(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)糖焙焼物またはその還元物
本発明における糖焙焼物またはその還元物は、ケトースを構成糖とする糖質を加熱焙焼処理し、必要に応じて更に還元処理することで得ることができる。
【0013】
<加熱焙焼処理>
加熱焙焼処理は、糖焙焼物の色価が0.2以上となるよう加熱温度や加熱時間を調整する必要が有り、例えば無触媒条件であれば、120℃で12時間以上加熱焙焼処理することで色価が0.2以上の糖焙焼物を得る事ができる。加熱温度は高温であるほど、加熱時間を短縮することができ、また、加熱温度は低温であるほど加熱時間を要するため、その加熱温度に応じて加熱時間は適宜調整することができる。なお、触媒存在下では加熱焙焼反応を促進できるため、無触媒条件下と比較して低温、短時間条件で色価を0.2以上にすることができる。すなわち、触媒として適宜アルカリや酸を添加することで、効率良く色価が0.2以上の糖焙焼物またはその還元物を得ることができる。これら触媒は、食品添加物リストに記載のものが望ましい。
【0014】
本発明における加熱焙焼処理には得られる糖焙焼物の色価が0.2以上となる条件であれば特に制限は無いが、気泡安定化効果や製造効率の点から、100℃〜300℃の温度条件下で1分〜15時間加熱焙焼処理することが好ましく、120〜300℃の温度条件下で1分〜15時間加熱焙焼処理することがより好ましく、170℃〜280℃で1分〜1時間加熱焙焼処理することが特に好ましい。加熱温度は高温であるほど、加熱時間を短縮することができ、また、加熱温度は低温であるほど加熱時間を要する。
【0015】
加熱焙焼処理方法も特に制限は無く、工業的に利用可能な方法で適当量の熱を加える事ができればよく、例えば、平釜、棚式熱風乾燥機、薄膜式蒸発器、フラッシュエバポレーター、減圧乾燥機、熱風乾燥機、スチームジャケットスクリューコンベヤー、ドラムドライヤー、エクストルーダー、ウォームシャフト反応機、ニーダー等を用いることができる。
【0016】
<糖質>
本発明における糖焙焼物またはその還元物は、構成糖にケトースを含む糖質を原料とし、加熱焙焼処理を施すことで得られる。
本発明における「構成糖にケトースを含む糖質」とは、鎖状構造の内部にケト基(ケトン性カルボニル基)を1つ含む単糖類を構成糖に含む糖質をいい、例えば、フ
ルクトース、プシコース、ソルボース、タガトース、キシルロース、リブロース、スクロース、フラクトオリゴ糖等が挙げられるが、飲食品として利用可能な糖質であれば特段制限は無い。製造コストや入手のしやすさの点から、フ
ルクトース、スクロースが望ましい。なお、後述の実施例から明らかなように、グルコース等の構成糖にケトースを含まない糖質では、加熱焙焼処理により得られる糖焙焼物が十分な気泡安定化効果を有しておらず、本発明の効果を得る事が出来ない。
【0017】
本発明において、単に「糖質」という場合には、炭水化物のうち食物繊維を除く全ての単糖、オリゴ糖および多糖をいう。糖質には特に制限はなく、単糖、オリゴ糖、および多
糖、並びにこれらの還元物のいずれをも用いることができる。
【0018】
本発明において「単糖」とはオリゴ糖や多糖の構成単位となる糖をいい、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、フ
ルクトース、プシコース、ソルボース、タガトース、キシルロース、リブロース等が挙げられるが、飲食品として利用可能な単糖であれば特段制限は無い。
【0019】
本発明において「オリゴ糖」とは、2〜10個の単糖が結合した糖質をいい、例えば、マルトース、セロビオース、トレハロース、ゲンチオビオース、イソマルトース、ニゲロース、ソホロース、コージビオース、スクロース、ツラノース、ラクトース、キシロビオース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、シクロデキストリン等が挙げられるが、飲食品として利用可能なオリゴ糖であれば特段制限は無い。
【0020】
本発明において「多糖」とは、単糖が11個以上結合した糖質をいい、例えば、澱粉、デキストリン、プルラン、デキストラン、アラビノキシラン、ペクチン、イヌリン、ガラクタン、マンナン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等が挙げられるが、飲食品として利用可能な多糖であれば特段制限は無い。
【0021】
本発明の糖焙焼物の原料となる糖質は、結晶品等の純品をそのまま用いてもよく、他の糖質との2種以上の混合物を用いてもよい。例えば、構成糖にケトースを含む糖質としてフ
ルクトースを用いる場合は、グルコースとフ
ルクトースの混合物である異性化糖を好適に用いる事ができる。構成糖にケトースを含む糖質と含まない糖質の混合物を糖焙焼物またはその還元物の原料とする場合は、構成糖にケトースを含む糖質を含有する限りその比率に特に限定は無いが、気泡剤としての効果を考慮すると、構成糖にケトースを含む糖質と含まない糖質の比率を100:0〜1:99とする事が好ましく、100:0〜5:95とする事がより好ましく、100:0〜9:91とする事が特に好ましい。また、前記原料糖質の性状にも特に制限は無く、結晶粉末品、非結晶粉末品、さらに液状品でもよい。
【0022】
さらに、構成糖にケトースを含まない糖質(グルコース等)に異性化触媒を添加して加熱焙焼処理することで、異性化触媒によりケトースを生成させつつ更に焙焼処理することができるため、構成糖にケトースを含まない糖質を出発原料として本発明の糖焙焼物を得る事も出来る。
すなわち、本発明において、「構成糖にケトースを含む糖質を、加熱焙焼処理した糖焙焼物またはその還元物」とは、予め構成糖にケトースを含む糖質を、加熱焙焼処理したものでよく、また、構成糖にケトースを含まない糖質を、加熱焙焼処理中に異性化してケトースを生成させたものでもよい。
異性化触媒としては、公知の異性化触媒なら特に限定されないが、例えば、タンパク質(グルコースイソメラーゼ等の異性化酵素)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド等の金属塩化物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよびリン酸類のカリウムまたはナトリウム塩等のアルカリ調整剤、アルカリ賦活炭やアンバーライトIRA900J(オルガノ社)等の塩基性イオン交換樹脂、ハイドロタルサイトなどのアルカリ性鉱物等の固体酸触媒が挙げられる。本発明により得られる糖焙焼物またはその還元物の食品への利用を考慮すると、これらの触媒の内では指定または既存食品添加物として認可されている触媒が好ましい。
【0023】
構成糖にケトースを含む糖質のみを加熱焙焼する際または構成糖にケトースを含む糖質と含まない糖質の混合物を加熱焙焼する際に、異性化触媒を添加してもよいが、構成糖に
おけるケトースの含有量が十分である場合には異性化触媒を添加しなくてもよい。
【0024】
本発明における糖焙焼物は、その還元物である糖アルコールに変換してもよい。本発明において糖アルコールとは、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基が還元され、水酸基となっているものを言う。
【0025】
糖アルコールを得る方法は当業者に周知であり、使用可能な還元方法を例示すれば、ヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法等が挙げられる。本発明においては、少量の糖アルコールを調製する場合にはヒドリド還元剤を用いる方法が簡便且つ特殊な装置を必要とせず便利であり、一方で、工業的に大規模に実施する場合には、経済性に優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。
【0026】
なお、本発明において、糖焙焼物またはその還元物は、上記手法により得たものを用いてよく、また市販品であって本発明の数値範囲を満たすものを用いてもよい。
【0027】
<色価>
本発明における糖焙焼物またはその還元物の色価は、以下の方法で測定することができる。
糖焙焼物またはその還元物の10重量%水溶液を調製し、610nm波長の吸光度を測定する。ただし、吸光度の測定値が0.01〜1でない場合は、0.01以下であれば20重量%水溶液、1以上であれば1重量%水溶液を調製し測定を実施する。それでも測定値が0.01〜1でない場合は、適宜濃縮または希釈し測定に供す。色価は、610nm吸光度を測定に供した試料の重量%濃度で除し100を乗じた値として算出する。なお、測定には光路長10mmのセルを用いる。吸光度は、例えば、分光光度計で測定できる。
【0028】
本発明の糖焙焼物またはその還元物の色価は、原料糖質の加熱焙焼度合いの指標であり、加熱焙焼処理が進むにつれて原料糖質の着色は激しくなるため、加熱温度が高温である程また加熱時間が長時間である程、色価は高くなる。色価を0.2以上に保つことで、気泡安定化効果として有効な機能を有する糖焙焼物を得ることができ、好ましくは色価を0.4以上、より好ましくは色価を5.0以上、特に好ましくは色価を5.0〜50、最も好ましくは色価を5.0〜20とすることで、より気泡安定化効果の高い糖焙焼物またはその還元物を得る事ができる。糖焙焼物またはその還元物の色価が0.2を下回る場合は、加熱焙焼処理が不十分であり、気泡安定化効果・起泡向上効果共に不十分な傾向にある。糖焙焼物またはその還元物の色価を50以下とすることで、気泡安定化効果・起泡向上効果を顕著に得る事ができる。
【0029】
<静的表面張力>
本発明の糖焙焼物またはその還元物は、25℃における10重量%水溶液のWilhelmy法によって測定した静的表面張力が69mN/m以下であることが好ましく、65mN/m以下であることがより好ましく、30〜65mN/mであることが特に好ましい。前記静的表面張力を69mN/m以下とすることで、気泡が割れにくくなるため、より気泡安定性が向上する。静的表面張力は加熱時間と加熱温度で調整でき、例えば220℃で10分以上加熱焙焼することで静的表面張力を69mN/m以下とすることができる。
【0030】
Wilhelmy法による静的表面張力は具体的には以下の方法で測定することができる。
糖焙焼物またはその還元物の10重量%溶液を調製し、25℃の条件下で、Wilhelmy法を原理とする自動表面張力計DY−300(協和界面科学社製)を用いて各サンプルの10重量%水溶液の静的表面張力を測定する。
【0031】
本発明の詳細なメカニズムは不明であるが、構成糖にケトースを含む糖質を加熱焙焼することにより、ケトースが脱水反応し、さらに反応物が重合することで疎水度が向上することによって気泡性が向上すると考えられる。なお、本発明は上記メカニズムの記載に拘束されるものではない。
【0032】
(2)気泡剤
本発明における気泡剤は、ケトースを構成糖とする糖質を加熱焙焼処理し、必要に応じて更に還元処理することで得た糖焙焼物またはその還元物であって、その色価が0.2以上である糖焙焼物またはその還元物を有効成分とする。
【0033】
本発明における「気泡剤」とは、泡立ちを促進する効果、即ち「起泡性向上効果」および泡沫の消失を抑制する効果、即ち「気泡安定化効果」のいずれか一方または両方を有するものを意味する。
【0034】
本発明における気泡剤は、ケトースを構成糖とする糖質を加熱焙焼処理し、必要に応じて更に還元処理することで得られる糖焙焼物またはその還元物を含む事を特徴としており、その効果を阻害しない範囲で他の食品素材、例えば、サポニン・タンパク・大豆多糖類等の気泡剤や、糖質、油脂類、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、乳化剤、有機酸、保存料、着色料、香料、無機塩類等を添加してもよい。
【0035】
(3)飲食品の製造方法および飲食品の気泡安定化方法
本発明にて得られる糖焙焼物またはその還元物および気泡剤は、発泡性飲料をはじめとする各種飲食品に添加し、飲食品の製造に使用することができ、また飲食品の気泡安定化に使用することもできる。その添加時期も特に制限は無く、製造時に原料として添加してもよく、製造中に添加してもよく、製造後に添加してもよい。前記飲食品としては、特に、ビール系飲料、ビールテイスト飲料、発泡性アルコール飲料、発泡性清涼飲料、ホイップクリーム、メレンゲが好ましく、気泡剤の着色を考慮すると、ビール系飲料、ビールテイスト飲料が特に好ましい。
【0036】
本発明における「ビール系飲料」には酒税法上のビール、発泡酒および所謂「第3のビール」あるいは「新ジャンル」と呼ばれるその他の醸造酒・リキュール(発泡性)の他に、低アルコールビール風味麦芽発酵飲料が含まれる。
【0037】
本発明における「ビールテイスト飲料」は、ノンアルコールビール飲料やビール風味飲料と称される飲料が含まれる。
【0038】
本発明における「発泡性アルコール飲料」は、麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料(「酎ハイ」と呼ばれる焼酎ハイボール等のリキュール類やスパークリングワイン、発泡性清酒、カクテル、サワー等)が含まれる。
【0039】
発泡性清涼飲料は、ビールテイスト飲料を除く発泡性のノンアルコール飲料であり、コーラ、サイダー、栄養ドリンク、乳性飲料、アイソトニック飲料、スポーツ飲料、果汁飲料等が含まれる。また、茶、紅茶、コーヒー、野菜ジュース等のように、通常は発泡性でない飲料であっても、発泡性を持たせた場合にはこれらも含まれる。サイダー、クリームソーダ等の炭酸飲料には、粉末を水や湯にといて飲むインスタントタイプのものもあるが、本発明における発泡性飲料はそうしたものも広く含む。
【0040】
本発明における糖焙焼物またはその還元物が添加されるビール系飲料は、糖焙焼物またはその還元物を添加する以外は通常のビール、発泡酒および所謂「第3のビール」あるい
は「新ジャンル」と呼ばれるその他の醸造酒(発泡性)・その他のリキュール(発泡性)等で一般的に用いられる方法で製造することができる。すなわち、麦芽と温水を混合するか、あるいは麦芽と糖類、澱粉、タンパク質等の副原料とを温水で混合し、必要に応じてアミラーゼ等の酵素を加えて糖化後ろ過して麦汁を調製し、得られた麦汁に、ホップを添加し、煮沸後濾過して発酵前液を調製し、酵母を添加して常法により発酵・熟成を行い、発酵液を得ることができる。上記材料の他に、色素、香料等の添加物を適宜加えてもよい。
【0041】
本発明における糖焙焼物またはその還元物が添加されるビールテイスト飲料は、上記のようにして製造されたビール系飲料からアルコールを除去して製造することができるが、発酵を経ずに得られたビールテイスト飲料に本発明における糖焙焼物またはその還元物を添加して製造してもよい。
【0042】
本発明における糖焙焼物またはその還元物の添加タイミングは特に限定されず、前述の麦汁調製前(仕込み工程)に他の副原料と一緒に麦汁または発酵前液に添加しても、麦汁調製後発酵前にホップと一緒に麦汁または発酵前液に添加してもよく、あるいは、発酵工程中に発酵液に添加するか、発酵工程の後に発酵液に添加してもよい。
【0043】
その他の飲食品についても、本発明における糖焙焼物またはその還元物を添加する以外は通常の飲食品で一般的に用いられる方法で製造することができる。添加タイミングも特に限定されない。
【0044】
本発明における糖焙焼物またはその還元物のビール系飲料、ビールテイスト飲料、発泡性アルコール飲料、発泡性清涼飲料等の飲食品への添加量は、特に制限されないが、起泡性および気泡安定性をよりよく発揮させる観点から、0.01重量%〜30重量%、好ましくは0.05重量%〜30重量%、より好ましくは0.1重量%〜30重量%とすることができる。30重量%を超えて添加しても効果に違いが見られない傾向がある。0.01重量%以上添加することで十分に効果を得る事ができる。粉末飲料に加工する場合の含量も、該粉末飲料を適した濃度となるよう水に溶解した状態で上の範囲になるようにすればよい。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
以下、実施例において、高果糖液糖(日本食品化工株式会社製)は、フ
ルクトース95重量%、グルコース5重量%を含有するものを用いた。
<製造例1>
固形分70重量%に調整した高果糖液糖(日本食品化工株式会社製)を220℃で10分間加熱することで糖焙焼物Aを得た。
【0047】
<製造例2>
結晶フルクトース(ナカライテスク株式会社製)を220℃で10分間加熱することで糖焙焼物Bを得た。
【0048】
<製造例3>
固形分70重量%に調整した高果糖液糖(日本食品化工株式会社製)を120℃で12時間加熱することで糖焙焼物Cを得た。
【0049】
<製造例4>
固形分70重量%に調整した高果糖液糖(日本食品化工株式会社製)を300℃で3分
間加熱することで糖焙焼物Dを得た。
【0050】
<製造例5>
固形分70重量%の高果糖液糖(日本食品化工株式会社製)および液状ぶどう糖(日本食品化工株式会社製)を固形分比10:0、8:2、6:4、4:6、2:8または1:9で混合したシラップを220℃で15分間加熱することで、それぞれ糖焙焼物E、F、G、H、I、またはJを得た。
【0051】
<製造例6>
固形分70重量%に調整したスクロース(フジ日本精糖株式会社社製)水溶液を220℃で10分間加熱することで糖焙焼物Kを得た。
【0052】
<製造例7>
糖焙焼物Aを純水に溶解し、水酸化ナトリウム溶液でpH10に調製した後、水素化ホウ素ナトリウムで還元させることで糖焙焼物Lを得た。
【0053】
<製造例8>
固形分70重量%に調整した液状ぶどう糖(日本食品化工株式会社製)を220℃で10分間加熱することで糖焙焼物Mを得た。
【0054】
<製造例9>
固形分70重量%に調整した高果糖液糖(日本食品化工株式会社製)を110℃で12時間加熱することで糖焙焼物Nを得た。
【0055】
<製造例10>
固形分70重量%に調整したスクロース(フジ日本精糖株式会社社製)水溶液を200℃で10分間加熱することで糖焙焼物Oを得た。
【0056】
<製造例11>
固形分70重量%に調整したマルトースシラップ(日本食品化工株式会社製)を220℃で10分間加熱することで糖焙焼物Pを得た。
【0057】
<製造例12>
固形分70重量%に調整した液状ぶどう糖(日本食品化工株式会社製)固形分10gを220℃で5分間加熱することで糖焙焼物Qを得た。
【0058】
<色価>
製造例1〜12に記載の糖焙焼物A〜Q、糖焙焼物Rとしてスクロースの加熱焙焼物であるカラメル色素(仙波糖化工業株式会社製、製品名KS−S)、糖焙焼物の原料である高果糖液糖(日本食品化工株式会社製)およびスクロース(フジ日本精糖株式会社社製)、について10重量%溶液を調製し、分光光度計で610nm波長の吸光度を測定した。ただし、吸光度の測定値が0.01〜1でない場合は、0.01以下であれば20重量%溶液、1以上であれば1重量%溶液を調製し測定を実施する。それでも測定値が0.01〜1でない場合は、適宜濃縮または希釈し測定に供す。色価は610nm吸光度を測定に供した試料の重量%濃度で除し100を乗じた値として算出した。なお、測定には光路長10mmのセルを用いた。
【0059】
<表面張力>
色価の測定と同様のサンプルの静的表面張力を測定した。静的表面張力の測定は、Wilhelmy法を原理とする自動表面張力計DY−300(協和界面科学社製)を用いて
行った。尚、被測定溶液は10重量%で統一し、温度は25℃とした。
【0060】
<起泡性および気泡安定性評価試験>
色価の測定と同様のサンプルの気泡安定性を◎、○、△、×の4段階で評価した。詳しくは、各試料の1重量%水溶液5mlを、φ17×120mmの15ml容コニカルチューブ(ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー社製)に分注し、10秒間上下に強振してから静置したときの泡が消失するまでの時間を計測した。ここでの「泡の消失」は液面の表面全体が覆われている状態から液面表面の一部でも泡に覆われていない部分が生じた時とした。評価基準は、「撹拌直後に泡が生じないもの」は×、「撹拌直後に泡は生じるが30分以内に泡が消失するもの」は△、「撹拌直後に泡が生じ、30分後の泡体積が1cc未満のもの」は○、「撹拌直後に泡が生じ、30分後の泡体積が1cc以上のもの」は◎とした。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示すように、構成糖にケトースを含む糖質をその色価が0.2以上となるように加熱焙焼処理することで得られる糖焙焼物である糖焙焼物A〜Kは、いずれも比較例である非加熱焙焼の原料糖質(高果糖液糖およびスクロース)を用いた試験区に比べて起泡性および気泡安定性のいずれも向上している事が確認された。また、糖焙焼物の還元物である糖焙焼物Lも同様に比較例に比べて起泡性および気泡安定性のいずれも向上している事が確認された。一方で、ケトースを含まない糖質のみを加熱焙焼して得られた糖焙焼物(糖焙焼物M、PおよびQ)やケトースを含む糖質を色価が0.2を下回る程度に加熱焙焼して得られた糖焙焼物(糖焙焼物NおよびO)は、起泡効果および気泡安定化効果のいずれも有していなかった。市販品のスクロースの加熱焙焼物であるカラメル色素である糖焙焼物Rも、起泡性および気泡安定性のいずれも向上していた。
【0063】
<起泡性および気泡安定性の評価試験I>
市販の「生ビール:ビール系飲料A」、「発泡酒:ビール系飲料B」、「その他の醸造酒(発泡性)(1):ビール系飲料C」または「リキュール(発泡性)(1):ビール系飲料D」に分類されるビール系飲料10mlを、50mlのコニカルチューブに分注し、製造例1で得た糖焙焼物Aの50重量%水溶液を、糖焙焼物Aが0.5または0.1重量%水溶液となるように添加した。その後、10秒間上下に強振してから静置し、5分後および30分後の泡の体積を指標として泡の安定性の評価を行った。比較として、糖焙焼物Aを加えていない市販のビール系飲料を、同じ方法で評価した。結果を表2に纏めた。
【0064】
【表2】
【0065】
表2に示すように糖焙焼物Aを添加したビール系飲料はいずれも、糖焙焼物Aを添加していないビール系飲料と比較して気泡安定性が向上し、さらに起泡性も向上することが確認された。
【0066】
<起泡性および気泡安定性の評価試験II>
ビールテイスト飲料10mlを、50mlのコニカルチューブに分注し、製造例1で得た糖焙焼物Aの50重量%水溶液を、糖焙焼物Aが0.5または0.1重量%水溶液となるように添加した。その後、10秒間上下に強振してから静置し、5分後および30分後の泡の高さを指標として泡の安定性の評価を行った。比較として、糖焙焼物Aを加えていない市販のビールテイスト飲料を、同じ方法で評価した。その結果を表3に纏めた。
【0067】
【表3】
【0068】
表3に示すように糖焙焼物Aを添加したビールテイスト飲料は、糖焙焼物Aを添加していないビールテイスト飲料と比較して高い起泡性を示し、さらに気泡安定性が向上することが確認された。
【0069】
<起泡性および気泡安定性の評価試験III>
市販の「炭酸清涼飲料」に分類されるコーラおよびサイダー10mlを、50mlのコニカルチューブに分注し、製造例1で得た糖焙焼物Aの50重量% 水溶液を、糖焙焼物
Aが0.5または0.1重量%水溶液となるように添加した。その後、10秒間上下に強振してから静置し、直後、5分後および30分後の泡の高さを指標として気泡安定性の評価を行った。比較として市販のコーラおよびサイダーを、糖焙焼物Aを加えることなく、同じ方法で評価した。その結果を表4に纏めた。
【0070】
【表4】
【0071】
表4の結果から、糖焙焼物Aを添加した市販炭酸清涼飲料は、無添加区には見られない起泡性を示し、さらに、高い気泡安定性を示すことが確認された。
【0072】
<起泡性および気泡安定性の評価試験IV>
モルトエキス、マルトースシラップを原料に使用し、さらに、発酵前麦汁に製造例1で得た糖焙焼物Aの50重量%溶液を、終濃度で0.1または1重量%となるように添加した発泡酒(麦芽比率25重量%)を試醸した。醸造した発泡酒は撹拌により溶存CO
2を
除去し、500ml容メスシリンダーに100ml移した後、炭酸ガスでバブリングを行い500mlまで起泡させた。その後、400ml、200mlと泡が減少するまでの時間を計測した。また、比較として糖焙焼物Aを添加せず醸造した発泡酒においても同じ方法で評価した。その結果を表5に纏めた。
【0073】
【表5】
【0074】
表5の結果から、醗酵前に糖焙焼物Aを添加した発泡酒は、無添加のものと比べて泡が減少するまでの時間が明確に延長し、気泡安定化効果を有することが示された。
【0075】
<製造例13>
固形分70重量%に調整した液状ぶどう糖(日本食品化工株式会社製)固形分10gに1N 水酸化ナトリウム水溶液を1cc加え撹拌したものを220℃で5分間加熱するこ
とで糖焙焼物S(実施例32)を得た。得られた糖焙焼物Sの色価および表面張力を前記手法で測定した結果、ぶどう糖原料に異性化触媒(水酸化ナトリウム)を加えて加熱焙焼処理することでケトースを生成させながら更に焙焼して得られた糖焙焼物Sの色価は2.7、表面張力は68.5mN/mであった。また、ぶどう糖のみを焙焼した糖焙焼物Qとその気泡安定性を前記方法により比較したところ、糖焙焼物Qは全く起泡が生じなかったのに対し、糖焙焼物Sは攪拌後に気泡が生じ、更にその気泡は30分後にも残存していた。よって、ケトースを含まない糖質を原料として、異性化触媒によりケトースを生成しつつ更に加熱焙焼して得られる糖焙焼物も気泡安定効果を有している事が確認された。
【解決手段】構成糖にケトースを含む糖質を、加熱焙焼処理した糖焙焼物またはその還元物であって、色価が0.2以上である糖焙焼物またはその還元物、を有効成分とする気泡剤。