(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における航空路レーダー情報処理システムの概略構成を示す構成図である。
同図において、航空路レーダー情報処理システム(Radar Data Processing System ;RDP)1は、飛行計画情報取得部11と、航空機位置把握部12と、トラジェクトリ(Trajectory)情報算出部13と、トラジェクトリ情報記憶部14と、管制指示推奨装置15と、表示処理部(情報出力部)16と、管制卓管理情報記憶部17と、を具備する。なお、本実施形態では、管制指示推奨装置15は航空路レーダー情報処理システム1に含まれるが、管制指示推奨装置15が、航空路レーダー情報処理システム1とは別個の装置として構成され、航空路レーダー情報処理システム1と連動して動作するようにしてもよい。
【0014】
管制指示推奨装置15は、到着順位算出処理部151と、管制指示推奨情報生成処理部152と、アダプテーション(Adaptation)記憶部153と、到着順位情報記憶部154と、管制指示推奨情報記憶部155と、推奨トラジェクトリ情報記憶部156と、を具備する。到着順位算出処理部151は、グループ決定部511と、相対距離算出部512と、を具備する。また、管制指示推奨情報生成処理部152は、必要遅延量算出部521と、管制指示推奨情報候補生成部522と、推奨トラジェクトリ情報算出部523と、適合判定部524と、を具備する。
また、航空路レーダー情報処理システム1は、飛行計画情報処理システム(Flight Plan Data Processing system ;FDP)2および管制卓3−1〜3−3に接続している。飛行計画情報処理システム2は、飛行計画情報記憶部21を具備する。また、管制卓3−1は、表示部31−1と、指示部32−1と、を具備する。管制卓3−2は、表示部31−2と、指示部32−2と、を具備する。管制卓3−3は、表示部31−3と、指示部32−3と、を具備する。なお、航空路レーダー情報処理システム1に接続する管制卓の個数は、同図に示す3台に限らず、1台以上であればよい。
【0015】
飛行計画情報処理システム2は、航空機の飛行経路や時刻情報や飛行高度等の飛行計画情報(フライトプラン、Flight Plan)を集中管理する。飛行計画情報記憶部21は、飛行計画情報を記憶する。
管制卓3−1〜3−3は、航空機の飛行状況に関する情報を表示し、表示切替等の入力操作を受け付ける。表示部31−1〜31−3は表示画面を具備し、航空路レーダー情報処理システム1から出力される、航空機の飛行状況に関する情報を表示する。指示部32−1〜32−3はキーボードやマウス等の入力手段を具備し、航空機等への管制指示や表示情報の切替等の入力操作を受け付ける。
【0016】
航空路レーダー情報処理システム1は、飛行計画情報処理システム2から飛行計画情報を取得し、また、各地のレーダー設備(不図示)から航空機の現在位置情報を取得し、これらの情報に基づいて航空機の飛行状況に関する情報を生成し、管制卓3−1〜3−3に出力する。
飛行計画情報取得部11は、飛行計画情報処理システム2に接続しており、飛行計画情報記憶部21が記憶する飛行計画情報を取得する。航空機位置把握部12は、各地のレーダー設備(不図示)から航空機の現在位置情報を取得する。トラジェクトリ情報算出部13は、飛行計画情報と航空機の現在位置情報とに基づいて、前記航空機の飛行予測経路および時刻を示すトラジェクトリ情報を算出する。トラジェクトリ情報記憶部14は、トラジェクトリ情報算出部13が算出したトラジェクトリ情報を記憶する。
【0017】
管制指示推奨装置15は、トラジェクトリ情報に基づいて、管制指示推奨情報を生成する。ここで、「管制指示推奨情報」とは、航空機の管制を他の管制官に移管する際に必要な間隔を航空機間に確保するために、管制官に推奨する管制指示を示す情報である。
到着順位算出処理部151は、トラジェクトリ情報に基づいて、管制対象の航空機がコモンポイント(Common Point)に到着(通過)する順位、および、コモンポイント通過時の航空機間の相対距離を算出する。ここで、「コモンポイント」とは、航空路上に予め設定されている位置であり、ある航空路を飛行する航空機は、当該航空路に設定されたコモンポイントを通過する必要がある。コモンポイントには、移管制御タイプと通過制御タイプとがあり、各航空機はコモンポイント付近で、管制官が所定の移管手続きをとることにより、別の管制官に移管される。
グループ決定部511は、管制対象の航空機のコモンポイント通過時刻をトラジェクトリ情報から読み出し、読み出したコモンポイント通過時刻に基づいて管制対象の航空機の順位付けおよびグループ分けを行う。
相対距離算出部512は、同一グループ内の各航空機のコモンポイント通過時刻とコモンポイント通過時の速度とを、トラジェクトリ情報記憶部14が記憶するトラジェクトリ情報から読み出し、各航空機がコモンポイントを通過する順位と、コモンポイント通過時の航空機間の相対距離とを算出する。
【0018】
管制指示推奨情報生成処理部152は、相対距離算出部512が算出した相対距離に基づいて、管制指示推奨情報を生成する。
必要遅延量算出部521は、コモンポイント通過時の航空機間の相対距離に基づいて、グループ内の各航空機の必要遅延量を算出する。ここで、「必要遅延量」とは、航空機の管制を移管する際に必要な航空機同士の間隔として予め定められた最低移管間隔を確保するために、航空機を遅延させるべき量を距離にて示す情報である。
管制指示推奨情報候補生成部522は、グループ内の各航空機について、最低移管間隔を確保するために管制官に推奨する管制指示の候補を示す管制指示推奨情報候補を生成する。管制指示推奨情報候補生成部522が管制指示推奨情報候補を生成する処理の詳細については後述する。
【0019】
推奨トラジェクトリ情報算出部523は、航空機が管制指示推奨情報候補に従って飛行する場合のトラジェクトリ情報である推奨トラジェクトリ情報を生成する。
適合判定部524は、管制指示推奨情報候補が所定の条件に適合するか否かを、推奨トラジェクトリ情報に基づいて判定する。適合判定部524が行う判定の詳細については後述する。
管制卓管理情報記憶部17は、管制卓3−1〜3−3の各々が対応する管轄エリアを示す情報を記憶する。
表示処理部16は、航空機の飛行状況に関する情報を生成し、生成した航空機の飛行状況に関する情報を、管制卓3−1〜3−3の各々が対応する管轄エリアに応じて、航空機毎にいずれかの管制卓に出力する。
【0020】
次に、航空路レーダー情報処理システム1が管制の対象とする領域について説明する。
図2は、航空路レーダー情報処理システム1が管制の対象とする領域の例を示す図である。同図において、航空路レーダー情報処理システム1が管制の対象とする領域は、管制官Aの管轄エリアR1と、管制官Bの管轄エリアR2と、管制官Cの管轄エリアR3とに分割されている。また、航空路レーダー情報処理システム1が管制の対象とする領域は、管制官Cの管轄エリアR3において、空港の管制官の管轄エリアである空港エリアに隣接する。管轄エリアR1〜R3内の線は、航空機の飛行計画にて設定される経路を示す。また、各航空機は、飛行計画にて、管轄エリアR3から空港エリアに移動する際に、コモンポイントCPを通過するよう設定される。
管制官Aは、管制卓3−1を用いて管轄エリアR1における管制を行い、管制官Bは、管制卓3−2を用いて管轄エリアR2における管制を行い、管制官Cは、管制卓3−3を用いて管轄エリアR3における管制を行う。なお、航空路レーダー情報処理システム1が管制の対象とする領域を各管制官の管轄エリアに分割する分割数は、同図に示す3分割に限らない。
【0021】
次に、
図3および
図4を用いて、管轄エリアR3から空港エリアへ航空機の管制を移管する際に必要な、航空機同士の間隔について説明する。
図3は、管轄エリアR3内に複数の航空機が存在する例を示す図である。同図において、管轄エリアR3の一部と空港エリアの一部とが示されており、管轄エリアR3内に3機の航空機AP1〜AP3の位置が示されている。
また、
図4は、空港エリア内に移動した後の航空機同士の間隔の例を示す図である。同図において、航空機AP1と航空機AP2とは距離DS11だけ離れており、また、航空機AP2と航空機AP3とは距離DS12だけ離れている。
【0022】
移管先のエリアでの交通混雑を防止するため、距離DS11およびDS12が、運用上の取り決めにより定められた最低移管間隔を確保して、各航空機の管制が管轄エリアR3の管制官から空港エリアの管制官に移管される必要がある。
一方、管轄エリアR3においては複数の経路から航空機が飛来し、そのままの経路および速度で飛行すると、最低移管間隔を確保できない場合がある。この場合、管轄エリアR3を管轄する管制官Cは、後から管制を移管される航空機がコモンポイントCPを通過するタイミングを遅らせるなど、最低移管間隔を確保できるよう航空機を管制する必要がある。例えば、
図3の例で、航空機AP1と航空機AP2との間隔が最低移管間隔未満となるおそれがある場合、管制官Cは、航空機AP2の飛行経路を変更(迂回)させる、あるいは、航空機AP2の飛行速度を減速させる等の管制を行って、最低移管間隔を確保する。
【0023】
次に、
図5〜
図9を用いて、アダプテーション記憶部153と、到着順位情報記憶部154と、トラジェクトリ情報記憶部14と、管制指示推奨情報記憶部155と、推奨トラジェクトリ情報記憶部156との、各々が記憶するデータについて説明する。
図5は、アダプテーション記憶部153が記憶する設定情報(以下では、「アダプテーション」とも言う)のデータ構成を示すデータ構成図である。同図に示すように、設定情報は、コモンポイントに関する情報と、移管および推奨表示に関する情報とを含む。コモンポイントに関する情報は、コモンポイント毎に、コモンポイント記号と、コモンポイントパターン名と、コモンポイント名称と、目的フィックス名称と、コモンポイントタイプ情報と、コモンポイント付加情報とを含む。また、移管および推奨指示に関する情報は、順位表示開始タイミングと、最低移管間隔と、グループ間移管間隔とを含む。
ここで、「フィックス」(Fix)とは、航空路上に予め設定されている位置である。コモンポイントとは異なり、航空機は必ずしもフィックスを通過する必要はない。すなわち、管制官は、航空機が幾つかのフィックスを通らずに、迂回あるいはショートカットするように管制することができる。
【0024】
コモンポイント記号は、管制卓3−1〜3−3にコモンポイントを表示する際に、コモンポイントを識別する記号である。例えば、後述するように、航空機がコモンポイントを通過する順位を表示する際に、どのコモンポイントに関する順位かを示すためにコモンポイント記号を用いる。
コモンポイントパターン名は、コモンポイントの名称である。
コモンポイント名称は、到着順位の算出を行うフィックス名称である。
目的フィックス名称は、コモンポイントを通過後に通過あるいは到着するフィックスの名称である。
コモンポイントタイプ情報は、航空機の管制を移管する目安のコモンポイントか否かを示す情報であり、航空機の管制を移管する際に用いるコモンポイントを示す「移管制御」、または、それ以外のコモンポイントを示す「通過制御」のいずれかの値をとる。
【0025】
コモンポイント付加情報は、コモンポイントに関する詳細情報である。
順位表示開始タイミング情報は、航空機の管制を移管する目安のコモンポイントを通過する順位を管制卓3−1〜3−3に表示するタイミングを示す情報であり、グループの先頭の航空機の、航空機の管制を移管する目安のコモンポイントへの到着予測時間で示される。
順位確定タイミング情報は、グループ内の各航空機について、航空機の管制を移管する目安のコモンポイントを通過する順位を確定させるタイミングを示す情報であり、グループの先頭の航空機の、航空機の管制を移管する目安のコモンポイントへの到着予測時間で示される。
最低移管間隔情報は、航空機の管制を移管する際に必要な航空機同士の間隔として予め定められた最低移管間隔を示す情報である。
グループ間移管間隔情報は、グループ間で確保すべき移管間隔を示す情報である。
【0026】
図6は、到着順位情報記憶部154が記憶する到着順位情報のデータ構成を示すデータ構成図である。到着順位情報は、航空機の管制を移管する目安のコモンポイントを、各航空機が通過する順位の予測値を、コモンポイント毎かつグループ毎に示す情報である。同図に示すように、到着順位情報は、コモンポイント番号情報とグループ番号情報と順位情報とを含む。
コモンポイント番号情報は、順位付けの対象となるコモンポイントを識別する番号である。グループ番号情報は、順位付けの対象となるグループを識別する番号であり、各コモンポイントについて、当該コモンポイントに近いグループから順に通し番号が付される。
順位情報は、同一グループに含まれる各航空機が、航空機の管制を移管する目安のコモンポイントを通過する順位を示す情報であり、先に通過する航空機から順に、航空機の識別情報で示される。
【0027】
図7は、トラジェクトリ情報記憶部14が記憶するトラジェクトリ情報のデータ構成を示すデータ構成図である。トラジェクトリ情報は、航空機の現在位置情報に基づいて飛行計画を修正して得られる、飛行軌道予測情報である。トラジェクトリ情報記憶部14は、航空機毎にトラジェクトリ情報を記憶する。
同図に示すように、トラジェクトリ情報は、航空機が通る各フィックスの識別情報と、各フィックスの通過予測時刻情報と、各フィックスを通過する高度および速度の情報とを含む。
【0028】
図8は、管制指示推奨情報記憶部155が記憶する管制指示推奨情報のデータ構成を示すデータ構成図である。管制指示推奨情報は、最低移管間隔を確保するために航空路レーダー情報処理システム1が管制官に推奨する、各航空機への管制指示を示す情報である。
同図に示すように、管制指示推奨情報は、航空機の識別情報と、指示種別情報と、指示内容情報と、発出時刻情報とを含む。
航空機の識別情報は、管制指示対象の航空機を識別するための情報である。
指示種別情報は、当該航空機に対して行う管制指示の種別を示す情報であり、航空機が直行すべき地点を指示する「直行指示推奨」、または、航空機の進行方位角を指示する「針路指示推奨」、または、航空機の速度を指示する「速度指示推奨」のいずれかの値をとる。
【0029】
直行指示推奨は、航空機が直行すべきフィックスを指示する直行指示を推奨することを示す。この直行指示は、航空機が途中のフィックスを通らずにショートカットすることによりコモンポイント到着時刻を早めるための管制指示である。直行指示推奨の場合、指示内容情報としては、航空機が直行すべきフィックスの識別情報が示される。
針路指示推奨は、航空機に針路変更を指示する針路指示を推奨することを示す。この針路指示は、航空機が針路を変更して迂回することによりコモンポイント到着時刻を遅らせるための管制指示である。針路指示推奨の場合、指示内容情報としては、航空機が向かうべき方向を示す方位角情報や、迂回を終了すべき点を示す復帰点情報が示される。
速度指示推奨は、航空機に速度変更を指示する速度指示を推奨することを示す。この速度指示には、航空機が飛行速度を遅くすることによりコモンポイント到着時刻を遅らせるための管制指示である減速指示と、航空機が飛行速度を速くすることによりコモンポイント到着時刻を早めるための管制指示である増速指示とがある。速度指示推奨の場合、指示内容情報としては、航空機の飛行速度あるいは飛行速度の変化量を示す情報が示される。
発出時刻情報は、管制指示に従った飛行を開始すべき時刻を示す情報である。
【0030】
図9は、推奨トラジェクトリ情報記憶部156が記憶する推奨トラジェクトリ情報のデータ構成を示すデータ構成図である。推奨トラジェクトリ情報は、航空機が管制指示推奨情報に従って飛行した場合の飛行軌道予測情報であり、トラジェクトリ情報記憶部14が記憶するトラジェクトリ情報を、管制指示推奨情報に基づいて変更して得られる。
同図に示すように、推奨トラジェクトリ情報は、トラジェクトリ情報記憶部14が記憶するトラジェクトリ情報と同様、各フィックスの識別情報と、各フィックスの通過予測時刻情報と、各フィックスを通過する高度および速度の情報とを含む。
【0031】
次に、
図10および
図11を用いて航空機の順位付けおよびグループ分けを行うタイミングについて説明する。グループ決定部511は、コモンポイントCPへの到着予測時間が、予め定められた順位表示開始タイミング以下となった航空機を、順次、同一のグループに含め、グループ内のいずれかの航空機のコモンポイントCPへの到着予測時間が、予め定められた順位確定タイミング以下になると、当該グループを確定させることにより、航空機のグループ分けを行う。
図10は、グループ決定部511が航空機の順位付けおよびグループ分けを行うタイミングを示す図である。グループ決定部511は、コモンポイントCPへの到着予測時間が、予め定められた順位表示開始タイミングT11以下となった航空機に対して、コモンポイントCPへの到着予測順位付けおよびグループ分けを行う。なお、順位表示開始タイミングT11は、アダプテーション記憶部153が、順位表示開始タイミング情報として記憶している。
図5の例では、順位表示開始タイミングT11は1200秒に設定されている。また、コモンポイントCPへの到着予測時間は、トラジェクトリ情報からコモンポイントCPへの到着予測時刻を読み出し、現在時刻との差分を取ることにより算出される。
【0032】
図10において、航空機AP21〜AP24は、管制対象の航空機であり、コモンポイントCPへの到着予測時間の短いものほど右に示されている。また、航空機AP21とAP22とのコモンポイントCPへの到着予測時間は、順位表示開始タイミングT11以下である。航空機AP21のコモンポイントCPへの到着予測時間が、順位表示開始タイミングT11以下となると、航空機AP21に対する順位付けおよびグループ分けが行われる。同図の例では、航空機AP21に対して1番が付され、また、グループGP11に割り当てられている。同様に、航空機AP22に対しては2番が付され、また、グループGP11に割り当てられている。また、同図の例では、グループGP11の航空機AP21とAP22とは、いずれも、コモンポイントCPへの到着予測時間が、予め定められた順位確定タイミングT12よりも長い。このように、グループ内に、コモンポイントCPへの到着予測時間が順位確定タイミングT12以下の航空機が無い間は、コモンポイントCPへの到着予測時間が順位表示開始タイミングT11以下となった航空機は、当該グループに割り当てられ、グループ内で順位付けが行われる。また、コモンポイントCPへの到着予測時間が順位確定タイミングT12以下の航空機がグループ内に無い間は、グループ内の各航空機のコモンポイントCPへの到着予測時間に応じて順位が更新される。
図10の例で、航空機AP23とAP24とのコモンポイントCPへの到着予測時間は、順位表示開始タイミングT11よりも長い。このため、これらの航空機AP23とAP24とに対しては、順位付けおよびグループ分けはまだ行われていない。
【0033】
図11は、グループ決定部511が航空機の順位およびグループを確定させるタイミングを示す図である。グループ決定部511は、グループ内の1番機のコモンポイントCPへの到着予測時間が、予め定められた順位確定タイミングT12以下となると、当該グループおよびグループ内の順位を確定させる。なお、順位確定タイミングT12は、アダプテーション記憶部153が、順位確定タイミング情報として記憶している。
図5の例では、順位確定タイミングT12は900秒に設定されている。
図11において、航空機AP21〜AP26は、管制対象の航空機であり、コモンポイントCPへの到着予測時間の短いものほど右に示されている。また、航空機AP21〜AP24のコモンポイントCPへの到着予測時間は、順位表示開始タイミングT11以下であり、同一のグループGP11内で、それぞれ2番、1番、3番、4番が付されている。同図において、グループGP11の1番機AP22のコモンポイントCPへの到着予測時間以下となったため、グループGP11に属する航空機はAP21〜AP24に確定される。航空機AP25または航空機AP26のコモンポイントCPへの到着予測時間が順位表示開始タイミングT11以下となった場合は、グループGP11とは別に新たなグループが生成され、
図10で説明したのと同様にグループ分けおよび順位付けが行われる。
【0034】
また、グループGP11の1番機AP22のコモンポイントCPへの到着予測時間以下となったため、航空機AP21〜AP24の順位は、それぞれ2番、1番、3番、4番に確定され、以降は順位の自動更新は行われない。
なお、グループ決定部511が行うグループの確定は、上述のものに限らない。例えば、確定されたグループに、直前の先行機との移管間隔が予め定められた距離以上の航空機が存在する場合は、当該航空機以後の航空機をこのグループから外して新たなグループに含め、
図10および
図11で説明したグループ分けおよび順位付けを行うようにしてもよい。あるいは、管制官による順位変更があった場合には、当該航空機を含むグループおよび航空機の順位を確定させ、以降は順位の自動更新を行わないようにしてもよい。
【0035】
次に、
図12および
図13を用いて相対距離および必要遅延量の算出について説明する。
図12は、相対距離算出部512が算出する相対距離の例を示す図である。
同図において、航空機AP31〜AP35が同一のグループを構成し、それぞれ1番〜5番に順位が確定されている。相対距離算出部512は、直前の先行機がコモンポイントCPに到着する時刻における、相対距離算出対象の航空機の位置とコモンポイントCPとの直線距離の予測値を、直前の先行機からの相対距離として算出する。
図12の例では、1番機AP31がコモンポイントCPに到着する時刻における、2番機AP32の位置とコモンポイントCPとの直線距離の予測値は5海里(Nautical Mile ;NM)であり、この値が2番機AP32の相対距離DS32となる。また、2番機AP32がコモンポイントCPに到着する時刻における、3番機AP33の位置とコモンポイントCPとの直線距離の予測値は7海里であり、この値が3番機AP33の相対距離DS33となる。同様に、航空機AP34の相対距離DS34は20海里であり、航空機AP35の相対距離DS35は4海里である。
【0036】
次に、
図13を用いて、必要遅延量算出部521が算出する必要遅延量について説明する。
図13は、必要遅延量算出部521が算出する必要遅延量の例を示す図である。
図12と同じく、
図13においても、航空機AP31〜AP35が同一のグループを構成し、それぞれ1番〜5番に順位が確定されている。また、2番機AP32〜5番機AP35の先行機との相対距離DS32〜DS35は、それぞれ、5海里、7海里、20海里、4海里である。また、最低移管間隔は10海里である。
図5で説明したように、最低移管間隔は、空港エリアの管制官に航空機の管制を移管する際に必要な航空機同士の間隔であり、アダプテーション記憶部153が最低移管間隔情報として記憶している。
まず、最低移管間隔と各航空機の相対距離との差分を算出すると、同図(a)に示すようになる。2番機AP32の相対距離DS32は5海里であり、最低移管間隔の10海里からこの5海里を引いた差分は5海里である。同様にして、航空機AP33〜AP35について差分を算出すると、それぞれ3海里、−10海里、6海里となる。この差分は、先行機との間に最低移管間隔を確保するために必要な遅延量を示している。航空機AP34の−10海里は、先行機との相対距離の最低移管間隔に対する余裕量が10海里であることを示している。
【0037】
ここで、最低移管間隔を確保するために航空機を遅延させると、後続機との間の距離が狭まり、後続機に必要な遅延量が増大し得る。例えば、
図13において、2番機AP32を5海里分遅延させて1番機AP31との間に最低移管間隔を確保した場合、2番機AP32と3番機AP33との相対距離は5海里狭くなって2海里となる。したがって、同図(b)に示すように、3番機AP33に必要な総遅延量は、同図(a)で3番機AP33について算出した差分の3海里と、2番機AP32について算出した差分の5海里とを加算した8海里となる。すなわち、2番機が最低移管間隔を確保し、さらに3番機も最低移管間隔を確保するためには、3番機を8海里分遅延させる必要がある。
【0038】
次に、同図(c)に示すように、4番機AP34について同図(a)で算出した差分の−10海里と、3番機AP33に必要な遅延量の8海里とを加算して、4番機AP34に必要な総遅延量は−2海里となる。すなわち、2番機AP32と3番機AP33とが最低移管間隔を確保した場合、4番機AP34の、先行機との相対距離の最低移管間隔に対する余裕量は2海里となる。
また、5番機AP35の場合、同図(c)に示すように、先行機AP34は、最低移管間隔を確保するために必要な総遅延量がマイナスであり、遅延させる必要が無い。このように、先行機に必要な総遅延量が0以下の場合、必要遅延量算出の段階では前詰めは考慮しないこととして、先行機に必要な総遅延量は加算しない。したがって、同図(d)に示すように、5番機AP35の場合は、同図(a)で算出した6海里が必要な総遅延量となる。
さらに、同図(e)に示すように、各航空機について、必要な総遅延量が0以上の場合は、相対的に後方へずらすこと(すなわち、遅延させること)が必要であることを示す方向識別「B」(Backward)を付し、必要な総遅延量が0未満の場合は、相対的に前方へずらすこと(すなわち、前詰め)が可能であることを示す方向識別「F」(Forward)を付して、必要遅延量とする。
【0039】
なお、必要遅延量を管制卓3―1〜3−3の表示部31−1〜31−3に表示するようにしてもよい。
図14は、必要遅延量の表示例を示す図である。同図において、航空機の現在位置を示す三角のシンボルに、タグリーダーで、航空機の識別情報(便名)「JAL1242」と、高度情報「280A」と、航空機の型式および目的空港の情報「G40 JTT」と共に、必要遅延量の情報「B10.1」が対応付けられている。
同図の例では、必要遅延量の表示として、遅延か前詰めかの区別を示す方向識別と、小数第1桁までの遅延量とが表示されている。方向識別としては、後方(遅延が必要であること)を示す「B」、または、前方(前詰めが可能であること)を示す「F」のいずれかが表示される。また、遅延量(スペーシング距離)は、海里単位で表示される。
【0040】
なお、必要遅延量の表示は、
図14のものに限らない。例えば、遅延量の整数部分のみを表示するようにしてもよい。整数部分のみを表示することで、表示を簡略化して、より見易くできる。あるいは、必要遅延量が増加中であることを示す上三角、あるいは、減少中であることを示す下三角を、さらに表示するようにしてもよい。必要遅延量の増減を表示することにより、管制が適切に行われているか否かを把握することができる。さらには、これらの表示を操作卓3−1〜3−3の指示部32−1〜32−3からの操作により切り替え可能としてもよい。
【0041】
また、必要遅延量の表示または非表示を切替可能としてもよい。
図15は、必要遅延量の表示切替パターンの例を示す図である。
「FWD DIST」は、方向識別が「F」の必要遅延量の表示、「BWD DIST」は、方向識別が「B」の必要遅延量の表示を示す。また、「ON」は表示することを示し、「OFF」は表示しないことを示す。
例えば、「FWD DIST」が「OFF」で、「BWD DIST」が「ON」の場合、遅延させることが必要な航空機の必要遅延量は表示するが、前詰めが可能な航空機の必要遅延量は表示しないことを示す。
例えば、前詰めを行わない場合は「FWD DIST」を「OFF」とするなど、管制指示の仕方や管制官の好みに応じて表示を切り替えることができる。
【0042】
次に、
図16〜
図19を用いて、管制指示推奨情報の種類および表示方法について説明する。航空路レーダー情報処理システム1が推奨する管制指示には、航空機の飛行速度調整(増速または減速)を指示する速度指示と、指定したフィックスに航空機を直行させることにより前詰めを行う直行指示と、航空機に対しレーダー誘導による針路指示を行って当該航空機を迂回させ、コモンポイント到着予測時刻を遅延させるレーダー誘導指示(針路指示)とがある。管制指示推奨情報生成処理部152が、これらの管制指示推奨情報を生成する。そして、表示処理部16が、管制指示推奨情報の表示用情報を生成して、管制卓3−1〜3−3の表示部31−1〜31−3に表示する。
【0043】
図16は、速度指示推奨情報(速度指示を推奨する場合の管制指示推奨情報)の表示例を示す図である。同図(a)の例では、航空機の現在位置を示す三角のシンボルに、タグリーダーで、航空機の識別情報と、高度情報と、航空機の型式および目的空港の情報と共に、速度指示推奨情報として、推奨する飛行速度の増減量を示す情報が対応付けられている。推奨する飛行速度の増減量を示す情報としては、10ノット(kt;knot、海里/時)以上の増速(前詰め)を示す「FF」、または、10ノット未満の増速を示す「F」、または、10ノット未満の減速(遅延)を示す「B」、または、10ノット以上の減速を示す「BB」のいずれかが表示される。
なお、速度指示推奨情報の表示方法は同図(a)に示すものに限らない。例えば、同図(b)に示すように、さらに、推奨する飛行速度を表示するようにしてもよい。さらには、これらの表示を操作卓3−1〜3−3の指示部32−1〜32−3からの操作により切り替え可能としてもよい。
【0044】
図17は、直行指示推奨情報(直行指示を推奨する場合の管制指示推奨情報)の表示例を示す図である。同図(a)の例では、航空機の現在位置を示す三角のシンボルに、タグリーダーで、航空機の識別情報と、高度情報と、航空機の型式および目的空港の情報と共に、直行指示推奨情報として、直行先のフィックス名を示す情報が対応付けられている。
なお、直行指示推奨情報の表示方法は同図(a)に示すものに限らない。例えば、同図(b)に示すように、さらに、表示されたフィックスに直行する場合の航空機の進行方向を表示するようにしてもよい。さらには、これらの表示を操作卓3−1〜3−3の指示部32−1〜32−3からの操作により切り替え可能としてもよい。
あるいは、同図(c)に示すように、航空機の進行方向をメニュー表示して、管制官が、指示する進行方向を選択できるようにしてもよい。
【0045】
図18は、針路指示推奨情報(針路指示を推奨する場合の管制指示推奨情報。レーダー誘導指示推奨情報ともいう。)の表示例を示す図である。同図(a)の例では、航空機の現在位置を示す三角のシンボルに、タグリーダーで、航空機の識別情報と、高度情報と、航空機の型式および目的空港の情報と共に、針路指示推奨情報として、レーダー誘導により航空機に指示する進行方向を示す情報が対応付けられている。
なお、直行指示推奨情報の表示方法は同図(a)に示すものに限らない。例えば、同図(b)に示すように、さらに、航空機の現在の進行方向を表示するようにしてもよい。さらには、これらの表示を操作卓3−1〜3−3の指示部32−1〜32−3からの操作により切り替え可能としてもよい。
あるいは、同図(c)に示すように、航空機の進行方向をメニュー表示して、管制官が、指示する進行方向を選択できるようにしてもよい。
【0046】
さらには、針路指示推奨により推奨する経路を、管制卓3−1〜3−3に表示するようにしてもよい。
図19は、推奨する経路の表示例を示す図である。例えば、推奨する針路が白色の破線で、針路指示推奨情報表示開始から所定の期間表示される。このように、推奨する経路を表示することにより、管制官は、当該針路指示を行った場合の飛行経路を具体的に把握できる。
【0047】
次に、航空路レーダー情報処理システム1の動作について説明する。
図20は、航空路レーダー情報処理システム1が推奨管制指示情報を生成・表示する処理手順を示すフローチャートである。航空路レーダー情報処理システム1は、航空機の管制を移管する目安のコモンポイント毎に同図の処理を行う。
ステップS1において、グループ決定部511が、トラジェクトリ情報に基づいて、処理対象の航空機を抽出し、グループおよびコモンポイント通過順位を付与する。
【0048】
図21は、グループ決定部511が、処理対象の航空機を抽出し、グループおよびコモンポイント通過順位を付与する処理手順を示すフローチャートである。
ステップS21において、グループ決定部511は、トラジェクトリ情報に基づいて、航空機の管制を移管する目安のコモンポイントCPを通過する航空機、かつ、コモンポイントCP通過順位がまだ付されていない航空機を抽出する。ステップS22において、グループ決定部511は、抽出した航空機について、コモンポイント到着予測時間(コモンポイントCPに到着するまでにかかると予測される時間)が順位表示開始タイミング以下の航空機の有無を判定する(ステップS22)。順位表示開始タイミング以下の航空機があると判定した場合(ステップS22:YES)はステップS23に進み、無いと判定した場合(ステップS22:NO)はステップS24に進む。
【0049】
ステップS23において、グループ決定部511は、ステップS22で順位表示開始タイミング以下と判定した航空機を処理対象のグループに含める。
ステップS24において、グループ決定部511は、処理対象のグループ内の各航空機順位を算出する。これにより、新たにグループに含まれた航空機には、順位が付与される。また、既に順位が付与されている航空機についても順位が算出されることにより、順位が変更され得る。グループ決定部511は、算出した順位を到着順位情報記憶部154に書き込む。
ステップS25において、グループ決定部511は、1番機が順位確定タイミングにあるか否かを判定する。順位確定タイミングにあると判定した場合(ステップS25:YES)は、同図の処理を終了し、グループおよび順位を確定する処理(
図21のステップS2)に移行する。一方、順位確定タイミングにないと判定した場合(ステップS25:NO)はステップS21に戻る。
【0050】
図20に戻って、ステップS2において、グループ決定部511は、処理対象のグループおよびグループ内の各航空機の順位を、ステップS1で最後に付与したグループおよび順位に確定する。
ステップS3において、相対距離算出部512は、グループ内の2番機以降の各航空機について、先行機がコモンポイントCPに到着したときの当該先行機との相対距離を算出する。さらに、相対距離算出部512は、算出した相対距離と、管制を移管する際に必要な航空機同士の間隔である最低移管間隔との差を取ることにより、最低移管間隔に対する欠如量(以下、
図13の説明と同様に、「遅延量」という)を算出する。
ステップS4において、必要遅延量算出部521は、遅延量を累計して、
図13で説明した必要遅延量を算出する。
【0051】
図22は、必要遅延量算出部521が、必要遅延量を算出する処理手順を示すフローチャートである。
ステップS41〜ステップS47において、必要遅延量算出部521は、2番機以降の各航空機の総遅延量を算出する。まず、ステップS41において、必要遅延量算出部521は、2番機の総遅延量として、2番機の遅延量を設定する。ステップS42において、必要遅延量算出部521は、変数iの値を3に設定する。この変数iの値は、総遅延量を算出中の航空機を示す。ステップS43において、必要遅延量算出部521は、変数iの値がグループ内の航空機数以下か否かを判定することにより、総遅延量を算出していない航空機の有無を判定する。グループ内の航空機数以下であると判定した場合(ステップS43:YES)はステップS44に進み、グループ内の航空機数より大きいと判定した場合(ステップS43:NO)はステップS48に進む。
【0052】
ステップS44において、必要遅延量算出部521は、(i−1)番機の総遅延量が0以上か否かを判定する。0以上と判定した場合(ステップS44:YES)はステップS45に進み、0未満と判定した場合(ステップS44:NO)はステップS46に進む。
ステップS45では、先行機である(i−1)番機の総遅延量が0以上なので、(i−1)番機を総遅延量分だけ遅延させた場合に、i番機に必要な遅延量を算出する必要がある。そこで、ステップS45において、必要遅延量算出部521は、(i−1)番機の総遅延量にi番機の遅延量を加算し、得られた和をi番機の総遅延量とする。
ステップS46では、先行機である(i−1)番機の総遅延量が0未満なので、(i−1)番機の遅延は考慮しなくてよい。そこで、ステップS46において、必要遅延量算出部521は、i番機の遅延量をi番機の総遅延量として設定する。
【0053】
ステップS47において、必要遅延量算出部521は、変数iの値に1を加算する。次の航空機を総遅延量算出対象とするためである。その後、ステップS43に戻る。
また、ステップS48において、必要遅延量算出部521は、算出した総遅延量の各々について、総遅延量が0以上であれば、遅延が必要であることを示す方向識別「B」を総遅延量に付して必要遅延量とする。一方、総遅延量が0未満であれば、前詰めが可能であることを示す方向識別「F」を総遅延量に付して必要遅延量とする。その後、同図の処理を終了する。
【0054】
図20に戻って、ステップS5において、管制指示推奨情報生成処理部152の、管制指示推奨情報候補生成部522が管制指示推奨情報候補を生成し、推奨トラジェクトリ情報算出部523が推奨トラジェクトリ情報を算出し、適合判定部524が、推奨トラジェクトリ情報を用いて管制指示推奨情報候補の適合性を判定することにより、管制指示推奨情報生成処理部152は、所定の条件に適合する管制指示推奨情報を生成する。
図23および
図24は、管制指示推奨情報生成処理部152が管制指示推奨情報を生成する処理手順を示すフローチャートである。管制指示推奨情報生成処理部152は、処理対象のグループに含まれる各航空機について同図の処理を行う。
【0055】
ステップS61において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機に対して針路変更ポイント情報を提供中でありかつ当該航空機の必要遅延量の方向識別が「F」であるか、あるいは、当該航空機に対して復帰喚起情報を提供中か、を判定する。この条件を満たすと判定した場合(ステップS61:YES)はステップS62に進み、満たさないと判定した場合(ステップS61:NO)はステップS71に進む。ここで、針路変更ポイント情報とは、直行指示推奨またはレーダー誘導推奨において、航空機が直行すべき地点を示す情報である。また、復帰喚起情報とは、レーダー誘導推奨において、航空機が直行先から復帰すべき地点を示す情報である。
ステップS62では、処理対象の航空機に対して、有効な管制情報を提供中である。そこで、ステップS62において、管制指示推奨情報候補生成部522は、推奨中の管制を引き続き推奨する直行指示推奨を行う。
【0056】
ステップS71において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機がレーダー誘導エリア内に位置するか否かを判定する。レーダー誘導エリア内に位置すると判定した場合(ステップS71:YES)はステップS72に進み、位置しないと判定した場合(ステップS71:NO)は
図24のステップS91に進む。
ステップS72において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機が移管間隔確保中か否かを判定する。移管間隔確保中と判定した場合(ステップS72:YES)はステップS73に進み、移管間隔確保中でない判定した場合(ステップS72:NO)はステップS81に進む。
【0057】
ここで、移管間隔確保中とは、最低移管間隔に加えて余裕を取るためのスペーシング係数αを確保した状態をいう。
図25は、移管間隔確保中か否かの判定例を示す図である。同図において、航空機AP202〜PA205は、同一グループ内における2番機〜5番機である。このうち、航空機AP205が、移管間隔確保中か否かの判定対象の航空機である。また、航空機AP202の必要遅延量の方向識別は「F」であり、航空機AP203およびAP204の方向識別は「B」である。また、各航空機間の間隔は、航空機間の移管間隔の予測値を示す。
移管間隔確保中とは、判定対象の航空機(
図25の例ではAP205)に対する先行機のうち、必要遅延量の方向識別が「F」かつ判定対象の航空機に最も近い順位の航空機、あるいは、該当する航空機が存在しない場合は1番機を先頭として、この先頭と判定対象の航空機との間に、各航空機が(最低移管間隔+α)の移管間隔を取り得るだけの移管間隔がある状態をいう。
【0058】
そこで、管制指示推奨情報候補生成部522は、まず、上記の条件を満たす先頭の航空機を決定する。次に、管制指示推奨情報候補生成部522は、判定対処の航空機の順位と先頭の航空機の順位との差を算出することにより、先頭の航空機以降の先行機数を得る。そして、管制指示推奨情報候補生成部522は、(最低移管間隔+α)の間隔に、得られた先行機数を乗じて必要な間隔を算出する。そして、管制指示推奨情報候補生成部522は、航空機AP202とAP205との間の移管間隔としてこの間隔が確保されている場合は移管間隔確保中であると判定し、確保されていない場合は移管間隔確保中でないと判定する。
図25の例では、管制指示推奨情報候補生成部522は、判定対象の航空機の順位「5」と先頭の航空機の順位「2」との差を取って、先行機(航空機AP202〜AP204)数の「3」を取得する。そして、(最低移管間隔+α)の3倍を必要な移管間隔とする。また、AP205の必要遅延量に最低移管間隔の3倍を加えて、航空機AP202とAP205との間の移管間隔の予測値を算出する。管制指示推奨情報候補生成部522は、この、移管間隔の予測値が必要な移管間隔以上の場合は、移管間隔確保中であると判定し、必要な移管間隔未満の場合は、移管間隔確保中でないと判定する。
【0059】
図23に戻って、ステップS73において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機の直後の後続機の必要遅延量の値が速度調整遅延量以上かつ方向識別が「B」か否かを判定する。この条件を満たすと判定した場合(ステップS73:YES)はステップS74に進み、そうでないと判定した場合(ステップS73:NO)は当該航空機に対する同図の処理を終了する。上記の条件を満たさない場合に処理を終了するのは、後続機の遅延量が小さく、処理対象の航空機を前詰めして後続機との間隔を調整する必要性が低いためである。
ステップS74において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機の必要遅延量の値が速度調整遅延量以上かつ方向識別が「F」か否かを判定する。この条件を満たすと判定した場合(ステップS74:YES)はステップS75に進み、そうでないと判定した場合(ステップS74:NO)は当該航空機に対する同図の処理を終了する。上記の条件を満たさない場合に処理を終了するのは、処理対象の航空機が前詰めできる余裕量が小さく、前詰めによって得られる後続機との間隔の変化量が少ないためである。
【0060】
ステップS75において、管制指示推奨情報候補生成部522は、アダプテーションにおいて直行指示を推奨する設定がされているか否かを判定する。設定がされていると判定した場合(ステップS75:YES)はステップS76に進み、そうでないと判定した場合(ステップS75:NO)は当該航空機に対する同図の処理を終了する。
ステップS76において、管制指示推奨情報候補生成部522は、管制指示推奨パターンを直行指示推奨とし、管制指示推奨情報生成処理部152は、管制指示推奨パターンが直行指示推奨の場合の処理を行う。その後、同図の処理を終了する。
【0061】
図26は、管制指示推奨パターンが直行指示推奨の場合に管制指示推奨情報生成処理部152が行う処理手順を示すフローチャートである。
ステップS201において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機のトラジェクトリ情報から、当該航空機が今後通過する予定のフィックスのうち、コモンポイントCPまたはそれ以前に通過するフィックスの情報を読み出す。
ステップS202において、管制指示推奨情報候補生成部522は、変数iの値を「0」に設定する。変数iの値は、直行指示推奨するか否かを判定する対象のフィックスを示す情報である。
ステップS203において、管制指示推奨情報候補生成部522は、ステップS201で読み出したフィックスの個数がi個以上か否かを判定する。i個以上であると判定した場合(ステップS20:YES)はステップS204に進み、i個未満であると判定した場合(ステップS20:NO)はステップS209に進む。
【0062】
ステップS204において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機がフィックス(i)へ直行した場合の、フィックス(i)への到着予定時刻を算出する。
ステップS205において、管制指示推奨情報候補生成部522は、ステップS204で算出した到着予定時刻に基づいて、処理対象の航空機がフィックス(i)へ直行した場合の先行機との移管間隔の変化量(前詰めされる距離)を算出する。
ステップS206において、管制指示推奨情報候補生成部522は、ステップS205で算出した変化量に基づいて、処理対象の航空機の直後の後続機が移管間隔を確保できるか否かを判定する。確保できると判定した場合(ステップS206:YES)はステップS207に進み、確保できないと判定した場合(ステップS206:NO)はステップS208に進む。
【0063】
ステップS207において、管制指示推奨情報候補生成部522は、フィックス(i)への直行指示推奨情報を、管制指示推奨情報候補とする。また、推奨トラジェクトリ情報算出部523は、推奨トラジェクトリ情報として、フィックス(i)に直行した場合のトラジェクトリ情報を算出する。また、管制指示推奨情報生成処理部152は、フィックス(i)への直行指示推奨情報を、管制指示推奨情報とする。その後、同図の処理を終了する。
ステップS208において、管制指示推奨情報候補生成部522は、変数iの値を1増加させ、その後ステップS203に戻る。フィックス(i+1)に直行する場合について検討するためである。
ステップS209において、管制指示推奨情報候補生成部522は、変数iの値を1減少させ、その後ステップS207へ進む。ステップS201で読み出したフィックスの最後(コモンポイントCP)への直行を推奨するためである。処理対象の航空機は、コモンポイントCPへ直行する場合に、直行による前詰めとしては最大の前詰め量を得られる。
【0064】
なお、管制指示推奨情報候補生成部522が、フィックスの一部のみを管制指示における直行先とするようにしてもよい。例えば、アダプテーション記憶部153が直行先とするフィックスの情報を記憶しておき、管制指示推奨情報候補生成部522は、この情報に基づいて直行先のフィックスを決定する。このように、直行先とするフィックスの数を減らすことにより、管制指示推奨情報候補生成部522の負荷の軽減が期待できる。特にフィックスが密集する場合に、互いに離れたフィックスのみを直行先とすることで、管制指示推奨情報候補生成部522は管制指示推奨情報候補を、より効率的に生成することができる。
また、アダプテーション記憶部153が、直行先のフィックスと、直行によるコモンポイント到達予測時間の変化量とを対応付けて記憶するようにしてもよい。この場合、管制指示推奨情報候補生成部522は、直行先のフィックスを選択する際に、直行によるコモンポイント到達予測時間の変化量を改めて算出する必要が無い。したがって、管制指示推奨情報候補生成部522の負荷を軽減できる。
【0065】
図23に戻って、ステップS81において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機の必要遅延量の値が速度調整遅延量以上かつ方向識別が「B」か否かを判定する。この条件を満たすと判定した場合(ステップS81:YES)はステップS82に進み、そうでないと判定した場合(ステップS81:NO)は当該航空機に対する同図の処理を終了する。上記の条件を満たさない場合に処理を終了するのは、処理対象の航空機の必要遅延量が小さく、当該航空機の針路を変更せずとも、当該航空機の飛行速度を遅くする減速管制によって必要遅延量を確保できると考えられるからである。なお、ステップS81:NOの場合、管制指示推奨情報生成処理部152が減速推奨を行うようにしてもよい。
ステップS82において、管制指示推奨情報候補生成部522は、管制指示推奨パターンをレーダー誘導指示推奨とし、管制指示推奨情報生成処理部152は、管制指示推奨パターンがレーダー誘導指示推奨の場合の処理を行う。その後、同図の処理を終了する。
【0066】
図27は、管制指示推奨パターンがレーダー誘導指示推奨の場合に管制指示推奨情報生成処理部152が行う処理手順を示すフローチャートである。
ステップS221において、管制指示推奨情報候補生成部522は、針路指示値を現在の針路を示す方位角に決定する。
ステップS222において、管制指示推奨情報候補生成部522は、針路指示値に所定の加算値を加算する。ここで、所定の加算値は、例えば10度である。あるいは、所定の加算値を10度または−10度としてもよい。例えば、処理対象の航空機の位置毎に10度とするか−10度とするかを予め定めておくことにより、管制指示推奨情報候補生成部522は、航空機の位置に応じて加算値を決定できる。
【0067】
ステップS223において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機の現在の針路に対する針路指示値の変更幅が90度未満か否かを判定する。90度未満と判定した場合(ステップS223:YES)はステップS224に進み、90度以上と判定した場合(ステップS223:NO)は同図の処理を終了する。90度以上と判定した場合に処理を終了するのは、90度以上の変更は飛行計画からの乖離が大きく不適切だからである。
ステップS224において、管制指示推奨情報候補生成部522は、レーダー誘導による針路から飛行計画の針路に復帰する復帰ポイントを算出する。例えば、管制指示推奨情報候補生成部522は、まず、針路指示値の方位に所定の距離進んだ位置を復帰ポイントとする。そして、移管間隔を確保できるまで、ステップS224〜S226のループにより所定の距離ずつ復帰ポイントを延ばしていく。
【0068】
ステップS225において、管制指示推奨情報候補生成部522は、レーダー誘導により処理対象の航空機の針路を変更した場合の、移管間隔の変化量を算出する。ステップS226において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機が移管間隔を確保できるか否かを判定する。確保できると判定した場合(ステップS226:YES)は、この経路の管制指示を管制指示推奨情報候補としてステップS227に進む。一方、確保できないと判定した場合(ステップS226:NO)はステップS224に戻る。ステップS224に戻った場合は、上述したように復帰ポイントまでの距離を変更してステップS225以下の処理を再度行う。
ステップS227において、推奨トラジェクトリ情報算出部523は、推奨トラジェクトリ情報を算出する。
【0069】
ステップS228において、適合判定部524は、ステップS227で算出した推奨トラジェクトリ情報に基づいて、
(1)推奨経路にて、予め定められた最低移管間隔を確保できない状態(コンフリクト)が発生しないこと、かつ、
(2)推奨経路にて空域侵害が発生しないこと、かつ、
(3)推奨経路がレーダー誘導エリア内であること、
の条件を満足するか否かを判定する。満足すると判定した場合(ステップS228:YES)は、この経路の管制指示を管制指示推奨情報として同図の処理を終了する。一方、満足しないと判定した場合(ステップS228:NO)は、ステップS222に戻る。針路指示値を変更して、管制指示推奨情報候補を再度生成するためである。
【0070】
図28は、上記「(3)推奨経路がレーダー誘導エリア内であること」の条件の判定例を示す図である。適合判定部524は、推奨トラジェクトリ情報により示される推奨経路の全部がレーダー誘導エリア内にあれば条件(3)が満たされると判定し、一部がレーダー誘導エリア外にあれば条件(3)が満たされてないと判定する。
同図の例では、推奨トラジェクトリ情報が示す推奨経路は破線にて示されている。この推奨経路の一部がレーダー誘導エリア外にあるので、適合判定部524は、条件(3)が満たされていないと判定する。
【0071】
また、適合判定部524は、条件(2)については、推奨トラジェクトリ情報が示す推奨経路の全部が侵害対象の空域の外にあれば条件(2)が満たされると判定し、一部が侵害対象の空域内にあれば条件(2)が満たされないと判定する。
また、適合判定部524は、条件(1)については、推奨トラジェクトリ情報が示す推奨経路と、トラジェクトリ情報が示す他の航空機の経路とを比較することにより、コンフリクトの有無を判定する。この際、管制指示推奨情報を生成済みの他の航空機についても、トラジェクトリ情報が示す経路との比較を行う。管制指示推奨情報を生成・表示しても、管制官がこの管制指示を採用するとは限らないためである。
【0072】
なお、管制指示推奨情報候補生成部522が、レーダー誘導の場合に管制指示推奨情報を生成する方法は、上述のものに限らない。例えば、アダプテーション記憶部153が、過去に行われたレーダー誘導について、レーダー誘導開始ポイントや、航空機の針路方向や、復帰ポイントを互いに対応付けて、使用頻度の高い順に記憶しておき、管制指示推奨情報候補生成部522が、これら過去のレーダー誘導の情報を、使用頻度の高い順に読み出し、読み出した情報が示すレーダー誘導により得られるコモンポイント到着時間の変化量を算出し、算出した変化量と必要とする変化量とを比較することにより、適切なレーダー誘導を選択して管制指示推奨情報候補を生成することができる。この場合、読み出したレーダー誘導は、既に行われたレーダー誘導なので、空域侵害を生じないこと(上記条件(2))や、レーダー誘導エリア内にあること(上記条件(3))を満たすと考えられる。従って、適合判定部524がこれらの判定処理を行う必要がなく、適合判定部524の負荷を軽減できる。
【0073】
図24に戻って、ステップS91において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機が移管間隔確保中か否かを判定する。移管間隔確保中と判定した場合(ステップS91:YES)はステップS92に進み、移管間隔確保中でない判定した場合(ステップS91:NO)はステップS111に進む。
ステップS92において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機の直後の後続機の必要遅延量の値がレーダー誘導遅延量以上かつ方向識別が「B」か否かを判定する。この条件を満たすと判定した場合(ステップS92:YES)はステップS93に進み、そうでないと判定した場合(ステップS92:NO)はステップS101に進む。
【0074】
ステップS93において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機の必要遅延量の値が速度調整遅延量以上かつ方向識別が「F」か否かを判定する。この条件を満たすと判定した場合(ステップS93:YES)はステップS94に進み、そうでないと判定した場合(ステップS93:NO)はステップS101に進む。
ステップS94において、管制指示推奨情報候補生成部522は、アダプテーションにおいて増速指示を推奨する設定がされているか否かを判定する。設定がされていると判定した場合(ステップS94:YES)はステップS95に進み、そうでないと判定した場合(ステップS94:NO)は当該航空機に対する同図の処理を終了する。
ステップS95において、管制指示推奨情報候補生成部522は、管制指示推奨パターンを増速指示推奨とし、管制指示推奨情報生成処理部152は、管制指示推奨パターンが増速指示推奨の場合の処理を行う。その後、同図の処理を終了する。
【0075】
ステップS101において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機の必要遅延量の値がレーダー誘導遅延量以上かつ方向識別が「B」、または、グループの1番機がレーダー誘導遅延量以上の遅延か否かを判定する。この条件を満たすと判定した場合(ステップS101:YES)はステップS102に進み、そうでないと判定した場合(ステップS101:NO)は当該航空機に対する同図の処理を終了する。
ステップ102において、管制指示推奨情報候補生成部522は、管制指示推奨パターンを減速指示推奨とし、管制指示推奨情報生成処理部152は、管制指示推奨パターンが減速指示推奨の場合の処理を行う。その後、同図の処理を終了する。
【0076】
ステップS111において、管制指示推奨情報候補生成部522は、アダプテーションにおいて速度調整を優先する設定がされているか否かを判定する。設定がされていると判定した場合(ステップS111:YES)はステップS112に進み、そうでないと判定した場合(ステップS111:NO)は当該航空機に対する同図の処理を終了する。
ステップS112において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機の必要遅延量の値が速度調整遅延量以上かつ方向識別が「B」か否かを判定する。この条件を満たすと判定した場合(ステップS112:YES)はステップS113に進み、そうでないと判定した場合(ステップS112:NO)は当該航空機に対する同図の処理を終了する。
【0077】
ステップ113において、管制指示推奨情報候補生成部522は、管制指示推奨パターンを減速指示推奨とし、管制指示推奨情報生成処理部152は、管制指示推奨パターンが減速指示推奨の場合の処理を行う。その後、同図の処理を終了する。
ステップS121において、管制指示推奨情報候補生成部522は、処理対象の航空機の必要遅延量の値がレーダー誘導遅延量以上かつ方向識別が「B」か否かを判定する。この条件を満たすと判定した場合(ステップS121:YES)はステップS122に進み、そうでないと判定した場合(ステップS121:NO)は当該航空機に対する同図の処理を終了する。
ステップ122において、管制指示推奨情報候補生成部522は、管制指示推奨パターンを減速指示推奨とし、管制指示推奨情報生成処理部152は、管制指示推奨パターンが減速指示推奨の場合の処理を行う。その後、同図の処理を終了する。
【0078】
図20に戻って、ステップS6において、管制指示推奨情報候補生成部522は、生成した管制指示推奨情報候補を、管制指示推奨情報として管制指示推奨情報記憶部155に書き込み、また、表示処理部16に出力する。表示処理部16は、管制指示推奨情報候補生成部522から出力される管制指示推奨情報を示す表示用データを生成し、管制卓3−1〜3−3に送信する。管制卓3−1〜3−3は、表示処理部16から出力される表示用データを、表示部31−1〜31−3に表示する。また、推奨トラジェクトリ情報算出部523は、この管制指示推奨情報に従った場合の推奨トラジェクトリ情報を、推奨トラジェクトリ情報記憶部156に書き込む。
ステップS7において、グループ決定部511は、移管した航空機の推奨管制指示情報を削除する。その後、同図の処理を終了する。
【0079】
以上のように、航空路レーダー情報処理システム1は、航空機の必要遅延量に基づいて管制指示推奨情報を生成し、管制卓3−1〜3−3に表示する。この管制指示推奨情報は、最低移管間隔を確保するために航空機の移管タイミングを遅延させる管制指示の情報を具体的に示すものであり、この管制指示推奨情報により、どの航空機をどのタイミングで移管させるべきかを具体的に示すことができる。
さらに、必要遅延量算出部521が算出する必要遅延量を管制卓3−1〜3−3に表示することにより、どの航空機をどのタイミングで移管させるべきかを、さらに具体的に示すことができる。また、必要遅延量を表示することにより、管制指示推奨情報に示す管制指示を推奨する根拠を管制官に示すことができる。
【0080】
また、航空路レーダー情報処理システム1は、同一のコモンポイントを所定の時間内に通過する全ての航空機を同一のグループに含めて処理を行うので、管制官は、他の管轄エリアの航空機を意識することなく、移管先の管轄エリアに適した管制を行える。例えば、
図2に示した管轄エリアR1の管制官は、航空路レーダー情報処理システム1が生成する管制指示推奨情報あるいは必要遅延量に基づいて管制を行うことにより、管轄エリアR2および管轄エリアR3内の航空機を意識せずとも、管轄エリアR2および管轄エリアに適した管制を行える。
また、航空路レーダー情報処理システム1が行う、航空機をグループ分けする手法は、管制官が通常行う、航空機をグループ毎に認識する考え方を組み入れたものである。このため、航空路レーダー情報処理システム1が生成する管制指示推奨情報や必要遅延量は、管制官にとって理解し易く、また、違和感のないものとなることが期待できる。
また、適合判定部524が、コンフリクト等の問題が発生しないか否かを判定するので、管制官は、航空路レーダー情報処理システム1が生成する管制指示推奨情報を活用することにより、コンフリクト等の問題が発生しない針路指示や高度等を選択できる。
また、航空路レーダー情報処理システム1が生成する管制指示推奨情報を活用することにより、管制官の思考の一部を航空路レーダー情報処理システム1が代行でき、管制官の負荷を軽減でき、また、管制官の個人的な経験と勘に基づくため個人間でレベルの差が生じがちな管制業務について、一定のレベルの確保を期待できる。
【0081】
なお、航空路レーダー情報処理システム1の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0082】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。