特許第5648031号(P5648031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5648031
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】印字装置および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/355 20060101AFI20141211BHJP
   B41J 2/32 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   B41J2/355 D
   B41J2/32 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-194397(P2012-194397)
(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-46680(P2014-46680A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2013年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀聡
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−080747(JP,A)
【文献】 特開2004−306352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/355
B41J 2/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字データの印字対象である記録媒体の搬送方向と直交する方向に沿って配列された複数の発熱素子を有する印字ヘッドと、
印字率が所定値以上の場合に前記複数の発熱素子を複数のブロックに分割し、第一の搬送速度で印字を行っている分割駆動印字状態で、前記直交する方向に沿った印字ラインの印字率に基づいて、前記複数の発熱素子を複数のブロックに分割せずに第二の搬送速度で印字を行う非分割駆動印字状態に対応すると判別される連続する印字ラインの数が所定の基準印字ライン数以内である場合に、前記分割駆動印字状態の前記発熱素子の分割と前記第一の搬送速度の印字との組み合わせを維持する制御部と、
を備えた印字装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記非分割駆動印字状態に対応すると判別される連続する印字ラインの数が所定の基準印字ライン数を超える場合に、前記非分割駆動印字状態に移行させる、
請求項1記載の印字装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記非分割駆動印字状態に対応すると判別される連続する印字ラインの最初の印字ラインにおいて、前記分割駆動印字状態に移行させる、
請求項2記載の印字装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記非分割駆動印字状態で前記分割駆動印字状態に対応すると判別される印字ラインが検出された場合に、当該印字ラインの印字を行うに際して、前記分割駆動印字状態に移行する、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の印字装置。
【請求項5】
前記印字ヘッドは、一印字ラインを同時に印字可能なライン印字ヘッドである、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の印字装置。
【請求項6】
印字データの印字対象である記録媒体の搬送方向と直交する方向に沿って配列された複数の発熱素子を有する印字ヘッドを有する印字装置をコンピュータにより制御するための制御プログラムにおいて、
前記コンピュータを、
印字率が所定値以上の場合に前記複数の発熱素子を複数のブロックに分割し、第一の搬送速度で印字を行っている分割駆動印字状態で、前記直交する方向に沿った印字ラインの印字率に基づいて、前記複数の発熱素子を複数のブロックに分割せずに第二の搬送速度で印字を行う非分割駆動印字状態に対応すると判別する手段と、
前記非分割駆動印字状態に対応するとされる連続する印字ラインの数が所定の基準印字ライン数以内である場合に、前記分割駆動印字状態の前記発熱素子の分割と前記第一の搬送速度の印字との組み合わせを維持する手段と、
して機能させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、印字装置および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印字データのライン方向に配列された複数の発熱素子を有するラインサーマルヘッドを用いて記録媒体(記録用紙等)に印字データを印字するサーマルプリンタにおいて、ラインサーマルヘッドに供給するピーク電流を抑える方法として、ラインサーマルヘッドが有する複数の発熱素子を複数のブロックに分割し、複数の発熱素子をブロック毎に時分割で駆動させることにより、同時に駆動する発熱素子の数を減らす方法が提案されている。
この場合において、印字品質を維持するために、複数の発熱素子をブロック毎に時分割で駆動させる場合には、複数の発熱素子を同時に駆動させる場合よりも記録媒体の搬送速度を低下させていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来技術においては、頻繁にサーマルヘッドが有する複数の発熱素子を複数のブロックに分割した状態から分割していない状態に切り替え、あるいは、サーマルヘッドが有する複数の発熱素子をブロックに分割していない状態から分割した状態に切り替えると、記録媒体の搬送速度が頻繁に切り替えられることとなり、わずかながら印字した画像の形状(特に文字形状)が崩れ、印字品質が低下する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施形態の印字装置は、画像の印字対象である記録媒体の搬送方向と直交する方向に沿って配列された複数の発熱素子を有する印字ヘッドを備える。
そして、制御部は、印字率が所定値以上の場合に複数の発熱素子を複数のブロックに分割し、第一の搬送速度で印字を行っている分割駆動印字状態で、直交する方向に沿った印字ラインの印字率に基づいて、複数の発熱素子を複数のブロックに分割せずに第二の搬送速度で印字を行う非分割駆動印字状態に対応すると判別される連続する印字ラインの数が所定の基準印字ライン数以内である場合に、分割駆動印字状態の上記発熱素子の分割と上記第一の搬送速度の印字との組み合わせを維持する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本実施形態にかかるサーマルプリンタの概略構造を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態にかかるサーマルプリンタの構成を示すブロック図である。
図3図3は、本実施形態にかかるサーマルプリンタが有するサーマルヘッドの複数の発熱素子を分割したブロックを説明するための図である。
図4図4は、本実施形態にかかるサーマルプリンタの処理フローチャートである。
図5図5は、発熱素子を複数ブロックに分割する場合の各ブロックに対して出力するストローブ信号の出力タイミングを示す図である。
図6図6は、具体的な動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかるサーマルプリンタの概略構造を示す模式図である。
サーマルプリンタ10(印字装置)は、ラインサーマルヘッド1と、プラテンローラ2とを有している。ラインサーマルヘッド1とプラテンローラ2とは、巻回された連続紙S(レシート紙等)として供給される記録媒体としての用紙3を挟み、互いに対向する位置に設けられている。
【0007】
ラインサーマルヘッド1は、一端が回転軸1Xを回転中心として回転自在に支持されて他端がプラテンローラ2に圧接するように付勢部材SPにより付勢されている。プラテンローラ2は、パルスモータ4の回転をプラテンローラ2に伝達するためのベルト5等を介してパルスモータ4と連結されている。そして、パルスモータ4が回転を開始すると、プラテンローラ2は、ベルト等を介してパルスモータ4の回転に連動して回転する。本実施形態では、パルスモータ4には、2相励磁のステッピングモータを用いている。
【0008】
用紙3は、感熱用紙として構成されており、ラインサーマルヘッド1とプラテンローラ2との間に挟まれた状態でプラテンローラ2が回転することによって図1中、左方向に搬送される。
ラインサーマルヘッド1は、用紙3の幅方向に配列された複数の発熱素子(発熱抵抗体)を有している。ラインサーマルヘッド1は、複数の発熱素子のうち用紙3に印字する箇所に対応する発熱素子を発熱させることにより、印字データに対応する画像(文字等を含む)を印字ライン毎に搬送中の用紙3に印字する。
【0009】
本実施形態では、サーマルプリンタ10は、ラインサーマルヘッド1が有する発熱素子にストローブ信号を入力して発熱させ、この熱を用紙3に与えて用紙3を発色させることにより、用紙3に印字データに対応する画像を印字する。なお、パルスモータ4が所定数のパルス分回転した場合にプラテンローラ2が回転する距離、すなわち用紙3の搬送距離は、パルスモータ4の回転をプラテンローラ2に伝達する機構のギア比等により決まる。
【0010】
本実施形態では、サーマルプリンタ10は、ラインサーマルヘッド1が有する発熱素子を複数のブロックに分割し、ブロック単位でストローブ信号(発熱体駆動時間制御信号)を出力し、これと印字データの論理積をとることにより、複数のブロックのそれぞれに属する発熱素子を時分割で発熱させることができる。
【0011】
図2は、本実施形態にかかるサーマルプリンタの構成を示すブロック図である。本実施形態にかかるサーマルプリンタ10は、各種の演算処理を実行してサーマルプリンタ10の各部を集中的に制御するCPU(Central Processing Unit)11を有する。CPU11には、RAM(Random Access Memory)13およびフラッシュメモリ14を含むメモリがシステムバス15を介して接続されている。
【0012】
フラッシュメモリ14は、CPU11により実行される動作プログラムおよび当該動作プログラムの実行に用いられるデータを記憶する。CPU11は、フラッシュメモリ14に記憶された動作プログラムをRAM13にコピーして実行することによりサーマルプリンタ10の各部を制御する。
【0013】
RAM13は、各種情報を一時的に記憶する。また、RAM13は、用紙3に印字する印字データ(画像データ)が一時的に記憶される印刷バッファとして利用される。印字データは、ホストコンピュータ30から受信した印字対象のデータである。なお、印字データは、フラッシュメモリ14に一時的に記憶されるようにしても良い。
【0014】
また、CPU11には、モータ制御回路18、ヘッド制御回路19および電源回路20が接続される。モータ制御回路18は、CPU11により制御され、パルスモータ4を回転駆動させる。本実施形態では、モータ制御回路18は、印字データの各ラインの印字率に応じてパルスモータ4を回転させる速度、すなわち、用紙3の搬送速度を制御する。
【0015】
ヘッド制御回路19は、CPU11により制御され、RAM13に記憶された印字データに応じて、ラインサーマルヘッド1が有する発熱素子にストローブ信号を出力して、ラインサーマルヘッド1が有する発熱素子に駆動電流を流すことが可能な状態とし、このストローブ信号と印字データの論理積により、実際に駆動電流が流れる発熱素子が決定されて駆動させる。これにより、用紙3に対して印字データに対応する画像が印字される。電源回路20は、バッテリ21に蓄えられた電力をサーマルプリンタ10の各部に供給する。
【0016】
また、CPU11には、表示コントローラ23、通信インタフェース25およびキー入力部26が接続されている。表示コントローラ23は、CPU11により制御され、表示器24における情報の表示を制御する。表示器24は、印字状況等の各種情報を表示する。
【0017】
通信インタフェース(I/F)25は、ホストコンピュータ30等の外部機器と通信を行うためのインタフェースである。本実施形態では、通信インタフェース25は、IrDA等の赤外線通信、USB(Universal Serial Bus)、LAN(Local Area Network)、RS−232C、Bluetooth(登録商標)等によって、ホストコンピュータ30に設けられた通信インタフェースと通信を行う。
【0018】
キー入力部26は、サーマルプリンタ10に対してユーザが各種情報を入力するための各種キーである。
【0019】
ホストコンピュータ30は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話機、ハンディターミナル等、ユーザによる操作入力に応じて演算処理を実行する機器である。
【0020】
図3は、本実施形態にかかるサーマルプリンタが有するサーマルヘッドの複数の発熱素子を分割したブロックを説明するための図である。
本実施形態のラインサーマルヘッド1は、図3に示すように、用紙3の幅方向に384ドット分の発熱素子が配列されている。本実施形態では、ラインサーマルヘッド1が有する384ドット分の発熱素子は、それぞれ、64ドット分の発熱素子を含む6つのブロックに分割可能とされている。
【0021】
これにより、ヘッド制御回路19は、全発熱素子を最大で6つのブロックに分割して時分割駆動制御することができる。このとき、ヘッド制御回路19は、同一のブロックに属する64ドット分の発熱素子に対して、当該ブロックに対応する同一のストローブ信号(STROBE1〜6)を出力する。よって、ヘッド制御回路19は、ストローブ信号をブロック毎に時間をずらして出力することにより、ブロックを時分割で駆動するようになっている。
【0022】
図4は、本実施形態にかかるサーマルプリンタの処理フローチャートである。
サーマルプリンタ1のCPU11は、通常動作時においては、印字データを受信したか否かを判別する(ステップS11)。
ステップS11の判別において、印字データを受信していない場合には(ステップS11;No)、CPU11は、待機状態となる。
ステップS11の判別において、印字データを受信した場合には(ステップS11;Yes)、CPU11は、印字ライン毎の印字率を記憶する複数の印字率バッファ及び印字データをライン単位で格納する印字データバッファを初期化する(ステップS12)。
【0023】
続いてCPU11は、受信して印字データバッファに格納されている印字データから、(Y+1)ライン分の印字データを取得する(ステップS13)。
ここで、印字ライン数Yは、適宜設定される閾値であり、発熱素子をブロック単位で分割する分割印字を行っている最中に、分割印字から非分割印字に移行する条件を満たす印字率の印字ラインが現れた場合に、当該印字ラインを含めてYライン以上連続して非分割印字に移行する条件を満たす印字率の印字ラインが現れた場合に、非分割印字に移行するための条件となっている。
【0024】
そして、CPU11は、取得した(Y+1)ライン分の印字データの印字率を算出してバッファに格納する(ステップS14)。本実施形態では、CPU11は、ラインサーマルヘッド1の複数の発熱素子のうちストローブ信号を出力して駆動させる必要がある発熱素子の比率を、1ライン分の印字データに含まれる黒情報の数(印字ドット数)を基に算出する。例えば、1ラインのドット数が、図3に示したように、384ドットの場合、印字するドット数が合計して96ドットであった場合、印字率は、96/384=25%となる。
【0025】
次いで、CPU11は、算出した印字率が所定の印字率以上であるか否かを判別する(ステップS15)。
本実施形態では、CPU11は、印字データを取得した印字ラインについて算出した印字率が予め設定された基準印字率よりも高い場合に、複数の発熱素子を複数のブロックに分割すると判別するようにしている。すなわち、CPU11は、基準印字率よりも高い印字率を有する印字ラインを、複数の発熱素子を複数のブロックに分割する必要がある分割対象の印字ラインと判別して、当該印字ラインの印字時に一時的に駆動電流が増大するのを抑制することとなる。
【0026】
そしてステップS15の判別において、次の印字対象となる印字ラインの印字率が所定の基準印字率以上であると判別された場合には(ステップS15;Yes)、CPU11は、算出した印字率に基づいて、ラインサーマルヘッド1の複数の発熱素子の分割ブロック数を決定する(ステップS16)。
【0027】
例えば、印字率0〜16%の場合、分割無し(非分割:6ブロック一括駆動)、印字率17〜32%の場合、2分割(3ブロックずつ時分割駆動)、印字率33〜48%の場合、3分割(2ブロックずつ時分割駆動)、印字率49〜64%の場合、4分割(2ブロック、1ブロック、2ブロック、1ブロックで時分割駆動)、印字率65〜80%の場合、5分割(2ブロック、1ブロック、1ブロック、1ブロック、1ブロックで時分割駆動)、81〜100%の場合、6分割(1ブロックずつ時分割駆動)とする。
なお、上記は、一例であり、印字率範囲等は適宜設定することが可能である。
【0028】
そしてCPU11は、印字データに基づき、ステップS16で決定した分割ブロック数で、各ブロック毎に発熱素子を時分割で駆動して対象の印字ラインの印字を行う(ステップS17)。
【0029】
図5は、発熱素子を複数ブロックに分割する場合の各ブロックに対して出力するストローブ信号の出力タイミングを示す図である。
【0030】
図5に示す場合は、印字ラインが8ラインあった場合に、1ライン目〜6ライン目までは、上述の例の場合、印字率0〜16%の場合に相当するため、非分割で印字し、第7ライン目〜第8ライン目は、印字率81〜100%の場合に相当するため、発熱素子を6つのブロックに分割して(6分割時分割駆動)印字している。
ここで、図5に示すフェーズ信号Phase Aおよびフェーズ信号Phase Bは、パルスモータ4の回転の周期を表し、フェーズ信号Phase Aおよびフェーズ信号Phase Bの立ち上り又は立下りにつき1ドット(1印字ライン)分の用紙3の搬送が行われる。
【0031】
また、各ブロックの発熱素子に対して、6つのストローブ信号(STROBE1〜6)を時分割で順に出力している。したがって、印字データが“H”レベルの場合に、ドットを形成(印字)するとすると、例えば、第1のブロックの場合、ストローブ信号STROBE1=“H”、かつ、印字データ=“H”のドットが用紙3に印字されることとなる。
次にCPU11は、全印字ラインの印字が完了したか否かを判別する(ステップS18)。
【0032】
ステップS18の判別において、全印字ラインの印字が完了した場合には(ステップS18;Yes)、CPU11は、処理を終了する。
ステップS18の判別において、未だ全印字ラインの印字が完了していない場合には(ステップS18;No)、次の1ラインの印字ラインの印字データを取得して、(Y+1)ライン分の印字データを更新することとなる(ステップS13)。
【0033】
一方、ステップS15の判別において、次の印字対象となる印字ラインの印字率が所定の基準印字率未満であると判別された場合には(ステップS15;No)、CPU11は、次の印字対象となる印字ライン以外のYライン後までの全ての印字ラインの印字率が所定印字率未満であるか否かを判別する(ステップS19)。
【0034】
これは、分割印字と非分割印字とを頻繁に切り替えると、搬送速度の変化に起因する画像品質の低下が生じるので、切替を最小限とするための処理である。
ステップS19の判別において、次の印字対象となる印字ライン以外のYライン後までの全ての印字ラインの印字率が所定印字率未満ではない場合には(ステップS19;No)、処理をステップS17に移行して、分割駆動から非分割駆動に切り替えることなく、処理を継続することとなる。
【0035】
また、ステップS19の判別において、次の印字対象となる印字ライン以外のYライン後までの全ての印字ラインの印字率が所定印字率未満である場合には(ステップS19;Yes)、印字データに基づき、全ブロックを一括して発熱素子を駆動して対象の印字ラインの印字を行う(ステップS20)。すなわち、時分割駆動を解除して、一括駆動を行うこととなる。
【0036】
次にCPU11は、全印字ラインの印字が完了したか否かを判別する(ステップS18)。
ステップS18の判別において、全印字ラインの印字が完了した場合には(ステップS18;Yes)、CPU11は、処理を終了する。
【0037】
ステップS18の判別において、未だ全印字ラインの印字が完了していない場合には(ステップS18;No)、次の1ラインの印字ラインの印字データを取得して、(Y+1)ライン分の印字データを更新することとなる(ステップS13)。
【0038】
以上の説明のように、本実施形態によれば、必要以上に非分割駆動と、分割駆動と、を切り替えることがないので、切り替えにともなう印字品質の低下を抑制することができる。
【0039】
次により具体的な動作を説明する。
図6は、具体的な動作説明図である。
初期状態である時刻t0において、印字率が所定の基準印字率未満であった場合には、非分割駆動で印字データによる画像の印刷を行う。この場合に用紙3の搬送速度は比較的高い速度に設定されている。
次に時刻t1において、印字ラインの印字率が所定の基準印字率以上であった場合には、分割駆動で印字データによる画像の印刷を行う。この場合に用紙3の搬送速度は比較的低い速度に設定されている。
【0040】
続いて、時刻t2において、再び印字ラインの印字率が所定の基準印字率未満になり、この印字率が所定の基準印字率未満となっている印字ライン数が少ないとすると、従来においては、図6中、破線で示すように、一旦、非分割駆動に移行するものの、用紙3の搬送速度が本来の非分割駆動時の速度に至る前に、再び分割駆動に移行することとなり、用紙搬送速度が安定しない状態が続くこととなる。
【0041】
したがって、印字品質は低下することとなるが、本実施形態においては、図4で説明したように、CPU11は、次の印字対象となる印字ライン以外のYライン後までの全ての印字ラインの印字率が所定印字率未満であるか否かを判別する(ステップS19)。そして、次の印字対象となる印字ライン以外のYライン後までの全ての印字ラインの印字率が所定印字率未満ではなく、次の印字対象となる印字ライン以外のYライン後に至るまでに再び基準印字率を超えることとなる場合には、分割駆動を維持することとなっている(ステップS17)。したがって、用紙3の搬送速度は、図6の時刻t2〜t3の時間に示すように、一定に維持されることとなる。
そして時刻t3において、印字ラインの印字率が所定の基準印字率以上となった場合にも、分割駆動しつつ印字データによる画像の印刷を継続する。
【0042】
その後、時刻t4において、再び印字ラインの印字率が所定の基準印字率未満になるが、この場合にも、印字率が所定の基準印字率未満となっている印字ライン数が少ないので、図4で説明したように、CPU11は、次の印字対象となる印字ライン以外のYライン後までの全ての印字ラインの印字率が所定印字率未満であるか否かを判別して、分割駆動を維持するので、用紙3の搬送速度は、図6の時刻t4〜t5の時間に示すように、破線で示す従来例とは異なり、一定に維持されることとなる。そして、分割駆動しつつ印字データによる画像の印刷を継続するため、印字品質の低下が生じない。
そして時刻t5において、印字ラインの印字率が再び所定の基準印字率以上となった場合にも、分割駆動しつつ印字データによる画像の印刷が継続される。
【0043】
その後、時刻t6において、再び印字ラインの印字率が所定の基準印字率未満になるが、この場合には、印字率が所定の基準印字率未満となっている印字ライン数がYラインを超えているので、図4で説明したように、CPU11は、次の印字対象となる印字ライン以外のYライン後までの全ての印字ラインの印字率が所定印字率未満であるか否かを判別して(ステップS19)、非分割駆動に移行し、用紙3の搬送速度は、図6の時刻t6以降に示すように、比較的高い搬送速度に移行することとなる。
【0044】
以上の説明のように、本実施形態によれば、従来では、時刻t1、t2、t3、t4、t5、t6の6回、非分割駆動から分割駆動への移行あるいは分割駆動から非分割駆動への移行があったのに対し、時刻t1及び時刻t6の2回だけの移行が生じるだけであり、印字品質の低下を大きく抑制することが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態のサーマルプリンタ10で実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)等に予め組み込んで提供するようにしても良い。また、本実施形態のサーマルプリンタ1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0046】
さらに、本実施形態のサーマルプリンタ10で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のサーマルプリンタ10で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成しても良い。
【0047】
本実施形態のサーマルプリンタ10で実行されるプログラムは、上述したヘッド制御回路19の機能等を含むモジュール構成とし、実際のハードウェアとしてはCPU11(プロセッサ)が上記ROM等からプログラムを読み出して実行することによりヘッド制御回路19の機能が主記憶装置上にロードされ、ヘッド制御部(ヘッド制御回路19に相当)等が主記憶装置上に生成されるようにしても良い。
【0048】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 サーマルヘッド
2 プラテンローラ
3 用紙
4 パルスモータ
10 サーマルプリンタ
11 CPU(制御部)
13 RAM
14 フラッシュメモリ
15 システムバス
19 ヘッド制御回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2006−347034号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6