特許第5648636号(P5648636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5648636光学材料の製造方法、光学材料および光学レンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5648636
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】光学材料の製造方法、光学材料および光学レンズ
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/38 20060101AFI20141211BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   C08G18/38 Z
   G02B1/04
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-522801(P2011-522801)
(86)(22)【出願日】2010年7月12日
(86)【国際出願番号】JP2010061753
(87)【国際公開番号】WO2011007749
(87)【国際公開日】20110120
【審査請求日】2013年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2009-167939(P2009-167939)
(32)【優先日】2009年7月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】堀越 裕
(72)【発明者】
【氏名】戸井 憲一
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−043526(JP,A)
【文献】 特開2008−101190(JP,A)
【文献】 特開2005−121679(JP,A)
【文献】 特開2004−175726(JP,A)
【文献】 特開2005−298742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物、および(e)化合物を原料とする光学材料の製造法であって、下記第1工程から第5工程を経ることを特徴とする光学材料の製造方法。
第1工程 (a)化合物に(b)化合物を溶解させて第1液を得る工程。
第2工程 (d)化合物の一部を混合させた(e)化合物を第1工程で得られた第1液に添加し、混合させて第2液を得る工程。
第3工程 (c)化合物を第2工程で得られた第2液に添加し、得られた混合物を減圧下で反応させて反応混合物を得る工程。
第4工程 残りの(d)化合物を第3工程で得られた前記反応混合物に添加し、混合させ、光学材料用樹脂組成物を得る工程。
第5工程 第4工程で得られた光学材料用樹脂組成物を注型し、重合させて光学材料を得る工程。
(a)化合物:下記(1)式で表される構造を有する化合物
【化1】
(b)化合物:硫黄
(c)化合物:m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、およびp−テトラメチルキシリレンジイソシアネートの中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物
(d)化合物:ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジメルカプトプロパン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1−チアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1−チアン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)スルフィド、および3,4−チオフェンジチオールの中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物
(e)化合物:ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、およびテトラキス(3−メルカプトチオメチル)メタンの中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物
【請求項2】
第2工程において、(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物および(e)化合物の総量を100重量部とした時、(d)化合物の一部が2重量部以下の割合で前記(e)化合物と混合されていることを特徴とする請求項1に記載の光学材料の製造方法。
【請求項3】
第3工程において、前記混合物中の(e)化合物の5〜30%を(c)化合物と反応させること特徴とする請求項1に記載の光学材料の製造方法。
【請求項4】
第3工程において、反応温度を10℃から20℃、反応時間を2時間から4時間とすることを特徴とする請求項3に記載の光学材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基盤、フィルター等の光学材料、特に、眼鏡用プラスチックレンズを製造する方法、光学材料および光学レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは軽量かつ靭性に富み、染色も容易である。プラスチックレンズに特に要求される性能は、低比重、高透明性および低黄色度、光学性能として高屈折率と高アッベ数、高耐熱性、高強度などである。高屈折率はレンズの薄肉化を可能とし、高アッベ数はレンズの色収差を低減する。近年、高屈折率と高アッベ数を目的として、硫黄原子および/またはセレン原子を有する有機化合物が数多く報告されている。中でも硫黄原子を有するポリエピスルフィド化合物は屈折率とアッベ数のバランスが良いことが知られている。このため、ポリエピスルフィド化合物に、屈折率を維持するために硫黄を導入させ、耐衝撃性を向上させるためにチオウレタンを導入させた光学材料が報告されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、ポリエピスルフィド化合物に、硫黄およびチオウレタンを導入させた光学材料においては、その製造時において、発泡や発熱といった問題がある。このため、これらの問題を抑制するために、エピスルフィド化合物と硫黄原子との予備重合物と、イソシアネート基を有する化合物とメルカプト基を有する化合物との予備重合物とを反応させて光学材料を製造する方法が報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−122701号公報
【特許文献2】特開2004−339329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記光学材料、特に眼鏡用プラスチックレンズの製造においては、脈理や白濁といった不良要因による歩留まりの低下があり、その改善が必要であった。
【0006】
本発明の課題は、高屈折率を有する光学材料を製造する際、白濁や脈理といった不良要因による歩留まりの低下を改善できる光学材料の製造方法、光学材料および光学レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物、(e)化合物を原料とする光学材料の製造方法が、下記第1工程から第5工程を経ることで、得られる光学材料において、脈理ならびに白濁といった不良要因による歩留まりの低下を改善できることを見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.下記(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物、および(e)化合物を原料とする光学材料の製造法であって、下記第1工程から第5工程を経ることを特徴とする光学材料の製造方法。
第1工程 (a)化合物に(b)化合物を溶解させて第1液を得る工程。
第2工程 (d)化合物の一部を混合させた(e)化合物を第1工程で得られた第1液に添加し、混合させて第2液を得る工程。
第3工程 (c)化合物を第2工程で得られた第2液に添加し、得られた混合物を減圧下で反応させて反応混合物を得る工程。
第4工程 残りの(d)化合物を第3工程で得られた前記反応混合物に添加し、混合させ、光学材料用樹脂組成物を得る工程。
第5工程 第4工程で得られた光学材料用樹脂組成物を注型し、重合させて光学材料を得る工程。
(a)化合物:下記(1)式で表される構造を有する化合物
【化1】
(b)化合物:硫黄
(c)化合物:m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、およびp−テトラメチルキシリレンジイソシアネートの中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物
(d)化合物:ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジメルカプトプロパン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1−チアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1−チアン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)スルフィド、および3,4−チオフェンジチオールの中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物
(e)化合物:ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、およびテトラキス(3−メルカプトチオメチル)メタンの中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物
【0008】
2.第2工程において、(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物および(e)化合物の総量を100重量部とした時、(d)化合物の一部が2重量部以下の割合で前記(e)化合物と混合されていることを特徴とする第1項に記載の光学材料の製造方法。
【0009】
3.第3工程において、前記混合物中の(e)化合物の5〜30%を(c)化合物と反応させること特徴とする第1項に記載の光学材料の製造方法。
【0010】
4.第3工程において、反応温度を10℃から20℃、反応時間を2時間から4時間とすることを特徴とする第3項に記載の光学材料の製造方法。
【0011】
5.第1項〜第4項のいずれか一項に記載の製造方法で得られる光学材料。
【0012】
6.第5項に記載の光学材料からなる光学レンズ。
【0013】
更に具体的な工程の流れは、以下の通りである。
第1工程 (b)化合物を(a)化合物に溶解させて第1液を得る。
第2工程 (d)化合物の一部と(e)化合物と第1液とを均一混合して第2液を得る。
第3工程 (c)化合物を第2液に添加し、得られた混合物中の(c)化合物と(e)化合物を減圧下で反応させて反応混合物を得る。
第4工程 第2工程で、未添加分の(d)化合物を第3工程で得られた反応混合物に添加し、均一に混合して光学材料用樹脂組成物を得る。
第5工程 上記光学材料用樹脂組成物を注型し、重合させ、光学材料を得る。
【発明の効果】
【0014】
上記(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物、(e)化合物を原料とする光学材料の製造方法が、上記第1工程から第5工程を経ることで、脈理ならびに白濁といった不良要因による歩留まりの低下の改善を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について説明する。
本発明は、下記(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物、および(e)化合物を原料とする光学材料の製造法であって、下記第1工程から第5工程を経ることを特徴とする光学材料の製造方法である。
第1工程 (a)化合物に(b)化合物を溶解させて第1液を得る工程。
第2工程 (d)化合物の一部を混合させた(e)化合物を第1工程で得られた第1液に添加し、混合させて第2液を得る工程。
第3工程 (c)化合物を第2工程で得られた第2液に添加し、得られた混合物を減圧下で反応させて反応混合物を得る工程。
第4工程 残りの(d)化合物を第3工程で得られた前記反応混合物に添加し、混合させ、光学材料用樹脂組成物を得る工程。
第5工程 第4工程で得られた光学材料用樹脂組成物を注型し、重合させて光学材料を得る工程。
【0016】
以下、本発明に用いる原料、即ち(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物、および(e)化合物について詳細に説明する。
【0017】
本発明で使用する(a)化合物は、下記(1)式で表される構造を有する化合物である。(a)化合物の添加量は、(a)〜(e)化合物の合計を100重量部とした場合、通常は60〜95重量部であり、好ましくは70〜90重量部、特に好ましくは75〜85重量部である。(a)化合物の添加量が60重量部を下回ると耐熱性が低下する場合があり、95重量部を超えると強度が低下する場合がある。
【化2】
【0018】
(a)化合物の具体例としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)トリスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)スルフィド、などのエピスルフィド類が挙げられる。(a)化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。中でも好ましい化合物は、ビス(β―エピチオプロピル)スルフィドおよび/またはビス(β―エピチオプロピル)ジスルフィドであり、最も好ましい化合物は、ビス(β―エピチオプロピル)スルフィドである。
【0019】
本発明で使用する(b)化合物である硫黄の添加量は、(a)〜(e)化合物の合計を100重量部とした場合、通常は0.1〜5重量部であり、好ましくは、0.3〜1重量部、特に好ましくは0.45〜0.55重量部である。
【0020】
本発明で用いる硫黄の形状はいかなる形状でもかまわない。具体的には、硫黄は、微粉硫黄、コロイド硫黄、沈降硫黄、結晶硫黄、昇華硫黄等であるが、好ましくは、粒子の細かい微粉硫黄である。
【0021】
本発明に用いる硫黄の製法はいかなる製法でもかまわない。硫黄の製法は、天然硫黄鉱からの昇華精製法、地下に埋蔵する硫黄の溶融法による採掘、石油や天然ガスの脱硫工程などから得られる硫化水素等を原料とする回収法等があるが、いずれの製法でもかまわない。
【0022】
本発明に用いる硫黄の粒径は10メッシュより小さいこと、即ち硫黄が10メッシュより細かい微粉であることが好ましい。硫黄の粒径が10メッシュより大きい場合、硫黄が完全に溶解しにくい。このため、第1工程で好ましくない反応等が起き、不具合が生じる場合がある。硫黄の粒径は、30メッシュより小さいことがより好ましく、60メッシュより小さいことが最も好ましい。
【0023】
本発明に用いる硫黄の純度は好ましくは、98%以上であり、より好ましくは、99.0%以上であり、さらに好ましくは99.5%以上であり、最も好ましくは99.9%以上である。硫黄の純度が98%以上であると、98%未満である場合に比べて、得られる光学材料の色調がより改善する。
【0024】
(c)化合物の具体例としては、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、などのポリイソシアネート類が挙げられる。(c)化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。これらのなかで好ましい具体例は、工業的に入手が容易なm−キシリレンジイソシアネートおよび/またはm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートであり、最も好ましい化合物は、工業的に入手が可能なm−キシリレンジイソシアネートである。
【0025】
(d)化合物の具体例としては、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジメルカプトプロパン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1−チアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1−チアン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)スルフィド、3,4−チオフェンジチオール、などのチオール基を1分子中に2個有する化合物を挙げることができる。(d)化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。これらのなかで好ましい具体例は、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィドおよび/または2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンであり、最も好ましい具体例は、工業的に入手が可能なビス(2−メルカプトエチル)スルフィドである。
【0026】
(e)化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトチオメチル)メタン、などのチオール基を1分子中に2個有する化合物を挙げることができる。(e)化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。これらのなかで好ましい具体例は、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートであり、最も好ましい化合物は、工業的に入手が可能なペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネートである。
【0027】
(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物、(e)化合物の総量は、これら化合物の種類によって得られる硬化物の光学特性、強度、耐熱性によって変化するため一概には決められないが、通常は(a)化合物60〜95重量部に対して(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物、(e)化合物の総計が40〜5重量部であり、好ましくは(a)化合物70〜90重量部に対して(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物、(e)化合物の総計が30〜10重量部であり、特に好ましくは(a)化合物75〜85重量部に対して(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物、(e)化合物の総計が25〜15重量部である。
【0028】
さらに、(c)化合物のNCO基に対する(d)化合物及び(e)化合物中の合計のSH基の割合、即ち[(d)化合物及び(e)化合物中の合計のSH基数/(c)化合物のNCO基数](SH基/NCO基)は、好ましくは1.0〜2.5であり、より好ましくは1.25〜2.25であり、さらに好ましくは1.5〜2.0である。上記割合が1.0を下回ると硬化物が黄色く着色する場合があり、2.0を上回ると耐熱性が低下する場合がある。
【0029】
(e)化合物中のSH基に対する(d)化合物中のSH基の割合、即ち(d)化合物中のSH基数/(e)化合物中のSH基数は、好ましくは、1.25〜1.75の範囲である。上記割合が1.75を上回ると、耐熱性が低下する場合がある。一方、上記割合が1.25以下を下回ると、得られた光学材料が黄変する場合がある。
【0030】
本発明の製造方法によれば、光学材料を得るに際して、(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物及び(e)化合物に重合触媒を添加することが好ましい。又は光学材料用樹脂組成物が重合触媒を含有することが好ましい。重合触媒としては、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、第2級ヨードニウム塩が好ましく、中でも光学材料用樹脂組成物との相溶性の良好な第4級アンモニウム塩および第4級ホスホニウム塩がより好ましく、第4級ホスホニウム塩がさらに好ましい。より好ましい重合触媒としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、1−n−ドデシルピリジニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の第4級ホスホニウム塩が挙げられる。これらの中で、さらに好ましい重合触媒は、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび/またはテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドであり、最も好ましい重合触媒は、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドである。
【0031】
重合触媒の添加量は、組成物の成分、混合比および重合硬化方法によって変化するため一概には決められないが、通常は(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物、(e)化合物の合計100重量部に対して、通常は0.0001重量部〜10重量部、好ましくは、0.001重量部〜5重量部、より好ましくは、0.01重量部〜1重量部、最も好ましくは、0.01重量部〜0.5重量部である。重合触媒の添加量が10重量部より多いと硬化物の屈折率、耐熱性が低下し、着色が生じる場合がある。また、重合触媒の添加量が0.0001重量部より少ないと光学材料用樹脂組成物が十分に硬化せず耐熱性が不良となる場合がある。
【0032】
また、本発明の製造方法で光学材料を製造する際、(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物及び(e)化合物に公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料等の添加剤を加え、得られる光学材料の実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。
【0033】
酸化防止剤の好ましい例としてはフェノール誘導体が挙げられる。中でも好ましい化合物は多価フェノール類、ハロゲン置換フェノール類であり、より好ましい化合物はカテコール、ピロガノール、アルキル置換カテコール類であり、最も好ましい化合物はカテコールである。
【0034】
紫外線吸収剤の好ましい例としてはベンゾトリアゾール系化合物であり、特に好ましい化合物は、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3、5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールである。
【0035】
これら酸化防止剤および紫外線吸収剤の添加量は、通常、(a)〜(e)化合物の合計100重量部に対してそれぞれ0.01〜5重量部である。
【0036】
また、本発明の製造方法において、重合後に型から剥がれにくい場合は、周知の外部および/または内部離型剤を使用または添加して、得られる硬化物の型からの離型性を向上せしめることも可能である。離型剤としては、フッ素系ノニオン界面活性剤、シリコン系ノニオン界面活性剤、燐酸エステル、Stephan社製の酸性燐酸エステル、オキシアルキレン型酸性燐酸エステル、酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、オキシアルキレン型酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪族のエステル、パラフィン、ワックス、高級脂肪族アミド、高級脂肪族アルコール、ポリシロキサン類、脂肪族アミンエチレンオキシド付加物などが挙げられる。これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもよい。離型剤の添加量は通常、(a)〜(e)化合物100重量部に対して、0.01〜0.1重量部である。
【0037】
光学材料用樹脂組成物を重合硬化させる際に、ポットライフの延長や重合発熱の分散化などを目的として、必要に応じて(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物及び(e)化合物に重合調整剤を添加することができる。重合調整剤は、長期周期律表における第13〜16族のハロゲン化物を挙げることができる。これらのうち好ましいものは、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンのハロゲン化物であり、より好ましいものはアルキル基を有するゲルマニウム、スズ、アンチモンの塩化物である。さらに好ましい化合物は、ジブチルスズジクロライド、ブチルスズトリクロライド、ジオクチルスズジクロライド、オクチルスズトリクロライド、ジブチルジクロロゲルマニウム、ブチルトリクロロゲルマニウム、ジフェニルジクロロゲルマニウム、フェニルトリクロロゲルマニウム、トリフェニルアンチモンジクロライドであり、最も好ましい化合物は、ジブチルスズジクロライドである。重合調整剤は単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。
【0038】
重合調整剤の添加量は、(a)〜(e)化合物の総計100重量部に対して、0.0001〜5.0重量部であり、好ましくは0.0005〜3.0重量部であり、より好ましくは0.001〜2.0重量部である。重合調整剤の添加量が0.0001重量部よりも少ない場合、得られる光学材料において充分なポットライフが確保できず、重合調整剤の添加量が2.0重量部よりも多い場合は、光学材料用樹脂組成物が充分に硬化せず、得られる光学材料の耐熱性が低下する場合がある。
次に、上記第1工程〜第5工程について詳細に説明する。
【0039】
(第1工程)
第1工程は、(a)化合物に(b)化合物を溶解させて第1液を得る工程である。この工程において、溶解条件は通常、以下の通りである。即ち、溶解温度が10〜60℃で、溶解時間が0.1〜12時間、より好ましくは溶解温度が15〜50℃で溶解時間が0.1〜6時間、特に好ましくは溶解温度が20〜40℃で溶解時間が0.1〜2時間である。溶解温度を10℃より低くすると、溶解時間が長くなり、60℃より高くすると、光学材料の耐熱性が低下するといった不具合が生じる。第1工程は、大気、窒素または酸素等の気体の存在下、常圧もしくは、加減圧による密閉下の任意の雰囲気下で行ってよい。また、(b)化合物の他に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合触媒ならびに重合調整剤などといった固体成分を同時に溶解してもかまわない。
【0040】
(第2工程)
第2工程は、(d)化合物の一部を混合させた(e)化合物を第1工程で得られた第1液に添加し、混合させて第2液を得る工程である。ここで、(d)化合物の一部を混合させた(e)化合物と、第1工程で得られた第1液とは、均一に混合させることが好ましい。
【0041】
この場合、(d)化合物は、(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)化合物及び(e)化合物の総量を100重量部とした時、2重量部以下の割合で(e)化合物と混合されることが好ましい。この場合、得られる光学材料において白濁ならびに脈理がより生じにくくなり、光学材料の歩留まりがより向上する。
【0042】
(d)化合物と(e)化合物を均一に混合させる条件は、(d)化合物と(e)化合物が均一に混合される条件であれば、特に問題はない。混合は、大気、窒素または酸素等の気体の存在下、常圧もしくは、加減圧による密閉下の任意の雰囲気下で行ってよい。
【0043】
第2工程の(d)化合物の一部と(e)化合物を均一に混合した後に、(d)化合物の一部を均一に混合させた(e)化合物を第1工程で得られた反応液である第1液に添加し、均一に混合させる条件、即ち温度及び時間は、好ましくは以下の通りである。即ち温度が10〜20℃で時間が0.1〜1時間である。混合させる条件のうちの温度が10℃よりも低い場合、第2液の粘度が高くなる。混合させる温度が20℃よりも高い場合、反応液である第1液の不必要な重合が進行する場合がある。
【0044】
第2工程の(d)化合物と(e)化合物を混合する際に、(d)化合物及び(e)化合物中に重合触媒ならびに重合調整剤を同時に溶解してもかまわない。混合は、大気、窒素または酸素等の気体の存在下、常圧もしくは、加減圧による密閉下の任意の雰囲気下で行ってよい。
【0045】
(第3工程)
第3工程は、(c)化合物を、第2工程で得られた第2液に添加し、得られた混合物を減圧下で反応させて反応混合物を得る工程である。ここで、減圧下とは、圧力が0.10kPa〜0.27kPaである環境下を意味し、混合物を、例えば真空ポンプを用いて脱気処理することにより実現することができる。
【0046】
本発明における製造方法は、第3工程において、(c)化合物と(e)化合物を、光学材料用樹脂組成物の注型前に少なくとも一部反応させることが好ましい。(c)化合物と(e)化合物を少なくとも一部反応させて得られる光学材料用樹脂組成物を、注型し、重合させた場合、硬化して得られる光学材料においては、脈理や白濁が生じにくくなり、光学材料の歩留まりがより向上する。ここで、(c)化合物と(e)化合物は、注型前に全部を反応させてもよいが、より十分なポットライフを確保するためには、一部を反応させることが好ましい。
【0047】
具体的には、第3工程において、(e)化合物の5〜30%を(c)化合物と反応させることが好ましい。(e)化合物の5〜30%を(c)化合物と反応させて得られる光学材料用樹脂組成物を、注型し、重合させた場合、硬化して得られる光学材料においては、脈理や白濁が特に生じにくくなり、光学材料の歩留まりが特に向上する。
【0048】
第3工程の(e)化合物の反応率は、光学材料用樹脂組成物を液体クロマトグラフィー(GPCモード、RID検出器)で分析し、算出する。ここで、反応率が0%であれば、(e)化合物は反応していないことになり、(e)化合物が0%より大きければ、(e)化合物は反応していることになる。尚、(e)化合物が5%以上反応したことを確認後、第4工程において、残りの(d)化合物を添加する。(e)化合物の消費率、即ち反応率が5%以上である場合、反応率が5%未満である場合に比べて、白濁ならびに脈理による歩留まりの低下がより改善される。反応率が30%以下であると、反応率が30%より多い場合に比べて、脈理による歩留まり低下がより改善される。
【0049】
第3工程の(c)化合物と(e)化合物とを反応させる条件、即ち反応温度及び反応時間は以下の通りである。即ち反応温度は通常、0〜30℃で反応時間は0.5〜12時間、より好ましくは、反応温度が5〜25℃で反応時間が1〜6時間、特に好ましくは、反応温度が10〜20℃で反応時間が2〜4時間である。反応条件のうちの反応温度が0℃より低い場合、工程時間が長くなり、反応温度が30℃より高い場合は、(c)化合物と(e)化合物との反応制御が難しくなる場合がある。
【0050】
本発明の光学材料用樹脂組成物の製造方法において、あらかじめ脱気処理を行うことが好ましい。脱気処理は、第3工程で行うが、処理条件、即ち混合物を密閉状態で収容する容器内の空間の圧力は、好ましくは、3.33kPa以下であり、より好ましくは、1.33kPa以下であり、特に好ましくは0.27kPa以下である。脱気処理により、除去される成分は、主に硫化水素等の溶存ガスや低分子量のチオール等の低沸点物等である。0.27kPaより高い真空度で脱気処理をすると、溶存ガスが残存し、光学材料の透明性が低下してしまう場合がある。
【0051】
(第4工程)
第4工程は、残りの(d)化合物を第3工程で得られた反応混合物に添加し、混合させ、光学材料用樹脂組成物を得る工程である。
このとき、反応混合物への残りの(d)化合物の添加は、(e)化合物が5%以上反応したことを確認した後に行うことが好ましい。この場合、(e)化合物が5%も反応しない状態で(d)化合物を反応混合物に添加する場合に比べて、脈理や白濁といった不良要因がより改善する。(d)化合物と反応混合物とを混合させる条件、即ち温度及び時間は通常、以下の通りである。即ち混合温度が10〜20℃で混合時間が0.1〜1時間である。混合条件のうちの混合温度が10℃より低い場合、工程時間が長くなり、混合温度が20℃より高い場合、(e)化合物と(c)化合物との反応の制御が難しくなる場合がある。このとき、(d)化合物と反応混合物とを混合させると同時に脱気処理を行ってもかまわない。
【0052】
(第5工程)
第5工程は、第4工程で得られた光学材料用樹脂組成物を注型し、重合させて光学材料を得る工程である。
【0053】
第5工程における本発明の光学材料用樹脂組成物の注型に際し、0.1〜5μm程度の孔径のミクロフィルター等で不純物を濾過し除去することは、本発明の光学材料の品質を高める上からも好ましい。
【0054】
第5工程における本発明の光学材料用樹脂組成物の重合は通常、以下のようにして行われる。即ち、硬化時間は通常1〜100時間であり、硬化温度は通常−10℃〜140℃である。重合は所定の重合温度で所定時間保持する工程、0.1℃〜100℃/hの昇温を行う工程、0.1℃〜100℃/hの降温を行う工程によって、又はこれらの工程を組み合わせて行う。また、硬化終了後、得られた光学材料を50〜150℃の温度で10分〜5時間程度アニール処理を行うことは、本発明の光学材料の歪を除くために好ましい処理である。さらに得られた光学材料に対して、必要に応じて染色、ハードコート、耐衝撃性コート、反射防止、防曇性付与等の表面処理を行ってもよい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の内容を、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
尚、以下の実施例及び比較例の方法により得られた光学材料における脈理及び白濁についてはそれぞれ、以下の方法により評価した。
【0057】
(脈理) 暗室にて、硬化物(光学材料)に超高圧水銀ランプ250W(ウシオ電機株式会社製、型式:USH−250SH)の光をあてて硬化物における脈理を目視で評価した。脈理のないものを良品、脈理のあるものを不良品とした。下記表1及び表2においては、良品/仕込み枚数(10枚)を歩留まりとして表記した。
【0058】
(白濁) 暗室にて、硬化物(光学材料)に蛍光灯の光をあてて目視で白濁を評価した。そして、下記表1及び表2においては、白濁のないものを「A」、白濁のあるものを「B」とした。
【0059】
実施例1
反応温度20℃、反応時間2時間、反応率30%、第2工程における(d)化合物:2重量部
第1工程;反応フラスコで、ビス(β―エピチオプロピル)スルフィド(以下(a1)化合物と呼ぶ)79.5重量部、(b)化合物の硫黄0.5重量部、抗酸化剤として、カテコール0.05重量部、紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1重量部を30℃、60分混合し、均一として第1液を得た。その後に、第1液について20℃まで冷却を行った。
第2工程;ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド2.0重量部(以下(d1)化合物と呼ぶ)、ペンタエリスリトールテトラキスプロピオネート(以下(e1)化合物と呼ぶ)6.6重量部、n−ブチルホスホニウムブロマイド0.09重量部、ジブチルスズジクロライド0.01重量部を20℃の混合温度でよく混合し、均一とした後、反応フラスコ中の第1液に加え、20℃の混合温度で1時間攪拌し、均一として第2液を得た。
第3工程;離型剤のゼレックUN(Stepan社製)0.01重量部、m−キシリレンジイソシアネート7.2重量部(以下(c1)化合物と呼ぶ)を20℃でよく混合し、均一とした後、反応フラスコ中の第2液に加え、得られた混合物について20℃の反応温度、0.27kPaの真空度で2時間脱気および攪拌を行い、混合物を反応させ、反応混合物を得た。2時間後に反応混合物をGPC(カラム、Shodex社製、K−802)にセットしてGPCで(e1)化合物の反応率の測定を行った。その結果、(e1)化合物が30%反応したことを確認した。
第4工程;(d1)化合物を4.2重量部、反応フラスコ中の反応混合物に加え、15℃で30分、0.27kPaの真空度で脱気および攪拌を行い、光学材料用樹脂組成物を得た。
第5工程;第4工程で得られた光学材料用樹脂組成物を2枚のガラス板とテープから構成される、コバ厚さ10mm、中心厚15mm、モールド径が75mmのモールドに注入し、29℃で30時間加熱し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で2時間加熱し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、硬化した光学材料を得た。得られた光学材料は、110℃で60分、アニール処理し、離型により生じた歪を取り除いた。得られた光学材料の脈理の歩留まりおよび白濁の結果を表1に示した。
【0060】
実施例2
反応温度10℃、反応時間4時間、反応率10%、第2工程における(d)化合物:1.74重量部
第2工程の(d1)化合物の添加量を1.74重量部および混合温度を10℃とし、第3工程の反応温度を10℃、反応時間(脱気及び撹拌時間)を4時間、(e1)化合物の反応率を10%とし、第4工程の(d1)化合物の添加量を4.46重量部にした以外は、実施例1と同様にして光学材料を得た。得られた光学材料の脈理の歩留まりおよび白濁の結果を表1に示した。
【0061】
実施例3
反応温度15℃、反応時間2時間、反応率5%、第2工程における(d)化合物:1.74重量部
第2工程の(d1)化合物の添加量を1.74重量部および混合温度を15℃とし、第3工程の反応温度を15℃、(e1)化合物の反応率を5%とし、第4工程の(d1)化合物の添加量を4.46重量部にした以外は、実施例1と同様にして光学材料を得た。得られた光学材料の脈理の歩留まりおよび白濁の結果を表1に示した。
【0062】
比較例1
第2工程の(d1)化合物の添加量を6.2重量部とし、第3工程の反応時間を0.1時間、(e1)化合物の反応率を0%とし、第4工程の(d1)化合物添加量を0重量部とした以外は、実施例1と同様にして光学材料を得た。得られた光学材料の脈理の歩留まりおよび白濁の結果を表2に示した。
【0063】
比較例2
第2工程の(d1)化合物の添加量を1.74重量部および混合温度を10℃とし、第3工程の反応温度を10℃、反応時間を0.1時間、(e1)化合物の反応率を0%とし、第4工程の(d1)化合物の添加量を4.46重量部とした以外は、実施例1と同様にして光学材料を得た。得られた光学材料の脈理の歩留まりおよび白濁の結果を表2に示した。
【0064】
比較例3
第1工程 反応フラスコで、(a1)化合物79.5重量部、(b1)化合物0.5重量部、抗酸化剤として、カテコール0.05重量部、紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1重量部を30℃、60分混合し、均一として第1液を得た。その後に、第1液について20℃まで冷却を行った。
次の工程(第2’工程)として、(d1)化合物2.0重量部、(e1)化合物6.6重量部、n−ブチルホスホニウムブロマイド0.09重量部、ジブチルスズジクロライド0.01重量部を20℃、常圧でよく混合し、均一とした。
次の工程(第3’工程)として、ゼレックUN(Stepan社製)0.01重量部、(c1)化合物7.2重量部を20℃でよく混合し、均一とした後、第2’工程で得られた液に加え、得られた混合物を常圧下、20℃で30分混合した。こうして得られた液について実施例1と同様にして(e1)化合物の反応率を測定した。その結果、(e1)化合物が5%反応したことを確認した。
次の工程(第4’工程)として、第3’工程で得られた液ならびに(b1)化合物4.2重量部を第1工程で得られた第1液に添加し、均一に混合し、反応組成物を得た。
第5工程として、第4’工程で得られた反応組成物を2枚のガラス板とテープから構成される、コバ厚さ10mm、中心厚15mm、モールド径が75mmのモールドに注入し、29℃で30時間加熱し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で2時間加熱し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、硬化した光学材料を得た。得られた光学材料は、110℃で60分、アニール処理し、離型により生じた歪を取り除いた。得られた光学材料の脈理の歩留まりおよび白濁の結果を表2に示した。
【0065】
比較例4
比較例3の第3’工程で得られた混合物の混合温度及び混合時間をそれぞれ30℃及び1時間とし、(e1)化合物の反応率を30%とした以外は、比較例3と同様にして光学材料を得た。得られた光学材料の脈理の歩留まりおよび白濁の結果を表2に示した。
【表1】
【表2】