(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5647684
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】温度調整システムを備える可撓性の圧縮ローラを含む繊維塗布装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/06 20060101AFI20141211BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
B29C67/14 G
F16C13/00 B
F16C13/00 C
F16C13/00 E
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-520035(P2012-520035)
(86)(22)【出願日】2010年7月15日
(65)【公表番号】特表2012-533445(P2012-533445A)
(43)【公表日】2012年12月27日
(86)【国際出願番号】EP2010060198
(87)【国際公開番号】WO2011006956
(87)【国際公開日】20110120
【審査請求日】2013年3月18日
(31)【優先権主張番号】0954963
(32)【優先日】2009年7月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507296621
【氏名又は名称】コリオリ コンポジテ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アムリン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】アルディ,イヴァン
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−297513(JP,A)
【文献】
特開昭55−036627(JP,A)
【文献】
特開昭61−019339(JP,A)
【文献】
特開2010−173230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/06−70/56
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が予備含浸された少なくとも1つの扁平繊維からなるバンド(8)を塗布面(S)に塗布するための圧縮ローラ(2、102、202、302)であって、剛性の中心チューブ(4、104、204、304)と、上記中心チューブに取り付けられており、弾性変形可能な可撓性材料からなる円筒(3、103、203、303)とを備えた圧縮ローラ(2、102、202、302)と、
上記バンドに向かって熱放射を出力可能な加熱システム(9)とを備えた、複合材料からなる部材を製造するための繊維塗布装置であって、
上記中心チューブ(4、104、204、304)には、複数の放射状の孔(41、141、241、341)が設けられており、
上記可撓性材料からなる円筒(3、103、203、303)は、上記複数の放射状の孔と自身の外面(33、133、233、333)とを流体連通させることが可能な流体連通手段(32、34、35;132,106;203;303)を備え、
上記中心チューブの内部通路(42、142、242、342)に、気体である温度調整流体を封入可能な温度調整手段を備えていることを特徴とする繊維塗布装置。
【請求項2】
上記流体連通手段(34、35;106;203;303)は、上記円筒の上記外面(33、133、233、333)と上記圧縮ローラの端面(36、161、236、336)とを流体連通させることが可能であることを特徴とする請求項1に記載の繊維塗布装置。
【請求項3】
上記流体連通手段は、複数の放射状のチャネル(32;132)を備え、
各上記放射状のチャネルは、上記中心チューブ(4、104、204、304)の上記放射状の孔(41、141、241、341)ならびに上記円筒の上記外面(33、133、233、333)を開口していることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維塗布装置。
【請求項4】
上記流体連通手段は、上記円筒の上記端面(36)に開口している縦方向の溝(34)を備え、
上記複数の放射状のチャネル(32、132)は、上記縦方向の溝を開口していることを特徴とする請求項2を引用する請求項3に記載の繊維塗布装置。
【請求項5】
上記流体連通手段は、上記複数の放射状のチャネル(32)が開口している円形の溝(35)を備えていることを特徴とする請求項3または4に記載の繊維塗布装置。
【請求項6】
上記流体連通手段は、可撓性の多孔質材料からなる円筒(203、303)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維塗布装置。
【請求項7】
上記流体連通手段は、上記円筒の外面を被覆し、多孔質材料からなるシース(4)を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維塗布装置。
【請求項8】
上記圧縮ローラは、上記円筒を被覆し、上記加熱システム(9)から出力される熱放射から保護する保護シース(307)を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の繊維塗布装置。
【請求項9】
上記円筒(3)は、上記熱放射を透過する材料からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の繊維塗布装置。
【請求項10】
上記圧縮ローラ(2、102、202、302)は、上記可撓性材料からなる円筒(3、103、203、303)を被覆する非接着性の外部レイヤ(5、105、205、305)を備えていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の繊維塗布装置。
【請求項11】
上記温度調整手段は、温度調整流体束を上記圧縮ローラに向かって出力することによって、当該圧縮ローラの温度を外部から調整することが可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の繊維塗布装置。
【請求項12】
上記温度調整手段は、15℃から30℃の間にある室温の空気である温度調整流体を封入することが可能であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の繊維塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料からなる部材を製造するための繊維塗布装置に関し、より詳細には、繊維加熱システムおよび耐熱性圧縮ローラを備える繊維塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リボン状の樹脂を予備含浸させた扁平繊維によって少なくとも構成された幅太いバンド(特に、熱可塑性あるいは熱硬化性の樹脂を予備含浸させた炭素繊維)を、雄型または雌型のモールドの塗布面に塗布するための繊維塗布装置が知られている。中でも、樹脂を予備含浸させた複数の繊維によって構成された幅太いバンドを塗布するための繊維配置装置が特に知られている。
【0003】
国際公開第2006/092514号に記載されているように、上記の繊維配置装置は、一般的に繊維配置ヘッドおよび当該繊維配置ヘッドを動かすためのシステムを備えている。通常、繊維配置ヘッドは予備含浸繊維バンドを塗布するためにモールドに接触している圧縮ローラと、バンド状の繊維を当該圧縮ローラ上で誘導するための誘導手段と、予備含浸繊維を加熱するための加熱システムとを備えている。
【0004】
圧縮ローラは、モールドの塗布面、あるいは、予め置かれた1つまたは複数の繊維バンドに繊維バンドを押しつけることによって、置かれたバンド同士の付着が促進され、バンド間に閉じ込められていた空気が排出される。
【0005】
加熱システムは、圧縮ローラがバンドを圧縮する直前に、予備含浸繊維バンド、および/または、予め圧縮ローラの上流側に配置されたモールドまたは複数のバンドを加熱する。これによって、少なくとも樹脂を柔らかくすることでバンド同士の付着を促すことができる。一般的にバンドの加熱システムは、バンドが圧縮される前に、当該バンドの加熱を少なくとも行う。
【0006】
バンドの幅全体において略均一な圧縮を確実に行うために、繊維配置ヘッドは塗布面に接触可能な圧縮ローラを備えていることが好ましい。さらには、エラストマ系材料等、弾性変形可能な可撓性材料からなる圧縮ローラを備えていることが好ましい。
【0007】
熱硬化性樹脂の場合、予備含浸繊維を柔らかくするために加熱されるのみである(通常40℃程度にまで)。この温度では、エラストマ系材料からなる圧縮ローラが好適に用いられ得る。複数のバンドが重ね合わせられたいくつかのレイヤを塗布した後、得られた生成物を高圧加熱炉等の加熱炉に入れることによって、当該生成物は重合によって真空焼入れされる。
【0008】
熱可塑性樹脂の場合、予備含浸繊維をより高い温度(少なくとも樹脂の溶融温度にまで)に加熱する必要がある。例えば、ナイロン系樹脂の溶融温度は約200℃であり、PEEK系樹脂の溶融温度は約400℃である。得られる生成物に対する硬化処理は、その後に加熱炉に入れることによって行うことが好ましい。この硬化処理は、強化処理と呼ばれる。
【0009】
バンドの塗布中に行われる加熱は、レーザタイプの加熱システムによって実行してもよい。これによって、集中した素早い加熱が実現される。高温加熱のため、繊維配置ヘッドには耐熱性金属からなる圧縮ローラが搭載されているが、当該圧縮ローラも水路を介して内部から冷却される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
塗布面の形状に適合するために、セグメント化された金属製の圧縮ローラが提案されている。この圧縮ローラは、同方向に並列して設けられた複数の独立したローラセグメントであって、各セグメントが独立して放射状に移動可能であり、塗布面に対して伸縮自在に片寄らされた複数のローラセグメントを備えている。しかし、このようなセグメント化された金属製の圧縮ローラの構造は複雑であることが分かっている。
【0011】
熱安定剤を含む所謂高温エラストマ系材料によって構成されている可撓性ローラも試されている。しかし、熱可塑性樹脂を使用する際には、このようなローラは不適である。
【0012】
可撓性ローラを熱可塑性樹脂の使用温度でも用いることができるように、2つの圧縮ローラと、両ローラ間で機能し、両ローラ間のバンドに対して略垂直に熱放射を出力する加熱システムとを備えているヘッドが提案されている(特に、仏国特許出願公開第2 878 779号明細書参照)。このような2つのローラは、塗布面への繊維の堆積に対して大きな妨害を示す。さらに、新たなバンドへの溶接による付着が行われる前に置かれたバンドの加熱は、熱伝導のみによってなされているが、これは繊維の塗布速度の制限的なファクタを構成する。
【0013】
そこで、本発明は上記の課題を克服するための解決法を提供するためになされたものであり、具体的には、熱可塑性樹脂から熱硬化性樹脂までの多種類の樹脂を使用することができ、用いるバンドの略均一な圧縮が得られ、それを容易に設計および実行できることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は、樹脂が予備含浸された扁平繊維から少なくともなるバンド(好ましくは、樹脂が予備含浸された複数の扁平繊維からなるバンド)を塗布面に塗布するための圧縮ローラであって、装置の支持構造上に、回転するように取り付けられた剛性の中心チューブと、当該中心チューブに取り付けられており、弾性変形可能な可撓性材料あるいは非剛性材料からなる円筒とを備えた圧縮ローラと、
圧縮ローラによる圧縮前に、バンドに向かって熱放射を出力可能な加熱システムとを備えた、複合材料からなる部材を製造するための繊維塗布装置であって、
中心チューブには、複数の放射状の孔が設けられており、可撓性材料からなる円筒は、複数の放射状の孔と自身の外面とを流体連通させることが可能な流体連通手段を備え、中心チューブの内部通路に温度調整流体(好ましくはガス状のもの)を封入可能な温度調整手段を備えていることを特徴とする繊維塗布装置を提供する。
【0015】
本発明によれば、装置は温度調整流体の循環による温度調整システムによって温度調整される可撓性圧縮ローラを備えている。上記の温度調整システムは、
例えば、金属製および/または円筒状の断面を持つ中心チューブの一端から他端までにわたって、当該中心チューブのチューブ状の壁に形成された複数の孔と、
可撓性材料からなる円筒に設けられ、温度調整流体を、複数の放射状の孔から円筒の外面に向かって円筒内部を循環させることが可能な流体連通手段と、
中心チューブの少なくとも一方の端部から当該中心チューブの内部に、温度調整流体(好ましくはガス状のもの)を封入することによって、当該温度調整流体を複数の放射状の孔を通過させ、可撓性材料からなる円筒の外面にまで到達させることが可能な温度調整手段とを備えている。上記の温度調整流体は、冷却されたガスあるいは室温のガスであることが好ましく、空気であることが好ましい。
【0016】
例えば、15℃から30℃の間にある室温の温度調整流体、あるいは、15℃未満に冷却された温度調整流体の場合、圧縮ローラにおける当該温度調整流体の循環によって、圧縮ローラの表面だけでなく可撓性材料からなる円筒の厚み方向にも冷やすことができる。結果、熱可塑性樹脂等の樹脂が予備含浸された繊維の塗布に使用可能な圧縮ローラであって、可撓性材料からなる安定した圧縮ローラを用いることができる。簡易なデザインを有する圧縮ローラを備える本発明に係る装置によれば、多種多様な熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を、通常は複合分野で用いられる繊維(ガラス繊維、炭素繊維、石英繊維、および、アラミド繊維等)といった、合成あるいは天然、ならびに、ハイブリッドあるいは非ハイブリッドの広い範囲の繊維と組み合わせて用いることができる。
【0017】
一特性によれば、上記の流体連通手段は、円筒の外面と圧縮ローラの端面との間を流体連通させることができる。これによって、装置の稼動中に少なくとも横方向に温度調整流体を外部に放出することができる。
【0018】
一実施形態によれば、上記の流体連通手段は複数の放射状のチャネルを備えており、各放射状のチャネルは中心チューブの各放射状の孔ならびに円筒の外面に開口している。複数の放射状の孔は中心チューブの円筒状の壁にわたって配置されている。例えば中心チューブは、圧縮ローラの軸に沿って縦方向に別々に設けられた複数の孔からなるいくつかのセットを呈している。各セットは、所定の角度の分だけ間隔を空けて配置された複数の孔を有している。
【0019】
一実施形態によれば、上記の連通手段は円筒の端面に開口している複数の縦方向の溝を有しており、複数の放射状の孔は上記の複数の縦方向の溝に開口している。外面への温度調整流体流束の供給をよりよくするために、流体連通手段は複数の放射状のチャネルが開口している複数の円形の溝を有していることが好ましい。
【0020】
一実施形態によれば、流体連通手段は円筒を構成する多孔質材料によって構成されており、連続多孔質タイプのエラストマ系および/または熱可塑性のフォーム、あるいは、合成繊維、ガラス繊維、または、金属繊維等の織られていない繊維等の、弾性変形可能な多孔質の可撓性材料からなる円筒を備えている。円筒は、連続多孔質タイプのエラストマ系のフォームからなることが好ましい。この場合、温度調整流体の放出は円筒の端面を介して行われる。
【0021】
一実施形態によれば、上記の流体連通手段は円筒の外面を被覆するシースを備えており、当該シースは多孔質材料によって形成されている。これによって、温度調整流体をシースの端面から放出することができる。上記の多孔質材料は、例えば連続多孔質タイプの熱可塑性および/またはエラストマ系のフォーム、あるいは、織られていない繊維等の材料から形成されている。シースの多孔質材料は、弾性変形可能であるため、繊維の塗布中における円筒の変形に適合することができるが、温度調整流体の放出を可能にするために、円筒を構成する可撓性材料(場合によっては、多孔質の可撓性材料)よりも低い弾力性を示す。
【0022】
一実施形態によれば、上記のローラは円筒を被覆して加熱システムから出力される熱放射から保護する保護シースを備えており、当該保護シースは、例えばガラス繊維生地等によって構成されている。
【0023】
この保護シースは、加熱システムにより圧縮ローラに向けられた熱放射に起因した圧縮ローラの厚み方向全体の発熱を防ぐことができる。この保護シースは、熱放射を吸収および/または反射することができる。その結果、温度調整流体は、保護シースを冷却することによって、熱伝導を利用して円筒の発熱を防ぐ。
【0024】
繊維配置の場合、圧縮ローラの上流で繊維を個々に切断可能な切断手段と、当該切断手段の上流に配置され、圧縮ローラへと向かう切断された各繊維を迂回させることによって、いつでも塗布の停止および再開を可能にすると共に、塗布するバンドの幅の変更を可能にする迂回手段とを備えている。例えば、16個または32個の繊維用の配置ヘッドに10個の繊維を用いる場合等、塗布するバンドの幅が縮小された場合、熱源およびローラの間に繊維が介入していない状態でローラは熱放射を直接受ける。保護シースは、この直接の熱放射に起因した発熱を防ぐことができる。
【0025】
一実施形態では、保護シースを設ける代わりに、あるいは、当該保護シースと組み合わせて、熱放射を略透過する材料で形成した円筒を用いてもよい。熱放射を略透過する材料とは、本発明の出願人が本発明と同日付で出願した仏国特許出願(発明の名称「加熱システムの放射を略透過する圧縮ローラを備える繊維塗布装置」)に記載されているような材料である。具体的には、当該仏国特許出願においては、「熱放射を略透過する」材料のことを意味し、当該熱放射の1つあるいは複数の波長に対して低い吸光度を示す材料を意味する。一実施形態によれば、上記可撓性材料はエラストマ系材料である。さらには、上記の可撓性材料は、シリコンまたはポリシロキサン、あるいは、ポリウレタンであることが好ましく、シリコンであることがより好ましい。一特性によれば、上記の加熱システムは780nmから1500nmの間の1つあるいは複数の波長を有する赤外放射を出力するため、上記の弾性変形可能な材料は、少なくとも780nmから1500nmまでの範囲内の低い吸光度を示す。上記の加熱システムは、850nmから1100nmの間の1つあるいは複数の波長を有する赤外放射を出力することが好ましい。
【0026】
一実施形態によれば、圧縮ローラが多孔質材料からなるシースおよび/または保護シースを備えている場合に、当該圧縮ローラは可撓性材料からなる円筒を被覆する非接着性の外部レイヤを備えている。この際、後者の保護シースは、円筒および非接着性の外部レイヤの間に介在している。上記の非接着性の外部レイヤは、例えば円筒上に熱的に収縮する非接着性フィルムであって、一般的にテフロン(登録商標)フィルムと呼ばれるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルム等の非接着性フィルムであることが好ましい。この場合も、非接着性の外部レイヤの温度を温度調整流体が調整する。
【0027】
一実施形態によれば、上記の加熱システムは、半導体レーザタイプ、YAGレーザタイプ、あるいは、繊維レーザタイプ等のレーザタイプのシステムである。もう1つの方法として、加熱システムは1つ以上の赤外線ランプを備えていてもよい。
【0028】
一実施形態によれば、上記の装置は空気等の温度調整流体束を圧縮ローラに向かって出力可能な温度調整手段をさらに備えている。これによって、外部から圧縮ローラの温度を調整すること、より具体的には圧縮ローラを冷却することができる。この場合、空気等の同じ温度調整流体によってローラの内部から外部へと向かって、ローラの温度調整が行われることが好ましい。
【0029】
一実施形態によれば、上記の温度調整手段は、室温(好ましくは、15℃から30℃の間)の温度調整流体、あるいは、15℃未満に冷却された温度調整流体を封入することによって、圧縮ローラを冷却することができる。この際、温度調整流体は、冷却されたガスあるいは室温のガスであることが好ましく、より好ましくは室温の空気である。
【0030】
本発明は、上述したような、弾性変形可能な可撓性材料あるいは非剛性材料からなる剛性の中心チューブを備え、当該中心チューブに取り付けられた圧縮ローラであって、当該中心チューブには複数の放射状の孔が設けられ、可撓性材料からなる円筒が、当該円筒の外面と複数の放射状の孔とを流体連通させることが可能な流体連通手段を備えていることを特徴とする圧縮ローラを提供することも目的としている。
【0031】
本発明、ならびに、本発明の他の目的、特徴、および、優れた点は、以下に示す本発明の現時点での好ましい具体的な実施形態について、添付の図面を参照してなされた詳細な説明の記載によって十分分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】圧縮ローラおよび加熱システムを備える本発明の第1の実施形態に係る繊維塗布ヘッドの側面を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す装置の圧縮ローラを示す透視図である。
【
図3A】
図2に示す圧縮ローラの部分横断面図である。
【
図3B】
図2に示す圧縮ローラの部分縦断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る装置の圧縮ローラを示す透視図である。
【
図5A】
図4に示す圧縮ローラの部分横断面図である。
【
図5B】
図4に示す圧縮ローラの部分縦断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係る装置の圧縮ローラを示す透視図である。
【
図7】
図6に示す圧縮ローラの部分縦断面図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態に係る装置の圧縮ローラを示す透視図である。
【
図9】
図8に示す圧縮ローラの部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に示すように、繊維塗布装置は、樹脂が予備含浸された繊維からなるバンド8を塗布するための塗布ヘッド1を備えている。この塗布ヘッド1は、ヘッドの支持構造(図示せず)上に、軸Aの周囲を回転するように取り付けられた圧縮ローラ2を含んでいる。ヘッドは、移動システム(例えば、ロボットの関節接合等)の端部に支持構造によって取り付けられている。
【0034】
ヘッドは、塗布面Sに対する繊維バンド8の塗布時の塗布ヘッドの進行方向Dに関して、ローラの上流に位置する支持構造に取り付けられた加熱システムもさらに備えている。例えば、加熱システムはレーザタイプの加熱システムであり、当該レーザタイプの加熱システムの放射は、バンドの圧縮の前に当該バンドに向けて行われると共に、予め配置された1つまたは複数のバンドに向けて行われる。
図1に示したように、放射はローラに対して斜めの方向から行われている。これによって、ローラ上に配置されたバンド部分が圧縮される前に、当該バンド部分を加熱することができる。
【0035】
繊維配置装置の場合、ヘッドは、圧縮ローラ2に向かってヘッド内に導入されてくる、樹脂が予備含浸されたバンド状の繊維を誘導する誘導手段を備えている。バンドの繊維は、略突合せ接合方式で並列して配置されている。ロボットによってヘッドを移動させることによって、圧縮ローラはバンドを塗布するモールドの塗布面Sと接触する。
【0036】
図2、3A、および、3Bに示すように、本発明に係る圧縮ローラは、圧縮によって弾性変形可能な可撓性材料からなる円筒状の本体あるいは円筒3を備えている。円筒は、支持中心となる剛性の円筒状の中心チューブ4上への自身の組み立てのための円筒状の中心通路31をなしている。中心チューブ4は、例えばアルミニウム製等の金属製のチューブである。円筒3および中心チューブ4は、互いに同軸上にあり、互いに一体化して回転する。例えば円筒は、シリコン、ポリシロキサン、または、ポリウレタン等の非膨張エラストマ系材料から構成されている。
【0037】
可撓性材料の円筒によって、圧縮ローラが湾曲した種々の塗布面に適合することができるので、配置されたバンド全体に略均一な圧力を加えることができる。剛性のチューブによって、支持構造上にローラが回転可能に取り付けられている。
【0038】
中心チューブは円柱状等の複数の放射状の孔を有しており、各孔は中心チューブの円筒状の壁の一端面から他端面までを横断して形成されている。したがって、複数の放射状の孔は、中心チューブの内部通路42ならびに円筒を開口している。円筒には、上記の複数の放射状の孔と並んで配置された複数の放射状のチャネル32が設けられており、各チャネル32の直径は各孔の直径と略同等である。
図3Bには、複数の放射状の孔41が6セットローラの軸Aに沿って縦方向に別々に設けられている例が示されている。各セットは所定の角度の分だけ間隔を空けて配置された複数の放射状の孔を有している。例えば、
図3Aの例では、各セットは互いに45°の分だけ間隔が空けられた8つの放射状の孔を有している。これによって、円筒は互いに45°の分だけ間隔が空けられた8つの放射状の孔を各々が有する6セットの放射状のチャネル32を備えている。
【0039】
放射状の各チャネル32は、円筒3の縦方向の溝34と円形の溝35との交点において、当該円筒3の円筒状の外面33を開口している。複数の縦方向の溝34(
図3Aの場合、8つの溝)は、円筒の一端面から他端面まで円筒の全長にわたって伸展している。
【0040】
外面的には、円筒は非接着性の外部レイヤ5によって被覆されている。具体的には、テフロンフィルムからなる外部レイヤ5を熱的に収縮させて円筒の外面上を被覆させている。したがって、テフロンフィルムは円筒の外面に形成されている縦方向の溝および円形の溝を覆う。ローラはテフロンフィルムを介してバンドに接触するため、繊維へのローラの付着ならびにローラの汚れを制限する。
【0041】
圧縮ローラは、自身の中心チューブの開口端43によって取り付けられている。例えば、ヘッド支持構造の2つのフランジの間に圧縮ローラは取り付けられている。装置は温度調整手段(図示せず)を備えており、当該温度調整手段は室温(15℃から30℃の間)のガス(具体的には空気)、あるいは、15℃未満に冷却されたガス(具体的には空気)を中心チューブの一方の開口端43から封入する。この空気の封入は、周知のスイング継手システムによって行われる。この際、中心チューブの少なくとも一方の開口端43から封入される空気は、複数の放射状の孔41を通過した後、円筒の放射状のチャネル32を通過して縦方向の溝34および円形の溝35を流通し、円筒において縦方向の溝が開口している端面36から漏れ出る。これによって、温度調整用の流体を冷却された空気あるいは室温の空気とすることで圧縮ローラを冷却し、その温度を30℃程度に維持することができる。
【0042】
もう1つの方法としては、加熱システムから出力される放射を略透過させるような可撓性材料で円筒を形成してもよい。
【0043】
例えば、熱放射に対して透過性を示す可撓性材料とは、シリコンタイプのエラストマ系材料である。より具体的には、Dow Corning社製の商品名「Silastic(R)T−4」である。
【0044】
レーザタイプの加熱システムは、1つ以上の列に配列された半導体レーザであって、880nmから1300nmの間の波長の放射を出力する半導体レーザを備えていてもよい。例えば、1060nm程度の波長の放射を出力する光学繊維レーザあるいはYAGレーザ等の半導体レーザを備えていてもよい。
【0045】
ローラ内部からの温度調整を達成するために、温度調整システムは、圧縮ローラに向かって空気流束を出力する温度調整手段をさらに備えていてもよい。これによって、圧縮ローラを外部からも冷却することができる。
【0046】
図4、5A、および、5Bは、本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態では、上述した第1の実施形態と同じように、圧縮ローラ102は、複数の放射状の孔141が設けられた剛性の中心チューブ104、および、弾性変形可能な可撓性材料からなる円筒103であって、複数の放射状のチャネル132が設けられた円筒103を備えている。本実施形態では、円筒の表面に封入された空気流束の流通、ならびに、封入された空気流束の円筒の端面からの漏出を促進するために設けられた、上述した第1の実施形態における縦方向の溝および円形の溝の代わりに、シース106が設けられている。シース106は、連続多孔質タイプの熱可塑性および/またはエラストマ系のフォーム、あるいは、織られていない繊維等の多孔質材料によって形成されている。この多孔質材料は、塗布面にローラを押しつける際の円筒の変形に適合するような弾性を示す。非接着性の外部シース105が上記の多孔質材料のシースを覆っている。封入された空気は、内部通路142および中心チューブ104の複数の放射状の孔141を通過した後、複数の放射状のチャネル132を通過して、多孔質材料のシースを通って当該シースの端面161から横に漏れ出る。
【0047】
図6および7は、本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態では、上述した第1の実施形態と同じように、圧縮ローラ202は、複数の放射状の孔241が設けられた剛性の中心チューブ204、弾性変形可能な可撓性材料からなる円筒203、および、円筒の外面233を覆う非接着性の外部シース205を備えている。本実施形態では、円筒には複数の放射状のチャネルは設けられておらず、円筒は弾性変形可能な可撓性の多孔質材料から構成されている。封入された空気は、複数の放射状の孔241を通って、中心チューブ204の内部通路242から排出されるが、多孔質の円筒全体を通って円筒の端面236から漏れ出る。可撓性の多孔質材料は、例えば連続多孔質タイプのエラストマ系フォーム等の連続多孔質タイプの熱可塑性および/またはエラストマ系のフォーム、あるいは、織られていない繊維である。
【0048】
図6および7は、本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態では、上述した第3の実施形態と同じように、圧縮ローラ302は、複数の放射状の孔341が設けられた剛性の中心チューブ304、弾性変形可能な可撓性材料からなる円筒303、および、円筒を被覆する非接着性の外部シース305を備えている。圧縮ローラは、円筒の外面333と非接着性の外部シースとの間に配置された保護シース307をさらに備えている。この保護シースは、加熱システム9が出力した熱放射を吸収および/または反射する。これによって、熱放射は可撓性材料からなる円筒にまで到達しない。封入された空気は、複数の放射状の孔341を通って、中心チューブ304の内部通路342から排出されるが、円筒全体を通ることによって保護バンドを冷却し、円筒の端面336から漏れ出る。
【0049】
具体的な実施形態に関連して本発明について説明したが、そのような具体的な実施形態に限定されるものではなく、以上で説明した手段と技術的に同等なものだけでなく、それらの組み合わせも本発明の範囲に含まれることを理解されたい。上述した実施形態では、温度調整システムは、可撓性の圧縮ローラを冷却するために用いられているが、当然に圧縮ローラを加熱するために温度調整システムを用いてもよい。