特許第5647795号(P5647795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5647795高電圧耐圧コイルトランスジューサ(コイル変換器)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5647795
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】高電圧耐圧コイルトランスジューサ(コイル変換器)
(51)【国際特許分類】
   H01F 19/00 20060101AFI20141211BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20141211BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   H01F19/00 Z
   H01F17/00 B
   H01F23/00 B
【請求項の数】26
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-27358(P2010-27358)
(22)【出願日】2010年2月10日
(65)【公開番号】特開2010-212669(P2010-212669A)
(43)【公開日】2010年9月24日
【審査請求日】2013年2月1日
(31)【優先権主張番号】12/370,208
(32)【優先日】2009年2月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506076606
【氏名又は名称】アバゴ・テクノロジーズ・ジェネラル・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100118407
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 尚美
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100125036
【弁理士】
【氏名又は名称】深川 英里
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100156443
【弁理士】
【氏名又は名称】松崎 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100162330
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 幹規
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・イー・フーケ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・アール・トロット
(72)【発明者】
【氏名】クラーク・エフ・ウェブスター
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−236365(JP,A)
【文献】 特開2000−114047(JP,A)
【文献】 特開2008−061236(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0180206(US,A1)
【文献】 再公表特許第2008/105213(JP,A1)
【文献】 特開2003−318029(JP,A)
【文献】 特開平07−038262(JP,A)
【文献】 特開2008−270490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 19/00
H01F 17/00
H01F 38/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心コア層と上部コア層と下部コア層とを備え、上面と下面とを有する、平面状の誘電体障壁・電気絶縁性コア構造体であって、該中心コア層と該上部コア層と該下部コア層との各々が電気絶縁性の非金属であり非半導体の低誘電損失材料を備えており、該上部コア層が該中心コア層の上側に配置され、該下部コア層が該中心コア層の下側に配置されている、平面状の誘電体障壁・電気絶縁性コア構造体と、
前記コア構造体の上側に配置された第1の導電性コイルと、
前記コア構造体の下側に配置された第2の導電性コイルと
前記第2の導電性コイル上に配置されて該第2の導電性コイルに接続された電気接点
を備えてなる、コイルトランスジューサであって、
前記中心コア層は、当該中心コア層を貫通するバイアまたは当該中心コア層内に配置されるバイアを有さず、前記第1および第2の導電性コイルは、パワー信号およびデータ信号のうちの少なくとも1つが前記中心コア層に亘って前記第1の導電性コイルによって前記第2の導電性コイルに送信され得るように、互いに関連して空間的に配置されて構成されており、
前記電気接点は、前記第1の導電性コイルの下方で、かつ、前記第2の導電性コイルの巻線領域の外部に配置され、
前記コイルトランスジューサは、前記コア構造体と前記第1の導電性コイルとからなる層構造の端部領域の一部が凹状に除去された構成とされ、該端部領域の一部は、前記電気接点の上部の領域に対応し、これによって、前記電気接点が前記コイルトランスジューサから露出している、コイルトランスジューサ。
【請求項2】
前記中心コア層は、固体であってポリイミドを含むものである、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項3】
前記上部コア層および前記下部コア層は、接着剤を含むポリイミド含有材料を含む、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項4】
前記第1の導電性コイルの少なくとも一部分を形成するために上部固体層の上面および下面の上または内に配置された第1および第2の金属化層を有する上部固体層であって、前記上部コア層の上側に配置された上部固体層と、前記第2の導電性コイルの少なくとも一部分を形成するために下部固体層の上面および下面の上または内に配置された第3および第4の金属化層を有する下部固体層であって、前記下部コア層の下側に配置された下部固体層とを更に備える、請求項3に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項5】
前記上部コア層は前記第2の金属化層の少なくとも一部分と接触し、前記下部コア層は前記第3の金属化層の少なくとも一部分と接触している、請求項4に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項6】
前記上部固体層と前記第1の金属化層の少なくとも一部分との上側に配置された上部カバー層であって、電気絶縁性の非金属であり非半導体の低誘電損失材料を含む上部カバー層と、前記下部固体層と前記第4の金属化層の少なくとも一部分との下側に配置された下部カバー層であって、電気絶縁性の非金属であり非半導体の低誘電損失材料を含む下部カバー層とを更に備える、請求項5に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項7】
前記下部カバー層は前記上部カバー層より厚く、前記下部カバー層の厚さは、1ミル(2.54μm)以上である、請求項6に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項8】
前記上部カバー層および前記下部カバー層のうちの少なくとも1つは、ポリイミドを含むものである、請求項6に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項9】
拡張部の上または内に受信機回路および送信機回路のうちの少なくとも1つを配置したように構成される拡張部を更に備える、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項10】
前記拡張部は、その上に配置され、外部接地に動作可能に接続された少なくとも1つの金属化接地パッドを更に備える、請求項9に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項11】
前記第1および第2の導電性コイルのそれぞれに電気的に接続された、少なくとも第1および第2のバスバーを更に備える、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項12】
前記第1のバスバーは、前記第1の導電性コイルから前記コイルトランスジューサの第1の面まで延在するように構成され、前記第2のバスバーは、前記第2の導電性コイルから前記コイルトランスジューサの第2の面まで延在するように構成される、請求項11に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項13】
前記コア構造体は、前記コイルトランスジューサに構造的剛性と機械的強度とを与えるように構成される、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項14】
前記コア構造体内の前記層の少なくとも1つは、接着剤、ポリイミド、ポリイミド樹脂、粘着性ポリイミド、ポリイミドフィルム、ポリマー、アクリル、エポキシ、エポキシ調整剤、エポキシ樹脂、ポリマー、プラスチック、熱硬化性プラスチック、屈曲性回路材料、ガラスファイバ、ガラス、セラミック、有機材料、プリント基板材料、PTFEおよびガラス、PTFEおよびセラミック、ガラスおよびセラミック、有機材料、および有機充填剤と無機固形物との組合せ、のうちの1つ以上を更に含むものである、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項15】
前記第1の導電性コイルと前記第2の導電性コイルとの間の絶縁破壊電圧は、1分の期間に亘って印加されるときに2,000ボルトRMSを超えるか、6分の期間に亘って印加されるときに2,000ボルトRMSを超えるか、または、24時間の期間に亘って印加されるときに2,000ボルトRMSを超えるものである、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項16】
前記第1の導電性コイルと前記第2の導電性コイルとの間の絶縁破壊電圧は、1分の期間に亘って印加されるときに5,000ボルトRMSを超えるか、6分の期間に亘って印加されるときに5,000ボルトRMSを超えるか、または24時間の期間に亘って印加されるときに5,000ボルトRMSを超えるものである、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項17】
前記コア構造体は、その上面と下面との間に、1ミルと10ミルとの間の範囲にある厚さか、1ミルと8ミルとの間の範囲にある厚さか、または2ミルと5ミルとの間の範囲にある厚さを有するものである、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項18】
前記中心コア層は、1ミルと7ミルとの間の範囲にある厚さを有する、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項19】
入力リードフレームおよび出力リードフレームのうちの少なくとも1つが前記コイルトランスジューサに接続される、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項20】
前記入力及び出力リードフレームの導電性部分は、前記コア構造体の下で前記第1または第2の導電性コイルの直接下の位置まで延在しないように構成される、請求項19に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項21】
前記コイルトランスジューサと前記入力リードフレームおよび前記出力リードフレームとの少なくとも一部分をカプセル封入する成形可能な電気絶縁性材料を更に備える、請求項19に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項22】
前記コイルトランスジューサは、データ転送デバイスおよびパワー転送デバイスの1つとして動作するように構成される、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項23】
前記第1の導電性コイルは送信機回路に動作可能に接続され、前記第2の導電性コイルは受信機回路に動作可能に接続される、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項24】
前記第1の導電性コイルおよび前記第2の導電性コイルの少なくとも1つは、金、ニッケル、銀、銅、タングステン、スズ、およびアルミニウム、または上記の金属のうちの任意の金属の合金または組合せ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項25】
前記第1の導電性コイルに電気的に接続された前記コイルトランスジューサのすべての第1の部分は、隣接層間に配置された1つ以上の境界面に沿って任意の水平方向に、前記第2の導電性コイルに電気的に接続された前記コイルトランスジューサのすべての第2の部分から最小で少なくとも0.4mm離れている、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【請求項26】
前記中心コア層は、室温において0.05未満の誘電正接を有する、請求項1に記載のコイルトランスジューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明される本発明の種々の実施形態は、データ信号およびパワー変成器の、またはガルバニックアイソレータおよびコイルトランスジューサの分野に関し、より詳細には、誘電体障壁または分離障壁に亘ってデータ信号および/またはパワー信号を送信および受信するために、誘導結合コイルトランスジューサを使用するデバイスに関する。
【0002】
(関連出願)
本願は、(a)Fouquet et al.による「Galvanic Isolators and Coil Transducers」(ガルバニックアイソレータおよびコイルトランスジューサ)と題する2008年3月31日に出願された米国特許出願第12/059,979号(以下、「’979号特許出願」とよぶ)および(b)Fouquet et al.による「Coil Transducer with Reduced Arcing and Improved High Voltage Breakdown Performance Characteristics」(低減されたアーク放電および改善された高電圧絶縁破壊性能特性を有するコイルトランスジューサ)と題する2008年3月31日に出願された米国特許出願第12/059,747号(以下、「’747号特許出願」とよぶ)からの優先権および他の利益を主張するものであり、これらの特許出願の一部継続出願である。上記の’979号特許出願および’747号特許出願のそれぞれの全体を引用することにより本明細書の一部をなすものである。
【背景技術】
【0003】
従来技術で周知の高電圧分離通信デバイスは、光デバイスと、磁気デバイスと、容量性デバイスとを含む。従来技術の光デバイスは、典型的には、光信号を送信および受信するためにLEDおよび対応するフォトダイオードを使用することによって高電圧分離を達成し、通常は高いパワー(電力)レベルを必要とし、多数の通信チャネルが必要とされるときには動作上および設計上の制約に悩まされる。
【0004】
従来技術の磁気デバイスは、典型的には、相対する誘導結合コイルを使用することによって高電圧分離を達成し、通常は(特に、高いデータ転送速度が必要とされるときに)高いパワーレベルを必要とし、典型的には、少なくとも3個の別々の集積回路またはチップの使用を必要とし、そしてしばしば電磁干渉(「EMI」)の影響を受けやすい。
【0005】
従来技術の容量性デバイスは、多数のペアの送信電極と受信電極とを使用することによって電圧分離を達成するが、この場合、例えば、第1のペアの電極はデータを送信および受信するために使用され、第2のペアの電極は送信信号を更新または保持するために使用される。このような容量性デバイスは典型的には、貧弱な高電圧耐圧特性あるいは絶縁破壊特性を示す。
【0006】
小型高速ガルバニックアイソレータの設計は、高電圧絶縁破壊特性および許容可能なデータまたはパワー転送速度を維持しながら、電磁干渉(EMI)、大きな高速過渡現象および他の形の電気雑音を処理する方法などの幾つかの厄介な技術的な難問を提起する。
【0007】
必要とされることは、小型で低消費電力であり、データが比較的に高いデータ転送速度で伝達されることを可能にし、改善された高電圧絶縁破壊能力を有し、そして、低コストで製造でき、または本明細書およびその図面を読んで理解した後に明らかになる他の利点を有する高電圧分離通信デバイスである。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態では、中心コア層と上部コア層と下部コア層との各々が電気絶縁性の非金属であり非半導体の低誘電損失材料を備える、中心コア層と、上記中心コア層の上側に配置された上部コア層と、上記中心コア層の下側に配置された下部コア層とを備えており、上面と下面とを有する、概ね平面状の誘電体障壁・電気絶縁性コア構造と、上記コア層の上側に配置された第1の導電性コイルと、上記コア層の下側に配置された第2の導電性コイルとを備えてなるコイルトランスジューサであって、上記コア層は、このコア層を貫通するバイアまたはコア層内に配置されるバイアを有さず、上記第1および第2のコイルは、パワー信号およびデータ信号のうちの少なくとも1つが上記コア層に亘って上記第1のコイルによって上記第2のコイルに送信され得るように互いに関連して空間的に配置されて構成される、コイルトランスジューサを提供する。
【0009】
もう1つの実施形態では、中心コア層と上部コア層と下部コア層との各々が電気絶縁性の非金属であり非半導体の低誘電損失材料を備える、中心コア層と、上記中心コア層の上側に配置された上部コア層と、上記中心コア層の下側に配置された下部コア層とを備えており、上面と下面とを有する、概ね平面状の誘電体障壁・電気絶縁性コア構造を形成するステップと、上記コア層の上側に配置された第1のコイルを形成する第1の導電体を備えるステップと、上記コア層の下側に配置された第2のコイルを形成する第2の導電体を備えるステップと、上記第1のコイルが上記コア層によって上記第2のコイルから分離されるように、そして、上記第1および第2のコイルが、パワー信号およびデータ信号のうちの少なくとも1つが上記コア層に亘って上記第1のコイルによって上記第2のコイルに送信され得るように互いに関連して空間的に配置されて構成されるように、上記コア層がこのコア層を貫通するバイアまたはコア層内にバイアを有することなく、上記第1のコイルと上記第2のコイルと上記コア層とを互いに関連して構成するステップとを含んでなる、コイルトランスジューサの製造方法を提供する。
【0010】
更なる実施形態は、本明細書において開示され、または本明細書およびその図面を読んで理解した後に当業者に明らかになるであろう。
【0011】
本発明の種々の実施形態の異なる態様は、下記の明細書、図面および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態によるコイルトランスジューサの側断面図である。
図2図1のコイルトランスジューサの上部斜視図である。
図3】もう1つの実施形態によるコイルトランスジューサの側断面図である。
図4図3のコイルトランスジューサの上部斜視図である。
図5】他の実施形態による2つのコイルトランスジューサの上部斜面図である。
図6】ラミネーションプロセス(積層工程)時における積み重ねトランスジューサアセンブリの一実施形態の側断面図である。
【0013】
これらの図面は必ずしも原寸に比例していない。注釈がなければこれらの図面を通して同様の番号は同様の部分またはステップを指す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
下記の説明では、本発明の種々の実施形態の完全な理解を与えるために具体的な詳細事項が提供される。しかしながら本明細書と特許請求の範囲と本明細書の図面とを読んで理解したときに、当業者は、本発明のある幾つかの実施形態が本明細書で説明されている具体的詳細事項の幾つかを遵守することなく実施され得ることを理解する。更に本発明を分かりにくくすることを避けるために、本発明の種々の実施形態に用途を見出しているある幾つかの周知の回路、材料および方法は、本明細書では詳細に開示されない。
【0015】
これらの図面は、本発明のすべてではなく一部の可能な実施形態を図示するものであり、更に原寸に比例して図示されていないことがある。
【0016】
本明細書で使用されている用語「水平」は、実際の空間的方位とは関係なく、本発明の基板の通常の平面または表面に実質的に平行な平面であると定義される。用語「垂直」は上記に定義された水平と実質的に垂直な方向を指す。用語「上に(on)」、「上側に(above)」、「下側に(below)」、「底部(bottom)」、「上部(top)」、「側部(side)」、「側壁(sidewall)」、「より高い(higher)」、「より低い(lower)」、「より上部の(upper)」、「の上に(over)」、および「の下に(under)」は、上記の水平面について定義される。
【0017】
ここで、図1および図2を参照すると、一実施形態によるコイルトランスジューサ20の側断面図および上部斜視図が示されている。手近な特定の用途によればコイルトランスジューサ20は、データ転送デバイスまたはパワー転送デバイスとして動作するように構成され得る。図示のようにコイルトランスジューサ20は、相対する上面21と下面23とを有し、第1のコイル50と第2のコイル60との間に誘電体障壁を形成する中心コア層30を備える、概ね平面状の電気絶縁性誘電体障壁コア構造体39を備える。更に図1に示されているように、一実施形態では、コア構造体39は、中心コア層30の上側に配置された上部コア層31と、中心コア層30の下側に配置された下部コア層33とを更に備える。同様に、コア構造体39の上側には上部固体層42が配置される一方、コア構造体39の下側には下部固体層44が配置される。好適には、上部固体層42とコイル50の上側および下部固体層44とコイル60の下側には、カバー層46および48がそれぞれ配置される。
【0018】
層30、31、33、42、44、46および48のうちの任意の1つ以上の層は、接着剤、ポリイミド、ポリイミド樹脂、「粘着性」ポリイミドまたは「粘着性」KAPTON(商標)(例えば、それぞれ接着剤を含むポリイミド含有材料である、接着剤被覆ポリイミドフィルムまたは接着剤被覆KAPTON(商標))、ポリイミドフィルム、アクリル、エポキシ、エポキシ調節剤、エポキシ樹脂、ポリマー(重合体)、プラスチック、屈曲性回路材料、ガラスファイバ、ガラス、セラミック、ポリマー、有機材料、FR4および他のプリント基板材料、PTFEおよびガラス、PTFEおよびセラミック、ガラスおよびセラミック、熱硬化性プラスチック、DuPont(商標)KAPTON(商標)、DUPONT(商標)PYRALUX AB(商標)ラミネート、およびROGERS(商標)材料(例えば、PTFE−またはポリテトラフルオロエチレン−およびガラス、PTFEおよびセラミック、PTFE、ガラスおよびセラミック、または熱硬化性プラスチック)のうちの1つ以上を含みうる。このような層が形成される材料の特定の選択は、一般に、コストと、所望される電気的分離または電圧絶縁破壊防止の程度または量と、手近な特定の用途と、他の要因または考慮事項とに依存する。例えば、ガラスおよびセラミックの基板は、高電圧を含む用途に好適であり、製造およびプロセスのコストを低減するためには屈曲性回路基板が使用され得る。接着剤が使用されるときには、ポリイミド系の接着剤がその低い誘電損失特性のために好適である。
【0019】
コイルトランスジューサ20に含まれる誘電体障壁・電気絶縁性コア構造体39および他の層が、コイルトランスジューサ20に構造的剛性と機械的強度とを与えるように構成され得ることに留意されたい。好適な実施形態では、誘電体障壁・電気絶縁性コア構造体39は、その上部表面と下部表面との間に、約1ミル(1000分の1インチ:25.4μm)と約10ミルとの間、約1ミルと約8ミルとの間、または約2ミルと約5ミルとの間にわたる厚さを有する。コア構造体39の好適な厚さは、(下記のラミネーションプロセスが完了した後に)約2ミルと約5ミルとの間にある。
【0020】
層30は、相対する上面32と下面34とを有する中心コア層であり、このコア層を貫通して配置されるバイアを有さず、好適にはコイルトランスジューサ20の種々の個別構成要素が互いに組み立てられて形成される前は実質的に固体状態にあるDuPont(商標)KAPTON(商標)ポリイミドなどのポリイミド含有材料を含む(これについては下記で更に説明される)。中心コア層30を形成するための好適な材料はKAPTON(商標)ポリイミドであり、中心コア層30の好適な厚さ37は約1ミルと約2ミルの間にあるが、約0.5ミルと約8ミルとの間といった他の範囲の厚さでも適当であり、あるいは他の任意の適当な範囲の厚さもあり得る。更に、中心コア層30自体が、例えば、1層以上の接着剤の層を備える複数の積み重ねられた層を含み得ることに留意されたい。
【0021】
一実施形態では中心コア層30は、室温において約0.05未満、約0.01未満、約0.001未満、または約0.0001未満である誘電正接を有する、適当な電気絶縁性の非金属であり非半導体の低誘電損失材料から形成される。中心コア層30を形成するために使用された材料が非半導体材料であっても、本発明者らは本発明の新規な基板材料と周知の半導体材料との比較を可能にするために、ここでこれらの材料に関連する誘電正接値を定義する。
【0022】
誘電正接とこれに関連する内因性損失および外因性損失とに関する更なる情報は、Yang et al.による「Loss Characteristics of Silicon Substrate with Different Resistivities」(異なる抵抗性を有するシリコン基板の損失特性)、Microwave and Optical Technology Letters(マイクロ波および光技術レター)2006年9月号、Vol.48、No.9のページ1773−76に記載されている。Yang et al.は、誘電損失をシリコンの内因性損失正接と基板漏れ損失に関連する外因性損失とに分割することを理論的および実験的に論じ、シリコンにおけるドーピングレベルが高まるにつれて外因性損失も増加することを実証している。
【0023】
上部固体層42および下部固体層44もまた好適には、コイルトランスジューサ20の種々の個別構成要素が互いに組み立てられて形成される前は実質的に固体状態にあるKAPTON(商標)などのポリイミド含有材料から形成される。
【0024】
コイルトランスジューサ20を製造する好適な方法では、上部固体層42は、これを貫通して形成され、金属層41と43との間に電気的接続を与えるブラインドバイア51および52と連結して第1のコイル50を形成するために、この層の上面および下面上にパターン化された金属層41および43を有する。(バイア51および52は、中心コア層30を貫通しないのでブラインドバイアである。)同様に、下部固体層44は、金属層45と47との間に電気的接続を与えるためにこの下部固体層を貫通して形成されたバイア53および54と連結して第2のコイル60を形成するために、この下部固体層の上面および下面にリソグラフ的にパターン化された金属層45および47を有する。(バイア53および54もまた、中心コア層30を貫通しないのでブラインドバイアである。)金属層41、43、45および47は、金、ニッケル、銀、銅、タングステン、スズ(錫)、アルミニウム、および他の適当な金属、または金属合金またはこれらの組合せから形成され得る。
【0025】
コイル50および60は、多数の異なる構造的構成の如何なるものも想定でき、それでもなお本発明の範囲内に含まれることに留意されたい。例えば、コイル50および60は、図2および図4に示された円形または楕円形のらせん状に巻かれた形状を想定でき、または、水平面に配置された矩形、正方形、三角形、五角形、六角形、七角形もしくは八角形に巻かれた形状、水平面内に互いに交互配置された導体、水平面内に配置された1つ以上の曲がりくねった導体などの無数の他の形状を想定できる。一方のコイルによって放射された磁界が相対する他方のコイルによって受けられて十分によく検出され得る限り、コイル50および60の如何なる適当な構造的構成も許容される。
【0026】
そして、好適には接着剤を含むポリイミド含有材料を含む上部コア層31は中心コア層30と上部固体層42との間に配置され、また好適には接着剤を含むポリイミド含有材料を含む下部コア層33は中心コア層30と下部固体層44との間に配置される。上部および下部コア層31および33は最も好適には、予め決められた温度および/または圧力で重合して橋架け結合(クロスリンク)するように案出された「粘着性」KAPTON(商標)といった適当な材料から形成される。層31および33を形成するために、柔軟なアクリル接着剤および/またはポリイミド樹脂とエポキシ調整剤との混合物を含む材料などの他の材料も使用され得る。
【0027】
「粘着性」KAPTON(商標)は、室温においていくらかの可鍛性があり変形可能であるように案出される。したがって、上部コア層31は、好適には、真空、熱および/または圧力が加えられたときに金属層43と第1のコイル50との種々の部分の周りに流れて変形するように構成され、案出される。同様に、下部コア層33は、好適には、ラミネーションプロセス時に真空、熱および/または圧力が加えられたときに金属層45と第2のコイル60との種々の部分の周りに流れて変形するように構成され、案出される(下記に更に詳細に説明される)。ラミネーションプロセスの前の上部コア層31および下部コア層33の好適な厚さは、約1ミルと約5ミルとの間にある。上部コア層31または下部コア層33の最も好適な厚さは、下記のラミネーションプロセスの前で約1.4ミルである。
【0028】
そして、上部カバー層46および下部カバー層48は、上部固体層42の上側および下部固体層44の下側に配置される。一実施形態によれば、カバー層46および48は、予め決められた温度および/または圧力で重合して橋架け結合するように案出された「粘着性」KAPTON(商標)から形成され得るが、カバー層46および48の特定の構成と厚さは接着剤層31および33の構成および厚さとは異なる可能性があり、また互いに関しても異なる可能性がある。上部カバー層46および下部カバー層48を形成するために、柔軟なアクリル接着剤を含む材料、ポリイミド樹脂とエポキシ調整剤との混合物、電気絶縁性のスピンコート(回転塗布)される液体、または初めに液体の形で塗布される他の適当な電気絶縁性材料などの、他の材料およびプロセスも使用可能である。
【0029】
例えば、幾つかの実施形態によれば、第1および第2のコイル50および60への塗布に先立って、カバー層46および48は1枚のポリイミドフィルム上または保護用リリースシート(release sheet)上に被覆され得る。カバー層46および48は、これらのそれぞれのシートからはがされて金属層41および金属層47の上に置かれる。上部コア層31および下部コア層33と同様に、カバー層46および48は、好適には、ラミネーションプロセス時に真空、熱および/または圧力が加えられたときに第1のコイル50および第2のコイル60のそれぞれの金属層41および47の種々の部分の周りに流れて変形するように構成され、案出される。
【0030】
ラミネーションプロセスの前のカバー層46および48の好適な厚さは、約1ミルと約10ミルとの間の範囲にある。好適な実施形態では、図1に示されたように、底部カバー層48は、第2のコイル60とその下に配置され得る任意の導電性リードフレームまたは他の導電性構成要素との間に更なる電気絶縁性と遮蔽とを与えるために、上部カバー層46より厚い。例えば、カバー層48はラミネーションプロセスが完了した後に約1ミルを超える厚さを有し得るが、カバー層46はラミネーションプロセスが完了した後もまた約1ミル未満の厚さを有し得る。
【0031】
図2に示されたように、好適には、カバー層46において、ワイヤボンド92、94、96および98が取り付けられ得るように接点54、55、58および59に対応する位置に、切抜き部あるいは孔71および73が形成される。更に図1で数字65によって示された材料は、好適には、図2に示された凹部65を介して接点58および59へのワイヤボンドアクセスを与えるために除去される。上部コア層31および下部コア層33の、またカバー層46および48の好適な流動可能な可鍛および変形特性は、ラミネーションプロセスが完了した後に、このような層内に配置される空洞(エアポケット)または泡をまったく有しないか、僅か、あるいは極めて少量しか有しないコイルトランスジューサ20が提供されるべきである場合に、特に重要であることが分かっている。ラミネーションプロセスが完了した後に層31、33,46および48内に残留している空洞および泡は、例えばアーク放電または高電圧絶縁破壊といった結果を招くことによってコイルトランスジューサ20の性能の実質的な劣化という結果を招く可能性があることが見出されている。したがって、層31、33、46および48内の泡または空洞は、最小化または除去されるべきである。いったんラミネーションプロセスが完了すると、コイルトランスジューサ20はある幾つかの屈曲型デバイスに特有であるようにある程度の柔軟性または屈曲可能性を保持または提示し得るが、コイルトランスジューサ20内のこれらの層の各々は種々の程度の剛性を有することに留意されたい。
【0032】
更に、層30、31および33の各々は、上記のKAPTON(商標)および/または粘着性KAPTON(商標)材料、またはこのような性質を与えることのできる任意の他の適当な材料などの電気絶縁性の非金属であり非半導体の低誘電損失材料を含むことに留意されたい。なお更に、コイルトランスジューサ20の誘電特性は、誘電体障壁・電気絶縁性コア構造体39を形成するためにラミネーションプロセスの前に誘電体障壁・電気絶縁性材料の多数の層を設けることによって改善されることが見出されていることに留意されたい。興味深いことに、また意外にもコイルトランスジューサ20の高電圧耐圧性能は、コア構造体39内のこのような多数の層の使用によって高められることが見出されている。上部コア層31および下部コア層33がこのような改善された高電圧耐圧性能に実質的に寄与することも見出されている。
【0033】
図1および図2を引き続き参照すると、コア層30は、このコア層を貫通するバイアまたはコア層内に配置されるバイアを有していないことと、第1および第2のコイル50および60は、パワー信号およびデータ信号のうちの少なくとも1つがコア層30に亘って第1のコイル50によって第2のコイル60に送信され得るように互いに関連して空間的に配置されて構成されていることとが注目される。コア層30内にバイアが存在しないことは、第1のコイル50と第2のコイル60との間の中心コア層30に亘る潜在的なアーク放電または短絡の経路を除去することによって、コイルトランスジューサ20の高電圧耐圧または絶縁破壊特性を改善する。
【0034】
好適な実施形態では、コア層30は、その上面と下面との間に十分な厚さを有し、コイルトランスジューサ20が設計された比較的高い絶縁破壊電圧に耐えるために適切な電気絶縁特性を有する。コイルトランスジューサ20とコア構造体39のそれぞれの個別層とは、第1のコイル50と第2のコイル60との間に、約1分の期間に亘って印加されるときに約2,000ボルトRMSを超えるか、約6分の期間に亘って印加されるときに約2,000ボルトRMSを超えるか、または、24時間の期間に亘って印加されるときに約2,000ボルトRMSを超える絶縁破壊電圧を示すように構成され得ることが見出されている。代替として、コイルトランスジューサ20とコア構造体39のそれぞれの個別層とは、第1のコイル50と第2のコイル60との間に、約1分の期間に亘って印加されるときに約5,000ボルトRMSを超えるか、約6分の期間に亘って印加されるときに約5,000ボルトRMSを超えるか、または、24時間の期間に亘って印加されるときに約5,000ボルトRMSを超える絶縁破壊電圧を示すように構成され得る。
【0035】
1分当たり約1kVの割合でランピングが発生する、本明細書で開示された教示にしたがって製造されたオーバーモールド(外側被覆)されたコイルトランスジューサ・パッケージの原型のランプ・ツー・デストラクション(破壊ランピング:ramp−to−destruction)テストは、粘着性KAPTONから形成された1.4ミル厚さの上部コア層と下部コア層との間に挟まれた固体KAPTONで形成された2ミル厚さの中心コア層30が、最大約10kVまたは11kVの耐圧電圧に耐え得ることを示している。1分当たり約1kVの割合でランピングが発生する、本明細書で開示された教示にしたがって製造されたオーバーモールドされたコイルトランスジューサ・パッケージの原型のランプツーデストラクションテストは、粘着性KAPTONで形成された1.4ミル厚さの上部コア層および下部コア層の間に挟まれた固体KAPTONで形成された1ミル厚さの中心コア層30が、最大約8kVの耐圧電圧に耐え得ることを示している。
【0036】
図1は、図示の実施形態において第1のコイル50および第2の金属化層43と第2のコイル60および第4の金属化層47との一部分に取り付けられた、または、これらの部分を形成する拡張部を形成する、バスバー72および74を示す。バスバー72および74は、電気めっき槽内の隣接する同様のデバイスに電気的接続を与えるために電気めっきプロセス時に使用される。ある幾つかの実施形態では、第1および第2のコイル50および60は、初めに銅で形成され、それからニッケルを、そして金を電気めっきされる。本発明を分かりにくくするのを避けるために電気めっきプロセスに関する詳細事項はここでは論じられないが、いずれにしてもこのようなプロセスは当業者には周知である。図1に示されたようにバスバー72および74は、コイルトランスジューサ20の相対する面15および17まで延在している。このようなバスバー構成は、バスバーがコイルトランスジューサの同じ面まで延在するときに発生し得る主要な問題を解決する。製造プロセス時には数百個または数千個のコイルトランスジューサ20が単一パネルに配置されることが可能であって、これらは個別トランスジューサ間の鋸引き切断によって分離されなくてはならない。鋸引きプロセス時に、鋸刃によって切断された面に延在するバスバーから取られた金属の削り屑と粒子は、鋸刃によって運ばれて同じ面の他の部分に堆積され、あるいは留められ得る。同じ面に延在するバスバー間のアーク放電または短絡は、同じ面に延在するこのようなバスバー間に配置されたこのような削り屑および粒子の結果として発生し得ることが見出されている。
【0037】
図1に示されたバスバー構成は、バスバーが異なるコイルに接続されて、幅広く分離された異なる面にまで延在するので、これらの問題を克服する。したがって、一方の面上に鋸刃によって堆積された金属粒子あるいは削り屑が他方の面との間の、または他方の面へのアーク放電または短絡を容易にする要因となる機会を有するチャンスは、ほとんどまたはまったくない。第1のコイル50および第2のコイル60に対応するバスバーは、相対する面にまで延在する必要はなく、単に異なる面にまで延在する必要があるだけであることに留意されたい。したがって、一方のバスバーは面15などの垂直に向いた面にまで延在し得るが、他方のバスバーは面19などの水平に向いた面にまで延在し得る。相対する面または隣接する面の他の多くの組合せも可能である。
【0038】
次に、図3および図4を参照すると、一実施形態では、コイルトランスジューサ20の第1および/または第2のコイル50および60との動作可能な接続のために拡張部61の上への送信機および/または受信機集積回路(「IC」)の配置を可能にするように構成され得る拡張部61を更に備える、もう1つの実施形態によるコイルトランスジューサ20の側断面図および上部斜視図が示されている。凹部65は、接点58および59と拡張部61の上に配置された受信機または送信機の回路または集積回路との間に、ワイヤボンドアクセスを与える。受信機および送信機の回路または集積回路の1つが搭載され得る構造体を与えるために、図3に示されたコイルトランスジューサ20の左に第2の拡張部も形成され、あるいは設けられ得る(例えば、図5を参照のこと)。拡張部61は、コイルトランスジューサ20の機能性の損失を引き起こす可能性のあるコイル50および60の如何なる部分の上にも直接このような受信機および/または送信機の回路を配置することを避けながら、ワイヤボンドが接続される接点に比較的近接して受信機および/または送信機の回路が配置されることを可能にする。好適な実施形態では、拡張部61は、この拡張部上に配置されて外部接地に動作可能に接続される少なくとも1つの金属化接地パッドを更に備えることに留意されたい。このような接地パッドは、IC90および100に接地接続を与えるために使用されることが可能であり、コイルトランスジューサシステム10から熱を引き去るためのヒートシンク(吸熱器)として機能するように構成され得る。図5は、拡張部61が設けられているコイルトランスジューサ20bのもう1つの実施形態を示す。
【0039】
図1および図2に関して前に述べられた説明および詳細事項は、図3および図4に示された構造体および種々の構成要素に適用され得ることに留意されたい。例えば、層30、31、33、42、44、46および48と、コイル50および60と、バスバー72および74との組成および構成は、これらが図1および図2に関連して前に説明されたように、図3および図4に示されたコイルトランスジューサ20に適用され得る。
【0040】
次に図5を参照すると、好適な実施形態において、リードフレーム80および82それぞれのエッジ88および89は、性能劣化あるいは機能性の損失を防止するためにコイル50および60のコイル巻線の外側エッジの下にまで延在するべきでなく、ワイヤボンディングプロセス時に構造的支持を与えるためにワイヤボンドパッド54a/55a、54b/55b、58a/59aおよび58b/59bの下まで延在するべきである。更に、構造体61の上に受信機ICまたは送信機ICを接着することは、接着剤の押し潰し領域を1箇所にするという結果をもたらし、このことは、別の方法で受信機ICおよび/または送信機ICがコイルトランスジューサ20と共にリードフレームに接着された場合にリードフレーム上に発生する押し潰し領域の数を半分にする。受信機ICおよび/または送信機ICをコイルトランスジューサ20の1つ以上の拡張部61に取り付けることによって貴重なスペースが節約され、コイルトランスジューサシステム10は、より小さくされ得る。拡張部61は、図1に示された層と同じものか、もしくはその一部の層で形成されることが可能であり、または、代替として異なる適当な電気絶縁性材料で作られ得ることに留意されたい。
【0041】
図5を引き続き参照すると、コイルトランスジューサシステムの2つの異なる実施形態、システム10aおよびシステム10bが示されている。両システムは、コイルトランスジューサ(20aおよび20b)と、送信機IC(90aおよび90b)と、受信機IC(100aおよび100b)とを備える。送信機IC90aおよび90bは、ワイヤボンド92a−94aおよび92b−94bと接点54a−55aおよび54b−55bとを介して、第1のコイル50aおよび50bに動作可能に接続される。受信機IC100aおよび100bは、ワイヤボンド96a−98aおよび96b−98bと接点58a−59aおよび58b−59bとを介して、第2のコイル60aおよび60bに動作可能に接続される。
【0042】
図5に示されたように、システム10aではコイルトランスジューサ20aは、図5に示された実施形態では、リードフレーム80および82が金属で形成されているので、コイルトランスジューサ20aのコイル50aおよび60aがエッジ88および89によって示されているリードフレーム80および82の導電性部分の垂直方向上側にまで延在しないように、リードフレーム80および82に搭載される。このような構成は、コイルトランスジューサ20aの性能がコイルトランスジューサ20a自体によって生成された磁界内に置かれた導体の存在によって劣化させられること、あるいは傷つけられることを防止する。コイルトランスジューサ20aは、その一部分を形成する拡張部61を有しないことと、送信機90aおよび受信機100aの下から生じる接着剤押し潰し領域はリードフレーム80および82の上に置かれたコイルトランスジューサ20aのエッジの下から生じる接着剤押し潰し領域と合体または干渉し得ることとに留意されたい。
【0043】
これに対して、図5のシステム10bでは、コイルトランスジューサ20bは、送信機90bおよび受信機100bが搭載されるウィング(翼)または拡張部61を有する。送信機90bと受信機100bとをコイルトランスジューサ20bに取り付けることに関連する接着剤押し潰し領域は、コイルトランスジューサ20bをリードフレーム80および82に取り付けることに関連する接着剤押し潰し領域から垂直方向に空間的に分離され、それによってこのような押し潰し領域と合体あるいは干渉する可能性はない。コイルトランスジューサ20aと同様に、コイルトランスジューサ20bは、そのコイル50bおよび60bがコイルトランスジューサ20bの性能を劣化させることを防止するためにリードフレーム80および82のエッジ88および89において垂直方向で上にまで延在しないように、リードフレーム80および82に搭載される。金属層がコイル50および60のそれぞれの水平面にあまりに近く配置されると、それによって伝えられた、または感知された磁界線が乱されて、効率(スループットS21)が低下する。更にリードフレーム80および82は、不注意にアーク放電が入力回路を出力回路に電気的に接続することを防止するために適切に分離されるべきである。その結果、ワイヤボンディングを容易にするためにボンドパッドがリードフレームの上側に在るようにコイルトランスジューサ20aおよび20bの下から十分遠くに、しかし、コイル50aおよび50bまたは60aおよび60bの一部分の直接下まで延在するようにコイルトランスジューサ20aおよび20bの下からそれほど遠くなく、リードフレームが延在するように、リードフレーム80および82を設計することが望ましい。
【0044】
図5を引き続き参照して、リードフレーム80および82とコイル50a/50bおよび60a/60bとの間の電位差が数kVであることに留意するべきである。ある幾つかの実施形態では、リードフレーム80および82は、それぞれの電気接地に、または電気接地近くに保持され得る。集積回路90aから100bのリードフレーム80および82への、またはコイルトランスジューサ20bへの搭載は、エポキシを用いて達成され得る。コイルトランスジューサ20aまたは20bとリードフレーム80および82のいずれも、当分野では周知の仕方により成形可能な電気絶縁性材料によって、所望の程度にまでカプセル封入され得ることに留意されたい。
【0045】
送信機IC90aおよび90bは、好適には、着信する信号波形を1次送信の、または第1のコイル50aおよび50bを駆動するために適した波形を有する信号に変換するように構成されることに留意されたい。受信機IC100aおよび100bは、好適には、2次受信機または第2のコイル60aおよび60bから出る信号を着信信号のように見える波形に逆変換するように構成される。送信機IC90aおよび90bと受信機IC100aおよび100bとコイルトランスジューサ20aおよび20bとは、好適には、リードフレームまたはプリント基板組立て技法などの標準的な電子回路組立てプロセスに適合する形(フォーマット)にパッケージされる。ある幾つかの実施形態では、パッケージングは、トランスジューサ20aおよび20bの種々の構成要素をリードフレーム80および82に搭載することと、これらの構成要素を互いにワイヤボンディングすることと、犠牲金属リードがリードフレームから分離されて標準的集積回路リードに形成された後に、すべてのものを一緒に保持するために成形材料でこれらの構成要素を取り囲むこととを備える。
【0046】
そして、図6を参照すると、ラミネーションプロセスの一実施形態において圧力を印加される積み重ねトランスジューサアセンブリの断面図が示されている。図示の方法では、コイルトランスジューサ20を形成する種々の層(すなわち層46、42、31、30、33、44および48)は、互いに関連して垂直方向に積み重ねられて配置される。(簡単にするために、図6では、バイア51、52、53および54を図示していない。)次に、結果として得られた積み重ねトランスジューサアセンブリは、真空容器110内に置かれ、容器110と容器内に配置された積み重ねトランスジューサアセンブリに完全な真空または少なくとも27インチの真空が引き込まれる。次に、積み重ねトランスジューサアセンブリおよび真空容器110の上側および下側にプラテン101および103が設けられる。真空がまだ引かれている間中、積み重ねトランスジューサアセンブリには約300psiと約400psiとの間の圧力が印加される。約350psiの圧力が好適である。更に、コイルトランスジューサ20を作る、あるいはラミネート(積層)する方法の好適な実施形態では、積み重ねトランスジューサアセンブリは、真空が引かれている間、そして圧力が印加されている間、約330度Fと約390度Fとの間の温度にまで加熱される。最も好適には、積み重ねトランスジューサアセンブリは、このアセンブリに含まれ得る任意のポリマーまたはエポキシ接着剤を融解する、または橋架け結合(クロスリンク)するために十分な時間、加熱される。
【0047】
コイルトランスジューサ20をラミネートする方法の好適な実施形態では、ラミネーション(すなわち、積み重ねトランスジューサアセンブリを形成するために層を積み重ねること、積み重ねトランスジューサアセンブリを真空容器内に配置すること、容器に真空を引き込むこと、および容器110を介して積み重ねトランスジューサアセンブリに圧力を印加すること)は、2つの別々のステップで実行される。第1のステップでは、層30、31、33、42および44は、上記のように、このような層を垂直に積み重ねることと、このような層を真空容器110内に配置することと、容器110に真空を引き入れることと、プラテン101および103を用いて圧力を印加することと、熱を加えることとによって互いにラミネート(積層)される。第2のステップでは、第1のステップの結果から得られたラミネート済みの積み重ねトランスジューサアセンブリの上にカバー層46および48が配置され、そして上記のように、このアセンブリの上下に配置されたカバー層46および48を有する積み重ねトランスジューサアセンブリを真空容器110内に配置することと、容器110に真空を引き込むことと、プラテン101および102を用いて積み重ねトランスジューサアセンブリに圧力を印加することと、熱を加えることとによって、完全なアセンブリがラミネートされる。
【0048】
上記のように接着剤層31および33とカバー層46および48との流動可能で可鍛性の変形可能な特性は、ラミネーションプロセスが完了した後に、コイルトランスジューサ20は、このような層内に配置される空洞、空所または泡をまったく有しないか、または僅かに、もしくは極めて少量だけ有することを防止する際に重要である。そのために、上記の真空および圧力がこのような泡または空所の形成を防止するために概ね十分であるので、これらの真空と圧力がラミネーションプロセスにおいて使用され得ることが見出されている。
【0049】
図6は、更に、中心コア層30の底面、側面および上面の部分に沿って配置された潜在的な電気短絡またはアーク放電の移動経路105を示す。図示のように、潜在的なアーク放電または短絡の移動経路105は、隣接層間に位置する水平境界面に沿って配置された上部および下部水平レッグ(脚部)を備え、このような2つの水平レッグは、約0.4mmの全距離を有する。コイルトランスジューサ20の種々の実施形態では、潜在的なアーク放電または短絡移動経路105に沿った全水平距離が0.4mm以上である限り、中心層30が1ミルほどに薄くても、またはある幾つかの実施形態では更に薄くても、経路105に沿って発生する電気短絡またはアーク放電の可能性は最小にされることが見出されている。したがって、一実施形態によれば、第1のコイル50に電気的に接続されたコイルトランスジューサ20のすべての第1の部分は、隣接層間に位置する水平境界面に沿って任意の水平方向に、第2のコイル60に電気的に接続されたコイルトランスジューサ20のすべての第2の部分から最小で少なくとも4mm離れて配置される。
【0050】
本明細書において説明した種々の構成要素と、デバイスと、システムを製造するおよび製造してきた方法は、本発明の範囲内に含まれることに留意されたい。
【0051】
前述の実施形態は、本発明の範囲を限定するものとしてよりもむしろ本発明の例として考えられるべきである。本発明の前述の実施形態に加えて、詳細な説明および添付図面の再吟味は、本発明の他の実施形態が存在することを示す。したがって、本明細書において明確に説明されなかった本発明の前述の実施形態の多くの組合せ、順列、変形版および修正版は、それでもなお本発明の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6