(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5647683
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】ロールスクリーン装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/58 20060101AFI20141211BHJP
E06B 9/17 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
E06B9/58 A
E06B9/17 S
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-519645(P2012-519645)
(86)(22)【出願日】2011年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2011064553
(87)【国際公開番号】WO2012176332
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2014年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】591126518
【氏名又は名称】林口工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】林口 典雄
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−211298(JP,A)
【文献】
特開2006−188895(JP,A)
【文献】
特表2008−520859(JP,A)
【文献】
実開平6−10591(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/58
E06B 9/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取軸の一方向の回転によってその外周に巻き取られるスクリーンの両側縁部に渦巻き状に巻取り可能なガイド突条を設け、前記巻取軸から巻き戻されるスクリーンの両側縁部の移動を案内する一対の固定のガイドレールの内側に合成樹脂の成形品からなるインナレールを組込み、そのインナレールの長さ方向に前記ガイド突条の移動を案内するガイド溝を設け、そのガイド溝の開口端に設けられた対向一対の内向きフランジによって前記ガイド突条を抜止めする状態で摺動案内するロールスクリーン装置において、
前記インナレールのガイド溝内にスライド案内レールを組込み、そのスライド案内レールが、樹脂成型された一対のレール部材からなり、そのレール部材が、前記ガイド溝の溝深さにほぼ等しい幅寸法の帯板状レール基板の一側部に、高さがガイド溝の溝幅寸法のほぼ1/2とされたアウタ側突条を設け、他側部にそのアウタ側突条より高さが低く、前記内向きフランジより高さの高いインナ側突条を設けた構成とされ、その一対のレール部材は、アウタ側突条を突き合わせ、インナ側突条の対向部間にスリット状の微小すきまが形成される組み合わせとされ、その微小すきまが前記内向きフランジの対向部間に形成された案内すきまに臨むようにして前記ガイド溝内に組込み、前記インナ側突条により前記ガイド突条を抜止め状態で摺動案内するようにしたことを特徴とするロールスクリーン装置。
【請求項2】
前記一対のレール部材の形成素材としての合成樹脂が、硬質の合成樹脂からなる請求項1に記載のロールスクリーン装置。
【請求項3】
前記合成樹脂が、塩化ビニルとポリカーボネイトの一種からなる請求項2に記載のロールスクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の採光部や開口部等を開閉する際に用いられるロールスクリーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のロールスクリーン装置として特許文献1に記載されたものが従来から知られている。このロールスクリーン装置においては、巻取軸によってスクリーンを巻き取り、その巻取軸から引き出されたスクリーンの両側縁部の移動を案内する対向一対のガイドレールのそれぞれ内部にインナレールを組込み、そのインナレールに上記スクリーンの両側縁部に沿って設けられた渦巻き状に巻取り可能なガイド突条が移動自在に挿入されるガイド溝を設け、そのガイド溝の開口端部に一対の内向きフランジを形成し、その一対の内向きフランジによってガイド突条を抜止め状態で摺動案内するようにしている。
【0003】
上記のようなロールスクリーン装置においては、普通、スクリーンの側縁部にスライドファスナにおけるファスナテープを重ね合わせて高周波ウェルダにより固着し、そのファスナテープの一側縁に沿って設けられたファスナエレメントをガイド突条としている。
【0004】
ファスナエレメントをガイド突条とする上記のようなロールスクリーン装置においては、ガイド突条としてのファスナエレメントの厚みがスクリーンの肉厚より厚い場合、巻取軸によるスクリーンの渦巻き状の巻取り状態で、ガイド突条が重なりあって両端部の巻径が中央部の巻径より大きくなり、スクリーンが鼓形に巻き取られて両端部に皺が生じたり、あるいは、ガイド突条が先に巻き取れたガイド突条に対してスクリーンの幅方向に位置がずれる巻取りとされてスクリーンが蛇行し、巻き取り時の抵抗が大きなってスムーズに巻き取ることができなくなる。
【0005】
そのような問題を解決するため、特許文献1に記載されたロールスクリーン装置においては、スクリーンの厚みをガイド突条の厚みより厚くして、ガイド突条が重なり合って巻き取れることのないようしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−107666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来のロールスクリーン装置においては、スクリーンを極めてきれいに巻き取ることができるものの、スクリーンの厚みをガイド突条の厚みより厚くしているため、スクリーンが重量物となり、巻取りに大きな操作力を必要としてスムーズに巻き取ることができず、また、スクリーンの長さが長くなると大型化し、ロールスクリーン装置の適用範囲が狭くなり、その適用範囲を拡げる上において改善すべき点が残されている。
【0008】
ここで、近年、ファスナテープとして、テープ厚みが0.35mm程度、ガイド突条とされるファスナエレメントが1.0mm程度のきわめて薄いものが開発され、生産されるようになっている。本件の発明者は、このような極薄のファスナテープを採用することにより、厚みの薄いスクリーンでも、両端部の巻径が大きくなることなくきれいな巻取り状態が得られることを見出し、ロールスクリーン装置に採用しようとしたのであるが、以下のような問題が生じて採用することができなかった。
【0009】
すなわち、ガイド突条としてのファスナエレメントの移動を案内するインナレールは合成樹脂の成形品であり、一対の内向きフランジが形成された内側部では、その内向きフランジの対向部間にファスナテープの移動を案内する隙間があり、反対側の外側部では隙間が存在せず、その隙間の有無により、成形後、インナレールの外側部が幅方向に湾曲するよう収縮する。そして、その収縮量が一定しないため、一対の内向きフランジの対向面間にファスナエレメントを抜止めすることができる大きさの案内すきま、具体的には、0.7mm程度の案内すきまを確実に確保することができない。
【0010】
このため、インナレールに形成されたガイド溝内にガイド突条を挿入し、一対の内向きフランジでガイド突条を摺動案内した際、スクリーンに幅方向内方に向く引張り力が負荷されると、ガイド突条が一対の内向きフランジ間の隙間から抜け出し、ガイド突条を抜止めすることができない。
【0011】
この発明の課題は、極薄のファスナテープのファスナエレメントを巻取軸で巻き取られるスクリーンの両側縁部のガイド突条として採用することができるようにして、適用範囲の拡大を図ることができるようにしたロールスクリーン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明においては、巻取軸の一方向の回転によってその外周に巻き取られるスクリーンの両側縁部に渦巻き状に巻取り可能なガイド突条を設け、前記巻取軸から巻き戻されるスクリーンの両側縁部の移動を案内する一対の固定ガイドレールの内側に合成樹脂の成形品からなるインナレールを組込み、そのインナレールの長さ方向に前記ガイド突条の移動を案内するガイド溝を設け、そのガイド溝の開口端に設けられた対向一対の内向きフランジによって前記ガイド突条を抜止めする状態で摺動案内するロールスクリーン装置において、前記インナレールのガイド溝内にスライド案内レールを組込み、そのスライド案内レールが、樹脂成型された一対のレール部材からなり、そのレール部材が、前記ガイド溝の溝深さにほぼ等しい幅寸法の帯板状レール基板の一側部に、高さがガイド溝の溝幅寸法のほぼ1/2とされたアウタ側突条を設け、他側部にそのアウタ側突条より高さが低く、前記内向きフランジより高さの高いインナ側突条を設けた構成とされ、その一対のレール部材は、アウタ側突条を突き合わせ、インナ側突条の対向部間にスリット状の微小すきまが形成される組み合わせとされ、その微小すきまが前記内向きフランジの対向部間に形成された案内すきまに臨むようにして前記ガイド溝内に組込み、前記インナ側突条により前記ガイド突条を抜止め状態で摺動案内するようにした構成を採用したのである。
【0013】
上記のように、レール基板の両側部に高さが異なるインナ側突条とアウタ側突条を設けたレール部材の一対を、高さの高いアウタ側突条が対向する組み合わせとすることによって、一対のインナ側突条の対向部間にスリット状の微小すきまを形成することができる。また、一対のレール部材の対向部間に上記微小すきまに連通する案内溝を形成することができる。
【0014】
このとき、微小すきまを形成する一対のレール部材は、断面形状がほぼコの字形とされて全体にわたってほぼ均一厚みであるため、樹脂成型後の収縮による変形が殆どなく、寸法精度の高いレール部材を樹脂成形することができる。
【0015】
したがって、インナ側突条の高さをアウタ側突条の高さより低くし、かつ、内向きフランジの高さより高くすることによって、一対のインナ側突条間に一対の内向きフランジの対向部間に形成された案内すきまより小さな微小すきまを確実に形成することができる。
【0016】
その結果、前述の極薄ファスナテープのファスナエレメントをガイド突条として採用することが可能となり、スクリーンとして薄膜状のものを採用することが可能となり、適用範囲の広いロールスクリーン装置を提供することができる。
【0017】
ここで、レール部材の形成素材としての合成樹脂は硬質のものが好ましい。そのような樹脂として、塩化ビニルやポリカーボネイトを挙げることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明においては、上記のように、レール基板の両側部に高さの異なるインナ側突条とアウタ側突条を設けた一対の樹脂成型されたレール部材を、高さの高いアウタ側突条が対向する組み合わせとしてインナレールのガイド溝内に組込むようにしたので、一対のインナ側突条の対向部間に一対の内向きフランジの対向部間に形成された案内すきまより小さな微小すきまを確実に形成することができ、前記一対のインナ側突条によって厚みの薄いガイド突条を抜止め状態で確実に摺動案内することができる。その結果、極薄ファスナテープのファスナエレメントをガイド突条として採用することが可能となり、スクリーンとして薄膜状のものを採用することができるので、適用範囲の広いロールスクリーン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明に係るロールスクリーン装置の実施の形態を示す正面図
【
図4】
図1の巻取軸の組込み部を示す一部切欠断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1乃至
図4に示すように、角筒状をなすスクリーン収納ボックス1の底板2には左右両端方向に長く延びる引出し口3が設けられている。
【0021】
スクリーン収納ボックス1の内部には巻取軸10が組込まれている。巻取軸10にはスクリーン11の一端部が連結されている。スクリーン11は巻取軸10の回転によって巻取り、巻き戻しされる。その巻き戻しの際に、スクリーン11はスクリーン収納ボックス1の底板2に形成された上記引出し口3から下方に向けて引き出され、その下端にはスクリーン11の長さ方向に張力を付与するウェイトバー12が設けられている。
【0022】
また、スクリーン11の両側縁部には、ガイド突条13が設けられている。ガイド突条13は、スライドファスナのファスナテープ14の側縁部に取付けられたファスナエレメントからなり、そのファスナエレメントが設けられたファスナテープ14がスクリーン11の側縁部に重ね合わされて固着一体化されている。
【0023】
ここで、巻取軸10は、その内部に組み込まれたモータ15によって回転駆動されるようになっているが、ウェイトバー12の引き下げ操作によるスクリーン11の引き出しによって巻取軸を巻き戻し方向に回転させ、巻取軸の内部に組み込まれた巻きばねにねじり変形を生じさせ、その巻きばねの復元弾性によって巻取軸を巻取り方向に回転させるようにしてもよい。
【0024】
図1および
図2に示すように、スクリーン収納ボックス1の下面両端部には、対向配置されて上下方向に長く延びる一対のガイドレール20のそれぞれ上端部が連結されている。
【0025】
図3に示すように、ガイドレール20には、その対向面において開口する挿入溝21と、その挿入溝21に連通するレール収納空間22とが形成されている。挿入溝21およびレール収納空間22のそれぞれはガイドレール20の長さ方向(上下方向)に長く延び、上記挿入溝21の上端開口がスクリーン収納ボックス1の引出し口3の両端と対向し、その挿入溝21内にウェイトバー12の両端部がスライド自在に嵌合されている。
【0026】
レール収納空間22の内部にはインナレール23が組込まれている。インナレール23はガイドレール20と同じ長さとされている。
図3および
図5に示すように、このインナレール23にはスクリーン11の側縁部が挿入可能なガイド溝24が形成され、そのガイド溝24の開口端部に一対の内向きフランジ25が形成されている。
【0027】
インナレール23は合成樹脂の成形品からなり、一対の内向きフランジ25の対向面間には案内すきま26が形成されている。
図5に示すδは、案内すきま26の大きさを示し、その大きさはインナレール23の樹脂成形で限度とされているほぼ1.0mm程度の大きさとされている。
【0028】
インナレール23のガイド溝24内にはスライド案内レール30が嵌合されている。スライド案内レール30は一対のレール部材31からなる。レール部材31はレール基板32の片面一側部にアウタ側突条33を設け、他側にインナ側突条34を形成した合成樹脂の成形品からなり、上記レール基板32の幅寸法w1は、インナレール23に形成されたガイド溝24の溝深さH1にほぼ等しくされている。
【0029】
また、アウタ側突条33の高さh1はインナレール23におけるガイド溝24の溝幅寸法W1のほぼ1/2とされている。さらに、インナ側突条34の高さh2はアウタ側突条33より高さh1より低く、内向きフランジ25の高さh3より高なっている。
【0030】
一対のレール部材31は、アウタ側突条33を突き合わせ、インナ側突条34の対向部間にスリット状の微小すきま35が形成される組み合わせとされ、その微小すきま35が内向きフランジ25の対向部間に形成された案内すきま26に対向するようにしてインナレール23のガイド溝24内に組込まれ、そのガイド溝24の開口端に設けられた一対の内向きフランジ25によって抜止めされている。
【0031】
また、一対のレール部材31の上記のような組み合わせにより、その一対のレール部材31の対向部間に案内溝36が形成され、巻取軸10からスクリーン11が引き出された場合、そのスクリーン11の両側縁部に設けられたファスナテープ14がスライド案内レール30の微小すきま35で案内され、ガイド突条13が案内溝36内に挿入されて一対のインナ側突条34によって抜止め状態で摺動案内されるようになっている。
【0032】
図3に示すように、インナレール23には外側面に前後に張り出す膨出部27が形成され、その膨出部27とガイドレール20の内側壁間にスポンジ等の弾性体28が組込まれている。弾性体28は、インナレール23を外側方に向けて付勢してスクリーン11に幅方向のテンションを付与するようになっている。
【0033】
実施の形態では、上記のように、レール基板32の片面に高さが異なるアウタ側突条33とインナ側突条34を設けた合成樹脂製のレール部材31の一対を、高さの高いアウタ側突条33が対向する組み合わせとしているため、対向する一対のインナ側突条34間にファスナテープ14の移動を案内する微小すきま35を形成することができる。また、一対のレール部材31の対向部間にインナレール23のガイド溝24より断面形状の小さい案内溝36を形成することができる。
【0034】
このとき、微小すきま35を形成する一対のレール部材31は、断面形状がコの字形とされて厚みが全体にわたってほぼ均一であるため、樹脂成型後の収縮による変形がきわめて少ない寸法精度の高いレール部材31を樹脂成形することができる。
【0035】
したがって、インナ側突条34の高さh2をアウタ側突条33の高さh1より低くし、かつ、内向きフランジ25の高さh3より高くすることによって、一対のインナ側突条34間に一対の内向きフランジ25の対向部間に形成された案内すきま26より小さな微小すきま35を形成することができる。
【0036】
その結果、テープ厚みが0.35mm程度、ファスナエレメントが1.0mm程度のきわめて薄いファスナテープのファスナエレメントをガイド突条13として採用することが可能となり、スクリーン11として薄膜状のものを採用することができる。このため、適用範囲の広いロールスクリーン装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 巻取軸
11 スクリーン
13 ガイド突条
20 ガイドレール
23 インナレール
24 ガイド溝
25 内向きフランジ
26 案内すきま
30 スライド案内レール
31 レール部材
32 レール基板
33 アウタ側突条
34 インナ側突条
35 微小すきま