特許第5648634号(P5648634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5648634
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20141211BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20141211BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20141211BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20141211BHJP
   C08G 69/26 20060101ALN20141211BHJP
【FI】
   C08L77/06
   C08K5/18
   C08K5/36
   F16L11/04
   !C08G69/26
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-518564(P2011-518564)
(86)(22)【出願日】2010年6月9日
(86)【国際出願番号】JP2010059794
(87)【国際公開番号】WO2010143668
(87)【国際公開日】20101216
【審査請求日】2013年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2009-138490(P2009-138490)
(32)【優先日】2009年6月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】三田寺 淳
(72)【発明者】
【氏名】黒河 優志
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−143447(JP,A)
【文献】 特開2004−181629(JP,A)
【文献】 特開2008−056766(JP,A)
【文献】 特開昭59−027948(JP,A)
【文献】 特開2006−028327(JP,A)
【文献】 特開2007−039577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/06
C08K 5/18
C08K 5/36
F16L 11/04
C08G 69/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタキシリレンジアミン単位を30モル%以上含むジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド(A)、芳香族第2級アミン系化合物(B)、及び有機硫黄系化合物(C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記芳香族第2級アミン系化合物(B)と有機硫黄系化合物(C)とのポリアミド樹脂組成物中の含有量比((B)/(C):質量比)が0.05〜15であり、
23℃、75%RHにおける酸素透過係数が1cc・mm/m2・day・atm以下であるポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記ジアミン単位が、メタキシリレンジアミン単位を50モル%以上含む請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ジアミン単位が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含む請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記ジアミン単位が、メタキシリレンジアミン単位およびパラキシリレンジアミン単位を含む請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記ジアミン単位が、メタキシリレンジアミン単位およびパラキシリレンジアミン単位を含み、さらにジアミン単位中のメタキシリレンジアミン単位の割合が30モル%以上である請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記ジカルボン酸単位が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上含む請求項1〜のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
前記ジカルボン酸単位が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及びイソフタル酸単位を含む請求項1〜のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
前記ジカルボン酸単位が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及びイソフタル酸単位を含み、さらにジカルボン酸単位中のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位の割合が50モル%以上である請求項1〜のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
前記ジカルボン酸単位が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及びイソフタル酸単位を含み、さらにジカルボン酸単位中のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位の割合が70モル%以上である請求項1〜のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】
前記直鎖脂肪族ジカルボン酸単位が、アジピン酸単位である請求項のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項11】
前記直鎖脂肪族ジカルボン酸単位が、セバシン酸単位である請求項のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項12】
芳香族第2級アミン系化合物(B)が、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物及びジナフチルアミン骨格を有する化合物より選ばれる1種以上である請求項1〜1のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項13】
芳香族第2級アミン系化合物(B)が、ジフェニルアミン骨格を有する化合物及びフェニルナフチルアミン骨格を有する化合物より選ばれる1種以上である請求項1〜1のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項14】
芳香族第2級アミン系化合物(B)が、N−フェニル−1−ナフチルアミン、p,p′−ジアルキルジフェニルアミン(アルキル基の炭素数:8〜14)、オクチル化ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、2,2′−ジナフチルアミン、1,2′−ジナフチルアミン及び1,1′−ジナフチルアミンから選ばれる1種以上である請求項1〜1のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項15】
芳香族第2級アミン系化合物(B)が、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン及び4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンから選ばれる1種以上である請求項1〜1のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項16】
有機硫黄系化合物(C)が、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物及び有機チオ酸系化合物より選ばれる1種以上である請求項〜1のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項17】
有機硫黄系化合物(C)が、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物及び有機チオ酸系化合物より選ばれる1種以上である請求項〜1のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項18】
有機硫黄系化合物(C)が、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)より選ばれる1種以上である請求項〜1のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項19】
有機硫黄系化合物(C)が、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート及び2−メルカプトベンズイミダゾールより選ばれる1種以上である請求項〜1のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を含んでなる成形品。
【請求項21】
ホース又はチューブである請求項2に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱老化性及びガスバリア性に優れたポリアミド樹脂組成物及びそれを含んでなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、強度、剛性、耐溶剤性、成形性などの特性が優れることから、自動車や電気電子部品などの射出成形材料や、食品、飲料、薬品、電子部品等の包装資材として使用されている。中でも、ポリマー主鎖にメタキシレン基を含有するポリアミドは、剛性が高く、各種ガスや薬品などに対するバリア性も優れていることから、射出成形材料や包装資材として広く用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリマー主鎖にメタキシレン基を含有するポリアミドは、構造的にベンジルメチレン位でラジカルが生成しやすいことから、ナイロン6等のポリアミドと比較すると、熱安定性や耐熱老化性が低いものである。そのため、高温環境化などの過酷な使用環境や条件によっては、メタキシレン基を含有するポリアミドを成形材料として適用することが困難な用途が存在する。
【0004】
近年、ガスバリア性及び耐熱老化性が要求される自動車部品等の分野において、ポリアミドの利用が検討されているが、ポリマー主鎖にメタキシレン基を含有するポリアミドは上述の理由により、適用が困難であった。
【0005】
このため従来より、ポリアミドの熱安定性や耐熱老化性を改善するための提案が行われている。例えば特許文献1には、ポリマー主鎖にメタキシレン基を含有するポリアミドと銅化合物、ハロゲン化物、ヒンダードフェノール及び/又はヒンダードアミン、並びに有機リン系化合物とからなる耐熱性ポリアミドが開示されている。しかしながら、この方法は延伸された繊維に適した方法であって、自動車部品等に用いられる射出成形品や押出成形品の耐熱老化性向上には不十分な手法であった。
【0006】
また、例えば特許文献2には、ポリマー主鎖にメタキシレン基を含有するポリアミドを成形加工する際に、滑剤、有機リン系安定剤、ヒンダードフェノール化合物、及びヒンダードアミン類化合物から選ばれた少なくとも1種類以上を0.005〜0.5質量部添加することにより、ポリアミドのゲル化を防止する方法が提案されている。しかしながら、この方法は成形加工中のゲル化を防止する手法であって、成形後の耐熱老化性向上には不十分な手法であった。
【0007】
また、例えば特許文献3には、精密部品用成形材料として、ポリアミドに熱安定剤として芳香族第2級アミン系化合物を含有させる例が記載されている。しかしながら、この手法はナイロン66に適した手法ではあるが、ポリマー骨格の異なるポリアミドに対しては効果が検討されていなかった。
このように、特に前記ガスバリア性に優れるポリアミドに関しては、ガスバリア性を維持しつつ耐熱老化性を向上させる手法が今だ見出されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−130497号公報
【特許文献2】特開2001−164109号公報
【特許文献3】特開2006−28327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決しガスバリア性と耐熱老化性とに優れるポリマー主鎖にメタキシレン基を含有するポリアミド樹脂組成物及びそれを含有してなる成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、メタキシリレンジアミン単位を30モル%以上含むジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド(A)、及び芳香族第2級アミン系化合物(B)を含むポリアミド樹脂組成物であって、23℃、75%RHにおける酸素透過係数が1cc・mm/m2・day・atm以下であるポリアミド樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガスバリア性と耐熱老化性とに優れたものであり、それを用いてなる成形品は、ガスバリア性と耐熱老化性が要求される自動車部品等に利用でき、その工業的価値は非常に高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ポリアミド樹脂組成物>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、メタキシリレンジアミン単位を30モル%以上含むジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド(A)、及び芳香族第2級アミン系化合物(B)を含んでなり、23℃、75%RHにおける酸素透過係数が1cc・mm/m2・day・atm以下である。なお、本発明において、「ジアミン単位」とは、ポリアミドの原料ジアミン成分に由来する構成単位を指し、「ジカルボン酸単位」とは、ポリアミドの原料ジカルボン酸に由来する構成単位を指す。ポリアミド樹脂組成物は、さらに有機硫黄系化合物(C)を含むことが好ましい。
【0013】
本発明で使用するポリアミド(A)は、メタキシリレンジアミン単位を30モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むポリアミドである。ジアミン単位中のメタキシリレンジアミン単位を30モル%以上とすることにより、ポリアミド(A)のガスバリア性及び高湿度下でのガスバリア性を良好とすることができる。ポリアミド(A)としては、例えば、メタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と各種ジカルボン酸成分とを重縮合することにより得られるポリアミド等が挙げられる。これらのポリアミドは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。該ポリアミドは、バリア性能が高く、耐熱性、成形加工性が良好である。ポリアミド(A)は、一種類もしくは複数の樹脂をブレンドして使用することができる。
【0014】
また、ジアミン単位として、メタキシリレンジアミン単位にパラキシリレンジアミン単位を加えることができる。メタキシリレンジアミン単位にパラキシリレンジアミン単位を加えることで、ポリアミド(A)の融点やガラス転移点、耐熱性を向上させることができる。パラキシリレンジアミン単位は、ジアミン単位の70モル%を超えない範囲であれば、任意の割合で添加して耐熱性、バリア性や成型加工性をコントロールすることができる。
【0015】
ポリアミド(A)の製造に使用できるメタキシリレンジアミン以外のジアミン成分としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、及びビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、及びビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本発明で使用するポリアミド(A)は、ジカルボン酸単位として炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含むポリアミドである。ジカルボン酸単位中の炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上とすることにより、ポリアミド(A)のガスバリア性及び高湿度下でのガスバリア性を良好とすることができる。
【0017】
ポリアミド(A)の製造に使用できるジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、及びドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類などを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
また本発明で使用するポリアミド(A)は、ジカルボン酸成分として炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸との混合物を使用することができる。上記混合物を使用することにより、ポリアミド(A)の、耐熱性、成形加工性を向上させることができる。
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸との混合比(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸/イソフタル酸:モル比)は、 50/50〜99/1が好ましく、70/30〜95/5がより好ましい。
【0019】
さらに、ジカルボン酸成分としてアジピン酸及びセバシン酸の混合物を使用することで耐熱性やガスバリア性、結晶性を任意にコントロールできる。結晶性を低下させたい場合、あるいは非晶状態とする場合は、アジピン酸とセバシン酸との混合比(セバシン酸/アジピン酸:モル比)は80/20〜30/70が好ましく、70/30〜40/60がより好ましい。ガスバリア性を重視する場合は、前記混合比はセバシン酸の混合割合を下げることが効果的であり、具体的には50/50以下が好ましく、40/60以下がより好ましく、30/70以下がさらに好ましい。耐熱性を重視する場合は、前記混合比はセバシン酸の混合割合を下げることが効果的であり、具体的には60/40以下が好ましく、40/60以下がより好ましく、30/70以下がさらに好ましい。
【0020】
前記ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド(A)の製造には、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、及びアミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
【0021】
本発明で利用できるポリアミド(A)としては、例えば、ポリメタキシリレンイソフタラミド(PA−MXDI)、カプロラクタム/メタキシリレンイソフタラミドコポリマー(PA−6/MXDI)などを例示することができる
【0022】
本発明で好ましく利用できるポリアミド(A)としては、主としてメタキシリレンジアミンを含むジアミンとアジピン酸とを重縮合して得られるポリアミド(以下、「ポリアミド(a)」とする)、主としてメタキシリレンジアミンを含むジアミンとセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミド(以下、「ポリアミド(b)」とする)、及び主としてメタキシリレンジアミンを含むジアミンとアジピン酸及びセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミド等が例示される。ここで、前記「主として」とは含有量がジアミン全体の50モル%以上であることを意味する。
例えば、ポリアミド(a)としてポリメタキシリレンアジパミドを、ポリアミド(b)としてポリメタキシリレンセバサミドを例示できる。さらに、ポリアミド(A)として、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとアジピン酸とを重縮合して得られるポリアミド、及びメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミドを例示できる。
【0023】
また、本発明で好ましく利用できるポリアミド(A)として、前記ポリアミド(a)とポリアミド(b)との混合物を例示することができる。前記ポリアミド(a)及びポリアミド(b)を混合することで、結晶性を維持したまま、耐熱性やガスバリア性を任意にコントロールできる。ガスバリア性を重視する場合は、ポリアミド(a)とポリアミド(b)との混合比(ポリアミド(b)/ポリアミド(a):質量比)はポリアミド(b)の混合割合を下げるのが効果的であり、より具体的には50/50以下が好ましく、40/60以下がより好ましく、30/70以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明で好ましく利用できるポリアミド(A)としてより具体的には、メタキシリレンジアミンを30モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むジアミン成分各々に対して、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含むジカルボン酸成分を各々重縮合して得られるポリアミドを例示することができる。
上記炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、及びドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示できるが、これらの中でもアジピン酸及びセバシン酸が好ましい。
【0025】
本発明で好ましく利用できるポリアミド(A)として、具体的には、メタキシリレンジアミン単位とパラキシリレンジアミン単位とを含むジアミン酸単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドが例示される。ポリアミド(A)としてより好ましくは、メタキシリレンジアミン単位を30モル%以上、及びパラキシリレンジアミン単位を1〜70モル%含むジアミン単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドが例示される。
【0026】
また本発明で好ましく利用できるポリアミド(A)として、具体的には、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位とイソフタル酸単位とを含むジカルボン酸単位と、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とからなるポリアミドが例示される。より具体的には、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上及びイソフタル酸単位を1〜50モル%含むジカルボン酸単位と、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とからなるポリアミドが例示され、より好ましくは炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上、及びイソフタル酸単位を1〜30モル%含むジカルボン酸単位とメタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とからなるポリアミドが例示できる。
【0027】
ポリアミド(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。ポリアミドの重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。例えばポリアミド(A)は、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とからなるナイロン塩を、水の存在下に加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、ポリアミド(A)は、メタキシリレンジアミンを溶融状態のアジピン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な溶融状態で保つために、メタキシリレンジアミンをアジピン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0028】
また、ポリアミド(A)は、溶融重合法により製造された後に、固相状態で加熱処理する固相重合を行って製造されても良い。ポリアミド(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。
【0029】
ポリアミド(A)の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定によるPMMA(ポリメタクリル酸メチル)換算値として、18000〜70000が好ましく、より好ましくは、20000〜50000である。この範囲であると、耐熱性、成形加工性が良好である。
【0030】
本発明で使用するポリアミド(A)の融点は、150〜300℃が好ましい。この範囲であると、芳香族第2級アミン系化合物(B)と混合したときの樹脂の押出機中での融解が容易となり、生産性、成形加工性が良好となる。
【0031】
なお、融点、ガラス転移点は、DSC(示差走査熱量測定)法により測定できる。測定には、例えば、島津製作所(株)製DSC−60を用い、サンプル量は約5mgとし、昇温速度は10℃/分の条件で室温から300℃まで加熱して測定することができる。雰囲気ガスは窒素を30ml/minで流せば良い。ガラス転移点としては、いわゆる中点温度(Tgm)を採用した。なお、Tgmとは広く知られているように、DSC曲線において、ガラス状態ならびに過冷却状態(ゴム状態)のベースラインの接線と転移のスロープの接線との交点の中点温度である。
【0032】
ポリアミド(A)には、溶融成形時の加工安定性を高めるため、あるいはポリアミド(A)の着色を防止するためにリン化合物を添加することができる。リン化合物としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含むリン化合物が好適に使用され、例えば、ナトリウム、マグネシウム、及びカルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩、次亜リン酸塩、並びに亜リン酸塩が挙げられるが、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を使用したものがポリアミドの着色防止効果に特に優れるため好ましく用いられる。ポリアミド中のリン化合物の濃度は、リン原子として好ましくは1〜1000ppm、より好ましくは1〜500ppm、さらに好ましくは1〜350ppm、特に好ましくは1〜200ppmである。
【0033】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド(A)以外の構成成分として芳香族2級アミン化合物(B)を含有する。芳香族2級アミン化合物(B)の中でもジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物及びジナフチルアミン骨格を有する化合物が好ましく、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、およびフェニルナフチルアミン骨格を有する化合物を有する化合物がさらに好ましい。具体的には、p,p'−ジアルキルジフェニルアミン(アルキル基の炭素数:8〜14)、オクチル化ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン及びN−フェニル−N′−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等のジフェニルアミン骨格を有する化合物、N−フェニル−1−ナフチルアミン及びN,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のフェニルナフチルアミン骨格を有する化合物、及び2,2′−ジナフチルアミン、1,2′−ジナフチルアミン、及び1,1′−ジナフチルアミン等のジナフチルアミン骨格を有する化合物、あるいはこれらの混合物が例示できるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン及びN,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましく、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン及び4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが特に好ましい。
【0034】
これらの芳香族2級アミン化合物(B)の配合量は、ポリアミド(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。さらには0.1〜2.0質量部であることがより好ましく、0.2〜1.0質量部であることが特に好ましい。配合量が0.01〜5質量部の範囲であると、耐熱老化性向上の効果があり、成形品の表面が良好であるため好ましい。
【0035】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、さらに有機硫黄系化合物(C)を含有することが好ましい。有機硫黄系化合物の中でもメルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物、及び有機チオ酸系化合物が好ましく、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、及び有機チオ酸系化合物がさらに好ましい。具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、及び2−メルカプトベンズイミダゾールの金属塩等のメルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等の有機チオ酸系化合物、ジエチルジチオカルバミン酸の金属塩、及びジブチルジチオカルバミン酸の金属塩等のジチオカルバミン酸系化合物、並びに1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素、及びトリブチルチオ尿素等のチオウレア系化合物、あるいはこれらの混合物が例示できるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、及び2−メルカプトベンズイミダゾールがより好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が特に好ましい。
【0036】
これらの有機硫黄系化合物(C)の配合量は、ポリアミド(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。さらには0.1〜2.0質量部であることがより好ましく、0.2〜1.0質量部であることが特に好ましい。配合量が0.01〜5質量部の範囲であると、耐熱老化性向上の効果があり、成形品の表面が良好であるため好ましい。
【0037】
上記芳香族第2級アミン系化合物(B)及び有機硫黄系化合物(C)としては、1種又は2種以上の芳香族第2級アミン系化合物(B)を添加してもよいし、1種又は2種以上の有機硫黄系化合物(C)を添加してもよい。さらに、芳香族第2級アミン系化合物(B)及び有機硫黄系化合物(C)を併用することが好ましい。芳香族第2級アミン系化合物(B)及び有機硫黄系化合物(C)を併用することによって、それぞれ単独で使用した場合よりも、ポリアミド樹脂組成物の耐熱老化性が良好となる。
【0038】
より具体的な芳香族第2級アミン系化合物(B)及び有機硫黄系化合物(C)の好適な組み合わせとして、芳香族第2級アミン系化合物(B)が4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンおよびN,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選ばれる少なくとも1種と、有機硫黄系化合物(C)として、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール、及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)から選ばれる少なくとも1種との組み合わせが挙げられる。さらに、芳香族第2級アミン系化合物(B)がN,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、有機硫黄系化合物(C)がペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネートの組み合わせがより好ましい。
【0039】
また、上記芳香族第2級アミン系化合物(B)と有機硫黄系化合物(C)とポリアミド樹脂組成物中の含有量比((B)/(C):質量比)は0.05〜15であることが好ましく、0.1〜5.0であることがより好ましく、0.2〜2.0がさらに好ましい。
第2級アミン系化合物(B)と有機硫黄系化合物(C)とのポリアミド樹脂組成物中の含有量比を0.05〜15の範囲とすることにより、バリア性を維持しつつ耐熱老化性を効率的に向上させることができる。
【0040】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で、ポリアミド(A)以外のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、及びポリカーボネート等の樹脂を一種もしくは複数ブレンドできる。
中でも、ポリアミド(A)以外のポリアミドを好ましくブレンドでき、より好ましくは、脂肪族ポリアミド樹脂をブレンドできる。脂肪族ポリアミド樹脂は、成形品の機械物性を改善できることから好ましく用いられる。脂肪族ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、及びナイロン666等を単独又は複数以上を使用することができる。
【0041】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、無機充填材を含んでも良い。無機充填材を用いることによって、成形品の剛性、寸法安定性を向上させることができる。無機充填材は、繊維状、粉末状、粒状、板状、クロス状、マット状を有する種々の充填材であり、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、カタルボ、ワラステナイト、シリカ、アルミナ、珪藻土、クレー、カオリン、マイカ、粒状ガラス、ガラスフレーク、中空ガラス、石膏、ベンガラ、金属繊維、二酸化チタン、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、銅、ステンレス、酸化亜鉛、及び金属ウィスカーなどが挙げられる。
【0042】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、艶消剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、及び離型剤等の添加剤等を加えることができる。
【0043】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、23℃、75%RHにおける酸素透過係数が1cc・mm/m2・day・atm以下であることが必要である。当該酸素透過係数が1以下であると、フロンや二酸化炭素、水素、アルコール等各種ガスに対するガスバリア性が良好である。酸素透過係数は、好ましくは0.7cc・mm/m2・day・atm以下、より好ましくは、0.5cc・mm/m2・day・atm以下である。
【0044】
<成形品>
本発明のポリアミド樹脂組成物を含んでなる成形品は、ガスバリア性及び耐熱老化性を兼ね備えており、各種自動車部品、電気製品部品等に利用でき好ましい。特に、ポリアミド樹脂組成物を含んでなる成形品としては、ホース又はチューブが好ましく使用できる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において各種測定は以下の方法により行った。
【0046】
(1)ガスバリア性
23℃、75%RHの雰囲気下にて、JIS K7126に準じてフィルムの酸素透過係数(cc・mm/m2・day・atm)を測定した。測定は、モダンコントロールズ社製、OX−TRAN2/21を使用した。値が低いほどガスバリア性が良好であることを示す。
【0047】
(2)耐熱老化性
まずフィルムに対して熱風乾燥機にて130℃、72hrの熱処理を行った。次に、熱処理前後のフィルムの引張特性をJIS K7127に準じて試験し、破断時の応力(MPa)を求めた。なお、装置は東洋精機株式会社製ストログラフを使用し、試験片幅を10mm、チャック間距離を50mm、引張速度を50mm/minとし、測定温度を23℃、測定湿度を50%RHとして測定した。熱処理前後の破断時の応力の比を引張強度維持率とし、下記式(1)より引張強度維持率(%)を算出した。この引張強度維持率が高いほど耐熱老化性に優れることを意味する。
引張強度維持率(%)=〔熱処理後のフィルムの破断時応力(MPa)/熱処理前のフィルムの破断時応力(MPa)〕×100・・・(1)
【0048】
(3)ポリアミドの融点、ガラス転移点
島津製作所(株)製DSC−60を用いて、示差走査熱量測定(DSC)により求めた。測定条件は、約5mgのサンプルを10℃/minの条件で昇温し、300℃に到達した時点で急冷し、再び10℃/minの条件で昇温した。
【0049】
(4)数平均分子量
東ソー(株)製HLC−8320GPCを用いて、GPC測定によりPMMA換算値として求めた。なお、測定用カラムはTSKgel SuperHM−Hを用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウムを10mmol/l溶解したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、測定温度は40℃とした。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成した。
【0050】
<製造例1>
(ポリアミド(A1)の合成)
反応缶内でセバシン酸(伊藤製油製、TAグレード)を170℃にて加熱し溶融した後、内容物を攪拌しながら、メタキシリレンジアミン(MXDA、三菱ガス化学(株)製)をセバシン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を240℃まで上昇させた。滴下終了後、260℃まで昇温した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットをタンブラーに仕込み、減圧下で固相重合し、分子量を調整したポリアミド(A1)を得た。
ポリアミド(A1)の融点は191℃、ガラス転移点は60℃、数平均分子量は30000であった。酸素透過係数は0.8cc・mm/m2・day・atmであった。
【0051】
<製造例2>
(ポリアミド(A2)の合成)
アジピン酸(ローディア製)を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(PXDA、三菱ガス化学(株)製)とメタキシリレンジアミンとのモル比(PXDA/MXDA)が3:7の混合ジアミンを、ジアミンとジカルボン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を上昇させた。滴下終了後、所定の粘度になるまで攪拌、反応を続けた後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド(A2)を得た。ポリアミド(A2)の融点は258℃、ガラス転移点は90℃、数平均分子量は25000であった。酸素透過係数は0.15cc・mm/m2・day・atmであった。
【0052】
<製造例3>
(ポリアミド(A3)の合成)
製造例2において、アジピン酸の代わりにセバシン酸を用いた以外は、製造例2と同様にしてポリアミド(A3)を合成した。ポリアミド(A3)の融点は215℃、ガラス転移点は63℃、数平均分子量は19000、酸素透過係数は0.8cc・mm/m2・day・atmであった。
【0053】
<製造例4>
(ポリアミド(A4)の合成)
製造例2において、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンとのモル比(PXDA/MXDA)が6:4の混合ジアミンを用いた以外は、製造例2と同様にしてポリアミド(A4)を合成した。ポリアミド(A4)の融点は288℃、ガラス転移点は95℃、数平均分子量は21000、酸素透過係数は0.3cc・mm/m2・day・atmであった。
【0054】
<製造例5>
(ポリアミド(A5)の合成)
アジピン酸とイソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル(株)製)とのモル比が9:1の混合ジカルボン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、メタキシリレンジアミンを、ジアミンとジカルボン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を上昇させた。滴下終了後、所定の粘度になるまで攪拌、反応を続けた後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットをタンブラーに仕込み、減圧下で固相重合し、分子量を調整したポリアミド(A5)を得た。
ポリアミド(A5)の融点は226℃、ガラス転移点は94℃、数平均分子量は48000、酸素透過係数は0.13cc・mm/m2・day・atmであった。
【0055】
<製造例6>
(ポリアミド(A6)の合成)
製造例3において、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンとのモル比(PXDA/MXDA)が4:6の混合ジアミンを用いた以外は、製造例3と同様にしてポリアミド(A6)を合成した。ポリアミド(A6)の融点は221℃、ガラス転移点は64℃、数平均分子量は23000、酸素透過係数は0.9cc・mm/m2・day・atmであった。
【0056】
<製造例7>
(ポリアミド(A7)の合成)
製造例3において、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンとのモル比(PXDA/MXDA)が2:8の混合ジアミンを用いた以外は、製造例3と同様にしてポリアミド(A7)を合成した。ポリアミド(A7)の融点は207℃、ガラス転移点は62℃、数平均分子量は28000、酸素透過係数は0.8cc・mm/m2・day・atmであった。
【0057】
<製造例8>
(ポリアミド(A8)の合成)
製造例3において、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンとのモル比(PXDA/MXDA)が5:5の混合ジアミンを用いた以外は、製造例3と同様にしてポリアミド(A8)を合成した。ポリアミド(A8)の融点は227℃、ガラス転移点は66℃、数平均分子量は18000、酸素透過係数は1.0cc・mm/m2・day・atmであった。
【0058】
<実施例1>
アジピン酸とメタキシリレンジアミンとを重縮合してなるポリアミド(N−MXD6、三菱ガス化学(株)製、MXナイロン グレードS6007)100質量部と、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(大内新興化学工業(株)製、ノクラックwhite)0.2質量部とをドライブレンドし、直径30mmのスクリュー及びTダイを備える二軸押出機にて押出成形し、100μm厚のフィルムを得た。
上記フィルムを用いて、前記ガスバリア性、耐熱老化性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0059】
<実施例2〜14、16〜18>
実施例1において、ポリアミド樹脂組成物を各々表1に記載のものとした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0060】
<比較例1〜6>
実施例1において、二軸押出機に投入して押出成形するポリアミド及び添加剤を、各々表1に記載のものとした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0061】
<実施例15>
実施例2で用いたポリアミド及び添加剤とナイロン6(宇部興産(株)製 グレード:1020B)とを、3:7の質量比(ポリアミド及び添加剤/ナイロン6)でドライブレンドし(ナイロン6添加量はポリアミド樹脂100質量部に対して233.8質量部)、直径25mmのスクリュー及びダイを備える単軸押出機にて成形し、200μm厚のチューブ状の成形品を得た。この成形品から引張り強度測定用の試験片を切り出し、130℃、72hrの熱処理を行った。熱処理後の試験片の引張強度維持率は92%であった。また酸素透過係数は0.45cc・mm/m2・day・atmであった。
【0062】
尚、表1記載の略号は、各々以下の通りである。
・A1:製造例1で得られたポリアミド(A1)
・A2:製造例2で得られたポリアミド(A2)
・A3:製造例3で得られたポリアミド(A3)
・A4:製造例4で得られたポリアミド(A4)
・A5:製造例5で得られたポリアミド(A5)
・A6:製造例6で得られたポリアミド(A6)
・A7:製造例7で得られたポリアミド(A7)
・A8:製造例8で得られたポリアミド(A8)
・N−MXD6(S6007):アジピン酸とメタキシリレンジアミンとを重縮合してなるポリアミド(三菱ガス化学(株)製、MXナイロン グレードS6007、融点:240℃、数平均分子量:45000)
・N−MXD6(S6121):アジピン酸とメタキシリレンジアミンとを重縮合してなるポリアミド (三菱ガス化学(株)製、MXナイロン グレードS6121、融点:240℃、数平均分子量:65000)
・B1:N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(大内新興化学工業(株)製、ノクラックwhite)
・B2:4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化工業(株)製、ノクラックCD)
・C1:ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(住友化学(株)製、Sumilizer TP−D)
・C2:2−メルカプトベンズイミダゾール(住友化学(株)製、Sumilizer MB)
・C3:ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート(住友化学(株)製、Sumilizer TPM)
・D1:3,9−Bis[2−〔3−(3−tert−butyl−4−hydroxy−5−methylphenyl)propionyloxy〕−1,1−dimethylethyl]−2, 4, 8, 10−tetraoxaspiro[5・5]undecane(住友化学(株)製、Sumilizer GA−80)
・D2:ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバガイギー製、イルガノックス1010)
・ナイロン6:宇部興産(株)製、グレード1020B
【0063】
以上の実施例で示したように、ポリアミド(A)と芳香族第2級アミン系化合物(B)とを含むポリアミド樹脂組成物は、非常に優れたバリア性と耐熱老化性を兼ね備えているのに対し、特定の条件を満たさないポリアミド樹脂組成物等は、耐熱老化性に劣るものであった。
【0064】
【表1】