【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
図1において、図示しない真空バルブの固定側端板に貫設された固定側通電軸1Aの下端には、円板状に形成された電極2Aがろう付けされている。電極2Aは遮断性能および通電性能に優れた部材、例えば銅−クロム材によって形成されている。
【0017】
図1、
図2に示すように、電極2Aの背面に当接するように円弧形磁性体3Aが配置されている。さらに円弧形磁性体3Aから通電軸1Aの軸線方向に所定の距離を保った位置に、通電軸1Aを周方向に覆うようなU字形でかつ両端部(開極部)に柱状部4aを有するU字形磁性体4Aが配置されている。ここで、所定の距離としては、後述する2つの磁気経路Φ5、Φ6が互いに干渉しないために、ギャップと同等以上の距離を持たせることが望ましい。
【0018】
柱状部4aは通電軸1Aの軸方向で、かつ電極2A側(図中下方)に伸びており、その下端が電極2Aと当接している。なお、円弧形磁性体3AおよびU字形磁性体4Aは、通電軸1Aの周囲を各々約90度超(例えば110度程度)、270度超(例えば290度程度)ずつ覆うように形成されている。
【0019】
同様に、
図1において、図示しない真空バルブの可動側端板に貫設された可動側通電軸1Bの上端にも、可動側と同一形状の電極2Bがろう付けされている。電極2Bの背面には、
図1、
図2に示すように可動側の円弧形磁性体3Aと同一形状の円弧形磁性体3Bが電極2Bと当接するように配置されている。この円弧形磁性体3Bはその両端部が、可動側のU字形磁性体4Aの柱状部4aの軸方向の延長線上に位置するように配置されている。
【0020】
さらに、円弧形磁性体3Bから通電軸1Bの軸方向に所定の距離を保った位置に、U字形磁性体4Aと同一形状のU字形磁性体4Bが配置されている。このU字形磁性体4Bの柱状部4bは通電軸1Bの軸線方向でかつ電極2B側(図中上方)に伸びており、その上端が電極2Bと当接している。さらに、柱状部4bの軸線方向の延長線上に、可動側の円弧形磁性体3Aの両端が位置するように配置されている。
【0021】
上述したように、対向する可動側電極2Aおよび固定側電極2Bの背面には、それぞれ同一形状の円弧形磁性体3A、3BおよびU字形磁性体4A、4Bが互いに約180度ずらした状態で配置されている。また、通電軸1の周囲を円弧形磁性体3は90度超、U字型磁性体4は270度超程度覆うように形成しているので、2つの磁性体3、4を合わせて通電軸1の周囲を360度以上覆う形となる。このため、例えば円弧形磁性体3BとU字型磁性体4Aは互いにその両端がラップするように配置される。よって、磁性体のラップ箇所において磁気抵抗が下がり、磁力線が通過しやすくなるので、所定のループが形成されやすくなる。
【0022】
これらの各磁性体は、電極および通電軸にろう付けもしくはねじ止めによって固定される。なお、固定側、可動側で磁性体の固定方法は同一のため、ここでは、一方の電極の背面に設けられた磁性体の固定方法のみ説明する。
【0023】
ねじ止めの場合、
図11、
図12に示すように円弧形磁性体3BおよびU字形磁性体4Bに複数箇所形成した貫通孔7と、それと対応するように通電軸1Aに形成したねじ穴8にねじ9を螺合させる。本実施例では、円弧形磁性体3Bに2箇所の貫通孔7a、7bを設け、通電軸1Bにはこれらと対応するねじ穴8a、8bを形成し、ねじ9を螺合させることでねじ止めを行っている。
【0024】
一方、U字形磁性体4Bには3箇所の貫通孔7c、7d、7eを設け、通電軸1Bにはこれらと対応する8c、8d、8eを形成し、ねじ9を螺合させてねじ止めを行う。これにより円弧形磁性体3BおよびU字形磁性体4Bを、通電軸1Bと一体化し固定する。
【0025】
ろう付け固定の場合、
図13に示すように、円弧形磁性体3Aと電極2Aとの当接面にろう材10を設ける。さらに、円弧形磁性体3Aと通電軸1Aとの周方向の当接部にろう材11を挟み込むことで、円弧形磁性体3Aを電極2Aおよび通電軸1Aにろう付け固定する。
【0026】
一方、U字形磁性体4Aと電極2Aとの当接面、即ち柱状部4aの先端部と電極2Aとの当接面にろう材12を設ける。さらに、U字形磁性体4AのU字形状部で、かつ通電軸1Aとの周方向の当接部にろう材13を挟み込むことで、電極2Aと通電軸1Aにろう付け固定を行う。
【0027】
次に、上述の磁性体配置による磁気経路および電極径方向の磁束密度分布につき説明する。
図2では、通電時に各磁性体を磁力線が通過することで形成される磁気経路を点線で示している。図の矢印で示す通り、円弧形磁性体3Aを通る磁力線はギャップを通過した後、U字形磁性体4Bに至り、さらに円弧形磁性体3Aへ戻ることで、ループΦ5を形成している。
【0028】
また、U字形磁性体4Aを通る磁力線は、ギャップを通過した後、円弧形磁性体3Bに至り、さらにU字形磁性体4Aへ戻ることでループΦ6を形成している。ここでは磁気経路はそれぞれ1本ずつのループΦ5、Φ6で示しているが、実際にはループΦ5、Φ6の周囲に縦方向の磁束が発生している。
【0029】
このような構成によれば、ギャップには
図3に模式的に示すように、磁束密度が一定以上の範囲(点線部)が形成される。即ち、磁性体3、4のラップ部であるため磁気抵抗が低く磁束密度が高くなっているループΦ5、6の磁気経路Φ5a、Φ6aおよびΦ5b、Φ6bを中心として、その周囲に磁束密度が一定以上の略長円状の範囲が2箇所形成される。また、本構成では、隣り合う磁気経路Φ5a、Φ6aおよびΦ5b、Φ6bの磁力線の進行方向が同一のため、磁束密度が一定以上の範囲が四重極タイプのように独立に形成されることなく、互いに合わさるように広がる。このため、2つのループΦ5、Φ6を中心として分布する磁束密度が一定以上の範囲は長円状となり、磁束密度分布が電極上を左右対称に均一に広がる。
【0030】
次に、本発明の縦磁界電極における磁界強度を、従来の四重極タイプ電極と比較して説明する。
【0031】
磁界強度は、起磁力/磁気抵抗で求められる。起磁力は通電軸の周囲に発生する磁束により得られる力であり、磁性体によってギャップ間に導かれる。
図8の四重極タイプでは起磁力は1本のループΦ61に導かれる。一方、
図2の本発明においては各々の通電軸1A、1Bの周囲に同等の力で発生する起磁力を2本のループΦ6、Φ5にそれぞれ導く。
【0032】
磁気経路全体の磁気抵抗はギャップ間距離をg、接触子の厚さをdとするとg+2dに比例する。なお、接触子には非磁性材料が使われており、この部分の磁気抵抗は無視できる。
【0033】
四重極タイプは1本のループあたり4回ギャップを通過するため、磁気抵抗は4(g+2d)に比例する。一方本発明の場合、電極全体として2本のループあたり4回ギャップを通過する。即ち、1本のループあたりギャップを通過する回数は2回であり、磁気抵抗は2(g+2d)に比例する。各通電軸に発生する起磁力の条件を同じにした場合において、本発明の場合、磁気抵抗は四重極タイプの1/2となるため、より強い磁界強度を得ることが出来る。
【0034】
図10はギャップ長を30mmとした場合の、従来と本発明の真空インタラプタの電極上の軸方向磁束密度分布を比較した図である。縦軸は軸方向の磁束密度、横軸は電極の径方向の距離を示している。また、曲線C〜Eはそれぞれ
図9に示す四重極タイプ、
図6に示す馬蹄形タイプおよび
図3に示す本実施例における真空インタラプタの電極を径方向に切り出した部分の磁束密度を示す。
【0035】
電極部(30〜70mm)の範囲をみると、四重極タイプCの磁束密度の最大値が0.004T程度であるのに対し、馬蹄形タイプDおよび本実施例Eの電極最大磁束密度は0.012〜0.013T程度であり、磁束密度が高くなっていることが分かる。即ち、ギャップ間においてより強い磁界強度が得られていることを意味する。
【0036】
上述のように本発明によれば、1ループあたり2ギャップの磁気経路を2つ設けた構成としたことで、従来の馬蹄形タイプに比べ電極径方向の磁界分布が改善される。また、四重極タイプと比べても電極径方向の磁界分布が改善されるとともに、さらにはギャップの磁界強度を高めることが可能となるので、磁束密度分布、磁界強度の改善の両立を図ることができ、ひいては縦磁界電極の遮断性能を向上させることが出来る。