特許第5647671号(P5647671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5647671
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】掘削ツール用両面切削インサート
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
   B23B51/00 T
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-508511(P2012-508511)
(86)(22)【出願日】2010年4月8日
(65)【公表番号】特表2012-525271(P2012-525271A)
(43)【公表日】2012年10月22日
(86)【国際出願番号】US2010030358
(87)【国際公開番号】WO2010126693
(87)【国際公開日】20101104
【審査請求日】2012年12月28日
(31)【優先権主張番号】12/431,384
(32)【優先日】2009年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505300221
【氏名又は名称】ケナメタル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】デュフール,ジャン−リュク
(72)【発明者】
【氏名】ファング,エックス・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルズ,デービット・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ハートマン,トーマス・ビー
【審査官】 足立 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−038319(JP,A)
【文献】 特開2007−038320(JP,A)
【文献】 特開2006−281391(JP,A)
【文献】 特開平06−015517(JP,A)
【文献】 特開平05−285708(JP,A)
【文献】 特開昭62−039106(JP,A)
【文献】 実開平07−007809(JP,U)
【文献】 特開2004−202687(JP,A)
【文献】 特表2009−504924(JP,A)
【文献】 特開昭62−054614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00−51/06
B23B 27/14
B23C 5/06−5/10,5/20
B22F 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削ツール用両面切削インサートであって、
上面と、
底面と、
上面と底面を相互連結すると共に、少なくとも一つの切削縁部を形成する少なくとも一つの側面と、を備え、
上面と底面の各々は、異なる外部プロファイルと、異なるチップ溝形状と、同じ内接面とを備え、上面及び底面の各々は、4つの割り出し可能な切削縁部を備える、掘削ツール用両面切削インサート。
【請求項2】
請求項1記載の掘削ツール用両面切削インサートにおいて、
上面及び底面上で、割り出し可能な切削縁部の各々は、切削インサートの中心軸線を中心にして90度の回転的に対称である、掘削ツール用両面切削インサート。
【請求項3】
請求項1記載の掘削ツール用両面切削インサートにおいて、
上面及び底面の双方は、概ね正方形状に基づいている、掘削ツール用両面切削インサート。
【請求項4】
請求項1記載の掘削ツール用両面切削インサートにおいて、
底面は、超硬合金で構成される、掘削ツール用両面切削インサート。
【請求項5】
請求項1記載の掘削ツール用両面切削インサートにおいて、
上面は、超硬合金で構成される、掘削ツール用両面切削インサート。
【請求項6】
請求項1記載の掘削ツール用両面切削インサートにおいて、
上面は、第1の超硬合金からなり、底面は、第2の異なる超硬合金からなる、掘削ツール用両面切削インサート。
【請求項7】
少なくとも二つの両面掘削インサートを備える掘削ツールシステムであって、
各両面掘削インサートは、少なくとも一つの側面によって相互連結された、上面及び対応する底面を備え、
両面掘削インサートの底面及び上面は、形状が互いに異なり、上面及び底面の各々は、中心穴軸線を中心にして90度回転的に対称である少なくとも4つの切削縁部を備える、掘削ツールシステム。
【請求項8】
請求項7記載の掘削ツールシステムにおいて、
両面掘削インサートは、主シャフトに連結されると共に掘削動作を許容するように配置されている、掘削ツールシステム。
【請求項9】
請求項7記載の掘削ツールシステムにおいて、
少なくとも一つの両面掘削インサート上面は、主要な切削面である、掘削ツールシステム。
【請求項10】
請求項7記載の掘削ツールシステムにおいて、
少なくとも一つの両面掘削インサート底面は、主要な切削面である、掘削ツールシステム。
【請求項11】
請求項7記載の掘削ツールシステムにおいて、
両面掘削インサートは、主シャフトに取り付けられると共に掘削動作を許容するように配置され、主シャフトは、掘削動作を開始するために必要な速度で回転運動を可能とする、掘削ツールシステム。
【請求項12】
上面及び底面を備える両面切削インサートであって、
上面と底面は、異なる外部プロファイルと、異なるチップ溝形状と、同じ内接面とを備え、上面及び底面の各々は、個々に、少なくとも4つの同じ切削縁部を備える、両面切削インサート。
【請求項13】
請求項12記載の両面切削インサートにおいて、
底面は、超硬合金で構成される、両面切削インサート。
【請求項14】
請求項12記載の両面切削インサートにおいて、
上面は、超硬合金で構成される、両面切削インサート。
【請求項15】
請求項12記載の両面切削インサートにおいて、
上面は、第1の超硬合金からなり、底面は、第2の異なる超硬合金からなる、両面切削インサート。
【請求項16】
上面及び底面を備える両面切削インサートであって、
上面と底面は、異なる外部プロファイルと、同じ内接面とを備え、上面及び底面の各々は、個々に、少なくとも4つの同じ切削縁部を備え、
上面は、第1の超硬合金からなり、底面は、第2の異なる超硬合金からなる、両面切削インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具の分野に関する。特に、本発明は、掘削ツールの両面切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
切削インサートは、通常、周辺ロータリーフライス加工用途で寿命に苦しんでいる。外周削り(また、“スラブフライス加工”と呼ばれる)は、フライス工具の周囲に配置されている切削インサートを使用して粉砕された表面を作成する。フライス加工は、通常、被加工物の粉砕された表面に平行な回転軸を中心にしてフライス工具を回転させることにより達成される。インサートの軸方向の切削面と半径方向の切断面の両方に正のすくい面形状を構成する割り出し可能な切削インサートは、一般的に周縁回転工具の使用を伴う操作に従事している。割り出し可能な切削インサートは、多数の切削縁を含む。使用されている切削縁が磨耗や破損した場合、割り出し可能なインサートは、ツールホルダーのインサートポケットの別の方向を仮定して回転し、インサートの異なる切削縁部がワークピースに現れる。インサートの正の切削形状は、必要に応じて切削抵抗を低減し、結果的に、より効率的な切削加工で、その結果、消費電力を低減する。周辺ロータリーフライス加工で使用される特定の切削インサートは、2つの主切削縁部を形成する二つの長い側面と2つの副切削縁部を形成する二つの短い側面を有する概ね平行四辺形である(すなわち、インサートの上面上のポイントから見たときに各々が概ね平行四辺形の形状を有する)。これらのタイプの切削インサートは、切断の大きさ深さの機能を提供するが、そのようなインサートは、例えば、正方形の形状の切削インサートに比べて強度がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
両面切削インサートは、片面インサートに対して利用可能な切削縁部の数を倍増し、それによって、切削工具のエンドユーザーと切削工具の製造業者の両方のコスト削減でも大きなメリットを生じる。現在、両面切削インサートは、最も一般的に、切削ツールが静止して加工されるワークピースが回転する回転や溝加工などの静止加工用途で使用される。回転工具用の便利な両面切削インサートの開発における主要な課題の一つは、穴加工などの回転加工のアプリケーションに正のカット形状を提供することである。
従来、両面切削インサートは、定置機械加工アプリケーションでの使用に適していた。これらのアプリケーションは、前述のように、切削工具が静止したまま加工される部分を回転させる必要がある。近年、コスト削減と切削ツールのエンドユーザーの高い生産性を要求するために、両面の切削インサートは、加工用途のために開発されている。
現在利用可能な両面切削インサートは、上面と下面に対して同一の切削プロファイルと加工形状を使用する。この同一の形状は、インサート内で内接円を支持するために維持される。それは、不可能ではないが、掘削ツールの切削速度が中心部でのゼロから周縁での最大までに変化する掘削作業などの機械加工アプリケーションに対して同じ同一の切削インサートを使用して改善された加工性能を達成することは非常に困難である。この切削速度の矛盾は、切削縁部がワークピースを切断するために回転軸線を中心にして回転するために生じる。半径方向の回転軸から遠い切削縁部の領域は、軸線を中心とした各回転に対してより長い通路を通じて動かされる必要がある。回転軸に半径方向において近い切削縁部の領域は、逆に、回転あたりの短い距離を動かされる。軸における切削縁部の部分は、軸線を中心に回転中同じ位置のままであり、従って、ツールの回転ごとに任意の距離を動かされない。従って、切削速度(すなわち、時間当たりの切削縁部による動かされる距離)は、回転軸でのゼロから軸から半径方向に遠い切削縁部の領域での最大値まで変化する。切削速度が増加すると、切削縁部の切削力は増加し、より大きな摩耗を生じる。
このように、半径方向での切削縁部に沿った切削速度の変動から生じる掘削性能の限界、他の短所や欠点を克服する、改善された両面切削インサートが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様によれば、掘削ツール用両面切削インサートは、上面と、底面と、上面と底面を相互連結すると共に、少なくとも一つの切削縁部を形成する少なくとも一つの側面とを含む。上面と底面は、異なる外部プロファイル及びチップ溝形状と、同じ内接面とを備え、上面及び底面の各々は、4つの割り出し可能な切削縁部を含む。
【0005】
本開示の別の態様によれば、掘削ツールシステムは、少なくとも二つの両面掘削インサートを含む。各両面掘削インサートは、少なくとも一つの側面によって相互連結された、上面及び対応する底面を含む。両面掘削インサートの底面及び上面は、形状が互いに異なり、上面及び底面の各々は、中心穴軸線を中心にして90度回転的に対称である少なくとも4つの切削縁部を備える。特定の実施形態によれば、各両面掘削インサートは、主シャフトに連結されると共に掘削動作を許容するように配置されている。特定の実施形態によれば、主シャフトは、掘削動作を開始するために必要な速度で回転運動を可能とする。
【0006】
本開示のさらに別の態様によれば、両面切削インサートは、上面及び底面を含むように提供され、上面と底面は、異なる外部プロファイル及びチップ溝形状と、同じ内接面とを含む。また、上面及び底面の各々は、個々に、少なくとも4つの同じ切削縁部を備える。
本発明のさらなる適用領域は、以下に記載された詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明及び特定の例は、本発明の特定の可能な実施形態を示すが、図の目的にのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明は、詳細な説明及び必ずしもスケールではない添付の図面からより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、本発明にかかる両面切削インサートの実施形態の三次元の図である。
図1B図1Bは、図1Aの両面切削インサートの上面図である。
図2A図2Aは、本発明にかかる両面切削インサートの実施形態の上面図である。
図2B図2Bは、本発明にかかる両面切削インサートの実施形態の底面図である。
図2C図2Cは、図2A及び図2Bに示された両面切削インサートの側面図である。
図2D図2Dは、図2Cの線E−Eの矢印の方向に沿って切られた及びその方向からみた図2A図2B及び図2Cに示された両面切削インサートの断面図である。
図2E図2Eは、図2Cの線F−Fの矢印の方向に沿って切られた及びその方向からみた図2A図2B及び図2Cに示された両面切削インサートの断面図である。
図3A図3Aは、本発明にかかる両面切削インサートの実施形態の上面図である。
図3B図3Bは、上面及び底面のチップ溝形状を示す、図3Aの線A−Aの矢印の方向に沿って切られた及びその方向からみた図3Aに示された両面切削インサートの断面図である。
図3C図3Cは、上面及び底面のチップ溝形状を示す、図3Aの線B−Bの矢印の方向に沿って切られた及びその方向からみた図3Aに示された両面切削インサートの断面図である。
図3D図3Dは、上面及び底面のチップ溝形状を示す、図3Aの線C−Cの矢印の方向に沿って切られた及びその方向からみた図3Aに示された両面切削インサートの断面図である。
図3E図3Eは、上面及び底面のチップ溝形状を示す、図3Aの線D−Dの矢印の方向に沿って切られた及びその方向からみた図3Aに示された両面切削インサートの断面図である。
図4A図4Aは、本発明による2つの同一の両面切削インサートを有するツールホルダーを備える掘削ツールシステムの正面図である。
図4B図4Bは、本発明による2つの同一の両面切削インサートを有するツールホルダーを備える、図4Aの掘削ツールシステムの作業端の端面図である。
図4C図4Cは、本発明による2つの同一の両面切削インサートを有するツールホルダーを備える、図4A及び図4Bに示された掘削ツールシステムの側面図である。
図5A図5Aは、掘削インサートの掘削パターンを示す、本発明による掘削ツールシステムの2つの同一の両面切削インサートの上面図である。
図5B図5Bは、インサートのチップ形状を示す、図5Aに示された切削インサートのC−C断面図である。
図5C図5Cは、インサートのチップ形状を示す、図5Aに示された切削インサートのD−D断面図である。
図5D図5Dは、インサートのチップ形状を示す、図5Aに示された切削インサートのE−E断面図である。
図6A図6Aは、掘削インサートの掘削パターンを示す、本発明による掘削ツールシステムの2つの同一の両面切削インサートの上面図である。
図6B図6Bは、本発明による掘削ツールシステムの図6Aの切削インサートによって作られる切削穴の抽出されたプロファイルである。
図7A図7Aは、本発明による両面切削インサートの実施形態の側面図である。
図7B図7Bは、回転軸線で切られ、矢印G−Gの方向でみた、インサートの複合構造を示す、図7Aに示された両面切削インサートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
動作例又は特に指示された以外の非制限実施形態の本記載において、材料及び製品の数量又は特性、処理条件などを表現する全ての数字は、用語“約”によって全ての場合で変更されるものとして理解されるべきである。従って、これに反しない限り、以下の説明に記載されている任意の数値パラメータは、取得しようとする所望の特性において変更できる近似値である。非常に少なくとも、特許請求の範囲に均等論の適用を制限する試みとしてではないが、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁数を考慮して、及び、通常のラウンディング技術を適用することによって、解釈されるべきである。従って、特定の実施形態の以下の詳細な説明は、本質的に単なる例示であり、本発明、そのアプリケーション又はその使用を制限することを意図したものではない。
【0009】
また、本発明の両面切削インサートは、様々な外部プロファイルおよび本明細書中で上及び底の“側面”として呼ばれる上面及び底面の双方に対して同じ内接円内のチップ溝形状を有する。これらの違いは、切削インサートが同じアプリケーションに対して使用される従来のインサートに対して切削縁部の数の二倍を含むことを許容する。底面及び上面の両面又は側面は、個々に、中心穴軸線を中心に90度インサートを回転することによって割り出し可能な4組の切削縁部を備え、各切削インサートに対して合計で8つの割り出し可能な切削縁部を生じる。この独特な形状は、既存の片面切削インサートと比べて切削縁部の数を倍にするだけでなく、半径方向に沿った様々な切削領域に様々な切削形状を適用することにより性能を改善する。さらに、外部プロファイルとチップ溝形状との違いから、上面及び底面に対して異なる炭化物の等級を有する共に切削インサート全体にわたって同じ硬質金属コーティングを有する本発明に係る複合両面切削インサートを製造するためにより簡単かつコスト効率を高くする。従って本開示による両面切削インサートは、一つ以上の超硬合金の材料を含む。適当な超硬合金の材料の例は、バインダに埋め込まれた炭化タングステンなどの遷移金属の炭化物の粒子を含む合成物を含むがこれに限定しない。適当なバインダは、コバルト、ニッケル、鉄、及びこれらの要素の合金を含むがこれに限定しない。金属炭化物粒子は、バインダの連続相内に埋め込まれた不連続相である。このように、超硬合金材料の特性は、比較的軟質連続相の耐久性と共に非常に硬質不連続相の硬さと耐摩耗性の組み合わせである。
さらに、本発明は、底面から上面の容易な識別を可能にし、インサートポケットの切削インサートの誤った位置を防止する。同じ切削インサートの上面及び底面に対し異なるポケット形状及び大きさは、誤った位置の防止を援助する。また、誤った位置は、上側面及び底側面の外部プロファイル及びチップ溝形状の違いによって避けられる。
また、本発明は、半径方向の切削縁部に沿って切削速度のばらつきに起因する掘削動作に関連する問題を処理する。本発明に係る両面インサートの独特な形状は、その問題を処理するのに有利である。
更なる利点は、切断面の形状と超硬合金のグレード(等級)の材料の、組み合わせ及び選択することによって達成することができる。例えば、本発明に係る両面切削インサートの非限定的な実施形態は、比較的耐久性のある超硬合金のグレードで構成された第1の側面又は面と、より耐摩耗性のある超硬合金のグレードで構成された第2の側面又は面とを有する複合構造を使用することによって達成することができる。
耐久性は、急に印加された荷重によって生じた応力及びひずみの両方を自身内に迅速に分配する金属の能力(例えば、衝撃荷重に耐えられる材料の能力)として定義される。第1の側面又は面は、被削材の最高の被削性に適合するために均一で自由に流れるチップブレーカーの構成設計を含む切削構造を有し、従って、低い切削速度を好む。第2の側面又は面は、第1の側面又は面とは異なる切削構造を有し、速い切削速度に適合されている。第1の側面又は面の超硬合金のグレード(等級)は、例えば、1600乃至1950N/mmの範囲の抗折力を有するP20乃至P40の炭化物等級、1900乃至2100N/mmの範囲の抗折力を有するM20乃至M40の炭化物等級、又は、1950乃至2500N/mmの範囲の抗折力を有するK20乃至K40の炭化物等級にすることができる(機械ハンドブックによる抗折力(第26編、工業プレス、2000))。
多数の割り出し可能な切削インサートを含む掘削ツールでは、加工性能は、切削形状、炭化物等級及び掘削ツールのインサートポケット位置の組み合わせを最適化することによって大幅に改善されることができる。
【0010】
例えば、穴あけのための掘削作業中では、より耐久性のあるグレードがドリルの中心近くに配置されているインサートの側面又は面の領域に適用されている場合、本発明は、掘削性能を向上させるために適応される。これは、例えば、耐衝撃性/耐衝突性を向上させ、またより良い耐摩耗性を提供する。
【0011】
さらに、本発明の両面インサートは、単純化された生産オペレーションを切削インサートの製造業者に提供する。
図を参照すると、図1Aは本発明による両面切削インサートの非限定的な一実施形態を示している。両面切削インサート10は、図1Aに示されている。上側面または面11と下側面または面12とを備える図1Aの両面切削インサート10は、上側面または面11に対する参照符号13a、13b、13c、13d及び下側面または面12に対する参照符号14a、14b、14c、14dで8つの刃を有する。上面11及び下面12は、各面に異なる外輪郭を備える。また、上面11及び下面12に対するチップ溝形状は面ごとに異なる。さらに、インサートポケットの位置の配置は、最終的な切削形状を最適化することができる。両面切削インサート10の上面11は、(上面11上に示された)両面切削インサート10を貫通して開けられた中央穴15と、上外縁切削縁部13aと、上面11の上外縁切削縁部13aと上縁部18との間に配置された上チップ溝17とを含む。ネジは、両面切削インサート10の中央穴15を通じて切削インサートポケットの表面上のネジ付き穴(図示せず)に挿入され、それによって、インサートをポケットに保持する。両面切削インサート10の下面12は、下面12に示された中心穴16と、下外縁切削縁部14dと、下面12の下外縁切削縁部14dと下縁部20との間に配置された下チップ溝19とを含む。
【0012】
本発明を説明するために、上面11と下面12の両方の外輪郭が図1Aの両面切削インサート10から抜き出され、上面図としての図1Bに重ね合わされている。上面11の外輪郭は、図1Bの実線として表示されている。上面図は、4組の切削縁部30a、30b、30c、30dを備え、内接円33の中心32を中心にした90度回転で割り出し可能である上面11を図示する。図1Bで破線で示された下面12の外輪郭は、4組の切削縁部31a、31b、31c、31dを備え、同じ内接円33の中心軸線32を中心にした90度回転で割り出し可能である。明白にするために、内接円33は図1Bに示された上面11に描かれているが、内接円33は、仮想円である。内接円は、切削インサートの上面又は下面の直径又は半径を画定するために使用されるツールであり、インサートの大きさを特徴付ける従来の方法である。本発明に係る両面切削インサートのこの図では、符号30a−d及び31a−bによって表示された、両面切削インサート10に対する8組の使用可能な切削縁部がある。上面11及び下面12は、同じ内接円33によって画定される。切削縁部及びチップ溝の数は、所定の両面インサートで変更でき、まだ本発明の範囲内にある。
【0013】
図2A、2B、2C、2D及び2Eは、内接円42、43、45、46を有する本発明に係る両面切削インサート41を示す。図2Aは上面図であり、図2Bは、底面図であり、図2Cは、切削インサート41の側面図である。図2Aに示された内接円42は、両面切削インサート41の上面の外輪郭に完全に内接することができる最大円形であり、両面切削インサート41の下面の外輪郭に内接することができる最大円形である図2Bに示された内接円43と同じインチ又はSI単位の円形の直径又は半径を有する。図2Cに見られるように、内接円を表す二つの平行な線44は、両面切削インサート41の上面47から底面48まで全面的に延びる。さらに、図2CにおいてE−E及びF−Fから切り取られた二つの断面図は、それぞれ図2D及び図2Eに示され、内接円45及び46の双方は、図2A図2B及び図2Cの内接円42及び43と同じ直径を有する。
【0014】
図3A、3B、3C、3D及び3Eは、両面切削インサート51の上面及び底面上のチップ形状間の違いを示す。図3BのA−A、図3CのB−B、図3DのC−C及び図3EのD−Dの四つの断面図は、図3Aの両面切削インサート51のチップ溝輪郭を示す。図3B、3C、3D及び3Eに示されるように、チップ溝形状52、53、54、55、56、57、58、59は、区分から区分までの(ミリメートル単位で示された)溝輪郭及び溝幅に関して異なる。
図4A、4B及び4Cは、二つの同じ両面切削インサート62及び63を備えるツールホルダー61を備える掘削ツールのシステムを示し、ツールの各インサートは、本発明に従って構成される。図4Aは、本発明による二つの同じ両面切削インサートを含むツールホルダーを備える掘削ツールシステムの前面図である。図4Bは、本発明による二つの同じ両面切削インサートを含むツールホルダーを備える掘削ツールシステムの作業端部の端面図である。図4Aに見られるように、切削インサートは、ツールホルダー61の中心軸線66を通るその切削縁部に配置され、上面67の切削縁部64は、係合切削縁部である。本明細書で使用されるように、“係合”切削縁部は、ツールが使用されるときにワークピースと接する又は“係合する”ために切削インサートポケットに配置されている切削縁部である。インサートは、割り出し可能であるため、インサートは、(保持ネジ等を取り外すことによって)取り外され、インサートポケット内に回転されて再び固定され、それによって、ツールが使用されるときにワークピースと接するように新しい切削縁部を配置する。ツールホルダー61の外縁部及び底面68の切削縁部65に配置された切削インサート63は、係合切削縁部である。掘削作業では、切削インサート62は、センタードリルインサートとして呼ばれ、切削インサート63は、外縁ドリルインサートとして呼ばれる。
図5Aは、掘削ツールシステムにおける二つの両面切削インサート71及び72の機能をさらに示す。図5Aにおいて、両面切削インサート71及び72は同じである。二つの同じ切削インサート71及び72は、図4Aに示されるように配置されるが、ツールホルダー61(図示せず)は、この図面で削除される。図5Aに示されるように、切削インサート71は、その上面の切削縁部74が係合切削縁部として配置され、切削インサート71が掘削動作中ツールホルダーの中心軸線73を中心にして回転して破線で示された切削通路78を生じる、センタードリルインサートとして配置される。同じ原理が、外縁ドリルインサートとして配置されると共にツールホルダーの中心軸線73を中心にして回転した後にその底面の切削縁部75によって切削通路77を生じる切削インサート72に適用する。
【0015】
図5Aに示すように、生成された穴の直径であるDDとして示された掘削直径は、直径に対する二つの最も外側の点である図5AのポイントP3からポイントP4まで測定される。センタードリルインサート71によって形成された掘削輪郭は、図5AにおいてA2によって測定されたポイントP1からポイントP0まで及びポイントP0からP2までである。外縁ドリルインサート72によって形成された掘削輪郭は、図5AにおいてA1及びA3によってそれぞれ測定されたポイントP4からポイントP1まで及びポイントP2からP3までである。さらに、図5B、5C及び5Dにおいて示された3つの断面図すなわちC−C、D−D及びE−Eは、図5AにおいてポイントP3とポイントP4との間の様々な正の切削作用を生じるために異なるチップ溝形状が外縁切削縁部に沿った様々な位置に適用されることを表示する。見られることができるように、代表的な例として提供される3つの断面間には明確な違いがある。
【0016】
例えば、断面D−Dにおいて縁部83及び84によって形成された切削縁部角度が最も大きく(83度)、断面E−Eにおいて縁部85及び86によって形成された切削縁部角度が最も小さく(64度)、断面C−Cにおいて縁部81及び82によって形成された切削縁部角度(74度)は断面D−Dの切削縁部角度よりも小さいが断面E−Eの切削縁部角度よりも大きいことが、3つの断面図に対する図5B、5C及び5Dに示される。これは、主に、掘削ツールが掘削作業中その最も大きな衝撃力を受ける場合に、図5Aにおいて切削速度がポイントP3の外縁でのその最大値からポイントP0の中心でのその最小値まで変化するためである。従って、速い切削側に適用するために、外縁部には小さい切削縁部角度を有する正の切削作用が提供され、中央部には、大きな切削縁部角度によって強化された強固な形状が掘削動作中遭遇された高い衝撃力により耐えるために提供される。
【0017】
また、図5B、5C、5Dは、チップ溝縁部85及び95と外縁ドリルインサート72に対する断面E−Eにおける破線96とによって形成された空のスペースが、チップ溝縁部81及び91と断面C−Cにおける破線92とによって及びチップ溝縁部83及び93と断面D−Dにおける破線94とによって形成されたセンタードリルインサート71に対するものよりも小さいことを示す。この違いは、掘削作業中の穴の外縁に比べて中央で生じた掘削チップ(削りくず)を排除することが困難である結果である。従って、チップ溝上の大きな空のスペースは、生じたチップを効果的に排除するために及びこれらのチップが掘削ツールホルダーと掘削される穴との間に詰まるのを防止するために、外縁ドリルインサート72以上にセンタードリルインサート71に対して必要とされる。
【0018】
図6A及び図6Bは、ワークピース102内の穴101の底輪郭は、図5Aに示された二つの同じ両面切削インサート71及び72によって独特に形成されたことを示す。図6Aは、輪郭がどのように形成されているかを示す。本発明の両面インサートの実施形態の独特な形状(すなわち、その凸凹のある非接線のプロフィール)のために、両面インサートでの掘削は、より多数の小さなセグメントにチップを粉々にするのを助ける。
図7A及び図7Bは、複合超硬合金切削インサートとして構成された本発明に係る両面切削インサート110の非制限的な実施形態を示す。両面切削インサート110は、二つの異なる超硬合金の材料113及び114、または、線111によって分離される異なる超硬合金のグレード113及び114を有する同じ超硬合金の材料のどちらかで構成される。切削インサート110の上部分115は、センタードリルインサートとして機能するので、より大きな耐衝撃性を有する超硬合金の材料又はグレードは、その部分に使用される。切削インサート110の底部分116は、外縁ドリルインサートとして機能するので、より大きな耐摩耗性を有する超硬合金の材料又はグレードは、その部分に使用される。
図7Aは、本発明に係る両面切削インサートの非制限的な実施形態の側面図を示し、図7Bは、中央穴軸線112を通った断面図G−Gを示し、二つの異なる超硬合金材料を備える切削インサートの複合構造を示す。
図7Aおよび7Bに示すように、複合両面切削インサート110の上面115と底面116との間の異なる外輪郭のために、それらの明確な外形及び形状のために上面を底面から識別するのが容易である。複合両面切削インサートを製造するための一般的な製造プロセスは、金型に二つの異なる超硬材料を押し、押圧されたインサートを焼結及び研磨し、及び切削インサートに硬質金属コーティングを提供する、その後のコーティング工程を含む。硬質金属コーティングは、耐摩耗性を改善するために適用される金属合金の非常に薄い(最適にはミクロンの範囲)コーティングである。硬質金属コーティングを適用するために二つの一般的な技術がある。一方の技術は、物理蒸着(PVD)であり、他の技術は、化学蒸着(CVD)である。一般的なPVDコーティングは、TiN、TiAIN、TiCN、TiAIN+Cを含み、一般的なCVDコーティングは、TiN、TiCN、AIO、TIN-HfCN-Tin、TiN-TiCN-TiNを含む。図7Aおよび7Bに示された切削インサートは、同一の両面切削インサートの異なる面上の切削形状と超硬合金のグレードの最適化された組み合わせを通じて改善された加工性能を提供する。
【0019】
本発明の両面の切削インサートは、好ましくは、8つの切削縁部を備え、上面と底面間の異なる外輪郭及びチップ溝形状を有する。このようなインサートは、穴あけ加工アプリケーション用に適合させることができる。これらの適応は、幾何学的な機能の広い範囲で設計することができる。本明細書中に記載された両面切削インサートは、従来の大きさにすることができ又は従来の大きさにしないことができ、様々な掘削のアプリケーションにおいて、従来の使用に適合されることができる。
さらに、本発明に係る両面切削インサートの特定の実施形態の上面と下面で異なる外部輪郭及びチップ溝形状を含むことは、各面に対して、輪郭、形状及び超硬合金のグレードの最適な組み合わせを提供することができ、切削性能の大幅な向上をもたらす。これは、同一の上面と下面を有する既存の両面切削インサートに比べて大きな改善である。
【0020】
本発明で提供される両面切削インサートの実施形態は、また、大幅なコスト削減を提供する。改良された加工性能に関する大きなメリットは、穴加工の様々な切削動作に適応するために切削インサートの異なる面で切削形状及び超硬合金のグレードの最適な組み合わせを通じた複合構造によって達成することができる。
【0021】
なお、本説明は、本発明の明確な理解に関連する発明の態様を示すことが理解されるであろう。当業者に理解され従って本発明のより良い理解を促進しない特定の態様は、本記載を簡素化するために提示されていない。本発明の実施形態の限られた数の実施形態だけが、本明細書中に必要的に記載されているが、当業者は、前述の説明を考慮して、本発明の多くの変更及び変形が利用されることができることを理解されよう。本発明のすべてのこのような変更及び変形は、前述の説明及び特許請求の範囲によって包含されることを意図している。
従って、本発明は、広範な有用性及びアプリケーションを受け入れることができることを当業者によって容易に理解される。本明細書中に記載された以外の本発明の多くの実施形態及び適用、及び多くの変更、変形及び同等な構成は、本発明の本質又は範囲から逸脱しないで、本発明及びその前述の説明からあるいは本発明及びその前述の説明によって合理的に提案されて理解されよう。従って、本発明はその好ましい実施形態に関して詳細にここに記載されているが、この開示は単に例示及び例示的なものであり、本発明の完全かつ実施できる開示を提供する目的のために単になされていることを理解されるべきである。本開示は、本発明を制限すること、または、そのような他の実施形態、適応、変形、変更及び同等な構成を除外すること意図又は解釈されない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B