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特許5647725酸化物半導体組成物およびその製造方法、酸化物薄膜トランジスタおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5647725
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】酸化物半導体組成物およびその製造方法、酸化物薄膜トランジスタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20141211BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20141211BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20141211BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20141211BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20141211BHJP
   H01L 21/368 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 618A
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250E
   H01L29/28 220A
   H01L29/28 310J
   H01L21/368 Z
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-267508(P2013-267508)
(22)【出願日】2013年12月25日
【審査請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】102139745
(32)【優先日】2013年11月1日
(33)【優先権主張国】TW
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 Journal of Materials Chemistry C RSC Publishing(公開のタイトル) High−Performance transparent and flexible inorganic thin film transistors:a facile integration of graphehe nanosheets and amorphous InGaZnO にて2013年7月8日に公開
(73)【特許権者】
【識別番号】509112785
【氏名又は名称】中華映管股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(72)【発明者】
【氏名】謝 佳昇
(72)【発明者】
【氏名】連 ▲じゃん▼田
(72)【発明者】
【氏名】呉 宏▲ゆ▼
(72)【発明者】
【氏名】傅 欣敏
(72)【発明者】
【氏名】梁 建錚
【審査官】 山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−119665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/368
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物前駆体、グラフェンおよび溶媒を混合して、酸化物半導体組成物を形成するステップを含み、前記金属酸化物前駆体と前記溶媒が金属酸化物溶液を構成し、且つ前記グラフェンが前記金属酸化物溶液の中に散布され、前記酸化物半導体組成物の総重量に対し、前記グラフェンの含有量が0.01〜10重量%であり、前記金属酸化物前駆体の含有量が0.01〜30重量%であり、前記溶媒の含有量が60〜99.98重量%である酸化物半導体組成物の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物前駆体、グラフェンおよび溶媒を混合するステップが、
前記金属酸化物前駆体と前記溶媒を混合して前記金属酸化物溶液を形成した後に、前記グラフェンを前記金属酸化物溶液の中に追加することを含む請求項1に記載の前記金属酸化物前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記金属酸化物前駆体、グラフェンおよび溶媒を混合するステップが、
前記金属酸化物前駆体、前記グラフェンおよび前記溶媒を同時に混合することを含む請求項1に記載の前記金属酸化物前駆体の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物前駆体が、マグネシウム酸化物前駆体、インジウム酸化物前駆体、ガリウム酸化物前駆体、亜鉛酸化物前駆体、スズ酸化物前駆体、またはこれらの任意の組み合わせを含む請求項1に記載の前記金属酸化物前駆体の製造方法。
【請求項5】
前記金属酸化物溶液を形成するステップが、インジウム酸化物前駆体、ガリウム酸化物前駆体および亜鉛酸化物前駆体を前記溶媒の中に追加して、酸化インジウムガリウム亜鉛溶液を形成することを含む請求項1に記載の前記金属酸化物前駆体の製造方法。
【請求項6】
前記インジウム酸化物前駆体、ガリウム酸化物前駆体および亜鉛酸化物前駆体の化学量論的モル比が、1:1:1である請求項5に記載の前記金属酸化物前駆体の製造方法。
【請求項7】
前記金属酸化物前駆体が、酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化インジウム、塩化インジウム、硝酸インジウム、酸化ガリウム、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、二酸化スズ、塩化スズ、酢酸スズ、硝酸スズ、またはこれらの任意の組み合わせを含む請求項1に記載の前記金属酸化物前駆体の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の製造方法により製造された酸化物半導体組成物。
【請求項9】
グラフェンと、
金属酸化物と、
溶媒と
を含む酸化物半導体組成物であって、前記酸化物半導体組成物の総重量に対し、前記グラフェンの含有量が0.01〜10重量%であり、前記金属酸化物の含有量が0.01〜30重量%であり、前記溶媒の含有量が60〜99.98重量%である酸化物半導体組成物。
【請求項10】
金属酸化物前駆体、グラフェンおよび溶媒を混合して、酸化物半導体組成物を形成するステップと、そのうち、前記金属酸化物前駆体と前記溶媒が金属酸化物溶液を構成し、且つ前記グラフェンが前記金属酸化物溶液の中に散布され、前記酸化物半導体組成物の総重量に対し、前記グラフェンの含有量が0.01〜10重量%であり、前記金属酸化物前駆体の含有量が0.01〜30重量%であり、前記溶媒の含有量が60〜99.98重量%であり、
ベースの上に前記酸化物半導体組成物を提供するとともに、前記酸化物半導体組成物を固化させて、酸化物半導体層を形成するステップと、
ソース、ドレインおよびゲートを形成するステップと
を含み、前記酸化物半導体層が、前記ソースと前記ゲートの間に配置され、且つ前記ドレインと前記ゲートの間に配置された酸化物薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記ベースの上に前記酸化物半導体組成物を提供するステップが、スピンコーティング法またはロールツーロールコーティング法を含む請求項10に記載の酸化物薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記金属酸化物前駆体が、マグネシウム酸化物前駆体、インジウム酸化物前駆体、ガリウム酸化物前駆体、亜鉛酸化物前駆体、スズ酸化物前駆体、またはこれらの任意の組み合わせを含む請求項10に記載の酸化物薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記金属酸化物溶液を形成する方法が、インジウム酸化物前駆体、ガリウム酸化物前駆体および亜鉛酸化物前駆体を前記溶媒の中に追加して、酸化インジウムガリウム亜鉛溶液を形成することを含む請求項10に記載の酸化物薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記インジウム酸化物前駆体、ガリウム酸化物前駆体および亜鉛酸化物前駆体の化学量論的モル比が、1:1:1である請求項13に記載の酸化物薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記金属酸化物前駆体が、酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化インジウム、塩化インジウム、硝酸インジウム、酸化ガリウム、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、二酸化スズ、塩化スズ、酢酸スズ、硝酸スズ、またはこれらの任意の組み合わせを含む請求項10に記載の酸化物薄膜トラ
ンジスタの製造方法。
【請求項16】
ソース、ドレイン、ゲートおよび酸化物半導体層を含み、前記酸化物半導体層が、前記ソースと前記ゲートの間に配置され、且つ前記ドレインと前記ゲートの間に配置され、
前記酸化物半導体層が、金属酸化物およびグラフェンを含み、前記グラフェンが、前記金属酸化物層の中に散布された酸化物薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体組成物およびその製造方法、薄膜トランジスタおよびその製造方法に関するものであり、特に、酸化物半導体組成物およびその製造方法、酸化物薄膜トランジスタ(oxide thin film transistor, oxide TFT)およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ技術の発達に伴い、人々の生活がさらに便利になった。ディスプレイは、軽薄化を実現するため、現在、フラットパネルディスプレイ(flat panel display, FPD)が主流となっている。多くのフラットパネルディスプレイのうち、液晶ディスプレイ(liquid display, LCD)は、高空間利用効率、低消耗効率、非放射性、低電磁干渉といった優れた特性を有するため、消費者に最も人気がある。一般的に、薄膜トランジスタで液晶分子のグレースケール電圧を制御することにより、画面を表示することができる。薄膜トランジスタの半導体層は、信号の伝送速度を効率的に制御することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
薄膜トランジスタのチャネル電流(Ion)は、主に、半導体層の幅と長さの比に比例するため(Ion=U*W/L(VG−Vth)VD、U:キャリアモビリティ、W:チャネルの幅、L:チャネルの長さ、VG:ゲート電圧、Vth:しきい電圧、VD:ドレイン電圧)、半導体層の幅を増やすことによって、チャネル電流を上げることができる。しかしながら、半導体層の幅を増やすと、開口率の降下など、部品のレイアウトに影響を及ぼすことがある。
【0004】
また、現在、可撓性パネルの技術にますます注目が集まっている。しかしながら、周知の薄膜トランジスタの半導体層は、通常、金属またはアモルファスシリコン等の延性の悪い材料で製造されるため、周知の薄膜トランジスタを可撓性パネルに応用すると、薄膜トランジスタに裂け目が生じ、画面を正常に表示することができないという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、グラフェン(Graphene)および金属酸化物を含む酸化物半導体組成物を提供する。これにより製造された酸化物半導体層は、優れたキャリアモビリティと延性を提供することができる。
【0006】
本発明は、以下のステップを含む酸化物半導体組成物の製造方法を提供する。金属酸化物前駆体、グラフェンおよび溶媒を混合して、酸化物半導体組成物を形成する。そのうち、前記金属酸化物前駆体と前記溶媒は、金属酸化物溶液を構成し、且つ前記グラフェンは、前記金属酸化物溶液の中に散布される。前記酸化物半導体組成物の総重量に対し、前記グラフェンの含有量は0.01〜10重量%であり、前記金属酸化物前駆体の含有量は0.01〜30重量%であり、前記溶媒の含有量は60〜99.98重量%である。
【0007】
本発明は、グラフェン、金属酸化物および溶媒を含む酸化物半導体組成物を提供する。酸化物半導体組成物の総重量に対し、グラフェンの含有量は0.01〜10重量%であり、金属酸化物の含有量は0.01〜30重量%であり、溶媒の含有量は60〜99.98重量%である。
【0008】
本発明は、以下のステップを含む酸化物薄膜トランジスタ(oxide thin film transistor, oxide TFT)の製造方法を提供する。金属酸化物前駆体、グラフェンおよび溶媒を混合して、酸化物半導体組成物を形成する。そのうち、前記金属酸化物前駆体と前記溶媒は、金属酸化物溶液を構成し、且つ前記グラフェンは、前記金属酸化物溶液の中に散布される。前記酸化物半導体組成物の総重量に対し、前記グラフェンの含有量は0.01〜10重量%であり、前記金属酸化物前駆体の含有量は0.01〜30重量%であり、前記溶媒の含有量は60〜99.98重量%である。ベースの上に酸化物半導体組成物を提供するとともに、酸化物半導体組成物を固化させて、酸化物半導体層を形成する。ソース(source electrode)、ゲート(gate electrode)およびドレイン(drain electrode)を形成する。そのうち、酸化物半導体層は、ソースとゲートの間に配置され、且つドレインとゲートの間に配置される。
【0009】
本発明は、また、ソース、ドレイン、ゲートおよび酸化物半導体層を含む酸化物薄膜トランジスタを提供する。そのうち、前記酸化物半導体層は、ソースとゲートの間に配置され、且つドレインとゲートの間に配置される。酸化物半導体層は、金属酸化物およびグラフェンを含む。そのうち、グラフェンは、金属酸化物層の中に散布される。
【0010】
以上のように、本発明の半導体組成物により形成された酸化物半導体層は、優れたキャリアモビリティと優れた延性を有する。そのため、この酸化物半導体層を含む酸化物薄膜トランジスタは、優れた素子特性および素子信頼性を有することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)〜(c)は、本発明の1つの実施形態に係る酸化物薄膜トランジスタの製造フローチャートである。
図2】実例1の酸化物薄膜トランジスタの構造概略図である。
図3】実例1の酸化物薄膜トランジスタのドレイン/ソース電流対ドレイン/ソース電圧の関係図である。
図4】実例1の酸化物薄膜トランジスタのドレイン/ソース電流対ゲート電圧の関係図である。
図5】実例1の酸化物薄膜トランジスタと周知の酸化物薄膜トランジスタのキャリアモビリティ対屈曲回数の関係図である。
図6】実例1の酸化物薄膜トランジスタ、アモルファスシリコン薄膜トランジスタおよび低温ポリシリコン薄膜トランジスタのドレイン出力電流(Idd)対ゲート駆動立ち上がり電圧(gate driver turn-on voltage、Vgh)の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1(a)〜(c)は、本発明の1つの実施形態に係る酸化物薄膜トランジスタの製造フローチャートである。図1(a)を参照すると、まず、基板102の上に、ゲートG、ゲート絶縁層GIおよび半導体材料層104を順番に形成する。
【0014】
基板102は、リジット基板またはフレキシブル基板を含む。リジット基板は、例えば、ガラス基板またはその他の適切なリジット基板である。フレキシブル基板は、例えば、プラスチック基板またはその他の適切なフレキシブル基板である。ゲートGの形成方法は、例えば、基板102の上に、まず、ゲート材料層を形成する。それから、ゲート材料層をパターニングして、ゲートGを形成する。ゲート材料層の材料は、例えば、金属、金属酸化物またはその他の適切な材料である。続いて、基板102の上に、ゲート絶縁層GIを形成する。ゲート絶縁層GIは、基板102およびゲートGを覆う。ゲート絶縁層GIの材料は、例えば、窒化ケイ素またはその他の適切な絶縁材料である。
【0015】
続いて、基板102の上に、酸化物半導体材料層104を形成する。具体的に説明すると、金属酸化物前駆体を溶媒の中に追加して、金属酸化物溶液を形成する。これは、例えば、ソル‐ゲル溶液(sol-gel solution)であり、酸素原子の由来は、溶媒または空気であってもよい。そして、グラフェンを前記金属酸化物溶液に追加する。グラフェンは、例えば、ナノシート(nanosheets)であり、金属酸化物溶液の中に散布され、酸化物半導体組成物を形成する。ここで、グラフェンは、例えば、まず、別の溶媒の中に追加してグラフェン溶液を形成してから、このグラフェン溶液を前記金属酸化物溶液の中に追加する。酸化物半導体組成物を製造する前に使用した各反応物の含有量は、以下の通りである:酸化物半導体組成物の総重量に対し、グラフェンの含有量は、0.01〜10重量%であり、金属酸化物前駆体の含有量は、0.01〜30重量%であり、溶媒の含有量は、60〜99.98重量%である。より好適な実施形態において、グラフェンの含有量は、0.01〜3重量%であり、金属酸化物前駆体の含有量は、0.01〜5重量%であり、溶媒の含有量は、92〜99.98重量%である。
【0016】
酸化物半導体組成物を製造した後に含まれる各生成物の含有量は、以下の通りである:酸化物半導体組成物の総重量に対し、グラフェンの含有量は、0.01〜10重量%であり、金属酸化物の含有量は、0.01〜30重量%であり、溶媒の含有量は、60〜99.98重量%である。より好適な実施形態において、グラフェンの含有量は、0.01〜3重量%であり、金属酸化物の含有量は、0.01〜5重量%であり、溶媒の含有量は、92〜99.98重量%である。グラフェンを金属酸化物溶液の中に散布することによって、優れたキャリアモビリティを提供し、且つグラフェンの含有量を一定のレベルに下げることにより、構成された酸化物半導体組成物は、半導体特性を維持することができる。
【0017】
本実施形態において、まず金属酸化物前駆体溶液を反応させて金属酸化物溶液を形成した後に、グラフェンを金属酸化物溶液の中に追加して酸化物半導体組成物を形成する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。他の実施形態において、グラフェン、金属酸化物前駆体および溶媒を同時に追加して、その反応後に酸化物半導体組成物を形成してもよい。
【0018】
続いて、酸化物半導体組成物を基板102の上に塗布する。酸化物半導体組成物を基板102の上に塗布する方法は、スピンコーティング(spin coating)法またはロールツーロールコーティング(roll-to-roll coating)法等の溶液プロセス方法を含む。続いて、前記酸化物半導体組成物を固化させて、酸化物半導体材料層104を形成する。ここで、固化の方法は、例えば、加熱である。別の角度から見ると、酸化物半導体材料層104は、金属酸化物層と、グラフェンナノシートとを含み、グラフェンナノシートは、金属酸化物層の中に散布される。
【0019】
金属酸化物前駆体は、例えば、マグネシウム酸化物前駆体、インジウム酸化物前駆体、ガリウム酸化物前駆体、亜鉛酸化物前駆体、スズ酸化物前駆体、またはこれらの任意の組み合わせである。マグネシウム酸化物前駆体は、例えば、酸化マグネシウム(magnesium oxide)、酢酸マグネシウム(magnesium acetate)または硝酸マグネシウム(magnesium nitrate)である。インジウム酸化物前駆体は、例えば、酸化インジウム(indium oxide)、塩化インジウム(indium chloride)または硝酸インジウム(indium nitrate)である。ガリウム酸化物前駆体は、例えば、酸化ガリウム(gallium oxide)、塩化ガリウム(gallium chloride)または硝酸ガリウム(gallium nitrate)である。亜鉛酸化物前駆体は、例えば、酸化亜鉛(zinc oxide)、塩化亜鉛(zinc chloride)、酢酸亜鉛(zinc acetate)または硝酸亜鉛(zinc nitrate)である。スズ酸化物前駆体は、例えば、二酸化スズ(tin oxide)、塩化スズ(tin chloride)、酢酸スズ(tin acetate)または硝酸スズ(tin nitrate)である。
【0020】
溶媒は、クロロベンゼン(chlorobenzene)、n‐ヘキサン(n-hexane)、2‐プロピルアルコール(2-propyl alcohol)、2‐ブチルアルコール(2-butyl alcohol)、酢酸エチル(ethyl acetate)、トリクロロメタン(trichloromethane)、二硫化炭素(carbon disulfide)、エチレングリコール(ethylene glycol)、2‐メトキシエタノール(2-methoxyethanol)、ジエタノールアミン(diethanolamine)、アセトニトリル(acetonitrile)、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0021】
図1(b)を参照すると、酸化物半導体材料層104に対してパターニングプロセスを行い、酸化物半導体層SEを形成する。酸化物半導体層SEは、例えば、ゲートGの上方にあるゲート絶縁層GIの上に配置される。上述したパターニングプロセスは、例えば、リソグラフィエッチングプロセスである。
【0022】
図1(c)を参照すると、ソースS、ドレインDおよび保護層PVを形成する。具体的に説明すると、ソースSおよびドレインDの形成方法は、例えば、まず、基板102の上にソース/ドレイン材料層を形成する。続いて、ソース/ドレイン材料層をパターニングしてソースSおよびドレインDを形成する。ソース/ドレイン材料層の材料は、例えば、金属、金属酸化物またはその他の適切な材料である。ソースSおよびドレインDの一部を酸化物半導体層SEの上に設置し、且つ互いに分離させる。ここで、酸化物薄膜トランジスタ100の製造が最初に完成する。続いて、保護層PVを選択的に形成して、ゲートG、ソースS、ドレインDおよび酸化物半導体層SEを覆ってもよい。ここで、ボトムゲート型の構造を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。本実施形態の酸化物半導体組成物は、トップゲート薄膜トランジスタの酸化物半導体層に応用してもよい。
【0023】
本実施形態は、溶液プロセス(solution process)により酸化物半導体組成物を製造してから、スピンゴーティング法またはロールツーロールコーティング法で基板の上に塗布し、その後、固化プロセスを行って酸化物半導体材料層104を形成することができ、複雑な設備がなくても製造を完成させることができるため、プロセスが単純で、コストを節約することができる。また、溶液プロセスで酸化物半導体組成物を製造する時、酸化物半導体組成物の各成分比を正確に制御することができる。
【0024】
[酸化物半導体組成物の製造]
75℃で塩化インジウム(InCl3、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)株式会社)、塩化ガリウム(GaCl3、シグマアルドリッチ株式会社)および塩化亜鉛(ZnCl2、シグマアルドリッチ株式会社)をグリコール(C262、シグマアルドリッチ株式会社)の中に溶かして、酸化インジウムガリウム亜鉛(Indium-Gallium-Zinc Oxide, IGZO)ソル‐ゲル溶液(sol-gel solution)を形成する。塩化インジウム、塩化ガリウムおよび塩化亜鉛の化学量論的モル比(stoichiometric molar ratio)は、1:1:1である。その後、グラフェン溶液と酸化インジウムガリウム亜鉛ソル‐ゲル溶液を混合し、且つ50℃で1時間撹拌して、酸化物半導体組成物の製造が完了する。続いて、上述した酸化物半導体組成物を材料として、実例1の薄膜トランジスタの製造を行う。実例1の薄膜トランジスタの構造は、図2を参照することができる。
【0025】
[酸化物薄膜トランジスタの特性試験]
図2は、実例1の酸化物薄膜トランジスタの構造概略図である。図2を参照すると、薄膜トランジスタ100aの構造と図1(c)の薄膜トランジスタ100の構造はほぼ同じであり、基板102は、例えば、フレキシブル基板である。また、薄膜トランジスタ100aは、ゲートGと酸化物半導体層SEの間に配置された誘電層106を含む。酸化物半導体層SEは、上述したグラフェンおよび酸化インジウムガリウム亜鉛を含む酸化物半導体組成物を材料として製造される。図3は、実例1の酸化物薄膜トランジスタのドレイン/ソース電流対ドレイン/ソース電圧の関係図である。そのうち、曲線a〜fは、それぞれ、ゲート電圧が0V、0.3V、0.6V、0.9V1.2Vおよび1.5Vを示す。図4は、実例1の酸化物薄膜トランジスタのドレイン/ソース電流対ゲート電圧の関係図である。そのうち、曲線g、hは、それぞれ、ドレイン/ソース電圧が2.1Vおよび0.1Vを示す。図3および図4からわかるように、実例1の酸化物薄膜トランジスタは、優れた素子特性を有する。
【0026】
続いて、実例1の酸化物薄膜トランジスタを屈曲させた後に、そのキャリアモビリティについて測定する。図5は、実例1の酸化物薄膜トランジスタと周知の酸化物薄膜トランジスタのキャリアモビリティ対屈曲回数の関係図である。そのうち、曲線i、jは、それぞれ、実例1および周知の酸化物薄膜トランジスタを示す。周知の酸化物薄膜トランジスタの酸化物半導体層は、酸化インジウムガリウム亜鉛を含むが、グラフェンを含まない。図5からわかるように、実例1の酸化物薄膜トランジスタは、たくさん屈曲させても、比較的高いキャリアモビリティを保持する。つまり、実例1の酸化物薄膜トランジスタの酸化物半導体層は、比較的優れた延性を有するため、実例1の酸化物薄膜トランジスタは、比較的優れた可撓性を有し、フレキシブル電子デバイスへの応用に適している。
【0027】
表1は、実例1の酸化物薄膜トランジスタ、アモルファスシリコン薄膜トランジスタおよび低温ポリシリコン薄膜トランジスタの各特性試験結果である。図6は、実例1の酸化物薄膜トランジスタ、アモルファスシリコン薄膜トランジスタおよび低温ポリシリコン薄膜トランジスタのドレイン出力電流(Idd)対ゲート駆動立ち上がり電圧(Vgh)の関係図である。そのうち、曲線x、y、zは、それぞれ、実例1の酸化物薄膜トランジスタ、アモルファスシリコン薄膜トランジスタおよび低温ポリシリコン薄膜トランジスタである。ここで、アモルファスシリコン薄膜トランジスタと実例1の酸化物薄膜トランジスタの構造は同じであり、その半導体層の材質は、アモルファスシリコンである。
【0028】
表1および図6からわかるように、実例1の酸化物薄膜トランジスタは、比較的優れた素子特性を有する。アモルファスシリコン薄膜トランジスタ(曲線y)と比較して、実例1の薄膜トランジスタのオン電流は比較的高い(曲線x)。アモルファスシリコン薄膜トランジスタ(曲線y)および低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(曲線z)と比較して、実例1の薄膜トランジスタのリーク電流は比較的低く、且つ1pAよりも小さい。つまり、実例1の薄膜トランジスタの電力損失は比較的低い。
【0029】
【表1】
【0030】
以上のように、本発明の半導体組成物により形成された酸化物半導体層は、優れたキャリアモビリティおよび優れた延性を有する。したがって、この酸化物半導体層を含む酸化物薄膜トランジスタは、優れた素子特性および素子信頼性を有することができる。また、溶液プロセスを行って半導体組成物を塗布することにより、さらに酸化物半導体層の製造を完成させることができるため、プロセスが単純で、製造コストを節約することができる。
【符号の説明】
【0031】
100 酸化物薄膜トランジスタ
102 基板
104 酸化物半導体材料層
106 誘電層
G ゲート
GI ゲート絶縁層
S ソース
D ドレイン
SE 酸化物半導体層
PV 保護層
a〜j、x〜z 曲線
【要約】      (修正有)
【課題】優れたキャリアモビリティと延性を提供することのできる酸化物半導体組成物およびその製造方法、酸化物薄膜トランジスタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】酸化物半導体組成物は、グラフェン、金属酸化物、および溶媒を含む。酸化物半導体組成物の総重量に対し、グラフェンの含有量は0.01〜10重量%であり、金属酸化物の含有量は0.01〜30重量%であり、溶媒の含有量は60〜99.98重量%である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6