特許第5648119号(P5648119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5648119-外気冷房機能付空調機 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5648119
(24)【登録日】2014年11月14日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】外気冷房機能付空調機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20141211BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20141211BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20141211BHJP
   F24F 11/053 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   F24F11/02 102J
   F24F11/02 102V
   F24F3/00 B
   F24F7/06 B
   F24F11/053 Z
   F24F11/053 F
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-271506(P2013-271506)
(22)【出願日】2013年12月27日
【審査請求日】2013年12月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-167942(P2013-167942)
(32)【優先日】2013年8月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000244958
【氏名又は名称】木村工機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 恵一
(72)【発明者】
【氏名】森田 満津雄
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−042129(JP,A)
【文献】 特開2001−182990(JP,A)
【文献】 特開2012−184864(JP,A)
【文献】 特開2001−165485(JP,A)
【文献】 特開2002−089988(JP,A)
【文献】 特開2011−208828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
F24F 3/00
F24F 7/06
F24F 11/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気としての外気と還気の混合比率を調整する風量調整機構(D)と、前記空調用空気を冷却する熱交換器(1)と、前記空調用空気を加湿する加湿装置(13)と、前記空調用空気を被空調空間へ給気する送風機(4)と、前記送風機(4)の給気風量を調整自在な変風量機構(E)と、冷房運転時に前記風量調整機構(D)の前記外気と前記還気の混合比率と前記熱交換器(1)の空調用空気冷却能力と前記変風量機構(E)による前記送風機(4)の給気風量と前記加湿装置(13)の加湿量とを制御して前記被空調空間を設定された温湿度に調整する制御装置(8)と、を備え、
前記制御装置(8)が、
前記空調用空気を前記還気のみとして前記熱交換器(1)で冷却し給気する全還気冷房モード(a)と、
前記空調用空気を前記外気のみとして前記熱交換器(1)で冷却し給気する全外気冷房モード(b)と、
前記空調用空気を前記外気のみとして前記熱交換器(1)で冷却し加湿して給気する全外気冷房加湿モード(c)と、
前記空調用空気を前記外気と前記還気の混合空気として給気する外還気混合送風モード(d)と、
前記空調用空気を前記外気と前記還気の混合空気として加湿して給気する外還気混合加湿送風モード(e)と、
前記空調用空気を前記外気のみとして前記送風機(4)の給気風量調整にて冷房能力を増減して給気する全外気送風モード(f)と、
前記空調用空気を前記外気のみとして前記送風機(4)の給気風量調整にて冷房能力を増減し加湿して給気する全外気加湿送風モード(g)と、
を、前記外気と前記還気の温湿度に応じて選択切換自在であって、前記全外気冷房モード(b)と前記全外気送風モード(f)の何れでも前記被空調空間を設定された温湿度に調整可能な場合に前記各モード(b)、(f)の消費エネルギーを比較して少ない方のモードを選択すると共に、前記全外気冷房加湿モード(c)と前記全外気加湿送風モード(g)の何れでも前記被空調空間を設定された温湿度に調整可能な場合に前記各モード(c)、(g)の消費エネルギーを比較して少ない方のモードを選択するように、構成されていることを特徴とする外気冷房機能付空調機。
【請求項2】
加湿装置(13)が気化式加湿器(2)と蒸気式加湿器(3)を備えた請求項1記載の外気冷房機能付空調機。
【請求項3】
空調用空気を冷却する熱交換器(1)の風上側に、地下水にて前記空調用空気を冷却する予冷熱交換器(14)を、配置した請求項1又は2記載の外気冷房機能付空調機。
【請求項4】
熱交換器(1)の伝熱管を楕円管とした請求項1、2又は3記載の外気冷房機能付空調機。
【請求項5】
予冷熱交換器(14)の伝熱管を楕円管とした請求項3又は4記載の外気冷房機能付空調機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外気冷房機能付空調機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルなどの断熱化が進み冷房負荷が増大している。たとえばサーバ等が設置されたデータセンター施設では、空調機と施設の間を熱交換器で温調した還気を循環させて空調しているが、発熱量が大きいために冬期でも冷房が必要で、省エネのために外気冷房の採用が検討されている。しかしながら、外気冷房は熱交換器による空気冷房(熱源機動力)の減少に伴って外気風量(送風動力)が増す問題があり、これを解消して最適な省エネ空調ができる空調機が求められていた。
【0003】
【特許文献1】特開平2000−121131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、冬期の外気で加湿を必要とする場合、気化式加湿器だとエネルギー消費は少ないが温湿度制御性が悪く、蒸気加湿器では温湿度制御性は良いがエネルギー消費が多くなる課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、空調用空気としての外気と還気の混合比率を調整する風量調整機構と、前記空調用空気を冷房する熱交換器と、前記空調用空気を加湿する加湿装置と、前記空調用空気を被空調空間へ給気する送風機と、を備え、冷房運転時に前記送風機と前記熱交換器と前記加湿装置の消費エネルギーの総和が最少となるように温湿度制御を行う制御装置を、設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、最も少ない消費エネルギーで外気冷房加湿ができ、外気冷房等の年間冷房が必要なデータセンター施設などの温湿度制御に最適である。
気の温湿度が被空調空間目標温湿度よりも低くて目標給気温湿度よりも高く、全外気冷房モードと全外気送風モードの何れでも被空調空間を設定された温湿度に調整可能な場合に、消費エネルギーの少ないモードを自動的に選択して冷房できる。さらに、外気の温湿度が被空調空間目標温湿度及び目標給気湿度よりも低くて目標給気温度よりも高く、全外気冷房加湿モードと全外気加湿送風モードの何れでも被空調空間を設定された温湿度に調整可能な場合に、消費エネルギーの少ないモードを自動的に選択して冷房できる。すなわち、低温の外気を利用した冷房運転のモード選択肢が多様で、消費エネルギーの最も少ないモードを使用して、きめ細かな最適空調制御を維持しつつ最大限の省エネを図れる。
請求項の発明によれば、気化式加湿器と蒸気式加湿器を組合わせて加湿することで、幅広い空気条件で省エネ性と快適性(加湿精度向上)の両方を満足させることができる。たとえば、空調用空気に対して、先ずエネルギー消費の少ない気化式加湿器で加湿しながら気化熱を奪って冷却し、空調用空気の空気条件によっては気化式加湿器で加湿不足となる場合には、その不足分のみを(空調用空気の空気条件によらず加湿可能な)蒸気加湿器で最低限加湿して、精度良く必要な給気温湿度に最適制御しつつ熱交換器の消費エネルギーを削減することができる。
請求項の発明によれば、地下水の自然熱エネルギー利用して、熱交換器の消費エネルギーを節減し、一層の省エネを図ることができる。
請求項4、5の発明によれば、楕円管なので熱交換器通風空気の圧力損失が少なくて給気送風に必要な消費エネルギーを削減でき、さらに省エネとなる。
【実施例】
【0007】
図1は、本発明の外気冷房機能付空調機の一実施例を示しており、この外気冷房機能付空調機は、空調用空気としての外気と還気の混合比率を調整する風量調整機構Dと、熱伝達部を介して熱搬送用媒体で空調用空気を熱交換する熱交換器1と、空調用空気を加湿する加湿装置13と、空調用空気を熱交換器1を介して被空調空間へ給気する送風機4と、被空調空間への送風機4の給気風量を調整自在なインバータなどから成る変風量機構Eと、冷房運転時に送風機4と熱交換器1(熱源機9)と加湿装置13の消費エネルギーの総和が最少となるように温湿度制御を行う制御装置8と、を備えている。
【0008】
熱交換器1の熱伝達部は、通風自在に設けられた多数の伝熱板に伝熱管を挿着して成り(図示省略)、伝熱管内を流れる熱搬送用媒体と通過空気が伝熱管及び伝熱板を介して熱交換する。この伝熱管は楕円管にするのが好ましいが円形管でもよい。熱搬送用媒体は水などの熱媒やフロンなどの冷媒で、熱源機9にて熱搬送用媒体の温度を調整する。熱源機9は、例えばヒートポンプ式や吸収式のチラー以外に、ヒートポンプ式の室外機などである。加湿装置13は、気化式加湿器2と蒸気式加湿器3を備えている。
【0009】
各図の実線の白抜き矢印は送風方向を示し、送風機4で吸い込まれた外気と還気が混合され、熱交換器1を通過して熱交換され、気化式加湿器2と蒸気式加湿器3にて適宜調湿されて、被空調空間へ給気される場合を例示している。風量調整機構Dは、風量調整自在な比例式の外気ダンパ10、還気ダンパ11にて構成する。
【0010】
制御装置8は、センサやマイクロプロセッサ等にて構成され、外気(屋外)の温湿度を検出する外気温湿度検出器5と、還気(屋内)の温湿度を検出する還気温湿度検出器6と、給気の温湿度を検出する給気温湿度検出器7と、設定手段12と、を備える。設定手段12は、目標給気温度や被空調空間(屋内)の目標温湿度の設定を行う。これらの設定値は、単一の数値の場合と、しきい値を含んだ所定範囲の数値の場合があり、何れを選択するかは自由である。
【0011】
図1図2に示すように、冷房運転時に風量調整機構Dの外気と還気の混合比率と熱交換器1の空調用空気冷却能力(熱源機9の冷房能力)と変風量機構Eによる送風機4の給気風量と加湿装置13の加湿量とを制御して被空調空間を設定された温湿度に調整する制御装置8が、
空調用空気を風量調整機構Dで還気のみとして熱交換器1で冷却し加湿装置13で加湿せずに送風機4で被空調空間へ給気する全還気冷房モードaと、
空調用空気を風量調整機構Dで外気のみとして熱交換器1で冷却し加湿装置13で加湿せずに送風機4で被空調空間へ給気する全外気冷房モードbと、
空調用空気を風量調整機構Dで外気のみとして熱交換器1で冷却し加湿装置13で加湿して送風機4で被空調空間へ給気する全外気冷房加湿モードcと、
空調用空気を風量調整機構Dで外気と還気の混合空気として熱交換器1で冷却せずにかつ加湿装置13で加湿せずに送風機4で被空調空間へ給気する外還気混合送風モードdと、
空調用空気を風量調整機構Dで外気と還気の混合空気として熱交換器1で冷却せずに加湿装置13で加湿して送風機4で被空調空間へ給気する外還気混合加湿送風モードeと、
空調用空気を風量調整機構Dで外気のみとして熱交換器1で冷却せずに送風機4の給気風量調整にて冷房能力を増減して加湿装置13で加湿せずに被空調空間へ給気する全外気送風モードfと、
空調用空気を風量調整機構Dで外気のみとして熱交換器1で冷却せずに送風機4の給気風量調整にて冷房能力を増減し加湿装置13で加湿して被空調空間へ給気する全外気加湿送風モードgと、
を、
外気と還気の温湿度に応じて選択切換自在であって、全外気冷房モードbと全外気送風モードfの何れでも被空調空間を設定された温湿度に調整可能な場合に各モードb、fの消費エネルギーを演算比較して少ない方のモードを選択すると共に、全外気冷房加湿モードcと全外気加湿送風モードgの何れでも被空調空間を設定された温湿度に調整可能な場合に各モードc、gの消費エネルギーを演算比較して少ない方のモードを選択するように、構成されている。
【0012】
制御装置8による上記制御モードの選定は、検出器5、6、7で検出された空気の温湿度と設定手段12にて設定された目標温湿度に基づいて行われるが、複数のモードを選定可能な場合に、各モードの送風機4と熱交換器1と気化式加湿器2と蒸気式加湿器3の消費エネルギーの総和を求め、最少となるモードを選定することで、最も少ない消費エネルギーで精度良く温湿度制御が可能となる。もちろん、冷房時だけでなく暖房時も同様にして温湿度制御が可能であり、外気冷房機能の無い空調機にも適用可能である。
【0013】
例えば冷房運転時に、外気の温湿度が被空調空間目標温湿度よりも高い場合には全還気冷房モードa、外気の温湿度が被空調空間目標温湿度よりも低く目標給気温湿度よりも高い場合には全外気冷房モードb、外気の温湿度が被空調空間目標温湿度及び目標給気湿度よりも低く目標給気温度よりも高い場合には全外気冷房加湿モードc、外気の温湿度が被空調空間目標温湿度及び目標給気温度よりも低く目標給気湿度よりも高い場合には外還気混合送風モードd、外気の温湿度が被空調空間目標温湿度及び目標給気湿度よりも低く目標給気温度近辺乃至それよりも低い場合には外還気混合加湿送風モードe、外気の温湿度が被空調空間目標温湿度よりも低く目標給気温湿度よりも高い場合には全外気送風モードf、外気の温湿度が被空調空間目標温湿度及び目標給気湿度よりも低く目標給気温度よりも高い場合には全外気加湿送風モードg、を、選択すると共に、全外気冷房モードbと全外気送風モードfが選択可能な場合には消費エネルギーの少ない方のモード、全外気冷房加湿モードcと全外気加湿送風モードgが選択可能な場合には消費エネルギーの少ない方のモード、を選択して冷房運転する。
【0014】
図3は、前記実施例に空調用空気を冷却する熱交換器1の風上側に、熱伝達部を介して地下水にて空調用空気を冷却する予冷熱交換器14を、配置したものを示している。予冷熱交換器14の熱伝達部は、通風自在に設けられた多数の伝熱板に伝熱管を挿着して成り(図示省略)、伝熱管内を流れる熱搬送用媒体と通過空気が伝熱管及び伝熱板を介して熱交換する。この熱搬送用媒体として地下水を利用し、送水ポンプPを介して予冷熱交換器14に通水し、空調用空気を予冷して熱交換器1(熱源機9)の消費エネルギーを節減する。利用後の地下水は河川などへ放流する。
【0015】
なお、本発明は上述の実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更自由である。たとえば、気化式加湿器2を蒸気式加湿器3の風下に入替えたり、これらの何れか一方を省略した加湿装置13としたり、あるいは、制御装置8を、外気冷房運転時に送風機4と熱交換器1の消費エネルギーの総和が最少となるように温度制御を行うものとするのも自由である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の外気冷房機能付空調機の全体構成を示す簡略説明図である。
図2】冷房運転時の制御モード例を示す空気線図である。
図3】他の実施例の全体構成を示す簡略説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 熱交換器
4 送風機
8 制御装置
13 加湿装置
14 予冷熱交換器
D 風量調整機構
E 変風量機構
a 全還気冷房モード
b 全外気冷房モード
c 全外気冷房加湿モード
d 外還気混合送風モード
e 外還気混合加湿送風モード
f 全外気送風モード
g 全外気加湿送風モード
【要約】
【課題】最も少ない消費エネルギーで外気冷房加湿ができ温湿度制御に最適な外気冷房機能付空調機を得る。
【解決手段】 空調用空気としての外気と還気の混合比率を調整する風量調整機構(D)と、空調用空気を冷却する熱交換器(1)と、空調用空気を加湿する加湿装置(13)と、空調用空気を被空調空間へ給気する送風機(4)と、を備える。冷房運転時に送風機(4)と熱交換器(1)と加湿装置(13)の消費エネルギーの総和が最少となるように温湿度制御を行う制御装置(8)を、設ける。
【選択図】図1
図1
図2
図3