(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記積層工程において、互いに積層されている前記液晶素子の液晶の配向方向が互いに直交するように配置されることを特徴とする請求項4に記載の多重構造液晶光学素子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものを含む従来の液晶光学素子によると、実応用に有用な光の屈折効果を最大限に引き出すためには、液晶光学素子の一対の透明電極の間に、光路に沿って十分な量の液晶を保持する必要があり、このために液晶層の厚さ(両配向膜の間)は、通常の液晶表示素子が数μm程度であるのに対して、30〜100μm程度と極めて厚くする必要がある。
【0006】
また、液晶光学素子の応答速度は、液晶層の厚さ(両配向膜の間)の2乗に逆比例することが知られており、このように液晶層の厚い液晶光学素子の場合には、応答時間は数100ms〜数分になる。即ち、従来の液晶光学素子は、応答速度が遅いという問題があった。
【0007】
機器を制御する際に応答速度が遅いことは、液晶光学素子を利用する焦点可変レンズ機能や収差補正機能にとって大きな制約であり、実用化への課題であった。
【0008】
そこで、本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、本発明の目的は、量産性に優れると共に、十分な光学的距離を確保することができ、かつ応答速度を向上することができる多重構造液晶光学素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、内側面上にセグメント電極が形成された基板と内側面上にコモン電極が形成された基板との間に液晶が封入された液晶素子が複数個互いに積層されて構成されており、セグメント電極が形成された基板とコモン電極が形成された基板とは、液晶が封入された状態で所定厚さに薄く加工されている多重構造液晶光学素子が提供される。
【0010】
複数の液晶素子のセグメント電極が形成された基板とコモン電極が形成された基板とは、液晶が封入された状態で所定厚さに薄く加工されるため、液晶を封入する際に基板の変形(撓み)を防ぐことができ、均一な光学特性が得られる。また、基板を薄く加工するとき、基板は撓みを生じることがなく、平坦な面に加工することができるため、大量生産が容易にできる。また、複数の液晶素子が薄く加工された後、積層するため、十分な光学的距離を確保し、かつ応答速度を向上することができる。本明細書において、「基板の内側面」とは、その基板において液晶の存在する側の面を指している。
【0011】
多重構造液晶光学素子の側面上に複数の電極端子が設けられ、これら複数の電極端子は多重構造液晶光学素子の側面に印刷された導電層と、多重構造液晶光学素子の上面における角部近傍に印刷された所定面積の導電パターンとを備えていることが好ましい。このように、片方のガラス基板を長くし電極を引き出す部を形成することが必要なく、接続の信頼性を確保することができると共に、小型化を図ることができる。本明細書において、「液晶光学素子の上面及び下面」とは、その液晶光学素子において最も外側の液晶素子における液晶の存在しない側である外側の面を指しており、例えば
図2における上側面及び下側面をそれぞれ指している。また、本明細書において、「液晶光学素子の側面」とは、直方体である液晶光学素子の上面及び下面に対して垂直の4つの面を指している。
【0012】
互いに積層されている液晶素子の液晶の配向方向は、互いに直交するように配置されていることが好ましい。これにより、通過した光を無偏向にすることができる。
【0013】
液晶は、透明な絶縁板により複数層に分割されていることが好ましい。このように、液晶の充填量及び十分な光学的距離を確保することができる。
【0014】
本発明によれば、複数の液晶素子を切り出せる第1のガラス基板にセグメント電極を形成する第1の電極形成工程と、複数の液晶素子を切り出せる第2のガラス基板にコモン電極を形成する第2の電極形成工程と、セグメント電極が形成された第1のガラス基板とコモン電極が形成された第2のガラス基板との間に液晶を封入し複数の液晶素子を有する素子群用基板を形成する素子群組立工程と、組立工程の後に、セグメント電極が形成された第1のガラス基板とコモン電極が形成された第2のガラス基板とを所定厚さに薄く加工する薄型加工工程と、薄く加工された複数の素子群用基板を互いに積層する積層工程と、積層された複数の素子群用基板を短冊又は単一の液晶素子に切断分離する切断工程とを備えている多重構造液晶光学素子の製造方法が提供される。
【0015】
組立工程の後に、セグメント電極が形成された基板とコモン電極が形成された基板とを所定厚さに薄く加工するため、液晶を封入する際に基板の変形(撓み)を防ぐことができ、均一な光学特性が得られる。また、基板を薄く加工するとき、基板は撓みを生じることがなく、平坦な面に加工することができる。また、複数の液晶素子が薄く加工された後、積層するため、十分な光学的距離を確保し、かつ応答速度を向上することができる。
【0016】
短冊又は単一の液晶素子の側面に導電層を印刷し複数の側面端子部を形成する側面端子部形成工程と、短冊又は単一の液晶素子の表面に導電パターンを印刷し、複数の側面端子部にそれぞれ電気的に接続されておりそれぞれが所定面積を有する複数の表面端子部を形成する表面端子部形成工程とをさらに備えることが好ましい。このように、従来のように片方のガラス基板を長くし電極を引き出す部を形成することが必要なく、接続の信頼性を確保することができると共に、小型化ができ、かつ大量生産が容易にできる。
【0017】
積層工程において、互いに積層されている液晶素子の液晶の配向方向が互いに直交するように配置されることが好ましい。これにより、通過した光を無偏向にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、多重構造液晶光学素子は、複数の液晶素子が薄く加工された後、積層して構成されるため、量産性に優れると共に、十分な光学的距離を確保することができ、かつ応答速度を向上することができる
【0019】
また、多重構造液晶光学素子の側面上にセグメント電極及びコモン電極にそれぞれ接続される複数の電極端子が設けられることで、液晶光学素子の接続の信頼性を確保することができ、かつ液晶光学素子の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る多重構造液晶光学素子の実施形態を、図を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明の第1の実施形態における多重構造液晶光学素子100の構成を示しており、
図2はこの多重構造液晶光学素子100のA−A線断面を示しており、
図3は多重構造液晶光学素子100の電極と電極端子の配置状態を示している。
【0023】
図1〜
図3に示すように、多重構造液晶光学素子100は、液晶40が封入された第1の液晶素子100aと、液晶40が封入された第2の液晶素子100bとを互いに重畳し、接着して一体化することにより、直方体形状を有するように構成されている。この多重構造液晶光学素子100には複数の電極端子91,92,93及び94が形成されている。また、第1の液晶素子100aの液晶の配向方向と、第2の液晶素子100bの液晶の配向方向とは互いに直交するように配置される。
【0024】
第1の液晶素子100a及び第2の液晶素子100bの各々は、第1の基板10と、第2の基板20と、第1の基板10の内側面上に形成された第1の透明電極50と、第2の基板20の内側面上に形成された第2の透明電極60及び第3の透明電極70と、第1の基板10と第2の基板20との間にシール材30を介して封入された液晶40とを備えている。第1の液晶素子100aの第2の基板20の外側面上の中央部に無反射膜21が貼り付けられている。第2の液晶素子100bの第1の基板10の外側面上の中央部に無反射膜11が貼り付けられている。無反射膜11及び21は、例えば、一定の厚みを有し、かつ表面に凹凸を有するものである。
【0025】
なお、
図2及び
図3においては、第1の透明電極50、第2の透明電極60及び第3の透明電極70と液晶40との間に一般的に設けられる配向膜や、第1の基板10と第2の基板20とに設けられる透明絶縁層等は図示を省略している。
【0026】
第1の基板10及び第2の基板20の各々は、透明ガラス基板から構成されている。第1の基板10と第2の基板20との間にシール材30により液晶充填領域が形成されており、この液晶充填領域内に液晶40が封入されている。これら第1の基板10及び第2の基板20は、液晶40が封入された状態で所定厚さ(例えば、50〜100μm)に薄く加工されている。
【0027】
液晶40は、例えば、電圧印加時に、分子の長軸が電界方向に向く誘電率異方性が正のネマチック液晶(Np液晶)である。この例の場合、液晶層の厚さは、10〜30μmである。液晶40を同様の機能を備えた他の液晶材料で構成しても良いことはもちろんである。
【0028】
第1の透明電極50は、コモン電極であり、ITO(酸化インジウム・スズ)材料を用いて第1の基板10の内側面上に形成されている。この第1の透明電極50は、例えば円形に形成され、電極端子91に電気的に接続されている。また、第1の透明電極50の表面には配向膜が形成されている。
【0029】
第2の透明電極60は、セグメント電極であり、ITO材料を用いて第2の基板20の内側面上の中央部に形成されている。この第2の透明電極60は、例えば円形に形成され、かつ電極端子94に電気的に接続されている。この電極端子94を介して独立した制御電圧を印加できるように構成されている。
【0030】
第3の透明電極70は、セグメント電極であり、ITO材料を用いて第2の基板20の内側面上の第2の透明電極60の周辺に形成されている。この第3の透明電極70は、中央部に円形の切欠部を有する形状に形成され、かつ電極端子92に電気的に接続されている。この電極端子92を介して独立した制御電圧を印加できるように構成されている。
【0031】
ヒータ80は、
図3に示すように、第1の基板10の内側面上に第1の透明電極50を囲むように形成されている。このヒータ80は、電極端子93及び91に電気的に接続されている。
【0032】
電極端子91,92,93及び94は、側面端子部91a,92a,93a及び94aと、上面上に形成された表面端子部91b,92b,93b及び94bとから構成されている。側面端子部91a,92a,93a及び94aは、多重構造液晶光学素子100の側面に導電層を印刷することによって形成される。一方、表面端子部91b,92b,93b及び94bは、多重構造液晶光学素子100の上面に側面端子部91a,92a,93a及び94aに対応する位置に導電パターンを印刷することによって形成される。これら電極端子91,92,93及び94は、第1の透明電極50、第2の透明電極60、第3の透明電極70及びヒータ80に電気的に接続されている。従って、これら電極端子91,92,93及び94を介して外部から印加される制御電圧は、第1の透明電極50、第2の透明電極60、第3の透明電極70及びヒータ80にそれぞれ印加される。
【0033】
また、第1の基板10及び第2の基板20の電極が形成される面の対応する各角部に導電パターン91c,92c,93c及び94cが印刷されている。ここで、第1の透明電極50は導電パターン91cと接続されている。第2の透明電極60は導電パターン94cと接続されている。第3の透明電極70は導電パターン92cと接続されている。ヒータ80は導電パターン93cと接続されている。導電パターン91c,92c,93c及び94cを印刷することで、電極と該電極に対応する側面端子部との接触面積が大きくなり、導通の信頼性を確保することができる。また、側面に側面端子部91a,92a,93a及び94aを印刷する際に、印刷される導通材料が内部に進入することを防ぐことができる。
【0034】
以下、多重構造液晶光学素子100の製造方法について説明する。
図4は多重構造液晶光学素子100の製造方法を示すフローチャートである。
図5は液晶素子の基板を薄くする研磨前後の状態を示している。
【0035】
図4に示すように、多重構造液晶光学素子100を製造する際には、まず、第1の液晶素子100a及び第2の液晶素子100bをそれぞれ作製し、そして、この作製した第1の液晶素子100aと第2の液晶素子100bとを積層する。
【0036】
まず、第1の液晶素子形成工程について、
図4のステップS10〜S20を参照して説明する。
【0037】
まず、個々に切断した場合に第2の基板20部分に対応する上側の基板(第1のガラス基板)を所定寸法に加工する(S10)。例えば、厚さ150μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法となるように加工する。このシート状ガラス基板には複数の素子を形成できる。次いで、上側の基板の内側面(液晶を充填する側の面)上にITO膜を積層し、電極を形成する。ここでは、エッチング等によるパターニング処理を行って素子ごとに第2の透明電極60と第3の透明電極70と角部に導電パターン92c及び94cとを形成する(S11)。次いで、この上側の基板のITO膜上に高抵抗膜を積層する(S12)。さらにその上に配向膜を積層し、配向処理を行う(S13)。配向膜は、ポリイミド(PI:polyimide)等の液晶配向膜である。
【0038】
また、個々に切断した場合に第1の基板10部分に対応する下側の基板(第2のガラス基板)を所定寸法に加工する(S14)。例えば、厚さ150μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法となるように加工する。次いで、下側の基板の内側面(液晶を充填する側の面)上にITO膜を積層し、電極を形成する(S15)。ここでは、エッチング等によるパターニング処理を行って素子ごとにコモン電極を形成する。また、コモン電極の周辺にヒータ80を形成する。さらに、導電パターン91c及び93cを形成する。次いで、この下側の基板のITO膜上に配向膜を積層し、配向処理を行う(S16)。ここで、配向膜の配向方向は、上記の第2の基板20側の配向膜の配向方向と同じである。次いで、素子ごとに液晶を封入する液晶充填領域を形成するために、ギャップ材を混入したシール材30をリング状に印刷する(S17)。その後、液晶滴下装置を用いてリング状のシール材30の内側に液晶40を滴下する(S18)。
【0039】
次いで、
図5(a)に示すように、上側の基板と下側の基板とを重畳して、複数の液晶光学素子がマトリクス状に整列した第1の液晶素子群用基板を組み立てる(S19)。次いで、上側及び下側の基板の表面を第1の液晶素子群用基板の厚さが例えば約50μmとなるように研磨する(S20)。即ち、上側及び下側の基板を
図5(a)中の線Cまでに薄くする。研磨方法としては、メカニカル法又はエッチング法を用いる。これにより、
図5(b)に示すような第1の液晶素子100aが複数、マトリクス状に整列した第1の液晶素子群用基板が得られる。
【0040】
次に、第2の液晶素子形成工程について、
図4のステップS21〜S31を参照して説明する。
【0041】
まず、個々に切断した場合に第2の基板20部分に対応する上側の基板(第1のガラス基板)を所定寸法に加工する(S21)。例えば、厚さ150μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法に加工する。このシート状ガラス基板には複数の素子を形成できる。次いで、上側の基板の内側面(液晶を充填する側の面)上にITO膜を積層し、電極を形成する(S22)。ここでは、エッチング等によるパターンニング処理を行って素子ごとに第2の透明電極60と第3の透明電極70と導電パターン92c及び94cとを形成する。次いで、この上側の基板のITO膜上に高抵抗膜を積層する(S23)。さらにその上に配向膜を積層し、配向処理を行う(S24)。配向膜は、ポリイミド(PI:polyimide)等の液晶配向膜である。
【0042】
また、個々に切断した場合に第1の基板10部分に対応する下側の基板(第2のガラス基板)を所定寸法に加工する(S25)。例えば、厚さ150μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法となるように加工する。次いで、下側の基板の内側面(液晶を充填する側の面)上にITO膜を積層し、電極を形成する(S26)。ここでは、エッチング等によるパターンニング処理を行って素子ごとにコモン電極を形成する。また、コモン電極の周辺にヒータ80を形成する。さらに、導電パターン91c及び93cを形成する。次いで、この下側の基板のITO膜上に配向膜を積層し、配向処理を行う(S27)。ここで、配向膜の配向方向は、上記の第2の基板20側の配向膜の配向方向と同じである。次いで、素子ごとに液晶を封入する液晶充填領域を形成するために、ギャップ材を混入したシール材30をリング状に印刷する(S28)。その後、液晶滴下装置を用いてリング状のシール材30の内側に液晶40を滴下する(S29)。
【0043】
次いで、
図5(a)に示すように、上側の基板と下側の基板とを重畳して、複数の液晶光学素子がマトリクス状に整列した第1の液晶素子群用基板を組み立てる(S30)。次いで、上側及び下側の基板の表面を第1の液晶素子群用基板の厚さが例えば約50μmとなるように研磨する(S31)。即ち、上側及び下側の基板を
図5(a)中の線Cまでに薄くする。研磨方法としては、メカニカル法又はエッチング法を用いる。これにより、
図5(b)に示すような第2の液晶素子100bが複数、マトリクス状に整列した第2の液晶素子群用基板が得られる。
【0044】
その後、複数の第1の液晶素子100aがマトリクス状に整列した第1の液晶素子群用基板と、複数の第2の液晶素子100bがマトリクス状に整列した第2の液晶素子群用基板とを積層して接着し、液晶素子群用基板を作製する(S32)。接着は光学接着剤によって行われる。ここで、積層する際に、第1の液晶素子100aと、第2の液晶素子100bとの液晶の配向方向が互いに直交するように配置される。
【0045】
次いで、液晶素子群用基板の表面において各素子の角部に(切断線の交差する位置を中心とする)導電パターンを印刷し、表面端子部91b,92b,93b及び94bを形成する(S33)。次いで、このように形成した複数の液晶素子がマトリクス状に整列した液晶素子群用基板を短冊状に切断し、複数の液晶素子が一列に整列した短冊状基板を作製する(S34)。そして、短冊状基板の側面に導電層を印刷し、側面端子部91a,92a,93a及び94aを形成する(S35)。側面端子部91a,92a,93a及び94aは、基板の表面に印刷された表面端子部91b,92b,93b及び94bに対応する位置に印刷される。
【0046】
このように形成した短冊状基板をスライサー等を用いて切断し、個々の液晶素子、即ち製品サイズに分離する(S36)。最後に、分離された個々の液晶素子に対して、第1の液晶素子100aの第2の基板20の外側面上の中央部に無反射膜21を貼り付け、第2の液晶素子100bの第1の基板10の外側面上の中央部に無反射膜11を貼り付ける(S37)。以上の製造工程によって、
図1に示す多重構造液晶光学素子100が得られる。なお、無反射膜11及び21の貼り付けは、切断分離の前に行ってもよい。
【0047】
このように、本実施形態における多重構造液晶光学素子100は、第1の液晶素子100aと、第2の液晶素子100bとを互いに重畳し、接着して一体化することにより、直方体形状を有するように構成されている。第1の液晶素子100aと、第2の液晶素子100bとは液晶が封入された状態で所定厚さに薄く加工される。
【0048】
これにより、セグメント電極が形成された基板とコモン電極が形成された基板とは、液晶が封入された状態で所定厚さに薄く加工されるため、即ち各液晶素子の組立段階までに比較的に厚いガラス基板を用いるため、液晶を封入する際に基板の変形(撓み)を防ぐことができ、均一な光学特性が得られる。また、基板を薄く加工するとき、基板は撓みを生じることがなく、平坦な面に加工することができるため、大量生産が容易にできる。また、複数の液晶素子が薄く加工された後、積層するため、十分な光学的距離を確保し、かつ応答速度を向上することができる。
【0049】
多重構造液晶光学素子100の側面上に複数の電極端子が設けられるため、従来のように片方のガラス基板を長くし電極を引き出す部を形成することが必要なく、接続の信頼性を確保することができると共に、小型化を図ることができる。
【0050】
互いに積層されている液晶素子の液晶の配向方向は、互いに直交するように配置されているため、通過した光を無偏向にすることができる。
【0051】
また、各液晶素子の組立段階までに比較的に厚いガラス基板を用いるため、液晶を封入する際に基板の変形を防ぐことができ、均一な光学特性が得られる。
【0052】
図6は本発明の第2の実施形態における多重構造液晶光学素子200の構成を示しており、
図7はこの多重構造液晶光学素子200のB−B線断面を示している。
図7において、第2の液晶素子200b、第3の液晶素子200c及び第4の液晶素子200dの各部の符号を省略している。
【0053】
図6及び
図7に示すように、多重構造液晶光学素子200は、第1の液晶素子200a、第2の液晶素子200b、第3の液晶素子200c及び第4の液晶素子200dを積層して一体化することにより、直方体形状を有するように構成されている。第1の液晶素子200aの第2の基板20の外側面上の中央部に無反射膜21が貼り付けられている。第4の液晶素子200dの第1の基板10の外側面上の中央部に無反射膜11が貼り付けられている。各液晶素子は、上述した第1の実施形態の第1の液晶素子100a及び第2の液晶素子100bと同様な構成を有している。ここで、その詳細な説明を省略する。
【0054】
また、多重構造液晶光学素子200の製造方法は、4つの液晶素子を積層する以外に上述した多重構造液晶光学素子100の製造方法と同様である。ここで、その詳細な説明を省略する。
【0055】
このように多重構造液晶光学素子200は、上述した多重構造液晶光学素子100と同様な効果が得られると共に、4つの液晶素子を薄く加工した後に積層して一体化して構成されるため、応答速度を確保すると共に、光学的距離をより長くすることで、液晶レンズとする場合のレンズパワーをより大きくすることができる。
【0056】
なお、上述した実施の形態においては、2つ及び4つの液晶素子を積層してなる多重構造液晶光学素子について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
また、上述した実施の形態において、多重構造液晶光学素子100及び200の各液晶素子は、ヒータ80を設けたものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。温度制御の必要性によって、ヒータ80を設けなくてもよい。
【0058】
また、上述した多重構造液晶光学素子100及び200において、互いに積層されている液晶素子の液晶の配向方向は、互いに直交するように配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
また、上述した多重構造液晶光学素子100及び200において、液晶素子100a,100b,200a,200b,200c及び200dは、それぞれ一層の液晶層を有するものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの液晶層は、透明な絶縁板等により複数層に分割されるようにしてもよい。これにより、液晶の充填量及び十分な光学的距離を確保することができる。