特許第5647828号(P5647828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5647828
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】反射型可変光アッテネータ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/09 20060101AFI20141211BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   G02F1/09 505
   G02B27/28 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-165006(P2010-165006)
(22)【出願日】2010年7月22日
(65)【公開番号】特開2012-27192(P2012-27192A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092598
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小野 博章
(72)【発明者】
【氏名】中田 英則
(72)【発明者】
【氏名】河合 博貴
(72)【発明者】
【氏名】大田 猶子
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−208295(JP,A)
【文献】 特開2004−177639(JP,A)
【文献】 特開2007−199112(JP,A)
【文献】 特開平11−199390(JP,A)
【文献】 特開平01−230498(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0025980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/09,1/095
G02B 27/28
C30B 29/28
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って光入出力部、ファラデー回転子を備えた光減衰機構部、反射体をその順で配置して構成される反射型可変光アッテネータであって、
前記光減衰機構部は、前記ファラデー回転子に対し、磁気飽和させるために面内方向に固定磁界を印加する永久磁石と、前記ファラデー回転子に対して光軸方向に可変磁界を印加する可変磁界発生手段とを備え、
前記永久磁石は、前記ファラデー回転子の光軸と交差する方向の側面に対向して配置し、
前記永久磁石はフェライト系永久磁石であり、
前記可変磁界発生手段は空芯コイルであり、
前記空芯コイルの内部空間内に前記ファラデー回転子と前記永久磁石を配置することを特徴とする反射型可変光アッテネータ。
【請求項2】
光軸に沿って光入出力部、ファラデー回転子を備えた光減衰機構部、反射体をその順で配置して構成される反射型可変光アッテネータであって、
前記光減衰機構部は、前記ファラデー回転子に対し、磁気飽和させるために面内方向に固定磁界を印加する永久磁石と、前記ファラデー回転子に対して光軸方向に可変磁界を印加する可変磁界発生手段とを備え、
前記永久磁石は、前記ファラデー回転子の光軸と交差する方向の側面に対向して配置し、
前記ファラデー回転子は希土類鉄ガーネット単結晶であり、前記固定磁界の印加方向が前記ファラデー回転子の<211>方向で、前記可変磁界の印加方向が前記ファラデー回転子の<111>方向とすることを特徴とする反射型可変光アッテネータ。
【請求項3】
光軸に沿って光入出力部、ファラデー回転子を備えた光減衰機構部、反射体をその順で配置して構成される反射型可変光アッテネータであって、
前記光減衰機構部は、前記ファラデー回転子に対し、磁気飽和させるために面内方向に固定磁界を印加する永久磁石と、前記ファラデー回転子に対して光軸方向に可変磁界を印加する可変磁界発生手段とを備え、
前記永久磁石は、前記ファラデー回転子の光軸と交差する方向の側面に対向して配置し、
前記ファラデー回転子は希土類鉄ガーネット単結晶であり、前記固定磁界の印加方向が前記ファラデー回転子の<211>方向から5から20度の範囲とし、前記可変磁界の印加方向が前記ファラデー回転子の<111>方向とすることを特徴とする反射型可変光アッテネータ。
【請求項4】
前記永久磁石はフェライト系永久磁石であり、
前記可変磁界発生手段は空芯コイルであり、
前記空芯コイルの内部空間内に前記ファラデー回転子と前記永久磁石を配置することを特徴とする請求項2または3に記載の反射型可変光アッテネータ。
【請求項5】
前記光軸上に配置する回転角補正用ファラデー回転子と、その回転角補正用ファラデー回転子のファラデー回転角を設定する磁界印加手段を備え、
前記可変磁界がゼロのときに、前記光入出力部から入力した入射光が前記反射体で反射して戻ってきた反射光が、前記光入出力部から100%出力或いは遮断されるように前記ファラデー回転子のファラデー回転角と、前記回転角補正用ファラデー回転子のファラデー回転角が設定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の反射型可変光アッテネータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野や光計測器などで使用される反射型可変光アッテネータに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野等では、透過光量を制御するための光デバイスである可変光アッテネータを必要とする。可変光アッテネータの一例として、特許文献1等に開示された反射型のタイプがある。この反射型の可変光アッテネータは、入射光が進む方向に光学部品を所定の順に配列して構成される。具体的には、光学部品の配列は、入力ファイバ1と出力ファイバ2を装着した2芯フェルール3の先端外側に、光の入出射面から順に複屈折素子4,光収束性のレンズ(凸レンズ)5,可変偏波回転手段6,反射鏡7を配置した構成を採る。便宜上、光学部品の配列方向(入射光が進む方向)をz方向(図では右方向)とし、それに対して直交する2方向をx方向(水平方向)、y方向(垂直方向)とする。従って、図2(a)は平面を表し、同図(b)は正面を表すことになる。
【0003】
入力ファイバ1と出力ファイバ2は、x方向に並べて平行に配置する。ここでは、z方向を見て右側光路に入力ファイバ1を配置し、左側光路に出力ファイバ2を配置する構成を採る。複屈折素子4は、z方向に向かう偏波方向が直交関係にある同じ光路の光をy方向に分離し−z方向に向かう異なる光路の光を合成する平行平面型の偏波分離合成用の複屈折素子を用いている。反射鏡7は、レンズ5の焦点に配置する。
【0004】
可変偏波回転手段6は、ファラデー回転子6aと、そのファラデー回転子6aに2方向から固定磁界と可変磁界による合成磁界を印加する構成をとる。固定磁界は、反射鏡7の背後に配置した円板状の永久磁石6bによって光が進む方向に印加される。可変磁界は、電磁石6cによって光が進む方向に対して垂直な方向に印加される。これら2つの磁界がファラデー回転子6aに印加され、その合成磁界に応じてファラデー回転子6aのファラデー回転角が変化する。
【0005】
上記の構成を採る反射型可変光アッテネータの動作原理は、以下の通りである。入力ファイバ1から入射した光は、複屈折素子4、レンズ5を通り反射鏡7に集光して反射され、反射戻り光は、再びレンズ5、複屈折素子4を通って出射する。その過程で、光は、可変偏波回転手段6のファラデー回転子6aを往復する。そして、この可変偏波回転手段6で偏波方向の回転角度を制御することにより、反射出力光量を制御する。
【0006】
つまり入力ファイバ1からz方向に入射する光は、複屈折素子4で常光と異常光とにy方向に光分離する。そしてレンズ5で集光し、その集光途中でファラデー回転子6aを通過する。ファラデー回転角が0度のときは、レンズ焦点位置の反射鏡7では偏波方向は回転せず反射する。−z方向に戻る反射光は、再びファラデー回転子6a及びレンズ5を通過するが、その際も偏波方向は回転しない。ただし、反射光の常光と異常光の位置は、xy平面において焦点位置を中心に対角位置にずれる。そして、複屈折素子4では、すべての常光と異常光とがさらにy方向に分離する。従って、入力ファイバ1からの入射光は、ほとんど出力ファイバ2には結合しない。つまり、入力ファイバ1からの入射光量のほとんど全てが減衰することになる。
【0007】
一方、ファラデー回転角が45度に設定されているときは、光はレンズ焦点位置の反射鏡7では偏波方向が45度回転して反射する。このとき、常光と異常光の位置は、xy平面において焦点位置を中心に対角位置にずれる。−z方向に戻る反射光は、再びファラデー回転子6a及びレンズ5を通過し、その際に偏波方向が更に45度(従って合計で90度)回転する。そして、複屈折素子4では、90度回転され、さらに対角位置にずれた常光と異常光とがy方向に偏波合成する。このようにして、入力ファイバ1からの入射光は、ほとんど減衰することなくほぼ全量が出力ファイバ2へと出射する。
【0008】
さらに、電磁石6cにより発生する磁界を調整することで、可変偏波回転手段6によって偏波方向を任意の角度に回転させることができる。例えば、22.5度回転するように調整すると、光はレンズ焦点位置の反射鏡7では偏波方向が22.5度回転して反射する。−z方向に戻る反射光は、再びファラデー回転子6a及びレンズ12を通過し、その際にも偏波方向が更に同じ角度である22.5度回転し、合計で45度回転する。すると複屈折素子4で、一部の常光と異常光はy方向に偏波合成され出力ファイバ2に結合するが、残りの常光と異常光は更にy方向に偏波分離するため出力ファイバには結合しない。従って、ファラデー回転角を22.5度に設定した場合は、入力ファイバ1からの入射光は減衰し、入射光量がほぼ半減して出力ファイバ2へ出射する。このように可変偏波回転手段6で偏波方向の回転角度を制御することによって、入射光の減衰量(言い換えれば反射出力光量)を自由に調整できることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−199112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の構成では、ファラデー回転子6aに光の透過方向(z方向)に永久磁石6bから発生される固定磁界を印加し、電磁石6cにより発生する可変磁界をファラデー回転子6aの面内方向(x方向)に印加する構成を採る。そして、各磁界発生手段が入射光並びに反射光の光路の邪魔をしないようにするために、永久磁石6bは、反射鏡7の外側に配置することになり、フェライト系の永久磁石等の磁力の弱い永久磁石を用いてファラデー回転子6aを磁気飽和させようとすると、体積の大きなものが必要となり、装置の大型化を招く。そのため磁力の強いサマリウムコバルト磁石やネオジム磁石といった希土類の永久磁石を用いている。しかし、希土類磁石は錆びる材料であるため、防錆処理が必要となる。
【0011】
さらに、ファラデー回転角は、固定磁界と可変磁界とによって作られる合成磁界により制御されるが、可変磁界に対して固定磁界が相対的に大きすぎると、微少な回転角しか生じさせることができない。そのため、両方の磁界の強さを合わせる必要がある。そして、希土類磁石は磁束密度の高い材料であることから、永久磁石による飽和磁界はファラデー回転子を磁気飽和させるのに必要十分な程度に抑えるために、ファラデー回転子6aから比較的離れた位置に配置したり、永久磁石を極力小さくしたりする必要がある。そうすると、前者の比較的離れた位置に配置する場合には、装置全体が大きくなり、小型化の弊害を来す。また、後者の永久磁石の形状を小さくしようとした場合、希土類磁石は脆いため、薄板などへの微小な加工は難しい。
【0012】
また、可変磁界をある程度大きくするためには、電磁石6cの磁気回路を構成するコア6c′として、透磁率の高い材料を用いたり、コイルの巻数を多くすることが考えられる。しかし、透磁率の高い材料は錆びる材料であり、やはり防錆処理が必要となる。またコイルの巻数を多くすることにはある程度限界もあり、また、装置の大型化を招く。
【0013】
本発明はファラデー回転子を磁気飽和させる手段等を小型化・簡素化した反射型可変光アッテネータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明の反射型光アッテネータは、光軸に沿って光入出力部、ファラデー回転子を備えた光減衰機構部、反射体をその順で配置して構成される反射型可変光アッテネータであって、前記光減衰機構部は、前記ファラデー回転子に対し、磁気飽和させるために面内方向に固定磁界を印加する永久磁石と、前記ファラデー回転子に対して光軸方向に可変磁界を印加する可変磁界発生手段とを備え、前記永久磁石は、前記ファラデー回転子の光軸と交差する方向の側面に対向して配置することを前提とする。光入出力部は、実施形態では、2芯フェルールや、偏光子と検光子の機能を兼用した複屈折素子11等を含む。光減衰機構部は、実施形態の可変偏波回転手段14に対応する。
【0015】
ファラデー回転子を磁気飽和させるためのバイアス磁界(固定磁界)を印加する方向を面内方向としたため、永久磁石は、光軸から外れたファラデー回転子の外側側面に対向する位置に近接配置できる。また、可変磁界発生手段は、コイルその他の電磁石等を用いて実現できるが、ファラデー回転子に対して光軸方向に磁界を印加するため、例えば、ファラデー回転子の周囲を囲むように配置した筒状のコイル等で実現できる。よって、図1等に示した従来のものと比較しても磁界を印加するための手段をコンパクトにまとめることができ、装置の小型化が図れる。また、永久磁石をファラデー回転子に接近させることから、透磁率の小さい微小な磁界を発生させる永久磁石を用いることができる。例えば、フェライト系の磁石など、安価で容易に入手できるので好ましい。
【0016】
(1)上記の前提のもと、前記永久磁石はフェライト系永久磁石であり、前記可変磁界発生手段は空芯コイルであり、前記空芯コイルの内部空間内に前記ファラデー回転子と前記永久磁石を配置するようにした。フェライト系永久磁石は、錆びないので防錆処理が不要で簡易に製造できる。また空芯コイルとすることでコア等もなく簡易な構成となる。
【0017】
(2)上記の前提のもと、前記ファラデー回転子は希土類鉄ガーネット単結晶であり、前記固定磁界の印加方向が前記ファラデー回転子の<211>方向で、前記可変磁界の印加方向が前記ファラデー回転子の<111>方向とするようにした。ファラデー回転子の<211>方向は磁気飽和しやすい方向であるため、より小さい磁場(例えば100エルステッド以下)で磁気飽和させることができる。それに伴い、ファラデー回転角を回転させるための可変磁界も小さい磁力ですむ。よって、より小型な構成で実現できる。
【0018】
(3)上記の前提のもと、前記ファラデー回転子は希土類鉄ガーネット単結晶であり、前記固定磁界の印加方向が前記ファラデー回転子の<211>方向から5から20度の範囲とし、前記可変磁界の印加方向が前記ファラデー回転子の<111>方向とするようにした。5度よりも小さい範囲は、損失が大きくなり、20度より大きくなると飽和磁界が150エルステッドより大きくなる。よって、要求される仕様が厳しくなると、係る範囲とするのがよい。
(4)上記の(2),(3)の発明を前提とし、前記永久磁石はフェライト系永久磁石であり、前記可変磁界発生手段は空芯コイルであり、前記空芯コイルの内部空間内に前記ファラデー回転子と前記永久磁石を配置するようにするとよい。
【0019】
(5)前記光軸上に配置する回転角補正用ファラデー回転子と、その回転角補正用ファラデー回転子のファラデー回転角を設定する磁界印加手段を備え、前記可変磁界がゼロのときに、前記光入出力部から入力した入射光が前記反射体で反射して戻ってきた反射光が、前記光入出力部から100%出力或いは遮断されるように前記ファラデー回転子のファラデー回転角と、前記回転角補正用ファラデー回転子のファラデー回転角が設定されるとよい。このようにすると、光減衰機構部を構成するファラデー回転子単独で所望のファラデー回転角の範囲が得られない場合でも、回転角補正用ファラデー回転子のファラデー回転角を適宜に設定することで反射型可変光アッテネータ全体で所望の特性が得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、ファラデー回転子を磁気飽和させる手段を小型化・簡素化でき、それに伴い可変磁界を印加する構成も簡素化できる。さらに、ファラデー回転子として希土類鉄ガーネット単結晶を用いた場合、ファラデー回転子の磁気飽和方向をファラデー回転子の<211>方向にすることで、飽和磁界を小さくすることができる。これによって飽和磁界を発生させる手段を防錆処理の必要な希土類磁石から防錆処理の必要のないフェライト系の永久磁石を用いることができる。さらに飽和磁界が小さいので、可変磁界も小さくすることができ、可変磁界を発生させる手段として、透磁率の高い材料を用いた磁気回路を必要とせず、小型で安価な反射型可変光アッテネータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来例を示す図である。
図2】反射型可変光アッテネータの動作原理を説明する図である。
図3】本発明に係る反射型可変光アッテネータの好適な一実施形態を示す図である。
図4】(a)はファラデー回転子に対する磁界の印加方向を説明する図であり、(b)は固定磁界H1可変磁界H2によりファラデー回転角が決定させることを説明する図である。
図5】ファラデー回転子を磁気飽和させるために印加する磁界と損失の関係を示すグラフである。
図6】可変磁界と固定磁界による合成回転角の関係を示すグラフである。
図7】ファラデー回転子20と回転角補正用ファラデー回転子12の回転方向の組み合わせを説明する図である。
図8】<211>方向からの角度に対する飽和磁界と最大減衰量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。図3は、本発明に係る反射型可変光アッテネータ10の好適な一実施形態を示している。本実施形態の反射型可変光アッテネータ10は、図示省略する2芯フェルールで構成される入出力ポートに対向するように複屈折素子11を配置し、その複屈折素子11の後側に入力ポート(入力ファイバ)から入射される入射光が進む方向に沿って、回転角補正用ファラデー回転子12,光収束性のレンズ13,可変偏波回転手段14,反射体15をその順に配置する。
【0023】
図示省略した2芯フェルールは、図1に示した従来のものと同様の構成を採ることができる。つまり、入射光の進む方向をz方向とし、そのz方向と直交する水平方向をx方向で垂直方向をy方向とすると、入力ファイバと出力ファイバはx方向に平行に並ぶように配置し、その先端を2芯フェルールに装着し、入出力ポートの位置を特定する。複屈折素子11は、ルチル単結晶から構成し、偏光子及び検光子としての機能を有する。この複屈折素子11は、特許文献1等に開示された従来のものと基本的に同様のものを用いることができる。レンズ13も凸レンズ等を用い、その焦点位置に反射体15を配置する。これらの基本構成は、従来と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0024】
回転角補正用ファラデー回転子12は、円筒状の永久磁石17の軸方向に形成された貫通孔内に挿入配置され、その永久磁石17の磁力により磁気飽和している。可変磁界がない単調増加型の光減衰器では、回転角補正用ファラデー回転子12とファラデー回転子20を往復した光の偏波面が90度回転された後、複屈折素子11で100%結合されて、出力ポートへ出力される。
【0025】
ここで本発明では、可変偏波回転手段14の構成要素を以下のようにした。すなわち、まず、従来と同様に入射光が進む光路と直交するように扁平矩形状のファラデー回転子20を配置する。
【0026】
さらに、ファラデー回転子20に直交する2方向から固定磁界と可変磁界による合成磁界を印加する構成をとる。そして固定磁界H1は、ファラデー回転子20を磁気飽和させるための磁界であってファラデー回転子20の面内方向に印加し、可変磁界H2は、ファラデー回転子20のファラデー回転角を制御するための磁界であってファラデー回転子20の光軸方向(z方向)に印加するように設定する(図4(a)参照)。ファラデー回転角は、固定磁界H1と可変磁界H2の合成磁界により決定される合成回転角αにより決定され、可変磁界H2の強さを変化させることで制御できる(図4(b)参照)。
【0027】
これら各磁界を印加するための具体的な構成は、ファラデー回転子20の水平方向左右両側に一対の永久磁石21を配置する。この一対の永久磁石21は、平板状であってファラデー回転子20の側面に対向する全面がS極或いはN極となる。よって、一方の永久磁石のファラデー回転子20の対向面をN極にし、他方の永久磁石の対向面をS極にすることで、一対の永久磁石21間で発生する固定磁界H1が、ファラデー回転子20の面内方向に印加される。
【0028】
図から明らかなように、一対の永久磁石21は、ファラデー回転子20の側面外側に配置させることから、どの位置に配置しても入射光,反射光の光路の外になる。よって、永久磁石21はファラデー回転子20に近接配置することができ、小さい磁力でもファラデー回転子20を磁気飽和させることができる。そのため、本実施形態では、磁力の小さいフェライト系の永久磁石を用いて構成することが可能である。フェライト系の永久磁石は、錆びないので防錆処理をしなくてもよく、しかも安価であるので、可変偏波回転手段14ひいては反射型可変光アッテネータ10の製造を容易かつ安価に行える。
【0029】
また、永久磁石21によりファラデー回転子20に印加するバイアス磁界が小さくなるので、小さい可変磁界H2でも十分な量だけファラデー回転角を回転させることができる。そこで、空芯コイルからなるソレノイドコイル22にてファラデー回転子20に可変磁界H2を印加するようにした。つまり、円筒状のソレノイドコイル22の内部空間内に、そのソレノイドコイル22の軸心とファラデー回転子20の光軸が一致するように当該ファラデー回転子20を配置する。これにより、ソレノイドコイル22に電流を流すと、ソレノイドコイル22の内部空間内を軸心に沿って磁界が発生するため、ファラデー回転子20の光軸(z方向)に磁界を印加することができる。そして、ソレノイドコイル22への通電量を制御することで、可変磁界H2の磁界の強さを制御できる。なお、本実施形態では、永久磁石21をファラデー回転子20に近接配置していることから、その永久磁石21もソレノイドコイル22の内部空間内に配置する。
【0030】
可変磁界H2を印加するための手段が、空芯コイルからなるソレノイドコイル22で実現できるので、従来のように透磁率の高いコアも不要となり、通電量を小さくできることも相まって、可変磁界H2を印加するための磁界発生手段も、小型で簡易な構成にできるとともに、特別な防錆処理も不要となる。
【0031】
よって、固定磁界と可変磁界のいずれも小さい磁界を発生させ、小さい磁界による合成磁界でファラデー回転子20の回転角を回転させるので、可変磁界の磁力の制御・調整も瞬時にでき、反射型可変光アッテネータ10はより高速応答が可能となる。しかも、可変偏波回転手段14は、上述したようにバイアス磁界となる固定磁界H1を印加するための永久磁石21は、ファラデー回転子20に近接配置し、そのファラデー回転子20と永久磁石21の周囲を覆うようにソレノイドコイル22を配置する構造を採るので、その全体の外形寸法形状は、ソレノイドコイル22の外形状と一致するため、コンパクトに纏まり、小型化が図れる。さらに、通電量を小さくできるので、反射型可変光アッテネータ10の消費電力も低減することができる。
【0032】
本実施形態の反射型可変光アッテネータ10の動作原理は、図2を用いて説明した従来のものと基本的に同様である。つまり、可変偏波回転手段14における固定磁界H1と可変磁界H2を印加するための手段は従来と異なるものの、それによりファラデー回転子20のファラデー回転角が回転し、所望のファラデー回転角にすることができる。これにより、反射光を100%出力ポートから出力させたり、全く出力させなかったり、それらの中間の適宜の減衰量で出力させたりすることができる。
【0033】
さらに本実施形態では、ファラデー回転子として希土類鉄ガーネット単結晶を使用し、図4(a)に示すように、永久磁石21によりファラデー回転子20に印加する固定磁界H1(バイアス磁界)の方向がファラデー回転子の<211>方向となり、ソレノイドコイル22により印加する可変磁界H2の方向がファラデー回転子の<111>方向となるように設定する。すなわち、ファラデー回転子を構成する希土類鉄ガーネット単結晶について光線方向と直交方向である面内方向の飽和磁界強度を調査したところ、<211>方向が最も小さいことが確認できた。よって、固定磁界H1が飽和磁界強度の小さい<211>方向に印加するように調整することで、永久磁石21の磁力はより小さくすることができ、より小型にすることができる。さらに、それに伴い可変磁界H2から発生する磁力も小さくすることができる。
【0034】
図5(a)は、<211>方向に面内磁界が印加されるようにした場合の磁界−散乱ロス特性を示しており、図5(b)は<110>方向に面内磁界が印加されるようにした場合の磁界−散乱ロス特性を示している。散乱ロス(ΔL)が0になると磁気飽和しているといえるので、<211>方向のものでは、−10℃から75℃の通常の使用環境において100エルステッド程度の磁場の強さがあると磁気飽和することが確認できる。これに対し、<110>方向の場合、75℃といった高温度の環境では100エルステッド程度の磁場強度で磁気飽和するが、室温(25℃)や−10度の低温度の環境を考慮すると、300エルステッドは必要となる。
【0035】
図6は、バイアス磁界となる固定磁界H1が100エルステッドの場合と300エルステッドのそれぞれの場合における可変磁界H2に対する合成回転角の特性を示している。当然のことながら、固定磁界H1=可変磁界H2のときに合成回転角は45度となり、固定磁界H1が小さいほど可変磁界の変化に対する合成回転角の変化量は大きくなる。換言すると、合成回転角の角度範囲を同じ範囲にするためには、固定磁界H1が小さいほど可変磁界H2の変更範囲は小さくて済む。
【0036】
よって、本実施形態のように、<211>方向に固定磁界H1を印加する構成とすることで、<110>方向の場合に固定磁界H1を印加するものに比べて永久磁石21並びにソレノイドコイル22のそれぞれの磁界発生手段により生じさせる磁力を小さく抑えることができる。
【0037】
上記の実施形態では、固定磁界H1の磁界印加方向を<211>方向としたが、<211>方向から5から20度の範囲とするとよりよい。すなわち、<211>方向は、上記のように飽和磁界が小さくて済むので好ましいが、磁界変位経路中に困難軸があり、消光比が劣化する。具体的には、最大減衰量が30dBを下回ることがある。従って、要求される仕様によっては<211>方向のままでは使用できない場合がある。一方、成就したように、<110>方向では、飽和磁界が大きいものの消光比は劣化しない。そこで、<211>方向から<110>方向の間で磁界の印加方向の角度を変えてファラデー回転子に固定磁界を印加し、そのときの挿入損失(飽和磁界)と消光比(最大減衰量)を測定した。その結果、飽和磁界については、図8(a)のような結果が得られ、最大減衰量については図8(b)に示す結果が得られた。
【0038】
図から明らかなように、要求される仕様が−10℃〜75℃の温度範囲内で挿入損失が永久磁石の磁界の150エルステッド以下とすると、<211>方向からの角度が20度以下が上限となる。同様に100エルステッド以下が要求される場合には、15度以下(より確実には10度以下)が好ましい範囲内となる。一方、消光比(最大減衰量)が30dB以上が要求される仕様では、<211>方向からの角度が5度以上であることが下限となる。よって、上述した<211>方向から5から20度の範囲がより良い範囲といえる。
【符号の説明】
【0039】
10 反射型可変光アッテネータ
11 複屈折素子
12 回転角補正用ファラデー回転子
13 レンズ
14 可変偏波回転手段
15 反射体
20 ファラデー回転子
21 永久磁石
22 ソレノイドコイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8