(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記閾値切替回路(60)は、D/Aコンバータ(65)であり、前記制御手段(30)からの信号に基づいて、前記複数の閾値を切替ながら前記コンパレータに対して入力することを特徴とする請求項1に記載の過電流保護回路。
前記加減算手段(34b)において加算される所定数値は、前記検出電流値の2乗に比例する予め算出された数値であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の過電流保護回路。
前記加減算手段(34b)における計算は、マイクロコンピュータによるソフトウェアで行われることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の過電流保護回路。
前記制御手段(30)は、前記電流検出手段(50〜70)と前記加減算手段(34b)とを前記複数の負荷(6a〜6f)毎に時分割制御するスケジューリング回路(31)を備えていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の過電流保護回路。
前記加減算手段(34b)は、前記複数の負荷(6a〜6f)毎の前記加減算手段(34b)の計算結果を、前記複数の負荷(6a〜6f)毎に設けられた記憶領域に格納する記憶手段(35a〜35f)を備えていることを特徴とする請求項10に記載の過電流保護回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、熱変動を所定の論理式に従ってデジタル回路で実現するためには、当該デジタル回路および周辺回路が必要となるため、半導体スイッチを保護する回路が複雑および煩雑になってしまう。
【0006】
このため、本発明者らは、先に、前回取得した検出電流値に応じた所定数値を用いた計算結果に対して今回取得した検出電流値に応じた所定数値を加減算回路により加算かつ減算し、加減算回路での計算結果が判定閾値を超えた場合に半導体スイッチをオフすることで、ワイヤを過電流から保護するようにした過電流保護回路について出願している(特願2010−469
66)。
【0007】
ところが、先に出願した過電流保護回路では、過電流レベルを9段階に分別し、荷電流レベルの判定のために8つのコンパレータを配置している。このため、高価なコンパレータが数多く必要になり、回路規模の増大を招き、引いてはコスト増大になる。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、1つのコンパレータで複数の電流レベルの判定を行うことが可能な過電流保護回路を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数の負荷(6a〜6f)それぞれに流れる電流を電流検出手段(50〜70)で検出し、制御手段(30)では、過電流レベル判定手段(34a)により、電流検出手段(50〜70)で検出された検出電流値の過電流レベルを判定すると共に、加減算手段(34b)により、過電流レベル判定手段(34a)での判定結果に基づいて、前回取得した検出電流値に応じた所定数値を用いた計算結果に対して今回取得した検出電流値に応じた所定数値を加算かつ減算し、該加減算手段(34b)の計算結果が第1判定閾値を超えた場合に負荷駆動手段(10〜15)を制御して該当する負荷(6a〜6f)に流す電流を制限する。このような構成において、電流検出手段(50〜70)は、電流検出値を示す出力を発生させる少なくとも1つのコンパレータが備えられた比較回路(70)と、複数の負荷(6a〜6f)それぞれが接続される出力端子(4a〜4f)をチャンネル(ch1〜ch6)として、各チャンネル(ch1〜ch6)の中から1つを選択し、
1つのコンパレータに対して、選択されたチャンネルに流れる電流に対応する電圧に切替えて入力するチャンネル切替回路(50)と、チャンネル(ch1〜ch6)毎に複数の閾値を設定し、選択されたチャンネルに設定されている複数の閾値を切替ながら
1つのコンパレータに対して入力する閾値切替回路(60)とを有していることを特徴としている。
【0010】
このように、検出電流値に応じた加算数値および減算数値を前回計算した結果に加算かつ減算するという動作を繰り返し、加減算合計値と第1判定閾値とを比較することにより、過電流を検出している。このように、加減算手段(34b)で前回の計算結果に対して所定数値を加算かつ減算または減算した結果と第1判定閾値とを比較する構成であるので、過電流保護回路を簡単な回路で実現することができる。
【0011】
また、複数のチャンネルについて切替えながら過電流検出を実現することができる。すなわち、チャンネル切替回路(50)にて過電流検出を行うチャンネルを選択すると共に、閾値切替回路(60)にてチャンネル毎の複数の閾値を順番に設定していき、コンパレータからなる比較回路(70)によって、各チャンネルの電流検出が行えるようにしている。このため、1つのコンパレータによって複数の電流レベルの判定を行うことが可能となる。したがって、数多くのコンパレータが必要なくなり、回路規模の増大を抑制できると共に、コスト増大を抑制することが可能となる。
【0012】
例えば、請求項2に記載したように、閾値切替回路(60)は、異なる定電流を発生させる複数の定電流源(61)と、複数の定電流源(61)の中から選択されたチャンネルに対応する定電流を発生させる定電流源に接続する第1スイッチ手段(62)と、第1スイッチ手段(62)に接続された複数の抵抗(63a〜63h)と、複数の抵抗(63a〜63h)の中から第1スイッチ手段(62)に接続された定電流源からの定電流が流される抵抗を選択する第2スイッチ手段(64a〜64g)とを有し、制御手段(30)からの信号に基づいて、第1スイッチ手段(62)を複数の定電流源(61)の中から選択されたチャンネルに対応する定電流を発生させる定電流源に接続させると共に、第2スイッチ手段(64a〜64g)にて複数の抵抗(63a〜63h)の中から定電流が流される抵抗を切替えることで複数の閾値を切替ながらコンパレータに対して入力する構成とすることができる。
【0013】
また、請求項3に記載したように、閾値切替回路(60)をD/Aコンバータ(65)で構成し、制御手段(30)からの信号に基づいて、複数の閾値を切替ながらコンパレータに対して入力する構成とすることもできる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、加減算手段(34b)は、制御手段(30)により負荷駆動手段(10〜15)がオフされた後も所定数値の加算および減算を継続し、制御手段(30)は、第1判定閾値よりも小さい第2判定閾値を有し、加減算手段(34b)の計算結果が第2判定閾値に達したときに負荷駆動手段(10〜15)をオンすることを特徴としている。
【0015】
このようにすれば、負荷駆動手段(10〜15)がオフされたとしても、その後に負荷駆動手段(10〜15)を再びオンして負荷(6a〜6f)の駆動を可能にすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、加減算手段(34b)において加算される所定数値は、検出電流値の2乗に比例する予め算出された数値であることを特徴としている。
【0017】
このように、検出電流値の2乗に比例する数値を予め所定数値として定めているので、アナログ的に検出電流値を2乗したり、デジタル的に検出電流値を2乗したりする変換回路を不要とすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、負荷(6a〜6f)は、ワイヤ(8a〜8f)を介して通電されるようになっており、加減算手段(34b)において減算される所定数値は、ワイヤ(8a〜8f)に応じた放熱値であり、当該放熱値は予め算出された変数であることを特徴としている。
【0019】
これによると、ワイヤ(8a〜8f)の放熱値である変数を予め所定数値として定めているので、ワイヤ(8a〜8f)に電流が流れる際のワイヤ(8a〜8f)の放熱値を算出する複雑な回路を不要とすることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、加減算手段(34b)は、一定のサンプリング周期に従って計算を行うことを特徴としている。
【0021】
これによると、積分回路をデジタル的に実現することができ、他用途で使用のマイクロコンピュータやASIC等と共通使用することができる。
【0022】
なお、加減算手段(34b)における計算は、請求項8に記載の発明のように、マイクロコンピュータによるソフトウェアで行われても良いし、請求項9に記載の発明のように、ハードウェアのデジタル回路で行われるようにしても良い。
【0023】
請求項10に記載の発明では、制御手段(30)は、電流検出手段(50〜70)と加減算手段(34b)とを複数の負荷(6a〜6f)毎に時分割制御するスケジューリング回路(31)を備えていることを特徴としている。
【0024】
このように、電流検出手段(50〜70)と加減算手段(34b)とを複数の負荷(6a〜6f)で共通使用すると共に、電流検出手段(50〜70)と加減算手段(34b)とを複数の負荷(6a〜6f)毎に時分割制御するスケジューリング回路(31)を備えているので、デジタル回路を安価に実現することができる。
【0025】
請求項11に記載の発明では、加減算手段(34b)は、複数の負荷(6a〜6f)毎の加減算手段(34b)の計算結果を、複数の負荷(6a〜6f)毎に設けられた記憶領域に格納する記憶手段(35a〜35f)を備えていることを特徴としている。
【0026】
これによると、一つの負荷(6a〜6f)における計算結果を記憶領域に残した状態で別の負荷(6a〜6f)の計算を行うことができる。このため、加減算手段(34b)を複数の負荷(6a〜6f)で共通使用する場合に特に有利である。
【0027】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態で示される過電流保護回路は、例えば車両に搭載されるものであり、ワイヤ(ワイヤハーネス)に接続された負荷に電源を供給する電源供給装置としての役割を果たすものである。また、過電流保護回路はワイヤに流れる過電流を検出し、負荷を保護する機能を備えている。
【0031】
図1は、本実施形態に係る過電流保護回路1の全体構成図である。この図に示されるように、過電流保護回路1は、複数の半導体スイッチ10〜15、入力回路20、制御回路30、EEPROM40、ch切替回路50、閾値切替回路60、比較回路70を備えて構成されている。
【0032】
過電流保護回路1には、電源端子2、複数の入力端子3a〜3f、および複数の出力端子4a〜4fが備えられている。電源端子2は電源5に接続され、電源5からの電源供給に基づいて過電流保護回路1が作動する。この電源5からの電源供給は、各出力端子4a〜4fを介して複数の負荷6a〜6fそれぞれに行われている。
【0033】
複数の入力端子3a〜3fは、各負荷6a〜6fのいずれかを駆動するための指令を入力回路20を介して制御回路30に入力するための端子であり、
図1に示されるようにスイッチ7a〜7fが接続されている。各スイッチ7a〜7fがオンされると、例えば入力端子3a〜3cは電源電位とされ、例えば入力端子3d〜3fはグランド電位とされる。
【0034】
複数の出力端子4a〜4fには、ワイヤ8a〜8fを介して負荷6a〜6fがそれぞれ接続されている。したがって、各負荷6a〜6fは、ワイヤ8a〜8fを介してそれぞれ通電されるようになっている。各負荷6a〜6fとして、例えば、ランプ、モータ、LED、ホーン等が採用される。また、ワイヤ8a〜8fは、接続される負荷6a〜6fに応じてその径や材質が異なる。
【0035】
なお、本明細書では、過電流保護回路1のうち負荷6a〜6fが接続される出力端子4a〜4fをそれぞれチャンネル(ch)と呼ぶ。本実施形態の場合、
図1に示されるように出力端子4a〜4fを6個備えたものとしているため、過電流保護回路1は6個のチャンネルを持った構成となる。
【0036】
複数の半導体スイッチ10〜15は、電源端子2と各出力端子4a〜4fとの間にそれぞれ接続されたスイッチング素子であり、各負荷6a〜6fをそれぞれ駆動する負荷駆動手段である。半導体スイッチ10〜15としては、パワーMOSFET、IGBT、バイポーラトランジスタ等が採用される。半導体スイッチ10〜15として例えばn型のMOSFETを用いると、半導体スイッチ10〜15のドレインが電源端子2にそれぞれ接続され、ソースが各出力端子4a〜4fにそれぞれ接続される。また、半導体スイッチ10〜15のゲートは制御回路30に接続される。また、各半導体スイッチ10〜15を通じて負荷6a〜6fに流される電流と対応する信号(以下、検出信号という)がch切替回路50に入力される。例えば、半導体スイッチ10〜15にセンス素子を備えた構造とする場合、センス素子から流されるセンス電流が検出信号となる。また、半導体スイッチ10〜15のローサイド側にシャント抵抗が接続される構造とする場合、シャント抵抗のハイサイド側の電圧が検出信号となる。
【0037】
入力回路20は、各入力端子3a〜3fから入力される電位に応じた信号、つまり各スイッチ7a〜7fのオンオフ状態に対応する信号を制御回路30に出力する。
【0038】
制御回路30は、入力回路20から入力された信号に基づいて半導体スイッチ10〜15を駆動するもので、入力回路20から入力された信号が負荷6a〜6fを駆動することを要求している場合には、半導体スイッチ10〜15をオンすることで負荷6a〜6fに対して電源供給を行う。また、制御回路30は、ch切替回路50や閾値切替回路60に対して過電流検出を行うための制御信号を出力し、ch切替回路50や閾値切替回路60および比較回路70に電流検出を行わせる。この電流検出の結果に基づき、過電流レベル判定を行うと共に過電流レベル判定の結果に基づいて所定の演算を行うことで過電流を検出し、過電流が検出されたときには、制御回路30は半導体スイッチ10〜15を通じた負荷6a〜6fへの電源供給を制限し、ワイヤ8a〜8fに過電流が流れないようにすることでワイヤ焼損などから保護する。
【0039】
EEPROM40は、過電流検出に用いる判定閾値や各出力端子4a〜4fに接続されたワイヤ8a〜8fの線種(径や材質)、負荷6a〜6fの種類、後述する所定数値等のデータが記憶されたいわゆるメモリである。EEPROM40は、自己が記憶したデータを制御回路30に伝えており、制御回路30は伝えられたデータを利用して過電流検出を行っている。
【0040】
ch切替回路50は、制御回路30から出力される制御信号、具体的にはch切替信号に基づいて、半導体スイッチ10〜15のうちのどの検出信号を比較回路70に入力するかの切替えを行う。
【0041】
閾値切替回路60は、制御回路30からの制御信号、具体的にはch切替信号および閾値切替信号に基づいて閾値の切替を行う。閾値は、ch毎に複数個、例えば8個ずつ設定されているため、閾値切替回路60は、ch切替信号に基づいて複数個のchの中から選択対象となるchに切り替えると共に、閾値切替信号に基づいて各chに設定されている複数個の閾値のうちのどの閾値を用いるかの切替えを行う。
【0042】
比較回路70は、コンパレータであり、この比較回路70によってch切替回路50を通じて送られてきた検出信号と閾値切替回路60で切替えられた閾値とを大小比較し、その比較結果を電流検出の結果として制御回路30に出力している。この比較結果に基づいて、制御回路30は、所定の演算を行い、その演算結果を過電流の判定に用いる判定閾値と比較することで、過電流検出を行っている。
【0043】
図2は、
図1に示す過電流保護回路1の一部詳細回路図である。制御回路30には、スケジューリング回路31、線種毎閾値切替回路32、ch毎閾値切替回路33、加減算回路34、複数のレジスタ35a〜35f、比較回路36および出力制御回路37が備えられている。
【0044】
スケジューリング回路31は、制御回路30に備えられた各種回路32〜37やch切替回路50および閾値切替回路60を複数の負荷6a〜6f毎に時分割制御することで、複数のch1〜ch6で制御回路30に備えられた各種回路32〜37やch切替回路50および閾値切替回路60を共通使用できるようにするための回路である。
【0045】
図2に示されるように、スケジューリング回路31は、一定のサンプリング周期(例えば0.16ms)で信号を出力するように、フリップフロップ31aを備えて構成されている。このような構成により、フリップフロップ31aの出力に1を足して0.16ms毎に信号を出力する。上述のように、本実施形態ではチャンネルは6個(ch1〜ch6)あるので、0.16ms毎に0、1、…、5に対応した信号が出力され、5に対応した信号が出力されるとフリップフロップ31aがリセットされ、再び0に対応した信号が出力される。例えば、0に対応した信号がch1を示し、1に対応した信号がch2を示しているなど、0〜5に対応した信号にてch1〜ch6を示すことができる。
【0046】
したがって、1msでch1からch6までを切り替える信号がスケジューリング回路31から出力されることとなる。これにより、過電流保護回路1では、ch毎に過電流検出が行われる。例えば、ch切替回路50は、各半導体スイッチ10〜15の検出信号が入力される各端子と比較回路70との接続状態を切替えるスイッチ51を備えており、スケジューリング回路31が出力する信号をch切替信号として、このch切替信号に基づいてスイッチ51が切替えられることで、各chの検出信号がサンプリング周期毎に順に比較回路70に入力されるようにする。このため、比較回路70では、ch毎にch切替回路50を通じて入力される検出信号を閾値切替回路60で設定される閾値と比較し、電流検出を行っている。
【0047】
線種毎閾値切替回路32は、スケジューリング回路31からの信号に基づき、閾値切替回路60に対して制御信号としてch切替信号を出力する。具体的には、EEPROM40から該当するch毎にワイヤ8a〜8fの線種などのデータを読み出し、閾値切替回路60にて該当chに対応した閾値の設定を指示するためにch切替信号を出力する。
【0048】
ch毎閾値切替回路33は、ch毎に複数の閾値を設定してあるため、時分割制御によって閾値切替回路60で複数の閾値が順番に設定されるように、閾値切替信号を出力する。上記したように、本実施形態の場合、例えばch毎に8個ずつ閾値を設定していることから、例えば0.16msに設定されたサンプリング周期を閾値の数(8つ)で時分割した0.02ms毎に閾値切替信号が出力されるようにしている。
【0049】
例えば、閾値切替回路60は、異なる定電流を生成する複数の定電流源61と、複数の定電流源61のどれを使用するかの切替えを行うアナログスイッチ(第1スイッチ手段)62と、複数の閾値設定用抵抗63a〜63hおよび各閾値設定用抵抗63a〜63hに並列接続された複数のアナログスイッチ(第2スイッチ手段)64a〜64gにて構成されている。線種毎切替回路32の出力するch切替信号によってアナログスイッチ62が駆動されることで、複数の定電流源61の中から各chのワイヤ8a〜8fの線種に応じたものが選択され、それによって生成される定電流が閾値設定用抵抗63a〜63hに流される。また、ch毎閾値切替回路33の出力する閾値切替信号は、複数のアナログスイッチ64a〜64gのオンオフを制御するために用いられ、アナログスイッチ64a〜64gのオンオフを制御して比較回路70の反転入力端子に入力される電圧値(つまり閾値)を調整することで閾値を切替える。例えば、時分割された閾値切替信号が入力される毎にアナログスイッチ64a〜64gが順番にオンされていくことで、閾値が切替えられるようにしている。
【0050】
加減算回路34は、過電流レベル判定部34a、加減算制御部34b、加減算値テーブル記憶部34c、複数の読み出し回路34da〜34df、複数の書き込み回路34ea〜34efを備えている。
【0051】
過電流レベル判定部34aは、比較回路70による電流検出の結果として、ch切替回路50を通じて入力された各chの検出信号(例えば、各chの電流相当電圧)と閾値切替回路60で設定された閾値との比較結果を入力する。そして、過電流レベル判定部34aは、比較回路70での比較結果に基づいて、電流閾値として設定されるID1〜ID8のどの大きさに相当する過電流レベルかを判定し、その結果を加減算制御部34bに伝える。例えば、電流閾値ID1〜ID8は、閾値の値が順に大きくなるように設定(ID8<ID7<ID6<・・・<ID1)されている。そして、過電流レベル判定部34aは、検出信号がどの電流閾値を超えているか、つまりID1以上か、ID2〜1、ID3〜2、ID4〜3、ID5〜4、ID6〜5、ID7〜6、ID8〜7の間のいずれか、もしくはID8未満かについて、加減算制御部34bに伝えている。
【0052】
加減算制御部34bは、過電流レベル判定部34aが判定した過電流レベルに対応した所定数値を加算かつ減算する回路である。加減算制御部34bは複数の負荷6a〜6fそれぞれについて(つまりch1〜ch6について)、過電流レベルに応じた計算を行う。この加減算制御部34bは、マイクロコンピュータによるソフトウェアによって加減算を行う構成であっても良いし、ハードウェアのデジタル回路によって加減算を行う構成であっても良い。
【0053】
加減算値テーブル記憶部34cは、EEPROM40に記憶されてるデータを読み出すことにより、過電流レベルに対応した加算数値および減算数値の関係を示したテーブルを記憶している。このテーブルを利用して、加減算制御部34bでの加算および減算の計算が行われる。
【0054】
図3は、加減算値テーブル記憶部34cに記憶されているテーブル、つまり過電流レベルと加算数値と減算数値との関係の一覧表を示した図である。この図の「X」は「ID5」の電流閾値を示し、ID5(X)の値はワイヤ8a〜8fの連続通電可能値、つまり負荷6a〜6fに対する連続通電可能値(連続通電許容電流値)を示している。また、「Y」は「ID6」の電流閾値を示している。上述のように、電流閾値であるID5およびID6は可変値であるが、ID5は例えば8A、ID6はID5の95%で7.6Aとすることができる。
【0055】
ここで、加算数値は検出電流値の2乗に比例した値である。すなわち、電流値の2乗であるから、ジュール熱における発熱量に比例する値となる。ここでは、各検出電流範囲における検出電流値下限の2乗×10を加算数値としている。また、減算数値はワイヤ8a〜8fの連続通電可能値の2乗に比例する値(ワイヤ8a〜8fに応じた放熱値)である。これら加算数値および減算数値は、予め算出された変数であり、EEPROM40を通じて加減算値テーブル記憶部34cに記憶されている。なお、減算数値で「×10」としているのは、ID5の2乗値の小数点第1位を固定小数点化してデジタル処理を簡単にできるようにするためである。
【0056】
図3に示されるように、所定数値として、検出電流範囲に応じて加算数値と減算数値とが予め設定されている。加減算回路34は、自分自身でch切替回路50の切替状態や閾値切替回路60でどの閾値が設定されているかを把握しており、例えば、過電流レベル判定部34aにてID3〜2の電流を判定した場合には、そのときの過電流検出対象となっているchについて、ID3〜2のときの加算数値(9000)および減算数値(ID5
2×10)が加減算される。
【0057】
具体的には、
図2に示される加減算制御部34bは、過電流レベル判定部34aで前回判定された過電流レベルに応じた所定数値を用いた計算結果に対して今回判定された過電流レベルに応じた所定数値を加算かつ減算している。過電流レベル判定部34aで前回判定された過電流レベルに応じた所定数値を用いた計算結果は、ch毎に後述するレジスタ35a〜35fにそれぞれ格納されている。したがって、加減算制御部34bは、チャンネル毎に設けられた読み出し回路34da〜34dfにより各レジスタ35a〜35fに格納された前回計算値を読み出し、この前回計算値に今回計算した結果を加算かつ減算して今回計算値とし、この今回計算値をチャンネル毎に設けられた書き込み回路34ea〜34efにより各レジスタ35a〜35fに格納する。
【0058】
上述のように、加算数値と減算数値とが予め設定されているので、加減算制御部34bは、前回計算値+(検出電流値の2乗に比例した値;加算数値)−(ワイヤ8a〜8fの連続通電可能値の2乗に比例した値;減算数値)という演算を行う。ID8未満の電流を検出した場合、加減算制御部34bは0を加算してID52×10を減算することとなる。
【0059】
ここで、各読み出し回路34da〜34dfおよび各書き込み回路34ea〜34efは、スケジューリング回路31から入力される信号が各読み出し回路34da〜34dfおよび各書き込み回路34ea〜34efにそれぞれ設定されたchに対応している場合、当該chに対応したレジスタ35a〜35fからのデータの読み出しやレジスタ35a〜35fへのデータの書き込みを行う。したがって、加減算回路34は、一定のサンプリング周期に従ってch1からch6まで順番に計算を行うこととなる。
【0060】
また、加減算制御部34bは、制御回路30により半導体スイッチ10〜15がオフされた後も所定数値の減算を継続して行う。具体的には、半導体スイッチ10〜15がオフされた後、過電流レベル判定部34aでID8未満の電流が検出されるため、
図3に示されるように、加算数値が0および減算数値がID5
2×10の所定数値が選択される。したがって、加減算制御部34bは0を加算し、かつ、ID5
2×10を減算する演算を行うことになるが、実質的にはID5
2×10を減算する演算を行うため、半導体スイッチ10〜15がオフされた後は、加減算制御部34bは減算を継続することになる。そして、加減算後の演算結果が負の数になった場合は、温度定常状態になったとみなし演算結果を0にする。
【0061】
図4は、加減算回路34により得られる過電流遮断特性を示したものである。横軸は時間を示し、縦軸は電流値を示している。ここで、一例として、ワイヤ8a〜8fは最大周囲温度を60℃と想定しており、線種としてはAVS線またはAVSS線の使用を想定している。AVS線、AVSS線はその許容温度が80℃で、発煙温度が150℃であり(JASO)、したがって周囲温度60℃においては、ワイヤ許容通電電流特性は例えば温度上昇ΔT=20℃となるように、またワイヤ発煙電流特性は例えば温度上昇ΔT=90℃となるようにすることができる。具体的に、ワイヤ許容通電電流特性は、本例での加減算値合計が300000〜600000(ワイヤ線径により異なる)に相当し、その加算合計値より後述する判定閾値を設定することで、過電流遮断特性をワイヤ許容通電電流特性に沿うようにしている。
【0062】
本実施形態では、閾値切替回路60により設定される閾値を8個としているため、過電流遮断特性は
図4に示されるように8つの階段状となる。したがって、閾値切替回路60により設定される閾値の数を増やしたり、あるいはAD変換器を使用することにより、電流の分解能が向上して階段状の特性が滑らかになり、階段状の過電流遮断特性を曲線状のワイヤ許容通電電流特性に近づけることが可能である。このワイヤ許容通電電流特性は遮断したい熱容量特性に相当し、ワイヤ径や材質により異なる。
【0063】
なお、本実施形態では、負荷定常領域(過電流遮断特性がワイヤ許容通電電流特性に沿っている)での使用としているが、発煙領域に適用することや、負荷定常領域と発煙領域との中間領域に適用することも当然可能である。
【0064】
図2に示される複数のレジスタ35a〜35fは、複数の負荷6a〜6f毎の加減算回路34の計算結果を、複数の負荷6a〜6f毎に設けられた記憶領域に格納する記憶手段である。このように、チャンネル毎にレジスタ35a〜35fを設けることで、一つの負荷6a〜6fにおける計算結果を対応するレジスタ35a〜35fに残した状態で別の負荷6a〜6fの計算を行うことができる。このため、加減算回路34を複数の負荷6a〜6fで共通使用することが可能となる。
【0065】
比較回路36は、過電流か否かを判定するための判定閾値と加減算回路34の計算結果とをチャンネル毎に比較する回路である。比較回路36は、2つのセレクタ36a、36bとデジタル比較器36cとを備えて構成されている。
【0066】
セレクタ36aは、スケジューリング回路31から入力される信号に従って、チャンネル毎に設定された過電流を示す判定閾値を出力する回路である。チャンネル毎の判定閾値は、EEPROM40に格納されている。また、セレクタ36bは、スケジューリング回路31から入力される信号に従って、各レジスタ35a〜35fに格納された計算結果をデジタル比較器36cに入力する回路である。
【0067】
デジタル比較器36cは、セレクタ36bから入力される加減算回路34の計算結果がセレクタ36aから入力される第1判定閾値(ch1〜ch6用閾値)を超える場合、過電流が流れているとしてハイ信号を出力する。上述のように、セレクタ36a、36bはスケジューリング回路31から入力された信号に従ってその信号が示すchに対応した第1判定閾値や計算結果を出力している。したがって、デジタル比較器36cは、ch1からch6まで順にチャンネル毎に設定された第1判定閾値と計算結果とを比較していく。
【0068】
出力制御回路37は、制御回路30の出力部として機能するものであり、入力条件に基づいて半導体スイッチ10〜15を制御するための信号を出力する。入力条件とは、スイッチ7a〜7fのいずれかがオンされたことや、比較回路36から過電流を検出したという比較結果が入力されたことを指す。すなわち、出力制御回路37は、加減算回路34の計算結果が第1判定閾値を超えた場合に比較回路36からハイ信号を入力すると、過電流が検出されたchの半導体スイッチ10〜15をオフもしくは半導体スイッチ10〜15が負荷6a〜6fに流す電流を制限する。これにより、過電流からワイヤ8a〜8fを保護する。
【0069】
また、制御回路30は、第1判定閾値よりも小さい第2判定閾値を有しており、加減算回路34の計算結果が第2判定閾値に達したときに半導体スイッチ10〜15を再びオンする。これにより、ワイヤ8a〜8fに過電流が流れなくなったら、再び負荷6a〜6fが作動する。これにより、半導体スイッチ10〜15がオフされたとしても、一定時間後に半導体スイッチ10〜15が再びオンされるので、一旦遮断された負荷6a〜6fの駆動が可能になる。
【0070】
なお、
図2では、第1判定閾値と加減算合計値との比較をデジタル比較器36cで行っているが、第2判定閾値と加減算合計値との比較についても図示しないデジタル比較器により行っている。以上が、本実施形態に係る過電流保護回路1の全体構成である。
【0071】
次に、上記の過電流保護回路1の作動について、
図5および
図6を参照して説明する。
図5は、負荷6a〜6fのうちの一つがヘッドランプの場合にヘッドランプに定常負荷電流が流れるときの負荷電流と加減算合計値とを示した図である。一方、
図6は、負荷6a〜6fに負荷ショート電流(過電流)が流れたときの負荷電流と加減算合計値とを示した図である。
【0072】
なお、
図5および
図6では、横軸は時間を示し、縦軸は加減算合計値または負荷電流を示している。また、
図5および
図6は、各チャンネルのうちの1つのチャンネルについての負荷電流を示している。
【0073】
上述のように、チャンネルは6個あるが、以下では1つのチャンネル(ヘッドランプ)について負荷電流に対する過電流保護回路1の作動を述べる。スケジューリング回路31により、一定のサンプリング周期でch1〜ch6が切り替えられるので、過電流保護回路1のch1〜ch6に対する作動は同じである。
【0074】
まず、スイッチ7a〜7fが操作されて制御回路30により所望の半導体スイッチ10〜15がオンされると、
図5に示されるように、ラッシュ電流が流れる。これにより、比較回路70の比較結果に基づいて過電流レベル判定部34aからラッシュ電流の値に応じた判定結果が加減算制御部34bに出力され、加減算制御部34bにより、検出された電流に応じた加算数値および減算数値を前回計算した結果に加減算する。
【0075】
各レジスタ35a〜35fの計算結果には0が格納されているとすると、スイッチ7a〜7fがオンされたことによりラッシュ電流が流れ始めたので、0に対して加減算を行い、その結果をレジスタ35a〜35fに格納する。勿論、スイッチ7a〜7fがオンする前の状況によっては、前回計算結果が0ではない場合もあるが、その場合でもその値に対して加減算することになる。
【0076】
ただし、
図5に示されるように、ラッシュ電流は瞬間的に大電流が流れるが、急激に減少する。このため、過電流レベル判定部34aで判定される電流の値は時間の経過と共に、急激に小さくなる。このため、加算数値も小さくなるので、
図5に示されるように、加減算合計値は、ラッシュ電流が流れた際に上昇するが、ラッシュ電流が流れ終わって電流が安定すると、加算数値よりも減算数値が大きくなるので、少しずつ減少していき、やがて0になる。
【0077】
このような定常負荷電流が流れる場合、
図5に示されるように、加減算合計値は第1判定閾値を超えないので、比較回路36では過電流が流れていると判定されず、制御回路30により半導体スイッチ10〜15がオフもしくは半導体スイッチ10〜15を通じて負荷6a〜6fに流す電流が制限されることもない。
【0078】
一方、
図6に示されるように、ワイヤ8a〜8fに過電流が流れた場合、ラッシュ電流のように大きな電流が流れてもすぐに電流値が小さくなる場合とは異なり、大きな電流が流れ続ける。このため、加減算合計値は過電流が流れ続ける間は上昇し続け、加減算合計値は第1判定閾値を超える。このため、制御回路30は半導体スイッチ10〜15をオフする。
【0079】
これにより、ワイヤ8a〜8fに電流が流れなくなるので、負荷電流は0になる。ここで、過電流レベル判定部34aはこの0の電流を検出し続け、加減算制御部34bは検出した0の電流に応じた加算数値および減算数値を加減算することとなる。この場合、加算数値よりも減算数値のほうが大きいので、実質的には前回計算した結果を一定の減算数値で減算していくこととなる。
【0080】
そして、前回計算した結果を減算した結果、加減算合計値が第2判定閾値に達すると、制御回路30は半導体スイッチ10〜15を再びオンもしくは半導体スイッチ10〜15を通じて負荷6a〜6fに流す電流の制限を解除する。これにより、ワイヤ8a〜8fに再び電流が流れるが、この電流が過電流であると、加減算合計値は再び第1判定閾値を超えて半導体スイッチ10〜15がオフされる。
【0081】
この後、上記と同様に、加減算合計値が第2判定閾値に達するので半導体スイッチ10〜15がオンされるが、ワイヤ8a〜8fには過電流が流れるので加減算合計値は第1判定閾値を超えて半導体スイッチ10〜15がオフもしくは半導体スイッチ10〜15を通じて負荷6a〜6fに流す電流が制限されるという動作が繰り返される。このようにして過電流を検出してワイヤ8a〜8fおよび負荷6a〜6fを保護する。このような動作が、一定のサンプリング周期でch毎に行われる。
【0082】
なお、ここでは、第2判定閾値に達した場合に、上述のように再び半導体スイッチ10〜15をオンする動作(リトライ動作)を行うようにしているが、半導体スイッチ10〜15をオフのままとする動作(ラッチ動作)を行うこともできる。これらリトライ動作とラッチ動作とは、EEPROM40の記憶内容に応じて適宜選択可能にできる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態では、検出した電流に応じた加算数値および減算数値を前回計算した結果に加算かつ減算するという動作を繰り返し、加減算合計値と判定閾値とを比較することにより、過電流を検出している。このように、加減算回路34で前回の計算結果に対して所定数値を加算かつ減算または減算した結果と第1判定閾値とを比較する構成であるので、過電流保護回路1を簡単な回路で実現することができる。
【0084】
特に、本実施形態では、検出電流値の2乗に比例する数値を予め加算数値として定め、ワイヤ8a〜8fの放熱値である変数を予め減算数値として定めているので、アナログ的に検出電流値を2乗したり、デジタル的に検出電流値を2乗したりする変換回路やワイヤ8a〜8fに電流が流れる際のワイヤ8a〜8fの放熱値を算出する複雑な回路を不要とすることができる。したがって、過電流保護回路1を簡単な回路で実現することができる。
【0085】
また、本実施形態では、スケジューリング回路31を用いて、複数のチャンネルについて一定のサンプリング周期で過電流検出を行っているので、複数のチャンネルについて過電流検出を実現することができる。すなわち、ch切替回路50にて過電流検出を行うchを選択すると共に、閾値切替回路60にてch毎の複数の閾値を順番に設定していき、1つのコンパレータからなる比較回路70によって、各chの電流検出が行えるようにしている。このため、1つのコンパレータによって複数の電流レベルの判定を行うことが可能となる。したがって、数多くのコンパレータが必要なくなり、回路規模の増大を抑制できると共に、コスト増大を抑制することが可能となる。
【0086】
さらに、加減算回路34についても複数の負荷6a〜6fで共通使用できる。したがって、デジタル回路を安価に実現することも可能となる。
【0087】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、半導体スイッチ10〜15が「負荷駆動手段」に対応し、ch切替回路50、閾値切替回路60および比較回路70が「電流検出手段」に対応する。さらに、制御回路30が「制御手段」に対応し、過電流レベル判定部34aが「過電流レベル判定手段」に対応し、加減算制御部34bが「加減算手段」に対応する。
【0088】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して閾値切替回路60などの構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0089】
上記第1実施形態では、閾値切替回路60による閾値の切替えがアナログスイッチ62、64a〜64gなどを用いてアナログ的に行われるようにしているが、本実施形態ではデジタル的に行われるようにする。
【0090】
図7は、本実施形態に係る過電流保護回路1の一部詳細回路図である。この図に示すように、本実施形態では、第1実施形態における線種毎閾値切替回路32およびch毎閾値切替回路33に代えて、線種・ch毎閾値切替回路38を備えると共に、閾値切替回路60をD/Aコンバータ65によって構成している点が第1実施形態と異なっている。
【0091】
このような構成では、第1実施形態においてch毎閾値切替回路33が出力していたch切替信号や線種毎閾値切替回路32が出力していた閾値切替信号が線種・ch毎閾値切替回路38を通じて出力されるようにする。これら各信号は、例えば8bit線を通じてD/Aコンバータ65に入力され、これら各信号に基づいて、D/Aコンバータ65がどのchの電流検出を行い、どの閾値とするかを設定することで、ch毎に電流検出が行えるようになっている。
【0092】
なお、ここでは8bit線を用いてch切替信号や閾値切替信号を伝達しており、D/Aコンバータ65の分解能が各chの閾値を8段階に設定するようにしているが、D/Aコンバータ65の分解能をより高くすれば、より細かく閾値を設定できる。その場合、より多くのデータの伝達が行える信号線を用いればよい。
【0093】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して加減算制御手段34bでの加減算に用いる加算数値や減算数値を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0094】
図8は、本実施形態にかかる加減算値テーブル記憶部34cに記憶されているテーブル、つまり過電流レベルと加算数値と減算数値との関係の一覧表を示した図である。
図8に示されるように、過電流検出回路30で検出される検出電流値(I)がID1以上の場合には加算数値として「128」、減算数値として「−1」が設定され、過電流検出回路30で検出される検出電流値がID2≦I<ID1の場合には加算数値として「64」、減算数値として「−1」が設定されている。同様に、過電流検出回路30で検出される検出電流値がID3≦I<ID2の場合には加算数値として「32」、減算数値として「−1」が設定され、ID4≦I<ID3の場合には加算数値として「16」、減算数値として「−1」が設定され、ID5≦I<ID4の場合には加算数値として「8」、減算数値として「−1」が設定され、ID6≦I<ID5の場合には加算数値として「4」、減算数値として「−1」が設定され、ID7≦I<ID6の場合には加算数値として「2」、減算数値として「−1」が設定され、ID8≦I<ID7の場合には加算数値として「1」、減算数値として「−1」が設定されている。さらに、過電流検出回路30で検出される検出電流値がI<ID8の場合には、加算数値として「0」、減算数値として「−1or−2」が設定されている。
【0095】
このような加減算の場合については、各チャンネル(ch1〜ch6)で共通の加算数値が採用されている。なお、過電流検出回路30で検出される検出電流値(I)がID8以上であれば、減算数値として「−1」が設定されており、ID8未満であれば、減算数値として「−1or−2]が設定されるようにしているが、こられの減算数値についてはEEPROM40の設定によって変更可能である。勿論、ID8以上における他のレベルの減算数値についても、EEPROM40の設定によって変更可能である。
【0096】
このような加減算値テーブルを用いて、加減算制御部34bは、今回取得した検出電流値に応じた加減算数値を加減算する。
【0097】
このような加減算値テーブルを用いた場合でも、基本的には、過電流保護回路1の作動は第1実施形態と同様であり、上述のように、過電流レベル判定部34aで検出される検出電流値の大きさに応じて、前回取得された検出電流値に応じた所定数値を用いた計算結果に対して所定の加算数値の加算および所定の減算数値の減算を行うことで、過電流検出を行うことができる。
【0098】
以上説明したような加減算値テーブルを用いる場合、電流しきい値や加減算数値の大きさを小さくでき、また、数を少なくできるので、取り扱うデータ量を少なくでき、ひいては回路規模を小さくできるという利点がある。
【0099】
すなわち、第1実施形態では、
図3に示されるように、各電流しきい値に応じた加算数値や減算数値が設定され、これらのデータがEEPROM40に記憶されていた。例えば
図3に示される「36000」という加算数値を2進数で表現すると16桁の数値で表される。このような大きな桁の数値がそれぞれ2進数で表現され、EEPROM40に記憶されるので、取り扱うデータ量が多くなる。
【0100】
これに対して、本実施形態では、加算数値は検出電流値の2乗に比例した値であるので、検出電流値を二乗すると、
図8に示される加算数値が得られる。ID2〜ID7では、検出電流値は電流しきい値が大きくなる毎にルート2倍されていったので、検出電流値を二乗すると加算数値を2倍していくこととなる。したがって、
図8に示されるように、2、4、8、…、128というように、電流しきい値の範囲に応じて加算数値が2倍されていく。
【0101】
検出電流値を得る算出式は各ワイヤ8a〜8fで共通しているので、加算数値も各ワイヤ8a〜8fで共通している。しかもその加算数値は大きくても3桁の数値であり、この数値が2進数で表現されることとなる。本実施形態に係る加算数値と第1実施形態の
図3で示された加算数値を比較すると、明らかに本実施形態に係る加算数値が小さくなっている。このため、加算数値を2進数で表現したとしても、桁数が大きくならずに済み、第1実施形態に対して取り扱うデータ量を小さくすることができ、ひいては回路規模を小さくすることができる。
【0102】
したがって、本実施形態では、電流しきい値や加減算数値の大きさを小さくでき、また、数を少なくできるので、取り扱うデータ量を少なくでき、ひいては回路規模を小さくできるという利点がある。
【0103】
(他の実施形態)
上記実施形態に示された過電流保護回路1の回路構成は単なる一例であり、適宜変更することができる。例えば、過電流保護回路1に設けられるチャンネル数は6個に限られない。また、上記各実施形態では、1つのみのコンパレータを備えた比較回路70によってすべてのchの電流検出を行うようにしたが、少なくとも1つのコンパレータによって複数のchの電流検出が行えるのであれば、本発明の効果を得ることができる。例えば、比較回路70に2つのコンパレータが備えられ、各コンパレータに3つのchの電流検出を行うような形態であっても良い。
【0104】
更に、上記実施形態では、過電流遮断特性をワイヤ許容通電電流特性に沿うように設定している。しかし、判定閾値、加減算数値、および検出電流値をパラメータとして変更あるいはEEPROM40によって可変可能とすることで、過電流遮断特性をワイヤ発煙電流特性に沿わせても良い。