【文献】
J. Exp. Med.,1992年,Vol.176,p.327-337
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本明細書は、ヒトLAG−3に結合し、そして所望の機能特性を有する、単離されたモノクローナル抗体、特にヒトモノクローナル抗体に関する。1つの態様において、本発明の抗体は、特定の重鎖および軽鎖生殖細胞系列配列由来であり、そして/または特定の構造的特徴、例えば、特定のアミノ酸配列を含むCDR領域を含む。本明細書は、単離された抗体、このような抗体を製造する方法、このような抗体を含む免疫抱合体および二重特異性分子ならびに本発明の抗体、免疫抱合体または二重特異性分子を含む医薬組成物を提供する。本明細書は、また、例えば、LAG−3タンパク質を検出するために抗体を使用する方法、ならびに免疫応答を刺激するために本発明の抗LAG−3抗体単独または他の免疫刺激抗体と組み合わせて使用する方法に関する。したがって、本明細書は、また、例えば、腫瘍増殖を阻害するか、またはウイルス感染を処置するために、本発明の抗LAG−3抗体を使用する方法を提供する。
【0026】
本明細書をさらに容易に理解するために、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は詳細な説明中に記載されている。
【0027】
“LAG−3”なる用語は、リンパ球活性化遺伝子−3を示す。“LAG−3”なる用語は、変異体、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログを含む。例えば、ヒトLAG−3タンパク質に対して特異的である抗体は、ある場合において、ヒト以外の種由来のLAG−3タンパク質と交差反応し得る。他の態様において、ヒトLAG−3タンパク質に対して特異的である抗体は、ヒトLAG−3タンパク質に対して完全に特異的であってよく、種または他の型の交差反応性を示さなくてもよく、または、全ての他の種ではなくある特定の他の種由来のLAG−3と交差反応してよい(例えば、マウスLAG−3ではなくサルLAG−3と交差反応する)。“ヒトLAG−3”なる用語は、ヒト配列LAG−3、例えば、Genbank 受入番号 NP_002277を有するヒトLAG−3の完全なアミノ酸配列を示す。“マウスLAG−3”なる用語は、マウス配列LAG−3、例えば、Genbank 受入番号 NP_032505を有するマウスLAG−3の完全なアミノ酸配列を示す。LAG−3は、また当分野で、例えば、CD223として知られている。ヒトLAG−3配列は、例えば、保存されている変異または非保存領域における変異を有することにより、Genbank 受入番号 NP_002277のヒトLAG−3と異なっていてよく、LAG−3はGenbank 受入番号 NP_002277のヒトLAG−3と実質的に同じ生物学的機能を有する。例えば、ヒトLAG−3の生物学的機能は本明細書の抗体によって特異的に結合されるLAG−3の細胞外ドメインにおけるエピトープを有することであるか、またはヒトLAG−3の生物学的機能はMHCクラスII分子へ結合することである。
【0028】
“サルLAG−3”なる用語は、旧世界および新世界サルにより発現されるLAG−3タンパク質を含むことを意図し、カニクイザルLAG−3およびアカゲザルLAG−3に限定されない。サルLAG−3に対する典型的なアミノ酸配列は、また、Genbank 受入番号 XM_001108923として寄託されている、
図19および配列番号:85において示されているアカゲザルLAG−3アミノ酸配列である。サルLAG−3に対する他の典型的なアミノ酸配列は、実施例3Aサブセクション3において記載されているとおりに単離された、
図19および配列番号:84に示されているクローンpa23−5の別のアカゲザル配列である。この別のアカゲザル配列は、Genbank−寄託配列と比較して、位置419にて1つのアミノ酸の違いを示す。
【0029】
特定のヒトLAG−3配列は、一般的に、Genbank 受入番号 NP_002277のヒトLAG−3に対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であり、他の種(例えば、マウス)のLAG−3アミノ酸配列と比較したとき、ヒトであるアミノ酸配列と同定されるアミノ酸残基を含む。特定の場合において、ヒトLAG−3は、Genbank 受入番号 NP_002277のLAG−3に対してアミノ酸配列において、少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%もしくは99%同一であり得る。1つの態様において、ヒトLAG−3配列は、受入番号 NP_002277のLAG−3配列と最大10個のアミノ酸の違いを示し得る。1つの態様において、ヒトLAG−3は、Genbank 受入番号 NP_002277のLAG−3配列と最大5個、またはさらに最大4、3、2もしくは1個のアミノ酸の違いを示し得る。同一性パーセントは、本明細書に記載されているとおりに決定することができる。
【0030】
“免疫応答”なる用語は、侵入病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、癌細胞、または、自己免疫もしくは病的炎症の場合、正常ヒト細胞もしくは組織の人体からの破壊または除去に関する選択的障害を引き起こす、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球および上記細胞または肝臓により生産される可溶性巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の活性を示す。
【0031】
“抗原特異的T細胞応答”は、T細胞に特異的である抗原でのT細胞の刺激によって生じるT細胞による応答を示す。抗原特異的刺激時のT細胞による応答の非限定的な例として、増殖およびサイトカイン生成(例えば、IL−2生成)を含む。
【0032】
本明細書において使用される“抗体”なる用語は、全抗体またはその抗原結合フラグメント(すなわち、“抗原結合部分”)または一本鎖を含む。全抗体はジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。それぞれの重鎖は重鎖可変領域(本明細書においてV
Hと省略する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、C
H1、C
H2およびC
H3を含む。それぞれの軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書においてV
Lと省略する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメインC
Lを含む。V
HおよびV
L領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域により分断されている相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに分類できる。それぞれのV
HおよびV
Lは、アミノ−末端からカルボキシ−末端へ次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4にて配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一の成分(Clq)を含む宿主組織または因子への結合を介在し得る。
【0033】
本明細書において使用される抗体の“抗原結合部分”(または単に“抗体部分”)なる用語は、抗原(例えば、LAG−3タンパク質)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は全長抗体のフラグメントにより行うことができることが示されている。抗体の“抗原結合部分”なる用語内に包含される結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント、V
L、V
H、C
LおよびC
H1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)
2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)ヒンジ領域の一部を有する本質的にFabであるFab’フラグメント(FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY (Paul ed., 3.sup.rd ed. 1993、参照);(iv)V
HおよびC
H1ドメインからなるFdフラグメント;(v)抗体の単一のアームのV
LおよびV
HドメインからなるFvフラグメント、(vi)V
HドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature
341:544-546);(vii)単離された相補性決定領域(CDR);および(viii)ナノボディ、単一可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインV
LおよびV
Hは別々の遺伝子によりコードされているが、それらは、組換え方法を使用して、V
LおよびV
H領域が対になって一価分子を形成する一本のタンパク質鎖として作製可能とする合成リンカーにより連結することができる(一本鎖Fv(scFv)としても既知;例えば、Bird et al. (1988) Science
242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
85:5879-5883、参照)。このような一本鎖抗体は、また、抗体の“抗原結合部分”なる用語に包含されることを意図する。これらの抗体フラグメントは、当業者に既知の慣用の技術を使用して得られ、これらのフラグメントはインタクトな抗体と同様に有用性に関してスクリーニングされる。
【0034】
本明細書において使用される“単離された”は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を示すことを意図する(例えば、LAG−3タンパク質に特異的に結合する単離された抗体は特異的にLAG−3タンパク質以外の抗原に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトLAG−3タンパク質に特異的に結合する単離された抗体は、他の種の他の抗原抗原、例えば、LAG−3タンパク質に対して交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は実質的に他の細胞材料および/または化学物質を含まなくてもよい。
【0035】
本明細書において使用される“モノクローナル抗体”または“モノクローナル抗体組成物”なる用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。
【0036】
本明細書において使用される“ヒト抗体”なる用語は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来している可変領域を有する抗体を含むことを意図する。さらに、抗体が定常領域を含むとき、定常領域は、また、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的突然変異またはインビボで体細胞変異により導入された変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される“ヒト抗体”なる用語は、別の哺乳動物種、例えば、マウスの生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。
【0037】
“ヒトモノクローナル抗体”なる用語は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来している可変領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を意味する。1つの態様において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合させた遺伝子導入非ヒト動物、例えば、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する遺伝子導入マウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマにより製造される。
【0038】
本明細書において使用される“組換えヒト抗体”なる用語は、組換え手段により製造、発現、創造または単離されたすべてのヒト抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子を遺伝子導入または染色体導入された動物(例えば、マウス)またはそれから製造されたハイブリドーマから単離された抗体(以下に記載されている)、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む他の手段により製造、発現、創造または単離された抗体のすべてを含む。このような組換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来している可変領域を有する。しかしながら、1つの態様において、このような組換えヒト抗体をインビトロ突然変異(または、ヒトIg配列に対して動物遺伝子導入が使用されるとき、インビボ体細胞突然変異)に付すことができ、したがって、組換え抗体のV
HおよびV
L領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のV
HおよびV
L配列に由来し、関連するが、天然にインビボにおいてヒト抗体生殖細胞系列のレパートリー内に存在しない配列である。
【0039】
“アイソタイプ”なる用語は重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgGl)を意味する。
【0040】
“抗原を認識する抗体”および“抗原に対して特異的な抗体”なる用語は“抗原に特異的に結合する抗体”なる用語と互換的に使用される。
【0041】
“ヒト抗体誘導体”なる用語は、ヒト抗体の修飾された形態、例えば、抗体および他の薬物または抗体の複合体のすべてを意味する。
【0042】
“ヒト化抗体”なる用語は、他の哺乳動物種、例えば、マウスの生殖細胞系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフトされている抗体を示すことを意図する。さらなるフレームワーク領域修飾はヒトフレームワーク配列内に作られ得る。
【0043】
“キメラ抗体”なる用語は、可変領域配列が1つの種由来であり、定常領域配列が他の種由来である抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体由来であり、定常領域配列がヒト抗体由来である抗体を示すことを意図する。
【0044】
本明細書において使用される“ヒトLAG−3に特異的に結合する”抗体は、ヒトLAG−3タンパク質(あるいは1つ以上の非ヒト種由来のLAG−3タンパク質)に結合するが、非−LAG−3タンパク質に実質的に結合しない抗体を意味することを意図する。好ましくは、抗体は、“高い親和性”、すなわち1×10
−7M以下、さらに好ましくは5×10
−8M以下、さらに好ましくは3×10
−8M以下、さらに好ましくは1×10
−8M以下、さらに好ましくは5×10
−9M以下またはより好ましくは1×10
−9M以下のK
DにてヒトLAG−3タンパク質に結合する。
【0045】
本明細書において使用されるタンパク質または細胞に“実質的に結合しない”なる用語は、タンパク質または細胞に結合しないか、または高い親和性にて結合しない、すなわちタンパク質または細胞に1×10
−6M以上、さらに好ましくは1×10
−5M以上、さらに好ましくは1×10
−4M以上、さらに好ましくは1×10
−3M以上、より好ましくは1×10
−2M以上のK
Dにて結合することを意味する。
【0046】
本明細書において使用される“K
assoc”または“K
a”なる用語は、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を示すことを意図するが、本明細書において使用される“K
dis”または“K
d”なる用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を示すことを意図する。本明細書において使用される“K
D”なる用語は、K
d対K
aの比(すなわち、K
d/K
a)から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を示すことを意図する。抗体に対するK
D値は当分野で確立している方法を使用して決定することができる。抗体のK
Dを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴、好ましくはバイオセンサーシステム、例えば、Biacore
(登録商標)システムを使用することによる。
【0047】
IgG抗体に対する“高い親和性”なる用語は、標的抗原に対して1×10
−7M以下、より好ましくは5×10
−8M以下、さらに好ましくは1×10
−8M以下、さらに好ましくは5×10
−9M以下およびさらに好ましくは1×10
−9M以下のK
Dを有する抗体を意味する。しかしながら、“高い親和性”結合は他の抗体アイソタイプに対して変化し得る。例えば、IgMアイソタイプに対する“高い親和性”結合は、10
−6M以下、さらに好ましくは10
−7M以下、さらに好ましくは10
−8M以下のK
Dを有する抗体を意味する。
【0048】
“対象”なる用語はヒトまたは非ヒト動物のすべてを含む。“非ヒト動物”なる用語は、すべての脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、鳥類、両生類およびは虫類を含むが、哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシおよびウマが好ましい。
【0049】
本発明の種々の局面は、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記載されている。
【0050】
特定の機能特性を有する抗−LAG−3抗体
本発明の抗体は、抗体の特定の機能的特色または特性により特徴付けられる。例えば、抗体はヒトLAG−3に特異的に結合し、ある他の種由来のLAG−3、例えば、サルLAG−3(例えば、カニクイザル、アカゲザル)に結合してもよいが、ある他の種由来のLAG−3、例えば、マウスLAG−3に実質的に結合しない。好ましくは、本発明の抗体は高い親和性にてヒトLAG−3に結合する。
【0051】
免疫応答、例えば、抗原特異的T細胞応答を刺激する抗体の能力は、例えば、抗原特異的T細胞応答におけるインターロイキン−2(IL−2)生成を刺激する抗体の能力により示される。1つの態様において、本発明の抗体はヒトLAG−3に結合し、抗原特異的T細胞応答を刺激する能力を示す。他の態様において、本発明の抗体はヒトLAG−3に結合するが、抗原特異的T細胞応答を刺激する能力を示さない。免疫応答を刺激する抗体の能力を評価するための他の手段は、腫瘍増殖、例えば、インビボ腫瘍移植片モデル(例えば、実施例6、参照)を阻害する抗体の能力または自己免疫応答を刺激する抗体の能力、例えば、自己免疫性モデルにおける自己免疫疾患の発症を促進する能力、例えば、NODマウスモデルにおける糖尿病の発症を促進する能力(例えば、実施例7、参照)を含む。
【0052】
LAG−3への本発明の抗体の結合は、当分野で確立している1つ以上の技術を使用して評価することができる。例えば、好ましい態様において、抗体は、ヒトLAG−3を発現する細胞系、例えば、細胞表面上にLAG−3(例えば、ヒトLAG−3またはサルLAG−3(例えば、アカゲザルまたはカニクイザル)またはマウスLAG−3)を発現するようにトランスフェクトされたCHO細胞と抗体を反応させるフローサイトメトリーアッセイにより試験することができる(例えば、適当なアッセイに関して実施例3A、参照)。フローサイトメトリーアッセイにおいて使用するために他の適当な細胞は、天然のLAG−3を発現する抗CD3−刺激CD4
+活性化T細胞を含む。さらに、またはあるいは、結合反応速度(例えば、K
D値)を含む抗体の結合は、BIAcore結合アッセイにおいて試験することができる(例えば、適当なアッセイに関して実施例3B、参照)。さらに他の適当な結合アッセイは、例えば、組換えLAG−3タンパク質を使用する、ELISAアッセイを含む(例えば、適当なアッセイに関して実施例1、参照)。
【0053】
好ましくは、本発明の抗体は、5×10
−8M以下のK
DにてLAG−3タンパク質に結合するか、2×10
−8M以下のK
DにてLAG−3タンパク質に結合するか、5×10
−9M以下のK
DにてLAG−3タンパク質に結合するか、4×10
−9M以下のK
DにてLAG−3タンパク質に結合するか、3×10
−9M以下のK
DにてLAG−3タンパク質に結合するか、2×10
−9M以下のK
DにてLAG−3タンパク質に結合するか、1×10
−9M以下のK
DにてLAG−3タンパク質に結合するか、5×10
−10M以下のK
DにてLAG−3タンパク質に結合するか、または1×10
−10M以下のK
DにてLAG−3タンパク質に結合する。
【0054】
一般的に、本発明の抗体はリンパ球組織、例えば、へんとう腺、脾臓または胸腺におけるLAG−3に結合し、免疫組織化学により検出することができる。そのうえ、実施例8にさらに記載されているとおり、特定の本発明の抗LAG−3抗体は免疫組織化学により測定されるように下垂体組織を染色するが(例えば、下垂体において維持される)、他の本発明の抗LAG−3抗体は免疫組織化学により測定されるように下垂体組織を染色しない(例えば、下垂体において維持されない)。したがって、1つの態様において、本発明は免疫組織化学により下垂体組織を染色するヒト抗LAG−3抗体を提供するが、他の態様において、本発明は免疫組織化学により下垂体組織を染色しないヒト抗LAG−3抗体を提供する。
【0055】
本発明の好ましい抗体はヒトモノクローナル抗体である。さらに、またはあるいは、抗体は、例えば、キメラまたはヒト化モノクローナル抗体であり得る。
【0056】
モノクローナル抗体25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5
本発明の好ましい抗体は、実施例1および2に記載されているように単離され構造的に特徴付けられた、ヒトモノクローナル抗体25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5である。25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5のV
Hアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:37−42に示されている。25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5のV
Kアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:43−48に示されている。
【0057】
それぞれのこれらの抗体がヒトLAG−3に結合することができることを考慮すると、本発明の他の抗−LAG−3結合分子を創造するために、V
HおよびV
L配列を“混合および適合させる”ことができる。好ましくは、V
HおよびV
L鎖を混合および適合させるとき、特定のV
H/V
L対由来のV
H配列を構造的に類似のV
H配列と置き換える。同様に、好ましくは、特定のV
H/V
L対由来のV
L配列を構造的に類似のV
L配列と置き換える。
【0058】
したがって、1つの局面において、本明細書は、ヒトLAG−3タンパク質に特異的に結合する、
(a)配列番号:37−42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号:43−48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0059】
好ましい重鎖および軽鎖の組合せは:
(a)配列番号:37のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号:43のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号:38のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号:44のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号:39のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号:45のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(d)配列番号:40のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号:46のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(e)配列番号:41のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号:47のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(f)配列番号:42のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号:48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0060】
他の局面において、本明細書は、25F7、26H10、25E3、8B7、11F2または17E5の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、またはそれらの組合せを含む抗体を提供する。25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5のV
HCDR1のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:37−42に示されている。25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5のV
HCDR2のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:43−48に示されている。25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5のV
HCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:13−14、GGYおよび16−18に示されている。25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5のV
KCDR1のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:19−24に示されている。25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5のV
KCDR2のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:25−30に示されている。25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5のV
KCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:31−36に示されている。CDR領域はKabatシステムを使用して描かれる(Kabat et al. (1991) Sequence of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)。
【0061】
それぞれのこれらの抗体がヒトLAG−3に結合することができ、抗原結合特異性が主にCDR1、CDR2およびCDR3領域により提供されることを考慮すると、本発明の他の抗−LAG−3結合分子を創造するために、V
HのCDR1、CDR2およびCDR3配列ならびにV
LのCDR1、CDR2およびCDR3配列を“混合および適合させる”ことができる(すなわち、異なる抗体由来のCDRを混合および適合させることができるが、それぞれの抗体はV
HのCDR1、CDR2およびCDR3ならびにV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含まなければならない)。このような“混合および適合させた”抗体のLAG−3結合は、上記および実施例に記載の結合アッセイ(例えば、ELISA、Biacore
(登録商標)分析)を使用して試験することができる。好ましくは、V
HのCDR配列を混合および適合させるとき、特定のV
H配列由来のCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を構造的に類似のCDR配列と置き換える。同様に、V
LのCDR配列を混合および適合させるとき、特定のV
L配列由来のCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を好ましくは構造的に類似のCDR配列と置き換える。新規V
HおよびV
L配列が、1つ以上のV
Hおよび/またはV
LのCDR領域配列をモノクローナル抗体25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5に関する本明細書に記載のCDR配列由来の構造的に類似の配列と置き換えることにより創造することができることは当業者に明らかである。
【0062】
したがって、他の局面において、本明細書は、ヒトLAG−3に特異的に結合する、
(a)配列番号:1−6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:7−12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:13−14、GGYおよび16−18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:19−24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:25−30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:31−36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3;
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0063】
好ましい態様において、抗体は:
(a)配列番号:1を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:7を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:13を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:19を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:25を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:31を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0064】
他の好ましい態様において、抗体は:
(a)配列番号:2を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:8を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:14を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:20を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:26を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:32を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0065】
他の好ましい態様において、抗体は:
(a)配列番号:3を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:9を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)GGYを含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:21を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:27を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:33を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0066】
他の好ましい態様において、抗体は:
(a)配列番号:4を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:10を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:16を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:22を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:28を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:34を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0067】
他の好ましい態様において、抗体は:
(a)配列番号:5を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:11を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:17を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:23を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:29を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:35を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0068】
他の好ましい態様において、抗体は:
(a)配列番号:6を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:12を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:18を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:24を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:30を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:36を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0069】
CDR1および/またはCDR2ドメインと独立して、CDR3ドメインのみは、同一抗原に対する抗体の結合特異性を決定することができ、多数の抗体が予想通りに、共通のCDR3配列に基づいて、同じ結合特異性を有して製造することができることが当分野で知られている。例えば、Klimka et al., British J. of Cancer
83(2):252-260 (2000); Beiboer et al., J. Mol. Biol.
296:833-849 (2000); Rader et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.
95:8910-8915 (1998); Barbas et al., J. Am. Chem. Soc.
116:2161-2162 (1994); Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.
92:2529-2533 (1995); Ditzel et al., J. Immunol.
157:739-749 (1996); Berezov et al., BIAjournal
8:Scientific Review 8 (2001); Igarashi et al., J. Biochem (Tokyo)
117:452-7 (1995); Bourgeois et al., J. Virol
72:807-10 (1998); Levi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.
90:4374-8 (1993); Polymenis and Stoller, J. Immunol.
152:5218-5329 (1994)およびXu and Davis, Immunity
13:37-45 (2000)、参照。米国特許第6,951,646;6,914,128;6,090,382;6,818,216;6,156,313;6,827,925;5,833,943;5,762,905および5,760,185号も、参照。これらそれぞれの文献を出典明示によりそれらの全体を本明細書に包含させる。
【0070】
したがって、本明細書は、ヒトLAG−3に特異的に結合することができる、ヒトまたは非ヒト動物由来の抗体由来の1つ以上の重鎖および/または軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体を提供する。1つの局面において、本明細書は、LAG−3に特異的に結合することができる、非ヒト抗体、例えば、マウスまたはラット抗体由来の1つ以上の重鎖および/または軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体を提供する。いくつかの態様において、非ヒト抗体由来の1つ以上の重鎖および/または軽鎖CDR3ドメインを含むこのような発明の抗体は、(a)との結合に対して競合することができ;(b)機能特性を維持し;(c)同じエピトープに結合し;そして/または(d)対応する親非ヒト抗体と同様の結合親和性を有する。
【0071】
他の局面において、本明細書は、ヒトLAG−3に特異的に結合することができる、ヒト抗体、例えば、非ヒト動物から得られるヒト抗体由来の1つ以上の重鎖および/または軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体を提供する。他の局面において、本明細書は、ヒトLAG−3に特異的に結合することができる、第1のヒト抗体、例えば、非ヒト動物から得られるヒト抗体由来の1つ以上の重鎖および/または軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体であって、ヒトLAG−3に特異的に結合することができる第2のヒト抗体を製造するために、第1のヒト抗体由来のCDR3ドメインをLAG−3に対する結合特異性を欠いているヒト抗体におけるCDR3ドメインと置き換えられているモノクローナル抗体を提供する。いくつかの態様において、第1のヒト抗体由来の1つ以上の重鎖および/または軽鎖CDR3ドメインを含むこのような発明の抗体は、(a)との結合に対して競合することができ;(b)機能特性を維持し;(c)同じエピトープに結合し;そして/または(d)対応する親第1のヒト抗体と同様の結合親和性を有する。
【0072】
特定の生殖細胞系列配列を有する抗体
1つの態様において、本発明の抗体は、特定の生殖細胞系列の重鎖免疫グロブリン遺伝子由来の重鎖可変領域および/または特定の生殖細胞系列の軽鎖免疫グロブリン遺伝子由来の軽鎖可変領域を含む。
【0073】
例えば、好ましい態様において、本明細書は、ヒトLAG−3に特異的に結合する、ヒトV
H3−20遺伝子、ヒトV
H4−34遺伝子、ヒトV
H3−33遺伝子もしくはヒトV
H1−24遺伝子の産物またはそれ由来である重鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。他の好ましい態様において、本明細書は、ヒトLAG−3に特異的に結合する、ヒトV
KL18遺伝子、ヒトV
KL6遺伝子もしくはヒトV
KA27遺伝子の産物またはそれ由来である軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。さらに他の好ましい態様において、本明細書は、ヒトLAG−3に特異的に結合する、ヒトV
H3−20遺伝子の産物またはそれ由来である重鎖可変領域およびヒトV
KL18遺伝子の産物またはそれ由来である軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。さらに他の好ましい態様において、本明細書は、ヒトLAG−3に特異的に結合する、ヒトV
H4−34遺伝子の産物またはそれ由来である重鎖可変領域およびヒトV
KL6遺伝子の産物またはそれ由来である軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。さらに他の好ましい態様において、本明細書は、ヒトLAG−3に特異的に結合する、ヒトV
H3−33遺伝子の産物またはそれ由来である重鎖可変領域およびヒトV
KA27遺伝子の産物またはそれ由来である軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。さらに他の好ましい態様において、本明細書は、ヒトLAG−3に特異的に結合する、ヒトV
H1−24遺伝子の産物またはそれ由来である重鎖可変領域およびヒトV
KL6遺伝子の産物またはそれ由来である軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。さらに他の好ましい態様において、本明細書は、ヒトLAG−3に特異的に結合する、ヒトV
H3−33遺伝子の産物またはそれ由来である重鎖可変領域およびヒトV
KL6遺伝子の産物またはそれ由来である軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。
【0074】
このような抗体は、また、上記に詳細にされている1つ以上の機能特性、例えば、ヒトLAG−3への結合の高い親和性、サルLAG−3への結合、マウスLAG−3への非結合、LAG−3のMHCクラスII分子への結合を阻害する能力および/または抗原特異的T細胞応答を刺激する能力を有することができる。
【0075】
V
H3−20およびV
KL18のV
HおよびV
Lを有する抗体の例は、25E3抗体である。V
H4−34およびV
KL6のV
HおよびV
Lを有する抗体の例は、25F7および8B7抗体である。V
H3−33およびV
KA27のV
HおよびV
Lを有する抗体の例は、26H10抗体である。V
H1−24およびV
KL6のV
HおよびV
Lを有する抗体の例は、11F2抗体である。V
H3−33およびV
KL6のV
HおよびV
Lを有する抗体の例は、17E5抗体である。
【0076】
抗体の可変領域がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られるとき、本明細書において使用されるヒト抗体は特定の生殖細胞系列配列の“生成物”であるか、またはそれに“由来”する重鎖または軽鎖可変領域を含む。このような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有する遺伝子導入マウスを興味ある抗原にて免疫化するか、またはファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを興味ある抗原にてスクリーニングすることを含む。ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列の“生成物”であるか、またはそれに“由来”するヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列とヒト生殖細胞系列の免疫グロブリンのアミノ酸配列を比較して、ヒト抗体の配列と配列において非常に近い(すなわち、同一性%が非常に高い)ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列を選択することによりそれ自体同定することができる。特定のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列の“生成物”であるか、またはそれに“由来”するヒト抗体は、生殖細胞系列配列と比較して、例えば、自然に起こる体細胞変異または人工部位特異的変異によるアミノ酸の違いを含み得る。しかしながら、選択されたヒト抗体は、一般的に、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列であり、他の種の生殖細胞系列の免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖細胞系列配列)と比較したとき、ヒト抗体をヒトとして同定するアミノ酸残基を含む。特定の場合において、ヒト抗体は、生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列において少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%または99%同一であり得る。一般的に、特定のヒト生殖細胞系列配列由来のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と最大10個のアミノ酸の違いを示し得る。特定の場合において、ヒト抗体は、生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と最大5個、またはさらに最大4、3、2もしくは1個のアミノ酸の違いを示し得る。
【0077】
同一な抗体
さらに他の態様において、本発明の抗体は、本発明の抗LAG−3抗体の所望の機能特性を維持している、本明細書に記載されている好ましい抗体のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含む。例えば、本明細書は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分であって:
(a)重鎖可変領域は、配列番号:37−42からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み;
(b)軽鎖可変領域は、配列番号:43−48からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み;そして
(c)抗体はヒトLAG−3に特異的に結合する、
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。
【0078】
さらに、またはあるいは、抗体は、上記されている以下の1つ以上の機能特性、例えば、ヒトLAG−3への結合の高い親和性、サルLAG−3への結合、マウスLAG−3への非結合、LAG−3のMHCクラスII分子への結合を阻害する能力および/または抗原特異的T細胞応答を刺激する能力を有することができる。
【0079】
種々の態様において、抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0080】
他の態様において、V
Hおよび/またはV
Lのアミノ酸配列は、上記配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。上記配列のV
HおよびV
L領域と高い(すなわち、80%以上)同一性を有するV
HおよびV
L領域を有する抗体は、配列番号:49−54または55−60をコードする核酸分子を突然変異(例えば、部位特異的またはPCR介在突然変異)させ、次に本明細書に記載されている機能アッセイを使用して、維持されている機能(すなわち、上記機能)に関してコードされた改変された抗体を試験することにより、得ることができる。
【0081】
本明細書において使用される2つのアミノ酸配列の同一性パーセントは、2つの配列間の同一性パーセントと同義である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要のあるギャップ数および各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の位置の#/位置の全#×100)。2つの配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、非限定的な例として以下に記載されてような数学アルゴリズムを使用して成し遂げることができる。
【0082】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Miller (Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988))のアルゴリズムを使用して、PAM120 weight residue table、ギャップレングスペナルティー12およびギャップペナルティー4を使用して決定することができる。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにおいて利用することができる)におけるGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunsch(J. Mol. Biol.
48:444-453 (1970))のアルゴリズムを使用して、Blossum 62 matrixまたはPAM250 matrixのいずれか、ならびにギャップウェート16、14、12、10、8、6または4およびレングスウェート1、2、3、4、5または6を使用して決定することができる。
【0083】
さらに、またはあるいは、本明細書のタンパク質配列は、さらに、例えば、関連配列を同定するために、公のデータベースに対するサーチを行うために、“クエリー配列”として使用することができる。このようなサーチは、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol.
215:403-10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTタンパク質サーチは、本発明の抗体分子と同一であるアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3で行うことができる。比較目的のためにギャップアラインメントを得るために、Gapped BLASTをAltschul et al., (1997) Nucleic Acids Res.
25(17):3389-3402に記載されているとおりに利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用するとき、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーター(例えば、XBLASTおよびNBLAST)が有用である。www.ncbi.nlm.nih.gov、参照。
【0084】
保存的修飾を有する抗体
1つの態様において、本発明の抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、1つ以上のこれらのCDR配列が本明細書に記載されている好ましい抗体(例えば、25F7、26H10、25E3、8B7、11F2、17E5)に基づく特定のアミノ酸配列またはそれらの保存的修飾を含み、そして本発明の抗LAG−3抗体の所望の機能特性を維持している。特定の保存的配列修飾は、抗原結合を取り除くことなく作ることができることが、当分野で理解されている。例えば、Brummell et al. (1993) Biochem
32:1180-8; de Wildt et al. (1997) Prot. Eng.
10:835-41; Komissarov et al. (1997) J. Biol. Chem.
272:26864-26870; Hall et al. (1992) J. Immunol.
149:1605-12; Kelley and O'Connell (1993) Biochem.
32:6862-35; Adib-Conquy et al. (1998) Int. Immunol.
10:341-6およびBeers et al. (2000) Clin. Can. Res.
6:2835-43、参照。したがって、本明細書は:
(a)重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号:13−14、GGYおよび16−18のアミノ酸配列ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)軽鎖可変領域CDR3配列は、配列番号:31−36のアミノ酸配列およびそれらの保存的修飾からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;そして
(c)抗体はヒトLAG−3に特異的に結合する、
CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。
【0085】
さらに、またはあるいは、抗体は、上記されている以下の1つ以上の機能特性、例えば、ヒトLAG−3への結合の高い親和性、サルLAG−3への結合、マウスLAG−3への非結合、LAG−3のMHCクラスII分子への結合を阻害する能力および/または抗原特異的T細胞応答を刺激する能力を有することができる。
【0086】
好ましい態様において、重鎖可変領域CDR2配列は、配列番号:7−12のアミノ酸配列およびそれらの保存的修飾からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;そして、軽鎖可変領域CDR2配列は、配列番号:25−30のアミノ酸配列およびそれらの保存的修飾からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。他の好ましい態様において、重鎖可変領域CDR1配列は、配列番号:1−6のアミノ酸配列およびそれらの保存的修飾からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;そして、軽鎖可変領域CDR1配列は、配列番号:19−24のアミノ酸配列およびそれらの保存的修飾からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0087】
種々の態様において、抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0088】
本明細書において使用される“保存的配列修飾”なる用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意に影響しないか、または変化させないアミノ酸修飾を示すことを意図する。このような保存的修飾は、アミノ酸置換、付加および欠失を含む。修飾は、当分野で既知の標準技術、例えば、部位特異的突然変異およびPCR介在突然変異により本発明の抗体に導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ−分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族性側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基と置換されていてもよく、改変された抗体を本明細書に記載されている機能アッセイを使用して、維持されている機能(すなわち、上記の機能)に関して試験することができる。
【0089】
抗LAG−3抗体と同じエピトープに結合する抗体
他の態様において、本明細書は、本発明の抗LAG−3モノクローナル抗体のいずれかと同じLAG−3上のエピトープに結合する抗体(すなわち、ヒトLAG−3への結合に対して本発明のモノクローナル抗体のいずれかと交差競合する能力を有する抗体)を提供する。好ましい態様において、交差競合試験のための参照抗体はモノクローナル抗体25F7、26H10、25E3、8B7、11F2または17E5であり得る。
【0090】
このような交差競合抗体は、標準LAG−3結合アッセイにおける25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および/または17E5と交差競合する能力に基づいて同定することができる。例えば、組換えヒトLAG−3タンパク質をプレート上に固定し、抗体の1つを蛍光標識し、標識抗体の結合と競合しない非標識抗体の能力を評価する、標準ELISAアッセイを使用することができる。さらに、またはあるいは、BIAcore分析を、抗体の交差競合する能力を評価するために使用することができる。試験抗体の、例えば、25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および/または17E5のヒトLAG−3への結合を阻害する能力は、試験抗体がヒトLAG−3への結合に対して25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および/または17E5と競合することができ、したがって25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および/または17E5と同じヒトLAG−3上のエピトープに結合することを証明する。好ましい態様において、25E3、25F7、8B7、26H10、11F2または17E5と同じLAG−3上のエピトープに結合する抗体はヒトモノクローナル抗体である。このようなヒトモノクローナル抗体は、実施例に記載されているとおりに製造され、単離され得る。
【0091】
実施例3Cにおいてさらに議論されているとおり、25E3、25F7および8B7のヒトLAG−3への結合は、ヒトLAG−3の第1の細胞外ドメイン内の“余分なループ”領域に位置付けられている。余分なループ領域の配列は配列番号:79に記載されている。ペプチドスキャン実験を使用して、25E3の余分なループ領域への結合は以下のアミノ酸配列:PGHPLAPG(配列番号:76)に位置付けられており、25F7の余分なループ領域への結合は以下のアミノ酸配列:HPAAPSSW(配列番号:77)に位置付けられており、8B7の余分なループ領域への結合は以下のアミノ酸配列:PAAPSSWG(配列番号:78)に位置付けられている。したがって、好ましい態様において、本発明は、アミノ酸配列PGHPLAPG(配列番号:76)を含むヒトLAG−3のエピトープに結合する抗LAG−3抗体を提供する。他の好ましい態様において、本発明は、アミノ酸配列HPA
APSSW(配列番号:77)またはPAAPSSWG(配列番号:78)を含むヒトLAG−3のエピトープに結合する抗LAG−3抗体を提供する。
【0092】
加工および修飾された抗体
本発明の抗体は、さらに、出発抗体から改変された特性を有し得る修飾された抗体を加工するように、出発物質として本明細書に記載されている1つ以上のV
Hおよび/またはV
L配列を有する抗体を使用して製造することができる。抗体を、1つまたは両方の可変領域(すなわち、V
Hおよび/またはV
L)内、例えば、1つ以上のCDR領域および/または1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上の残基を修飾することにより加工することができる。さらに、または、あるいは、抗体を、例えば、抗体のエフェクター機能を改変するために、定常領域内の残基を修飾することにより加工することができる。
【0093】
1つの態様において、CDRグラフト法は抗体の可変領域を加工するために使用することができる。抗体は、主として6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に存在するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。この理由のため、CDR内のアミノ酸配列はCDR外の配列よりも個々の抗体間でさらに異なっている。CDR配列がほとんどの抗体抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体のフレームワーク配列にグラフトされた特定の天然抗体のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann et al. (1998) Nature
332:323-327; Jones et al. (1986) Nature
321:522-525; Queen et al. (1989) Proc. Natl. Acad. See. U.S.A.
86:10029-10033; 米国特許第5,225,539;5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370号、参照)。
【0094】
したがって、本発明の他の態様は、それぞれ配列番号:1−6、配列番号:7−12ならびに配列番号:13−14、GGYおよび16−18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびに、それぞれ配列番号:19−24、配列番号:25−30および配列番号:31−36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分に関する。したがって、このような抗体はモノクローナル抗体25F7、26H10、25E3、8B7、11F2または17E5のV
HおよびV
LのCDR配列を含み、これらの抗体と異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0095】
このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列の抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースまたは刊行されている文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列のDNA配列は、“VBase”ヒト生殖細胞系列の配列データベース(インターネットwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで利用できる)、ならびにKabat et al. (1991), cited supra; Tomlinson et al. (1992) “The Repertoire of Human Germline V
H Sequence Reveals about Fifty Groups of V
H Segments with Different Hypervariable Loops” J. Mol. Biol.
227:776-798; and Cox et al. (1994) “A Directory of Human Germ-line V
H Segments Reveals a Strong Bias in their Usage” Eur. J. Immunol.
24:827-836(これらのそれぞれの内容を出典明示により本明細書に包含させる)において見出すことができる。他の例として、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子に関する生殖細胞系列のDNA配列は、Genbank データベースにおいて見出すことができる。例えば、HCo7 HuMAb マウスにおいて見出される以下の重鎖生殖細胞系列配列は、Genbank アクセッションナンバー:1−69(NG_0010109、NT_024637 & BC070333)、3−33(NG_0010109 & NT_024637)および3−7(NG_0010109 & NT_024637)において利用することができる。他の例として、HCo12 HuMAb マウスにおいて見出される以下の重鎖生殖細胞系列配列は、Genbank アクセッションナンバー:1−69(NG_0010109、NT_024637 & BC070333)、5−51(NG_0010109 & NT_024637)、4−34(NG_0010109 & NT_024637)、3−30.3(CAJ556644)&3−23(AJ406678)において利用することができる。
【0096】
抗体タンパク質配列は、当業者によく知られている、Gapped BLAST(Altschul et al. (1997)、上記)と称される配列類似検索法の1つを使用して、コンパイルされたタンパク質配列データベースと比較される。
【0097】
本発明の抗体における使用に好ましいフレームワーク配列は、本発明の選択された抗体により使用されるフレームワーク配列と構造的に類似のもの、例えば、本発明の好ましいモノクローナル抗体により使用されるV
H 3−20(配列番号:69)、V
H 4−34(配列番号:61)、V
H 3−33(配列番号:65)またはV
H 1−24(配列番号:73)フレームワーク配列および/またはV
K L18(配列番号:71)、V
K L6(配列番号:63)またはV
K A27(配列番号:67)フレームワーク配列と類似のものである。V
HのCDR1、CDR2およびCDR3配列ならびにV
KのCDR1、CDR2およびCDR3配列を、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子において見出されたものと同一の配列を有するフレームワーク領域にグラフトすることができ、またはCDR配列を生殖細胞系列配列と比較して1つ以上の変異を含むフレームワーク領域にグラフトすることができる。例えば、ある場合において、抗体の抗原結合力を維持または強化するためにフレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが見出されている(例えば、米国特許第5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370号、参照)。
【0098】
別種の可変領域修飾は、V
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2および/またはCDR3領域のアミノ酸残基の変異であり、それによって興味ある抗体の1つ以上の結合特性(例えば、親和性)を改善する。部位特異的突然変異またはPCR介在突然変異を変異を導入するために実施することができ、抗体結合の作用または興味ある他の機能特性を本明細書および実施例に記載されているインビトロまたはインビボアッセイにおいて評価することができる。好ましくは保存的修飾(上記)を導入する。変異はアミノ酸の置換、付加または欠失であり得るが、好ましくは置換である。さらに、一般的にCDR領域内の最大1、2、3、4または5個の残基が改変される。
【0099】
したがって、他の態様において、本明細書は、(a)配列番号:1−6からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:1−6と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
HのCDR1領域;(b)配列番号:7−12からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:7−12と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
HのCDR2領域;(c)配列番号:13−14、GGYおよび16−18からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:13−14、GGYおよび16−18と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
HのCDR3領域;を含む重鎖可変領域;(d)配列番号:19−24からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:19−24と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
LのCDR1領域;(e)配列番号:25−30からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:25−30と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
LのCDR2領域;および(f)配列番号:31−36からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:31−36と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
LのCDR3領域を含む、単離された抗LAG−3モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。
【0100】
本発明の加工された抗体は、修飾が、例えば、抗体の特性を改善するために、V
Hおよび/またはV
L内のフレームワーク残基に行われたものを含む。一般的にこのようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を軽減するために行われる。例えば、1つのアプローチは1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系列配列へと“復帰変異(backmutate)”させることである。さらに特に、体細胞変異がおこった抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は、抗体のフレームワーク配列と抗体が由来する生殖細胞系列配列を比較することにより同定することができる。
【0101】
例えば、表Aは、フレームワーク領域アミノ酸位置(Kabat番号方式を使用して)が生殖細胞系列と異なっており、この位置が示されている置換により生殖細胞系列に復帰変異され得る領域を示す:
【表1】
【0102】
別種のフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的な免疫原性を減少させるために、フレームワーク領域内の、さらには1つ以上のCDR領域内の1つ以上の残基の変異を含む。このアプローチは、また、“脱免疫化”として称され、米国特許公報第20030153043号においてさらに詳細に記載されている。
【0103】
フレームワークまたはCDR領域内で行われる修飾に加え、またはあるいは、本発明の抗体は、一般的に1つ以上の抗体の機能特性、例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合および/または抗原依存細胞毒性を改変するために、Fc領域内に修飾を含むように加工することができる。さらに、本発明の抗体は、再び1つ以上の抗体の機能特性を改変するために、化学的に修飾させるか(例えば、1つ以上の化学部分を抗体に結合させることができる)、またはそのグリコシル化を改変するために修飾させることができる。これらそれぞれの態様はさらに以下に詳細に記載されている。Fc領域における残基の番号方式はKabatのEU indexのものである。
【0104】
好ましい態様において、抗体は、重鎖定常領域のヒンジ領域における位置228に対応する位置にてセリンからプロリンへの変異を含むIgG4アイソタイプ抗体である(S228P;EU index)。この変異は、ヒンジ領域における重鎖中のジスルフィド架橋の不均一性を破壊することが報告されている(Angal et al., 上記;位置241はKabat番号方式に基づく)。例えば、種々の態様において、本発明の抗LAG−3抗体は、上記Angal et al.において記載されている位置241に対応する位置におけるセリンがプロリンに変異している、ヒトIgG4定常領域と連結している25F7(配列番号:37)または26H10(配列番号:38)の重鎖可変領域を含むことができる。したがって、ヒトIgG4定常領域と連結している25F7および26H10重鎖可変領域に関して、この変異はEU indexによるS228P変異に対応する。
【0105】
1つの態様において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域のシステイン残基の数が改変、例えば、増加または減少されるように修飾される。このアプローチは、米国特許第5,677,425号においてさらに記載されている。CH1のヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖の組み立てを促進するか、または抗体の安定性を増強または低下させるために改変される。
【0106】
他の態様において、抗体の生体半減期を短縮するために、抗体のFcヒンジ領域を変異させる。さらに特に、1つ以上のアミノ酸変異は、抗体が天然Fc−ヒンジドメインSpA結合と比較してブドウ球菌タンパク質A(SpA)結合を損なうように、Fc−ヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメイン境界領域に導入される。このアプローチは米国特許第6,165,745号においてさらに詳細に記載されている。
【0107】
他の態様において、生体半減期を延長するために、抗体を修飾する。種々のアプローチが可能である。例えば、米国特許第6,277,375号に記載されているとおり、1つ以上の以下の変異:T252L、T254S、T256Fを導入することができる。あるいは、生体半減期を延長するため、抗体は、米国特許第5,869,046および6,121,022号に記載されているとおり、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取ったサルベージ受容体結合エピトープを含むように、CH1またはCL領域内で改変され得る。
【0108】
さらに他の態様において、抗体のエフェクター機能を改変するために、Fc領域は、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることにより改変される。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1つ以上のアミノ酸は、抗体がエフェクターリガンドに対する改変された親和性を有するが、親抗体の抗原結合力を保持するように、異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。親和性が改変されているエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であり得る。このアプローチは米国特許第5,624,821および5,648,260においてさらに詳細に記載されている。
【0109】
他の態様において、抗体がC1q結合を改変され、そして/または補体依存性細胞毒性(CDC)を減少または排除するように、アミノ酸残基329、331および322から選択される1つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基により置き換えることができる。このアプローチは米国特許第6,194,551号においてさらに詳細に記載されている。
【0110】
他の態様において、アミノ酸位置231および239内の1つ以上のアミノ酸残基を改変し、それによって抗体が補体を固定する能力を改変する。このアプローチはPCT公開WO94/29351においてさらに詳細に記載されている。
【0111】
さらに他の態様において、Fc領域は、抗体が抗体依存細胞傷害性(ADCC)を介在する能力を増強するため、および/または抗体のFcγ受容体に対する親和性を増強するために、以下の位置:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439の1つ以上のアミノ酸を修飾することにより修飾される。このアプローチはPCT公開WO00/42072においてさらに詳細に記載されている。さらに、ヒトIgG1上のFcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対する結合部位がマッピングされており、改良された結合を有する変異体が記載されている(Shields et al. (2001) J. Biol. Chem.
276:6591-6604、参照)。位置256、290、298、333、334および339における特異的変異はFcγRIIIへの結合を改良するために示された。さらに、以下の組合せ変異:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334AがFcγRIII結合を改良するために示された。
【0112】
さらに別の態様において、抗体のグリコシル化は修飾される。例えば、非グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体がグリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、抗体の抗原に対する親和性を増強するために改変することができる。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内でグリコシル化の1つ以上の部位を改変することにより達成することができる。例えば、1つ以上のアミノ酸置換は、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の排除をもたらし、それによってその部位のグリコシル化を排除するように行うことができる。このような非グリコシル化は抗体の抗原に対する親和性を増強し得る。例えば、米国特許第5,714,350および6,350,861号、参照。
【0113】
さらに、またはあるいは、抗体は、改変された型のグリコシル化を有する抗体、例えば、少ない量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体または増加したバイセクティングGlcNac構造を有する抗体を製造することができる。このような改変されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増強することが証明されている。このような炭水化物修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現することにより達成することができる。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は、当分野で報告されており、本発明の組換え抗体を発現する宿主細胞として使用し、それによって改変されたグリコシル化を有する抗体を製造することができる。例えば、細胞系Ms704、Ms705およびMs709はフコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8(α(1,6)−フコシルトランスフェラーゼ)を欠いており、Ms704、Ms705およびMs709細胞系において発現された抗体は炭水化物においてフコースを欠いている。Ms704、Ms705およびMs709 FUT8
−/−細胞系は、2つの置換ベクターを使用して、CHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標的化破壊により創造した(米国特許公開第20040110704号およびYamane-Ohnuki et al. (2004) Biotechnol Bioeng
87:614-22、参照)。他の例として、EP1,176,195は、このような細胞系において発現した抗体がα−1,6結合−関連酵素を減少させるか、または除去することにより低フコシル化を示すような、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を機能的に破壊されている細胞系を記載している。EP1,176,195は、また、抗体のFc領域に結合するか、または酵素活性を有さない、フコースのN−アセチルグルコサミンへの付加に関して低い酵素活性を有する細胞系、例えば、ラット骨髄腫細胞系YB2/0(ATCC CRL 1662)を記載している。PCT公開WO03/035835は、フコースがAsn(297)連結炭水化物に結合する能力を減少させ、また、宿主細胞において発現された抗体の低フコシル化を引き起こす、変異CHO細胞系であるLecl3細胞を記載している(Shields et al. (2002) J. Biol. Chem.
277:26733-26740も参照)。修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、また、PCT公開WO06/089231に記載されているとおり、ニワトリ卵において生産することができる。あるいは、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、植物細胞、例えば、Lemnaにおいて生産することができる。植物系における抗体の生成のための方法は、2006年8月11日に出願されたAlston & Bird LLP 代理人整理番号040989/314911に対応する米国特許出願に記載されている。PCT公開WO99/54342は、加工された細胞系において発現された抗体が、抗体のADCC活性の増強を引き起こすバイセクティングGlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように加工された細胞系を記載している(Umana et al. (1999) Nat. Biotech.
17:176-180も参照)。あるいは、フコシダーゼ酵素を使用して、抗体のフコース残基を開裂させることができる;例えば、フコシダーゼであるα−L−フコシダーゼは抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino et al. (1975) Biochem.
14:5516-23)。
【0114】
本発明により考慮される本明細書の抗体のさらなる修飾はペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生体(例えば、血清)半減期を延長するためにペグ化することができる。抗体をペグ化するために、抗体またはそのフラグメントは、一般的にポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と、1つ以上のPEG部分が抗体または抗体フラグメントに結合するようになる条件下で反応させる。好ましくは、ペグ化は反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)でのアシル化反応またはアルキル化反応により実施することができる。本明細書において使用される“ポリエチレングリコール”なる用語は、モノ(C1−C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの全ての形態を包含することを意図する。1つの態様において、ペグ化される抗体は非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当分野で既知であり、本発明の抗体に適用することができる。例えば、EP0154316およびEP0401384、参照。
【0115】
抗体の物理的特性
本明細書の抗体は、異なるクラスを検出および/または区別するために、種々の物理的特性により特徴付けることができる。
【0116】
本明細書の抗体は、軽鎖または重鎖可変領域のいずれかにおいて1つ以上のグリコシル化部位を含み得る。このようなグリコシル化部位は、抗体の免疫原性の増加または改変された抗原結合による抗体のpKの改変をもたらし得る(Marshall et al (1972) Annu Rev Biochem
41:673-702; Gala and Morrison (2004) J Immunol
172:5489-94; Wallick et al (1988) J Exp Med
168:1099-109; Spiro (2002) Glycobiology
12:43R-56R; Parekh et al (1985) Nature
316:452-7; Mimura et al. (2000) Mol Immunol
37:697-706)。グリコシル化はN−X−S/T配列を含むモチーフにおいて起こることが知られている。場合によっては、可変領域グリコシル化を含まない抗LAG−3抗体を有することが好ましい。これは、可変領域においてグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択するか、またはグリコシル化領域内の残基を変異することのいずれかにより達成することができる。
【0117】
好ましい態様において、本明細書の抗体はアスパラギン異性部位を含まない。アスパラギンのアミド分解は、N−GまたはD−G配列で起こり得、ポリペプチド鎖へねじれを導入し、安定性を減少させる(イソアスパラギン酸効果)イソアスパラギン酸残基の創造をもたらす。
【0118】
それぞれの抗体は、特有の等電点(pI)を有し、一般的に6から9.5のpH範囲内である。IgG1抗体におけるpIは一般的に7−9.5のpH範囲内であり、IgG4抗体におけるpIは一般的に6−8のpH範囲内である。正常範囲外のpIにて抗体がインビボ条件下においていくつかのアンフォールディングおよび不安定性を有し得ることが推測されている。したがって、正常範囲内であるpI値を含む抗LAG−3抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲内のpIを有する抗体を選択すること、または荷電表面残基を変異させることのいずれかにより達成することができる。
【0119】
それぞれの抗体は、インビボにおいてより良い総合安定性を示す高い融点を有する特徴のある融点を有する(Krishnamurthy R and Manning MC (2002) Curr Pharm Biotechnol
3:361-71)。一般的に、T
M1(最初のアンフォールディングの温度)が60℃以上、好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上であることが好ましい。抗体の融点は、示差走査熱量測定(Chen et al (2003) Pharm Res
20:1952-60; Ghirlando et al (1999) Immunol Lett
68:47-52)または円偏光二色性(Murray et al. (2002) J. Chromatogr Sci
40:343-9)を使用して測定することができる。
【0120】
好ましい態様において、抗体は迅速に分解されないものが選択される。抗体の分解は、キャピラリー電気泳動法(CE)およびMALDI−MSを使用して測定することができる(Alexander AJ and Hughes DE (1995) Anal Chem
67:3626-32)。
【0121】
他の好ましい態様において、抗体は、望ましくない免疫応答、および/または、変化した、もしくは好ましくない薬物動態学的特性を引き起こし得る凝集効果が最小であるものを選択される。一般的に、抗体は、25%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下の凝集において許容される。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および光散乱を含むいくつかの技術により測定することができる。
【0122】
抗体を加工する方法
上記のとおり、本明細書において提供されているV
HおよびV
L配列を有する抗LAG−3抗体は、V
Hおよび/またはV
L配列またはそれに結合した定常領域を修飾することにより、新規抗LAG−3抗体を創造するために使用することができる。したがって、本発明の他の局面において、本発明の抗LAG−3抗体の構造的特徴、例えば、25F7、26H10、25E3、8B7、11F2または17E5を使用して、本発明の抗体の少なくとも1つの機能特性、例えば、ヒトLAG−3への結合を保持する構造的に関連した抗LAG−3抗体を創造する。例えば、25F7、26H10、25E3、8B7、11F2または17E5の1つ以上のCDR領域またはそれらの変異は、本明細書に記載されているとおり、さらに、組換え的に加工された本発明の抗LAG−3抗体を創造するために、既知のフレームワーク領域および/または他のCDRで組換えにより組み合わせることができる。他の型の修飾は前のセクションにおいて記載されているものを含む。加工する方法のための出発物質は、本明細書において提供されている1つ以上のV
Hおよび/またはV
L配列またはそれらの1つ以上のCDR領域である。加工された抗体を創造するため、本明細書において提供されている1つ以上のV
Hおよび/またはV
L配列またはそれらの1つ以上のCDR領域を有する抗体を実際に作製(すなわち、タンパク質として発現)する必要はない。それどころか、配列に含まれる情報を、元の配列に由来する“第二世代”配列を創造するために出発物質として使用し、次に“第二世代”配列をタンパク質として製造および発現させる。
【0123】
したがって、他の態様において、本明細書は:
(a)(i)配列番号:1−6からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号:7−12からなる群から選択されるCDR2配列、および/または配列番号:13−14、GGYおよび16−18からなる群から選択されるCDR3配列を含む重鎖可変領域抗体配列;ならびに/または(ii)配列番号:19−24からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号:25−30からなる群から選択されるCDR2配列、および/または配列番号:31−36からなる群から選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域抗体配列を提供し;
(b)重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1個のアミノ酸残基を改変し、少なくとも1個が改変された抗体配列を創造し;そして
(c)タンパク質として改変された抗体配列を発現する
ことを含む、抗LAG−3抗体を製造するための方法を提供する。
【0124】
標準分子生物学技術は、改変された抗体配列を製造し、発現させるために使用することができる。
【0125】
好ましくは、改変された抗体配列によってコードされる抗体は、1つ、いくつか、またはすべての本明細書に記載されている抗LAG−3抗体の機能特性を維持しているものであって、機能特性は以下のもの:
(i)ヒトLAG−3への結合の高い親和性;
(ii)サルLAG−3への結合;
(iii)マウスLAG−3への非結合
(iv)LAG−3のMHCクラスII分子への結合を阻害する能力;および/または
(v)免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)を刺激する能力
を含むが、これらに限定されない。
【0126】
改変された抗体の機能特性は、当分野で利用できる、および/または本明細書に記載されている標準アッセイ、例えば、実施例に記載されているものを使用して評価することができる。
【0127】
本発明の抗体を加工する方法の1つの態様において、変異は抗LAG−3抗体コード配列の全体または一部にランダムまたは選択的に導入することができ、得られた修飾された抗LAG−3抗体を本明細書に記載されている結合活性および/または他の機能特性に関してスクリーニングすることができる。変異方法は当分野で報告されている(例えば、PCT公開WO02/092780およびWO03/074679、参照)。
【0128】
本発明の抗体をコードする核酸分子
本発明の他の局面は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。核酸は、完全な細胞で、細胞溶解物で、または部分的に精製された、もしくは実質的に純粋な形態で存在してよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsCl結合、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動およびその他当分野で既知の技術を含む標準技術により、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば、他の細胞性核酸またはタンパク質から精製されたとき、“単離された”または“実質的に純粋にされた”である。Ausubel, et al., ed. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York、参照。本発明の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであってよく、イントロン配列を含んでいても含まなくてもよい。好ましい態様において、核酸はcDNA分子である。
【0129】
本発明の核酸は標準分子生物学技術を使用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに記載しているとおりのヒト免疫グロブリン遺伝子を有する遺伝子導入マウスから製造されたハイブリドーマ)により発現された抗体に関して、ハイブリドーマにより製造された抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準PCR増幅またはcDNAクローニング技術により得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を使用して)得られた抗体に関して、このような抗体をコードする核酸は遺伝子ライブラリーから回収することができる。
【0130】
好ましい本発明の核酸分子は、25E3、25F7、8B7、26H10、11F2および17E5モノクローナル抗体のV
HおよびV
L配列をコードするものである。25E3、25F7、8B7、26H10、11F2および17E5のV
H配列をコードするDNA配列は、それぞれ配列番号:49−54にて示されている。25E3、25F7、8B7、26H10、11F2および17E5のV
L配列をコードするDNA配列は、それぞれ配列番号:55−60にて示されている。
【0131】
V
HおよびV
LセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたとき、これらのDNAフラグメントは、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子またはscFv遺伝子に変換するために、標準組換えDNA技術によりさらに操作することができる。これらの操作において、V
LまたはV
HをコードするDNAフラグメントは、他のタンパク質、例えば、抗体定常領域もしくはフレキシブルリンカーをコードする他のDNAフラグメントに作動可能に連結されている。この文脈において使用されるとき“作動可能に連結された”なる用語は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がフレーム内に残るように、2つのDNAフラグメントが連結されることを意味することを意図する。
【0132】
V
H領域をコードする単離されたDNAは、V
HをコードするDNAを重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする他のDNA分子に作動可能に連結することにより全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で既知であり(例えば、Kabat et al. (1991)、上記)、これらの領域を含むDNAフラグメントは標準PCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であり得るが、より好ましくはIgG1またはIgG4定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子に関して、V
HをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする他のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0133】
V
L領域をコードする単離されたDNAは、V
LをコードするDNAを軽鎖定常領域CLをコードする他のDNA分子に作動可能に連結することにより全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で既知であり(例えば、Kabat et al.、上記)、これらの領域を含むDNAフラグメントは標準PCR増幅により得ることができる。好ましい態様において、軽鎖定常領域はカッパまたはラムダ定常領域であり得る。
【0134】
scFv遺伝子を創造するため、V
HおよびV
LをコードするDNAフラグメントは、フレキシブルリンカーにより連結されたV
LおよびV
H領域を有するV
HおよびV
L配列が連続する一本鎖タンパク質として発現することができるように、フレキシブルリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly
4−Ser)
3をコードする他のフラグメントに作動可能に連結される(例えば、Bird et al. (1988) Science
242:423-426; Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
85:5879-5883; McCafferty et al., (1990) Nature
348:552-554、参照)。
【0135】
本発明のモノクローナル抗体の生成
本明細書のモノクローナル抗体(mAbs)は、Kohler and Milstein (1975) Nature
256: 495の標準体細胞ハイブリダイゼーション(ハイブリドーマ)技術を使用して、生産することができる。モノクローナル抗体を生産するための他の態様は、Bリンパ球のウイルスまたは発癌性形質転換およびファージディスプレイ技術を含む。キメラまたはヒト化抗体も当分野で知られている。例えば、米国特許第4,816,567;5,225,539;5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370、参照(これらの内容を出典明示によりその全体を明確に本明細書に包含させる)。
【0136】
好ましい態様において、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。ヒトLAG−3に対するこのようなヒトモノクローナル抗体は、マウス系よりむしろヒト免疫系部分を有する遺伝子導入されたまたは染色体導入されたマウスを使用して製造することができる。これらの遺伝子導入されたまたは染色体導入されたマウスは、本明細書において各々HuMAbマウス
(登録商標)およびKMマウス
(登録商標)と称されるマウスを含み、本明細書において“ヒトIgマウス”と総称される。
【0137】
HuMAbマウス
(登録商標)(Medarex
(登録商標), Inc.)は、内因性μおよびκ鎖座を不活性化する標的変異とともに、非再配置ヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座(miniloci)を含む(例えば、Lonberg et al. (1994) Nature
368(6474): 856-859、参照)。したがって、マウスはマウスIgMまたはκの発現低下を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子がクラス切り換えと体細胞変異を受け、高い親和性ヒトIgGκモノクローナルを製造する(Lonberg et al. (1994)、上記; Lonberg (1994) Handbook of Experimental Pharmacology
113:49-101; Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol.
13: 65-93およびHarding and Lonberg (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci.
764:536-546)。HuMAbマウス
(登録商標)の製造および使用ならびにこのようなマウスが有するゲノム修飾は、さらにTaylor et al. (1992) Nucleic Acids Research
20:6287-6295; Chen et al. (1993) International Immunology
5: 647-656; Tuaillon et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
90:3720-3724; Choi et al. (1993) Nature Genetics
4:117-123; Chen et al. (1993) EMBO J.
12: 821-830; Tuaillon et al. (1994) J. Immunol.
152:2912-2920; Taylor et al. (1994) International Immunology
6: 579-591;およびFishwild et al. (1996) Nature Biotechnology
14: 845-851に記載されている(これらの全ての内容を出典明示によりその全体を明確に本明細書に包含させる)。さらに、米国特許第5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,789,650;5,877,397;5,661,016;5,814,318;5,874,299;5,770,429;および5,545,807号;PCT公開番号WO92/03918;WO93/12227;WO94/25585;WO97/13852;WO98/24884;WO99/45962およびWO01/14424(これらの内容を出典明示によりその全体を本明細書に包含させる)。
【0138】
他の態様において、本発明のヒト抗体は、導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を有するマウス、例えば、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を有するマウスを使用して製造することができる。“KMマウス
(登録商標)”として本明細書で称されるこのようなマウスは、PCT公開WO02/43478において詳細に記載されている。内因性FcγRIIB受容体遺伝子のホモ接合体の崩壊をさらに含むこのマウスの修飾された形態も、PCT公開WO02/43478に記載されており、“KM/FCGR2Dマウス
(登録商標)”と称されている。加えて、HCo7もしくはHCo12重鎖導入遺伝子のいずれか、またはその両方を有するマウスを使用することができる。
【0139】
さらなる遺伝子導入動物の態様は、Xenomouseを含む(Abgenix, Inc.、米国特許第5,939,598;6,075,181;6,114,598;6,150,584および6,162,963号)。さらなる態様は、“TCマウス”(Tomizuka et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
97:722-727)およびヒト重鎖および軽鎖導入染色体を有するウシ(Kuroiwa et al. (2002) Nature Biotechnology
20:889-894;PCT公開WO02/092812)を含む。これらの特許および刊行物の内容を出典明示によりその全体を明確に本明細書に包含させる。
【0140】
1つの態様において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ方法を使用して製造される。例えば、米国特許第5,223,409;5,403,484;5,571,698;5,427,908;5,580,717;5,969,108;6,172,197;5,885,793;6,521,404;6,544,731;6,555,313;6,582,915;および6,593,081号、参照(これらの内容を出典明示によりその全体を本明細書に包含させる)。
【0141】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト抗体応答が免疫化で製造され得るように、ヒト免疫細胞を再構成したSCIDマウスを使用して製造することもできる。例えば、米国特許第5,476,996および5,698,767号、参照(これらの内容を出典明示によりその全体を本明細書に包含させる)。
【0142】
他の態様において、ヒト抗LAG−3抗体は、ファージがLAG−3であらかじめ免疫化された遺伝子導入動物において生産される抗体をコードする核酸を含む、ファージディスプレイを使用して製造される。好ましい態様において、遺伝子導入動物はHuMab、KMまたはKirinマウスである。例えば、米国特許第6,794,132号、参照(この内容を出典明示によりその全体を本明細書に包含させる)。
【0143】
ヒトIgマウスの免疫化
本発明の1つの態様において、ヒトIgマウスは、LAG−3抗原、組換えLAG−3タンパク質またはLAG−3タンパク質を発現する細胞の精製または濃縮された製造物にて免疫化される。例えば、Lonberg et al. (1994)、上記; Fishwild et al. (1996)、上記;PCT公開WO98/24884またはWO01/14424、参照(これらの内容を出典明示によりその全体を本明細書に包含させる)。好ましい態様において、6−16週齢マウスを5−50μgのLAG−3タンパク質にて免疫化する。あるいは、非−LAG−3ポリペプチドに融合したLAG−3の部分を使用する。
【0144】
1つの態様において、遺伝子導入マウスを、完全フロイントアジュバント中のLAG−3抗原を腹腔内(IP)または静脈内(IV)投与により免疫化させ、次に、不完全フロイントアジュバント中の抗原をIPまたはIV免疫化させる。他の態様において、フロイント以外のアジュバントまたはアジュバントの非存在下で全細胞を使用する。血漿をELISAによりスクリーニングし、十分な力価の抗LAG−3ヒト免疫グロブリンを有するマウス由来の細胞を融合のために使用することができる。
【0145】
本発明のヒトモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマの製造
本発明のヒトモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを製造するため、免疫マウスから脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、適当な不死化細胞系、例えば、マウス骨髄腫細胞系に融合することができる。得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体の生成に関してスクリーニングすることができる。ハイブリドーマの製造は当分野で知られている。例えば、Harlow and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New York、参照。
【0146】
本発明のモノクローナル抗体を生産するトランスフェクトーマの製造
本発明の抗体は、また、例えば、当分野で既知である組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法の組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマ中で製造することができる(例えば、Morrison, S. (1985) Science
229:1202)。1つの態様において、標準分子生物学技術により得られる部分的または全長軽鎖および重鎖をコードするDNAは、遺伝子が転写および翻訳調節配列に作動可能に連結されるように、1つ以上の発現ベクターに挿入される。これに関して、“作動可能に連結された”なる用語は、抗体遺伝子が、ベクター内の転写および翻訳調節配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を調節する意図された機能を果たすように、ベクターに連結されることを意味することを意図する。
【0147】
“調節配列”なる用語は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳をコントロールするプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990))に記載されている。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列は、哺乳動物細胞における高レベルタンパク質発現を指示するウイルスエレメント、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびパピローマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーを含む。あるいは、非ウイルス調節配列は、例えば、ユビキチンプロモーターまたはβ−グロビンプロモーターを使用され得る。なおさらに、調節エレメントは、SV40初期プロモーターおよびヒト1型T細胞白血病ウイルスの長い末端反復配列からの配列を含む異なる源からの配列、例えば、SRαプロモーター系を含む(Takebe et al. (1988) Mol. Cell. Biol.
8:466-472)。発現ベクターおよび発現コントロール配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。
【0148】
抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、同じ、または異なる発現ベクターに挿入することができる。好ましい態様において、可変領域は、V
Hセグメントがベクター内のC
Hセグメントと作動可能に連結し、V
Lセグメントがベクター内のC
Lセグメントと作動可能に連結するように、所望のアイソタイプの重鎖定常領域および軽鎖定常領域をすでにコードする発現ベクターに可変領域を挿入することにより、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を創造するために使用される。さらに、またはあるいは、組換え発現ベクターは、宿主細胞から抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドがインフレームにおいて抗体鎖遺伝子のアミノ末端に連結するように、ベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0149】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば、宿主細胞においてベクターの複製を調節する配列(例えば、複製開始点)および選択マーカー遺伝子を有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが挿入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216;4,634,665および5,179,017号、参照)。例えば、一般的に、選択マーカー遺伝子は、ベクターが挿入されている宿主細胞において薬物、例えば、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートに対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr−宿主細胞中で使用するため)およびneo遺伝子(G418の選択のため)を含む。
【0150】
軽鎖および重鎖の発現のため、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを、標準技術により宿主細胞にトランスフェクトする。“トランスフェクション”なる用語の種々の形態は、外来DNAを原核生物または真核生物宿主細胞に導入するために一般的に使用されている広範な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを含むことを意図する。原核生物または真核生物宿主細胞のいずれにおいても本発明の抗体を発現させることは理論上可能であるが、真核細胞、特に哺乳動物細胞が、原核細胞よりも適当に折りたたまれた免疫学的に活性な抗体をアッセンブルおよび分泌しやすいため、真核細胞、より好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が非常に好ましい。
【0151】
本発明の組換え抗体を発現させるための好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(例えば、R. J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) J. Mol. Biol.
159:601-621に記載されているようなDHFR選択可能マーカーと使用されるUrlaub and Chasin, (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
77:4216-4220に記載されているdhfr
− CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む。特に、NSO骨髄腫細胞の使用に関して、さらなる好ましい発現系はWO87/04462、WO89/01036およびEP338,841に記載されているGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入するとき、宿主細胞中で抗体の発現、または、より好ましくは、宿主細胞を増殖させる培養培地中への抗体の分泌を可能にする十分な時間、宿主細胞を培養することにより抗体を製造する。抗体は標準タンパク質精製法を使用して培養培地から回収することができる。
【0152】
抗原への抗体結合の特性化
本発明の抗体は、例えば、標準ELISAにより、ヒトLAG−3への結合に対して試験することができる。抗−LAG−3ヒトIgGは、さらにウエスタンブロット法によりLAG−3抗原における反応性を試験することができる。本発明の抗体の結合特異性は、また、LAG−3タンパク質を発現する細胞への抗体の結合をモニタリングすること、例えば、フローサイトメトリーにより測定することができる。これらの方法は当分野で既知である。例えば、Harlow and Lane (1988)、上記参照。
【0153】
免疫抱合体
本発明の抗体は、免疫抱合体、例えば、抗体−薬物複合体(ADC)を形成するために治療剤と結合させることができる。適当な治療剤は、代謝拮抗剤、アルキル化剤、DNA副溝結合剤、DNA挿入剤、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核外輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼIもしくはII阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質および抗有糸分裂剤を含む。ADCにおいて、抗体および治療剤は、好ましくは、開裂可能なリンカー、例えば、ペプチジル、ジスルフィドまたはヒドラゾンリンカーを介して結合される。さらに好ましくは、リンカーは、ペプチジルリンカー、例えば、Val−Cit、Ala−Val、Val−Ala−Val、Lys−Lys、Pro−Val−Gly−Val−Val(配列番号:15)、Ala−Asn−Val、Val−Leu−Lys、Ala−Ala−Asn、Cit−Cit、Val−Lys、Lys、Cit、SerまたはGluである。ADCは、米国特許第7,087,600;6,989,452;および7,129,261号;PCT公開WO02/096910;WO07/038658;WO07/051081;WO07/059404;WO08/083312;およびWO08/103693;米国特許公開20060024317;20060004081;および20060247295に記載されているとおりに製造することができる(これらの記載を出典明示により本明細書に包含させる)。
【0154】
二重特異性分子
他の局面において、本発明は、少なくとも1つの他の機能分子、例えば、他のペプチドまたはタンパク質(例えば、受容体に対する他の抗体またはリガンド)と連結している抗LAG−3抗体を含む二重特異性分子を特徴とし、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を製造する。したがって、本明細書において使用される“二重特異性分子”は3つ以上の特異性を有する分子を含む。好ましい態様において、二重特異性分子は、LAG−3に対する第1の結合特異性およびLAG−3を発現する標的細胞を殺すことができる細胞毒性エフェクター細胞を補充するトリガー分子に対する第2の結合特異性を含む。適当なトリガー分子の例はCD64、CD89、CD16およびCD3である。例えば、Kufer et al., TRENDS in Biotechnology, 22 (5), 238-244 (2004)、参照。
【0155】
1つの態様において、二重特異性分子は、抗−Fc結合特異性および抗−LAG−3結合特異性に加えて、第3の特異性を有する。第3の特異性は、抗増強因子(anti-enhancement factor)(EF)、例えば、細胞毒性活性に関与する表面タンパク質に結合し、それにより標的細胞に対する免疫応答を増加させる分子に対してであり得る。例えば、抗増強因子は、細胞毒性T細胞(例えば、CD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40またはICAM−1を介して)または他の免疫細胞に結合し、標的細胞に対する免疫応答を増加させることができる。
【0156】
二重特異性分子は多数の異なる形式およびサイズであり得る。粒径スペクトルの一方において、二重特異性分子は、同一の特異性の2つの結合アームを有する代わりに、それぞれ異なる特異性を有する2つの結合アームを有することを除いては伝統的な抗体形式を維持している。他方において、ペプチド鎖により連結した2つの一本鎖抗体フラグメント(scFv’s)、いわゆるBs(scFv)
2構築物からなる二重特異性分子である。中間サイズの二重特異性分子は、ペプチジルリンカーにより連結した2つの異なるF(ab)フラグメントを含む。これらの二重特異性分子および他の形式は、遺伝子工学、体細胞ハイブリダイゼーションまたは化学的手法により製造することができる。例えば、Kufer et al, 上記; Cao and Suresh, Bioconjugate Chemistry, 9 (6), 635-644 (1998);およびvan Spriel et al., Immunology Today, 21 (8), 391-397 (2000)、参照(本明細書に記載されている)。
【0157】
医薬組成物
他の局面において、本明細書は、製剤化された本明細書の抗体を薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物を提供する。所望により1種以上のさらなる薬学的に活性な成分、例えば、他の抗体または薬物を含んでもよい。本発明の医薬組成物は、また、抗LAG−3抗体がワクチンに対する免疫応答を増強するように、例えば、他の免疫刺激剤、抗癌剤、抗ウイルス剤またはワクチンと併用療法において投与することができる。
【0158】
医薬組成物はあらゆる賦形剤を含み得る。使用することができる賦形剤は、担体、界面活性剤、増粘剤または乳化剤、固体結合剤、分散もしくは懸濁補助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、崩壊剤、滑剤、甘味剤、防腐剤、等張剤およびそれらの組合せを含む。適当な賦形剤の選択および使用は、Gennaro, ed., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 2003)(この記載は出典明示により本明細書に包含させる)に教示されている。
【0159】
好ましくは、医薬組成物は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適当である。投与経路に依存して、活性な化合物は、不活性にし得る酸の作用および他の天然条件から保護するために物質に覆われていてもよい。本明細書において使用されるフレーズ“非経口投与”は、経腸および局所投与以外の通常注射による投与方式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入を含むが、これらに限定されない。あるいは、本発明の抗体は、非経口経路、例えば、局所、表皮または粘膜投与経路により、例えば、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下または局所的に投与され得る。
【0160】
本発明の医薬化合物は薬学的に許容される塩の形態であり得る。“薬学的に許容される塩”は、親化合物の所望の生物学的活性を保持するが、望ましくない毒性作用を付与しない塩を意味する。このような塩の例は酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、無毒性の無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸など、ならびに無毒性の有機酸、例えば、脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などに由来するものを含む。塩基付加塩は、アルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど、ならびに無毒性の有機アミン、例えば、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものを含む。
【0161】
医薬組成物は滅菌水溶液または分散媒の形態であり得る。それらは、また、マイクロエマルジョン、リポソームまたはその他の高濃度の薬物に適した調整構造物において製剤化され得る。
【0162】
単位投与形態を製造するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される対象および特定の投与経路に依存して変化し、一般的に治療効果を引き起こす組成物の量である。一般的に、100%のうち、この量は薬学的に許容される担体との組み合わせで、活性成分が約0.01%から約99%、好ましくは約0.1%から約70%、さらに好ましくは約1%から約30%の範囲である。
【0163】
投与レジメンは所望の最適応答(例えば、治療応答)を提供するために調節される。例えば、単回ボーラスで投与してもよく、経時的に数回の分割投与で投与してもよく、または治療状況の緊急性により指示されるとき、比例的に用量を減少または増加してもよい。とりわけ、投与の容易性および投与量の均一性のため、非経口組成物を投与単位形態で製剤化することが有利である。本明細書において使用される投与単位形態は、処置される対象に対する単位用量として適した物理的に分離した単位を意味し;それぞれの単位は必要な医薬担体と一緒に所望の治療効果を引き起こすように計算されたあらかじめ決められた量の活性な化合物を含む。あるいは、頻繁な投与があまり必要でない場合、抗体は徐放性製剤として投与することができる。
【0164】
抗体の投与に関して、用量は約0.0001から100mg/kg、さらに通常、0.01から5mg/kg宿主体重の範囲である。例えば、用量は0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重または1−10mg/kgの範囲内であり得る。典型的な処置レジメンは1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1月に1回、3月に1回または3から6月に1回の投与を必要とする。本発明の抗LAG−3抗体のための好ましい投与レジメンは、静脈内投与による1mg/kg体重または3mg/kg体重を含み、抗体を下記投与スケジュール:(i)4週間ごとに6回投与、次に3月ごと;(ii)3週間ごと;(iii)3mg/kg体重を1回、次に3週間ごとに1mg/kg体重の1つを使用して与える。いくつかの方法において、用量は約1−1000μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調節され、いくつかの方法において約25−300μg/mlである。
【0165】
本発明の抗LAG−3抗体の“治療有効量”は、好ましくは病状の重症度の減少、疾患の無症状期間の頻度および持続時間の増加、または病気の苦痛に起因する欠陥または障害の阻止をもたらすものである。例えば、腫瘍を有する対象の処置に関して、“治療有効量”は、未処置の対象と比較して、好ましくは腫瘍増殖を少なくとも約20%、さらに好ましくは少なくとも約40%、さらに好ましくは少なくとも約60%、さらに好ましくは少なくとも約80%阻害する。治療有効量の治療化合物は、腫瘍サイズを減少させるか、または一般的にヒトもしくは他の哺乳動物である対象における症状を改善することができる。
【0166】
医薬組成物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤であり得る。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用することができる。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978、参照。
【0167】
治療組成物は、医療デバイス、例えば、(1)無針皮下注射デバイス(例えば、US5,399,163;5,383,851;5,312,335;5,064,413;4,941,880;4,790,824;および4,596,556);(2)微小注入ポンプ(US4,487,603);(3)経皮デバイス(US4,486,194);(4)点滴装置(US4,447,233および4,447,224);および(5)浸透デバイス(US4,439,196および4,475,196);(これらの文献は出典明示により本明細書に包含される)を介して投与することができる。
【0168】
1つの態様において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、インビボで適切な分布を確実にするため製剤化することができる。例えば、本発明の治療化合物が血液脳関門を通過することを確実にするため、それらはリポソーム中で製剤化することができ、これはさらに特定の細胞または臓器への選択的輸送を増強するための標的分子を含み得る。例えばUS4,522,811;5,374,548;5,416,016;および5,399,331;V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol.
29:685; Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun.
153:1038; Bloeman et al. (1995) FEBS Lett.
357:140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother.
39:180; Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol.
1233:134; Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem.
269:9090; Keinanen and Laukkanen (1994) FEBS Lett.
346:123; およびKillion and Fidler (1994) Immunomethods
4:273、参照。
【0169】
本発明の使用および方法
本発明の抗体、抗体組成物および方法は、例えば、LAG−3の検出またはLAG−3の遮断(Blockade)による免疫応答の増強に関する、多数のインビトロおよびインビボにおける有用性を有する。好ましい態様において、本発明の抗体はヒト抗体である。例えば、これらの分子は、種々の状態における免疫を増強するために、インビトロまたはエキソビボにおいて培養中の細胞、または、例えば、インビボにおいてヒト対象に投与することができる。したがって、1つの局面において、本発明は、対象における免疫応答が修飾されるように、本発明の抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象における免疫応答を修飾する方法を提供する。好ましくは、応答は増強されるか、刺激されるか、または上方制御される。
【0170】
好ましい対象は、免疫応答の増強の必要なヒト患者を含む。方法は、免疫応答(例えば、T細胞介在免疫応答)を増加させることにより処置することができる障害を有するヒト患者を処置するために特に適当である。特定の態様において、方法はインビボにおける癌の処置に特に適当である。免疫の抗原特異的増強を達成するために、抗LAG−3抗体を興味ある抗原と共に投与するか、または抗原がすでに処置される対象(例えば、腫瘍を有するか、またはウイルスを有する対象)に存在する。LAG−3に対する抗体を他の薬剤と共に投与するとき、その2つは順にまたは同時にのいずれかで投与することができる。
【0171】
本発明は、さらに、抗体またはその部分とヒトLAG−3の複合体の形成を可能にする条件下で、ヒトLAG−3に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分とサンプルおよび対照サンプルを接触させることを含む、サンプルにおけるヒトLAG−3抗原の存在を検出するか、またはヒトLAG−3抗原の量を測定するための方法を提供する。次に複合体の形成を検出する(対照サンプルと比較して、サンプル間の複合体形成の違いがサンプルにおけるヒトLAG−3抗原の存在を示す)。さらに、本発明の抗LAG−3抗体は、イムノアフィニティー精製を介して、ヒトLAG−3を精製するために使用することができる。
【0172】
LAG−3のMHCクラスII分子への結合を阻害し、抗原特異的T細胞応答を刺激する、本発明の抗LAG−3抗体の能力を考慮すると、本発明は、また、抗原特異的T細胞応答を刺激するか、増強するか、または上方制御するために、インビトロまたはインビボにて本発明の抗体を使用する方法を提供する。例えば、本発明は、抗原特異的T細胞応答が刺激されるように、該T細胞を本発明の抗体と接触させることを含む、抗原特異的T細胞応答を刺激する方法を提供する。抗原特異的T細胞応答の適当なあらゆる指標が、抗原特異的T細胞応答を測定するために使用することができる。このような適当な指標の非限定的な例は、抗体の存在下におけるT細胞増殖の増加および/または抗体の存在下におけるサイトカイン生成の増加を含む。好ましい態様において、抗原特異的T細胞によるインターロイキン−2生成が刺激される。
【0173】
本発明は、また、対象における免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)が刺激されるように、本発明の抗体を対象に投与することを含む、対象における免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)を刺激する方法を提供する。好ましい態様において、対象は腫瘍を有する対象であり、腫瘍に対する免疫応答が刺激される。他の好ましい態様において、対象はウイルスを有する対象であり、ウイルスに対する免疫応答が刺激される。
【0174】
他の局面において、本発明は、腫瘍の増殖を対象において阻害するように、本発明の抗体を対象に投与することを含む、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法を提供する。さらに他の局面において、本発明は、ウイルス感染を対象において処置するように、本発明の抗体を対象に投与することを含む、対象におけるウイルス感染を処置する方法を提供する。
【0175】
本発明のこれらの方法および他の方法は、以下にさらに詳細に記載されている。
【0176】
癌
抗体によるLAG−3の遮断は、患者における癌細胞に対する免疫応答を増強することができる。1つの局面において、本発明は、癌性腫瘍の増殖が阻害されるように、抗LAG−3抗体を使用するインビボにおける対象の処置に関する。抗LAG−3抗体は、癌性腫瘍の増殖を阻害するために単独で使用することができる。あるいは、抗LAG−3抗体は、以下に記載されているように、他の免疫原、標準癌処置または他の抗体と共に使用することができる。
【0177】
したがって、1つの態様において、本発明は、治療有効量の抗LAG−3抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を提供する。好ましくは、抗体はヒト抗LAG−3抗体(本明細書に記載されているヒト抗−ヒトLAG−3抗体のいずれかのような)である。さらに、またはあるいは、抗体はキメラまたはヒト化抗LAG−3抗体であり得る。
【0178】
本発明の抗体を使用して増殖が阻害され得る好ましい癌は、一般的に免疫療法に応答する癌を含む。処置のために好ましい癌の非限定的な例は、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓癌(例えば、明細胞癌腫)、前立腺癌(例えば、ホルモン抵抗性前立腺癌)、乳癌、大腸癌および肺癌(例えば、非小細胞性肺癌)を含む。さらに、本発明は、本発明の抗体を使用して増殖が阻害され得る難治性または再発性悪性腫瘍を含む。
【0179】
本発明の方法を使用して処置することができるほかの癌の例は、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頸部の癌、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸の癌腫、腟の癌腫、外陰の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病を含む慢性または急性白血病、幼児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱の癌、腎臓または尿管の癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管形成、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストにより誘導される癌を含む環境的に誘導される癌、および前記癌の組合せを含む。本発明は、また、転移性癌、とりわけPD−L1を発現する転移性癌の処置に有用である(Iwai et al. (2005) Int. Immunol.
17:133-144)。
【0180】
所望により、LAG−3に対する抗体は、免疫原、例えば、癌細胞、精製された腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子をトランスフェクトされた細胞(He et al (2004) J. Immunol.
173:4919-28)と組み合わせることができる。使用され得る腫瘍ワクチンの非限定的な例は、黒色腫抗原のペプチド、例えば、gp100、MAGE抗原、Trp−2、MART1および/またはチロシナーゼのペプチド、またはサイトカインGM−CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞(以下にさらに記載されている)を含む。
【0181】
ヒトにおいて、いくつかの腫瘍、例えば、黒色腫は免疫原性であることが示されている。LAG−3遮断によるT細胞活性化の閾値を上げることにより、宿主における腫瘍応答を活性化させることができる。
【0182】
LAG−3遮断は、ワクチン接種プロトコールと組み合わされたとき、さらに有効である可能性がある。腫瘍に対するワクチン接種のための多くの実験的戦略が考案されている(Rosenberg, S., 2000, Development of Cancer Vaccines, ASCO Educational Book Spring: 60-62; Logothetis, C., 2000, ASCO Educational Book Spring: 300-302; Khayat, D. 2000, ASCO Educational Book Spring: 414-428; Foon, K. 2000, ASCO Educational Book Spring: 730-738、参照;Restifo, N. and Sznol, M., Cancer Vaccines, Ch. 61, pp. 3023-3043 in DeVita et al. (eds.), 1997, Cancer: Principles and Practice of Oncology, Fifth Editionも参照。)。これらの戦略の1つにおいて、ワクチンは自己または同種異系の腫瘍細胞を使用して製造される。これらの細胞ワクチンは、GM−CSFを発現するように腫瘍細胞に形質導入されるとき、さらに有効であることが示された。GM−CSFは、腫瘍ワクチン接種に対する抗原提示の強力な活性化因子であることが示されている(Dranoff et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A.
90: 3539-43)。
【0183】
種々の腫瘍における遺伝子発現および大規模な遺伝子発現パターンの研究により、いわゆる腫瘍特異的抗原が定義された(Rosenberg, SA (1999) Immunity
10: 281-7)。多数の場合、これらの腫瘍特異的抗原は、腫瘍および腫瘍が発生した細胞において発現される分化抗原、例えば、メラノサイト抗原gp100、MAGE抗原およびTrp−2である。より重要なことには、これらの多数の抗原は、宿主において見られる腫瘍特異的T細胞の標的であることを示すことができる。LAG−3遮断は、これらのタンパク質に対する免疫応答を発生させるために、腫瘍において発現される組換えタンパク質および/またはペプチドの回収物と共に使用することができる。これらのタンパク質は、通常、免疫系により自己抗原として見られ、したがって、それらに対して寛容性である。腫瘍抗原は、染色体のテロメアの合成のために必要であり、ヒト癌の85%以上および非常に限定された体細胞組織において発現されている、タンパク質テロメラーゼを含むことができる(Kim et al. (1994) Science
266: 2011-2013)。(これらの体細胞組織は、種々の手段により免疫攻撃から保護され得る)。腫瘍抗原は、また、タンパク質配列を改変するか、または2つの無関係な配列(すなわち、フィラデルフィア染色体におけるbcr−abl)間の融合タンパク質を創造する体細胞変異による癌細胞において発現される“新抗原”、またはB細胞腫瘍由来のイディオタイプであり得る。
【0184】
他の腫瘍ワクチンは、ヒト癌に関与するウイルス、例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBVおよびHCV)およびカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)由来のタンパク質を含み得る。LAG−3遮断と共に使用され得る腫瘍特異的抗原の他の形態は、腫瘍組織それ自体から単離された精製された熱ショックタンパク質(HSP)である。これらの熱ショックタンパク質は腫瘍細胞由来のタンパク質のフラグメントを含む、これらのHSPは腫瘍免疫を誘発するための抗原提示細胞への送達において非常に効率的である(Suot & Srivastava (1995) Science
269:1585-1588; Tamura et al. (1997) Science
278:117-120)。
【0185】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的応答を起こすために使用され得る強力な抗原提示細胞である。DCを、エキソビボにおいて生産し、種々のタンパク質およびペプチド抗原ならびに腫瘍細胞抽出物で充填することができる(Nestle et al. (1998) Nature Medicine
4: 328-332)。DCは、また、遺伝的手段により形質導入され、これらの腫瘍抗原を同様に発現することができる。DCは、また、免疫化の目的のために、腫瘍細胞に直接融合されている(Kugler et al. (2000) Nature Medicine
6:332-336)。ワクチン接種の方法として、DC免疫化は、LAG−3遮断と有効に組み合わせて、さらに強力な抗腫瘍応答を活性化することができる。
【0186】
LAG−3遮断は、また、標準癌処置と組み合わせられ得る。LAG−3遮断は、化学療法レジメンと有効に組み合わせられ得る。これらの場合、投与される化学療法剤の用量を減少させることができる可能性がある(Mokyr et al. (1998) Cancer Research
58: 5301-5304)。このような組合せの例は、黒色腫の処置のためにデカルバジンと組み合わせられた抗LAG−3抗体である。このような組合せの他の例は、黒色腫の処置のためにインターロイキン−2(IL−2)と組み合わせられた抗LAG−3抗体である。LAG−3遮断および化学療法の組合せ使用を支持する科学的論拠は、多数の化学療法化合物の細胞毒性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原のレベルの増加をもたらすはずであるというものである。細胞死を介してLAG−3遮断と相乗効果をもたらし得る他の組合せ治療は、放射線、外科手術およびホルモン遮断である。これらのそれぞれのプロトコールは、宿主における腫瘍抗原の源を創造する。血管形成阻害剤は、また、LAG−3遮断と組み合わせられ得る。血管形成の阻害は腫瘍細胞死を誘導し、腫瘍抗原を宿主の抗原提示経路に提供し得る。
【0187】
LAG−3を遮断する抗体は、また、FcαまたはFcγ受容体を発現するエフェクター細胞を腫瘍細胞に標的化する二重特異性抗体と組み合わせて使用することができる(例えば、米国特許第5,922,845および5,837,243号、参照)。二重特異性抗体は、2つの別々の抗原を標的化するために使用することができる。例えば、抗−Fc受容体/抗腫瘍抗原(例えば、Her−2/neu)二重特異性抗体は、マクロファージを腫瘍部位に標的化するために使用されている。この標的化は腫瘍特異的応答をさらに有効に活性化し得る。T細胞群のこれらの応答はLAG−3遮断の使用により増加し得る。あるいは、抗原は、腫瘍抗原および樹状細胞特異的細胞表面マーカーに結合する二重特異性抗体の使用によりDCに直接送達され得る。
【0188】
腫瘍は、多種多様のメカニズムにより宿主の免疫監視から逃れる。多数のこれらのメカニズムは、腫瘍により発現され、免疫抑制性であるタンパク質の不活性化により克服され得る。これらは、数ある中でTGF−β(Kehrl et al. (1986) J. Exp. Med.
163: 1037-1050)、IL−10(Howard & O’Garra (1992) Immunology Today
13: 198-200)およびFasリガンド(Hahne et al. (1996) Science
274: 1363-1365)を含む。これらの存在物それぞれに対する抗体は、免疫抑制剤の効果を中和し、宿主による腫瘍免疫応答を支持するために、抗−LAG−3と組み合わせて使用することができる。
【0189】
宿主の免疫応答性を活性化する他の抗体は、抗−LAG−3と組み合わせて使用することができる。これらは、DC機能および抗原提示を活性化する、樹状細胞の表面上の分子を含む。抗−CD40抗体は、有効にT細胞ヘルパー活性と置き換えることができの代わりに(Ridge et al. (1998) Nature 393: 474-478)、LAG−3抗体と共に使用することができる(Ito et al. (2000) Immunobiology
201 (5) 527-40)。例えば、CTLA−4(例えば、米国特許第5,811,097号)、OX−40(Weinberg et al. (2000) Immunol
164: 2160-2169)、4−1BB(Melero et al. (1997) Nature Medicine
3: 682-685 (1997)およびICOS(Hutloff et al. (1999) Nature
397: 262-266)のようなT細胞共刺激分子に対する抗体の活性化は、また、T細胞活性化のレベルを増加させるために提供され得る。
【0190】
骨髄移植は、現在、造血起源の種々の腫瘍を処置するために使用されている。移植片対宿主病はこの処置の結果であるが、治療利益は移植片対腫瘍応答から得ることができる。LAG−3遮断は、ドナー移植腫瘍特異的T細胞の有効性を増加させるために使用することができる。
【0191】
腫瘍に対する抗原特異的T細胞を刺激するために、エキソビボにおける抗原特異的T細胞の活性化および増殖ならびにこれらの細胞のレシピエントへの養子移入に関連する、いくつかの実験的処置プロトコールもある(Greenberg & Riddell (1999) Science
285: 546-51)。これらの方法は、また、感染因子、例えば、CMVに対するT細胞応答を活性化するために使用することができる。抗LAG−3抗体の存在下におけるエキソビボ活性化は、養子移入されたT細胞の頻度および活性を増加させることができる。
【0192】
感染症
本発明の他の方法は、特定の毒素または病原体に暴露されている患者を処置するために使用される。したがって、本発明の他の局面は、対象が感染病を処置されるように、抗LAG−3抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む対照における感染病を処置する方法を提供する。好ましくは、抗体はヒト抗−ヒトLAG−3抗体(本明細書に記載されているヒト抗LAG−3抗体のいずれかのような)である。さらに、またはあるいは、抗体はキメラまたはヒト化抗体であり得る。
【0193】
上記の腫瘍に対する適用と同様に、抗体介在LAG−3遮断は、病原体、毒素および自己−抗原に対する免疫応答を刺激するために、単独またはアジュバントとして、ワクチンと組み合わせて使用することができる。この治療アプローチが特に有用であり得る病原体の例は、現在、有効であるワクチンがない病原体、または慣用のワクチンが十分に有効でない病原体を含む。これらは、HIV、肝炎(A、B&C)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、黄色ブドウ球菌、緑膿菌を含むが、これらに限定されない。LAG−3遮断は、感染因子、例えば、感染の経過にわたって改変した抗原が存在するHIVにより確立されている感染に対して特に有用である。これらの新規エピトープは、抗−ヒトLAG−3投与時に外来物として認識され、したがって、LAG−3を介する負のシグナルにより抑制されない強いT細胞応答を刺激する。
【0194】
本発明の方法により処置することができる感染症を引き起こす病原性ウイルスのいくつかの例は、HIV、肝炎(A、BまたはC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV−1、HAV−6、HSV−IIおよびCMV、エプスタイン・バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コルノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デング熱ウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルスおよびアルボウイルス脳炎ウイルスを含む。
【0195】
本発明の方法により処置することができる感染症を引き起こす病原性細菌のいくつかの例は、クラミジア、リケッチア細菌、ミコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌(pneumonococci)、髄膜炎菌および淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風菌、ボツリヌス、炭疽菌、ペスト、レプトスピラおよびライム病菌を含む。
【0196】
本発明の方法により処置することができる感染症を引き起こす病原性真菌のいくつかの例は、カンジダ(アルビカンス、クルセイ、グラブラタ、トロピカリスなど)、クリプトコックス・ネオフォルマンス、アスペルギルス(フミガーツス、ニガー(niger)など)、ケカビ(ケカビ、アブシディア、クモノスカビ)、スポロトリックス・シェンキー、ブラストマイセス・デルマチチジス、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス、コクシジオイデス・イミティスおよびヒストプラスマ・カプスラーツムを含む。
【0197】
本発明の方法により処置することができる感染症を引き起こす病原寄生虫のいくつかの例は、赤痢アメーバ、大腸バランチジウム、フォーラーネグレリア、アカントアメーバ属、ランブル鞭毛虫、クリプトスポリジウム属、ニューモシスティス・カリニ、三日熱マラリア原虫、ネズミバベシア、トリパノソーマ・ブルーセイ、クルーズ・トリパノソーマ、ドノバン・リーシュマニア、トキソプラズマ原虫、ニッポストロンギルス・ブラジリエンシス(Nippostrongylus brasiliensis)を含む。
【0198】
上記方法のすべてにおいて、LAG−3遮断は、免疫療法の他の形態、例えば、サイトカイン処置(例えば、インターフェロン、GM−CSF、G−CSF、IL−2)、または腫瘍抗原の提示の増強を提供する二重特異性抗体治療と組み合わせることができる(例えば、Holliger (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
90:6444-6448; Poljak (1994) Structure
2:1121-1123、参照)。
【0199】
自己免疫反応
抗−LAG−3抗体は自己免疫応答を誘導および増幅し得る。実際に、腫瘍細胞およびペプチドワクチンを使用する抗腫瘍応答の誘導は、多数の抗腫瘍応答が抗−自己反応性に関連することを示す(van Elsas et al. (2001) J. Exp. Med.
194:481-489; Overwijk, et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.
96: 2982-2987; Hurwitz, (2000) supra; Rosenberg & White (1996) J. Immunother Emphasis Tumor Immunol
19 (1): 81-4)。したがって、疾患処置に関するこれらの自己タンパク質に対する免疫応答を効率的に発生させるようにワクチン接種プロトコールを考案するために、種々の自己タンパク質と共に抗−LAG−3遮断を使用することを考えることができる。例えば、アルツハイマー病は脳においてアミロイド沈着におけるAβペプチドの不適当な蓄積に関する;アミロイドに対する抗体反応は、これらのアミロイド沈着を明らかにすることができる(Schenk et al., (1999) Nature
400: 173-177)。
【0200】
他の自己タンパク質、例えば、アレルギーおよび喘息の処置に関するIgEならびにリウマチ性関節炎に関するTNFαも、標的として使用することができる。最後に、種々のホルモンに対する抗体反応が、抗LAG−3抗体の使用により誘導され得る。生殖ホルモンに関する抗体反応を中和することは、避妊のために使用することができる。特定の腫瘍の増殖のために必要であるホルモンおよび他の可溶性因子に関する抗体反応を中和することも、可能なワクチン標的として考えることができる。
【0201】
抗LAG−3抗体の使用に関する上記の類似の方法は、他の自己−抗原、例えば、アルツハイマー病におけるAβを含むアミロイド沈着、サイトカイン、例えば、TNFαおよびIgEの不適当な蓄積を有する患者を処置するために、治療的自己免疫応答の誘導のために使用することができる。
【0202】
ワクチン
抗−LAG−3抗体は、抗LAG−3抗体と興味ある抗原(例えば、ワクチン)の共投与により、抗原特異的免疫応答を刺激するために使用することができる。したがって、他の局面において、本発明は、対象における抗原に対する免疫応答が増強されるように、(i)抗原;および(ii)抗LAG−3抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象における抗原に対する免疫応答を増強する方法を提供する。好ましくは、抗体はヒト抗−ヒトLAG−3抗体(本明細書に記載されているヒト抗LAG−3抗体のいずれかのような)である。さらに、またはあるいは、抗体はキメラまたはヒト化抗体であり得る。抗原は、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原または病原体由来の抗原であり得る。このような抗原の非限定的な例は、上記のセクションにおいて記載されているもの、例えば、上記腫瘍抗原(または腫瘍ワクチン)、または上記ウイルス、細菌もしくは他の病原体由来の抗原を含む。
【0203】
インビボおよびインビトロにおいて本発明の抗体組成物(例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子ならびに免疫抱合体)を投与する適当な経路は、当分野で既知であり、当業者により選択することができる。例えば、抗体組成物は注射により(例えば、静脈内または皮下に)投与され得る。使用される分子の適当な用量は、対象の年齢および体重ならびに抗体組成物の濃度および/または製剤化に依存している。
【0204】
前記のとおり、本発明のヒト抗LAG−3抗体は、1つ以上のさらなる治療剤、例えば、細胞毒性剤、放射毒性物質または免疫抑制剤と共投与することができる。抗体は、薬物と組合せられてよく(免疫複合体として)、また薬物と別々に投与されてもよい。後者の場合(別々の投与)において、抗体は薬物の前、後もしくは同時に投与されてよく、また、他の既知の治療、例えば、抗癌療法、例えば、放射線療法と共投与されてもよい。このような治療剤は、数ある中の抗腫瘍剤、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラスチン硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、ダカルバジンおよびシクロホスファミドヒドロキシウレア(これらはそれら自体、患者に対して毒性または準毒性であるレベルでのみ有効である)を含む。シスプラスチンは4週間毎に1回100mg/ml用量として静脈内に投与され、アドリアマイシンは21日ごとに1回60−75mg/ml用量として静脈内に投与される。本発明のヒト抗LAG−3抗体またはその抗原結合フラグメントと化学療法剤との共投与は、ヒト腫瘍細胞に細胞毒性作用をもたらす異なるメカニズムを介して機能する2つの抗癌剤を提供する。このような共投与は、抗体と非反応性にする薬物耐性の発生または腫瘍細胞の抗原性の変化による問題を解決することができる。
【0205】
本発明の抗体組成物(例えば、ヒト抗体、二重特異性もしくは多重特異性分子または免疫抱合体)および素養のための指示書を含むキットも本発明の範囲内である。キットは、少なくとも1つのさらなる試薬または1つ以上のさらなる本発明のヒト抗体(例えば、第1のヒト抗体と異なるLAG−3抗原におけるエピトープに結合する相補的な活性を有するヒト抗体)をさらに含むことができる。キットは、一般的にキットの内容物の意図される使用を指示するラベルを含む。ラベルなる用語は、キット上もしくはキットと共に提供されている、または別な方法でキットに添付されている、あらゆる文書または記録媒体を含む。
【0206】
併用療法
他の局面において、本発明は、抗LAG−3抗体を、免疫応答を刺激し、それによりさらに対象における免疫応答を増強、刺激または上方制御するために有効である1つ以上のさらなる抗体と共投与する、併用療法の方法を提供する。例えば、本発明は、例えば、腫瘍増殖を阻害するか、または抗−ウイルス応答を刺激するために、対象における免疫応答を刺激するように、抗LAG−3抗体および1つ以上のさらなる免疫刺激抗体、例えば、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体および/または抗CTLA−4抗体を対象に投与することを含む、対象における免疫応答を刺激する方法を提供する。1つの態様において、対象は抗LAG−3抗体および抗PD−1抗体を投与される。他の態様において、対象は抗LAG−3抗体および抗PD−L1抗体を投与される。さらに他の態様において、対象は抗LAG−3抗体および抗CTLA−4抗体を投与される。1つの態様において、抗LAG−3抗体はヒト抗体、例えば、本明細書の抗体である。あるいは、抗LAG−3抗体は、例えば、キメラまたはヒト化抗体(例えば、マウス抗−LAG−3mAbから製造される)であり得る。他の態様において、少なくとも1つのさらなる免疫刺激抗体(例えば、抗PD−1、抗PD−L1および/または抗CTLA−4抗体)はヒト抗体である。あるいは、少なくとも1つのさらなる免疫刺激抗体は、例えば、キメラまたはヒト化抗体(例えば、マウス抗PD−1、抗PD−L1および/または抗CTLA−4抗体から製造される)であり得る。
【0207】
1つの態様において、本発明は、LAG−3抗体およびCTLA−4抗体を対象に投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置するための方法を提供する。さらなる態様において、抗LAG−3抗体は治療量以下の用量で投与されるか、抗CTLA−4抗体は治療量以下の用量で投与されるか、または両方が治療量以下の用量で投与される。他の態様において、本発明は、抗LAG−3抗体および治療量以下の用量の抗CTLA−4抗体を対象に投与することを含む、免疫刺激剤にて過増殖性疾患の処置と関連する有害事象を改変する方法を提供する。1つの態様において、対象はヒトである。1つの態様において、抗CTLA−4抗体はヒト配列モノクローナル抗体10D1(PCT公開WO01/14424に記載されている)であり、抗LAG−3抗体はヒト配列モノクローナル抗体、例えば、本明細書に記載されている25F7、26H10、25E3、8B7、11F2または17E5である。本発明の方法に包含される他の抗CTLA−4抗体は、例えば、WO98/42752;WO00/37504;米国特許第6,207,156号;Hurwitz et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
95(17):10067-10071; Camacho et al. (2004) J. Clin. Oncology
22(145): Abstract No. 2505 (antibody CP-675206);およびMokyr et al. (1998) Cancer Res.
58:5301-5304に記載されているものを含む。1つの態様において、抗CTLA−4抗体は、5×10
−8M以下のK
DにてヒトCTLA−4に結合するか、1×10
−8M以下のK
DにてヒトCTLA−4に結合するか、5×10
−9M以下のK
DにてヒトCTLA−4に結合するか、または1×10
−8Mから1×10
−10M以下のK
DにてヒトCTLA−4に結合する。
【0208】
1つの態様において、本発明は、LAG−3抗体およびPD−1抗体を対象に投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置するための方法を提供する。さらなる態様において、抗LAG−3抗体は治療量以下の用量で投与されるか、抗PD−1抗体は治療量以下の用量で投与されるか、または両方が治療量以下の用量で投与される。他の態様において、本発明は、抗LAG−3抗体および治療量以下の用量の抗PD−1抗体を対象に投与することを含む、免疫刺激剤にて過増殖性疾患の処置と関連する有害事象を改変する方法を提供する。1つの態様において、対象はヒトである。1つの態様において、抗PD−1抗体はヒト配列モノクローナル抗体であり、抗LAG−3抗体はヒト配列モノクローナル抗体、例えば、本明細書に記載されている25F7、26H10、25E3、8B7、11F2または17E5である。ヒト配列抗PD−1抗体の例は、PCT公開WO06/121168に記載されている、17D8、2D3、4H1、5C4および4A11を含む。1つの態様において、抗PD−1抗体は、5×10
−8M以下のK
DにてヒトPD−1に結合するか、1×10
−8M以下のK
DにてヒトPD−1に結合するか、5×10
−9M以下のK
DにてヒトPD−1に結合するか、1×10
−8Mから1×10
−10M以下のK
DにてヒトPD−1に結合する。
【0209】
1つの態様において、本発明は、LAG−3抗体およびPD−L1抗体を対象に投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置するための方法を提供する。さらなる態様において、抗LAG−3抗体は治療量以下の用量で投与されるか、抗PD−L1抗体は治療量以下の用量で投与されるか、または両方が治療量以下の用量で投与される。他の態様において、本発明は、抗LAG−3抗体および治療量以下の用量の抗PD−L1抗体を対象に投与することを含む、免疫刺激剤にて過増殖性疾患の処置と関連する有害事象を改変する方法を提供する。1つの態様において、対象はヒトである。1つの態様において、抗PD−L1抗体はヒト配列モノクローナル抗体であり、抗LAG−3抗体はヒト配列モノクローナル抗体、例えば、本明細書に記載されている25F7、26H10、25E3、8B7、11F2または17E5である。ヒト配列抗PD−L1抗体の例は、PCT公開WO07/005874に記載されている、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4を含む。1つの態様において、抗PD−L1抗体は、5×10
−8M以下のK
DにてヒトPD−L1に結合するか、1×10
−8M以下のK
DにてヒトPD−L1に結合するか、5×10
−9M以下のK
DにてヒトPD−L1に結合するか、または、1×10
−8Mから1×10
−10M以下のK
DにてヒトPD−L1に結合する。
【0210】
抗体によるLAG−3ならびに1つ以上の第2の標的抗原、例えば、CTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1の遮断は、患者における癌細胞に対する免疫応答を増強することができる。本明細書の抗体を使用して増殖が阻害され得る癌は、一般的に免疫療法に応答する癌を含む。本明細書の併用療法における処置のための典型的な癌の例は、抗LAG−3抗体における単剤療法の議論において特に上記されている癌を含む。
【0211】
1つの態様において、本明細書に記載されている治療抗体の組合せは、薬学的に許容される担体中で単一の組成物として同時に、または薬学的に許容される担体中でそれぞれの抗体を有する別々の組成物として同時に投与され得る。他の態様において、治療抗体の組合せは連続して投与され得る。例えば、抗CTLA−4抗体および抗LAG−3抗体は、連続して投与され得る、例えば、抗CTLA−4抗体が第1に、そして抗LAG−3抗体が第2に投与されるか、または抗LAG−3抗体が第1に、そして抗CTLA−4抗体が第2に投与される。さらに、またはあるいは、抗PD−1抗体および抗LAG−3抗体は、連続して投与され得る、例えば、抗PD−1抗体が第1に、そして抗LAG−3抗体が第2に投与されるか、または抗LAG−3抗体が第1に、そして抗PD−1抗体が第2に投与される。さらに、またはあるいは、抗PD−L1抗体および抗LAG−3抗体は、連続して投与され得る、例えば、抗PD−L1抗体が第1に、そして抗LAG−3抗体が第2に投与されるか、または抗LAG−3抗体が第1に、そして抗PD−L1抗体が第2に投与される。
【0212】
さらに、併用療法の1つ以上の投与が連続して投与されるとき、連続投与の順番は投与のそれぞれの時点で順番が逆転もしくは維持されていてよく、連続投与は同時投与と組み合わせられていてよく、またそれらが組み合わされていてよい。例えば、組合せ抗CTLA−4抗体および抗LAG−3抗体の第1の投与は同時であり、第2の投与は第1に抗CTLA−4および第2に抗−LAG−3で連続であり、そして第3の投与は第1に抗−LAG−3および第2に抗CTLA−4で連続などであってよい。さらに、またはあるいは、組合せ抗PD−1抗体および抗LAG−3抗体の第1の投与は同時であり、第2の投与は第1に抗PD−1および第2に抗−LAG−3で連続であり、そして第3の投与は第1に抗−LAG−3および第2に抗PD−1で連続などであってよい。さらに、またはあるいは、組合せ抗PD−L1抗体および抗LAG−3抗体の第1の投与は同時であり、第2の投与は第1に抗PD−L1および第2に抗−LAG−3で連続であり、そして第3の投与は第1に抗−LAG−3および第2に抗PD−L1で連続などであってよい。他の典型的な投与スキームは、第1の投与は第1に抗−LAG−3および第2に抗CTLA−4(および/または抗PD−1および/または抗PD−L1)で連続であり、そして後の投与は同時であることを含み得る。
【0213】
所望により、抗−LAG−3ならびに1つ以上のさらなる抗体(例えば、抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1抗体)の組合せは、さらに免疫原、例えば、癌細胞、精製された腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子をトランスフェクトされた細胞(He et al. (2004) J. Immunol.
173:4919-28)と組み合わされ得る。使用することができる腫瘍ワクチンの非限定的な例は、黒色腫抗原のペプチド、例えば、gp100、MAGE抗原、Trp−2、MART1および/またはチロシナーゼのペプチド、またはサイトカインGM−CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞(以下でさらに記載されている)を含む。組合せLAG−3およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1遮断は、さらに、ワクチン接種プロトコール、例えば、抗LAG−3抗体における単剤療法に対して詳細に上記されているあらゆるワクチン接種プロトコールと組み合わせることができる。
【0214】
組合せLAG−3およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1遮断は、またさらに、標準癌処置と組み合わせられ得る。例えば、組合せLAG−3およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1遮断は、化学療法レジメンと有効に組み合わせられ得る。こうした場合において、本明細書の組合せにおいて投与される他の化学療法剤の用量を減少させることができる可能性がある(Mokyr et al. (1998) Cancer Research
58: 5301-5304)。このような組合せの例は、黒色腫の処置のためにさらにデカルバジンと組み合わせられた抗−LAG−3および抗CTLA−4抗体および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体の組合せである。他の例は、黒色腫の処置のためにさらにインターロイキン−2(IL−2)と組み合わせられた抗−LAG−3および抗CTLA−4抗体および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体の組合せである。LAG−3およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1遮断と化学療法の組合せ使用を支持する科学的論拠は、多数の化学治療化合物の細胞毒性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原のレベルの増加をもたらすはずであるというものである。細胞死を介して組合せLAG−3およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1遮断と相乗効果をもたらし得る他の組合せ治療は、放射線、外科手術およびホルモン遮断である。これらのそれぞれのプロトコールは、宿主における腫瘍抗原の源を創造する。血管形成阻害剤は、また、組合せLAG−3およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1遮断と組み合わせられ得る。血管形成の阻害は腫瘍細胞死を誘導し、腫瘍抗原を宿主の抗原提示経路に提供し得る。
【0215】
LAG−3およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1を遮断する抗体の組合せは、また、FcαまたはFcγ受容体を発現するエフェクター細胞を腫瘍細胞に標的化する二重特異性抗体と組み合わせて使用することができる(例えば、米国特許第5,922,845および5,837,243号、参照)。二重特異性抗体は、2つの別々の抗原を標的化するために使用することができる。T細胞群のこれらの応答は組合せLAG−3およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1遮断の使用により増加し得る。
【0216】
他の態様において、抗−LAG−3および抗CTLA−4および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体の組合せは、抗−新生物抗体、例えば、Rituxan
(登録商標)(リツキシマブ)、Herceptin
(登録商標)(トラスツマブ)、Bexxar
(登録商標)(トシツモマブ)、Zevalin
(登録商標)(イブリツモマブ)、Campath
(登録商標)(アレムツズマブ)、Lymphocide
(登録商標)(エプラツズマブ)、Avastin
(登録商標)(ベバシズマブ)およびTarceva
(登録商標)(エルロチニブ)などと組み合わせて使用することができる。一例として、理論により束縛されている願望なく、抗癌抗体または毒素と結合した抗癌抗体における処置が、CTLA−4、PD−1、PD−L1またはLAG−3が介在する免疫応答を増強し、癌細胞(例えば、腫瘍細胞)死を引き起こし得る。典型的な態様において、過増殖性疾患(例えば、癌腫瘍)の処置は、宿主による抗腫瘍免疫応答を増強することができる、同時にもしくは連続してまたはそれらの組合せにおいて、抗−LAG−3および抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1抗体と組み合わせられた抗−癌抗体を含むことができる。
【0217】
腫瘍は、多種多様のメカニズムにより宿主の免疫監視から逃れる。多数のこれらのメカニズムは、腫瘍により発現され、免疫抑制性であるタンパク質の不活性化により克服され得る。これらは、数ある中でTGF−β(Kehrl et al. (1986) J. Exp. Med.
163: 1037-1050), IL-10 (Howard & O'Garra (1992) Immunology Today
13: 198-200)およびFasリガンド(Hahne et al. (1996) Science
274: 1363-1365)を含む。他の態様において、これらの存在物それぞれに対する抗体は、免疫抑制剤の効果を中和し、宿主による腫瘍免疫応答を支持するために、さらに抗−LAG−3および抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1抗体の組合せと組み合わせて使用することができる。
【0218】
宿主の免疫応答性を活性化するために使用することができる他の抗体は、さらに抗−LAG−3および抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1抗体の組合せと組み合わせて使用することができる。これらは、DC機能および抗原提示を活性化する、樹状細胞の表面上の分子を含む。抗−CD40抗体(Ridge et al., 上記)は、抗−LAG−3および抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1の組合せ(Ito et al., 上記)と共に使用することができる。T細胞共刺激分子に対する抗体(Weinberg et al., 上記, Melero et al. 上記, Hutloff et al., 上記)の活性化は、また、T細胞活性化のレベルを増加させるために提供され得る。
【0219】
上記のとおり、骨髄移植は、現在、造血起源の種々の腫瘍を処置するために使用されている。組合せLAG−3およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1遮断は、ドナー移植腫瘍特異的T細胞の有効性を増加させるために使用することができる。
【0220】
腫瘍に対する抗原特異的T細胞を刺激するために、エキソビボにおける抗原特異的T細胞の活性化およびこれらの細胞のレシピエントへの養子移入に関連する、いくつかの実験的処置プロトコールがある(Greenberg & Riddell、上記)。これらの方法は、また、感染因子、例えば、CMVに対するT細胞応答を活性化するために使用することができる。抗−LAG−3および抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1抗体の存在下におけるエキソビボ活性化は、養子移入されたT細胞の頻度および活性を増加させることが予期される。
【0221】
1つの態様において、本発明は、抗LAG−3抗体ならびに治療量以下の用量の抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1抗体を対象に投与することを含む、免疫刺激剤にて過増殖性疾患(例えば、癌)の処置と関連する有害事象を改変する方法を提供する。例えば、本発明の方法は、非吸収性ステロイドを患者に投与することにより、免疫刺激治療抗体−誘導大腸炎または下痢の発症を減少させる方法を提供する。免疫刺激治療抗体を受けるすべての患者がこのような抗体により誘発される大腸炎または下痢を発症する危険性があるため、全患者集団は本発明の方法にしたがう治療が適当である。ステロイドは炎症性腸疾患(IBD)を処置およびIBDの増悪を予防するために投与されているが、それらは、IBDと診断されていない患者におけるIBDは予防する(発症率を低下させる)ために使用されていない。ステロイド、とりわけ非吸収性ステロイドと関連する有意な副作用は、予防使用を阻止させている。
【0222】
さらなる態様において、組合せLAG−3およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1遮断(すなわち、免疫刺激治療抗体、抗−LAG−3および抗CTLA−4および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体)は、さらに、何らかの非吸収性ステロイドの使用と組み合わせることができる。本明細書において使用される“非吸収性ステロイド”は、肝臓の代謝後、ステロイドのバイオアベイラビリティが低くなるように、すなわち、約20%未満であるように、大規模な初回通過代謝を示すグルココルチコイドである。本発明の1つの態様において、非吸収性ステロイドはブデソニドである。ブデソニドは、経口投与後、主に肝臓により大規模に代謝される局所作用性糖質コルチコステロイドである。ENTOCORT EC
(登録商標)(Astra−Zeneca)は、開発されたブデソニドのpH−および時間−依存性経口製剤であり、回腸および大腸への薬物送達に最適化されている。ENTOCORT EC
(登録商標)は、回腸および/または上行結腸のクローン病を抑えるための穏やかな処置のために米国において承認されている。クローン病の処置のためのENTOCORT EC
(登録商標)の通常の経口用量は、6から9mg/日である。ENTOCORT EC
(登録商標)は、腸粘膜において吸収され保持される前に腸に放出される。腸粘膜標的組織を通過すると、ENTOCORT EC
(登録商標)は、肝臓におけるシトクロムP450系によりごくわずかなグルココルチコイド活性を有する代謝産物に大規模に代謝される。したがって、バイオアベイラビリティは低い(約10%)。ブデソニドの低いバイオアベイラビリティは、大規模な初回通過代謝が小さい他のグルココルチコイドと比較して、改善された治療可能比をもたらす。ブデソニドは、全身作用性コルチコステロイドよりも少ない視床下部−下垂体抑制を含む小さい副作用をもたらす。しかしながら、ENTOCORT EC
(登録商標)の慢性投与は、全身性グルココルチコイド作用、例えば、副腎皮質機能亢進症および副腎抑制をもたらし得る。PDR 58
th ed. 2004; 608-610、参照。
【0223】
さらなる態様において、非吸収性ステロイドと組み合わせられた組合せLAG−3およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1遮断(すなわち、免疫刺激治療抗体 抗−LAG−3および抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1抗体)は、さらに、サリチル酸塩と組み合わせることができる。サリチル酸塩は5−ASA剤、例えば:スルファサラジン(AZULFIDINE
(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);オルサラジン(DIPENTUM
(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);バルサラジド(COLAZAL
(登録商標)、Salix Pharmaceuticals, Inc.);およびメサラミン(ASACOL
(登録商標)、Procter & Gamble Pharmaceuticals;PENTASA
(登録商標)、Shire US;CANASA
(登録商標)、Axcan Scandipharm, Inc.;ROWASA
(登録商標)、Solvay)を含む。
【0224】
本発明の方法において、抗−LAG−3および抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1抗体および非吸収性ステロイドと組み合わせて投与されるサリチル酸塩は、免疫刺激抗体により誘導される大腸炎の発症を減少する目的のために、サリチル酸塩および非吸収性ステロイドの任意の重複もしくは連続投与を含み得る。したがって、例えば、本発明の免疫刺激抗体により誘導される大腸炎の発症を減少させる方法は、サリチル酸塩および非吸収性のものを同時にまたは連続して(例えば、サリチル酸塩を非吸収性ステロイドの6時間後に投与する)、またはそれらの任意の組合せを投与することを含む。さらに、本発明において、サリチル酸塩および非吸収性ステロイドは、同じ経路(例えば、両方が経口的に投与される)または異なる経路(例えば、サリチル酸塩が経口的に投与され、非吸収性ステロイドが経直腸的に投与される)(抗−LAG−3および抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1抗体を投与するために使用される経路と異なっていてよい)により投与され得る。
【0225】
本明細書は、さらに以下の実施例により説明されるが、さらなる限定と解釈してはならない。本出願のすべての図およびすべての文献、本出願において引用されているGenbank配列、特許および公開された特許出願の内容は、出典明示により明確に本明細書に包含される。特に、PCT公開WO09/045957、WO09/073533、WO09/073546およびWO09/054863の記載は出典明示により明確に本明細書に包含される。
【実施例】
【0226】
実施例1:LAG−3に対するヒトモノクローナル抗体の作製
抗−LAG−3ヒトモノクローナル抗体は、以下のとおりヒト抗体遺伝子を発現する遺伝子導入マウスを使用して製造した。
【0227】
抗原
抗−ヒトLAG−3抗体を産生するために、組換えヒトLAG−3融合タンパク質を免疫原として使用した。特定の免疫化において、ヒト免疫グロブリン Fcドメイン(R&D Systems、Catalog #2319−L3)(D1−D4 hFc)またはマウス免疫グロブリン Fcドメイン(D1−D4 mFc)に融合したヒトLAG−3の全細胞外領域(ドメイン 1−4)を含む融合タンパク質を、免疫原として使用した。他の免疫化のために、マウス免疫グロブリン Fcドメイン(D1−D2 mFc)に融合したヒトLAG−3の第1の2つの細胞外ドメインのみを含む融合タンパク質を、免疫原として使用した。LAG−3融合タンパク質は標準組換えDNA技術を使用して製造した。
【0228】
遺伝子を導入し、染色体を導入したKMマウスTMおよびKM/FCGR2DマウスTM血統
ヒトLAG−3に対する完全ヒトモノクローナル抗体を、ヒト抗体遺伝子を発現する、遺伝子を導入し、染色体を導入したKMマウス
TMおよびKM/FCGR2Dマウス
TM血統のマウスを使用して製造した。
【0229】
KMマウス
TM血統において、内因性マウスカッパ軽鎖遺伝子は、Chen et al. (1993) EMBO J.
12:811-820において記載されているとおりホモ接合的に崩壊され、内因性マウス重鎖遺伝子はPCT公開WO01/09187の実施例1に記載されているとおりホモ接合的に崩壊される。さらに、このマウス血統は、Fishwild et al.上記に記載されているとおり、ヒトカッパ軽鎖導入遺伝子であるKCo5を有する。該血統は、また、PCT公開WO02/43478に記載されているとおり、ヒトIg重鎖遺伝子座を有するSC20導入染色体を含む。KM/FCGR2Dマウス
TM血統は、ゲノムが内因性FcγRIIB遺伝子のホモ接合的崩壊も含むこと以外、KMマウス
TM血統と同じである。KMマウス
TMおよびKM/FCGR2Dマウス
TM血統は、また、米国出願公開第20020199213号に記載されている。
【0230】
KMマウスTMおよびKM/FCGR2DマウスTM免疫化:
LAG−3に対する完全ヒトモノクローナル抗体を製造するために、KMマウス
TMおよびKM/FCGR2Dマウス
TM血統のマウスを、上記3種の異なる組換えLAG−3融合タンパク質(D1−D4 hFc、D1−D4 mFc、D1−D2、mFc)の1つで免疫化した。一般的な免疫化スキームはLonberg et al.(1994)上記;Fishwild et al.上記およびPCT公開WO98/24884に記載されている。マウスは抗原の第1の注入時に6−16週齢であった。マウスを腹腔内(IP)および/または皮下(SC)により免疫化した。マウスを10μgの組換えLAG−3融合タンパク質にて隔週で4回免疫化し、アジュバントとしてRibi中の20μgの同じ免疫原にて2回免疫化した。免疫応答を後眼窩によりモニタリングした。血漿をELISAによりスクリーニングし(以下のとおり)、十分な力価の抗−LAG−3ヒト免疫グロブリンを有するマウスを融合のために使用した。屠殺および脾臓の除去前に、マウスを静脈内および腹腔内により20μgの抗原で追加免疫し、次に静脈内により20μgの抗原で追加免疫した。
【0231】
抗LAG−3抗体を生産するKMおよびKM/FCGR2Dマウスの選択
LAG−3タンパク質に結合している抗体を生産するマウスを選択するために、D1−D4 hFc融合タンパク質にて免疫化されたマウス由来の血清を、Fishwild et al.(1996)に当初に記載されているとおりに、修飾されたELISAにより試験した。簡潔には、マイクロタイタープレートをPBS中の1μg/mlにて精製された組換えLAG−3融合タンパク質でコートし、50μl/ウェルにて4℃で一晩インキュベートし、次にPBS中の200μl/ウェルの5%のBSAにてブロックした。LAG−3−免疫化マウス由来の血漿の希釈物をそれぞれのウェルに加え、1−2時間、環境温度でインキュベートした。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、次に西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合したヤギ−抗−ヒトカッパ軽鎖ポリクローナル抗体と1時間、室温でインキュベートした。洗浄後、プレートをABTS基質を使用して発色させ、OD405において分光光度計により分析した。
【0232】
D1−D4 mFcまたはD1−D2 mFc融合タンパク質にて免疫化されたマウスに関して、これらのマウス由来の血清を、マウスFc部分への非特異的結合を除去するために、コーティングの1時間前にプレートを抗原でコートして、ヤギ抗−マウスIgGを使用する間接的ELISAにより試験した。次に、上記と同じELISA工程を実施した。
【0233】
非常に高い力価の抗LAG−3抗体を発生させるマウスを、融合のために使用した。融合は以下に記載されているとおに実施し、ハイブリドーマ上清をELISAにより抗−LAG−3活性において試験した。
【0234】
LAG−3タンパク質に対するヒトモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマの産生
KMまたはKM/FCGR2Dマウスから単離されたマウス脾細胞を、Cyto Pulse large chamber cull fusion electroporator(Cyto Pulse Sciences, Inc., Glen Burnie, MD)を使用して電場ベース電気融合によりマウス骨髄腫細胞系に融合した。次に得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体の生成においてスクリーニングした。免疫化マウス由来の脾臓リンパ球の単一の細胞懸濁液を、P3X63 Ag8.6.53(ATCC CRL 1580)を分泌しないマウス骨髄腫細胞の4分の1に融合させた。細胞を平底マイクロタイタープレートに約1×10
5/ウェルにて置き、次にRPMI中のオリゲン(IGEN)、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、l×HATおよびβ−メルカプトエタノールを補った、10%のウシ胎仔血清を含む選択培地中で、約2週間インキュベーションした。1−2週間後、細胞を、HATをHTと置き換えた培地中で培養した。次に、個々のウェルをヒト抗−LAG−3モノクローナルIgG抗体に対してELISA(上記)によりスクリーニングした。大規模なハイブリドーマ増殖後、培地を通常、10−14日後にモニタリングした。抗体を分泌するハイブリドーマを再播種し、再びスクリーニングし、ヒトIgGに関して陽性が維持されているとき、抗−LAG−3モノクローナル抗体を限界希釈により少なくとも2回サブクローニングした。次に、安定なサブクローンをインビトロで培養して、さらなる特性化のために組織培養培地中において少量の抗体を産生した。
【0235】
ハイブリドーマクローン25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5をさらなる分析およびシーケンシングのために選択した。
【0236】
実施例2:ヒト抗−LAG−3モノクローナル抗体25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5の構造的特性化
実施例1に記載されているとおり、25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5クローンにより発現されるmAbの重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNA配列を、以下のプロトコールを使用してシーケンシングした。全RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen, Valencia, CA)を使用して、5×10
6個のハイブリドーマ細胞から製造した。cDNAを、SMART RACE cDNA Amplification Kit(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)およびSuperScript II Reverse Transcriptase(Invitrogen, Carlsbad, CA)にて、5’−RACEプロトコールにより製造した。それぞれの抗体のV−領域を、5’RACE ユニバーサルプライマーミックスと共に、3’ヒト−特異的定常領域プライマーを使用して増幅した。V−領域を含むPCR生成物は、pCR4−TOPOベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)にクローンさせ、大腸菌血統TOP10(Invitrogen, Carlsbad, CA)に形質転換させた。ミニプレップDNAまたはTempliphi(GE Healthcare Biosciences, Piscataway, NJ, USA)サンプルのいずれかを製造し、DNAシーケンシング(Sequetech, Mountain View, CA)に付した。得られたDNA配列を、インフレーム再配列および他の抗体特性に対して分析した。発現されたタンパク質を標準タンパク質化学分析により特徴付けた。25E3、25F7および26H10クローンはIgG1重鎖およびカッパ軽鎖を含む抗体を発現することが見出されたが、8B7および17E5クローンはIgG4重鎖およびカッパ軽鎖を含む抗体を発現することが見出され、11F2クローンはIgG2重鎖およびカッパ軽鎖を含む抗体を発現することが見出された。
【0237】
25F7の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図1Aならびにそれぞれ配列番号:49および37に示されている。25F7のカッパ軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図1Bならびにそれぞれ配列番号:55および43に示されている。25F7重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列(
図7)との比較により、25F7重鎖がヒト生殖細胞系列V
H4−34(配列番号:61)由来のV
Hセグメントおよびヒト生殖細胞系列JH5b(配列番号:62)由来のJHセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、25F7 V
H配列のさらなる分析により、
図1Aならびにそれぞれ配列番号:1、7および13に示されている重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。25F7軽鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列(
図8)との比較により、25F7カッパ軽鎖がヒト生殖細胞系列V
KL6(配列番号:63)由来のV
Kセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK2(配列番号:64)由来のJ
Kセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、25F7 V
K配列のさらなる分析により、
図1Bならびにそれぞれ配列番号:19、25および31に示されている軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。
【0238】
26H10の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図2Aならびにそれぞれ配列番号:50および38に示されている。26H10の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図2Bならびにそれぞれ配列番号:56および44に示されている。26H10重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列(
図9)との比較により、26H10重鎖がヒト生殖細胞系列V
H3−33(配列番号:65)由来のV
Hセグメントおよびヒト生殖細胞系列JH6B(配列番号:66)由来のJHセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、26H10 V
H配列のさらなる分析により、
図2Aならびにそれぞれ配列番号:2、8および14に示されている重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。26H10軽鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列(
図10)との比較により、26H10カッパ軽鎖がヒト生殖細胞系列V
KA27(配列番号:67)由来のV
kセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK3(配列番号:68)由来のJ
kセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、26H10 V
k配列のさらなる分析により、
図2Bならびにそれぞれ配列番号:20、26および32に示されている軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。
【0239】
25E3の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図3Aならびにそれぞれ配列番号:51および39に示されている。25E3の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図3Bならびにそれぞれ配列番号:57および45に示されている。25E3重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列(
図11)との比較により、25E3重鎖がヒト生殖細胞系列V
H3−20(配列番号:69)由来のV
Hセグメントおよびヒト生殖細胞系列JH4b(配列番号:70)由来のJHセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、25e3 V
H配列のさらなる分析により、
図3Aならびにそれぞれ配列番号:3、9およびGGYに示されている重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。25E3軽鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列(
図12)との比較により、25E3カッパ軽鎖がヒト生殖細胞系列V
KL18(配列番号:71)由来のV
kセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK2(配列番号:64)由来のJ
Kセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、25E3 V
k配列のさらなる分析により、
図3Bならびにそれぞれ配列番号:21、27および33に示されている軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。
【0240】
8B7の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図4Aならびにそれぞれ配列番号:52および40に示されている。8B7の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図4Bならびにそれぞれ配列番号:58および46に示されている。8B7重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列(
図13)との比較により、8B7重鎖がヒト生殖細胞系列V
H4−34(配列番号:61)由来のV
Hセグメントおよびヒト生殖細胞系列JH5B(配列番号:62)由来のJHセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、8B7 V
H配列のさらなる分析により、
図4Aならびにそれぞれ配列番号:4、10および16に示されている重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。8B7軽鎖免疫グロブリン配列(
図14)と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列との比較により、8B7カッパ軽鎖がヒト生殖細胞系列V
KL6(配列番号:63)由来のV
kセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK4(配列番号:72)由来のJ
Kセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、26H10 V
k配列のさらなる分析により、
図4Bならびにそれぞれ配列番号:22、28および34に示されている軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。
【0241】
11F2の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図5Aならびにそれぞれ配列番号:53および41に示されている。11F2の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図5Bならびにそれぞれ配列番号:59および47に示されている。11F2重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列(
図15)との比較により、11F2重鎖がヒト生殖細胞系列V
H1−24(配列番号:73)由来のV
Hセグメント、ヒト生殖細胞系列2−15由来のDセグメントおよびヒト生殖細胞系列JH4B(配列番号:70)由来のJHセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、11F2 V
H配列のさらなる分析により、
図13Aならびにそれぞれ配列番号:5、11および17に示されている重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。11F2軽鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列(
図16)との比較により、11F2カッパ軽鎖がヒト生殖細胞系列V
KL6(配列番号:63)由来のV
kセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK1(配列番号:74)由来のJ
kセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、11F2 V
k配列のさらなる分析により、
図5Bならびにそれぞれ配列番号:23、29および35に示されている軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。
【0242】
17E5の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図6Aならびにそれぞれ配列番号:54および42に示されている。17E5の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図6Bならびにそれぞれ配列番号:60および48に示されている。17E5重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列(
図17)との比較により、ヒト生殖細胞系列V
H3−33(配列番号:65)由来のV
Hセグメント、ヒト生殖細胞系列2−2由来のDセグメントおよびヒト生殖細胞系列JH4B(配列番号:70)由来のJHセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、17E5 V
H配列のさらなる分析により、
図6Aならびにそれぞれ配列番号:6、12および18に示されている重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。17E5軽鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列(
図18)との比較により、17E5カッパ軽鎖がヒト生殖細胞系列V
KL6(配列番号:63)由来のV
kセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK5(配列番号:75)由来のJ
Kセグメントを利用していることが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用して、17E5V
k配列のさらなる分析により、
図6Bならびにそれぞれ配列番号:24、30および36に示されている軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域の描写を得た。
【0243】
25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5可変領域は、標準組換えDNA技術を使用して、所望のアイソタイプの全長抗体に変換され得る。例えば、V
HおよびV
L領域をコードするDNAは、可変領域が定常領域と作動可能に連結するように、重鎖および軽鎖定常領域を有する発現ベクターにクローンすることができる。あるいは、別々のベクターが全長重鎖および全長軽鎖の発現のために使用することができる。全長抗体の創造において使用するために適当な発現ベクターの非限定的な例は、米国特許公開第20050153394号に記載されているpIEベクターを含む。
【0244】
実施例3:LAG−3モノクローナル抗体の結合特性の特性化
この実施例において、細胞表面LAG−3(ヒト、サルおよびマウスLAG−3)へのヒト抗LAG−3抗体の結合をフローサイトメトリーにより試験した。さらに、LAG−3に対する結合反応速度をBIACORE分析により分析した。さらなるエピトープマッピングをペプチドスキャン実験を使用して実施した。
【0245】
A.
フローサイトメトリー試験
1.
CHO−ヒトLAG−3細胞結合
細胞表面LAG−3タンパク質に結合する抗体の能力を試験するために、抗体を、細胞表面上にヒトLAG−3を発現するようにトランスフェクトされたCHO細胞系とインキュベートした。25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5モノクローナル抗体を、冷1×PFAEバッファー(1×PBS+2% FBS、0.02% アジ化ナトリウム、2mM Na EDTA)で連続希釈した。結合反応のために、50μlの希釈抗体溶液を2×10
5細胞を含む50μlの細胞懸濁液に加え、混合物を氷上で30分インキュベートした。次に細胞を1×PFAEバッファーで2回洗浄した。FITC−標識ヤギ抗−ヒトカッパ軽鎖抗体(Bethyl Laboratories, Inc., Cat. # A80-115F)の1:100希釈物を加え、混合物を30分4℃でインキュベートし、次に冷1×PFAEバッファーで2回洗浄した。最後の洗浄後、10μg/mLのヨウ化プロピジウム(Roche Applied Science, Cat #1_348_639)を含む150μlの冷1×PFAEをそれぞれの溶液に加え、抗体結合の分析をFACScalibur フローサイトメーター(BD Bioscience)を使用するフローサイトメトリーにより実施した。
【0246】
フローサイトメトリー分析の結果は以下の表1に要約されており、これはCHO−ヒトLAG−3への結合に関するEC
50を示し、25F7、26H10、25E3、8B7、11F2および17E5が、25F7は25E3よりも約20倍低いEC
50を有して、8B7と26H10はほぼ等価のEC
50において、細胞表面ヒトLAG−3に有効に結合することを証明した。11F2および17E5に対するEC
50結果は25E3と同じ範囲であった。
表1:ヒトLAG−3を発現するCHO細胞への抗LAG−3抗体の結合
【表2】
【0247】
2.
活性化されたヒトCD4+T細胞結合
活性化されたヒトT細胞の表面上の天然ヒトLAG−3に結合する抗体の能力を試験するため、静止CD4
+T細胞を精製された末梢血単核細胞から単離し、ポリスチレンビーズを付着させた抗−CD3および抗−CD28抗体の組合せでの刺激に3日間付した。25F7、8B7および26H10モノクローナル抗体を、冷1×PFAEバッファー(1×PBS+2% FBS、0.02% アジ化ナトリウム、2mM Na EDTA)で連続希釈した。結合反応のために、50μlの希釈抗体溶液を50μlのPE標識化抗−ヒトCD4(BD Bioscience, Cat # 555347)と混合した。活性化T細胞を上記と同じプロトコールにより処理した。抗体結合の分析を上記のとおりに行った。
【0248】
フローサイトメトリー分析の結果は以下の表2に要約されており、これは活性化されたヒトCD4
+T細胞への結合に関するEC
50を示し、全3つの抗体が細胞表面ヒトLAG−3に同様に結合することを証明した。
表2:活性化されたヒトCD4+T細胞への抗LAG−3抗体の結合
【表3】
【0249】
3.
サルLAG−3抗原結合
抗LAG−3抗体がサルLAG−3と交差反応するか否かを測定するために、cDNA配列を、カニクイザルおよびアカゲザルの組織サンプルの回収物からRNAの逆転写により製造されたプールされているcDNAの製造物からRT−PCRによりクローンした。最初に、配列をプライマー(5’フォワードプライマー:5Mcyn1408;5’−atgtgggaggctcagttcctg−3’(配列番号:91)&3’リバースプライマー:3Mcyn1408a;5’−gtcagagctgctccggctc−3’(配列番号:92))を使用してGC−リッチPCR増幅系(Roche)を使用してcDNAプールから増幅させ、配列分析のためにレシピエント TOPO クローニングベクター(Invitrogen)にクローンした。次に、参照Genbank アカゲザルLAG−3配列(Genbank 受入番号 XM_001108923)にマッチするクローンを、哺乳動物細胞発現ベクターにおいて指向性クローニングのための制限酵素部位が組み込まれている第2のプライマーセットを使用して、TOPO−クローニングベクターDNAから再増幅させた。
【0250】
サルLAG−3クローンpa23−5を単離し、シーケンシングした。単離されたサル配列は、参照Genbank アカゲザルLAG−3配列と99.6%同一性を示した。cDNAクローン pa23−3のアミノ酸配列(配列番号:93)とGenbank(受入番号 XM_001108923)由来のアカゲザルLAG−3(配列番号:94)との比較は、
図19に示されている。位置419(クローンpa23−5におけるアルギニン 対 Genbankアカゲザル配列におけるスレオニン)における1つのアミノ酸の違いを除いて、2つの配列は同一であり、これに基づいて、cDNAクローンpa23−5がアカゲザルLAG−3遺伝子配列を示すと結論づけられる。
【0251】
クローンpa23−5のcDNAを、ヌクレオフェクション(Amaxa)によりCHO−S懸濁細胞にトランスフェクトされた発現構築物に挿入した。分類された、選択薬剤耐性クローンによるアカゲザルLAG−3発現をFACS分析により立証した。アカゲザルLAG−3を過剰発現するこのクローンCHO細胞系において、上記と同様のFACSアッセイを使用して、サルタンパク質に対する抗体交差反応性を測定した。簡潔には、25F7、8B7および26H10モノクローナル抗体を冷1×PFAEバッファー(1×PBS+2% FBS、0.02% アジ化ナトリウム、2mM Na EDTA)で連続希釈した。結合反応のために、50μlの希釈抗体溶液を2×10
5細胞を含む50μlの細胞懸濁液に加え、混合物を氷上で30分インキュベートした。細胞を上記と同じプロトコールにより処理した。抗体結合の分析を上記のとおりに行った。
【0252】
別の実験において、抗体を、活性化されたカニクイザルT細胞を使用してカニクイザルLAG−3への結合に関して試験した。これらのサルT細胞のインビトロ活性化を、ヒトT細胞のインビトロ活性化に対する上記と本質的に同じプロトコールにより達成し、次にフローサイトメトリー分析をインビトロで活性化されたヒトCD4
+T細胞の染色に対する上記のとおりに行った。
【0253】
CHO−アカゲザルLAG−3細胞および活性化されたカニクイザルT細胞を使用するフローサイトメトリー分析の結果は以下の表2に要約されており、これはサルLAG−3を発現する2つの異なる型の細胞への結合に関するEC
50を示す。これらの結果は、全ての抗体が活性化されたカニクイザルT細胞におけるLAG−3およびCHO細胞にトランスフェクトされたアカゲザルLAG−3(配列番号:93)の両方に有効に結合することを示した。しかしながら、クローン8B7および25F7よりもそれぞれ約2.5および6倍良く、最も高い親和性を示すクローン26H10と結合親和性の階層がある。2つの細胞型間の結合階層における違いは、アカゲザルおよびカニクイザルLAG−3タンパク質間のアミノ酸配列の違いを反映するのであろう。
表3:サルLAG−3への抗LAG−3抗体の結合
【表4】
【0254】
4.
マウスLAG−3抗原結合
抗体がマウスLAG−3と交差反応するか否かを測定するために、上記のものに対して同様のフローサイトメトリー試験を、標的細胞として細胞表面上にマウスLAG−3を発現するようにトランスフェクトされたマウスT細胞ハイブリドーマ細胞系(3A9)を使用して実施し、次に抗体結合を検出するためにFACS分析を実施した。結果は、強い染色を示す対照抗−マウスLAG−3対照抗体と対照的に、ヒト抗体25E3、25F7、8B7または26H10は上記バックグラウンドレベルでの細胞表面マウスLAG−3への結合を示さず、これらの抗体はマウスLAG−3と交差反応しないことを証明した。
【0255】
B.
BIACORE分析
25E3、25F7、8B7、26H10および17E5抗体の組換えLAG−3タンパク質への結合は、BIAcore
TMにより捕獲方法を使用して試験した。25E3、25F7、8B7、26H10および17E5抗体をそれぞれ、ヒト抗体の重鎖定常領域1に対して特異的である抗−CH1試薬抗体(Zymed, Clone HP6045、貯蔵濃度1.0mg/mL)を使用して捕獲した。CM5チップ(BR-1000-14, Research Grade)上を高密度(9700-11500RUs)にて抗−CH1でコーティングした。コーティングは製造業者により推奨されている標準固定化方法に基づいて実施した。次に、0.5−3μg/mLの範囲である濃度における25E3、25F7、8B7、26H10または17E5の精製された抗体を、抗−CH1でコーティングされた表面上に10uL/分の流速で1分捕獲させた。単一の濃度の組換えヒトLAG−3融合タンパク質(20nM)を25μg/mLの流速で3分間、捕獲された抗体に注入した。抗原を7.5分間で解離させた。チップ表面を、25μlの25mMのNaOH、次に30μlのHBS−EPの洗浄のそれぞれのサイクル後、再生させた。アイソタイプ対照をチップ上に流し、データは非特異的結合を引いて使用した。すべての実験は、BIAcore Control ソフトウェア v 3.2を使用するBiacore 3000 表面プラズモン共鳴装置において実施した。データ分析は、BiaEvaluation v3.2 ソフトウェアを使用して実施した。結果は以下の表4に示されている。25E3、25F7、8B7、26H10および17E5に対するBIAcore結果は、全5つの抗体がヒトLAG−3に高い親和性にて結合することができるフローサイトメトリー結果を裏付ける。
表4:組換えヒトLAG−3に対する抗LAG−3抗体の結合反応速度
【表5】
【0256】
C.
エピトープマッピング
LAG−3タンパク質において、細胞外領域の免疫グロブリン様第1のドメインは、アミノ酸配列:GPPAAAPGHPLAPGPHPAAPSSWGPRPRRY(配列番号:79)を有する暴露されている“余分なループ”を含む。25E3、25F7、8B7および26H10のLAG−3のこの領域への結合を試験し、それぞれの抗体により結合されているエピトープをマッピングするため、ペプチドスキャン実験をこの領域にわたって実施した。余分なループ配列の全長にわたってスキャンされる一連の10の重複ペプチドを製造し、ビオチンに結合させた。ELISA分析のために、ストレプトアビジン(Sigma-Aldrich, Cat # M5432)であらかじめコーティングされたマイクロタイタープレートを、2μg/mLの濃度で100μlの容量において適用されるビオチン化ループペプチド−複合体を捕獲するために使用し、18時間4℃でインキュベートし、この後、プレートを3回洗浄し、室温で1時間、ブロッキングバッファー(1×PBS+10% FBS)にてブロックした。次に、10μg/mLからブロッキングバッファーにおいて3倍連続希釈されたヒト抗LAG−3抗体を適用し、プレートを室温で2時間インキュベートし、次に3回洗浄した。結合したヒト抗体を検出するために、HRP−結合ヤギ抗−ヒトカッパ軽鎖抗体(Bethyl Laboratories, Cat #A80-115P)をブロッキングバッファーにて1μg/mLに希釈し、1時間アッセイウェルに適用し、次に3回洗浄し、TMB基質(eBioscience, Cat #00-4201-56)を適用した。650nm波長での光学濃度測定をSpectramax 340PC 分光光度計(Molecular Dynamics, Inc.)にて行った。ペプチドスキャン実験の結果は以下の表5に要約されている。
表5:LAG−3の余分なループのペプチドスキャンに対する抗−LAG抗体結合
【表6】
【0257】
これらの結果に基づいて、25E3抗体はアミノ酸配列PGHPLAPG(配列番号:76)を含む細胞外ループ内の領域を認識し、25F7抗体はアミノ酸配列HPAAPSSW(配列番号:77)を含む余分なループ内の領域を認識し、8B7はアミノ酸配列PAAPSSWG(配列番号:78)を含む細胞外ループ内の領域を認識するようであることが決定された。対照的に、26H10抗体による全長の余分なループペプチドあるいはより短いスキャンペプチドへの結合は検出することができなかった。
【0258】
この試験において同定された領域は、全長の余分なループ配列において下線を引いている:
【表7】
したがって、ペプチドスキャン結果は、25E3、25F7および8B7抗体がヒトLAG−3内において非常に近い位置であるが異なっているエピトープに結合することを示す。
【0259】
これらの抗体の余分なループペプチド領域への結合をさらに試験するために、さらなるELISAアッセイを実施した。ヒトの全長の余分なループペプチド(配列番号:79)を使用するELISAアッセイにおいて、結合に関するEC
50値を25E3、25F7および8B7に対して測定した。さらに、同様のペプチドのELISAを、配列GPPAPAPGHPPAPGHRPAAP YSWGPRPRRY(配列番号:90)を有するアカゲザルLAG−3由来の全長の余分なループペプチド配列を使用して行い、結合に関するEC
50値を25F7および8B7に対して測定した。結果は以下の表6に要約されている。結果は、抗体25E3、25F7および8B7が、ヒトLAG−3の余分なループペプチド領域を認識することができることを裏付ける。さらに、抗体25F7および8B7は、また、ヒト配列と比較して低いが、アカゲザルのLAG−3の余分なループペプチド領域に結合する。これは、このポリペプチドにおける種配列分散のためであろう。結果は、また、26H10抗体がLAG−3の余分なループペプチドを認識することができないことを裏付ける。
表6:ヒトおよびアカゲザルのLAG−3の余分なループペプチドへの抗LAG−3抗体の結合
【表8】
【0260】
実施例4:抗−LAG−3mAbによるLAG−3のMHCクラスIIへの結合の阻害
LAG−3のMHCクラスII分子への結合を阻害する抗LAG−3抗体の能力を試験するために、マウスFcに融合したヒトLAG−3細胞外ドメイン(hLAG−3−mIg)を含むLAG−3融合タンパク質を、ヒトMHCクラスII分子を発現するDaudi細胞と反応させるインビトロ結合アッセイを実施した。
【0261】
MHCクラスIIへのLAG−3結合の抗体阻害を試験するため、25E3、25F7、8B7および26H10を20μg/mLからPFAEバッファーにおいて連続希釈し、これらの連続希釈物に1μg/mlのhLAG−3−mIg融合タンパク質を加えた。この混合物を、2×10
5の1×PFAEで洗浄されたDaudi細胞に加える前に、20分室温でインキュベートした。混合物をDaudi細胞に適用し、4℃で30分インキュベートした。細胞をペレットにし(3分、400×g)、1×PFAEバッファーで1回洗浄し、再ペレット化し、hLAG−3−mIgのDaudi細胞への結合を組換えPE−標識抗−mIgGFcγ二次試薬を使用して検出した。LAG−3−mIg結合の分析をFACScalibur フローサイトメーター(BD Bioscience)にて実施した。結果は以下の表7に要約されており、これらはnMにおけるIC
50値を示す。
表7:抗LAG−3抗体によるMHCクラスIIへのLAG−3結合の阻害
【表9】
結果は、25F7、8B7および26H10が25E3よりも約7から13倍低いIC
50値を示し、全4つの抗体がLAG−3のMHCクラスIIの抗体への結合の阻害において有効であることを証明する。
【0262】
実施例5:抗−LAG−3mAbによる抗原特異的T細胞応答の刺激
抗原特異的T細胞応答を刺激する抗LAG−3抗体の能力を試験するため、3A9T細胞ペプチド刺激アッセイ(例えば、Workman et al. (2003) J. Immunol.
169:5392-5395; Workman et al. (2002) Eur. J. Immunol.
32:2255-2263、参照)を使用した。
【0263】
このアッセイにおいて、ペプチドHEL
48−62に特異的であるマウスT細胞ハイブリドーマの3A9を、キラーT細胞として使用した。キラー3A9T細胞を、細胞表面上にヒトLAG−3またはマウスLAG−3のいずれかを発現するように、レトロウイルスによって形質導入した。HEL
48−62ペプチド抗原を3A9細胞へ提示するために使用される抗原提示細胞(APC)は、マウスのMHCクラスII陽性細胞系LK35.2であった。別の試験によって、ヒトLAG−3融合タンパク質がマウスのMHCクラスII分子に結合することができ、それによりこのアッセイにおけるLK35.2マウスAPCの使用を有効にすることを決定した。3A9細胞の抗原特異的刺激はインターロイキン−2(IL−2)の生成により示され、この分泌はELISA(mouse IL-2 OptEIA kit, BD Bioscience, Cat #555148 製造業者の推奨にしたがって)により測定された。
【0264】
抗体の非存在下における3A9T細胞上のヒトまたはマウスLAG−3の異所性発現は、対照3A9T細胞のペプチド用量応答プロフィールと比較して、3A9細胞によるIL−2生成を刺激するために必要とされるペプチド抗原の量の増加により示されるとおり、トランスフェクトされたT細胞をHEL
48−62ペプチド抗原を提示するLK35.2 APCとインキュベートしたとき、抗原特異的応答における阻害効果を引き起こした。
【0265】
抗原特異的T細胞応答の抗体刺激を試験するために、最初にAPC(2.5×10
4細胞)を30分37℃で抗原性ペプチド(200nM)とプレインキュベートし、3A9T細胞(mLAG−3、hLAG−3または対照細胞のいずれかを発現する5.0×10
4細胞)を、25μg/mLから3倍希釈において連続希釈された、抗−hLAG−3抗体(25E3、25F7、8B7、26H10、11F2、17E5)と15分37℃でプレインキュベートした。次に3A9T細胞を抗原−パルスAPCに加え、培養物を24時間37℃でインキュベートした。次に上清を回収し、マウスIL−2の生成について測定した。ヒトLAG−3を発現する3A9T細胞に関する結果は表8であり、これはnMにおいてIC
50値を示す。
表8:抗LAG−3抗体による抗原特異的T細胞応答の刺激
【表10】
結果は、抗体25F7、8B7および26H10ならびにより小さい程度で25E3が、抗原特異的T細胞応答アッセイにおいてIL−2生成を刺激することができ、抗体11F2が阻害する最小の能力を示し、抗体17E5がこのアッセイにおいて機能性ではなかったことを示す。対照3A9T細胞またはマウスLAG−3タンパク質をトランスフェクトされた3A9T細胞により測定されたIL−2生成は、抗体によって変化せず、刺激効果の特異性を証明した。
【0266】
実施例6:抗−LAG−3mAb単独または組合せによる腫瘍増殖阻害
インビボにおける腫瘍細胞の増殖を阻害する、抗LAG−3抗体単独または他の免疫刺激抗体と組み合わせての能力を試験するため、2つの異なる同系マウス腫瘍移植片モデルを使用した。第1のモデルとしてマウスSa1N線維肉腫細胞を使用した。第2のモデルとしてマウスMC38大腸癌細胞系を使用した。
【0267】
第1の実験において、0日目にマウス(A/J血統)それぞれに2×10
6のSa1N線維肉腫細胞を移植し、腫瘍細胞を7日間増殖させた。移植後7日目、10日目および12日目に、マウスを10mg/kgの抗−LAG−3mAb単独(ラット抗−マウスLAG−3mAb C9B7W;eBioscience, Cat. No. 14-2231)、抗PD−L1抗体単独(抗−マウスPD−L1mAb 14D8)、抗−LAG−3および抗PD−L1抗体組合せ、またはIgG1アイソタイプ対照抗体のいずれかで処理した。14D8mAbは、マウスIgG1およびマウスカッパ定常領域を含むようにキメラ化されたラット抗−マウスPD−L1抗体である。
【0268】
マウスにおける腫瘍容量を移植後50日間にわたって測定し、平均および中央腫瘍容量を測定した。平均腫瘍増殖阻害を計算した(0%阻害であるアイソタイプ対照IgG1抗体での処理に基づく)。移植後24日目の結果は以下の表9に要約されている:
表9:Sa1N腫瘍モデルにおける平均腫瘍増殖阻害
【表11】
したがって、抗−LAG−3抗体単独または抗PD−L1抗体処置単独は腫瘍増殖阻害を引き起こすが、両方の抗体の組合せがより良い腫瘍増殖阻害を引き起こす。処置群に対して、実験の終わりまでに、抗−LAG−3単独で処置された10匹のうち4匹のマウスは腫瘍がなくなり、対照IgG1抗体で処置された10匹のうち1匹のマウスのみが腫瘍がなくなるという結果であった。同様に、抗PD−L1単独で処置された11匹のうち4匹のマウスは腫瘍がなくなった。抗−LAG−3および抗PD−L1の組合せでのマウスの処置では10匹のうち9匹のマウスは腫瘍がなくなった;腫瘍がなくならなかった残りのマウスは、試験にわたって小さく無痛の腫瘍を有した。
【0269】
2つのさらなる試験は、マウスMC38大腸癌細胞系の細胞を移植されたマウスを使用した。最初の実験において、C57Bl/6マウスにそれぞれ、0日目に2×10
6個のMC38細胞を移植し、移植後7日目、10日目および12日目に200μg/用量の抗−LAG−3単独(C9B7W mAb)、抗PD−1単独(4H2 mAb)または抗−LAG−3および抗PD−1の組合せで処置した。IgG1アイソタイプにマッチした抗体を400μg/用量で対照として使用した。4H2 mAbは、マウスIgG1およびマウスカッパ定常領域を含むキメラ化されたラット抗−マウスPD−1抗体である。
【0270】
平均腫瘍容量、中央腫瘍容量および生存%を、移植後80日目に測定した。結果は、この腫瘍モデル(MC38)におけるLAG−3単剤療法は腫瘍増殖を阻害する活性が少ないか、または活性がないことを示し、実験中に生存した処置されたマウスはいなかった。対照的に、抗PD−1単剤療法は、10匹のうち4匹のマウスが実験の終わりに腫瘍がなくなるという有意な活性を示した。さらに、Sa1Nモデルの結果と同様に、抗−LAG−3プラス抗PD−1の併用療法は、8匹のうち7匹のマウスは腫瘍がなくなるといういずれかの処置単独よりも有効であった。
【0271】
MC38モデルでの第2の実験において、C57Bl/6マウスにそれぞれ、0日目に2×10
6個のMC38細胞を移植し、移植後5日目、8日目および11日目に200μg/用量の試験抗体および/または400μg/用量の対照IgG抗体で処置した。以下の通り:(i)抗−IgG1対照抗体;(ii)抗−LAG−3mAb(C9B7W mAb)と対照IgG1;(iii)抗PD−1抗体(4H2)と対照IgG1;(iv)抗CTLA−4抗体(9D9マウス抗−マウス CTLA−4 mAb)と対照IgG1;(v)抗−LAG−3mAbと抗PD−1mAb;または(vi)抗−LAG−3mAbと抗CTLA−4mAb。9D9mAbは、内因性マウスCTLA−4がノックアウトされたマウスに生じた、マウス抗−マウスCTLA−4抗体である。
【0272】
平均腫瘍容量、中央腫瘍容量および生存%を、移植後100日目に測定した。結果は、第1の実験と同様に、LAG−3単剤療法は、MC38腫瘍増殖を阻害する活性が少ないか、または活性がないことを示し、実験中に生存した処置されたマウスはいなかった。CTLA−4単剤療法は、また、MC38腫瘍増殖を阻害する活性が少ないか、または活性がないことを示し、実験中に生存した処置されたマウスはいなかった。対照的に、抗PD−1単剤療法は、再び、10匹のうち4匹のマウスは実験の終わりに腫瘍がなくなるという有意な活性を示した。さらに再び、併用療法は単剤療法よりも有効であった。抗−LAG−3および抗CTLA−4の組合せで処置されたマウスに関しては10匹のうち3匹のマウスが実験の終わりに腫瘍がなくなり、抗−LAG−3および抗PD−1の組合せで処置されたマウスに関しては10匹のうち8匹のマウスが実験の終わりに腫瘍がなくなった。
【0273】
したがって、上記インビボ腫瘍移植片試験は、少なくとも特定の腫瘍モデルに関して、抗−LAG抗体処置単独はインビボにおいて腫瘍増殖の有意な阻害を引き起こすことを証明した。さらに、多発性腫瘍モデルに関して、抗LAG−3抗体と抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体もしくは抗CTLA−4抗体のいずれかの併用療法は単剤療法単独よりも良い抗腫瘍活性を引き起こす。
【0274】
実施例7:抗−LAG−3mAbによる阻害によるNODマウスにおける自己免疫の促進
自己免疫の発症により示される、免疫応答を刺激する抗LAG−3抗体の能力を試験するために、糖尿病のNODマウスモデルを利用した。NODマウスは、自己免疫性糖尿病を発症する傾向があることが知られている。糖尿病の進行は、血清グルコースを測定することにより、メスNODマウスにおいて追跡することができる。したがって、メスNODマウスにおける糖尿病の発症における、抗−LAG−3処置単独またはいずれかの免疫刺激抗体と組み合わせての効果を実験した。
【0275】
メスNODマウスを、0日目、2日目および5日目に250μg/用量の以下のいずれかで処置した:(i)IgG1アイソタイプ対照抗体;(ii)抗−LAG−3mAb単独(C9B7W mAb);(iii)抗PD−1mAb単独(4H2 mAb);(iv)抗CTLA−4mAb単独(9D9 mAb);(v)抗−LAG−3mAbと抗PD−1mAb;または(vi)抗−LAG−3mAbと抗CTLA−4。結果は、抗−LAG−3処置単独または抗PD−1処置単独(抗CTLA−4処置単独ではない)にて糖尿病性表現型へ転換するマウスの数を増加させることを証明した。さらに、抗−LAG−3プラス抗PD−1または抗−LAG−3プラス抗CTLA−4の組合せ処置は、マウスが糖尿病性表現型へ転換することにおいてより効果的であった。
【0276】
したがって、これらの結果は、LAG−3とその受容体の相互作用の遮断がNODマウスにおける良い免疫学的活性を可能にする負の免疫制御シグナルを妨げ、LAG−3処置マウスにおけるこの良い免疫学的活性を抗PD−1または抗CTLA−4抗体のいずれかとの組合せ処置により増強することができることを証明した。
【0277】
実施例8:抗−LAG−3mAbを使用する免疫組織化学
この実験において、蛍光−標識抗−LAG−3ヒト抗体を免疫組織化学実験において使用した。以下のFITC−標識、ヒト抗LAG−3抗体を使用して:25F7−FITC(F:P=2.9;IgG1バージョン);25F7−G4−FITC(F:P=2.7;IgG4バージョン);8B7−FITC(F:P=2.6)および26H10−FITC(F:P=3.4)。リンパ球組織、特にへんとう腺(2つのサンプル)、脾臓(2つのサンプル)および胸腺(2つのサンプル)の一団を、下垂体組織(4つのサンプル)と共に実験した。LAG−3をトランスフェクトされたCHO細胞を、また、対照として使用した。アセトン−固定クリオスタット切片を使用して。切片をFITC−標識抗LAG−3抗体(0.2−5μg/ml)で染色し、次にブリッジ(bridge)抗体としてウサギ抗−FITC抗体で染色し、次にウサギEnVision
TM+System Kit(Dako USA, Carpinteria, CA)を使用して視覚化した。結果は以下の表10に要約されている。
表10:抗−LAG−3mAbを使用する免疫組織化学
【表12】
LC=リンパ球;+=ポシティブ染色;−=ネガティブ染色
【0278】
予期されたとおり、LAG−3発現はリンパ球組織の一団において検出された。さらに、3つのうち2つの抗LAG−3抗体、25F7(IgG1およびIgG4バージョン)および26H10は、下垂体組織において保持されていることが示されたが、1つの抗体、8B7は、下垂体組織において保持されていることが示されなかった。したがって、免疫組織化学実験は、一方のサブセットは下垂体組織に維持され、他方のサブセットは下垂体組織に維持されない、抗LAG−3抗体の2つのサブセットを同定した。
【0279】
配列表の要約
【表13】
【表14】
【表15】