(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5647975
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】ロータまたはステータ要素を取り付けるための環状フランジ
(51)【国際特許分類】
F01D 5/06 20060101AFI20141211BHJP
F01D 9/04 20060101ALI20141211BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
F01D5/06
F01D9/04
F01D25/00 X
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-511048(P2011-511048)
(86)(22)【出願日】2009年4月27日
(65)【公表番号】特表2011-522154(P2011-522154A)
(43)【公表日】2011年7月28日
(86)【国際出願番号】FR2009000491
(87)【国際公開番号】WO2009144409
(87)【国際公開日】20091203
【審査請求日】2012年3月29日
(31)【優先権主張番号】08/02918
(32)【優先日】2008年5月29日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルモント,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】ジラン,グレゴリー・ニコラ・ジエラルド
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0059164(US,A1)
【文献】
特開2005−299650(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第03532929(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00−15/12,23/00−25/36
F02C 1/00− 9/58
F23R 3/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つすなわち第1および第2の半径方向環状フランジを含み、少なくとも第1のフランジが、内側/外側周辺部に、交互する中実部分(48)および中空部分(44)を有し、第1のフランジおよび第2のフランジの中実部分(48)が、第1および第2のフランジを一緒に固締するためのボルトを通過させるオリフィス(52)を含んでいる、ターボ機械の複数のロータ要素または複数のステータ要素からなる組立体であって、
少なくとも前記第1のフランジが、前記中実部分を通して締結ボルトを通過させることを阻み、したがって第1のフランジが正確な角度位置で第2のフランジに固締されることを確実にするように、中実部分(48)を通してボルトを通過させるためのオリフィス(52)に対して外側/内側で接する円(56、62)の半径よりも小さい/大きい、ターボ機械の軸(10)に対する半径を有する、内側/外側周辺部の単一の中空部分(44)の底部(54、60)によって構成される角度誤り防止手段を含んでおり、
組立体がさらに、回転バランスのためのビードを有し、ビードが、中空部分(44)の前記底部(54、60)によって生じるアンバランスを補償するように機械加工可能であることを特徴とする、組立体。
【請求項2】
より小さい/より大きい半径の底部(54、60)が、2つの中実部分(48)の間を全区間にわたって延在することを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記単一の中空部分の底部(54、60)の半径が、中実部分(48)のオリフィス(52)の内側に接する円(58、62)の半径と、中実部分(48)のオリフィス(52)の外側に接する円(56、64)の半径との間にあることを特徴とする、請求項1または2に記載の組立体。
【請求項4】
前記単一の中空部分(44)の底部(54、60)の半径が、中実部分(48)のオリフィス(52)の外側/内側に接する円(56、62)の半径よりも約10%小さい/大きいことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項5】
第2のフランジおよび第1のフランジと共に締め付けられる第3の環状フランジを含み、該第3の環状フランジが、前記第1、第2および第3のフランジを固締するための締結ボルトを通過させるオリフィスを備えることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のロータ要素またはステータ要素の組立体を含むことを特徴とする、ターボジェットまたはターボプロップなどのターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータまたはステータ要素を一緒に固締するための環状フランジ、およびこのようなフランジの組立体を含むターボ機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械では、ロータディスク(例えば、タービンの)は、それらの半径方向内側周辺部に環状フランジによって一緒に連結され、これらのフランジは、互いに押し付けられ、ボルトで一緒に固締される。
【0003】
また、アブレイダブル材料の環状軌道のための支持体などの他の要素は、それらの内側周辺部に環状フランジを有することができ、フランジは、ロータディスクの2つの環状フランジの間に締め付けられ、ロータディスクに使用されるのと同じボルトを用いて固締される。
【0004】
これらの環状フランジは一般に花綱状に繋がれ、すなわち、これらは、重量を低減するために交互する中実部分および中空部分を備えている。締結ボルトを固締するための孔が、中実部分を通して形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フランジが、ボルトによって他のフランジにもはや固締されないことになるような環境下で、しかしながら2つの他のフランジの間に単に締め付けられるということによって、運転時にこれが離脱することもあり、その結果深刻な影響が生じるので、複数の互いに積み重ねられたフランジを一緒に組み立てるために、いずれのフランジも、他のフランジの中実部分を通して形成されるボルト用の貫通孔と位置合わせするように角度的にオフセットされた中空部分を有さないことを確実にするために、フランジの中実部分に形成される貫通孔は、位置合わせすることが必要である。
【0006】
本発明の特定の目的は、簡単で、効果的で、かつ経済的な方法でこれらの欠点を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、内側または外側周辺部に、交互する中実部分および中空部分を有し、中実部分が締結ボルトを通過させるためのオリフィスを含む、ロータ要素またはステータ要素の半径方向環状フランジであって、前記中実部分を通して締結ボルトを通過させることを阻み、したがってフランジが正確な角度位置にもう1つのフランジに固締されることを確実にするように、中実部分を通してボルトを通過させるためのオリフィスの外側/内側に接する円の半径よりも小さい/大きい、ターボ機械の軸に対する半径を有する、内側/外側周辺部の少なくとも1つの中空部分の底部によって構成される角度誤り防止手段を含むことを特徴とするフランジを提供する。
【0008】
本発明によれば、オリフィスがもはや他のフランジのオリフィスと位置合わせされていないような方法でフランジが角度的にオフセットされる場合に、誤り防止手段は、前記フランジの中空部分のうちの少なくとも1つの底部が少なくとも1つの締結ボルトの通路に置かれていることを確実にし、締結ボルトが他のフランジのオリフィスを通して挿入されることを防止し、それによって、フランジが不正確に取り付けられるといういかなる危険も回避する。
【0009】
本発明のもう1つの特徴によれば、より小さい/より大きい半径の前記底部は、2つの中実部分の間を全区間にわたって延在する。
【0010】
フランジの少なくとも1つの中空部分の半径を改変することによって生じる重量の増加を制限するためには、少なくとも1つの中空部分の底部の半径が、中実部分のオリフィスの内側に接する円の半径と、中実部分のオリフィスの外側に接する円の半径との間にあれば十分である。
【0011】
少なくとも1つの中空部分の底部の半径は、中実部分のオリフィスの外側/内側に接する円の半径よりも約10%小さい/大きいことが有利である。
【0012】
本発明の特定の実施形態では、フランジは、上で説明されたように決められた半径を有する中空部分のただ1つの底部を有し、前記中空部分の底部によって生じるアンバランスは、フランジに形成される回転バランスビードを機械加工することによって補償される。
【0013】
本発明の変形例では、フランジは、上で説明されたように決められた半径の複数の中空部分の底部を有し、これらの底部は、フランジの内周または外周の周りに規則正しく分布され、それによって、いかなる回転のアンバランスも生じず、バランスビードを使用する必要はない。
【0014】
また、本発明は、他の環状フランジのオリフィスを通してかつ前記環状フランジの中実部分のオリフィスを通して延在するボルトによって、他の環状フランジに固締される、上に記述したタイプの少なくとも1つの環状フランジを含み、より小さい/より大きい半径の前記底部が、前記環状フランジの2つの中実部分の間に、かつ他の環状フランジのうちの少なくとも1つに属する2つの中実部分の間に延在することを特徴とする、ターボ機械のロータまたはステータ要素の組立体を提供する。
【0015】
本発明はまた、上で説明されたようなロータまたはステータ要素の組立体を含むことを特徴とする、ターボジェットまたはターボプロップなどのターボ機械を提供する。
【0016】
非限定的な例示としてかつ添付の図面を参照して行われる次の説明を読むと、本発明はよりよく理解されることができ、本発明の他の詳細、利点、および特徴が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】低圧タービンの軸方向断面の一部の概略半断面図である。
【
図2】
図1の破線によって画定された区域の拡大した概略斜視図であり、環状フランジが2つの他の環状フランジの間に正確に固締されている図である。
【
図3】環状フランジが2つの他の環状フランジの間に角度的にオフセットされている、
図2と同一の概略斜視図である。
【
図4】正確な角度位置決めを示している、本発明の半径方向環状フランジの一部の概略正面図である。
【
図5】不正確な角度位置決めを示している、本発明の半径方向環状フランジの一部の概略正面図である。
【
図6】本発明の半径方向環状フランジのもう1つの実施形態についての概略の部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
初めに、
図1が参照される。
図1は、外側ケーシング16に収容される、交互するロータブレード12およびステータベーン14を備える、軸10からなる低圧タービンロータを示している。ロータブレード12の半径方向内側端部は、ロータディスク18、20、22、24の外側周辺部に固締される。各ディスク18、20、22、24は、半径方向内側に延在しかつボルト33により互いに対して固締される環状フランジ30、32によって他のディスクに連結するために、外側周辺部に上流および下流の円錐台壁26および28を有する。ディスクの組は、ディスク20および22の環状フランジ30、32の間に締め付けられる環状フランジ38を有する駆動コーン36を介してタービンシャフト34に連結される。
【0019】
ステータベーン14の列の内側周辺部と、ディスクの下流および上流の円錐台壁28および26との間の所望されていない空気流を回避するために、外側周辺部にラビリンスシール40を担持する半径方向環状フランジ38が、ディスクの下流および上流の円錐台壁28および26の半径方向フランジ30、32の間に挿入され、ラビリンスシール40は、ステータベーン14の列の内側周辺部に取り付けられるアブレイダブル材料の軌道42と協働する。
【0020】
図2に示されるように、上流および下流の円錐台壁26および28の半径方向環状フランジ30、32、ならびにラビリンスシール40の半径方向フランジ38は、花綱状に繋がれ、交互する中空部分44および中実部分46、48、および50をそれぞれ備え、締結ボルトを受け入れるためのオリフィス52を含む中実部分46、48、および50は、上流および下流の円錐台壁26および28の環状フランジが、ラビリンスシール40の環状フランジ38と一緒に固定されることを可能にする。
【0021】
それにもかかわらず、ラビリンスシール40の環状フランジ38が上流および下流の円錐台壁26および28の環状フランジの間に置かれるときに、環状フランジ38の角度的なオフセットが存在する場合があり、上流および下流の円錐台壁26および28の環状フランジ30、32の中実部分46、50が軸方向に位置合わせされることになり、同時にラビリンスシール40の環状フランジ38の中実部分48が、上流および下流の円錐台壁26および28の環状フランジ30、32の中空部分44と軸方向に位置合わせされる(
図3)。このような位置決めによって、上流および下流の円錐台壁26および28のフランジ30、32のオリフィス52に挿入される締結ボルトは、ラビリンスシール40のフランジ38のオリフィス52を通して挿入されないことになる。したがって、ラビリンスシール40のフランジ38は、円錐台壁26、28のフランジ30、32の間に締め付けられることによってだけ所定の位置に保持され、これは、締結ボルトによって保持されていない。
【0022】
本発明によれば、
図4に示されるように、上で述べられたようなこれらに欠点は、フランジが、他のフランジと共にこれを組み立てる際に使用する角度誤り防止手段を有するということによって回避され、これらの誤り防止手段は、ラビリンスシール40のフランジ38の少なくとも1つの中空部分44の底部54によって構成され、底部54は、中実部分48のオリフィス52の外側に接する円56の半径よりも小さい、ターボ機械の軸10に対する半径を有する。
【0023】
中空部分44がフランジ30、32の中実部分46、50と軸方向に位置合わせされるような角度的なオフセットを有する環状フランジ30、32の間に、ラビリンスシール40の環状フランジ38を組み立てる間中、上流および下流の円錐台壁26および28のフランジ30、32の中実部分46、50のオリフィス52に締結ボルトを挿入することは、少なくとも1つの中空部分44の底部54がボルトの通路に置かれるので不可能にされる(
図5)。したがって、本発明によって決められるような半径の単一の中空部分44は、正確な組立てを保証するのに十分である。
【0024】
少なくとも1つの中空部分44の底部の半径は、中実部分48のオリフィス52の外側に接する円56の半径と、同じオリフィスの内側に接する円58の半径との間にあることが好ましい(
図4)。すなわち、少なくとも1つの中空部分44の底部が、ラビリンスシール40の半径方向フランジ38の不正確な組立てを防止するようにこれらの2つの円の間にあれば、十分である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの中空部分44の底部の半径は、中実部分のオリフィスの外側に接する円の半径よりも約10%小さく、すなわち、フランジの製造公差、およびフランジの中実部分に対して位置を合わせて配置されているオリフィスの影響を補償するのに十分であり、したがって、角度誤り防止が実現されることを常に確実にしている。
【0026】
図6に示される本発明の変形例では、フランジの花綱は、それらの外側周辺部に形成される。このような環境下では、フランジの少なくとも1つの中空部分44の底部60は、中実部分48を通してボルトを通過させるためのオリフィス52の内側に接する円62の半径よりも大きい半径を有する。
【0027】
花綱がフランジ38の内側周辺部に形成される場合と同様な方法で、少なくとも1つの中空部分44の底部60の半径は、中実部分48のオリフィス52の内側に接する円62の半径と、同じオリフィスの外側に接する円64の半径との間にあることが好ましい(
図6)。
【0028】
少なくとも1つの中空部分44の底部60の半径は、中実部分48のオリフィス52の内側に接する円62の半径よりも約10%大きいことが有利である。
【0029】
環状フランジ38が上で説明されたように決められた半径を有する中空部分44のただ1つの底部54、60を有する実施形態では、中空部分44のただ1つの底部54、60によって回転時に生じるアンバランスが機械加工で補償され得るように、フランジ38の周りにバランスビードが作られる。
【0030】
環状フランジ38は、上で説明されたように決められたような半径を有し、かつ花綱がフランジの内側にまたは外側に半径方向に置かれるかどうかに応じてフランジの内側または外側周辺部の周りに角度的に分布される、複数の中空部分44を有することができる。このような環境下では、本発明によって規定されるような半径を有する中空部分44の底部54、60の規則的な分布がアンバランスを発生させないので、バランスビードを設ける必要は全くない。
【0031】
また、本発明は、3つを超えるフランジの組立てにも適用することができる。より一般的には、
n個のロータまたはステータ要素の正確な組立てを保証するために、これらの要素のうちのn−1個がそれぞれ、上で説明されたように決められた半径を有する中空部分のすくなくとも1つの底部54、60を有する半径方向フランジを有すれば、十分である。上で説明されたような半径の中空部分44の底部54、60を作ることは、フランジ38において中空部分44が機械加工される深さを減少させれば十分であるので、簡単である。さらに、底部54、60は、フランジを位置決めするための角度インデックスマークとして役立つことができる。
【0032】
本発明は、花綱状に繋がれる環状フランジがボルトによって一緒に、特にターボ機械に固締されるときは必ず適用できる。