特許第5647979号(P5647979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5647979つや消し金属層の堆積のための電解質および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5647979
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】つや消し金属層の堆積のための電解質および方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/12 20060101AFI20141211BHJP
   C25D 3/56 20060101ALI20141211BHJP
   C25D 3/02 20060101ALI20141211BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   C25D3/12
   C25D3/56 C
   C25D3/02
   C25D7/00 P
【請求項の数】26
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-517566(P2011-517566)
(86)(22)【出願日】2009年7月8日
(65)【公表番号】特表2011-527730(P2011-527730A)
(43)【公表日】2011年11月4日
(86)【国際出願番号】US2009049932
(87)【国際公開番号】WO2010006045
(87)【国際公開日】20100114
【審査請求日】2012年7月4日
(31)【優先権主張番号】08012262.5
(32)【優先日】2008年7月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501407311
【氏名又は名称】エンソン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101421
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】ケーニヒスホーフェン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】エルビック,ダニーカ
(72)【発明者】
【氏名】スターク,ヘルムート
【審査官】 向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/076898(WO,A1)
【文献】 特開平07−197289(JP,A)
【文献】 特開平03−020492(JP,A)
【文献】 特開2005−120425(JP,A)
【文献】 特開2001−026898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/00〜 3/66
C25D 5/00〜 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に金属あるいは合金のつや消し層の堆積のための電解質組成物であって次ぎを含む:
次ぎの金属の何れか、あるいは次ぎの1またはそれ以上の金属の合金を堆積するためのV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Re、Pt、Au、Tl、Bi、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる堆積金属イオン前記堆積金属の濃度は10g/L〜80g/Lであり;
ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素からなる群の元素の少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩
ここで少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩の何れかのナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/あるいはホウ素が堆積金属イオンの濃度の10質量%と100質量%の間の範囲内の濃度である;および
非置換ポリアルキレンオキシド、置換ポリアルキレンオキシド、置換あるいは非置換ポリアルキレンオキシドの誘導体、フッ素化湿潤剤、パーフッ素化湿潤剤、第4級アミン、あるいはポリアルキレンオキシドで置換された第4級アミンからなる群から選ばれる1つあるいはそれ以上の分散形成剤。
【請求項2】
基板表面に金属あるいは合金のつや消し層の堆積のための電解質組成物であって次ぎを含む:
次ぎの金属の何れか、あるいは次ぎの1またはそれ以上の金属の合金を堆積するためのV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Re、Pt、Au、Tl、Bi、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる堆積金属イオンで;前記堆積金属の濃度は10g/L〜80g/Lであり;
ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素からなる群の元素の少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩;
ここで少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/あるいはホウ素が堆積金属イオンの濃度の10質量%と100質量%の間の範囲内の濃度である;および
非置換ポリアルキレンオキシド、置換ポリアルキレンオキシド、置換あるいは非置換ポリアルキレンオキシドの誘導体、フッ素化湿潤剤、パーフッ素化湿潤剤、第4級アミン、あるいはポリアルキレンオキシドで置換された第4級アミンからなる群から選ばれる1つあるいはそれ以上の分散形成剤;さらに、
アルキル硫酸、スルホコハク酸、およびベタインからなる群から選ばれる少なくとも1つの界面活性湿潤剤を0.1〜10モル/Lの範囲の濃度である。
【請求項3】
堆積金属イオンがFe、Co、Ni、Zn、Cu、Sn、Ag、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項2の電解質組成物。
【請求項4】
堆積金属イオンがFe、Co、Ni、Cu、Sn、Ag、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項1または2の電解質組成物。
【請求項5】
ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素からなる群の元素の少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩あるいはスルホン酸塩が、メタンスルホン酸ナトリウムおよびその水和物、メタンスルホン酸カリウムおよびその水和物、メタンスルホン酸マグネシウムおよびその水和物、硫酸アルミニウムおよびその水和物、あるいは4フッ素化ホウ素からなる群から選ばれる1つあるいはそれ以上である請求項1または2に従う電解質組成物。
【請求項6】
ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素からなる群の元素の少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩あるいはスルホン酸塩が硫酸アルミニウムおよびその水和物、硫酸ナトリウムおよびその水和物、および硫酸マグネシウムおよびその水和物、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群から選ばれる1つあるいはそれ以上である請求項1または2に従う電解質組成物。
【請求項7】
前記ハロゲン化物、硫酸塩、またはスルホン酸塩が、硫酸ナトリウム、および/または硫酸マグネシウムからなる請求項1または2の電解質組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/またはホウ素の濃度が、堆積金属イオンの濃度に対して20質量%〜60質量%の範囲内の濃度である、請求項1また2の電解質組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/またはホウ素が、堆積金属イオンの質量を1とした場合のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/またはホウ素の質量が、少なくとも0.2になるように存在する、請求項1また2の電解質組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/またはホウ素が、堆積金属イオンの質量を1とした場合のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/またはホウ素の質量比が、少なくとも0.4になるように存在する、請求項1また2の電解質組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/またはホウ素が、堆積金属イオンの質量を1とした場合のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/またはホウ素の質量比が、少なくとも0.6になるように存在する、請求項1また2の電解質組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/またはホウ素が、堆積金属イオンの質量を1とした場合のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/またはホウ素の質量比が、少なくとも0.8になるように存在する、請求項1また2の電解質組成物。
【請求項13】
前記堆積金属イオンがニッケルイオンを含み、少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウムおよび/またはホウ素は、ニッケルイオンの質量を1とした場合のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウムおよび/またはホウ素の質量比が少なくとも0.4であるような濃度で存在する請求項1から請求項12のいずれか1項に従う電解質組成物。
【請求項14】
前記堆積金属イオンがコバルトイオンおよびスズイオンを含み、少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウムおよび/またはホウ素は、コバルトイオンおよびスズイオンの合計の質量を1とした場合のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウムおよび/またはホウ素の質量比が少なくとも04であるような濃度で存在する請求項1〜12のいずれか1項に従う電解質組成物。
【請求項15】
アルキル硫酸塩、スルホコハク酸、およびベタインからなる群からから選ばれる界面活性湿潤剤をさらに含む請求項1に従う電解質組成物。
【請求項16】
前記界面活性湿潤剤の濃度が、0.01モル/L〜10モル/Lである、請求項15の電解質組成物。
【請求項17】
前記界面活性湿潤剤の濃度が、0.1モル/L〜10モル/Lである、請求項15の電解質組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素イオンの堆積金属イオンに対する濃度が、少なくとも10g/L;
前記分散形成剤が、非置換ポリアルキレンオキシド、置換ポリアルキレンオキシド、置換あるいは非置換ポリアルキレンオキシドの誘導体、フッ素化湿潤剤、パーフッ素化湿潤剤、第4級アミン、あるいはポリアルキレンオキシドで置換された第4級アミンからなる群から選ばれ、その濃度が0.1mg/L〜10g/L;
前期界面活性湿潤剤の濃度が、0.01モル/L〜100モル/Lである請求項2〜15の何れかの電解質組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素イオンの堆積金属イオンに対する濃度が、少なくとも10g/L;
前記分散形成剤が、第四級アミンまたはポリアルキレンオキサイドで置換された四級アミンで、その濃度が、0.1mg/L〜1g/L;および
前記界面活性湿潤剤の濃度が、0.01モル/L〜100モル/Lである、請求項2または15による電解質組成物。
【請求項20】
基板の表面につや消し層を堆積するための方法であって、前記方法が以下のステップを含む:
以下からなる電解質めっき組成物に基板の表面を曝露するステップ;
次ぎの金属あるいは合金を堆積するためのV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Re、Pt、Au、Tl、Bi、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる堆積金属イオン;
ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素からなる群の元素の少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩;
ここで、前記少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、および/またはホウ素は、堆積金属イオン中に、10質量%〜100質量%の範囲内で存在し;および
非置換ポリアルキレンオキシド、置換ポリアルキレンオキシド、置換あるいは非置換ポリアルキレンオキシドの誘導体、フッ素化湿潤剤、パーフッ素化湿潤剤、第4級アミン、あるいはポリアルキレンオキシドで置換された第4級アミンからなる群から選ばれる1つあるいはそれ以上の分散形成剤;および
基板および陽極間に電流を流し、基板の表面につや消し層を堆積するステップ。
【請求項21】
前記電解質組成物が、請求項1〜19の何れかである請求項20に従う方法。
【請求項22】
前記つや消し層がニッケル層である請求項20に従う方法であって、前記方法が以下のステップを含む:
基板の表面を少なくとも10g/Lのニッケルイオンおよびナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、ホウ素、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる補助金属イオンを含む電解質ニッケルめっき組成物に曝露するステップ;
ここでニッケル金属イオンの質量を1とした場合の補助金属イオンの質量比が少なくとも08である;および
基板および陽極間に電流を流し、基板の表面につや消しニッケル層を堆積するステップ。
【請求項23】
ニッケルイオンの質量を1とした場合の補助金属イオンの前記質量比が少なくとも1である請求項22の方法。
【請求項24】
前記つや消し層がコバルト−スズ合金層である請求項20に従う方法であって、方法が以下のステップからなる:
基板の表面を少なくとも10g/Lのコバルトイオン、少なくとも約10g/Lのスズイオンおよびナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、ホウ素、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる補助金属イオンを含む電解質コバルト−スズ合金めっき組成物に曝露するステップ;
ここでコバルト金属イオンおよびスズ金属イオンの合計に対する前記補助金属イオンの質量比が少なくとも0.2:1である;および
基板および陽極間に電流を流し、基板の表面につや消しコバルト−スズ合金層を堆積するステップ。
【請求項25】
前記コバルト金属イオンおよびスズ金属イオンの合計に対する補助金属イオンの質量比が、少なくとも0.4:1である、請求項24の方法。
【請求項26】
前記コバルト金属イオンおよびスズ金属イオンの合計に対する補助金属イオンの質量比が、少なくとも0.6:1である、請求項24の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板表面につや消し金属層の堆積のための電解質および方法に関する。特に、本発明は低濃度の堆積金属を有する電解質そしてこのような電解質を使用することによってつや消し金属層を堆積するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、基板表面に金属層を堆積するとき平坦でそして光沢のある金属層を得ることが意図することである。堆積される金属層は性質が後の提案に対して基板表面を最適にできる機能的性質を有するかあるいは装飾的効果が取得されるべきである。基板の意図される使用に従って、時には、基板表面に光沢のないつや消しあるいはいわゆる真珠光沢金属層を有することが望まれる。一面では、この意図は堆積物の光学的外観に基づかれ得て、他面では、つや消しあるいはいわゆる真珠光沢堆積物は例えばまぶしく光らないような特別の技術的性質を有し、その性質は技術的あるいは装飾的使用に望ましい。このようなつや消しあるいは真珠光沢金属層に対する応用分野は、例えば、宝石工業、家具類工業、自動車工業、同様に光学あるいは精密機械工業である。特にこれらの分野ではまぶしく光らない層が望まれる。宝石工業の分野では非アレルギー性あるいはアレルギー性金属のつや消しあるいは真珠光沢金属層の堆積が望まれる。同じことが台所機械類および台所用具類の分野のつや消しあるいは真珠光沢金属層に対しても真実である。
【0003】
光学あるいは精密機械工業の分野において、つや消しあるいは真珠光沢金属層の堆積は異なる金属で生じる異なる特徴により関心があり、かくして基板表面は後の技術的使用に適合され得る。この関係で、例えば、基板表面の延性、硬度、腐食耐性、あるいは同程度の機械的性質が最適化される。
【0004】
国際特許申請WO2007/076898はつや消し金属層の堆積のための電解質はもちろんのこと方法を開示しており、特につや消し金属層は金属バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、レニウム、白金、金、タリウム、ビスマス、あるいはこれらの合金である。基板表面へのこれらの金属の堆積に対して、WO2007/076898に従って、これが参照として組み入れられ、乳濁および/あるいは分散が乳濁剤および/あるいは分散剤、あるいは湿潤剤の添加によって電解質に形成される。
【0005】
先行技術として知られる方法と同様に電解質の欠点は時には基板表面に平坦な堆積物を与えることがときには困難であることである。かくして、先行技術として知られる方法と同様に電解質を最適化することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0006】
短的には、それ故、1つの観点で本発明は基板表面に金属あるいは合金のつや消し層の堆積のための電解質組成物を目指され、組成物は次ぎの金属あるいは合金を堆積するためのV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Re、Pt、Au、Tl、Bi、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる堆積金属イオン;ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素からなる群の元素の少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩;および非置換ポリアルキレンオキシド、置換ポリアルキレンオキシド、置換あるいは非置換ポリアルキレンオキシドの誘導体、フッ素化湿潤剤、パーフッ素化湿潤剤、第4級アミン、あるいはポリアルキレンオキシドで置換される第4級アミンからなる群から選ばれる1つあるいはそれ以上の分散形成剤を含む。
【0007】
他の観点で、本発明は基板表面に金属あるいは合金のつや消し層の堆積のため電解質組成物を目指され、組成物は次ぎの金属あるいは合金を堆積するためのV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Re、Pt、Au、Tl、Bi、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる堆積金属イオン;ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素からなる群の元素の少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩;非置換ポリアルキレンオキシド、置換ポリアルキレンオキシド、置換あるいは非置換ポリアルキレンオキシドの誘導体、フッ素化湿潤剤、パーフッ素化湿潤剤、第4級アミン、あるいはポリアルキレンオキシドで置換される第4級アミンからなる群から選ばれる1つあるいはそれ以上の分散形成剤;アルキル硫酸塩、スルホコハク酸、およびベタインを含む群から選ばれる表面活性湿潤剤を含む。
【0008】
本発明は基板の表面につや消し層を堆積するための方法をまた目指され、方法は上の記載に従う電解質めっき組成物に基板の表面を曝露し;基板の表面につや消し金属を堆積するために基板および陽極の間に電流を流すことからなる。
【0009】
本発明の他の観点は基板の表面につや消しニッケル層を堆積するためのさらなる特定の方法をまた目指され、方法は基板の表面を少なくとも約10g/Lニッケルイオンおよびナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、ホウ素、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる補助金属イオンを含む電解質ニッケルめっき組成物に曝露し、ここでニッケル金属イオンに対する補助金属イオンの質量比が少なくとも約0.8:1であり;そして基板の表面につや消しニッケル金属を堆積するために基板および陽極の間に電流を流すことを含む。
【0010】
他の実施態様において本発明は基板の表面につや消しニッケル層を堆積するための方法を目指され、方法は基板の表面を少なくとも約40g/Lニッケルイオンおよびナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、ホウ素、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる補助金属イオンを含む電解質ニッケルめっき組成物に曝露し、ここでニッケル金属イオンに対する補助金属イオンの質量比が少なくとも約0.2:1であり;そして基板の表面につや消しニッケル金属を堆積するために基板および陽極の間に電流を流すことを含む。
【0011】
本発明は基板の表面につや消しコバルト−スズ合金層を堆積するための方法をさらに目指され、方法は基板の表面を少なくとも約10g/Lコバルトイオン、少なくとも約10g/Lのスズイオン、およびナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、ホウ素、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる補助金属イオンを含む電解質コバルト−スズ合金めっき組成物に曝露し、ここでコバルト金属イオンおよびスズ金属イオンの合計に対する補助金属イオンの質量比が少なくとも約0.2:1であり;基板の表面につや消しコバルト−スズ合金属を堆積するために基板および陽極の間に電流を流すことを含む。
【0012】
他の目的および特徴は以下に部分的に明らかでありそして部分的に指摘される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この出願は2008年7月8日提出の欧州出願08012262.5に優先権を請求し、この全開示が参照によって組み込まれる。
【0014】
本発明は基板表面にV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Re、Pt、Au、Tl、Bi、あるいはいずれかのこれらの金属の合金からなる群から選ばれる金属のつや消し金属層の堆積のための電解質を目指される。それ故、本発明の電解質はバナジウムイオン、クロムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、銀イオン、インジウムイオン、スズイオン、アンチモンイオン、テルルイオン、レニウムイオン、白金イオン、金イオン、タリウムイオン、ビスマスイオン、あるいはこれらのイオンのいずれかの組み合わせからなる群から選ばれるめっき金属イオンの源を含む。
【0015】
ある実施態様において、めっき金属イオンの源はバナジウムイオン、クロムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、銀イオン、インジウムイオン、スズイオン、アンチモンイオン、テルルイオン、レニウムイオン、白金イオン、金イオン、タリウムイオン、ビスマスイオン、あるいはこれらのイオンのいずれかの組み合わせからなる群から選ばれる。電解質はそれ故基板表面にV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Re、Pt、Au、Tl、Bi、あるいはいずれかのこれらの金属の合金からなる群から選ばれる金属のつや消し金属層を堆積するため適している。
【0016】
ある実施態様において、めっき金属イオンの源は鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、スズイオン、銀イオン、およびこれらのイオンのいずれかの組み合わせからなる群から選ばれる。電解質はそれ故基板表面にFe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Agあるいはいずれかのこれらの金属の合金からなる群から選ばれる金属のつや消し金属層を堆積するため適している。確かな実施態様において、めっき金属イオンの源は鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、スズイオン、銀イオン、およびこれらのイオンのいずれかの組み合わせからなる群から選ばれる。電解質はそれ故基板表面にFe、Co、Ni、Cu、Sn、Agあるいはいずれかのこれらの金属の合金からなる群から選ばれる金属のつや消し金属層を堆積するため適している。
【0017】
前記の実施態様のいずれかにおいて、“合金”は3つの別個の実施態様を包含しており、すなわち1つあるいはそれ以上の他の記載の金属と合金化される1つの記載の金属;1つあるいはそれ以上の記載のない金属と合金化される1つの記載の金属;および1つあるいはそれ以上の他の記載の金属および1つあるいはそれ以上の記載のない金属と合金化される1つの記載の金属を包含する。従って、金属イオンに関して、ある実施態様において、組成物は単に1つあるいはそれ以上の記載のイオンを含み;そして他の実施態様において記載のないイオンとの組み合わせを任意に含む。すなわち、ある実施態様は記載されない他の金属イオンを特に除外し、そしてある実施態様は記載されない他の金属イオンを除外しない。
【0018】
本発明の電解質は電解質が従来のつや消し層めっき電解質と比較して比較的低濃度のめっき金属イオンを含むことに特徴づけられる。電解質に関して全てが同等であれば、低濃度めっき金属イオンを有することは低密度を有する電解質に結果としてなる。一般的に言えば、このような低密度組成物はつや消しあるいは真珠光沢金属層を信頼して堆積することが不可能になる傾向がある。むしろ、層は光沢があるあるいは半光沢になる傾向がある。本発明の電解質はそれ故ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素を含む群から選ばれる元素の少なくとも1つのハロゲン化物、硫酸塩あるいはスルホン酸塩をさらに含む。ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素のハロゲン化物、硫酸塩あるいはスルホン酸塩を添加することによって、電解質の密度は非常に高濃度のめっき金属イオンを含む従来の電解質の密度かあるいは密度に近く設定される。
【0019】
ある実施態様において、めっき金属イオンの代わりに部分的に採用され(従来のつや消し電解質と比較して)そして高めっき金属イオン濃度を含む従来の電解質の密度にあるいは密度近くに維持する添加剤はナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素の間から選ばれる。これらは、これらが採用されないよりも電解質内にこれらを組み込むことがより大きい密度の結果となる密度増大化合物としてここに参照される。ある実施態様において、硫酸ナトリウムおよびその水和物が望まれる。ある実施態様においては、硫酸マグネシウムおよびその水和物が望まれる。ある実施態様において、4フッ素化ホウ素が使用される。ある実施態様において、硫酸アルミニウムおよびその水和物そして4フッ素化ホウ素の組み合わせが使用される。
【0020】
望ましい実施態様において、本発明の電解質の密度増加化合物は硫酸ナトリウムおよびその水和物、硫酸マグネシウムおよびその水和物、硫酸アルミニウムおよびその水和物、あるいはこれらの3つの塩の組み合わせである。
【0021】
驚いたことに、重陽イオンの溶解性化合物、特にハアルカリ金属ロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、硫酸アルカリ金属あるいは硫酸アルカリ土類金属、あるいはアルカリ金属スルホン酸塩あるいはアルカリ土類金属スルホン酸塩、同様に硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、4フッ素化ホウ素、単独あるいは組み合わせの溶解性化合物の添加が、比較的低濃度めっき金属イオンを有する電解質からつや消しあるいは真珠光沢金属層のめっきを特に可能とすることによって、従来技術として知られている欠点に打ち勝つことができることが発見された。
【0022】
本発明に従って、電解質は前記塩の陽イオンが10質量%から100質量%の堆積される金属の濃度の範囲で本発明の電解質に存在するような濃度で本発明の電解質の密度を維持する塩を含む。望ましくは、塩は前記塩の陽イオンが堆積される金属の濃度の20質量%と60質量%の間の範囲で存在するような濃度で本発明の電解質に添加される。
【0023】
通常、補助金属イオンの塩の濃度は補助金属イオンがめっき金属イオンに対する補助金属イオンの質量比で少なくとも約0.2:1、少なくとも約0.4:1、少なくとも約0.6:1、あるいは少なくとも0.8:1でさえ存在することである。ある実施態様において、補助金属イオンはめっき金属イオンに対する補助金属イオンの質量比で約0.10:1と1:1の間、望ましくは約0.2:1と0.6:1の間のような約0.10:1と1.3:1の間で存在する。“補助金属”についていえば、それはナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素のようなイオンの型を意味され、イオンは微量、すなわち1原子%未満、0.5原子%未満、望ましくは0.1原子%未満よりもいかにも多くても還元されずあるいは実質的に金属に還元されず、そしてかくして基板のつや消しあるいは真珠光沢金属層中に取り込まれない。補助金属イオンは高濃度のめっき金属イオンを通常含む従来の電解質に比較される溶液の密度を実質的に維持するために本発明の電解質に組み込まれ、めっき金属イオンの比較的低濃度を有するつや消しあるいは真珠光沢層の堆積を可能にする。
【0024】
例えば、ワット(Watts)型浴のような電解質ニッケルめっき浴で、ニッケルイオンに対する補助金属イオンの質量比は少なくとも約0.4:1,少なくとも約0.6:1のような少なくとも約0.2:1,あるいは約0.9:1、約1:1,約1.1:1、約1.2:1のような少なくとも0.8:1でさえ、あるいは約1.3:1でさえある。この観点から、ニッケルイオンに対する補助金属イオンの質量比は約0.6:1から約1.2:1の間のような約0.2:1の範囲である。電解質ニッケルめっき浴にナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素のような補助金属イオンを組み込むことによって、ニッケルイオン濃度は従来の電解質つや消しニッケルめっき浴に比較して低い。
【0025】
一般的な提案として、ある望ましい実施態様において、通常ニッケル濃度は少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、少なくとも約20g/L、少なくとも約30g/L、少なくとも約40g/L、あるいは少なくとも約45g/Lでさえである。ニッケル濃度は通常約80g/L、約70g/L未満、あるいは60g/L未満である。ある実施態様において、ニッケルイオン濃度は約10g/Lと約80g/Lの間、約10g/Lと約70g/Lの間、約10g/Lと約60g/Lの間、あるいは約15g/Lと約50g/Lの間である。通常、補助金属イオン濃度は少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、少なくとも約20g/L、あるいは少なくとも約25g/Lでさえである。ある実施態様において、ニッケルイオン濃度は少なくとも約10g/Lでそしてニッケルイオンに対する補助金属イオンの質量比は少なくとも約0.8:1、少なくとも約1:1、あるいは少なくとも約1.2:1である。ある実施態様において、ニッケルイオン濃度は少なくとも約40g/Lでそしてニッケルイオンに対する補助金属イオンの質量比は少なくとも約0.2:1、少なくとも約0.4:1、あるいは少なくとも約0.6:1である。上記範囲のニッケルイオン濃度および上記質量比を生じるに十分な補助金属イオンを有するこのようなニッケル電解質めっき組成物がつや消しおよび真珠光沢ニッケル層を堆積するために示されてきている。
【0026】
他の実施態様において、電解質コバルト−スズ合金めっき浴は少なくとも約0.4:1、少なくとも約0.6:1のような少なくとも約0.2:1、あるいは約0.9:1、約1:1、約1:1.1、約1.2:1のような約0.8:1でさえ、あるいは約1.3:1でさえの全めっきイオン(すなわち、コバルトおよびスズイオンンの合計)に対する補助金属イオンの質量比を含む。この観点で、ニッケルイオンおよびスズイオンの合計に対する補助金属イオンの質量比は約0.2:1から約0.8:1の間のような約0.2:1の範囲である。
【0027】
電解質コバルト−スズ合金めっき浴にナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、あるいはホウ素およびもっと望ましくはアルミニウム、ナトリウム、あるいは2つの組み合わせのような補助金属イオンを組み込むことによって、コバルトイオンおよびスズイオン濃度は従来の電解質コバルト−スズ合金めっき浴に比較して低い。コバルト濃度は通常少なくとも約10g/L、約15g/L、あるいは約20g/Lでさえであり、そしてコバルト濃度は通常約80g/L、約75g/L未満、あるいは60g/L未満である。コバルトイオン濃度は約20g/Lと約70g/Lの間、あるいは約30g/Lと約60g/Lの間である。スズ濃度は通常少なくとも約10g/L、約15g/L、あるいは約20g/Lでさえであり、そしてスズ濃度は通常約60g/L、約50g/L未満、あるいは40g/L未満である。スズイオン濃度は約10g/Lと約40g/Lの間、あるいは約15g/Lと約30g/Lの間である。上記範囲のコバルトイオンおよびスズイオン濃度および上記質量比を生じるに十分な補助金属イオンを有するこのような電解質コバルト−スズ合金めっき組成物がつや消しおよび真珠光沢ニッケル層を堆積するために示されてきている。
【0028】
Ni、Co、および/あるいはSnの前記濃度はめっき金属としてV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Re、Pt、Au、Tl、Bi、およびこれら合金の間から他の金属を採用する本発明のめっき組成物に同様に適用する。
【0029】
電解質の密度を増大することによって、曇り点は過剰になり、曇り点の効果は通常のめっき電解質によって避けられることであるが、しかし堆積金属層の希望されるつや消し効果にここで至る。いかなる堆積できる金属陽イオンも含まない記載の不活性化合物(すなわち、Na、K、Al、Mg、および/あるいはB化合物、あるいはいわゆる密度を増大する化合物)の添加は、つや消し金属層が電解質の非常に低濃度のめっき金属でさえ堆積されるように密度を増大する。望ましくは、密度はつや消しあるいは真珠光沢層を堆積するための従来の溶液と同様である。それ故、本発明の電解質密度は、本発明の電解質が非常に低濃度のめっき金属イオンを有しているとしても、望ましくは従来の高めっきイオン濃度電解質の密度の約85%と約115%の間である。すなわち、不活性金属塩は希望する密度が高濃度めっき金属なしにさえ達成されるように、密度に寄与する。望ましくは、密度はこのような従来の電解質の約95%と約105%の間である。より高密度は通常曇り点を低下するために寄与する。本発明の電解質は曇り点を過剰とし、これは最終のめっきされる層の乳化あるいは分散そしてかくしてつや消しあるいは真珠光沢出現を達成するために有利である。
【0030】
他の方法で記載すると、Na、K、Al、Mg、あるいはBの不活性金属塩の包含は電解質組成物の操作温度以下で全体に曇り点を有する組成物を生じる。このように、操作温度で、曇り点は過剰とされ、これは本発明に一致して最終のめっきされる層の乳化あるいは分散そしてかくしてつや消しあるいは真珠光沢出現を達成するために有利である。
【0031】
本発明の電解質はさらに置換あるいは非置換ポリアルキレンオキシド、置換あるいは非置換ポリアルキレンオキシドの誘導体、フッ素化あるいはパーフッ素化湿潤剤、あるいはポリアルキレンオキシドで置換される第4級アンモニウム化合物の間から選ばれる分散および乳化を形成する物質を含む。これらの物質は電解質の乳化および/あるいは分散を形成するために適している。
【0032】
本発明の電解質で使用に適した分散あるいは乳濁を形成する物質は置換あるいは非置換ポリアルキレンオキシド、置換あるいは非置換ポリアルキレンオキシドの誘導体を含む。有用なポリアルキレンオキシド型表面活性剤は5,000から100,000g/molの範囲の平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む。市販で利用できるポリエチレングリコールはBASFからPluriol(登録商標)で販売されている。追加的に、ポリアルキレンオキシド型表面活性剤は500から20,000g/molの範囲の平均分子量を有するポリプロピレングリコールを含む。市販で利用できるポリプロピレングリコールはBASFからPluriol(登録商標)で販売されている。ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコール共重合体は有用でPluronic(登録商標) REおよびRPEとしてBASFからまた利用できる。これらは典型的には1,000から5,000g/molの範囲の分子量を有する。置換あるいは非置換ポリアルキレンオキシドおよびこれらの誘導体は0.1mg/Lから10g/Lの濃度範囲で電解質に添加される。
【0033】
分散あるいは乳濁を形成する物質は第4級アミンおよびポリアルキレンオキシドで置換される第4級アミンをまた含む。ポリアルキレンオキシドで置換される第4級アミンはEthquad(登録商標)型として販売されるものを含み、Akzo Nobelから入手できる。HyamineおよびBarquat(登録商標)として販売される第4級アミン表面活性剤はまた有用である。Barquat(登録商標)第4級アミンはBarquat(登録商標) MB−50およびBarquat(登録商標) MB−80を含み、Lonza Chemicalから利用できる。第4級アミンおよびポリアルキレンオキシドで置換される第4級アミンあるいは分散および乳濁を形成する物質が0.1mg/Lから1g/L、望ましくは1mg/Lと100mg/Lの濃度で本発明の電解質に添加される。
【0034】
分散あるいは乳化を形成する添加剤はEnthone Inc.から利用できるPEARLBRITE(登録商標)のような添加剤の市販で利用可能な包装として電解質中に組み込まれる。PEARLBRITE(登録商標)包装は従来技術として知られる担体添加剤および均一性強化添加剤と同様の分散あるいは乳化を形成する添加剤を含む。担体添加剤は2g/Lから10g/L、約15g/Lのような約1g/Lから約15g/Lで電解質に提供される。このような1つの添加剤はサッカリンナトリウムである。堆積の均一性を強化するための添加剤は典型的に同様範囲中に種々の金属の標準還元電位を偏移するために添加される錯体剤である。錯体剤は典型的に70から140g/Lのような50から200g/Lの濃度範囲で電解質に添加される。錯体剤はグルコン酸塩、シアン酸塩、クエン酸および従来技術として知られる他のものを含む。
【0035】
驚いたことに、本発明の電解質に表面活性湿潤剤の添加は可能であることが発見された。表面活性湿潤剤の添加はさらに金属層の平坦な堆積を支援する。従来技術として知られる電解質に表面活性湿潤剤の添加は、これらの表面活性湿潤剤の添加が電解質の乳化および/あるいは分散の形成に影響し、それによって電解質のつや消しあるいは真珠光沢効果に影響するので、可能でなかった。もしも表面活性湿潤剤が従来技術として知られる電解質に添加されたならば、堆積金属層はまぶしく光らないかわりに光沢があるように変わった。
【0036】
本発明の電解質に表面活性湿潤剤の添加は電解質のつや消し効果に影響することなく可能である。
【0037】
本発明の電解質に添加され得る表面活性湿潤剤はアルキル硫酸塩、スルホコハク酸、およびベタインからなる群の湿潤剤である。アルキル硫酸塩は、典型的にナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、およびそれに加えてアンモニウムイオンで均衡荷電されるデシル硫酸塩、ドデシル硫酸塩、テトラデシル硫酸塩、ヘキサデシル硫酸塩、およびオクタデシル硫酸塩のような通常8から約20の炭素原子、典型的に12から14の炭素を有する炭化水素鎖を有するものを含む。電解質として有用なスルホコハク酸はAkzo Nobelから利用できる型である。スルホコハク酸はエステルを形成しそして/あるいはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、およびそれに加えてアンモニウムイオンで均衡荷電される8から20の、典型的に8から12の炭素原子を有する脂肪ヒドロカルビル鎖を有する。
【0038】
表面活性湿潤剤は0.01mol/mLと100mol/Lの間、望ましくは0.1mol/Lと10mol/Lの間の濃度で本発明の電解質に含まれる。
【0039】
方法に関して、本発明の目的は基板表面につや消し金属層を電解質堆積に対する方法よって解決され、つや消し金属層が陰極接触基板表面および陽極間に電流を流すことによって乳濁および/あるいは分散を形成する電解質から堆積され、この方法は電解質に含まれる堆積される金属の10から50質量%がナトリウム、カリウム、マグネシウム、あるいはホウ素からなる群の元素の少なくとも密度を増大するハロゲン化物、硫酸塩、あるいはスルホン酸塩によって置換されることを特徴とされる。電流密度は0.1から100A/dmの範囲である。電流密度は実験条件、例えば、めっき金属イオンに依存する。めっきは電力供給に陰極として働く基板の表面を接続し、電力供給に陽極、適切には不溶解陽極を接続し、そして陰極(基板)および陽極間に電流を通すことによって起きる。ある実施態様において、本発明の電解質は約2と約7A/dmの間の電流密度でつや消しニッケル層を堆積するため有用である。通常、堆積はめっき金属層が約2μmと約20μmの間の厚さを通常有するまで進めるが、しかしより薄くそしてより厚いめっき金属層は本発明の範囲内である。
【0040】
密度増大化合物によって電解質の堆積される金属のいくらかの濃度を置換し、それによって堆積される金属の濃度を減らしそして電解質の密度を増大することが本発明のアイデアである。
【0041】
そうすることによって、一面で、電解質の堆積される金属のより少ない量により、より少ない堆積金属が電解質を形式化するために使用されなければならないので経済的利益が得られる。他面で、アルカリ金属化合物および/あるいはアルカリ土類金属化合物の添加により電解質の密度は増大され、電解質は基板表面に金属のもっと平坦な堆積を導く。さらに、電解質の増大される密度により、表面活性湿潤剤の添加が意図しない方法で堆積金属層のつや消し出現を影響することなく可能であることが発見された。
【0042】
添付された請求項により規定される本発明の範囲から逸脱しない範囲において、修飾や変化が可能であることは明らかである。
【実施例】
【0043】
制約のない次ぎの実施例がさらに本発明を説明するために準備される。
【0044】
(実施例1)
本発明のワット型電解質が次を含み準備された:
190g/L 硫酸ニッケル6水和物(NiSO・6HO)
40g/L ホウ酸
30g/L 塩化ニッケル6水和物(NiCl・6HO)
5g/L サッカリンナトリウム および
300g/L 硫酸マグネシウム7水和物(MgSO・7HO)
3mg/L PEG10000
【0045】
本発明の上記電解質は約1.322g/cmの密度を有した。本発明のニッケルイオン濃度は約49.83g/Lであった。マグネシウムイオン濃度は約29.59g/Lであった。従って、ニッケルイオンに対するマグネシウムイオンの質量比は約0.6:1であった。
【0046】
つや消しニッケル層はこの電解質から10分間、52℃でそして5A/dmの電流密度で堆積された。電解質のpH値は約4.2であった。めっきされる基板は2m/分の速度で電解質を通って動かされた。堆積されたつや消しニッケル層の構造は10,000g/molの平均分子量を有する3mg/Lのポリエチレングリコールを含む比較電解質から堆積されたつや消しニッケル層の構造と同一であった。比較電解質は次ぎを含んでいた:
440g/L 硫酸ニッケル6水和物(NiSO・6HO)
40g/L ホウ酸
30g/L 塩化ニッケル6水和物(NiCl・6HO)
5g/L サッカリンナトリウム および
3mg/L PEG10000
【0047】
比較電解質は約1.322g/cmの密度を有した。比較電解質のニッケルイオン電解質の濃度は約105.65g/Lであった。
【0048】
(実施例2)
本発明のワット型電解質が次を含み準備された:
190g/L 硫酸ニッケル6水和物(NiSO・6HO)
40g/L ホウ酸
30g/L 塩化ニッケル6水和物(NiCl・6HO)
5g/L サッカリンナトリウム および
300g/L 硫酸マグネシウム7水和物(MgSO・7HO)
6mg/L BARQUAT(登録商標) MB−80
【0049】
本発明の上記電解質は約1.322g/cmの密度を有した。本発明のニッケルイオン濃度は約49.83g/Lであった。マグネシウムイオン濃度は約29.59g/Lであった。従って、本発明の電解質のニッケルイオンに対するマグネシウムイオンの質量比は約0.6:1であった。
【0050】
つや消しニッケル層は上記の電解質から10分間、52℃でそして5A/dmの電流密度で堆積された。電解質のpH値は約4.2であった。めっきされる基板は2m/分の速度で電解質を通って動かされた。堆積されたつや消しニッケル層の構造は6mg/LのBARQUAT(登録商標) MB−80を含む比較電解質から堆積されたつや消しニッケル層の構造と同一であった。比較電解質は次ぎを含んでいた:
440g/L 硫酸ニッケル6水和物(NiSO・6HO)
40g/L ホウ酸
30g/L 塩化ニッケル6水和物(NiCl・6HO)
5g/L サッカリンナトリウム および
6mg/L BARQUAT(登録商標) MB−80
【0051】
比較電解質は約1.322g/cmの密度、そして約105.65g/Lのニッケルイオン濃度を有した。
【0052】
(実施例3)
スズ−コバルト合金を堆積するための本発明の電解質が次を含み準備された:
120g/L グルコン酸ナトリウム
50g/L 硫酸コバルト(II)7水和物(CoSO・7HO)
25g/L 硫酸スズ(II)(SnSO
260g/L 硫酸ナトリウム10水和物(NaSO・10HO) および
1mg/L PEG 35000
【0053】
本発明の上記電解質は約1.288g/cmの密度を有した。本発明の上記電解質で、コバルトイオン濃度は約10.48g/Lで、そしてスズイオン濃度は約13.82g/Lであった。ナトリウムイオン濃度は約18.55g/Lであった。従って、めっき金属イオン(コバルトイオンおよびスズイオンの合計)に対するナトリウムイオンの質量比は約0.76:1であった。
【0054】
大変綺麗なつや消しスズ−コバルト層は上記電解質から5分間、45℃でそして0.5A/dmの電流密度で堆積された。電解質のpH値は約8.4でそしてめっきされる基板は2m/分の速度で電解質を通って動かされた。上記電解質から堆積された大変綺麗なつや消し層は次ぎを含んでいる比較電解質から堆積された層と同一であった:
120g/L グルコン酸ナトリウム
100g/L 硫酸コバルト(II)7水和物(CoSO・7HO)
50g/L 硫酸スズ(II)(SnSO
1mg/L PEG 35000
【0055】
比較電解質は約1.225g/cmの密度を有した。比較電解質で、コバルトイオン濃度は約20.96g/L、そしてスズイオン濃度は約27.64g/Lであった。
【0056】
上記実施例1、2、および3は従来技術として知られている電解質組成物にアルカリ金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物の本発明の添加はめっきの結果に影響することなく電解質の低めっき金属濃度の使用を可能とすることを明らかに示している。これは大きい経済的利益を与える大変低濃度のめっき金属を有するめっき電解質を可能にする。
【0057】
(実施例4)
ニッケル層を堆積するための本発明の電解質が次を含み準備された:
225g/L 硫酸ニッケル6水和物(NiSO・6HO)
50g/L 塩化ニッケル6水和物(NiCl・6HO)
40g/L ホウ酸
225g/L 硫酸マグネシウム7水和物(MgSO・7HO)
2.6g/L ナトリウム安息香酸スルホンイミド
1.5mg/L ポリエチレングリコール−メチルエーテル および
1.8mg/L ナトリウム−2−プロペン−硫酸塩
【0058】
本発明の上記電解質は約1.303g/cmの密度を有した。本発明のニッケルイオン濃度は約50.21g/Lであった。マグネシウムイオン濃度は約22.19g/Lであった。従って、本発明の電解質のニッケルイオンに対するマグネシウムイオンの質量比は約0.4:1であった。
【0059】
つや消しニッケル層は上記電解質から10分間、5A/dmの電流密度でそして55℃で基板表面に堆積され、その層は、450g/L硫酸ニッケル6水和物(NiSO・6HO)からなりそして硫酸マグネシウム7水和物(MgSO・7HO)を含まない比較電解質から同じ条件で堆積された層と同じ性質を有していた。
【0060】
(実施例5)
スズ−コバルト合金を堆積するための本発明の電解質が次を含み準備された:
120g/L グルコン酸ナトリウム
50g/L 硫酸コバルト(II)7水和物(CoSO・7HO)
25g/L 硫酸スズ(II)(SnSO
120g/L 硫酸アルミニウム18水和物(Al(SO・18HO) および
1mg/L PEG 35000
【0061】
本発明の上記電解質は約1.235g/cmの密度を有した。本発明の上記電解質でコバルトイオン濃度は約10.48g/Lで、そしてスズイオン濃度は約13.82g/Lであった。アルミニウムイオン濃度は約4.86g/Lであった。めっき金属イオン(コバルトイオンおよびスズイオンの合計)に対するアルミニウムイオンの質量比は約0.2:1であった。
【0062】
大変綺麗なつや消しスズ−コバルト層は上記電解質から5分間、45℃でそして0.5A/dmの電流密度で堆積された。電解質のpH値は約8.4でそしてめっきされる基板は2m/分の速度で電解質を通って動かされた。上記電解質から堆積された大変綺麗な層は次ぎを含んでいる比較電解質から堆積された層と同一であった:
120g/L グルコン酸ナトリウム
100g/L 硫酸コバルト(II)7水和物(CoSO・7HO)
50g/L 硫酸スズ(II)(SnSO
1mg/L PEG 35000
【0063】
比較電解質は約1.225g/cmの密度を有した。比較電解質で、コバルトイオン濃度は約20.96g/L、そしてスズイオン濃度は約27.64g/Lであった。
【0064】
上記実施態様は従来技術として知られている電解質組成物に密度増大化合物の本発明の添加がめっきの結果に影響することなく電解質のめっき金属濃度の削減を可能とすることを明らかに示している。これは大きい経済的利益を与える大変低濃度のめっき金属を有するめっき電解質を可能にする。
【0065】
本発明の要素あるいはその望ましい実施態様を紹介するとき、冠詞(「a」、「an」、「the」、および「前記」)は、1つあるいはそれ以上の要素が存在することを意味する。例えば、「a」(1つの)層と称する前述の説明および以下の請求項は、1つあるいはそれ以上のそのような層があることを意味している。「含む(comprising)、(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であることを意図し、リストにあげられた要素以外の追加の要素が存在することを意味している。
【0066】
上記の観点から、本発明のいくつかの目的が達成されそして他の優位な結果が取得されたことが分かるであろう。
【0067】
種々の変更が本発明の範囲から逸脱することなく上記の組成物および工程になされ得るけれども、上述の説明に含まれる全ての事項は例示的でそして制限のある認識でないことが意図される。