特許第5647629号(P5647629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5647629大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5647629
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
   A61B10/00 E
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-22794(P2012-22794)
(22)【出願日】2012年2月6日
(65)【公開番号】特開2012-192161(P2012-192161A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2012年11月2日
(31)【優先権主張番号】100108831
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】512030393
【氏名又は名称】呉 明達
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】呉 明達
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−149894(JP,A)
【文献】 特開2002−119511(JP,A)
【文献】 特開2006−305334(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0306365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22、10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法において、被験者の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域を正確に定位するのに用いられ、
(A)脳の血流量即時変化を検出可能な検出装置を提供するステップ、
(B)該検出装置を利用して被験者の頭部の検出領域内に複数の検出点で構成された一つの検出アレイを構築して該検出領域内の脳の血流量即時変化をモニタリングし、そのうち、検出領域は大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域にほぼ対応するものとするステップ、
(C)被験者に問題を出し、且つ被験者に「はい」又は「いいえ」のみで回答させるステップ、
(D)被験者が該問題に回答してから所定時間内に、該検出領域内の脳血流量即時変化に対応する活動領域に基づき、被験者の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の正確な位置を判定するステップ、
以上を包含することを特徴とする、大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法。
【請求項2】
請求項1記載の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法において、該検出装置は近赤外線脳血流検出装置とされることを特徴とする、大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法。
【請求項3】
請求項1記載の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法において、(D)のステップでは、問題に回答して3秒以内に、該検出領域内の脳血流量即時変化に基づき判定を行うことを特徴とする、大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法。
【請求項4】
請求項1記載の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法において、(D)のステップでは、問題に回答して2秒以内に、該検出領域内の脳血流量即時変化に基づき判定を行うことを特徴とする、大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法。
【請求項5】
請求項1記載の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法において、(D)のステップでは、問題に回答して1秒以内に、該検出領域内の脳血流量即時変化に基づき判定を行うことを特徴とする、大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法。
【請求項6】
請求項1記載の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法において、(C)のステップで、回答が「はい」とされ且つ(D)のステップで該検出領域内の脳血流量が明らかに増加した部位に対応する活動領域を検出した時、該活動領域が肯定回答領域とされることを特徴とする、大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法。
【請求項7】
請求項6記載の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法において、検出された該肯定回答領域は、第1肯定回答領域と第2肯定回答領域を包含するか、或いは該第1肯定回答領域と該第2肯定回答領域のいずれか一方のみを包含することを特徴とする、大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法。
【請求項8】
請求項1記載の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法において、(C)のステップで、回答が「いいえ」とされ且つ(D)のステップで該検出領域内の脳血流量が明らかに増加した部位に対応する活動領域を検出した時、該活動領域が否定回答領域とされることを特徴とする、大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法。
【請求項9】
請求項8記載の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法において、検出された該否定回答領域は、第1否定回答領域と第2否定回答領域を包含するか、或いは該第1否定回答領域と該第2否定回答領域のいずれか一方のみを包含することを特徴とする、大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一種の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法に係り、特に、脳の血流量の動態変化を利用して大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域を定位する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嘘発見技術は、心理学(特に心理学と生理心理学)、犯罪学、刑事偵察学、電子学、及びその他の関係学科を総合的に運用した成果であり、編集されたテーマを通して情緒刺激が誘発する人体変化を測定することで、人体心理変化を判断する科学技術である。人体の呼吸、心拍数、血圧及び筋肉の緊張状態等の測定を発展させてなるのが、嘘発見方法であり、現在、よく見られる嘘発見器はほとんどが、呼吸測定装置、皮膚電気反応測定装置及び血圧測定装置を包含する。
【0003】
上述の周知の嘘発見器は、人類の生理反応測定のみから嘘を発見するが、嘘は人類の大脳が働いた思考下での産物であり、嘘は大脳皮質の活動状態に対応しているはずであり、このため嘘をついているときの大脳皮質の活動状況の検出方法があれば、正確に被験者が嘘をついているかを知ることができる。現在、脳部状態を検出できる装置中、脳波測定装置は僅かに脳波を測定できるだけであり、fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)は大脳領域の活動状態を検出できるとはいえ、装置の体積が膨大であり、使用上、相当に不便であり、並びに即時に被験者の当時の嘘つき状況を現出できない。近赤外線スペクトロスコピー(Near INfrared (Reflectance)Spectroscopy;NIRS)は頭部の反射する光線をセンスし、大脳皮質内の血液流動の変化を測定し、且つ電磁ノイズの影響を受けず、高度の空間解析度を達成でき、且つ科学技術の進歩に伴い、近赤外線スペクトロスコピーはリアルタイムに脳の血流量動態変化を表現できるようになった。
【0004】
近赤外線スペクトロスコピーを利用した嘘発見方法は、問題に回答する時に、大脳皮質中に「肯定回答領域」と「否定回答領域」が活動しているか否かにより、被験者の問題に対する回答が誠実か否かを判定する。しかし、各個人の大脳皮質の各サブ領域の位置は基本的に相似であるものの、各サブ領域、たとえば「肯定回答領域」及び「否定回答領域」の正確な位置は、個人間でいくらか差異があり、これにより、もし嘘発見前に各個人の「肯定回答領域」と「否定回答領域」の位置を正確に定位できれば、後続の嘘発見上、判定結果の正確度をアップできる。これにより、いかに各個人の大脳皮質中の「肯定回答領域」と「否定回答領域」の大まかな位置から、さらに正確な所在を定位できるようにするかが、極めて発展を待たれる課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述したとおり、各個人の大脳皮質中の各サブ領域の位置は基本的に相似しているが、各サブ領域、たとえば、「肯定回答領域」及び「否定回答領域」の正確な位置は、個人間でいくらか差異があり、これにより、もし嘘発見前に各個人の「肯定回答領域」と「否定回答領域」の位置を正確に定位できれば、後続の嘘発見上、判定結果の正確度をアップできる。
【0006】
これにより、本発明の目的は、一種の、大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は周知の技術の問題を解決するために採用する技術手段として、正確に被験者の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域を定位するのに用いられる大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法を提供し、それは、以下のステップ、すなわち、
(A)脳血流量即時変化を検出可能な検出装置を提供するステップ、
(B)該検出装置を利用して被験者の頭部の検出領域内に複数の検出点で構成された一つの検出アレイを構築して該検出領域内の脳血流量即時変化をモニタリングし、そのうち、該検出領域は大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域にほぼ対応するものとするステップ、
(C)被験者に問題を出し、且つ被験者に僅かに「はい」又は「いいえ」のみで回答させるステップ、
(D)被験者が該問題に回答してから所定時間内に、該検出領域内の脳血流量即時変化に対応する活動領域に基づき、被験者の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の正確な位置を判定するステップ、
以上を包含する。
【発明の効果】
【0008】
本発明が採用する技術手段により、異なる個人の大脳皮質の「肯定回答領域」と「否定回答領域」位置を正確に定位でき、後続の嘘発見上、有効に嘘発見結果の正確率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のフローチャートである。
図2】本発明の大脳皮質の否定回答領域を正確に定位する表示図である。
図3】本発明の大脳皮質の肯定回答領域を正確に定位する表示図である。
図4】本発明の方法を用いて正確に定位した大脳皮質の否定回答領域の実際の検出結果である。
図5】本発明の方法を用いて正確に定位した大脳皮質の肯定回答領域の実際の検出結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の方法のフローチャートである。図示されるように、本発明は一種の、大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法であり、それは被験者の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域を正確に定位するのに用いられる(そのステップは図面も参照されたい)。
ステップ(A):脳血流量即時変化を検出可能な検出装置を提供する。本実施例では、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を使用した近赤外線脳血流検出装置を使用し、頭部が反射する光線をセンスし、大脳皮質内の血液流動の変化を測定し、且つ電磁ノイズの影響を受けることがなく、高度の空間解析度を達成する。特に、本実施例の検出装置は脳血流量の動態変化をリアルタイムで検出する。
ステップ(B):検出装置を利用して被験者の頭部の検出領域内に複数の検出点で構成された一つの検出アレイを構築し、該検出領域内の脳血流量即時変化をモニタリングし、そのうち、該検出領域は大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域にほぼ対応するものとする。本ステップでは、試験前に、検出領域の所在位置を大まかに限定する。
ステップ(C):被験者に問題を出し、且つ被験者に僅かに「はい」又は「いいえ」のみで回答させる。この問題は、被験者の基本データ(たとえば、性別、年齢或いはその他の既に正確な答案がわかっている背景データ)に基づき設問される。
ステップ(D):被験者が該問題に回答してから所定時間内に、該検出領域内の脳の血流量変化に対応する活動領域に基づき、被験者の大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の正確な位置を判定する。本ステップでは、問題に回答後、1秒、2秒或いは3秒内に、その検出領域内の脳血流量即時変化に基づき判定するのがよい。この時間が短すぎると完全には脳血流量変化に反応しない恐れがあり、長すぎると、脳血流量変化が終わってしまっている恐れがある。これにより時間は短すぎても長すぎてもよくない。
【0011】
[実施例1]
大脳皮質の否定回答領域の定位:
図2を参照されたい。それは本発明の方法の大脳皮質の否定回答領域の正確な定位の表示図である。本実施例の実施ステップはほぼ前述したとおりであり、近赤外線脳血流検出装置の設置完成後に、被験者の頭部の検出領域A11内に、複数の検出点1で構成された検出アレイ2を構築する。図2に示されるように、図中の該検出アレイ2を構成する各検出点1は検出に必要な光線発射点と光線検出点を包含する。
続いて、被験者が問題(該問題は答案が「いいえ」となるよう設問される)に回答して3秒内に、その回答が「いいえ」であり、且つ検出領域A11内の脳血流量即時変化に対応する活動領域(該検出領域内の脳血流量が明らかに増加した部位)を検出した時、該活動領域はすなわち、否定回答領域とされ、第1否定回答領域A211と第2否定回答領域A212を包含し得て、該検出領域中で、異なる色の領域により血流量変化の状況を表示する。たとえば、図4に示されるように、キャプチャ画像中の色変化が特定の色に接近する領域ほど、脳血流量が明らかに増加した部位を表示する(本図はグレースケール図でありこれらの色は表示できない)。図4中、丸で囲まれた二つの活動領域は、上述の第1否定回答領域A211と第2否定回答領域A212である。個人の大脳の間に存在する差異性により、第1否定回答領域と第2否定回答領域の活動を同時に検出することもあれば、そのうちの一つのみを検出することもある。
【0012】
[実施例2]
大脳皮質の肯定回答領域の定位:
図3を参照されたい。それは本発明の方法の大脳皮質の肯定回答領域の正確な定位の表示図である。本実施例の実施ステップは実施例1とほぼ同じであり、たとえば同様に近赤外線脳血流検出装置の設置完成後に、被験者の頭部の検出領域A12内に、複数の検出点1で構成された検出アレイ2を構築する。
続いて、被験者が問題(該問題は答案が「はい」となるよう設問される)に回答して3秒内に、その回答が「はい」であり、且つ検出領域A12内の脳血流量即時変化に対応する活動領域(該検出領域内の脳血流量が明らかに増加した部位)を検出した時、該活動領域はすなわち、肯定回答領域(第1肯定回答領域A221、第2肯定回答領域A222)とされる。その実験検出結果は図5に示されるキャプチャ画像のようであり、該検出領域中で、異なる色の領域により血流量変化の状況を表示する。たとえば、図5に示されるように、キャプチャ画像中の丸で囲まれた二つの活動領域がすなわち、上述の第1肯定回答領域A221と第2肯定回答領域A222である(本図はグレースケール図でありこれらの色は表示できない)。前述の実施例と同様に、個人の大脳の間に存在する差異性により、第1肯定回答領域と第2肯定回答領域がいずれも活動するのを同時に検出する場合もあれば、そのうち一方のみしか検出しないこともある。
【0013】
以上の実施例から分かるように、本発明の提供する大脳皮質の肯定回答領域と否定回答領域の定位方法は確実に産業上の利用価値を有するが、以上述べたことは、本発明の実施例にすぎず、本発明の実施の範囲を限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲に基づきなし得る同等の変化と修飾は、いずれも本発明の権利のカバーする範囲内に属するものとする。
【符号の説明】
【0014】
1 検出点
2 検出アレイ
A11、A12 検出領域
A211 第1否定回答領域
A212 第2否定回答領域
A221 第1肯定回答領域
A222 第2肯定回答領域
図1
図2
図3
図4
図5