特許第5648330号(P5648330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5648330
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
   G01T7/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2010-133063(P2010-133063)
(22)【出願日】2010年6月10日
(65)【公開番号】特開2011-257301(P2011-257301A)
(43)【公開日】2011年12月22日
【審査請求日】2012年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 暁弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 健士
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−210480(JP,A)
【文献】 特開2007−281709(JP,A)
【文献】 特開2007−114105(JP,A)
【文献】 特開平10−197643(JP,A)
【文献】 特開2010−122025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/17
G01T 1/20
G01T 1/24
G01T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線に基づく電荷情報を読み出すことで前記放射線を検出する放射線検出器であって、
前記電荷情報を読み出す読み出し手段と、
その読み出し手段を制御する制御手段と
を備え、
前記読み出し手段は、
複数の前記電荷情報に基づく電気信号をひとつにまとめるアナログ用のマルチプレクサと、
前記アナログ用のマルチプレクサでまとめられた前記電気信号のアナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器と
を備え、
前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成し、
前記放射線に基づく画像情報を読み出す際には、前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に接続した状態で前記電気信号を前記画像情報として読み出し、
前記A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で、かつ前記A/D変換器の入力を一定電位に接続した状態で読み出す
ように前記制御手段は前記読み出し手段を制御することを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
放射線に基づく電荷情報を読み出すことで前記放射線を検出する放射線検出器であって、
ゲート線の駆動により前記電荷情報を読み出す読み出し手段と、
その読み出し手段を制御する制御手段と
を備え、
前記読み出し手段は、
複数の前記電荷情報に基づく電気信号をひとつにまとめるアナログ用のマルチプレクサと、
前記アナログ用のマルチプレクサでまとめられた前記電気信号のアナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器と
を備え、
前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成し、
前記放射線に基づく画像情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させた状態で、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に接続した状態で前記電気信号を前記画像情報として前記ゲート線の駆動毎に読み出し、
前記ゲート線を駆動させ前記画像情報を読み出す度に、前記画像情報を読み出す前に前記A/D変換器の固有の情報を読み出すとともに、前記A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させずに、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出す
ように前記制御手段は前記読み出し手段を制御し、
前記放射線検出器は、さらに、
前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出された前記A/D変換器の固有の情報に基づいて前記画像情報を補正する補正手段を備え、
前記補正手段は、前記ゲート線の駆動により読み出される前記画像情報よりも時間的に前に読み出された前記A/D変換器の固有の情報に基づいて当該画像情報を補正することを特徴とする放射線検出器。
【請求項3】
放射線に基づく電荷情報を読み出すことで前記放射線を検出する放射線検出器であって、
ゲート線の駆動により前記電荷情報を読み出す読み出し手段と、
その読み出し手段を制御する制御手段と
を備え、
前記読み出し手段は、
複数の前記電荷情報に基づく電気信号をひとつにまとめるアナログ用のマルチプレクサと、
前記アナログ用のマルチプレクサでまとめられた前記電気信号のアナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器と
を備え、
前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成し、
前記放射線に基づく画像情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させた状態で、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に接続した状態で前記電気信号を前記画像情報として前記ゲート線の駆動毎に読み出し、
前記ゲート線を駆動させ前記画像情報を読み出す度に、前記画像情報を読み出した後に前記A/D変換器の固有の情報を読み出すとともに、前記A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させずに、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出す
ように前記制御手段は前記読み出し手段を制御し、
前記放射線検出器は、さらに、
前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出された前記A/D変換器の固有の情報に基づいて前記画像情報を補正する補正手段を備え、
前記補正手段は、前記ゲート線の駆動により読み出される前記画像情報よりも時間的に後に読み出される前記A/D変換器の固有の情報に基づいて当該画像情報を補正することを特徴とする放射線検出器。
【請求項4】
放射線に基づく電荷情報を読み出すことで前記放射線を検出する放射線検出器であって、
ゲート線の駆動により前記電荷情報を読み出す読み出し手段と、
その読み出し手段を制御する制御手段と
を備え、
前記読み出し手段は、
複数の前記電荷情報に基づく電気信号をひとつにまとめるアナログ用のマルチプレクサと、
前記アナログ用のマルチプレクサでまとめられた前記電気信号のアナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器と
を備え、
前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成し、
前記放射線に基づく画像情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させた状態で、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に接続した状態で前記電気信号を前記画像情報として前記ゲート線の駆動毎に読み出し、
前記ゲート線を駆動させ前記画像情報を読み出す度に、前記画像情報を読み出す前に前記A/D変換器の固有の情報を読み出し、さらに前記画像情報を読み出した後に前記A/D変換器の固有の情報を読み出すとともに、前記A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させずに、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出す
ように前記制御手段は前記読み出し手段を制御し、
前記放射線検出器は、さらに、
前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出された前記A/D変換器の固有の情報に基づいて前記画像情報を補正する補正手段を備え、
前記補正手段は、前記ゲート線の駆動により読み出される前記画像情報よりも時間的に前に読み出された前記A/D変換器の固有の情報および時間的に後に読み出される前記A/D変換器の固有の情報の両方に基づいて当該画像情報を補正することを特徴とする放射線検出器。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の放射線検出器において、
複数の前記アナログ用のマルチプレクサと、
同数の前記A/D変換器と
を備え、
前記A/D変換器でディジタル値に変換された前記電気信号をひとつにまとめるディジタル用のマルチプレクサをさらに備えることを特徴とする放射線検出器。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線検出器において、
前記補正手段は、前記ゲート線の駆動により読み出される前記画像情報の直前あるいは直後で読み出された前記A/D変換器の固有の情報に基づいて当該画像情報を補正する作業を順次に行うことを特徴とする放射線検出器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の放射線検出器において、
前記A/D変換器の入力側に抵抗を備えることを特徴とする放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療分野、工業分野、さらには原子力分野などに用いられる放射線検出器に係り、特に、放射線に基づく電荷情報を読み出す技術に関する。
【背景技術】
【0002】
直接変換型のX線検出器を例に採って説明すると、X線検出器は、X線感応型の半導体厚膜を備えており、入射されたX線は半導体厚膜によりキャリア(電荷情報)に変換され、その変換されたキャリアを読み出すことでX線を検出する。絶縁基板にゲート線およびデータ線を配線し、そのデータ線の後段にマルチプレクサやA/D変換器(Analog to Digital Converter)などの読み出し手段が電気的に接続されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
X線に基づくキャリアを読み出すには、特定の選択されたゲート線を駆動させて、そのゲート線に接続された検出素子がキャリアをデータ線に読み出す。そして、上述の読み出し手段にキャリアを送り込む。残りのゲート線を順次に駆動させれば、各画素毎に対応付けられ2次元状に配列された検出素子からのキャリアに基づく電気信号がA/D変換器でディジタル化されて取り出され、そのディジタル化された電気信号が画素毎に対応付けられて1枚の画像(画像情報)として取得される。
【0004】
放射線検出器が大型化し高速化するのに伴い、アンプやA/D変換器も多数必要となる。そこで、複数のデータ線がマルチプレクサ毎にグルーピング化され、グルーピング毎にアンプやA/D変換器を設けて、グルーピング毎にそれらを同時並行して動作させる(例えば、特許文献3参照)。このように同時並行して動作させることで、グルーピング毎の各画像情報がA/D変換器にて同時並行でディジタル化されて処理されるので、放射線検出器が大型化しても高速化に対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−274672号公報(第6頁、図1
【特許文献2】特開平11−94532号公報(第3−4頁、図1
【特許文献3】特開平9−21879号公報(第7−10頁、図1、2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献3のようにグルーピング化すると、グルーピング毎のアンプやA/D変換器間で特性差が生じるという問題がある。
すなわち、上述の特許文献1、2の構造では、1つの信号にまとめるマルチプレクサが1つのみで、そのマルチプレクサの後段にA/D変換器があるので、同一のA/D変換器でディジタル化される結果、少なくともA/D変換器間で特性差が生じるという問題はなかった。上述の特許文献3の構造では、1つの信号にまとめるマルチプレクサがグルーピング後の数だけ複数あり、グルーピング毎のマルチプレクサの後段にアンプやA/D変換器がマルチプレクサの数と同数にあるので、グルーピング毎の各々のA/D変換器でそれぞれディジタル化される結果、グルーピング毎のアンプやA/D変換器間で特性差が生じる。この特性差の影響がアーティファクトとして画像に現れてしまう。
【0007】
なお、グルーピング化する特許文献3に限らず、グルーピング化しない特許文献1、2でもA/D変換器などに代表される読み出し手段の固有の情報(特性)が実際の画像に重畳されてしまう。そこで、実際の画像を収集する前にデータを収集して、その収集されたデータに基づいて実際の画像を補正する「キャリブレーション」と称される方法が一般的に行われる。キャリブレーションとしては、上述の特許文献1のような無感状態で読みされたオフセット成分を除去して有感状態で読み出された画像を補正するオフセット補正や、上述の特許文献2のようなアンプのゲインを揃えて補正するゲイン補正などがある。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、読み出し手段の固有の情報(特性)を除去することができる放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。
【0010】
すなわち、グルーピング化する特許文献3のような特性差が現れたとしても、上述のような特許文献1、2のキャリブレーションを行えば、その特定差が安定していれば、特性差を低減させて、特性差の影響によるアーティファクトを低減させることができると考えられる。
【0011】
しかし、かかるキャリブレーションを行ったとしても、特別な条件下ではアーティファクトが除去できないという想定できない課題が判明した。その特別な条件とは、X線を入射しない状態で得られた暗画像あるいはX線量がほぼ一様な照射であって、重畳されるノイズ振幅がA/D変換後のディジタル値で1[LSB]程度かそれ以下であることである。このような場合には、視認できる程の影響(ノイズ)が画像に現れるという現象が生じた。
【0012】
通常では、特許文献1、2の構造では、上述のような視認できる程のノイズは画像に現れない。これは、画像に重畳されるノイズはランダムであり、しかもその振幅が1[LSB]以上であれば、上述の視認できる程のノイズ(特性)がランダムなノイズに埋もれてしまい、逆に目立たなくなるのだと考えられる。実際に、画像にランダムなノイズを故意に人為的に重畳すると、ノイズが目立たなくなることが確認されている。
【0013】
また、グルーピング化する特許文献3の構造でも、各々のデータ線毎に画像処理(信号処理)を行っていると考えられる。この場合には、それぞれのデータ線毎では上述のノイズ(特性)をもっていたとしても、データ線を束ねた画像全体から見れば各データ線が有する特性はランダムに見え、上述の視認できる程のノイズ(特性)が目立たなくなる。
【0014】
しかし、グルーピング化する特許文献3の構造を採用し、アナログ用のマルチプレクサとA/D変換器とを互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成した場合には、X線を入射しない状態で得られた暗画像あるいはX線量がほぼ一様な照射であって、重畳されるノイズ振幅がA/D変換後のディジタル値で1[LSB]程度かそれ以下であれば、視認できる程の影響(ノイズ)がグルーピングされた領域ごとに模様として現れるのが確認されている。しかも、それが時間的に変動するので、グルーピングされた領域毎に特性差による模様が変動して目障りとなる。
【0015】
これは、特許文献1、2と相違して、グルーピングの対象となるアンプやマルチプレクサやA/D変換器がひとまとまりとなっており、これらが複数に並べられて、その各系統が独立して連続動作していることにより、その連続動作中に保持されている特性が、X線を入射しない状態で得られた暗画像あるいはX線量がほぼ一様な照射であって、重畳されるノイズ振幅がA/D変換後のディジタル値で1[LSB]程度かそれ以下であれば、視認できる程のノイズとなって現れるのだと考えられる。そして、特許文献1、2のように単数のA/D変換器で構成されていれば、それらの特性は全体に(すなわち一律に)重畳されるので、ノイズがあったとしても視認されなくなると考えられる。
【0016】
したがって、A/D変換器の前段にアナログ部品(マルチプレクサやアンプなど)が複数ある場合には、上述のように特許文献3において信号処理を行って、相互間の差分をどこかで補償しなければならず、本来であれば単一の部品で信号処理を一括して行うのが望ましいが、処理速度上、実際にはそのような一括して行う構成を採用することができない。
【0017】
これらの原因により、グルーピング化する特許文献3の構造に限定されず、アナログ用のマルチプレクサとA/D変換器とを互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成し、A/D変換器の固有の情報を読み出せば、他のノイズに重畳されることなく、A/D変換器に由来するノイズ(すなわち視認できる程の影響)を抽出することが可能という知見を得た。なお、特許文献1、2では、A/D変換器よりも前段のデータ線やアンプのノイズも重畳される結果、視認できる程の影響(ノイズ)のみを抽出するのは困難だと考えられる。
【0018】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る放射線検出器(第1の発明)は、放射線に基づく電荷情報を読み出すことで前記放射線を検出する放射線検出器であって、前記電荷情報を読み出す読み出し手段と、その読み出し手段を制御する制御手段とを備え、前記読み出し手段は、複数の前記電荷情報に基づく電気信号をひとつにまとめるアナログ用のマルチプレクサと、前記アナログ用のマルチプレクサでまとめられた前記電気信号のアナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器とを備え、前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成し、前記放射線に基づく画像情報を読み出す際には、前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に接続した状態で前記電気信号を前記画像情報として読み出し、前記A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で、かつ前記A/D変換器の入力を一定電位に接続した状態で読み出すように前記制御手段は前記読み出し手段を制御するものである。
また、第1の発明とは別の発明に係る放射線検出器(第2の発明)は、放射線に基づく電荷情報を読み出すことで前記放射線を検出する放射線検出器であって、ゲート線の駆動により前記電荷情報を読み出す読み出し手段と、その読み出し手段を制御する制御手段とを備え、前記読み出し手段は、複数の前記電荷情報に基づく電気信号をひとつにまとめるアナログ用のマルチプレクサと、前記アナログ用のマルチプレクサでまとめられた前記電気信号のアナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器とを備え、前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成し、前記放射線に基づく画像情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させた状態で、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に接続した状態で前記電気信号を前記画像情報として前記ゲート線の駆動毎に読み出し、前記ゲート線を駆動させ前記画像情報を読み出す度に、前記画像情報を読み出す前に前記A/D変換器の固有の情報を読み出すとともに、前記A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させずに、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出すように前記制御手段は前記読み出し手段を制御し、前記放射線検出器は、さらに、前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出された前記A/D変換器の固有の情報に基づいて前記画像情報を補正する補正手段を備え、前記補正手段は、前記ゲート線の駆動により読み出される前記画像情報よりも時間的に前に読み出された前記A/D変換器の固有の情報に基づいて当該画像情報を補正するものである。
また、第1,第2の発明とは別の発明に係る放射線検出器(第3の発明)は、放射線に基づく電荷情報を読み出すことで前記放射線を検出する放射線検出器であって、ゲート線の駆動により前記電荷情報を読み出す読み出し手段と、その読み出し手段を制御する制御手段とを備え、前記読み出し手段は、複数の前記電荷情報に基づく電気信号をひとつにまとめるアナログ用のマルチプレクサと、前記アナログ用のマルチプレクサでまとめられた前記電気信号のアナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器とを備え、前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成し、前記放射線に基づく画像情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させた状態で、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に接続した状態で前記電気信号を前記画像情報として前記ゲート線の駆動毎に読み出し、前記ゲート線を駆動させ前記画像情報を読み出す度に、前記画像情報を読み出した後に前記A/D変換器の固有の情報を読み出すとともに、前記A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させずに、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出すように前記制御手段は前記読み出し手段を制御し、前記放射線検出器は、さらに、前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出された前記A/D変換器の固有の情報に基づいて前記画像情報を補正する補正手段を備え、前記補正手段は、前記ゲート線の駆動により読み出される前記画像情報よりも時間的に後に読み出される前記A/D変換器の固有の情報に基づいて当該画像情報を補正するものである。
また、第1〜第3の発明とは別の発明に係る放射線検出器(第4の発明)は、放射線に基づく電荷情報を読み出すことで前記放射線を検出する放射線検出器であって、ゲート線の駆動により前記電荷情報を読み出す読み出し手段と、その読み出し手段を制御する制御手段とを備え、前記読み出し手段は、複数の前記電荷情報に基づく電気信号をひとつにまとめるアナログ用のマルチプレクサと、前記アナログ用のマルチプレクサでまとめられた前記電気信号のアナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器とを備え、前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成し、前記放射線に基づく画像情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させた状態で、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に接続した状態で前記電気信号を前記画像情報として前記ゲート線の駆動毎に読み出し、前記ゲート線を駆動させ前記画像情報を読み出す度に、前記画像情報を読み出す前に前記A/D変換器の固有の情報を読み出し、さらに前記画像情報を読み出した後に前記A/D変換器の固有の情報を読み出すとともに、前記A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、前記ゲート線を駆動させずに、かつ前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出すように前記制御手段は前記読み出し手段を制御し、前記放射線検出器は、さらに、前記アナログ用のマルチプレクサおよび前記A/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出された前記A/D変換器の固有の情報に基づいて前記画像情報を補正する補正手段を備え、前記補正手段は、前記ゲート線の駆動により読み出される前記画像情報よりも時間的に前に読み出された前記A/D変換器の固有の情報および時間的に後に読み出される前記A/D変換器の固有の情報の両方に基づいて当該画像情報を補正するものである。
【0019】
第1の発明に係る放射線検出器によれば、読み出し手段は、複数の電荷情報に基づく電気信号をひとつにまとめるアナログ用のマルチプレクサと、アナログ用のマルチプレクサでまとめられた電気信号のアナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器とを備えている。さらに、上述のアナログ用のマルチプレクサおよび上述のA/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成する。実際の画像を収集するために放射線に基づく画像情報を読み出す際には、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に接続した状態で電気信号を画像情報として読み出すように制御手段は読み出し手段を制御する。読み出し手段のA/D変換器の固有の情報を読み出す際には、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で、かつA/D変換器の入力を一定電位に接続した状態で読み出すように制御手段は読み出し手段を制御する。アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で、かつA/D変換器の入力を一定電位に接続した状態で読み出されたA/D変換器の固有の情報を補正に用いれば、読み出し手段のA/D変換器の固有の情報(特性)を除去することができる。
また、第2の発明に係る放射線検出器によれば、読み出し手段はアナログ用のマルチプレクサとA/D変換器とを備え、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成する。放射線に基づく画像情報を読み出す際には、ゲート線を駆動させた状態で、かつアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に接続した状態で電気信号を画像情報としてゲート線の駆動毎に読み出し、ゲート線を駆動させ画像情報を読み出す度に、画像情報を読み出す前にA/D変換器の固有の情報を読み出すとともに、A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、ゲート線を駆動させずに、かつアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出すように制御手段は読み出し手段を制御し、ゲート線の駆動により読み出される画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器の固有の情報を補正手段に用いれば、読み出し手段のA/D変換器の固有の情報(特性)を除去することができる。
また、第3の発明に係る放射線検出器によれば、読み出し手段はアナログ用のマルチプレクサとA/D変換器とを備え、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成する。放射線に基づく画像情報を読み出す際には、ゲート線を駆動させた状態で、かつアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に接続した状態で電気信号を画像情報としてゲート線の駆動毎に読み出し、ゲート線を駆動させ画像情報を読み出す度に、画像情報を読み出した後にA/D変換器の固有の情報を読み出すとともに、A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、ゲート線を駆動させずに、かつアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出すように制御手段は読み出し手段を制御し、ゲート線の駆動により読み出される画像情報よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器の固有の情報を補正手段に用いれば、読み出し手段のA/D変換器の固有の情報(特性)を除去することができる。
また、第4の発明に係る放射線検出器によれば、読み出し手段はアナログ用のマルチプレクサとA/D変換器とを備え、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成する。放射線に基づく画像情報を読み出す際には、ゲート線を駆動させた状態で、かつアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に接続した状態で電気信号を画像情報としてゲート線の駆動毎に読み出し、ゲート線を駆動させ画像情報を読み出す度に、画像情報を読み出す前にA/D変換器の固有の情報を読み出し、さらに画像情報を読み出した後にA/D変換器の固有の情報を読み出すとともに、A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、ゲート線を駆動させずに、かつアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出すように制御手段は読み出し手段を制御し、ゲート線の駆動により読み出される画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器の固有の情報および時間的に後に読み出されるA/D変換器の固有の情報の両方を補正手段に用いれば、読み出し手段のA/D変換器の固有の情報(特性)を除去することができる。
【0020】
なお、上述の特許文献1の段落番号「0073」、「0074」では、駆動配線(データ線)を駆動させて有感状態で読み出された電気信号(すなわち実際の画像)を補正するのに、駆動配線(データ線)を駆動させずに無感状態で読み出された電気信号(すなわちオフセット成分)を補正に用いていたのに対して、この発明に係る放射線検出器では、有感状態・無感状態を問わずにアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出されたA/D変換器の固有の情報を補正に用いる。また、仮に有感状態の画像情報を読み出し手段で読み出したとしても、この発明のようにアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態ではアナログ用のマルチプレクサよりも後段に有感状態の画像情報が送り込まれることなく、A/D変換器の固有の情報がA/D変換器よりも後段に送り込まれる。
【0021】
特に、上述の第2〜第4の発明に係る放射線検出器と上述の特許文献3のような構造を組み合わせる場合には、複数のアナログ用のマルチプレクサと、同数のA/D変換器とを備えて適用すればよい。すなわち、第2〜第4の発明に係る放射線検出器において、A/D変換器でディジタル値に変換された電気信号をひとつにまとめるディジタル用のマルチプレクサをさらに備える。この場合にはA/D変換器間で特性差が生じるが、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態でA/D変換器の固有の情報(特性)をそれぞれ読み出して、各特性差を補正に用いれば、特性差を低減させて、特性差の影響によるアーティファクトを低減させることができる。
【0022】
また、第1〜第4の発明に係る放射線検出器において、A/D変換器の入力側に抵抗を備えるのが好ましい。抵抗を備えることで、抵抗は安定回路として機能し、入力を介して入ってくる外乱の影響が除かれたデータをA/D変換器から取得することができる。
【0023】
第2〜第4の発明に係る放射線検出器でも述べたように、上述のアナログ用のマルチプレクサおよび上述のA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出されたA/D変換器の固有の情報に基づいて上述の画像情報を補正する補正手段を備えている。この補正手段によって、実際にA/D変換器の固有の情報(特性)を除去することができる。
【0024】
上述の補正手段は、第2の発明に係る放射線検出器のように、ゲート線の駆動により読み出される画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器の固有の情報に基づいて当該画像情報を補正してもよいし、第3の発明に係る放射線検出器のように、ゲート線の駆動により読み出される画像情報よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器の固有の情報に基づいて当該画像情報を補正してもよいし、第4の発明に係る放射線検出器のように、ゲート線の駆動により読み出される画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器の固有の情報および時間的に後に読み出されるA/D変換器の固有の情報の両方に基づいて当該画像情報を補正してもよい。特に、第4の発明に係る放射線検出器のように、当該画像情報の前後でのA/D変換器の固有の情報の両方に基づいて補正することで、A/D変換器の固有の情報(特性)をより一層除去することができる。
【0025】
上述の補正手段と上述の特許文献3のような構造とを組み合わせてもよい。すなわち、複数のアナログ用のマルチプレクサと、同数のA/D変換器とを備え、A/D変換器でディジタル値に変換された電気信号をひとつにまとめるディジタル用のマルチプレクサをさらに備え(請求項5に記載の発明)、補正手段は、ゲート線の駆動により読み出される画像情報の直前あるいは直後で読み出されたA/D変換器の固有の情報に基づいて当該画像情報を補正する作業を順次に行う。
【0026】
上述したようにA/D変換器間で特性差が生じる。さらに、それが時間的に変動するので、画像を連続的に表示する動画(例えばモニタリングでの透視)の場合には、グルーピングされた領域毎に特性差による模様が変動して目障りとなる。場合によっては画像に集中できずに画像情報を誤認識する可能性もある。この発明に係る放射線検出器によれば、ゲート線の駆動により読み出される画像情報は時間的に変動するが、当該画像情報の直前あるいは直後で読み出されたA/D変換器の固有の情報は当該画像情報と時間的に近いので、当該画像情報およびそれの直前あるいは直後で読み出されたA/D変換器の固有の情報はほぼ同じ特性とみなすことができる。したがって、ゲート線の駆動により読み出される画像情報の直前あるいは直後で読み出されたA/D変換器の固有の情報に基づいて当該画像情報を補正すれば、特性差を低減させて、特性差の影響によるアーティファクトを低減させることができる。さらにその補正を順次に行うので、画像を連続的に表示する動画において特性差による模様の変動をも除去することができる。
【0027】
上述した第2〜第4の発明に係る放射線検出器でも述べたように、ゲート線の駆動により電荷情報を読み出し手段に読み出すように構成し、A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、ゲート線を駆動させずに、かつアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出す。この場合にはゲート線を駆動させずに読み出された電気信号(上述の特許文献1では無感状態で読み出された電気信号)は、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断することによりアナログ用のマルチプレクサよりも後段に当該電気信号が送り込まれることなく、A/D変換器の固有の情報がA/D変換器よりも後段に送り込まれる。もちろん、上述した第1の発明に係る放射線検出器において、ゲート線を駆動させて、かつアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出してもよい。この場合にはゲート線を駆動させて読み出された電気信号(上述の特許文献1では有感状態で読み出された電気信号)は、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断することによりアナログ用のマルチプレクサよりも後段に当該電気信号が送り込まれることなく、A/D変換器の固有の情報がA/D変換器よりも後段に送り込まれる。
【発明の効果】
【0028】
第1の発明に係る放射線検出器によれば、読み出し手段はアナログ用のマルチプレクサとA/D変換器とを備え、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成する。放射線に基づく画像情報を読み出す際には、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に接続した状態で電気信号を画像情報として読み出し、A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で、かつA/D変換器の入力を一定電位に接続した状態で読み出すように制御手段は読み出し手段を制御し、A/D変換器の固有の情報を補正に用いれば、読み出し手段のA/D変換器の固有の情報(特性)を除去することができる。
また、第2〜第4の発明に係る放射線検出器によれば、読み出し手段はアナログ用のマルチプレクサとA/D変換器とを備え、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成する。放射線に基づく画像情報を読み出す際には、ゲート線を駆動させた状態で、かつアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に接続した状態で電気信号を画像情報としてゲート線の駆動毎に読み出し、ゲート線を駆動させ画像情報を読み出す度に、以下のように読み出す。すなわち、画像情報を読み出す前にA/D変換器の固有の情報を読み出すとともに(第2の発明に係る放射線検出器),画像情報を読み出した後にA/D変換器の固有の情報を読み出すとともに(第3の発明に係る放射線検出器),またはゲート線を駆動させ画像情報を読み出す度に、画像情報を読み出す前にA/D変換器の固有の情報を読み出し、さらに画像情報を読み出した後にA/D変換器の固有の情報を読み出すとともに(第4の発明に係る放射線検出器)、A/D変換器の固有の情報を読み出す際には、ゲート線を駆動させずに、かつアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出すように制御手段は読み出し手段を制御し、ゲート線の駆動により読み出される画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器の固有の情報(第2の発明に係る放射線検出器),ゲート線の駆動により読み出される画像情報よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器の固有の情報(第3の発明に係る放射線検出器)またはゲート線の駆動により読み出される画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器の固有の情報および時間的に後に読み出されるA/D変換器の固有の情報の両方(第4の発明に係る放射線検出器)を補正手段に用いれば、読み出し手段のA/D変換器の固有の情報(特性)を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例に係るフラットパネル型X線検出器の概略ブロック図である。
図2】実施例に係るフラットパネル型X線検出器の検出部の等価回路である。
図3】切り換え回路の回路図である。
図4】補正の対象となる画像情報および当該画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器の固有の情報に関するタイミングチャートである。
図5】補正の対象となる画像情報および当該画像情報よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器の固有の情報に関するタイミングチャートである。
図6】補正の対象となる画像情報、当該画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器の固有の情報および時間的に後に読み出されるA/D変換器の固有の情報に関するタイミングチャートである。
図7】変形例に係るフラットパネル型X線検出器の概略ブロック図である。
【実施例】
【0030】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るフラットパネル型X線検出器の概略ブロック図であり、図2は、実施例に係るフラットパネル型X線検出器の検出部の等価回路である。本実施例では、放射線検出器として、直接変換型のフラットパネル型X線検出器(以下、適宜「FPD」という)を例に採って説明する。
【0031】
FPD1は、図1に示すように、後述するゲート線Gを選択するゲート駆動回路2と、X線変換層13(図2を参照))で変換されて読み出されたキャリアを電圧に変換した状態で増幅して電気信号として出力するアンプ3と、そのアンプ3で増幅された電気信号をひとつにまとめるマルチプレクサ4と、マルチプレクサ4でまとめられた電気信号のアナログ値をディジタル値に変換してディジタル化するA/D変換器5と、各ディジタル情報に対して制御し、各部分を統括処理するコントローラ6と、各ディジタル情報に対して信号処理を行って画像を得る画像処理部7とを備えている。FPD1は、この発明における放射線検出器に相当し、マルチプレクサ4は、この発明におけるアナログ用のマルチプレクサに相当し、A/D変換器5は、この発明におけるA/D変換器に相当し、コントローラ6は、この発明における制御手段に相当し、画像処理部7は、この発明における補正手段に相当する。また、マルチプレクサ4およびA/D変換器5は、この発明における読み出し手段に相当する。
【0032】
本実施例では、その他にFPD1は、マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換える切り換え回路8と、A/D変換器5でディジタル値に変換された電気信号をひとつにまとめるマルチプレクサ9と、A/D変換器5の固有の情報(特性)を記憶するメモリ部10とを備えている。マルチプレクサ9は、この発明におけるディジタル用のマルチプレクサに相当する。
【0033】
ゲート駆動回路2は複数のゲート線Gに電気的に接続されている。ゲート駆動回路2から各ゲート線Gに電圧を印加することで、後述する薄膜トランジスタ(TFT)TrをONにして後述するコンデンサCaに蓄積されたキャリアの読み出しを開放し、各ゲート線Gへの電圧を停止することで、薄膜トランジスタTrをOFFにしてキャリアの読み出しを遮断する。なお、各ゲート線Gに電圧を印加することでOFFにしてキャリアの読み出しを遮断し、各ゲート線Gへの電圧を停止することでONにしてキャリアの読み出しを開放するように、薄膜トランジスタTrを構成してもよい。
【0034】
絶縁基板11(図2を参照)上に、2次元状に配列した複数のゲート線Gおよびデータ線Dを形成し、キャリアを蓄積するコンデンサCaおよびそのコンデンサCaに蓄積されたキャリアをON/OFFの切り換えで読み出す薄膜トランジスタTrを2次元状に配列して形成している。ゲート線Gは、各々の薄膜トランジスタTrのON/OFF切り換えを制御し、かつ各々の薄膜トランジスタTrのゲートに電気的に接続されている。データ線Dは、薄膜トランジスタTrの読み出し側に電気的に接続されている。ゲート線Gは、この発明におけるゲート線に相当する。
【0035】
ゲート線Gは、n本のゲート線G1,G2,…,Gn−1,Gnからなり、データ線Dは、n本のデータ線D1,D2,…,Dn−1,Dnからなる。各ゲート線G1,G2,…,Gn−1,Gnは、図1中のX方向に並設されたn個の薄膜トランジスタTrのゲートにそれぞれ接続され、各データ線D1,D2,…,Dn−1,Dnは、図1中のY方向に並設されたn個の薄膜トランジスタTrの読み出し側にそれぞれ接続されている。薄膜トランジスタTrの読み出し側とは逆側にはコンデンサCaが電気的に接続されており、薄膜トランジスタTrとコンデンサCaとの個数が一対一に対応する。図示の便宜上、図1では、2本のデータ線Dごとに各々のマルチプレクサ4に電気的に接続されているとするが、データ線Dの本数については特に限定されない。
【0036】
また、図2に示すように、検出素子DUが2次元マトリックス状配列で絶縁基板11にパターン形成されている。すなわち、絶縁基板11の表面に、各種真空蒸着法による薄膜形成技術やフォトリソグラフィ法によるパターン技術を利用して、上述したゲート線G1,G2,…,Gn−1,Gnおよびデータ線D1,D2,…,Dn−1,Dnを配線し、薄膜トランジスタTr,コンデンサCa,キャリア収集電極12,X線変換層13および電圧印加電極14を順に積層形成する。
【0037】
X線変換層13は、X線感応型の半導体厚膜で形成されており、本実施例では、アモルファスセレン(a−Se)膜で形成されている。X線変換層13は、X線の入射によりX線の情報を電荷情報であるキャリアに変換する。なお、X線変換層13は、X線の入射によりキャリアが生成されるX線感応型の物質であれば、アモルファスセレンに限定されない。また、X線以外の放射線(γ線など)を入射して撮像を行う場合には、X線変換層13の替わりに、放射線の入射によりキャリアが生成される放射線感応型の物質を用いてもよい。
【0038】
キャリア収集電極12は、コンデンサCaに電気的に接続されており、X線変換層13で変換されたキャリアを収集してコンデンサCaに蓄積する。このキャリア収集電極12も、薄膜トランジスタTrおよびコンデンサCaと同様に、縦・横式2次元マトリックス状配列で多数個(本実施例ではn×n個)形成されている。それらキャリア収集電極12,コンデンサCaおよび薄膜トランジスタTrが各検出素子DUとしてそれぞれ分離形成されている。また、電圧印加電極14は、全検出素子DUの共通電極として全面にわたって形成されている。
【0039】
図1の説明に戻って、アンプ3は、図示を省略するアンプ用コンデンサやサンプルホールドなどで構成されている。データ線Dから送り込まれたキャリアを、アンプ用コンデンサが電圧に変換した状態で増幅し、増幅された電圧値(電気信号)をサンプルホールドは所定時間だけ一旦蓄積する。一旦蓄積された電圧値(電気信号)をA/D変換器5に送り込み、送り込まれた電圧のアナログ値からディジタル値にA/D変換器5は変換する。
【0040】
本実施例では、A/D変換器5の後段に上述したようにマルチプレクサ9をさらに備え、複数のデータ線G(図1では2本のデータ線)を前段のマルチプレクサ4毎にグルーピング化している。そして、グルーピング毎にA/D変換器5を設けることで、複数のマルチプレクサ4と同数のA/D変換器5を設ける。これらのA/D変換器5からの電気信号を後段のマルチプレクサ9はひとつにまとめる。切り換え回路8の具体的な機能については、図3で後述する。
【0041】
画像処理部7は、A/D変換器5でディジタル値に変換され、マルチプレクサ9を介して送り込まれた電気信号や、メモリ部10で記憶されたA/D変換器5の固有の情報(特性)などの各ディジタル情報に対して各種の信号処理を行って画像を求める。特に、本実施例では、A/D変換器5の固有の情報に基づいて画像情報を補正する処理を画像処理部7は行う。コントローラ6は、ゲート駆動回路2やアンプ3やマルチプレクサ4、9やA/D変換器5や画像処理部7や後述する切り換え回路8やメモリ部10などを統括制御し、本実施例では画像情報を読み出す際には、マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に接続した状態で電気信号を画像情報として読み出し、A/D変換器5の固有の情報を読み出す際には、マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断した状態で読み出すようにマルチプレクサ4やA/D変換器5などからなる読み出し手段を制御する機能をも備えている。コントローラ6および画像処理部7は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。図示の便宜上、図1では、コントローラ6からアンプ3やマルチプレクサ4やA/D変換器5や切り換え回路8への結線は1つのみ図示しているが、実際には各部分が有する数だけ結線があることに留意されたい。
【0042】
本実施例ではメモリ部10は、マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断した状態で読み出されたA/D変換器5の固有の情報を書き込んで記憶し、コントローラ6からの読み出し指令に応じてA/D変換器5の固有の情報がメモリ部10から読み出される。メモリ部10は、RAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体などで構成されている。
【0043】
続いて、本実施例のFPD1の制御シーケンスについて説明する。電圧印加電極14に高電圧(例えば100V〜数10kV程度)のバイアス電圧Vを印加した状態で、検出対象であるX線を入射させる。
【0044】
X線の入射によってX線変換層13でキャリアが生成されて、そのキャリアが電荷情報としてキャリア収集電極12を介してコンデンサCaに蓄積される。ゲート駆動回路2の信号(ここではキャリア)読み出し用の走査信号(すなわちゲート駆動信号)によって、対象となるゲート線Gが選択される。本実施例では、ゲート線G1,G2,…,Gn−1,Gnの順に1つずつ選択されるものとして説明する。また、ゲート駆動回路2からの信号読み出し用の走査信号は、ゲート線Gに電圧(例えば20V程度)を印加する信号である。
【0045】
ゲート駆動回路2から対象となるゲート線Gを選択して、選択されたゲート線Gに接続されている各薄膜トランジスタTrが選択指定される。この選択指定で選択指定された薄膜トランジスタTrのゲートに電圧が印加されてON状態となる。その選択指定された各薄膜トランジスタTrに接続されているコンデンサCaから蓄積されたキャリアが、選択指定されてON状態に移行した薄膜トランジスタTrを経由して、データ線Dに読み出される。すなわち、選択されたゲート線Gに関する検出素子DUが選択指定されて、その選択指定された検出素子DUのコンデンサCaに蓄積されたキャリアが、データ線Dに読み出される。
【0046】
一方、データ線Dに接続されているアンプ3がリセットされて、さらに薄膜トランジスタTrがON状態(すなわちゲートがON)に移行することで、キャリアがデータ線Dに読み出され、アンプ3のアンプ用コンデンサ(図示省略)にて電圧に変換された状態で増幅される。
【0047】
つまり、各検出素子DUのアドレス(番地)指定は、ゲート駆動回路2からの信号読み出し用の走査信号と、データ線Dに接続されているアンプ3の選択とに基づいて行われる。なお、本実施例では、マルチプレクサ4やA/D変換器5や切り換え回路8は、グルーピング後の数だけ複数あるので、A/D変換器5にて同時並行でディジタル化することが可能である。したがって、複数のアンプ3を同時に選択して、複数のデータ線Dにキャリアを同時に読み出すことが可能である。
【0048】
先ず、ゲート駆動回路2からゲート線G1を選択して、選択されたゲート線G1に関する検出素子DUが選択指定されて、その選択指定された検出素子DUのコンデンサCaに蓄積されたキャリアが、アンプ3の選択に基づいてその選択されたアンプ3に接続されているデータ線Dの順に読み出される。次に、ゲート駆動回路2からゲート線G2を選択して、同様の手順で、選択されたゲート線G2に関する検出素子DUが選択指定されて、その選択指定された検出素子DUのコンデンサCaに蓄積されたキャリアが、アンプ3の選択に基づいてその選択されたアンプ3に接続されているデータ線Dの順に読み出される。残りのゲート線Gについても同様に順に選択することで、2次元状のキャリアを読み出す。
【0049】
読み出された各キャリアはアンプ3のアンプ用コンデンサ(図示省略)で電圧に変換された状態でそれぞれ増幅されて、サンプルホールド(図示省略)で一旦蓄積されて、マルチプレクサ4を経て順次にA/D変換器5に送り込まれる。そして、A/D変換器5でアナログ値からディジタル値に変換される。このディジタル値に変換された電圧値(電気信号)に基づいて、画像処理部7は各種の信号処理を行って、2次元状の画像を得る。
【0050】
次に、切り換え回路8の具体的な機能、読み出し制御および画像処理部7による補正について、図3図6を参照して説明する。図3は、切り換え回路の回路図であり、図4は、補正の対象となる画像情報および当該画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器の固有の情報に関するタイミングチャートであり、図5は、補正の対象となる画像情報および当該画像情報よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器の固有の情報に関するタイミングチャートであり、図6は、補正の対象となる画像情報、当該画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器の固有の情報および時間的に後に読み出されるA/D変換器の固有の情報に関するタイミングチャートである。
【0051】
図3に示すように切り換え回路8は、マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えるスイッチSと、A/D変換器5の入力側にある2つの抵抗Rとを備えている。一方の抵抗Rは接地されており、抵抗Rを介して外乱によるノイズを逃がすようになっている。
【0052】
図4に示すように、ゲート線Gを選択して薄膜トランジスタTrのゲートがON状態に移行する。この移行によりゲート線Gに関する各々の検出素子DUからのキャリアの読み出しが行われる(図4中の右上斜線のハッチングを参照)。読み出されたキャリアをアンプ3が増幅して電気信号として出力し、マルチプレクサ4に送り込む。コントローラ6は、切り換え回路8のスイッチSをONにしてマルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に接続するように制御することで、電気信号をA/D変換器5に送り込む。A/D変換器5は電気信号のアナログ値をディジタル値に変換することで電気信号のディジタル化を行う。このディジタル値に変換された電気信号を画像情報として読み出す。
【0053】
一方、この画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器5の固有の情報(図4中の左上斜線のハッチングを参照)を読み出す際には、当該画像情報よりも前(図4では最小単位の読み出し間隔の1つ前である直前)でゲート線GをON状態に駆動させずにOFF状態のままにする。そして、コントローラ6は、切り換え回路8のスイッチSをOFFにしてマルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断するように制御することで、仮に電気信号を読み出したとしてもマルチプレクサ4よりも後段に電気信号が送り込まれることなく、A/D変換器5の固有の情報がA/D変換器5よりも後段(例えばマルチプレクサ9やメモリ部10など)に送り込まれる。
【0054】
メモリ部10にA/D変換器5の固有の情報を書き込んで記憶し、画像処理部7による補正にA/D変換器5の固有の情報は用いられる。画像処理部7は、補正の対象となる画像情報から、当該画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器5の固有の情報を減算することで、当該画像情報を補正する。図4では、当該画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器5の固有の情報は単数であったが、A/D変換器5の固有の情報を複数分読み出して、それらを平均化したものを補正に用いてもよい。また、それらの時間的な変動に基づいて予測されたデータを補正に用いてもよい。
【0055】
図4では、補正の対象となる画像情報および当該画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器5の固有の情報に関するタイミングチャートでの画像処理部7による補正について説明したが、図5のように、補正の対象となる画像情報および当該画像情報よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器5の固有の情報に関するタイミングチャートで画像処理部7による補正を行ってもよい。
【0056】
図4と同様に、図5に示すように、ゲート線Gを選択して薄膜トランジスタTrのゲートがON状態に移行して、ゲート線Gに関する各々の検出素子DUからのキャリアの読み出しが行われる(図5中の右上斜線のハッチングを参照)。コントローラ6は、切り換え回路8のスイッチSをONにしてマルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に接続するように制御することで、電気信号をA/D変換器5に送り込み、A/D変換器5は電気信号のディジタル化を行って画像情報を読み出す。
【0057】
一方、この画像情報よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器5の固有の情報(図5中の格子状のハッチングを参照)を読み出す際には、当該画像情報よりも後(図5では最小単位の読み出し間隔の1つ後である直後)でゲート線GをON状態に駆動させずにOFF状態のままにする。そして、コントローラ6は、切り換え回路8のスイッチSをOFFにしてマルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断するように制御することで、A/D変換器5の固有の情報がA/D変換器5よりも後段(例えばマルチプレクサ9やメモリ部10など)に送り込まれる。
【0058】
メモリ部10にA/D変換器5の固有の情報を書き込んで記憶し、画像処理部7による補正にA/D変換器5の固有の情報は用いられる。画像処理部7は、補正の対象となる画像情報から、当該画像情報よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器5の固有の情報を減算することで、当該画像情報を補正する。図5では、当該画像情報よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器5の固有の情報は単数であったが、図4でも述べたようにA/D変換器5の固有の情報を複数分読み出して、それらを平均化したものを補正に用いてもよい。また、それらの時間的な変動に基づいて予測されたデータを補正に用いてもよい。
【0059】
図4および図5を組み合わせた図6のように、補正の対象となる画像情報、当該画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器5の固有の情報および時間的に後に読み出されるA/D変換器5の固有の情報に関するタイミングチャートで画像処理部7による補正を行ってもよい。
【0060】
図4および図5と同様に、図6に示すように、ゲート線Gを選択して薄膜トランジスタTrのゲートがON状態に移行して、ゲート線Gに関する各々の検出素子DUからのキャリアの読み出しが行われる(図6中の右上斜線のハッチングを参照)。コントローラ6は、切り換え回路8のスイッチSをONにしてマルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に接続するように制御することで、電気信号をA/D変換器5に送り込み、A/D変換器5は電気信号のディジタル化を行って画像情報を読み出す。
【0061】
一方、この画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器5の固有の状態(図6中の左上斜線のハッチングを参照)を読み出す際には、当該画像情報よりも前(図6では最小単位の読み出し間隔の1つ前である直前)でゲート線GをON状態に駆動させずにOFF状態のままにする。また、この画像情報よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器5の固有の情報(図6中の格子状のハッチングを参照)を読み出す際には、当該画像情報よりも後(図6では最小単位の読み出し間隔の1つ後である直後)でゲート線GをON状態に駆動させずにOFF状態のままにする。そして、コントローラ6は、切り換え回路8のスイッチSをOFFにしてマルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断するように制御することで、A/D変換器5の固有の情報がA/D変換器5よりも後段(例えばマルチプレクサ9やメモリ部10など)に送り込まれる。
【0062】
メモリ部10にA/D変換器5の固有の情報を書き込んで記憶し、画像処理部7による補正にA/D変換器5の固有の情報は用いられる。画像処理部7は、補正の対象となる画像情報よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器5の固有の情報および当該画像情報よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器5の固有の情報を平均化して、当該画像情報から上述の平均化されたデータを減算することで、当該画像情報を補正する。図4および図5でも述べたようにA/D変換器5の固有の情報を複数分読み出して、それらを平均化したものを補正に用いてもよい。また、それらの時間的な変動に基づいて予測されたデータを補正に用いてもよい。
【0063】
上述した本実施例に係るフラットパネル型X線検出器(FPD)1によれば、読み出し手段は、複数の電荷情報であるキャリアに基づく電気信号をひとつにまとめるアナログ用のマルチプレクサ4と、マルチプレクサ4でまとめられた電気信号のアナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器5とを備えている。さらに、上述のマルチプレクサ4および上述のA/D変換器5を互いに電気的に遮断する、あるいは電気的に接続するのいずれかに切り換えて構成する。実際の画像を収集するためにX線に基づく画像情報を読み出す際には、マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に接続した状態で電気信号を画像情報として読み出すようにコントローラ6は読み出し手段(マルチプレクサ4やA/D変換器5など)を制御する。A/D変換器5の固有の情報を読み出す際には、マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断した状態で読み出すようにコントローラ6は読み出し手段(マルチプレクサ4やA/D変換器5など)を制御する。マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断した状態で読み出されたA/D変換器5の固有の情報を補正に用いれば、読み出し手段のA/D変換器5の固有の情報(特性)を除去することができる。
【0064】
なお、上述の特許文献1の段落番号「0073」、「0074」では、駆動配線(データ線)を駆動させて有感状態で読み出された電気信号(すなわち実際の画像)を補正するのに、駆動配線(データ線)を駆動させずに無感状態で読み出された電気信号(すなわちオフセット成分)を補正に用いていた。それに対して、本実施例に係るFPD1では、有感状態・無感状態を問わずにマルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断した状態で読み出されたA/D変換器5の固有の情報を補正に用いる。また、仮に有感状態の画像情報を読み出し手段で読み出したとしても、本実施例のようにマルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断した状態ではマルチプレクサ4よりも後段に有感状態の画像情報が送り込まれることなく、A/D変換器5の固有の情報がA/D変換器5よりも後段(ここではマルチプレクサ9やメモリ部10など)に送り込まれる。
【0065】
本実施例では、上述の特許文献3のような構造を組み合わせており、図1に示すように、複数のマルチプレクサ4と、同数のA/D変換器5を備えている。そして、A/D変換器5でディジタル値に変換された電気信号をひとつにまとめるディジタル用のマルチプレクサ9をさらに備えている。この場合にはA/D変換器5間で特性差が生じるが、マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断した状態でA/D変換器5の固有の情報(特性)をそれぞれ読み出して、各特性差を補正に用いれば、特性差を低減させて、特性差の影響によるアーティファクトを低減させることができる。
【0066】
本実施例では、好ましくは図3に示すようにA/D変換器5の入力側に抵抗Rを備えている。抵抗Rを備えることで、抵抗Rは安定回路として機能し、入力を介して入ってくる外乱の影響が除かれたデータをA/D変換器5から取得することができる。
【0067】
本実施例では、好ましくは図1に示すように、マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断した状態で読み出されたA/D変換器5の固有の情報に基づいて上述の画像情報を画像処理部7は補正している。この画像処理部7によって、実際にA/D変換器5の固有の情報(特性)を除去することができる。
【0068】
画像処理部7は、図4に示すように補正の対象となる画像情報(図4中の右上斜線のハッチングを参照)よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器5の固有の情報(図4中の左上斜線のハッチングを参照)に基づいて当該画像情報を補正してもよいし、図5に示すように補正の対象となる画像情報(図5中の右上斜線のハッチングを参照)よりも時間的に後に読み出されるA/D変換器5の固有の情報(図5中の格子状のハッチングを参照)に基づいて当該画像情報を補正してもよいし、図6に示すように補正の対象となる画像情報(図6中の右上斜線のハッチングを参照)よりも時間的に前に読み出されたA/D変換器5の固有の情報(図6中の左上斜線のハッチングを参照)および時間的に後に読み出されるA/D変換器5の固有の情報(図6中の格子状のハッチングを参照)の両方に基づいて当該画像情報を補正してもよい。特に、図6に示すように当該画像情報の前後でのA/D変換器5の固有の情報の両方に基づいて補正することで、A/D変換器5の固有の情報(特性)をより一層除去することができることが確認されている。
【0069】
上述したように、本実施例では、上述の特許文献3のような構造を組み合わせており、図1に示すように、複数のマルチプレクサ4と、同数のA/D変換器5を備えている。そして、A/D変換器5でディジタル値に変換された電気信号をひとつにまとめるディジタル用のマルチプレクサ9をさらに備えている。そして、画像処理部7は、補正の対象となる画像情報(図4図6中の右上斜線のハッチングを参照)の直前(図4または図6中の左上斜線のハッチングを参照)あるいは直後(図5または図6中の格子状のハッチングを参照)で読み出されたA/D変換器5の固有の情報に基づいて当該画像情報を補正する作業を順次に行う。
【0070】
上述したようにA/D変換器5間で特性差が生じる。さらに、それが時間的に変動するので、画像を連続的に表示する動画(例えばモニタリングでの透視)の場合には、グルーピングされた領域毎に特性差による模様が変動して目障りとなる。場合によっては画像に集中できずに画像情報を誤認識する可能性もある。本実施例に係るFPD1によれば、補正の対象となる画像情報は時間的に変動するが、当該画像情報の直前あるいは直後で読み出されたA/D変換器5の固有の情報は当該画像情報と時間的に近いので、当該画像情報およびそれの直前あるいは直後で読み出されたA/D変換器5の固有の情報はほぼ同じ特性とみなすことができる。したがって、補正の対象となる画像情報の直前あるいは直後で読み出されたA/D変換器5の固有の情報に基づいて当該画像情報を補正すれば、特性差を低減させて、特性差の影響によるアーティファクトを低減させることができる。さらにその補正を順次に行うので、画像を連続的に表示する動画において特性差による模様の変動をも除去することができる。
【0071】
ゲート線Gの駆動により電荷情報であるキャリアを読み出し手段に読み出すように構成し、本実施例では、図4図6に示すように、A/D変換器5の固有の情報(図4または図6中の左上斜線のハッチング、あるいは図5または図6中の格子状のハッチングを参照)を読み出す際には、ゲート線Gを駆動させずに、かつマルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断した状態で読み出している。この場合にはゲート線Gを駆動させずに読み出された電気信号(上述の特許文献1では無感状態で読み出された電気信号)は、マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断することによりマルチプレクサ4よりも後段に当該電気信号が送り込まれることなく、A/D変換器5の固有の情報がA/D変換器5よりも後段に送り込まれる。
【0072】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0073】
(1)上述したフラットパネル型X線検出器(FPD)を、X線透視撮影装置のX線検出器に適用してもよい。また、X線CT装置のX線検出器にも適用してもよい。
【0074】
(2)上述した実施例では、検出素子が多数個に2次元状に配列されていたが、検出素子が1個のみの非アレイタイプであってもよい。
【0075】
(3)上述した実施例では、入射したX線に代表される放射線をX線変換層によって電荷情報に直接に変換した、「直接変換型」のFPDを例に採って説明したが、入射した放射線をシンチレータなどの変換層によって光に変換し、光感応型の物質で形成された変換層によってその光を電荷情報に変換する「間接変換型」のFPDをこの発明は適用してもよい。
【0076】
(4)上述した実施例では、X線を検出するFPDを例に採って説明したが、この発明は、ECT(Emission Computed Tomography)装置のように放射性同位元素(RI)を投与された被検体から放射されるγ線を検出するための放射線検出器に例示されるように、マルチプレクサおよびA/D変換器によって放射線に基づく電荷情報を読み出すことで放射線を検出する放射線検出器であれば特に限定されない。
【0077】
(5)通常のオフセット補正やゲイン補正などのキャリブレーションも併せて行ってもよい。例えばX線を入射しない状態でゲート線を駆動させて得られたデータ(いわゆる暗画像)や、ゲート線を駆動させずに無感状態で読み出された電気信号(すなわちオフセット成分)に基づいて補正を行ってもよい。
【0078】
(6)上述した実施例では、図1に示すように複数のマルチプレクサ4と、同数のA/D変換器5を備えたが、ディジタル用のマルチプレクサを備えずに、図7に示すように単数のマルチプレクサ4およびA/D変換器5を備えた構造にも適用することができる。この場合には特性差は生じないが、A/D変換器5の固有の情報(特性)を除去することができ、より正確な特性を得ることができる。
【0079】
(7)上述した実施例では、図3に示すようにA/D変換器5の入力側に抵抗Rを備えたが、外乱の影響が少ない、あるいは外乱の影響を考慮する必要がないのであれば必ずしも抵抗Rを備える必要はない。
【0080】
(8)上述した実施例では、A/D変換器5の固有の情報に基づいて画像情報を補正する画像処理部7をFPD1内部に備えたが、FPD1内に備えずに、外部にA/D変換器5の固有の情報を送り込んで、外部が補正を行う構成であってもよい。
【0081】
(9)上述した実施例では、動画に適用したが、実際の撮像に適用してもよい。
【0082】
(10)上述した実施例では、A/D変換器5の固有の情報を読み出す際には、ゲート線Gを駆動させずに、かつマルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断した状態で読み出したが、これに限定されない。上述した実施例の場合には、ゲート線Gを駆動させずに読み出された電気信号(上述の特許文献1では無感状態で読み出された電気信号)は、マルチプレクサ4およびA/D変換器5を互いに電気的に遮断することによりマルチプレクサ4よりも後段に当該電気信号が送り込まれることなく、A/D変換器5の固有の情報がA/D変換器5よりも後段に送り込まれていた。この変形例では、もちろん、ゲート線を駆動させて、かつアナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断した状態で読み出してもよい。この場合にはゲート線を駆動させて読み出された電気信号(上述の特許文献1では有感状態で読み出された電気信号)は、アナログ用のマルチプレクサおよびA/D変換器を互いに電気的に遮断することによりアナログ用のマルチプレクサよりも後段に当該電気信号が送り込まれることなく、A/D変換器の固有の情報がA/D変換器よりも後段に送り込まれる。
【0083】
(11)上述した実施例では、A/D変換器5の固有の情報(特性)を記憶するメモリ部10を別に備えたが、ディジタル用のマルチプレクサ9よりも後段に、あるいは外部に一般の各種のデータを記憶する記憶媒体を用意して、その記憶媒体にA/D変換器5の固有の情報(特性)を記憶するように、一般の各種のデータと共有して構成してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 … フラットパネル型X線検出器(FPD)
4、9 … マルチプレクサ
5 … A/D変換器
6 … コントローラ
7 … 画像処理部
G … ゲート線
S … スイッチ
R … 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7