特許第5648630号(P5648630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5648630
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】多層ポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20141211BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20141211BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   B32B27/34
   C08G73/10
   B32B27/20 A
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-511414(P2011-511414)
(86)(22)【出願日】2010年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2010057469
(87)【国際公開番号】WO2010126047
(87)【国際公開日】20101104
【審査請求日】2013年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2009-108773(P2009-108773)
(32)【優先日】2009年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】上木戸 健
【審査官】 宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−050826(JP,A)
【文献】 特開平10−138318(JP,A)
【文献】 特開2008−251877(JP,A)
【文献】 特開2004−315601(JP,A)
【文献】 特開平09−040775(JP,A)
【文献】 特開平06−212075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 −43/00
C08G 73/00 −73/26
H01L 21/447−21/449
H01L 21/60 −21/607
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド層(b)の片面又は両面に、顔料を含有するポリイミド層(a)が積層された多層ポリイミドフィルムであって、前記ポリイミド層(b)を構成するポリイミドが、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸単位と、p−フェニレンジアミン単位を70〜100モル%含む芳香族ジアミン単位とからなる、多層ポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記ポリイミド層(a)を構成するポリイミドが、ピロメリット酸単位、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位からなる群から選ばれる1種以上を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸単位と、p−フェニレンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)ベンゼン単位からなる群から選ばれる1種以上を70〜100モル%含む芳香族ジアミン単位とからなる、請求項1に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記顔料が、遮光性若しくは光反射性を有する顔料である、請求項1又は2に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記顔料が、カーボンブラック、鉄黒及び二酸化チタンからなる群から選ばれる1種以上の顔料である、請求項3に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記顔料が非電導性のカーボンブラックである、請求項4に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項6】
波長550nmにおける光透過率が1%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項7】
多層ポリイミドフィルムの総厚みに対する前記ポリイミド層(a)の総厚みの比率[(ポリイミド層(a)の総厚み)/(多層ポリイミドフィルムの総厚み)]が0.25以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルムの製造方法であって、
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸成分と、p−フェニレンジアミンを70〜100モル%含む芳香族ジアミン成分とから得られるポリアミック酸を含有するポリイミド前駆体溶液(b)を用いてポリイミド層(b)を得る工程、及び
前記ポリイミド層(b)の少なくとも一つの面上に、ポリアミック酸及び顔料を含有するポリイミド前駆体溶液(a)を用いてポリイミド層(a)を形成する工程
を含む、多層ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記ポリイミド前駆体溶液(a)が、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる成分を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸成分と、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル類及びビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類からなる群から選ばれる成分を70〜100モル%含むジアミン成分とから得られるポリアミック酸、並びに顔料を含有する、請求項8に記載の多層ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記ポリイミド前駆体溶液(b)と、前記ポリイミド前駆体溶液(a)とを共押出することにより支持体上に流延した後に加熱する工程を含む、請求項8又は9に記載の多層ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記ポリイミド前駆体溶液(b)を基板上に流延した後に加熱し、ポリイミド層(b)からなる自己支持性フィルムを得る工程、及び
前記自己支持性フィルムに、前記ポリイミド前駆体溶液(a)を塗工した後に加熱する工程
を含む、請求項8又は9に記載の多層ポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層ポリイミドフィルムに関し、詳しくは遮光性又は光反射性を有する多層ポリイミドフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、耐熱性、寸法安定性、力学特性、電気的性質、耐環境特性、難燃性などの各種物性に優れ、しかも柔軟性を有しているため、半導体集積回路を実装する際に用いられる、フレキシブルプリント基板やテープ・オートメイティド・ボンディング(Tape Automated Bonding:TAB)用基板として広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類とが重縮合してなるポリイミド(A)が30〜98質量部と、体質顔料(B)が2〜70質量部とを主成分とするポリイミドフィルムが開示されている。
特許文献2には、ジアミンと芳香族テトラカルボン酸とを反応させて得られるポリアミド酸に白色顔料を混合した液を支持体に流延・乾燥して、ポリイミド前駆体フィルムを得、該ポリイミド前駆体フィルムをイミド化させて得られる白色ポリイミドフィルムであって、ジアミンがトランスジアミノシクロヘキサン、メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ジアミノジフェニルスルフォンから選ばれる少なくとも一種を主成分とする白色ポリイミドフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−077231号公報
【特許文献2】特開2008−169237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、耐熱性及び機械特性に優れ、かつ、遮光性又は光反射性を有する多層ポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の多層ポリイミドフィルムを提供する。
[1]ポリイミド層(b)の片面又は両面に、顔料を含有するポリイミド層(a)が積層された多層ポリイミドフィルムであって、前記ポリイミド層(b)を構成するポリイミドが、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸単位と、p−フェニレンジアミン単位を70〜100モル%含む芳香族ジアミン単位とからなる、多層ポリイミドフィルム。
[2]前記ポリイミド層(a)を構成するポリイミドが、ピロメリット酸単位、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位からなる群から選ばれる1種以上を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸単位と、p−フェニレンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)ベンゼン単位からなる群から選ばれる1種以上を70〜100モル%含む芳香族ジアミン単位とからなる、上記[1]に記載の多層ポリイミドフィルム。
[3]前記顔料が、遮光性若しくは光反射性を有する顔料である、上記[1]又は[2]に記載の多層ポリイミドフィルム。
[4]前記顔料が、カーボンブラック、鉄黒及び二酸化チタンからなる群から選ばれる1種以上の顔料である、上記[3]に記載の多層ポリイミドフィルム。
[5]前記顔料が非電導性のカーボンブラックである、上記[4]に記載の多層ポリイミドフィルム。
[6]波長550nmにおける光透過率が1%以下である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
[7]多層ポリイミドフィルムの総厚みに対する前記ポリイミド層(a)の総厚みの比率[(ポリイミド層(a)の総厚み)/(多層ポリイミドフィルムの総厚み)]が0.25以下である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルムの製造方法であって、
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸成分と、p−フェニレンジアミンを70〜100モル%含む芳香族ジアミン成分とから得られるポリアミック酸を含有するポリイミド前駆体溶液(b)を用いてポリイミド層(b)を得る工程、及び
前記ポリイミド層(b)の少なくとも一つの面上に、ポリアミック酸及び顔料を含有するポリイミド前駆体溶液(a)を用いてポリイミド層(a)を形成する工程
を含む、多層ポリイミドフィルムの製造方法。
[9]前記ポリイミド前駆体溶液(a)が、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる成分を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸成分と、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル類及びビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類からなる群から選ばれる成分を70〜100モル%含むジアミン成分とから得られるポリアミック酸、並びに顔料を含有する、上記[8]に記載の多層ポリイミドフィルムの製造方法。
[10]前記ポリイミド前駆体溶液(b)と、前記ポリイミド前駆体溶液(a)とを共押出することにより支持体上に流延した後に加熱する工程を含む、上記[8]又は[9]に記載の多層ポリイミドフィルムの製造方法。
[11]前記ポリイミド前駆体溶液(b)を基板上に流延した後に加熱し、ポリイミド層(b)からなる自己支持性フィルムを得る工程、及び
前記自己支持性フィルムに、前記ポリイミド前駆体溶液(a)を塗工した後に加熱する工程
を含む、上記[8]又は[9]に記載の多層ポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多層ポリイミドフィルムは、耐熱性及び機械特性に優れ、かつ、遮光性又は光反射性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の多層ポリイミドフィルムは、ポリイミド層(b)の片面又は両面に、顔料を含有するポリイミド層(a)が積層されてなる。
本発明の多層ポリイミドフィルムにおいて、ポリイミド層(b)及びポリイミド層(a)の厚みは、使用する目的に応じて適宜選択することができるが、実用上、ポリイミド層(b)の厚みは、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜80μm、更に好ましくは5〜50μm、特に好ましくは7〜50μmの厚さである。
ポリイミド層(a)の総厚みは、フィルムの機械物性低下防止の観点から、好ましくは0.2〜10μm、より好ましくは0.3〜7μm、更に好ましくは0.5〜5μm、特に好ましくは0.7〜4μmの厚さであることが好ましい。
さらにポリイミド層(a)の片面の厚みは、フィルムの機械物性低下防止の観点から、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.2〜3μm、更に好ましくは0.25〜2μm、特に好ましくは0.3〜1.5μmの厚さであることが好ましい。
多層ポリイミドフィルムの総厚み(ポリイミド層(b)及びポリイミド層(a)の厚みの総和)に対するポリイミド層(a)の総厚みの比率[(ポリイミド層(a)の総厚み)/(多層ポリイミドフィルムの総厚み)]は、フィルムの機械物性低下防止の観点から、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下、更に好ましくは0.18以下である。当該比率の下限は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上である。
【0009】
<ポリイミド層(b)>
ポリイミド層(b)を構成するポリイミドは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸単位と、p−フェニレンジアミン単位を70〜100モル%含む芳香族ジアミン単位とからなり、耐熱性に優れるポリイミドである。後述するように、ポリイミド層(b)を構成するポリイミドは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸成分と、p−フェニレンジアミンを70〜100モル%含む芳香族ジアミン成分とから得られるポリアミック酸を含有するポリイミド前駆体溶液(b)を用いて調製することができる。
【0010】
ポリイミド層(b)を構成するポリイミドにおける芳香族テトラカルボン酸単位は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位を70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含む。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位以外の芳香族テトラカルボン酸単位としては、例えば2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位、ピロメリット酸単位、1,4−ヒドロキノンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸単位が挙げられるがこれらに特に限定されない。
【0011】
ポリイミド層(b)を構成するポリイミドにおける芳香族ジアミン単位は、p−フェニレンジアミン単位を70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含む。p−フェニレンジアミン単位以外の芳香族ジアミン単位としては、例えばm−フェニレンジアミン単位、2,4−ジアミノトリジン単位、4,4−ジアミノジフェニルエーテル単位、o−トリジン単位、m−トリジン単位、4,4’−ジアミノベンズアニリド単位等のベンゼン核が1〜2個のジアミン単位(ただし、2個のベンゼン核間に、エチレン基等の炭素数2以上のアルキレン基を有するものは含まない。)が挙げられるがこれらに特に限定されない。
【0012】
<ポリイミド層(a)>
ポリイミド層(a)を構成するポリイミドは、好ましくはピロメリット酸単位、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位からなる群から選ばれる1種以上を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸単位と、p−フェニレンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)ベンゼン単位からなる群から選ばれる1種以上を70〜100モル%含む芳香族ジアミン単位とからなり、耐熱性に優れるポリイミドである。
【0013】
ポリイミド層(a)を構成するポリイミドにおける芳香族テトラカルボン酸単位は、ピロメリット酸単位、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸単位からなる群から選ばれる1種以上を、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%含む。前記以外の芳香族テトラカルボン酸単位としては、例えば1,4−ヒドロキノンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸単位、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸単位、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸単位、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸単位が挙げられるがこれらに特に限定されない。
【0014】
ポリイミド層(a)を構成するポリイミドにおける芳香族ジアミン単位は、p−フェニレンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)ベンゼン単位からなる群から選ばれる1種以上を70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含む。前記以外の芳香族ジアミン単位としては、例えばm−フェニレンジアミン単位、2,4−ジアミノトリジン単位、o−トリジン単位、m−トリジン単位、4,4’−ジアミノベンズアニリド単位等のベンゼン核が1〜3個のジアミン単位(ただし、2個のベンゼン核間に、エチレン基等の炭素数2以上のアルキレン基を有するものは含まない。)が挙げられるがこれらに特に限定されない。
【0015】
ポリイミド層(b)を構成するポリイミドとポリイミド層(a)を構成するポリイミドとは、同一であってもよく、異なってもよい。
【0016】
(顔料)
ポリイミド層(a)は顔料を含有する。顔料の種類及び含有量は、用途に応じて適宜選択することができる。ポリイミド層(a)における顔料の含有量は、ポリイミド層(a)を構成するポリイミド100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは3〜20質量部、更に好ましくは3〜15質量部である。
【0017】
ポリイミド層(a)に含まれる顔料としては、遮光性若しくは光反射性を有する顔料であり、好ましくは非電導性並びに遮光性若しくは光反射性を有する顔料である。
顔料の具体例としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、群青、コバルトブルー(海碧)、チタンイエロー、紺青、硫化亜鉛、バリウム黄、コバルト青、コバルト緑、キナクリドンレッド、ポリアゾイエロー、アンスラキノンレッド、アンスラキノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどが挙げられるがこれらに限定されない。また、これらの顔料は二種類以上を併用することができる。
顔料としては、遮光性の観点から、カーボンブラック、鉄黒及び二酸化チタンからなる群から選ばれる1種以上の顔料が好ましく、非電導性及び遮光性の観点から、非電導性のカーボンブラックがより好ましい。
【0018】
<多層ポリイミドフィルムの製造方法>
本発明の多層ポリイミドフィルムの製造方法は特に限定されないが、以下の工程(1)及び(2)を含む方法が好ましい。
工程(1):3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸成分と、p−フェニレンジアミンを70〜100モル%含む芳香族ジアミン成分とから得られるポリアミック酸を含有するポリイミド前駆体溶液(b)を用いてポリイミド層(b)を得る工程。
工程(2):前記ポリイミド層(b)の少なくとも一つの面上に、ポリアミック酸及び顔料を含有するポリイミド前駆体溶液(a)を用いてポリイミド層(a)を形成する工程。
【0019】
前記の工程(1)及び(2)は、工程(1)を経た後に工程(2)を行ってもよく、工程(1)及び(2)を同時に行ってもよい。具体的には、前記ポリイミド前駆体溶液(b)を基板上に流延した後に加熱し、ポリイミド層(b)からなる自己支持性フィルムを得、次いで、該自己支持性フィルムに前記ポリイミド前駆体溶液(a)を塗工した後に加熱する方法により多層ポリイミドフィルムを製造することができる(第1の製造方法)。また、前記ポリイミド前駆体溶液(b)と、前記ポリイミド前駆体溶液(a)とを共押出することにより支持体上に流延した後に加熱する方法でも多層ポリイミドフィルムを製造することができる(第2の製造方法)。
【0020】
(原料)
ポリイミド層(b)は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸成分と、p−フェニレンジアミンを70〜100モル%含む芳香族ジアミン成分とから得られるポリアミック酸を含有するポリイミド前駆体溶液(b)を用いて得られる。
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外の芳香族テトラカルボン酸成分として、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,4−ヒドロキノンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。
また、p−フェニレンジアミン以外の芳香族ジアミン成分として、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトリジン、4,4−ジアミノジフェニルエーテル、o−トリジン、m−トリジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等のベンゼン核が1〜2個のジアミン(ただし、2個のベンゼン核間に、エチレン基等の炭素数2以上のアルキレン基を有するものは含まない。)等を用いることができる。
【0021】
ポリイミド層(a)は、ポリアミック酸及び顔料を含有するポリイミド前駆体溶液(a)を用いて得られる。
顔料は、上述したものを用いることができる。
ポリイミド前駆体溶液(a)に含有されるポリアミック酸は、好ましくはピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1種以上を70〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸成分と、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル類及びビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類からなる群から選ばれる1種以上を70〜100モル%含む芳香族ジアミン成分とから得られる。ジアミノジフェニルエーテル類の具体例としては、
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられ、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類の具体例としては、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
ポリイミド層(a)に関して、前記以外の芳香族テトラカルボン酸成分としては、1,4−ヒドロキノンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。
また、前記以外の芳香族ジアミン成分としては、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトリジン、o−トリジン、m−トリジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等のベンゼン核が1〜3個のジアミン(ただし、2個のベンゼン核間に、エチレン基等の炭素数2以上のアルキレン基を有するものは含まない。)等を用いることができる。
【0022】
ポリイミド層(b)を構成するポリイミドとポリイミド層(a)を構成するポリイミドとは、同じ酸成分と芳香族ジアミン成分との組合せのポリイミドでもよいし、異なる組合せのポリイミドでもよい。
【0023】
(ポリアミック酸の調製)
ポリイミド前駆体溶液(a)及び(b)に含まれるポリアミック酸(ポリイミド前駆体)は、それぞれ上記の芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分との重合反応により得られる。ポリイミド前駆体溶液(a)及び(b)は有機極性溶媒を含有することが好ましく、前記重合反応は有機極性溶媒中で行われることが好ましい。
有機極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルスルホルアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン等のスルホン類を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
【0024】
ポリイミド前駆体溶液(a)及び(b)における全モノマーの濃度は、多層ポリイミドフィルムの製造方法に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液を流延する場合には、全モノマーの濃度は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは6〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。また、ポリイミド前駆体溶液(a)を塗工に用いる場合には、全モノマーの濃度は、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜8質量%である。
【0025】
前記の芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とを実質的に等モル或いはどちらかの成分を少し過剰にして前記有機極性溶媒に混合し、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下の反応温度にて約0.2〜60時間反応させることによりポリアミック酸(ポリイミド前駆体)溶液を得ることができる。
【0026】
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、使用する目的(塗工、流延など)や製造する目的に応じて適宜選択すればよく、取扱容易性の観点から、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)溶液は、30℃で測定した回転粘度が、好ましくは約0.1〜5000ポイズ、より好ましくは0.5〜2000ポイズ、更に好ましくは1〜2000ポイズ程度である。したがって、前記の重合反応は、生成するポリアミック酸溶液が上記のような粘度を示す程度にまで実施することが好ましい。
【0027】
ポリイミド前駆体溶液(a)及び/又はポリイミド前駆体溶液(b)には、ゲル化を制限する目的で、リン系安定剤、例えば亜リン酸トリフェニル、リン酸トリフェニル等をポリアミック酸重合時に固形分(ポリマー)濃度に対して0.01〜1%の範囲で添加することができる。
また、ポリイミド前駆体溶液(a)及び/又はポリイミド前駆体溶液(b)には、イミド化促進の目的で、ドープ液中に塩基性有機化合物を添加することができる。例えば、イミダゾール、2−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、置換ピリジンなどをポリアミック酸(ポリイミド前駆体)100質量部に対して、好ましくは0.0005〜0.1質量部、より好ましくは0.001〜0.02質量部の割合で使用することができる。これらは、比較的低温でポリイミドフィルムを形成するためにイミド化が不十分となることを避けるために使用することができる。
また、接着強度の安定化の目的で、ポリイミド前駆体溶液(熱圧着性ポリイミド原料ドープ)に有機アルミニウム化合物、無機アルミニウム化合物または有機スズ化合物を添加してもよい。例えば水酸化アルミニウム、アルミニウムトリアセチルアセトナートなどをポリアミック酸に対してアルミニウム金属として好ましくは1ppm以上、より好ましくは1〜1000ppmの割合で添加することができる。
【0028】
また、ポリイミド層(b)からなる自己支持性フィルムを製造する場合、ポリイミド前駆体溶液(b)には、必要に応じて有機又は無機の添加剤を添加することができる。
無機の添加剤としては、粒子状あるいは偏平状などの無機フィラーを挙げることができ、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機の粉末を挙げることができる。これらの無機の微粒子は二種以上を組み合せて使用してもよい。これらの無機微粒子は、任意の手段によってポリイミド前駆体溶液(b)中に均一に分散させることができる。
有機の添加剤としては、ポリイミド粒子、熱硬化性樹脂の粒子などを挙げることができる。
添加剤の使用量および形状(大きさ、アスペクト比)については、使用目的に応じて選択することができる。
【0029】
(第1の製造方法)
本発明の第1の製造方法においては、まず、前記ポリイミド前駆体溶液(b)を基板上に流延した後に加熱し、ポリイミド層(b)からなる自己支持性フィルムを得、次いで、該自己支持性フィルムの片面又は両面に、前記ポリイミド前駆体溶液(a)を塗工して自己支持性フィルムの片面又は両面にポリイミド前駆体溶液(a)を積層させ、得られる多層の自己支持性フィルムを加熱、乾燥してイミド化を行い、さらに最高加熱温度350℃〜600℃、好ましくは450〜590℃、より好ましくは490〜580℃、更に好ましくは500〜580℃、特に好ましくは520〜580℃で熱処理することが好ましい。これにより、フィルム全体として充分な機械的性質(引張弾性率)および熱的性質(線膨張係数)を有する多層ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0030】
[自己支持性フィルムの製造]
例えば、まずポリイミド前駆体溶液(b)を適当な支持体(例えば、金属、セラミック、プラスチック製のロール、または金属ベルト、あるいは金属薄膜テープが供給されつつあるロール、又はベルト)の表面上にダイなどを用いて流延して、好ましくは約10〜2000μm、より好ましくは20〜1000μm程度の均一な厚さの膜状態に形成する。次いで熱風、赤外線等の熱源を利用して好ましくは50〜210℃、より好ましくは60〜200℃に加熱して、有機極性溶媒を徐々に除去することにより、自己支持性になるまで前乾燥を行うことで、自己支持性フィルムを得ることができる。
ポリイミド前駆体溶液(b)を用いて自己支持性フィルムを製造する際に、ポリイミド前駆体のイミド化は熱イミド化でも、化学イミド化でもどちらでも行なうことができる。
自己支持性フィルムは、ポリイミド前駆体溶液(a)を自己支持性フィルムの表面にほぼ均質に、さらには均質に塗工できるような平滑な表面(片面或いは両面)を有することが好ましい。
【0031】
また、自己支持性フィルムの力学的性質、ポリイミド前駆体溶液(a)の塗工、ポリイミド層(a)とポリイミド層(b)との接着強度、ひびワレ等の発生防止等の観点から、自己支持性フィルムの加熱減量が20〜40質量%の範囲にあることが好ましく、自己支持性フィルムのイミド化率が8〜40%の範囲にあることが好ましい。
【0032】
なお、上記の「自己支持性フィルムの加熱減量」とは、測定対象のフィルムを420℃で20分間乾燥し、乾燥前の重量W1と乾燥後の重量W2とから次式によって求めた値である。
加熱減量(質量%)=[(W1−W2)/W1]×100
また、上記の「自己支持性フィルムのイミド化率」は、IR(ATR)で測定し、フィルムとフルキュア品との振動帯ピーク面積の比を利用して、イミド化率を算出することができる。振動帯ピークとしては、イミドカルボニル基の対称伸縮振動帯やベンゼン環骨格伸縮振動帯などを利用する。またイミド化率測定に関し、特開平9−316199号公報に記載のカールフィッシャー水分計を用いる手法もある。
【0033】
[塗工]
ポリイミド層(b)の自己支持性フィルムの片面又は両面にポリイミド前駆体溶液(a)を塗工し、必要なら乾燥して積層自己支持フィルムを得ることができる。
ポリイミド層(b)の自己支持性フィルムにポリイミド前駆体溶液(a)を塗工する場合、支持体より剥離させた自己支持性フィルム上にポリイミド前駆体溶液(a)を塗工してもよく、支持体より剥離する前の支持体上の自己支持性フィルムにポリイミド前駆体溶液(a)を塗工してもよい。
自己支持性フィルムの片面又は両面にポリイミド(a)を与えるポリイミド前駆体溶液(a)を均一に塗工することが好ましい。
自己支持性フィルムの片面又は両面にポリイミド(a)を与えるポリイミド前駆体溶液(a)を塗工する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、グラビアコート法、スピンコート法、シルクスクリーン法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などの任意の塗工方法を挙げることができる。
【0034】
(第2の製造方法)
本発明の第2の製造方法においては、前記ポリイミド前駆体溶液(b)と、前記ポリイミド前駆体溶液(a)とを共押出により支持体に流延して乾燥することにより、ポリイミド層(b)の片面又は両面にポリイミド層(a)が直接積層された少なくとも2層の積層自己支持性フィルムを得て、得られる積層自己支持性フィルムを加熱、乾燥してイミド化を行い、さらに最高加熱温度350℃〜600℃、好ましくは450〜590℃、より好ましくは490〜580℃、更に好ましくは500〜580℃、特に好ましくは520〜580℃で熱処理することが好ましい。これにより、フィルム全体として充分な機械的性質(引張弾性率)および熱的性質(線膨張係数)を有する多層ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0035】
[積層自己支持性フィルムの製造]
例えば、まずポリイミド前駆体溶液(b)とポリイミド前駆体溶液(a)とを適当な支持体(例えば、金属、セラミック、プラスチック製のロール、または金属ベルト、あるいは金属薄膜テープが供給されつつあるロール、又はベルト)の表面上に2層以上のダイなどを用いて共押出にて流延して、好ましくは約10〜2000μm、より好ましくは20〜1000μm程度の均一な厚さの膜状態に形成する。次いで熱風、赤外線等の熱源を利用して好ましくは50〜210℃、より好ましくは60〜200℃に加熱して、有機極性溶媒を徐々に除去することにより、自己支持性になるまで前乾燥を行い、該支持体より積層自己支持性フィルムを剥離することで、積層自己支持性フィルムを得ることができる。
ポリイミド前駆体溶液を用いて積層自己支持性フィルムを製造する際に、ポリイミド前駆体のイミド化は熱イミド化でも、化学イミド化でもどちらでも行なうことができる。
積層自己支持性フィルムの加熱減量及びイミド化率は、前記と同様である。
【0036】
積層自己支持フィルムは、ピンテンター、クリップ、金属などで固定して、加熱イミド化する。この加熱処理は、最終加熱温度が350〜600℃であることが好ましく、加熱温度条件は適宜選択することができる。加熱処理は、熱風炉、赤外線加熱炉などの種々の装置を使用して行うことができ、1段又は多段の加熱温度で加熱処理してもよい。
【0037】
<多層ポリイミドフィルムの物性、用途>
本発明の多層ポリイミドフィルムは、遮光性及び光反射性の観点から、波長550nmにおける光透過率が好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.1%以下である。
また、多層ポリイミドフィルム全体として、引張弾性率(MD)が好ましくは6〜12GPaであり、線膨張係数(50〜200℃)が10×10-6〜30×10-6cm/cm/℃であることが、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TABテープ等の電子部品の素材として好適に用いることができるために好ましい。
【0038】
本発明の多層ポリイミドフィルムは、そのまま、或いは必要であればポリイミド層(a)及び/又はポリイミド層(b)を、コロナ放電処理、低温プラズマ放電処理あるいは常圧プラズマ放電処理、化学エッチングなどによる表面処理をして用いることができる。
【0039】
本発明の多層ポリイミドフィルムは、耐熱性、機械特性に優れ、遮光性又は光反射性を有するため、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TABやCOF(Chip On Film)などのテープ等の電子部品の素材として用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例により制限されるものでない。
【0041】
(評価方法)
・光透過率(%)の測定:日立ハイテクノロジーズ社製U−2800形分光光度計を用い、波長550nmでの透過率を測定した。
・引張り強度(MPa)及び伸び(%)の測定:ASTM・D882に従って測定した。
【0042】
参考例1
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と当モル量のp−フェニレンジアミンとをN,N−ジメチルアセトアミド中で、30℃、3時間重合して、18質量%濃度のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液に、ポリアミック酸100質量部に対して0.1質量部のモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、次いでポリアミック酸1モルに対して0.05モルの1,2−ジメチルイミダゾール、さらにポリアミック酸100質量部に対して0.5質量部のシリカフィラー(平均粒径:0.08μm、日産化学社製、商品名:ST−ZL)を添加して均一に混合して、ポリイミド(b)の前駆体溶液組成物(B−1)を得た。
【0043】
参考例2
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と当モル量のp−フェニレンジアミンとをN,N−ジメチルアセトアミド中で、30℃、3時間重合して、18質量%濃度のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液に、さらにポリアミック酸100質量部に対して0.5質量部のシリカフィラー(平均粒径:0.08μm、日産化学社製、商品名:ST−ZL)、及び5重量部のカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:三菱カーボンブラック)を添加した後、均一に混合して、ポリイミド(a)の前駆体溶液組成物(A−1)を得た。
【0044】
参考例3
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と当モル量のp−フェニレンジアミンとをN,N−ジメチルアセトアミド中で、30℃、3時間重合して、3.0質量%濃度のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液に、さらにポリアミック酸100質量部に対して5重量部の非電導性カーボンブラック(三菱化学社製、商品名:三菱カーボンブラック)を添加した後、均一に混合して、ポリイミド(a)の前駆体溶液組成物(A−2)を得た。
【0045】
実施例1
三層ダイスを用い、中央の層に前駆体溶液組成物(B−1)を、加熱乾燥後のフィルム厚みが10μmとなるように、また両表面層に前駆体溶液組成物(A−2)を加熱乾燥後の厚みが各2μmとなるようにステンレス基板(支持体)上に連続的に流延し、140℃の熱風で乾燥を行い、支持体から剥離して積層自己支持性フィルムを得た。この積層自己支持性フィルムを、加熱炉で200℃から575℃に徐々に昇温して溶媒を除去し、イミド化を行って、多層ポリイミドフィルム(X−1)を得た。
この多層ポリイミドフィルム(X−1)の引張り強度、伸び、および光透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
実施例2
単層ダイスを用い、加熱乾燥後のフィルム厚みが10μmとなるように、前駆体溶液組成物(B−1)をステンレス基板(支持体)上に連続的に流延し、140℃の熱風で乾燥を行い、支持体から剥離して自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムの両面に、加熱乾燥後の厚みが1μmになるように前駆体溶液(A−2)を塗布した後、加熱炉で200℃から575℃に徐々に昇温して溶媒を除去し、イミド化を行って、多層ポリイミドフィルム(X−2)を得た。
この多層ポリイミドフィルム(X−2)の引張り強度、伸びおよび光透過率を測定した。
【0047】
実施例3
実施例2において、前記前駆体溶液組成物(A−2)を自己支持性フィルムのステンレス基板に接触していた面のみに塗工したこと以外は実施例2と同様にして厚み9μmの多層ポリイミドフィルム(X−3)を得た。
この多層ポリイミドフィルム(X−3)の引張り強度、伸びおよび光透過率を測定した。
【0048】
比較例1
単層ダイスを用い、加熱乾燥後のフィルム厚みが10μmとなるように、前駆体溶液組成物(B−1)をステンレス基板(支持体)上に連続的に流延し、140℃の熱風で乾燥を行い、支持体から剥離して自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムを加熱炉で200℃から575℃に徐々に昇温して溶媒を除去し、イミド化を行って、単層ポリイミドフィルム(Y−1)を得た。
この単層ポリイミドフィルム(Y−1)の引張り強度、伸びおよび光透過率を測定した。
【0049】
比較例2
比較例1において、前記ポリイミド前駆体溶液(B−1)を前駆体溶液組成物(A−1)に変更したこと以外は、比較例1と同様にして単層ポリイミドフィルム(Y−2)を得た。
この単層ポリイミドフィルム(Y−2)の引張り強度、伸びおよび光透過率を測定した。
【0050】
【表1】
【0051】
前駆体溶液組成物(B−1)のみを用いて得られた比較例1の単層ポリイミドフィルムは光透過率が不十分であり、前駆体溶液組成物(A−1)のみを用いて得られた比較例2の単層ポリイミドフィルムは引張り強度及び伸びが不十分であった。これに対し、実施例1〜3の多層ポリイミドフィルムは、引張り強度及び伸びに優れ、かつ光透過率が小さく遮光性を有するものであった。
なお、実施例1〜3を比較すると、カーボン含有ポリイミド層(ポリイミド層(a))と基材ポリイミド層(ポリイミド層(b))との厚み比率の違いにより、カーボン含有ポリイミド層(ポリイミド層(a))がより厚い実施例1のフィルムでは光透過性がより良好である一方、基材ポリイミド層(ポリイミド層(b))がより厚い実施例2及び3のフィルムでは引張り強度及び伸びが良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の多層ポリイミドフィルムは、耐熱性、機械特性に優れ、かつ、遮光性又は光反射性を有するため、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TABやCOFなどのテープ等の電子部品の素材として好適に使用できる。