂粒子を熱風乾燥機(温度:180℃)で45分間加熱表面架橋処理した。加熱処理後、得られた吸水性樹脂粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕することで、表面が架橋された吸水性樹脂粒子を得た。
【0365】
得られた表面が架橋された吸水性樹脂粒子100重量部に対して、多価金属カチオンとして硫酸アルミニウム27重量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)0.80重量部、α−ヒドロキシカルボン酸として乳酸ナトリウム60重量%水溶液0.134重量部、及び、プロピレングリコール0.016重量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した。次いで、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩に通過させて、吸水性樹脂粉末(11)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(11)の諸物性を表3に示す。
【0366】
[実施例12]
実施例2で得られた吸水性樹脂粉末(2)100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.48重量部、プロピレングリコール0.75重量部、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001重量部(吸水性樹脂粉末に対して10ppm)、脱イオン水4.0重量部からなる表面架橋剤溶液を、該吸水性樹脂粉末(2)に均一にスプレーしたこと以外は、実施例11と同様にして吸水性樹脂粉末(12)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(12)の諸物性を表3に示す。
【0367】
なお、実施例12で得られた吸水性樹脂粉末(12)は、界面活性剤150ppmを実質均一に内部に存在する吸水性樹脂粉末(2)の表面をさらに界面活性剤10ppmで被覆されたものであり、その表面張力は67.4[mN/m]であった。
【0368】
[比較例10]
比較例2で得られた比較吸水性樹脂粉末(2)に対して、実施例11と同様の操作を行い、比較吸水性樹脂粉末(10)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(10)の諸物性を表3に示す。
【0369】
[比較例11]
比較例9で得られた比較吸水性樹脂粉末(9)に対して、実施例11と同様の操作を行い、比較吸水性樹脂粉末(11)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(11)の諸物性を表3に示す。
【0370】
[比較例12]
比較例8で得られた比較吸水性樹脂粉末(8)に対して、実施例11と同様の操作を行い、比較吸水性樹脂粉末(12)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(12)の諸物性を表3に示す。
【0371】
【表3】
【0372】
(まとめ)
表3より、本発明の製造方法によって得られた吸水性樹脂粉末では、共に表面積に依存するため相反する、吸水速度(FSR)と通液性(SFC)とを高い値で両立することができる。また、吸水性樹脂粉末の内部気泡率(詳細は後述の実施例15等と及び表5)を2.8〜6.6%に制御することで、吸水速度(FSR)と通液性(SFC)とを高い値で両立することができる。また、通液性向上剤として作用する多価金属カチオンの使用によって、SFCが大きく向上していることも判る。
【0373】
[実施例13]
実施例11で得られた吸水性樹脂粉末(11)(内部気泡率3.93%)に対して、上記「(5−9)耐ダメージ性試験」に記載した耐ダメージ性試験を行い、ダメージが与えられた吸水性樹脂粉末(13)を得た。耐ダメージ性試験前後の吸水性樹脂粉末(13)の諸物性を表4に示す。なお、表4中「PS試験」は、「耐ダメージ性試験」を意味する。
【0374】
[実施例14]
実施例12で得られた吸水性樹脂粉末(12)(内部気泡率6.42%)に対して、上記「(5−9)耐ダメージ性試験」に記載した耐ダメージ性試験を行い、ダメージが与えられた吸水性樹脂粉末(14)を得た。耐ダメージ性試験前後の吸水性樹脂粉末(14)の諸物性を表4に示す。
【0375】
[比較例13]
比較例10で得られた比較吸水性樹脂粉末(10)(内部気泡率2.60%)に対して、上記「(5−9)耐ダメージ性試験」に記載した耐ダメージ性試験を行い、ダメージが与えられた比較吸水性樹脂粉末(13)を得た。耐ダメージ性試験前後の比較吸水性樹脂粉末(13)の諸物性を表4に示す。
【0376】
[比較例14]
比較例12で得られた比較吸水性樹脂粉末(12)(内部気泡率6.83%)に対して、上記「(5−9)耐ダメージ性試験」に記載した耐ダメージ性試験を行い、ダメージが与えられた比較吸水性樹脂粉末(14)を得た。耐ダメージ性試験前後の比較吸水性樹脂粉末(14)の諸物性を表4に示す。
【0377】
【表4】
【0378】
(まとめ)
表4より、本発明の吸水性樹脂粉末は、物性の低下(SFCやFSR、特にSFC)が少なく耐ダメージ性に優れていることが分かる。また、吸水性樹脂粉末の内部気泡率を2.8〜6.6%に制御することで、耐ダメージ性に優れることが分かる。かかる吸水性樹脂粉末は、空気輸送時や紙オムツ製造時におけるダメージによる物性低下がなく、おむつ製造後、特に高濃度おむつ製造後であっても高物性を維持する。
【0379】
[実施例15、16]
上記実施例11、12で得られた吸水性樹脂粉末(11)及び(12)に対して、上記「(5−10)見かけ密度」及び「(5−11)真密度」に記載した見かけ密度及び真密度の測定を行い、上記「(5−12)内部気泡率」に記載した内部気泡率を算出した。その結果を表5に示す。
【0380】
[比較例15、16]
上記比較例10、11で得られた比較吸水性樹脂粉末(10)及び(11)に対して、上記「(5−10)見かけ密度」及び「(5−11)真密度」に記載した見かけ密度及び真密度の測定を行い、上記「(5−12)内部気泡率」に記載した内部気泡率を算出した。その結果を表5に示す。
【0381】
[比較例17、18]
非特許文献1(1998年)に加えて、2010年出願時点に市販されている吸水性樹脂について、その内部気泡率を調べるため、市販の紙オムツを購入し、使用されている吸水性樹脂粉末を取り出して分析した。
【0382】
即ち、2010年7月にインドネシアで購入した紙オムツ(ユニ・チャーム株式会社製;商品名「Mamy Poko(登録商標)」から取り出した吸水性樹脂、及び、2010年6月にドイツで購入した紙オムツ(dm社製;商品名「babylove aktiv plus」から取り出した吸水性樹脂をそれぞれ比較吸水性樹脂粉末(17)、(18)として、上記「(5−10)見かけ密度」及び「(5−11)真密度」に記載した見かけ密度及び真密度の測定を行い、上記「(5−12)内部気泡率」に記載した内部気泡率を算出した。その結果を表5に示す。
【0383】
【表5】
【0384】
(まとめ)
表5より、180℃で3時間以上乾燥しさらに45μm未満に微粉砕後の吸水性樹脂微粒子について、その真密度は測定サンプルに関わらず、ほぼ同じ測定値(1.652〜1.656)を示すことから、吸水性樹脂の化学組成(高分子の繰り返し単位やその他微量原料)で真密度は一義的に決まり、この測定法により吸水性樹脂粉末の真密度が正確に測定されたことが分かる。
【0385】
上記〔3〕ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の物性で説明したように、非特許文献1(発行1998年)のTable5.6(p.197〜199)には、市販の吸水性樹脂(5種類)について、その40〜60mesh−Cut(上下限425〜250μmの粉末に相当)品のBET表面積、吸水速度、吸水倍率、嵩比重及び見かけ密度を開示している。しかしながら、非特許文献1には詳細な測定方法の開示がないため、本発明品と直接の比較はできないが、かかる特許文献1には、本発明の内部気泡率や粒度を満たす吸水性樹脂粉末を示唆しない。
【0386】
例えば、非特許文献1のTable5.6に開示された市販の(ポリアクリル酸系)吸水性樹脂について、見かけ密度1.250〜1.667[g/cm]の5種類の市販の吸水性樹脂を開示する。該吸水性樹脂の真密度(化学組成)が仮にすべて同じとすると、それらの内部気泡率は、0%或いは0%に近いタイプ(40〜60mesh−Cut後の見かけ密度が1.667[g/cm]のAquakeep、Drytech510)と、約10〜25%のタイプ(見かけ密度1.500[g/cm]のArasorb720、Sanwet 1M−1000、同1.250[g/cm]のAridall 1078)に大別される。尚、上記5種類の市販の吸水性樹脂は、上記したように本発明の吸水性樹脂とは、嵩比重、吸水倍率についても相違点を有する。
【0387】
更に、非特許文献1(1998年)に開示の市販の吸水性樹脂に加えて、本願出願(2010年)時点での市販の吸水性樹脂について、その内部気泡率を比較例17、18に示したが、2010年現在でも、市販の吸水性樹脂(市販されている紙オムツから取り出した吸水性樹脂)においても、本発明の測定方法(乾式測定)で0.60%又は1.21%であり、かかる分析結果から市販の吸水性樹脂からは、本発明の特定の内部気泡率(2.8〜6.6%)の存在は示唆しない。
【0388】
表4及び表5のまとめで述べたように、本発明の吸水性樹脂は2.8〜6.6%さらには3.0〜6.5%の内部気泡率を有する新規なポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末であり、従来の課題(通液性と吸水速度の両立、及び耐ダメージ性)を解決することが分かる。このような吸水性樹脂は、空気輸送時や紙オムツ製造時にプロセスダメージを受けた後においても、通常相反関係にあるFSRとSFCを共に高く保つことが可能である。
【0389】
[実施例17]
実施例11で得られた吸水性樹脂粉末(11)(内部気泡率3.93%)(単量体に界面活性剤150ppm使用)について、上記「(5−13)最大挿入荷重(PIL)及び挿入距離(PID)」に記載した最大挿入荷重(PIL)及び挿入距離(PID)を測定した。結果を表6に示す。
【0390】
[実施例18]
実施例2で得られた吸水性樹脂粉末(2)に対して、実施例12と同様の表面架橋操作(界面活性剤10ppm使用)を行い、吸水性樹脂粉末(18)を得た。
【0391】
かかる吸水性樹脂粉末(18)は実施例12で得られた吸水性樹脂粉末(12)と同様に、界面活性剤150ppmを実質均一に内部に存在する吸水性樹脂粉末(2)の表面をさらに界面活性剤10ppmで被覆されたものであり、その表面張力は67.4[mN/m]であった。
【0392】
この吸水性樹脂粉末(18)について、実施例17と同様に最大挿入荷重(PIL)及び挿入距離(PID)を測定した。結果を表6に示す。
【0393】
[比較例19]
比較例10で得られた比較吸水性樹脂粉末(10)(内部気泡率2.60%)(界面活性剤を未使用)について、最大挿入荷重(PIL)及び挿入距離(PID)を測定した。結果を表6に示す。
【0394】
[比較例20]
比較例2で得られた比較吸水性樹脂粉末(2)に対して、実施例12と同様の表面架橋操作を行い、比較吸水性樹脂粉末(20)を得た。かかる比較吸水性樹脂粉末(20)は粒子内部(中心部)は界面活性剤を含まず、粒子表面が界面活性剤10ppmで被覆されたものであり、かかる比較吸水性樹脂粉末(20)について、最大挿入荷重(PIL)及び挿入距離(PID)を測定した。結果を表6に示す。
【0395】
【表6】
【0396】
(まとめ)
表6より、界面活性剤を内部に均一に含み、かつ、吸水性樹脂表面が界面活性剤で被覆される(実施例18)ことで、挿入距離(PID)が、界面活性剤を含まない、又は内部若しくは表面のどちらか一方に含まれる場合と比較して、圧倒的に大きくなることが分かる。界面活性剤を内部に均一に含み、かつ、吸水性樹脂表面が界面活性剤で被覆されることで、(同じ効果を得るために)界面活性剤の使用量を低減させることができるため、実質的に表面張力の低下もなく、滑り性が高く、取り扱い性及び耐ダメージ性に優れた吸水性樹脂を得ることができる。
【0397】
以下、本発明の課題解決(特に着色、耐ダメージ性)において、実施例19〜22でp−メトキシフェノールの効果を示す。
【0398】
[実施例19]
実施例1で得られた吸水性樹脂粉末(1)について、そのp−メトキシフェノール量を測定したところ、12ppmであった。
【0399】
[実施例20]
実施例1において、p−メトキシフェノール量1ppmで重合した。得られた吸水性樹脂粉末(20)のp−メトキシフェノールを測定したところ、ND(1ppm未満)であった。p−メトキシフェノールがND(1ppm未満)の吸水性樹脂粉末(20)の上記(5−15)に記載の耐候性(光劣化)は、p−メトキシフェノールが12ppmである吸水性樹脂粉末(1)より約10%悪かった。p−メトキシフェノールが吸水性樹脂の耐候性を向上させることがわかる。以上、耐候性(光に対する耐ダメージ性)において、単量体及び/又は吸水性樹脂中のp−メトキシフェノール量が重要であることが分かる。
【0400】
[実施例21]
実施例1において、p−メトキシフェノール量230ppmで重合した。得られた吸水性樹脂粉末(21)のp−メトキシフェノールを測定したところ、82ppmであった。p−メトキシフェノールが82ppmの吸水性樹脂粉末(21)の初期着色(製造直後の着色)は、p−メトキシフェノールが12ppmである吸水性樹脂粉末(1)より悪く、L値88.3、a値−1.8、b値10.2であった。着色において、単量体及び/又は吸水性樹脂中のp−メトキシフェノール量が重要であることが分かる。
【0401】
[実施例22]
実施例2において、p−メトキシフェノール量70ppmで重合した。さらに、実施例11と同様に表面架橋を行い、実施例11と同様の物性の吸水性樹脂粉末(22)を得た。p−メトキシフェノールを測定したところ、10ppmであった。
【0402】
以下、実施例23〜25で、特願2010−088993号に準じた重合後のゲル粉砕との併用する実施形態について示す。
【0403】
[実施例23]
37重量%アクリル酸ナトリウム水溶液595.4[g/min]、48重量%水酸化ナトリウム水溶液198.6[g/min]、100重量%アクリル酸300.1[g/min]、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.71[g/min]、脱イオン水(イオン交換水)203.9[g/min]、31重量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液0.42[g/min]、界面活性剤として10重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液0.46[g/min]を連続的に分散機を用いて混合し、該分散機を通過した後の単量体水溶液に、3重量%過硫酸ナトリウム水溶液26.0[g/min]をラインミキシングし、ベルト重合機に供給した。該ベルト重合機は、表面がフッ素樹脂コーティングされた長さ3.8m、幅60cmのエンドレスベルトを備え、該ベルトの底面側および重合機の周囲が約90℃に加熱且つ保温され、中央部に蒸発水を回収する為の吸気配管を備えている。又、ベルト上に供給する単量体水溶液の温度は92℃となるように分散機中に通水してコントロールした。(図14参照)
該重合装置に供給される単量体水溶液(23)の温度は92℃であり、溶存酸素量は4.30[ml/l]であった。
【0404】
尚、このとき、気体の溶解度低下によって、界面活性剤を含んだ該単量体水溶液(23)は、非常に細かい気泡が導入されて白濁しており、ベルト重合機に連続的に供給された後、直ぐに重合反応が開始し、重合機中でおよそ2分間重合せしめて連続的に重合機出口より帯状の含水ゲル状重合体(含水ゲル)を得た。得られたゲルの水可溶分は3.2重量%、固形分は53重量%、水可溶分の重量平均分子量は228521[Da]であった。
【0405】
次に、得られた含水ゲルを以下の仕様を有するスクリュー押出機(ミートチョッパー)で長さ200mmに切断された含水ゲルをゲル粉砕した。上記スクリュー押出機は、その先端部に多孔板を備え、該多孔板の直径は100mm、孔径7.5mm、孔数55個、厚み6mmであった。又、ゲル粉砕の条件として、含水ゲルの供給速度を1600[g/min]に設定し、更に90℃の温水(供給速度;50[g/min])、及び水蒸気(供給速度;70[g/min])を同時にミートチョッパーに供給し、スクリュー軸回転数を412rpmとした。尚、ゲル粉砕前の含水ゲルの温度は94℃であり、ゲル粉砕後の含水ゲル(以下、「粉砕ゲル」と称する。)の温度は103℃であった。
【0406】
得られた粉砕ゲル(23)の重量平均粒子径(D50)は897μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.98、水可溶分は3.8重量%、固形分は49.4重量%、水可溶分の重量平均分子量は263330[Da]であった。
【0407】
次に、得られた粉砕ゲル(23)に対して、実施例1と同様の解砕、乾燥、粉砕、分級の各操作を行った。
【0408】
上記の操作により、固形分96重量%、重量平均粒子径(D50)445μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.36の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(23)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(23)の諸物性を表7に示す。尚、水可溶分及び水可溶分の重量平均分子量の測定については、特願2010−088993号に準じて行った。
【0409】
[実施例24]
実施例23において、ゲル粉砕の条件として、多孔板の孔径19.0mm、孔数10個、厚み10.5mmであった。含水ゲルの供給速度を1600[g/min]に設定し、更に90℃の温水(供給速度;63[g/min])、及び水蒸気(供給速度;95[g/min])を同時にミートチョッパーに供給し、スクリュー軸回転数を257rpmとしたこと以外は実施例23と同様にして粉砕ゲル(24)を得た。
【0410】
得られた粉砕ゲル(24)の重量平均粒子径(D50)は1232μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は1.88、水可溶分は3.8重量%、固形分は51.1重量%、水可溶分の重量平均分子量は229121[Da]であった。
【0411】
次に、得られた粉砕ゲル(24)に対して、実施例1と同様の解砕、乾燥、粉砕、分級の各操作を行った。
【0412】
上記の操作により、固形分95重量%、重量平均粒子径(D50)433μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.39の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(24)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(24)の諸物性を表7に示す。
【0413】
[実施例25]
実施例23において、単量体水溶液として用いられる37重量%アクリル酸ナトリウム水溶液及び脱イオン水(イオン交換水)中に、マイクロバブル発生装置(株式会社オーラテック社製、型式:OM4−GP−040)を用いて、窒素ガスを導入気体として導入したこと以外は実施例23と同様にしてゲルを得た。得られたゲルの水可溶分は3.0重量%、固形分は53重量%、水可溶分の重量平均分子量は236521[Da]であった。
【0414】
このゲルを実施例23と同様の条件で粉砕した。得られた粉砕ゲル(25)の重量平均粒子径(D50)は879μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.97、水可溶分は3.6重量%、固形分は48.8重量%、水可溶分の重量平均分子量は269981[Da]であった。
【0415】
次に、得られた粉砕ゲル(25)に対して、実施例1と同様の解砕、乾燥、粉砕、分級の各操作を行った。
【0416】
上記の操作により、固形分95重量%、重量平均粒子径(D50)446μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(25)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(25)の諸物性を表7に示す。
【0417】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0418】
本発明により得られた吸水性樹脂粉末を紙オムツ等の衛生材料に使用した場合、通液性と吸水速度を両立し、耐衝撃性(耐ダメージ性)や白色度にも優れるため、従来の衛生材料に比べて優れた吸収性能(吸水速度)を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15